説明

作業車両

【課題】操縦座席に搭乗したオペレータの乗り心地を良好な状態に維持できるようにした作業車両を提供しようとするものである。
【解決手段】本願発明の作業車両は、エンジン8を搭載する走行機体11と、前記走行機体11の下部に設けられ且つ走行クローラ25を巻回支持するトラックフレーム17とを備えており、前記走行機体11にリンク機構を介して前記トラックフレーム17を前後揺動可能に取り付けている。そして、前記リンク機構を前後一対のリンク部材19,20にて構成し、前記走行機体11、前記前後一対のリンク部材19,20及び前記トラックフレーム17が四節リンク構造をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等を搭載した走行機体の後部に左右の走行クローラを装設するトラクタ等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタといった作業車両における走行機体の後部に、左右の走行クローラを装設すること、つまり、走行機体の前部に左右の前車輪を装設し、走行機体の後部に左右の走行クローラを装設することは、先行技術としての特許文献1〜3等に記載されている。
【0003】
先行技術は、走行機体の後車軸ケースに後車軸を軸支して、後車軸に駆動輪体を取付ける一方、前記後車軸ケースよりも下方の部位に前後方向に延びるトラックフレームを配設して、トラックフレームに走行クローラを装着した構造であって、トラックフレームの前後方向の略中程部を、前記後車軸ケース等の走行機体側に、前記後車軸より適宜距離だけ下方の部位に配設した1本の揺動支点軸にて回動自在に枢着し、トラックフレームをその前部及び後部が互いに逆方向に上下動するように構成している。そして、トラックフレームの前端側に設けた前従動輪体と、後端側に設けた後従動輪体と、前記駆動輪体とにわたって略三角形状に走行クローラを巻掛け、前記駆動輪体にて走行クローラを回転することによって、走行機体を前進移動又は後進移動させるという構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−45051号公報
【特許文献2】特開2006−96199号公報
【特許文献3】特開2004−217054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記先行技術は、前記走行機体の前部が上下動するようにピッチングするとき、地面に接地する走行クローラが、前記揺動支点軸を中心として、前上がりに傾斜するか或いは前下がりに傾斜するように回動するから、以下に述べるような問題がある。例えば、前進移動時、または後進移動時、圃場の畔などの凸部を乗越える場合、前記揺動支点軸を中心として走行クローラが前上がりまたは前下がりに傾斜し、前記走行クローラの接地面の前後方向の傾斜角度が大きくなりやすいから、前記走行機体の対地高さも変化しやすく、操縦座席に搭乗したオペレータの良好な乗り心地を維持できない等の問題がある。また、前記トラックフレームの走行機体への支持が、前記揺動支点軸による一点支持であるから、前記揺動支点軸部に荷重が集中し、大型化の妨げになっているばかりか、前記揺動支点軸部の変形等により作動不良が発生するおそれがある等の問題もある。
【0006】
本願発明は、これらの現状を検討して改善を施したトラクタ等の作業車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、エンジンを搭載する走行機体と、前記走行機体の下部に設けられ且つ走行クローラを巻回支持するトラックフレームとを備えており、前記走行機体にリンク機構を介して前記トラックフレームを前後揺動可能に取り付けている作業車両であって、前記リンク機構を前後一対のリンク部材にて構成し、前記走行機体、前記前後一対のリンク部材及び前記トラックフレームが四節リンク構造をなしているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記走行クローラの内周側に複数の芯金体を等間隔に備えており、前記走行クローラを周回駆動させる駆動輪体の外周側に、前記芯金体に係合する係止歯体と輪状部とを備えており、前記走行クローラの内周側にはゴムベルト体が設けられており、前記駆動輪体の前記輪状部が前記ゴムベルト体に当接することによって、前記走行クローラが周回駆動するように構成されているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の作業車両において、前記トラックフレームには、前記走行クローラが巻回される従動輪体を備えており、更に、前記従動輪体を支持する伸縮可能なアイドラホークと、前記走行クローラの内周側に前記従動輪体を付勢するテンションバネとを有しているというものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、エンジンを搭載する走行機体と、前記走行機体の下部に設けられ且つ走行クローラを巻回支持するトラックフレームとを備えており、前記走行機体にリンク機構を介して前記トラックフレームを前後揺動可能に取り付けている作業車両であって、前記リンク機構を前後一対のリンク部材にて構成し、前記走行機体、前記前後一対のリンク部材及び前記トラックフレームが四節リンク構造をなしているから、当該四節リンク構造の存在によって、例えば作業車両の畝跨ぎ作業における畝または背の高い作物から離間させて前記走行機体を支持することが可能になり、畝または背の高い作物等に対して十分なスペースを確保できる。しかも、畝または背の高い作物等に対して十分なスペースを確保できる構造でありながら、前記四節リンク構造の平行リンク近似動作によって、前記走行クローラの前後傾斜姿勢が大きく変化するのを防止できる。また、前記走行クローラの接地抵抗の大幅な変動等を防止でき、圃場の乱れや蛇行走行等のおそれを低減できる利点もある。
【0011】
請求項2の発明によると、前記走行クローラの内周側に複数の芯金体を等間隔に備えており、前記走行クローラを周回駆動させる駆動輪体の外周側に、前記芯金体に係合する係止歯体と輪状部とを備えており、前記走行クローラの内周側にはゴムベルト体が設けられており、前記駆動輪体の前記輪状部が前記ゴムベルト体に当接することによって、前記走行クローラが周回駆動するように構成されているから、前記駆動輪体の前記係止歯体と前記走行クローラの前記芯金体との係合だけでなく、前記駆動輪体の前記輪状部と前記ゴムベルト体との摩擦駆動によっても、前記駆動輪体の回転力を前記走行クローラに伝達できることになる。従って、前記駆動輪体の前記係止歯体と前記走行クローラの前記芯金体との係合による金属接触音を低減できる。即ち、前記走行クローラの駆動騒音を低減できる。
【0012】
請求項3の発明によると、前記トラックフレームには、前記走行クローラが巻回される従動輪体を備えており、更に、前記従動輪体を支持する伸縮可能なアイドラホークと、前記走行クローラの内周側に前記従動輪体を付勢するテンションバネとを有しているから、例えばテンションボルトを設ける簡単なテンション調節構造によって、前記走行クローラの張力を調節・維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示すトラクタの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】クローラ走行装置の側面拡大図である。
【図4】トラックフレーム部の側面図である。
【図5】クローラ走行装置の右後方視の分解斜視図である。
【図6】クローラ走行装置の左後方視の分解斜視図である。
【図7】トラックフレーム支持部の右後方視の分解斜視図である。
