説明

作業車両

【課題】走行油圧ポンプ65部の構成部品数を削減でき、走行油圧ポンプ65部の組立工数を削減できるようにした作業車両を提供しようとするものである。
【解決手段】エンジン7を搭載した走行機体1を備え、走行機体1に左右の走行部2を装設すると共に、エンジン7によって左右の走行油圧ポンプ65を作動させ、左右の走行油圧ポンプ65にて左右の走行油圧モータ69を作動させ、左右の走行油圧モータ69にて左右の走行部2を駆動する作業車両において、走行油圧ポンプ65のポンプ入力軸64に、エンジン7にベルト連結するプーリ軸64aを一体的に形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取り穀稈の穀粒を脱粒する脱穀装置を搭載したコンバイン、または耕耘作業機などを装備するトラクタ等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行部及び運転座席を有する走行機体と、刈刃を有する刈取装置と、扱胴を有する脱穀装置と、刈取装置から脱穀装置に刈取り穀稈を供給するフィーダハウスと、各部を駆動するエンジンと、脱穀装置の脱粒物を選別する穀粒選別機構と、脱穀装置の穀粒を収集するグレンタンクを備え、圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取って脱穀するコンバインがある(特許文献1)。また、走行油圧ポンプ及び走行油圧モータを有する油圧変速装置を備え、油圧変速装置にて左右のクローラ走行装置を駆動する技術も公知である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−263865号公報
【特許文献2】特開2005−82084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1または特許文献2に示された従来技術では、走行機体にエンジンを搭載し、走行油圧ポンプなどが配置されたミッションケースを設けている。ミッションケースに走行油圧ポンプを内設した場合、走行油圧ポンプの入力軸をミッションケースから突出させて入力プーリを設けることができるが、特別にミッションケースを形成する必要があり、走行油圧ポンプの取付け構造をコンパクト化できないと共に、走行構造を低コストに構成できない等の問題がある。また、走行油圧ポンプの斜板制御(出力制御)用に、斜板制御バルブ及び斜板制御シリンダを設ける構造において、斜板制御バルブまたは斜板制御シリンダなどをミッションケース内に容易に組み込めないと共に、斜板制御油路の入力部で作動油の流量調整を行い、走行油圧ポンプの斜板制御の感度を調節して、走行油圧ポンプの斜板制御が過敏になるのを防止できるが、斜板制御油路の途中での油漏れを考慮すると、走行油圧ポンプの斜板制御が鈍感になる等の問題もある。
【0005】
そこで、本願発明は、これらの現状を検討して改善を施した作業車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の作業車両は、エンジンを搭載した走行機体を備え、前記走行機体に左右の走行部を装設すると共に、前記エンジンによって左右の走行油圧ポンプを作動させ、前記左右の走行油圧ポンプにて左右の走行油圧モータを作動させ、前記左右の走行油圧モータにて前記左右の走行部を駆動する作業車両において、前記走行油圧ポンプのポンプ入力軸に、前記エンジンにベルト連結するプーリ軸を一体的に形成したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記左右の走行油圧ポンプを走行油圧ポンプケースに内設し、前記走行油圧ポンプケースの一端側に取付け座板体を固着し、前記ポンプ入力軸を軸支したベヤリングホルダの一側面に前記取付け座板体の対向側面を嵌合させてボルト締結し、前記走行機体にベヤリングホルダを介して前記走行油圧ポンプケースの一端側を支持するように構成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の作業車両において、前記走行機体に設けるポンプ支持フレーム体の上面に、前記走行油圧ポンプケース他端側の下面を当接させ、前記ポンプ支持フレーム体に前記走行油圧ポンプケースを上載するように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンを搭載した走行機体を備え、前記走行機体に左右の走行部を装設すると共に、前記エンジンによって左右の走行油圧ポンプを作動させ、前記左右の走行油圧ポンプにて左右の走行油圧モータを作動させ、前記左右の走行油圧モータにて前記左右の走行部を駆動する作業車両において、前記走行油圧ポンプのポンプ入力軸に、前記エンジンにベルト連結するプーリ軸を一体的に形成したものであるから、従来のように、前記左右の走行油圧ポンプを設置するためのミッションケースを特別に形成する必要がなく、前記走行油圧ポンプを設けるポンプケース構造をコンパクトに構成できると共に、前記ポンプ入力軸に対してプーリ軸を別体で構成する構造に比べ、前記ポンプ入力軸を軸支するベヤリング軸受構造を簡略化でき、前記走行油圧ポンプ部の構成部品数を削減でき、前記走行油圧ポンプ部の組立工数を削減できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記左右の走行油圧ポンプを走行油圧ポンプケースに内設し、前記走行油圧ポンプケースの一端側に取付け座板体を固着し、前記ポンプ入力軸を軸支したベヤリングホルダの一側面に前記取付け座板体の対向側面を嵌合させてボルト締結し、前記走行機体に前記ベヤリングホルダを介して前記走行油圧ポンプケースの一端側を支持するように構成したものであるから、前記ベヤリングホルダと前記取付け座板体の嵌合によって所定の組立精度が保たれた状態で、前記ベヤリングホルダに前記走行油圧ポンプケースを固着でき、前記走行油圧ポンプケースまたは前記ポンプ入力軸の組付け誤差を低減でき、前記走行機体に前記走行油圧ポンプケースまたは前記ポンプ入力軸を、少ない組立工数で高精度に組付けることができる。