【図8】トラックフレーム支持部の左側視の分解斜視図である。
【図9】クローラ走行装置の後方視の断面説明図である。
【図10】トラックフレーム支持部の後方視の断面説明図である。
【図11】トラックフレーム支持部の拡大断面図である。
【図12】図11の分解説明図である。
【図13】転動輪部の後方視の拡大説明図である。
【図14】駆動輪体部の後方視の拡大断面図である。
【図15】駆動輪体部の部分拡大説明図である。
【図16】駆動輪体部の部分斜視図である。
【図17】駆動輪体部の分解説明図である。
【図18】走行クローラと駆動輪体部の部分拡大説明図である。
【図19】駆動輪体部の取付け変形例を示す要部拡大説明図である。
【図20】走行クローラの部分拡大断面図である。
【図21】走行クローラの変形例を示す要部拡大説明図である。
【図22】駆動輪体部の変形例を示す要部拡大説明図である。
【図23】走行クローラと駆動輪体部の変形例を示す要部拡大説明図である。
【図24】走行クローラと転動輪部の変形例を示す要部拡大説明図である。
【図25】駆動輪体における部分輪体の連結構造を示す要部説明図である。
【図26】走行クローラと駆動輪体の配置を示す要部説明図である。
【図27】転動輪部の軸受構造を示す要部拡大説明図である。
【図28】転動輪部の軸受構造の変形例を示す要部拡大説明図である。
【図29】転動輪部の軸受構造の変形例を示す要部拡大説明図である。
【図30】従動輪部の軸受構造を示す要部拡大説明図である。
【図31】前従動輪のテンション構造を示す要部断面側面図である。
【図32】前従動輪のテンション構造を示す要部断面背面図である。
【図33】図31の作動説明図である。
【図34】前従動輪のテンション構造の変形例を示す要部断面説明図である。
【図35】前従動輪のテンション構造の変形例を示す要部断面説明図である。
【図36】前従動輪のテンション構造の変形例を示す要部断面説明図である。
【図37】クローラガイド体の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は(b)のf−f視断面図、(g)は斜め上方から見た斜視図である。
【図38】トラックフレーム部の一部切り欠き側面図である。
【図39】従動輪体とクローラガイド体との位置関係を示す拡大平面図である。
【図40】標準仕様の走行クローラを示す後方視の断面説明図である。
【図41】オフセット仕様の走行クローラを示す後方視の断面説明図である。
【図42】幅狭仕様の走行クローラを示す後方視の断面説明図である。
【図43】前後のリンク部材の別例を説明する図であり、(a)は概略側面図、(b)は後方視の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、トラクタに適用した場合の図面に基づき、説明する。図1〜図4に示す如く、図中符号10は、トラクタを示す。トラクタ10は、走行機体11と、走行機体11の前部を支持する左右一対の前車輪12と、前記走行機体11の後部を支持する左右一対の後クローラ走行装置13とを備えている。前記走行機体11には、エンジン8を搭載すると共に、操縦座席9を設けている。
【0015】
図1〜図4に示す如く、前記走行機体11の後部にミッションケース40を搭載する。ミッションケース40の左右両側に左右の後車軸ケース14を設けている。走行機体11に後車軸ケース14を介して後クローラ走行装置13を着脱可能に取付ける。図9に示す如く、後車軸ケース14内に後車軸15の一端側を軸支し、その後車軸15の一端側に減速用ファイナルギヤ37を軸支する。後車軸ケース14から後車軸15の他端側を突出させ、その後車軸15の他端側に駆動輪体16を取付けている。一方、前記後車軸ケース14よりも下方に、前後方向に延設したトラックフレーム17を配設する。前記後車軸ケース14にフランジ部材18を着脱可能に締結固定する。前記後車軸15よりも前側に配設する前リンク部材19と、前記後車軸15よりも後側に配設する後リンク部材20とを備える。フランジ部材18に各リンク部材19,20を介してトラックフレーム17を前後揺動可能に連結している。すなわち、フランジ部材18(走行機体11とも言える)、前後一対のリンク部材19,20及びトラックフレーム17とは、四節リンク構造をなしている。
【0016】
図1〜図4に示す如く、前記トラックフレーム17の前端側にテンション調節機構22を介して前従動輪体21を取付ける。トラックフレーム17の後端側に後従動輪体23を支持軸24にて取付ける。前記駆動輪体16と、前記前従動輪体21と、前記後従動輪体23との三者には、履帯としての合成ゴム製の走行クローラ25を、略三角形状に巻掛けしている。前記駆動輪体16(後車軸15)を適宜速度で正回転又は逆回転させて、走行クローラ25を正回転又は逆回転駆動することによって、走行機体11が前進走行又は後退走行するように構成している。
【0017】
なお、複数の転動輪26及びクローラガイド体41を備える。前記トラックフレーム17に前記複数の転動輪26を回転自在に設けている。実施形態の転動輪26は、前後に三つ並べて配置されている。クローラガイド体41は、走行クローラ25の左右方向への外れ防止、及び、走行クローラ25に等間隔に埋設された複数の芯金体95(図18及び図20等参照)を押さえるためのものであり、トラックフレーム17に締結固定されている。前記走行クローラ25の内周面のうち前従動輪体21と後従動輪体23との間の内周面(走行クローラ25の接地側の内周面)に、複数の転動輪26及びクローラガイド体41を接触させる。クローラガイド体41は側面視逆T字状の舟形に形成されている。複数の転動輪26及びクローラガイド体41によって、走行クローラ25の接地側を着地支持するように構成している。
【0018】
図3、図4に示す如く、前記フランジ部材18に前後の上端枢着軸27,28を設ける。前記後車軸15と平行に前後の上端枢着軸27,28を延設する。前後の上端枢着軸27,28に、前リンク部材19及び後リンク部材20の上端側ボス部を回転自在に軸支する。前記トラックフレーム17に前後の下端枢着軸30,31を設ける。前リンク部材19は、その下端が前記トラックフレーム17に前下端枢着軸30にて回転自在に連結されている。前上端枢着軸27よりも前下端枢着軸30を前側に位置させ、前リンク部材19を前向きに傾斜させて支持している。
【0019】
また、図3、図4に示す如く、後リンク部材20は、その下端が前記トラックフレーム17に後下端枢着軸31にて回転自在に連結されている。後上端枢着軸28よりも後下端枢着軸31を後側に位置させ、後リンク部材20を後ろ向きに傾斜させて支持している。これにより、前後のリンク部材19,20は、前記トラクタ10における側面視(図3、図4)において、互いに下広がりのハ字状の配設になっている。なお、走行クローラ25は、前記トラクタ10における側面視(図3、図4)において、前記後車軸15を通る鉛直線から前従動輪体21までの距離Dfが、前記鉛直線から後従動輪体23までの距離Dbよりも大きい略三角形状に張設される。
【0020】
上記の構成により、トラクタ10を前進走行させた場合、走行クローラ25が地面から前進反力を受けることによって、走行機体11に対してトラックフレーム17が前方向に移動し、走行クローラ25が前上がり姿勢に傾斜する。即ち、前記トラックフレーム17が、前記走行機体11に対して前方向に移動するとき、上端枢着軸27を支点として水平面からの傾斜角度が小さくなるように、前リンク部材19が倒れる方向に回動する。また、上端枢着軸28を支点として水平面からの傾斜角度が大きくなるように、後リンク部材20が起立する方向に回動する。その結果、走行クローラ25が前上がりに傾斜して、前進移動する。
【0021】
一方、トラクタ10を後進走行させた場合、地面から後進反力を受けることによって、走行機体11に対してトラックフレーム17が後ろ方向に移動し、走行クローラ25が前下がり姿勢に傾斜する。即ち、前記トラックフレーム17が、前記走行機体11に対して後方向に移動するとき、前上端枢着軸27を支点として水平面からの傾斜角度が大きくなるように、前リンク部材19が起立する方向に回動する。また、後上端枢着軸28を支点として水平面からの傾斜角度が小さくなるように、後リンク部材20が倒れる方向に回動する。その結果、走行クローラ25が前下がりに傾斜して、後進移動する。
【0022】
なお、旋回内側の走行クローラ25の駆動を中断して、左方向または右方向に旋回移動する場合、前進走行の際には旋回内側の走行クローラ25が前下がりに傾斜し、後進走行の際には旋回内側の走行クローラ25が前上がりに傾斜する。
【0023】
前上端枢着軸27を支点とした前リンク部材19の前方回動と、後上端枢着軸28を支点とした後リンク部材20の後方回動とをそれぞれ規制するストッパとしての前後の規制ピン34,34a,35,35aをフランジ部材18に設けている。前上端枢着軸27を支点として前リンク部材19(後リンク部材20)の下端側が前方回動する範囲を前規制ピン34(前規制ピン34a)にて設定している。後上端枢着軸28を支点として後リンク部材20(前リンク部材19)の下端側が後方回動する範囲を後規制ピン35(後規制ピン35a)にて設定している。走行機体11に対する走行クローラ25の前後移動が、前後の規制ピン34,34a,35,35aにて制限されるように構成している。
【0024】
そして、前記走行機体11の前部が下がるようにピッチング(前傾動作)した場合、前リンク部材19は、前下端枢着軸30を支点として水平面からの傾斜角度が小さくなるように倒れる方向に回動する。一方、後リンク部材20は、前記トラックフレーム17に対して、後下端枢着軸31を支点として水平面からの傾斜角度が大きくなるように起立する方向に回動する。これにより、走行機体11に対して、走行クローラ25が前上がり姿勢に支持される。
【0025】
また、前記走行機体11の前部が上がるようにピッチング(後傾動作)した場合、前リンク部材19は、前下端枢着軸30を支点として水平面からの傾斜角度が大きくなるように起立する方向に回動する。一方、後リンク部材20は、後下端枢着軸31を支点として水平面からの傾斜角度が小さくなるように倒れる方向に回動する。これにより、走行機体11に対して、走行クローラ25が前下がり姿勢に支持される。
【0026】
ところで、フランジ部材18、前後一対のリンク部材19,20及びトラックフレーム17によって構成される四節リンク構造において、その一つの節である前記トラックフレーム17がその長手方向に運動するときにおける「瞬間中心」は、前リンク部材19の延長線と、後リンク部材20の延長線とが互いに交わる交点に位置している。前記トラックフレーム17は、この「瞬間中心」を中心としてその長手方向に運動する。
【0027】
この場合、前記前後のリンク部材19,20は、下広がりのハ字状に配設されていることにより、前記瞬間中心は、前記走行機体11が前下がりにピッチングしたときには、機体後方側に移動し、前記走行機体11が前上がりにピッチングしたときには、機体前方側に移動することになり、前記後車軸15の高さに近似した高さの位置に前記瞬間中心を保持することができる。これにより、前記走行機体11がピッチングする際に、トラックフレーム17に対して走行機体11が前後移動する距離を、先行技術の前後移動距離に比べ、大幅に縮小できる。
【0028】
さらに、図1、図2に示す如く、ロータリ耕耘爪2を有するロータリ耕耘作業機1を備える。前記走行機体11の後部から後方側にロワーリンク3及びトップリンク4(三点リンク機構)を突出し、ロワーリンク3及びトップリンク4にロータリ耕耘作業機1を装着する。前記走行機体11の後部(ミッションケース40上部)に油圧リフト機構5を設ける。油圧リフト機構5のリフトアーム6にリフトロッド7を介してロワーリンク3の前後中間部を連結する。油圧リフト機構5の操作にてロータリ耕耘作業機1を昇降動させる一方、ロータリ耕耘爪2にて圃場の耕土を耕耘するように構成している。なお、ロータリ耕耘作業機1に代えて、各種作業機をトラクタ10に装着できることは云うまでもない。
【0029】
次いで、図5〜図10を参照して、前記トラックフレーム17、リンク部材19,20、フランジ部材18の取付け構造を説明する。図8〜図10に示す如く、フランジ部材18は、鋼板製で平板形状の第1ブラケット体51と、鋼板製で平板形状の第2ブラケット体52と、鋼板製で平板形状の前後の第3ブラケット体53,54と、鋼板製で平板形状の前後中の横桟形ブラケット体55,56,57を有する。第1ブラケット体51と第2ブラケット体52は、同一形状に形成する。前後の第3ブラケット体53,54に前後の横桟形ブラケット体55,56をそれぞれ溶接固定している。
【0030】
そして、大径側の前後2本の規制ピン34,35の一端側を、第1ブラケット体51と第2ブラケット体52に片持ち状にボルト61締結する。第1ブラケット体51と第2ブラケット体52の対向する面に、各規制ピン34,35の他端側を突出させる。さらに、前後中の横桟形ブラケット体55,56,57の両端面を、第1ブラケット体51と第2ブラケット体52に両持ち状にボルト62締結する。また、小径側の前後2本の規制ピン34a,35aの両端ネジ部を、第1ブラケット体51と第2ブラケット体52に両持ち状にナット63締結する。
【0031】
また、前後のリンク部材19,20の上端側ボス部に前後の上端枢着軸27,28を貫通させた状態で、前後の上端枢着軸27,28の両端部を、第1ブラケット体51と第2ブラケット体52に軸押え板体64を介して両持ち状にボルト65締結する。なお、軸押え板体64をナット63締結し、軸押え板体64の軸心回りの回動を防止している。
【0032】
一方、前記第1ブラケット体51に座板体66を溶接固定する。第1ブラケット体51と座板体66を、後車軸ケース14にそれぞれボルト67,68締結する。また、後車軸ケース14に前後の第3ブラケット体53,54をそれぞれボルト69,70締結する。第1ブラケット体51と、第3ブラケット体53,54の間に、後車軸ケース14を挟持状に着脱可能に固着させる。組立作業において、第1ブラケット体51に第2ブラケット体52を固着して、フランジ部材18に前後のリンク部材19,20を設けた状態にユニット構成する。その後、後車軸ケース14の底面側に、ユニット構造のフランジ部材18を、後車軸ケース14の下方側から当接させて、第1ブラケット体51と座板体66と第3ブラケット体53,54をボルト67,68,69,70締結し、後車軸ケース14にフランジ部材18を介して前後のリンク部材19,20を組付けるように構成している。
【0033】
さらに、前記座板体66に振れ止めブラケット体44を溶接固定する。耕耘作業機1(左右のロワーリンク3)が、左右方向に多少の揺動を許容した状態で、必要以上に左右に揺動しないように、スタビライザとしての左右のターンバックル式チェックチェン体45を設ける。ロワーリンク3の前後幅中間にチェックチェン体45の一端側をピン46連結し、振れ止めブラケット体44にチェックチェン体45の他端側を着脱可能にピン47連結している。
【0034】
次いで、図4、図9〜図13を参照して、前記トラックフレーム17とリンク部材19,20の連結構造を説明する。図11、図12に示す如く、前記下端枢着軸30,31の一端側の機体内側軸部76は、前記リンク部材19,20の下端側ボス部にすべり軸受メタル71,72を介して回動可能に軸支する。前記リンク部材19,20の下端側ボス部から機体外側方に向けて突出させる前記下端枢着軸30,31の他端側(機体外側)に、大径軸部73と、先細り形状のテ―パ部74と、小径軸部75を設ける。大径軸部73にテ―パ部74を介して小径軸部75が連接される。前記下端枢着軸30,31の他端側の端面にボルト孔76を開設する。なお、大径軸部73の外径に比べ、機体内側軸部76の外径を大きく形成している。