加えて、前記ポンプ入力軸に対してプーリ軸を別体で構成する軸受構造に比べ、前記ベヤリングホルダに設けるベヤリング軸受数を削減でき、前記ポンプ入力軸の軸受構造を低コストに構成できる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記走行機体に設けるポンプ支持フレーム体の上面に、前記走行油圧ポンプケース他端側の下面を当接させ、前記ポンプ支持フレーム体に前記走行油圧ポンプケースを上載するように構成したものであるから、前記走行油圧ポンプケースの締結ボルト数を削減でき、前記走行機体に対する前記走行油圧ポンプケースの着脱作業性を向上できるものでありながら、前記ポンプ支持フレーム体を設ける走行機体側の加工コストも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態を示すコンバインの左側面図である。
【図2】同コンバインの右側面図である。
【図3】同コンバインの平面図である。
【図4】同コンバインの駆動系統図である。
【図5】コンバインの駆動部の背面図である。
【図6】運転台を前方から見た斜視図である。
【図7】ブレーキ操作具取付け部の側面図である。
【図8】ブレーキ操作具の取付け部を前方から見た斜視図である。
【図9】ブレーキ操作具の取付け部を後方から見た斜視図である。
【図10】コンバインの油圧回路図である。
【図11】図10の拡大説明図である。
【図12】油圧ポンプ部の側面図である。
【図13】油圧ポンプ部の断面図である。
【図14】油圧ポンプ部の分解説明図である。
【図15】油圧ポンプ部を断面した分解説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、普通型コンバインに適用した図面(図1〜図3)に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2は同右側面図、図3は同平面図である。まず、図1〜図3を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0014】
図1〜図3に示す如く、実施形態における普通型コンバインは、走行部としてのゴムクローラ製の左右一対の履帯2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、稲(又は麦又は大豆又はトーモロコシ)等の未刈り穀稈を刈取りながら取込む刈取装置3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
【0015】
走行機体1の前部には、オペレータが搭乗する運転台5を搭載する。運転台5の後方には、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク6を配置する。グレンタンク6の後方には、動力源としてのエンジン7を配置する。グレンタンク6の後部の右側には、穀粒排出オーガ8を旋回可能に設ける。グレンタンク6内の穀粒は、排出オーガ8先端の籾投げ口8aから例えばトラックの荷台やコンテナ等に搬出されるように構成する。走行機体1の他側(実施形態では左側)には、刈取装置3から供給された刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置9を搭載する。脱穀装置9の下部には、揺動選別及び風選別を行うための穀粒選別機構10を配置する。
【0016】
刈取装置3は、脱穀装置9前部の扱口9aに連通したフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状の穀物ヘッダー12とを備えている。穀物ヘッダー12内に掻込みオーガ13を回転可能に軸支する。掻込みオーガ13の前部上方にタインバー付き掻込みリール14を配置する。穀物ヘッダー12の前部にバリカン状刈刃15を配置する。穀物ヘッダー12前部の左右両側に左右の分草体16を突設する。また、フィーダハウス11には、供給コンベヤ17を内設している。供給コンベヤ17の送り終端と扱口9a間に刈取り穀稈投入用ビータ18を設けている。なお、フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが昇降用油圧シリンダ4を介して連結され、刈取装置3が昇降用油圧シリンダ4にて昇降動する。
【0017】
上記の構成により、左右の分草体16間の未刈り穀稈の穂先側が掻込みリール14にて掻込まれ、未刈り穀稈の稈側が刈刃15にて刈取られ、掻込みオーガ13の回転駆動によって穀物ヘッダー12の左右幅の中央部付近に集められる。穀物ヘッダー12の刈取り穀稈の全量は、供給コンベヤ17によって搬送され、ビータ18によって脱穀装置9の扱口9aに投入されるように構成している。なお、穀物ヘッダー12を水平制御支点軸19a回りに回動させる水平制御用油圧シリンダ19を備え、穀物ヘッダー12の左右方向の傾斜を水平制御用油圧シリンダ19にて調節して、穀物ヘッダー12、及び刈刃15、及び掻込みリール14を圃場面に対して水平に支持する。
【0018】
また、図1〜図3に示す如く、脱穀装置9の扱室内に扱胴21を回転可能に設ける。走行機体1の前後方向に延長させた扱胴軸20に扱胴21を軸支する。扱胴21の下方側には、穀粒を漏下させる受網24を張設する。なお、扱胴21前部の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根状の取込み羽根25が半径方向外向きに突設されている。
【0019】
上記の構成により、扱口9aから投入された刈取り穀稈は、扱胴21の回転によって走行機体1の後方に向けて搬送されながら、扱胴21と受網24との間で混練されて脱穀される。受網24の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は受網24から漏下する。受網24から漏下しない藁屑等は、扱胴21の搬送作用によって、脱穀装置9後部の排塵口から圃場に排出される。