【0035】
図11、図12に示す如く、前後方向に長尺な四角柱状のトラックフレーム17の上面に軸受筒体77を溶接固定している。前記下端枢着軸30,31の大径軸部73を内挿する大径孔78と、下端枢着軸30,31の小径軸部75を内挿する小径孔79と、小径孔79に大径孔78を連通するテ―パ孔80によって軸受筒体77の軸孔81を形成する。そして、前記下端枢着軸30,31の他端側(機体外側)に、スラストワッシャ82を被嵌させ、軸受筒体77を被嵌させるように構成している。
【0036】
上記の構成により、大径孔78側から軸孔81内に、小径軸部75を先頭にして、リンク部材19,20の下端側ボス部から突出した下端枢着軸30,31の他端側を挿入させる。小径孔79側の軸受筒体77端面に軸押え板体64を当接させ、小径孔79内にボルト65の先端を挿入し、下端枢着軸30,31端面のボルト孔76にボルト65を螺着し、小径孔79内に小径軸部75を圧入し、大径孔78内に大径軸部73を圧入し、トラックフレーム17上面の軸受筒体77に下端枢着軸30,31の他端側を固着する。
【0037】
図1、図4、図9〜図13に示す如く、エンジン8を搭載する走行機体11と、走行機体11の前部下側に設ける左右の前車輪12と、走行機体11の後部下側に設けるトラックフレーム17と、トラックフレーム17に装着する左右の走行クローラ25とを備え、走行クローラ25に回転力を伝達する後車軸15と、走行機体11にトラックフレーム17を揺動可能に支持する揺動支点軸としての前後の上端枢着軸27,28とを、離間させて設ける作業車両において、後車軸15が軸支されるアクスルケースとしての後車軸ケース14の直下に前後の上端枢着軸27,28を配置し、前後の上端枢着軸27,28に設ける前リンク部材19及び後リンク部材20を介して、後車軸ケース14にトラックフレーム17を連結している。したがって、例えば、前進移動時、または後進移動時、圃場の畔などの凸部を乗越える場合、前後の上端枢着軸27,28を中心として走行クローラ25が前上がりまたは前下がりに傾斜しても、走行クローラ25の接地面の前後方向の傾斜角度が従来よりも小さくなる。即ち、走行機体11の対地高さが従来よりも変化しにくく、操縦座席9に搭乗したオペレータの乗り心地を良好な状態に維持できる。
【0038】
図4、図9〜図13に示す如く、前後の上端枢着軸27,28と前後の下端枢着軸30,31とによって揺動支点軸を形成し、後車軸ケース14に前後の上端枢着軸27,28を設け、トラックフレーム17に前後の下端枢着軸30,31を設け、前記各枢着軸27,28,30,31に前後のリンク部材20,21の上下端部をそれぞれ連結している。したがって、トラックフレーム17の走行機体11への支持荷重が大きくても、前後の上端枢着軸27,28及び前後の下端枢着軸30,31のそれぞれの支持荷重を低減でき、作業車両の大型化を簡単に達成できる。また、前記各枢着軸27,28,30,31部の変形等による作動不良の発生などを低減でき、耐荷重または耐久性なども向上できる。
【0039】
図9〜図13に示す如く、後車軸ケース14の機内側面と機外側面に、機内側支点体としての第1ブラケット体51と機外側支点体としての第2ブラケット体52を設け、第1ブラケット体51と第2ブラケット体52の間に前後の上端枢着軸27,28をそれぞれ挟持させ、走行機体11に耕耘作業機1を支持するためのリンク機構としてのロワーリンク3の構成部品(チェックチェン体45)よりも機外側方に、前後の上端枢着軸27,28または前後のリンク部材19,20をそれぞれ配置している。したがって、後上端枢着軸28または後リンク部材19,20にて制限されることなく、ロワーリンク3を昇降動できるものでありながら、上端枢着軸27,28の支持剛性を簡単に向上できる。また、上端枢着軸27,28の支持構造を簡略化でき、製造コストを低減できる。
【0040】
図10に示す如く、走行クローラ25の左右幅内でトラックフレーム17に前後の下端枢着軸30,31を設け、トラックフレーム17側に前後のリンク部材19,20の下端側をそれぞれオフセットさせるように構成している。したがって、走行クローラ25の左右幅から下端枢着軸30,31またはリンク部材19,20を殆ど突出させることがなく、下端枢着軸30,31またはリンク部材19,20を設置できる。したがって、例えばトラクタ10の畝跨ぎ作業における畝Gまたは背の高い作物から離間させて、前後の下端枢着軸30,31または前後のリンク部材19,20を支持でき、畝Gまたは背の高い作物などに対して十分なスペースを確保できる。
【0041】
図1、図4、図11に示す如く、エンジン8を搭載する走行機体11と、走行機体11の前部下側に設ける左右の前車輪12と、走行機体11の後部下側に設けるトラックフレーム17と、トラックフレーム17に装着する左右の走行クローラ25と、走行クローラ25に回転力を伝達する後車軸15と、トラックフレーム17に設ける複数の転動輪26とを備え、複数の転動輪26を介して走行クローラ25の接地側を支持する作業車両において、後車軸15の直下に設ける2本の上の枢着軸としての前上端枢着軸27及び後上端枢着軸28と、トラックフレーム17に設ける2本の下の枢着軸としての前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の間に2本のリンク部材19,20を連結し、後車軸15の前方と後方に2本の上の前上端枢着軸27及び後上端枢着軸28を振分けて配置し、トラックフレーム17上面側のうち複数の転動輪26の間の上面側に2本の下の前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の一方を配置している。したがって、複数の転動輪26の間に設ける前下端枢着軸30の支持高さを低くできる。上下の前上端枢着軸27及び前下端枢着軸30の軸受構造を低コスト化または軽量化できるものでありながら、走行クローラ25の接地反力に対して、前下端枢着軸30の軸受構造を強度的に有利に構成できる。また、リンク部材19のボス体長さを簡単に確保でき、汎用性の高いブッシュを使用して、前下端枢着軸30に前リンク部材19のボス体を軸支できる。
【0042】
図4、図11に示す如く、トラックフレーム17に後従動輪体23を介して走行クローラ25の後部接地側を支持する構造であって、後従動輪体23に隣接する転動輪26と後従動輪体23の間で、トラックフレーム17上面側に2本の前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の他方を配置している。したがって、後従動輪体23に隣接する転動輪26と後従動輪体23の間に設ける後下端枢着軸31の支持高さを低くできる。走行クローラ25の接地反力に対して、後下端枢着軸31の軸受構造を強度的に有利に構成できる。また、リンク部材19,20のボス体長さを簡単に確保でき、汎用性の高いブッシュを使用して、後下端枢着軸31に後リンク部材20のボス体を軸支できる。
【0043】
図4に示す如く、前記2本のリンク部材19,20を機体側面視でハの字状に配置し、2本のリンク部材19,20の上端側の間隔よりも、2本のリンク部材19,20の下端側の間隔が大きくなるように構成している。したがって、従来の単一支点構造に比べ、走行クローラ25から走行機体11側に向けて突出させる前記2本のリンク部材19,20の出代を少なくすることができ、前記2本のリンク19,20部材が揺動するときに、2本のリンク部材19,20に付着した泥土が周辺の構成部品に干渉する等の不具合の発生を容易に低減できる。