【0020】
なお、扱胴21の上方側には、扱室内の脱穀物の搬送速度を調節する複数の送塵弁(図示省略)を回動可能に枢着する。前記送塵弁の角度調整によって、扱室内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や性状に応じて調節できる。一方、脱穀装置9の下方に配置された穀粒選別機構10として、グレンパン及びチャフシーブ及びグレンシーブ及びストローラック等を有する比重選別用の揺動選別盤26を備える。
【0021】
また、穀粒選別機構10として、選別風を供給する唐箕ファン29等を備える。扱胴21にて脱穀されて受網24から漏下した脱穀物は、揺動選別盤26の比重選別作用と唐箕ファン29の風選別作用とにより、穀粒等の一番物(精粒)、枝梗付き穀粒等の二番物(再選別物)、及び藁屑等の排塵に選別されるように構成する。
【0022】
揺動選別盤26の下側方には、穀粒選別機構10として、一番コンベヤ機構30及び二番コンベヤ機構31を備える。揺動選別盤26及び唐箕ファン29の選別によって、揺動選別盤26から落下した穀粒等の一番物は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ32によってグレンタンク6に収集される。枝梗付き穀粒等の二番物は、二番コンベヤ機構31及び二番還元コンベヤ33等を介して揺動選別盤26の選別始端側に戻され、揺動選別盤26によって再選別される。藁屑等は、走行機体1後部の排塵口34から圃場に排出されるように構成する。
【0023】
さらに、図1〜図3、図6に示す如く、運転台5には、操縦コラム41と、オペレータが座乗する運転座席42とを配置している。操縦コラム41(フロントコラム41a、サイドコラム41b)には、走行機体1の進路を変更したり移動速度を変更するための操縦レバーとしての左右の変速レバー43,44と、前後方向に傾倒させて刈取装置3を昇降させたり左右方向に傾倒させて掻込みリール14を昇降させるための刈取姿勢レバー45と、エンジン7の回転を制御するアクセルレバー46と、穀粒排出オーガ8を作動させる穀粒排出レバー47が配置されている。なお、刈取装置3への動力伝達を入り切り操作する刈取クラッチレバー39と、脱穀装置9への動力伝達を入り切り操作する脱穀クラッチレバー40等も配置されている。加えて、運転座席42に座乗したオペレータが立ち姿勢のときに握るガードフレーム5aが、フロントコラム41aの上方側と左右側方を囲むように延設されている。また、運転台5の上方側に支柱48を介して日除け用の屋根体49が取付けられている。
【0024】
図1に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム50を配置している。トラックフレーム50には、履帯2にエンジン7の動力を伝える駆動スプロケット51と、履帯2のテンションを維持するテンションローラ52と、履帯2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ53と、履帯2の非接地側を保持する中間ローラ54とを設けている。駆動スプロケット51によって履帯2の後側を支持させ、テンションローラ23によって履帯2の前側を支持させ、トラックローラ53によって履帯2の接地側を支持させ、中間ローラ54によって履帯2の非接地側を支持させるように構成する。
【0025】
また、図1〜図3に示す如く、グレンタンク6の底部に配置させる底送りコンベヤ60と、グレンタンク6の後部に配置させる縦送りコンベヤ61を備える。左右の底送りコンベヤ60は、グレンタンク6の底部で前後方向に延長されていて、垂直に設けた縦送りコンベヤ61の下端側に向けてグレンタンク6底部の穀粒を搬送する。縦送りコンベヤ61は、グレンタンク6の後部で上下方向に延長されていて、グレンタンク6右側の穀粒排出オーガ8の送り始端側に向けて縦送りコンベヤ61上端側から穀粒を搬送する。グレンタンク6内の穀粒は、排出オーガ8先端(送り終端側)の籾投げ口8aに搬送されるように構成する。
【0026】
穀粒排出オーガ8は、縦送りコンベヤ61の上端側に上下方向に回動可能に支持されている。穀粒排出オーガ8の送り終端側である籾投げ口8a側を昇降可能に構成する。また、縦送りコンベヤ61のコンベヤ軸芯回り(水平方向)に籾投げ口8a側を移動可能に構成する。即ち、走行機体1の前部下方側に籾投げ口8a側を移動させて、運転台5及びグレンタンク6の右側部にオーガレスト8bを介して穀粒排出オーガ8を収納する。一方、穀粒排出オーガ8の送り終端側である籾投げ口8a側を上昇させ、走行機体1の側方または後方に籾投げ口8a側を移動させて、走行機体1の側方または後方に穀粒排出オーガ8を突出させ、トラックの荷台又はコンテナ等に籾投げ口8aを対向させ、トラックの荷台又はコンテナ等にグレンタンク6内の穀粒を搬出するように構成する。
【0027】
次に、図4、図5、図10を参照してコンバインの駆動構造を説明する。図4、図10に示す如く、一対の斜板可変型の左右走行油圧ポンプ65を有する走行変速用の走行油圧ポンプケース66を備える。走行機体1の右側後部上面にエンジン7を搭載し、エンジン7右側の走行機体1上面に走行油圧ポンプケース66を配置する。また、左右のトラックフレーム50の後端部に左右の減速ギヤケース63をそれぞれ設ける。左右の減速ギヤケース63に走行油圧モータ69をそれぞれ配置する。走行油圧ポンプケース66から後方に突出させた走行駆動用のポンプ入力軸64と、エンジン7から後方に突出させた出力軸67とを、走行出力ベルト230を介して連結する。脱穀装置9後部側方の走行機体1上面側にエンジン7と走行油圧ポンプケース66を設け、脱穀装置9と走行油圧ポンプケース66の間にエンジン7を配置している。
【0028】
即ち、走行油圧ポンプ65のポンプ入力軸64の一端部に、前記エンジン7にベルト230連結するプーリ軸64aを一体的に形成し、プーリ軸64aに走行駆動プーリ229をキ―嵌合させ、プーリ軸64aに走行駆動プーリ229をボルト228にて締結し、ポンプ入力軸64の一端部に走行駆動プーリ229を係合軸支している。なお、刈取装置3の昇降用油圧シリンダ4等を駆動するチャージポンプ68も、走行油圧ポンプ65と同軸64上に設けている。また、刈取装置3の昇降用油圧シリンダ4または刈取装置3の水平制御用油圧シリンダ19などを作動させる作業用油圧ポンプ70を備え、エンジン7に作業用油圧ポンプ70を配置し、走行油圧ポンプ65と同様に、チャージポンプ68及び作業用油圧ポンプ70をエンジン7にて駆動するように構成している。
【0029】
上記の構成により、左右走行油圧ポンプ65に出力軸67を介してエンジン7の駆動出力が伝達される。左右走行油圧ポンプ65によって左右走行油圧モータ69を各別にそれぞれ駆動し、左右走行油圧モータ69によって左右履帯2を正逆転させて前後進移動させる。また、左右走行油圧モータ69の回転速度を制御し、左右走行油圧モータ69によって駆動する左右履帯2の回転速度を異ならせて、走行機体1の移動方向(走行進路)を変更し、圃場の枕地での方向転換などを実行するように構成している。
【0030】
即ち、図10に示す如く、左右の走行油圧ポンプ65に、閉ループ油圧回路261を介して左右一対の走行油圧モータ69が油圧接続される。左右走行油圧モータ69によって、駆動スプロケット51を介して、左右履帯2が前進方向又は後進方向に駆動される。オペレータが左右の変速レバー43,44を操縦操作して、左右の走行油圧ポンプ65の出力調節用斜板65a角度(変速制御)をそれぞれ調節することによって、左右の走行油圧モータ69の回転数又は回転方向がそれぞれ変更され、左右の履帯2が互いに独立的に駆動されて、走行機体1が前進移動又は後進移動するように構成している。
【0031】
図4、図5に示す如く、エンジンルーム枠56によってエンジンルーム57を形成し、エンジンルーム57にエンジン7を内設する。エンジンルーム枠56に第1軸受体58を介して脱穀入力用の第1カウンタ軸71を軸支する。また、エンジンルーム枠56に第2軸受体59を介して脱穀入力用の第2カウンタ軸72を軸支する。エンジン7の出力軸67に作業出力ベルト231を介して第1カウンタ軸71を連結する。第1カウンタ軸71に脱穀駆動ベルト232を介して第2カウンタ軸72を連結する。テンションローラを兼用した脱穀クラッチ233と脱穀駆動ベルト232を介して、第1カウンタ軸71から第2カウンタ軸72にエンジン7の動力を伝達させる。なお、オペレータのレバー操作によって脱穀クラッチ233が入り切り制御される。また、扱胴軸20の一端側(後端側)に扱胴駆動ベルト234を介して第2カウンタ軸72が連結されている。脱穀クラッチ233の入り切り操作によって、第2カウンタ軸72を介して扱胴21が駆動制御されて、ビータ18から投入された穀稈が扱胴21によって連続的に脱穀されるように構成している。
【0032】
さらに、脱穀装置9の前面壁体に刈取り選別入力ケース73を設ける。刈取り選別入力ケース73に刈取り選別入力軸74を軸支する。扱胴軸20の他端側(前端側)にベベルギヤ75を介して刈取り選別入力軸74の一端側(右側端部)を連結する。ビータ18が軸支されたビータ軸82の左側端部にビータ駆動ベルト238を介して刈取り選別入力軸74の他端側(左側端部)を連結する。唐箕ファン29を軸支した唐箕軸76の左側端部に選別入力ベルト235を介してビータ軸82の左側端部を連結する。一番コンベヤ機構30の一番コンベヤ軸77の左側端部と、二番コンベヤ機構31の二番コンベヤ軸78の左側端部とに、コンベヤ駆動ベルト237を介して唐箕軸76を連結している。揺動選別盤26後部を軸支したクランク状の揺動駆動軸79の左側端部に揺動選別ベルト236を介して二番コンベヤ軸78の左側端部を連結している。なお、一番コンベヤ軸77を介して揚穀コンベヤ32が駆動されて、一番コンベヤ機構30の一番選別穀粒がグレンタンク6に収集される。また、二番コンベヤ軸78を介して二番還元コンベヤ33が駆動されて、二番コンベヤ機構31の藁屑が混在した二番選別穀粒が揺動選別盤26の上面側に戻される。
【0033】
一方、ビータ軸82の左側端部には、刈取り駆動ベルト241及び刈取クラッチ242を介して、供給コンベヤ17の送り終端側が軸支された刈取入力軸89の左側端部を連結している。穀物ヘッダー12に設けたヘッダー駆動軸91に、ヘッダー駆動チェン90を介して刈取入力軸89の右側端部を連結する。掻込みオーガ13を軸支した掻込み軸93に、掻込み駆動チェン92を介してヘッダー駆動軸91を連結する。掻込みリール14を軸支したリール軸94に、中間軸95及びリール駆動チェン96,97を介してヘッダー駆動軸91を連結する。また、ヘッダー駆動軸91の右側端部には、刈刃駆動クランク機構98を介して刈刃15が連結されている。刈取クラッチ242の入り切り操作によって、供給コンベヤ17と、掻込みオーガ13と、掻込みリール14と、刈刃15が駆動制御されて、圃場の未刈り穀稈の穂先側を連続的に刈取るように構成している。
【0034】
さらに、図4に示す如く、第1カウンタ軸71の後端部に、穀粒排出ベルト244及び穀粒排出クラッチ245を介して、底送りコンベヤ60の底送りコンベヤ軸103の後端側を連結させる。底送りコンベヤ軸103の後端部に縦送り駆動チェン104を介して下部仲介軸105の一端側を連結させる。縦送りコンベヤ61の縦送りコンベヤ軸106の下端側に、ベベルギヤ機構107を介して下部仲介軸105の他端側を連結させる。縦送りコンベヤ軸106の上端側に、ベベルギヤ機構108を介して上部仲介軸109の一端側を連結させる。上部仲介軸109の他端側に穀粒排出駆動チェン110を介して穀粒排出軸111の一端側を連結させる。穀粒排出軸111の他端側にベベルギヤ機構113を介して穀粒排出オーガ8の排出オーガ軸112の送り始端側を連結させる。穀粒排出クラッチ245の入り切り操作によって、底送りコンベヤ60と縦送りコンベヤ61と穀粒排出オーガ8が駆動制御されて、グレンタンク6内の穀粒がトラック荷台またはコンテナなどに排出されるように構成している。
【0035】