【0044】
図4、図11に示す如く、走行クローラ25の前進側の駆動合力線Xの近傍に前上端枢着軸27及び後上端枢着軸28を配置し、機体前側の上の枢着軸27を前記駆動合力線Xよりも下方に配置し、トラックフレーム17の揺動軌跡の中心Yが前記駆動合力線Xよりも下方になるように構成している。したがって、走行クローラ25の前進側の駆動力に対して容易に変位しないようにリンク部材19,20を支持でき、転動反力に抗して前記走行クローラ25を路面に追従させることができ、発進または停止に際して走行機体11の前後傾動を低減でき、安定した姿勢で走行機体11を移動できる。
【0045】
図11、図12に示す如く、2段の段付き軸形状に前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31を形成し、前記トラックフレーム17に設ける下軸受体としての軸受筒体77に、ボルト65の締結にて前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の2段の段付き軸部(下端枢着軸の大径軸部73、下端枢着軸の小径軸部75)を圧入させるように構成している。したがって、前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の先端側を先細りに形成して、当該先細り部のガイド作用にて前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の組付け作業性を向上できる。例えば、打込みまたはプレス等によって前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31を組込む必要がない。また、前記リンク部材19,20のボス体内孔に前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の2段の段部をそれぞれ圧着させて、前下端枢着軸30及び後下端枢着軸31の軸強度を維持できる。
【0046】
上記の説明並びに図3〜図13から明らかなように、エンジン8を搭載する走行機体11と、前記走行機体11の下部に設けられ且つ走行クローラ25を巻回支持するトラックフレーム17とを備えており、前記走行機体11にリンク機構を介して前記トラックフレーム17を前後揺動可能に取り付けている作業車両であって、前記リンク機構を前後一対のリンク部材19,20にて構成し、前記走行機体11、前記前後一対のリンク部材19,20及び前記トラックフレーム17が四節リンク構造をなしているから、当該四節リンク構造の存在によって、例えばトラクタ10の畝跨ぎ作業における畝Gまたは背の高い作物から離間させて前記走行機体11を支持することが可能になり、畝Gまたは背の高い作物等に対して十分なスペースを確保できる。しかも、畝Gまたは背の高い作物等に対して十分なスペースを確保できる構造でありながら、前記四節リンク構造の平行リンク近似動作によって、前記走行クローラ25の前後傾斜姿勢が大きく変化するのを防止できる。また、前記走行クローラ25の接地抵抗の大幅な変動等を防止でき、圃場の乱れや蛇行走行等のおそれを低減できる利点もある。
【0047】
次いで、図14〜図19を参照して、走行クローラ25と駆動輪体16との動力伝達構造を説明する。図14〜図17に示す如く、後車軸ケース14から外向きに突出させた後車軸15端部の円板状取付け部15aにドーナツ形状の板金製リム体86の内孔縁側をボルト87締結する。リム体86の外周縁側にドーナツ形状の駆動輪体16の内孔縁側をボルト88締結する。駆動輪体16は、輪状のスプロケット歯底部89と、スプロケット歯底部89の両側から放射線方向に突出させる係止歯体としての二股状の一対のスプロケット歯体90とを有する。スプロケット歯底部89は駆動輪体16の輪状部に相当するものである。スプロケット歯底部89の全域に複数組のスプロケット歯体90を等間隔に設けている。即ち、駆動輪体16の全外周面にスプロケット歯底部89が無端状に形成される一方、スプロケット歯底部89の両側縁から二股状の一対のスプロケット歯体90が外向き放射状に突出し、駆動輪体16の全外周面に複数組のスプロケット歯体90が等間隔に配置される。
【0048】
また、ドーナツ形状の鉄合金製駆動輪体16は、4体の部分輪体16aに分割して形成する。同一円周の4分の1の大きさに1体の部分輪体16aの大きさを形成している。放射線方向の端面16bを付き合わせて4体の部分輪体16aを輪形に結合し、4体の部分輪体16aを同一円周に配置し、駆動輪体16を形成する。リム体86に対して4体の部分輪体16aを独立的に着脱し、4体の部分輪体16aのいずれか1つを交換可能に構成している。即ち、組立作業などにおいて、4体の部分輪体16aを独立して扱えるから、単一部品(1体の部分輪体16a)を軽量化して簡単に持ち運んで組付けることができる。
【0049】
さらに、図15、図18に示す如く、無端帯状の走行クローラ25は、外周面側に多数のラグ25aを形成した合成ゴム製クローラ本体94と、クローラ本体94に等間隔に埋設した複数の芯金体95とからなる。芯金体95は、スプロケット歯体90を歯合させる一対の芯金爪部95aと、各芯金爪部95aを連結する芯金胴部95bと、芯金胴部95bの両端側から左右方向に延長させる左右の翼片部95cとを有する。クローラ本体94の内周面側の全域に複数組の芯金爪部95aを等間隔に突設している。なお、クローラ本体94の構成材料である合成ゴムにて、芯金体95の全体(芯金爪部95aを含む)が被覆されている。
【0050】
また、クローラ本体94の内周面のうち、無端帯の延長方向に隣接する各芯金爪部95a間の内周面に、平ベルト状接触凸部94aを一体的に形成する。クローラ本体94の内周面側の全域に複数の接触凸部94aを等間隔に突設する。なお、各接触凸部94aの間に、それらを連結する内周凸面部94bが形成されている。走行クローラ25の内周側に突出させる接触凸部94aの高さよりも、内周凸面部94bの高さを低く形成する。一対の芯金爪部95aの内側面と接触凸部94aまたは内周凸面部94bとの当接にて、走行クローラ25の横ずれを防止できる。また、内周凸面部94bの連結にて、走行クローラ25内周面のゴム層を層厚に形成でき、接触凸部94aが補強され、走行クローラ25内周側(接触凸部94aなどのゴム層)が剥離するのを防止できる。
【0051】
即ち、図15に示す如く、駆動輪体16に走行クローラ25を巻装した場合、プーリ形状に形成したスプロケット歯底部89に接触凸部94aがゴム接触にて圧接され、スプロケット歯底部89と接触凸部94a間の摩擦にて、駆動輪体16の低トルク回転力が走行クローラ25側に伝達される。前記ゴム接触にて駆動騒音を低減できる。また、無端帯の延長方向に隣接する各芯金爪部95a間にスプロケット歯体90が嵌り込み、スプロケット歯体90が芯金爪部95aに金属接触にて当接し、スプロケット歯体90と芯金爪部95aの噛み合いにて、駆動輪体16の高トルク回転力が走行クローラ25側に伝達される。前記金属接触にて駆動損失を低減でき、かつ歯とび(空転)等の発生を防止できる。
【0052】
また、図18に示す如く、駆動輪体16のスプロケット歯底部89の断面端面形状を台形状に形成している。スプロケット歯底部89の台形内周側幅aと芯金体95の爪部95aの根元側内幅bの差(b−a)よりも、スプロケット歯底部89の台形外周側幅cと芯金体95の爪部95aの先端側内幅dの差(d−c)が大きくなるように構成している。
【0053】