また、図2に示す如く、グレンタンク6の底部に、前後の穀粒排出口221,222を設けている。また、穀粒排出口221,222下方の走行機体1上面側に籾受け台223を出し入れ可能に配置している。籾受け台223を水平な作業姿勢に支持した状態で、運転座席42のオペレータとは別の作業者が籾受け台223に搭乗し、籾受け棒224に籾袋(図示省略)を装着して、その籾袋にグレンタンク6内の穀粒を排出する。穀粒が充填された籾袋は、籾受け台223から圃場に転落させて、回収する。
【0036】
上記の構成により、穀粒排出口221,222からグレンタンク6内の穀粒を排出することによって、刈取り脱穀作業を中断することなく、グレンタンク6内の穀粒を排出できる。即ち、穀粒排出オーガ8からグレンタンク6内の穀粒を排出する作業に比べ、刈取り脱穀作業を中断する必要が殆どないから、収穫作業において、刈取り脱穀作業を中断する時間を短縮でき、収穫作業能率を向上できる。
【0037】
次に、図10、図11を参照して、コンバインの油圧構造を説明する。図10に示す如く、油圧アクチュエータとして、前記刈取昇降用油圧シリンダ4と、前記水平制御用油圧シリンダ19と、掻込みリール14を昇降可能に支持する左右のリール昇降用油圧シリンダ251と、穀粒排出オーガ8を昇降可能に支持するオーガ昇降用油圧シリンダ252とを備える。刈取姿勢レバー45握り部の水平制御用スイッチ254操作によって作動制御する水平制御用電磁油圧バルブ253を介して、水平制御用油圧シリンダ19に作業用油圧ポンプ70を油圧接続する。オペレータの水平制御用スイッチ254操作または左右傾斜センサ(図示省略)の検出結果に基づき、水平制御用油圧シリンダ19が作動して、走行機体1の左右方向の傾斜角度を水平または任意傾斜角度に維持する。
【0038】
また、刈取昇降用手動油圧バルブ255を介して、刈取昇降用油圧シリンダ4に作業用油圧ポンプ70を油圧接続する。刈取姿勢レバー45を前後方向に傾倒させる操作によって、刈取昇降用油圧シリンダ4を作動させ、オペレータが刈取装置3を任意高さ(例えば刈取り作業高さまたは非作業高さ等)に昇降動させるように構成している。一方、リール昇降用手動油圧バルブ256を介して、リール昇降用油圧シリンダ251に作業用油圧ポンプ70を油圧接続する。刈取姿勢レバー45を左右方向に傾倒させる操作によって、リール昇降用油圧シリンダ251を作動させ、オペレータが掻込みリール14を任意高さに昇降動させ、圃場の未刈り穀稈を刈取るように構成している。
【0039】
他方、オーガ昇降用手動油圧バルブ257を介して、オーガ昇降用油圧シリンダ252に作業用油圧ポンプ70を油圧接続する。穀粒排出レバー47を前後方向に傾倒させる操作によって、オーガ昇降用油圧シリンダ252を作動させ、オペレータが穀粒排出オーガ8の籾投げ口8aを任意高さに昇降動させる。なお、電動モータ(図示省略)によって穀粒排出オーガ8を水平方向に回動させて、籾投げ口8aを横方向に移動させる。即ち、トラック荷台またはコンテナの上方に籾投げ口8aを位置させ、トラック荷台またはコンテナ内にグレンタンク6内の穀粒を排出するように構成している。
【0040】
さらに、図10に示す如く、左右の走行油圧ポンプ65に左右の閉ループ油圧回路261を介して左右の走行油圧モータ69をそれぞれ油圧接続している。左右の走行油圧ポンプ65の出力調節用斜板65aに、サーボバルブ機構262を介して左右の変速レバー43,44をそれぞれ連結させ、左右の変速レバー43,44の前後方向の傾斜角度に比例させて出力調節用斜板65aの支持角度が変更されるように構成している。即ち、左右の走行油圧ポンプ65によって左右の走行油圧モータ69がそれぞれ駆動され、減速ギヤケース63の減速ギヤ機構263を介して左右の走行油圧モータ69の駆動力が左右の履帯2にそれぞれ伝達され、左右の履帯2が前進方向または後進方向に駆動される。
【0041】
上記の構成により、左右の変速レバー43,44を機体前方に傾倒させることによって、左右の変速レバー43,44の傾斜角度に比例した車速で前進方向に直進移動できる。左右の変速レバー43,44を機体後方に傾倒させることによって、左右の変速レバー43,44の傾斜角度に比例した車速で後進(後退)方向に直進移動できる。一方、左右の変速レバー43,44の機体前方への傾斜角度を異ならせた場合、または左右の変速レバー43,44の機体後方への傾斜角度を異ならせた場合、または左右の変速レバー43,44のいずれか一方を機体前方に傾倒させながら他方を機体後方に傾倒させた場合、走行機体1の進路を左右方向に修正できる。
【0042】
換言すると、左右の変速レバー43,44の操作量または操作方向を相違させた場合、左右の変速レバー43,44の傾斜角度に比例した車速で、左右の変速レバー43,44の傾斜角度の差に比例した旋回半径で、走行機体1を左右方向に旋回移動できる。なお、チャージポンプ68の高圧油吐出側に、オイルクーラ264及びラインフィルタ265を介して左右の閉ループ油圧回路261が接続され、左右の閉ループ油圧回路261にオイルタンク266内の作動油を補給するように構成している。また、図10、図11に示す如く、走行油圧モータ69のモータ軸295上に、ブレーキ制動レバー296を有するブレーキ機構297を設けている。ブレーキ制動レバー296の操作によってブレーキ機構297を作動し、前記モータ軸295を制動するように構成している。
【0043】
また、図11に示す如く、前記サーボバルブ機構262は、走行油圧ポンプ65の出力調節用斜板65aの傾斜角度を変更する斜板制御シリンダ121と、斜板制御シリンダ121を作動する斜板制御バルブ122を備える。斜板制御バルブ122のスプール123にオリフィス124,125を形成する。斜板制御シリンダ121に供給する作動油の流量をオリフィス124,125にて調整するように構成している。即ち、斜板制御バルブ122のスプール123に形成する油路のうち、斜板制御シリンダ121からオイルタンク266に作動油を戻す油路にオリフィス124,125を形成し、斜板制御シリンダ121にからオイルタンク266に戻る作動油の流量をオリフィス124,125にて調整し、斜板制御シリンダ121に供給する作動油の流量が調整されるように構成している。
【0044】
上記の構成により、変速レバー43,44のスプール123切換操作にて、斜板制御バルブ122から斜板制御シリンダ121に入力側の油路圧力にて作動油が供給される一方、オリフィス124,125を介して制御バルブ122から斜板制御シリンダ121内の戻り油がオイルタンク266に戻る。斜板制御シリンダ121入力側の油圧力を急激に上昇させることなく、斜板制御シリンダ121を速やかに作動できる。斜板制御バルブ122を介してオイルタンク266に戻る斜板制御シリンダ121からの単位時間当たりの戻り油量が、オリフィス124,125によって制限されるから、斜板制御シリンダ121を過敏に作動させることがない。また、斜板制御シリンダ121入力側における斜板制御油路の途中での油漏れを考慮して、斜板制御シリンダ121入力側の油圧力を設定しても、走行油圧ポンプ65の出力調節用斜板65a制御が鈍感になることがない。その結果、変速レバー43,44の変速操作による走行油圧ポンプ65の変速制御を適正感度にて実行できる。
【0045】
次に、図6〜図9を参照してブレーキ操作具としてのブレーキペダル38と、走行変速レバー43,44の取付構造を説明する。図7〜図9に示す如く、運転台5からペダルフレーム275を立設し、ペダルフレーム275にペダル支点軸276を介してブレーキペダル38基端部を回動可能に軸支する。ブレーキペダル38基端部にワイヤアーム277を介してブレーキワイヤ278の一端側を連結する。また、ブレーキペダル38基端部にバネアーム279を介してペダル戻しバネ280を連結する。ペダル戻しバネ280によってブレーキペダル38の足踏み部38aを上昇位置に支持するように構成している。前記運転台5のステップフロア5b上に足踏み部38aを突設している。
【0046】
図7〜図9に示す如く、サイドコラム41bを形成するサイドコラムフレーム281は、前後方向に水平に延長させる上部フレーム281aと、上部フレーム281aの前端部を支持する前部支柱281bと、前部支柱281bの前側に平行に立設する補助支柱281cと、前部支柱281bに補助支柱281c上端部を連結する補助上フレーム281dとを有する。補助上フレーム281d下面にブレーキペダル38が当接して、ペダル戻しバネ280によってブレーキペダル38が上昇位置に支持される。また、補助支柱281cと補助上フレーム281dとに上下ブラケット282を介してパーキングレバー283を回動可能に支持する。ペダル戻しバネ280に抗してブレーキペダル38を足踏み操作にて下動したときに、パーキングレバー283のペダルフック体283aをブレーキペダル38に係止して、ペダル戻しバネ280に抗してブレーキペダル38を下動(制動)位置に支持するように構成している。なお、ペダルフック体283aがブレーキペダル38に係止しない位置にパーキングレバー283を支持する解除バネ284を設ける。
【0047】
次いで、図7〜図9に示す如く、サイドコラム41bを形成するサイドコラムフレーム281のうち上部フレーム281aに、左右の走行変速レバー43,44を前後方向に回動可能に軸支する変速レバー支点軸411を設ける。上部フレーム281aに変速レバー支点軸411を貫通させ、上部フレーム281aに変速レバー支点軸411の中間部を固着する。上部フレーム281aから左右方向に突出した変速レバー支点軸411の左右両端側に、左右の走行変速レバー43,44の基端部と、左右のレバー操作板412,413の上下幅中間部を回動可能に軸支する。左の変速レバー43と左のレバー操作板412を一体的に固着する。右の走行変速レバー44と右のレバー操作板413を一体的に固着する。左の走行変速レバー43(左のレバー操作板412)と、右の変速レバー44(右のレバー操作板413)とは、独立して回動するように、変速レバー支点軸411に支持されている。
【0048】
また、左右のレバー操作板412,413を係脱可能に連結する連動デテントボール機構414を設け、左右のレバー操作板412,413の上端側が連動デテントボール機構414にて係合されることによって、左右の走行変速レバー43,44のいずれか一方を操作したときに、連動デテントボール機構414の係合力以下の操作負荷で、他方が連動して作動するように構成している。なお、連動デテントボール機構414の係合力以上の操作負荷のときには、を操作した側の一方の走行変速レバー43または44だけが作動する。
【0049】
さらに、左右のレバー操作板412,413の下端側に左右のワイヤ連結軸体419a,419bを介して左右の変速用プッシュプルワイヤ415,416の一端側をそれぞれ連結する。前記出力調節用斜板65aを切換えるサーボバルブ機構262に左右の変速用プッシュプルワイヤ415,416の他端側がそれぞれ連結されている。左右の走行変速レバー43,44のいずれか一方または両方の前方側への傾動操作によって左右の走行油圧ポンプ65のいずれか一方または両方が正転制御され、左右の履帯2のいずれか一方または両方が前進駆動される。一方、左右の走行変速レバー43,44のいずれか一方または両方の後方側への傾動操作によって左右の走行油圧ポンプ65のいずれか一方または両方が逆転制御され、左右の履帯2のいずれか一方または両方が後進駆動される。なお、左右の走行変速レバー43,44の傾動操作量を異ならせることによって、走行機体1の進路が変更され、圃場枕地での旋回(Uターン)などが実行される。
【0050】
左右のレバー操作板412,413の係合ノッチ412a,413bに係脱可能に連結する左右の中立デテントボール機構417,418を備える。上部フレーム281aの両側に左右の中立デテントボール機構417,418を設ける。左右のレバー操作板412,413のいずれか一方または両方に左右の中立デテントボール機構417,418のいずれか一方または両方が係合したときに、左右の走行変速レバー43,44のいずれか一方または両方が、中立位置(左右の走行油圧ポンプ65の回転が零の位置)に支持されるように構成している。