なお、スプロケット歯底部89の台形外周側幅cと芯金体95の爪部95aの先端側内幅dの差(d−c)を最も大きく形成し、その差(d−c)に比べ、スプロケット歯底部89の台形内周側幅aと芯金体95の爪部95aの先端側内幅dの差(d−a)を小さく形成し、スプロケット歯底部89の台形内周側幅aと芯金体95の爪部95aの根元側内幅bの差(b−a)をさらに小さく形成している。
【0054】
図1、図14〜図16、図18に示す如く、エンジン8を搭載する走行機体11と、走行機体11の下側に設けるトラックフレーム17と、トラックフレーム17に駆動輪体16及び従動輪体21,23を介して装着する左右の走行クローラ25とを備え、駆動輪体16に歯合させる複数の芯金体95を走行クローラ25に設ける作業車両において、走行クローラ25のうち左右幅の中央部にゴムベルト体としての接触凸部94aを設け、駆動輪体16の輪状部としてのスプロケット歯底部89と従動輪体21,23の輪状部が接触凸部94aに当接して、走行クローラ25を回転するように構成している。したがって、軽負荷時、駆動輪体16のスプロケット歯底部89と接触凸部94aの摩擦駆動にて、駆動輪体16の回転力が走行クローラ25に伝達される。一方、重負荷時、芯金体95と前記駆動輪体16の歯体(スプロケット歯体90)の金属接触にて、駆動輪体16の回転力が前記走行クローラ25に伝達される。即ち、軽負荷時の駆動騒音を低減できるものでありながら、たわみ等による駆動損失を低減でき、重負荷時の歯とびを防止できる。さらに、従動輪体21,23が接触凸部94a上を常に転動して、従動輪体21,23から発生する金属接触音を低減できる。
【0055】
図15、図18に示す如く、走行クローラ25のうち左右幅の中央部にゴムベルト体としての接触凸部94aを設け、走行クローラ25の内周面に接触凸部94aを一体的に形成し、駆動輪体16の輪状部としてのスプロケット歯底部89と従動輪体21,23の輪状部としての外周面が接触凸部94a上にて回転するように構成している。したがって、軽負荷時、駆動輪体16のスプロケット歯底部89と接触凸部94aの摩擦駆動にて、駆動輪体16の回転力が走行クローラ25に伝達される。即ち、軽負荷時の駆動騒音を低減できる。駆動輪体16または芯金体95の摩耗を防止できる。一方、重負荷時、芯金体95と駆動輪体16の歯の金属接触にて、駆動輪体16の回転力が走行クローラ25に伝達される。即ち、走行クローラ25のたわみまたはへたりによる駆動損失を低減できる。駆動輪体16の歯とびを防止できる。さらに、従動輪体21,23が接触凸部94a上を常に転動することにより、従動輪体21,23部から発生する金属接触音を低減できる。
【0056】
図15、図18に示す如く、前記駆動輪体16のうち外周部の両側に左右のスプロケット歯体90を突出させ、左右のスプロケット歯体90の間にスプロケット歯底部89を形成し、左右のスプロケット歯体90に前記芯金体95を金属接触させ、左右のスプロケット歯体90の内側面とスプロケット歯底部89とに前記接触凸部94aを接触させるように構成している。したがって、走行クローラ25に横滑り力が作用したときにも、左右のスプロケット歯体90の内側面と接触凸部94aとの接触によって、駆動輪体16から走行クローラ25が外れるのを簡単に防止できる。駆動輪体16の外周全体に形成されるスプロケット歯底部89と走行クローラ25の接触凸部94aとの接触によって、スプロケット歯底部89と接触凸部94aとの摩擦面を広く形成でき、スプロケット歯底部89と接触凸部94aとの接触面圧を低下させることができ、スプロケット歯底部89または接触凸部94aの摩耗を抑制できる。
【0057】
図15、図18に示す如く、前記駆動輪体16のスプロケット歯底部89端面を台形状に形成し、スプロケット歯底部89の台形内周側幅aと前記芯金体95の爪部根元側の内幅bの差(a−b)よりも、スプロケット歯底部89の台形外周側幅cと前記芯金体の爪部先端側の内幅dの差(c−d)が大きくなるように構成している。したがって、前記走行クローラ25に横滑り力が作用したときにも、前記駆動輪体16から前記走行クローラ25が外れるのを簡単に防止できる。
【0058】
次に、図17、図19、図25を参照して駆動輪体16の構造を説明する。図17は走行機体11の左側に駆動輪体16を配置する説明図、図19は走行機体11の右側に駆動輪体16を配置する説明図であり、後車軸15に平板状のリム体86を締結する構造であって、リム体86に貫通孔91を形成し、貫通孔91にボルト88を貫通させる一方、駆動輪体16にネジ孔92を形成し、ネジ孔92に前記ボルト88を螺着し、リム体86に駆動輪体16を締結している。
【0059】
上記の構成により、一般的に、前進移動時間が後進よりも多いトラクタ10では、駆動輪体16のスプロケット歯体90のうち、前進移動にて芯金爪部95aに当接する前記歯体90の前進側面が後進側面よりも多く摩耗する。例えば、スプロケット歯体90の前進側面が摩耗した場合、図17のように走行機体11の左側に配置していた駆動輪体16を、図19のように走行機体11の右側に配置することにより、図17におけるスプロケット歯体90の前進側面が、図19では後進側面になり、図17における後進側面が図19では前進側面になる。即ち、走行機体11の左側と右側の各駆動輪体16を入れ換えることによって、摩耗が少ない後進側面を前進側面として、左右の各駆動輪体16を使用でき、駆動輪体16の耐用時間を長くして、部品交換コストを低減できる。また、走行機体11の左側と右側とで、リム体86に対する駆動輪体16の当たり面(締結面)が同一面になるから、駆動輪体16の当たり面(一側面)だけをフライス加工すればよく、加工コストも低減できる。
【0060】
さらに、図25に示す如く、4体の部分輪体16aに分割して駆動輪体16を形成し、放射線方向の端面16bを付き合わせて4体の部分輪体16aを輪形に結合して同一円周に配置する構造において、駆動輪体16両端側の各端面16bに付合せ段部16cをそれぞれ形成する。肉薄に形成する一方の端面16bの付合せ段部16cに貫通孔16dを開設する。肉厚に形成する他方の端面16bの付合せ段部16cにネジ孔16eを設ける。
【0061】
即ち、前記リム体86の一側面に部分輪体16aを当接させ、前記リム体86及び部分輪体16aに、貫通孔91及び貫通孔16dを介して、前記リム体86の他側面側からボルト88を挿入させ、次いで隣接させる部分輪体16aのネジ孔16eにボルト88を挿入させる。隣り合う各部分輪体16aの付合せ段部16cを合体させ、リム体86の一側面に、隣り合う各部分輪体16aを前記リム体86に締結する。そのため、各部分輪体16aの付合せ段部16cの合体にて、各部分輪体16aの固定位置を簡単に決定できる。また、作業者は、一方の手で部分輪体16aを支持しながら、もう一方の手で工具を握り、ボルト88を螺着操作できる。
【0062】
次いで、図9、図22〜図24、図26を参照して後クローラ走行装置13の構造を説明する。図26に示す如く、駆動輪体16及び従動輪体21,23及び転動輪26を介して前記トラックフレーム17に前記走行クローラ25を張設するもので、駆動輪体16の左右幅中心線Pに対して、機体内側方に一定幅Sだけ、従動輪体21,23及び転動輪26の左右幅中心線Qをオフセットさせている。即ち、走行クローラ25の芯金爪部95aに対して、駆動輪体16はこの歯底部89が外側で接触する位置に、従動輪体21,23及び転動輪26はこの内側で接触する位置に、それぞれオフセットさせている。
【0063】
上記の構成により、従動輪体21,23及び転動輪26にて走行クローラ25の接地側を支持することによって、走行クローラ25の旋回外側方向への横滑り力(外向きの力)が駆動輪体16に作用するのを阻止する。走行クローラ25に駆動輪体16が適正に歯合される。例えば、旋回外側方向への横滑り力(外向きの力)が発生し易い走行状態でも、または走行駆動負荷が高負荷の状態下で高速移動するときであっても、駆動輪体16から走行クローラ25が離脱するのを防止できる。