【0051】
図7、図8に示す如く、前部支柱281bに設けるスイッチ台421と、スイッチ台421に設けるリバーススイッチ422と、リバーススイッチ422のスイッチアーム422aを作動させるリバースセンサアーム423を備える。スイッチ台421にリバースセンサアーム423を設ける。また、左右のレバー操作板412,413に後進操作アーム424をそれぞれ設ける。左右の変速レバー43,44のいずれか一方または両方を後進操作したときに、リバースセンサアーム423に後進操作アーム424を当接させ、リバーススイッチ422を作動して後退動作を報知するように構成している。
【0052】
図7〜図9に示す如く、左右のワイヤ連結軸体419a,419bを同時に挟持する一対の挟持板体427を備える。上部フレーム281aに枢着板体428を介して一対の挟持板体427の一端側を回動可能に連結する。一対の挟持板体427の他端側に一対の引張リンク429の一端側をそれぞれ連結する。一対の引張リンク429の他端側に長さ調節可能な引張ロッド430の一端側を連結する。引張ロッド430の他端側にブレーキペダル38のペダルアーム部を連結する。
【0053】
上記の構成により、左右の走行変速レバー43,44のいずれか一方または両方が前進側または後進側に操作されているときに、ブレーキペダル38を足踏み操作することによって、一対の引張リンク429と引張ロッド430を介して、一対の挟持板体427の他端側を下向きに引張り、左右のワイヤ連結軸体419a,419bのいずれか一方または両方に一対の挟持板体427を圧接し、一対の挟持板体427によって左右のワイヤ連結軸体419a,419bを挟持する。即ち、前進側または後進側の操作位置から、左右の走行油圧ポンプ65の回転が零になる変速中立位置に、走行変速レバー43,44が戻される。ブレーキペダル38の足踏み操作(履帯2の制動操作)によって、変速中立位置(車速が零になる位置)に左右の走行変速レバー43,44の両方を支持する。
【0054】
一方、パーキングレバー283のペダルフック体283aにブレーキペダル38を係止させ、ブレーキペダル38を足踏み操作位置(図9の仮想線に示す位置)に支持しているときには、一対の挟持板体427によって左右のワイヤ連結軸体419a,419bが挟持される。即ち、ブレーキペダル38のブレーキ操作によって履帯2が制動されているときには、左右の走行変速レバー43,44の両方が変速中立位置に係止され、左右の走行変速レバー43,44を前進側または後進側に傾動させる変速操作が禁止される。
【0055】
次いで、図4、図5、図12〜図15を参照して、左右の走行油圧ポンプ65の取付け構造を説明する。図12〜図15に示す如く、左右の走行油圧ポンプ65が内設された走行油圧ポンプケース66の一端側(後端面)に、取付け座板体131をボルト132締結にて着脱可能に固着する。前記ポンプ入力軸64をベヤリング軸受133を介して軸支するベヤリングホルダ134を備える。走行機体1の上面にベヤリングホルダ134の下端側をボルト135締結し、走行機体1の上面にベヤリングホルダ134を立設させる。なお、取付け座板体131のボルト132締結によって、取付け座板体131を共用して、仕様の異なる走行油圧ポンプケース66に組み換えることができる。
【0056】
図12〜図15に示す如く、取付け座板体131の後面側に凸嵌合部131aを形成すると共に、ベヤリングホルダ134の前面側に凹嵌合部134aを形成し、凹嵌合部134aに凸嵌合部131aを嵌入させた状態で、取付け座板体131とベヤリングホルダ134をボルト136締結して、取付け座板体131とベヤリングホルダ134を着脱可能に固着している。即ち、ベヤリングホルダ134の一側面(前面側)に取付け座板体131の対向側面(後面側)を嵌合させてボルト136締結し、走行機体1にベヤリングホルダ134を介して走行油圧ポンプケース66の一端側(後端部)を支持するように構成している。
【0057】
また、図13に示す如く、前面視L形状に折曲させた四角パイプ製のポンプ支持フレーム体141を備える。走行機体1にポンプ支持フレーム体141の両端部を固着する。左右方向に水平に延設させたポンプ支持フレーム体141の中間部に、前記走行油圧ポンプケース66を載置する。即ち、走行機体1上に立設したポンプ支持フレーム体141の平坦な上面に、走行油圧ポンプケース66他端側(前端側)の平坦な下面66aを当接させ、ポンプ支持フレーム体141に走行油圧ポンプケース66を上載するように構成している。
【0058】
さらに、図12〜図15に示す如く、走行油圧ポンプケース66は、左右の走行油圧ポンプ65の一方を内設する前側ケース体142と、左右の走行油圧ポンプ65の他方を内設する後側ケース体143と、前側ケース体142の後面側に固着する前側油路ベース体144と、後側ケース体143の前面側に固着する後側油路ベース体145とを有する。前側ケース体142と、前側油路ベース体144と、後側油路ベース体145と、後側ケース体143は、ボルト締結にて着脱可能に、前後方向に一列に連結されている。
【0059】
後側ケース体143に内挿したポンプ入力軸64前端側の後側ポンプ軸64bに走行油圧ポンプ65の一方を配置し、前側ケース体142に内挿した前側ポンプ軸151に走行油圧ポンプ65の他方を配置している。前側ポンプ軸151後端部の前側スプライン部151aと、後側ポンプ軸64b前端部の後側スプライン部64cとに、カップリング結合体152を嵌合させる。カップリング結合体152を介してポンプ入力軸64の前端側に前側ポンプ軸151の後端側を着脱可能にかつ一体回転可能に連結している。
【0060】