【0064】
図22に示す如く、駆動輪体16の歯底部89のうち、軸心線方向に切断した歯底部89端面の形状を、駆動輪体16の左右幅中心に対して非対称の台形状に形成するもので、駆動輪体16の歯底部89は、駆動輪体の左右幅中心線Pに対して、その端面の機外側幅Tよりも、その端面の機内側幅Uを大きく形成している。したがって、従動輪体21,23及び転動輪26に対して、駆動輪体16を機外側方に簡単にオフセットできるものでありながら、駆動輪体16を軽量に形成できる。
【0065】
図23に示す如く、走行クローラ25の内周面のうち、駆動輪体16の歯底部89が通過する面、または従動輪体21,23が通過する面を、機体外側が低く機体内側が高い傾斜面に形成もので、走行クローラ25が機体外側方に移動する横滑り力に対して、前記傾斜面によって走行クローラ25のテンションを増大させる。即ち、走行クローラ25の横滑り力(外向きの力)に対して、走行クローラ25を機体内側方に移動する反力(内向きの力)を発生させるもので、走行クローラ25の離脱を防止し、または走行クローラ25の偏摩耗を抑制する。なお、駆動輪体16の歯底部89が通過する面を、機体外側が高く機体内側が低い傾斜面に、走行クローラ25の内周面を形成してもよい。走行クローラ25の内周面と同様に、歯底部89も傾斜させてもよい。
【0066】
図24に示す如く、転動輪26の周面のうち内側が当接する前記走行クローラ25の内周面の一部を凸状内周面25bに形成するもので、凸状内周面25bは、走行クローラ25の内周側に向けて芯金爪部95a位置の部分を最も突出させるように形成する。走行クローラ25の両側縁方向に向けて凸状内周面25bが傾斜するように構成している。即ち、走行クローラ25の接地側において、凸状内周面25bは、芯金爪部95aに近い位置の部分が最も高くなり、走行クローラ25の両側縁方向に向けて低くなる傾斜面に形成している。
【0067】
上記の構成により、走行クローラ25が機体外側方または機体内側方にずれる横滑り力に対して、走行クローラ25を所定位置に戻す力が発生し、走行クローラ25または転動輪26の偏摩耗を抑制する。即ち、走行クローラ25の凸状内周面25bによって、転動輪26の左右の輪体に外向きの力がそれぞれ加えられるから、走行クローラ25と転動輪26が中心位置で釣り合うように、転動輪26に走行クローラ25が支持される。即ち、転動輪26と芯金爪部95aが接触するのを低減し、その接触によって転動輪26または芯金爪部95aが摩耗するのを防止でき、かつそれらの金属接触音の発生を抑制できる。
【0068】
図1、図9、図26に示す如く、エンジン8を搭載する走行機体11と、走行機体11の下側に設けるトラックフレーム17と、トラックフレーム17に装着する走行クローラ25とを備え、駆動輪体16及び前従動輪体21及び後従動輪体23及び転動輪26を介してトラックフレーム17に走行クローラ25を張設する作業車両において、駆動輪体16の左右幅中心線Pに対して、機体内側方に一定幅Sだけ、従動輪体21,23及び転動輪26の左右幅中心線Qをオフセットさせている。したがって、旋回外側方向の力(横滑り力)が駆動輪体16に作用するのを簡単に阻止できる。即ち、駆動輪体16に対して、前従動輪体21及び後従動輪体23及び転動輪26を機内側方にオフセットして、前従動輪体21及び後従動輪体23及び転動輪26にて走行クローラ25の接地側を支持することによって、走行クローラ25に駆動輪体16を適正に歯合させ、走行駆動負荷が増大するのを防止できる。例えば、走行機体11が旋回するときに、旋回外側方向の力(横滑り力)が発生し易い場合でも、または走行駆動負荷が高負荷で高速移動するときであっても、駆動輪体16から走行クローラ25が離脱するのを防止できる。
【0069】
図26に示す如く、前記走行クローラ25の芯金爪部95aに対して、前記駆動輪体16はこのスプロケット歯底部89が外側で接触する位置に、前従動輪体21及び後従動輪体23及び転動輪26はこの内側で接触する位置に、それぞれオフセットさせている。したがって、駆動輪体16または前従動輪体21及び後従動輪体23または転動輪26が、走行クローラ25の芯金爪部95aに当接する力を軽減でき、芯金爪部95a、または駆動輪体16または前従動輪体21及び後従動輪体23または転動輪26の偏摩耗を低減できる。
【0070】
図22に示す如く、駆動輪体16のスプロケット歯底部89のうち、軸心線方向に切断した歯底部89端面の形状を、駆動輪体16の左右幅中心に対して非対称の台形状に形成している。したがって、前記歯底部89端面の機体外側よりも機体内側方を広く形成して、駆動輪体16を軽量化し、かつ走行クローラ25と駆動輪体16の歯合を適正に維持できるものでありながら、前従動輪体21及び後従動輪体23及び転動輪26に対して、駆動輪体16を機外側方に簡単にオフセットできる。また、前記歯底部89端面を台形状に形成することによって、例えば四角形状などに比べ、駆動輪体16の製造コストまたは自重を低減できる。
【0071】
図23に示す如く、走行クローラ25の内周面のうち、駆動輪体16の歯底部89が通過する面、または前従動輪体21及び後従動輪体23が通過する面を、機体外側が低く機体内側が高い傾斜面に形成している。したがって、走行クローラ25が機体外側方に移動する横滑り力に対して、前記傾斜面によって前記走行クローラ25のテンションを増大させることができる。即ち、走行クローラ25の横滑り力に対して、走行クローラ25を機体内側方に移動する反力が発生して、走行クローラ25の離脱を防止でき、または走行クローラ25の偏摩耗を簡単に抑制できる。
【0072】
図24に示す如く、転動輪26の周面のうち内側が当接する走行クローラ25の内周面の一部を凸状内周面25bにて凸状に形成している。したがって、走行クローラ25が機体外側方または機体内側方にずれる横滑り力に対して、走行クローラ25を所定位置に戻す力を発生させることができ、走行クローラ25または転動輪26の偏摩耗を簡単に抑制できる。
【0073】
さらに、図20〜図21に示す如く、クローラ本体94の内周面のうち、無端帯の左右幅方向に隣接する各芯金爪部95a間の内周面に、内周凸面部94bが形成されている。転動輪26の通過面(凸状内周面25b)に対する芯金爪部95aの高さ寸法H1に比べ、内周凸面部94bに対する芯金爪部95aの高さ寸法H2を大きく形成する。無端帯の左右幅方向に隣接する各芯金爪部95a間で、内周凸面部94bの形成にてクローラ本体94のゴム部分を隆起させている。そのため、前従動輪体21や後従動輪体23が内周凸面部94b上を通過でき、走行クローラ25の駆動に伴う振動または騒音を低減できる。
【0074】
一方、転動輪26の通過面(凸状内周面25b)と、芯金体95の翼片部95c根元部分の上面との距離、即ち転動輪26の通過面部分のクローラ本体94の厚み寸法H3に比べ、無端帯の左右幅方向に隣接する各芯金爪部95aの間(芯金胴部95b上面側)のクローラ本体94の厚み寸法H4を大きく形成する。そのため、クローラ本体94の左右幅中央部と芯金爪部95a上部との高さの差を確保でき、走行クローラ25に横滑り力や傾き力が作用しても、走行クローラ25の離脱を阻止できる。
【0075】
さらに、走行クローラ25の外周側に芯金胴部95bを突出させ、クローラ本体94のうち芯金胴部95bの両側方に補強用のスチールコード96を埋設している。クローラ本体94の厚みを必要最低限におさえるように構成する。また、芯金体95は、翼片部95cの幅H6に比べ、芯金胴部95bの幅H5を広く形成する。そのため、芯金体95の強度を確保できると共に、例えば、芯金胴部95bの表面に凹部を形成して、クローラ本体94とのゴム接着面積を大きくすることによって、芯金体95に対してクローラ本体94が剥離するのを低減して、クローラ本体94と芯金体95の間に泥水が侵入するのを低減できる。