また、前側ケース体142の前面に、チャージポンプ68が内設されたチャージポンプケース153を固着する。一方、前側ケース体142の左側面部と、後側ケース体143の右側面部とに、左右の走行油圧ポンプ65の各斜板65a角度を調節するためのサーボバルブ機構262をそれぞれ配置する。前側ケース体142の左側面部と、後側ケース体143の右側面部とに、各サーボバルブ機構262の斜板制御バルブ122のスプール123にそれぞれ連結するバルブ切換レバー154を設ける。前記左右の変速レバー43,44に各バルブ切換レバー154がそれぞれ連結されている。左右の変速レバー43,44の操作にて斜板制御バルブ122を切換え、左右の履帯2の駆動速度(車速)を変更するように構成している。
【0061】
図1、図10、図12〜図15に示す如く、エンジン7を搭載した走行機体1を備え、走行機体1に左右の走行部としての履帯2を装設すると共に、エンジン7によって左右の走行油圧ポンプ65を作動させ、左右の走行油圧ポンプ65にて左右の走行油圧モータ69を作動させ、左右の走行油圧モータ69にて左右の履帯2を駆動する作業車両において、走行油圧ポンプ65のポンプ入力軸64に、エンジン7にベルト連結するプーリ軸64aを一体的に形成している。したがって、従来のように、左右の走行油圧ポンプ65を設置するためのミッションケースを特別に形成する必要がなく、走行油圧ポンプ65を設けるポンプケース66構造をコンパクトに構成できると共に、ポンプ入力軸64に対してプーリ軸64aを別体で構成する構造に比べ、ポンプ入力軸64を軸支するベヤリング軸受133構造を簡略化でき、走行油圧ポンプ65部の構成部品数を削減でき、走行油圧ポンプ65部の組立工数を削減できる。
【0062】
図12〜図15に示す如く、左右の走行油圧ポンプ65を走行油圧ポンプケース66に内設し、走行油圧ポンプケース66の一端側に取付け座板体131を固着し、ポンプ入力軸64を軸支したベヤリングホルダ134の一側面に取付け座板体131の対向側面を嵌合させてボルト締結し、走行機体1にベヤリングホルダ134を介して走行油圧ポンプケース66の一端側を支持するように構成している。したがって、ベヤリングホルダ134と取付け座板体131の嵌合によって所定の組立精度が保たれた状態で、ベヤリングホルダ134に走行油圧ポンプケース66を固着でき、走行油圧ポンプケース66またはポンプ入力軸64の組付け誤差を低減でき、走行機体1に走行油圧ポンプケース66またはポンプ入力軸64を、少ない組立工数で高精度に組付けることができる。加えて、ポンプ入力軸64に対してプーリ軸64aを別体で構成する軸受構造に比べ、ベヤリングホルダ134に設けるベヤリング軸受133数を削減でき、ポンプ入力軸64の軸受構造を低コストに構成できる。
【0063】
図13に示す如く、走行機体1に設けるポンプ支持フレーム体141の上面に、走行油圧ポンプケース66他端側の下面を当接させ、ポンプ支持フレーム体141に走行油圧ポンプケース66を上載するように構成している。したがって、走行油圧ポンプケース66の締結ボルト135,136数を削減でき、走行機体1に対する走行油圧ポンプケース66の着脱作業性を向上できるものでありながら、ポンプ支持フレーム体141を設ける走行機体1側の加工コストも低減できる。
【0064】
図10、図11に示す如く、走行油圧ポンプ65の出力を制御する斜板制御バルブ122及び斜板制御シリンダ121を備え、斜板制御シリンダ121に供給する作動油の流量を調整するオリフィス124,125を設ける構造であって、斜板制御バルブ122のスプール123にオリフィス124,125を形成している。したがって、走行油圧ポンプ65と斜板制御バルブ122及び斜板制御シリンダ121をユニット構造に配置でき、斜板制御バルブ122及び斜板制御シリンダ121の組付け構造を簡略化できると共に、斜板制御油路の入力部で作動油の流量調整を行う構造に比べ、走行油圧ポンプ65の斜板制御が過敏になるのを防止できるのに加え、例えば、斜板制御油路の途中での油漏れを考慮して、斜板制御油圧力を低減しても、走行油圧ポンプ65の斜板制御が鈍感になるのを防止でき、走行油圧ポンプ65の斜板制御機能を容易に向上できる。
【符号の説明】
【0065】
1 走行機体
2 履帯(走行部)
7 エンジン
64 走行駆動用のポンプ入力軸
64a プーリ軸
65 走行油圧ポンプ
66 走行油圧ポンプケース
69 走行油圧モータ
121 斜板制御シリンダ
122 斜板制御バルブ
123 スプール
124 オリフィス
125 オリフィス
131 取付け座板体
134 ベヤリングホルダ
141 ポンプ支持フレーム体
230 走行出力ベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行機体を備え、前記走行機体に左右の走行部を装設すると共に、前記エンジンによって左右の走行油圧ポンプを作動させ、前記左右の走行油圧ポンプにて左右の走行油圧モータを作動させ、前記左右の走行油圧モータにて前記左右の走行部を駆動する作業車両において、
前記走行油圧ポンプのポンプ入力軸に、前記エンジンにベルト連結するプーリ軸を一体的に形成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記左右の走行油圧ポンプを走行油圧ポンプケースに内設し、前記走行油圧ポンプケースの一端側に取付け座板体を固着し、前記ポンプ入力軸を軸支したベヤリングホルダの一側面に前記取付け座板体の対向側面を嵌合させてボルト締結し、前記走行機体に前記ベヤリングホルダを介して前記走行油圧ポンプケースの一端側を支持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行機体に設けるポンプ支持フレーム体の上面に、前記走行油圧ポンプケース他端側の下面を当接させ、前記ポンプ支持フレーム体に前記走行油圧ポンプケースを上載するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−86540(P2013−86540A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225928(P2011−225928)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】