【0076】
上記の説明並びに図18、図23及び図26から明らかなように、前記走行クローラ25の内周側に複数の芯金体95を等間隔に備えており、前記走行クローラ25を周回駆動させる駆動輪体16の外周側に、前記芯金体95に係合するスプロケット歯体90(係止歯体)とスプロケット歯底部89(輪状部)とを備えており、前記走行クローラ25の内周側には接触凸部94a(ゴムベルト体)が設けられており、前記駆動輪体16の前記スプロケット歯底部89が前記接触凸部94aに当接することによって、前記走行クローラ25が周回駆動するように構成されているから、前記駆動輪体16の前記スプロケット歯体90と前記走行クローラ25の前記芯金体95との係合だけでなく、前記駆動輪体16の前記スプロケット歯底部89と前記接触凸部94aとの摩擦駆動によっても、前記駆動輪体16の回転力を前記走行クローラ25に伝達できることになる。従って、前記駆動輪体16の前記スプロケット歯体90と前記走行クローラ25の前記芯金体95との係合による金属接触音を低減できる。即ち、前記走行クローラ25の駆動騒音を低減できる。
【0077】
次いで、図24、図27〜図36を参照して、左右一対のトラックローラ26aを有する転動輪26の支持構造を説明する。図24、図27に示す如く、トラックフレーム17の下面に、転動輪支持体としてのローラ支持筒体111をボルト締結する。一対のベヤリング軸受112を介してローラ軸体113を回転自在に軸支する。ローラ支持筒体111の左右の開口から左右外側方に向けてローラ軸体113の両端側を突出させる。ローラ軸体113の両端部に、締結ナット114によって左右一対のトラックローラ26aを固着する。ローラ支持筒体111の左右の開口部のうち、ベヤリング軸受112の外側にダストシール115を設ける。なお、一対のベヤリング軸受112の間には、潤滑油(グリス)を充填する。
【0078】
また、図27に示す如く、ベヤリング軸受112外側のローラ軸体113にスリーブ116(またはカラー)を介してダストシール115を被嵌する。トラックローラ26aとスリーブ116の間に摩耗抑制板体117を挟持する。即ち、締結ナット114を締付けたときに、トラックローラ26aとベヤリング軸受112の間に、スリーブ116と摩耗抑制板体117が固着され、ダストシール115のリップ115aに摩耗抑制板体117を接触させる。そのため、泥水侵入によるリップ115a及びその当たり面の摩耗を抑制でき、ベヤリング軸受112内部への泥水侵入を防止できる。
【0079】
さらに、図28に示す如く、ローラ支持筒体111の左右の開口縁にラビリンス用凹部111aを形成し、摩耗抑制板体117の外周側端面117aをローラ支持筒体111側に折り曲げ、ラビリンス用凹部111aに前記外周側端面117aを遊嵌状に挿入し、ラビリンス用凹部111aと前記外周側端面117aによってラビリンス隙間を形成し、草などの巻き付き、または泥水の侵入などを抑制し、ダストシール115の損傷を防止してもよい。
【0080】
さらに、図29に示す如く、ローラ支持筒体111の左右の開口縁にラビリンス用多段部111bを形成し、ラビリンス用多段部111bと相似形の多段端面26bをトラックローラ26aの対向面に形成し、ラビリンス用多段部111bに相似形の多段端面26bを対面させてラビリンス隙間を形成し、草などの巻き付き、または泥水の侵入などを抑制し、ダストシール115の損傷を防止してもよい。
【0081】
なお、図30は前従動輪体21(または後従動輪体23)の部分拡大図であり、従動輪軸体21にベヤリング軸受112を介して従動輪体21,23を軸支すると共に、トラックフレーム17に設けた従動輪ホルダ222に従動輪軸体221をナット114締結した構造において、図27と同様に、ダストシール115、スリーブ116、摩耗抑制板体117を組付けたもので、締結ナット114を締付けたときに、従動輪ホルダ222とベヤリング軸受112の間に、スリーブ116と摩耗抑制板体117が固着され、ダストシール115のリップ115aに摩耗抑制板体117を接触させ、泥水侵入によるリップ115a及びその当たり面の摩耗を抑制でき、ベヤリング軸受112内部への泥水侵入を防止できる。
【0082】
次いで、図3、図4、図31〜図33を参照して、トラックフレーム17及びテンション調節機構22の構造を説明する。図31、図32に示す如く、テンション調節機構22は、トラックフレーム17の前部上面に固着する台フレーム225と、台フレーム225上面に固着する外筒体226と、台フレーム225及び外筒体226にて形成される長方形状の空間にこの前部開口から出入自在に挿入する端面四角形状の内筒体227と、台フレーム225及び外筒体226にて形成される長方形状の空間の後部開口を閉塞する支持板体228と、支持板体228に回転自在に支持するテンションボルト229と、内筒体227内部に延長したテンションボルト229のテンションネジ部229aに螺着するスライド筒体230と、螺着体としてのスライド筒体230に固着するテンションバネ座231と、内筒体227の前端部に固着した従動輪ホルダ222とテンションバネ座231の間に設けるテンションバネ232とを有する。
【0083】
図31、図33に示す如く、スライド筒体230の外周側にテンションバネ232が遊嵌状に巻装支持される。テンションボルト229のテンションネジ部229aにスライド筒体230を介してテンションバネ座231が連結される。また、外筒体226の後方に突出させる側のテンションボルト229端部に弾圧ストッパ体233を固着する。支持板体228の内面側に弾圧ストッパ体233を当接させる。外筒体226の後方外側にテンションボルト229端部を突出させる。前記テンションボルト229の突出端ネジ部229bに空転防止ナット体234を螺着する。前記テンションボルト229の突出端ネジ部229bに回転操作用角頭部229cを形成する。
【0084】
即ち、支持板体228に突出端ネジ部229bを貫通させ、支持板体228内面側に弾圧ストッパ体233を圧着させ、支持板体228外面側に空転防止ナット234を圧着させ、支持板体228にテンションボルト229を固定支持し、テンションバネ232力をテンションバネ座231にて受止める。前従動輪体21を支持する伸縮可能なアイドラホークとして、外筒体226と、内筒体227を設ける。外筒体226と内筒体227の前後長さをテンションバネ232にて伸長させ、走行クローラ25の張力を略一定に維持するように構成している。
【0085】
図31、図33に示す如く、前記アイドラホークの一部である支持板体228にテンションボルト229を設け、テンションバネ232力をテンションバネ座231にて受止め、テンションバネ232力をテンションボルト229にて調節するように構成している。即ち、空転防止ナット234を緩めた状態下で、前記アイドラホークに遊転可能に連結するテンションボルト229の操作部としての回転操作用角頭部229cにレンチ(図示省略)を係止させ、そのレンチによってテンションボルト229を回転操作し、テンションボルト229とスライド筒体230の連結長さを変更させ、テンションバネ座231にてテンションバネ232を外筒体226の前方に向けて押出す。そのテンションバネ232の押出し操作にてテンションバネ232力が増大し、外筒体226の前部開口から内筒体227の前部を前方に向けて押出す。
【0086】
その結果、走行クローラ25の張力が低下したときに、前記テンションボルト229の回転操作によって、トラックフレーム17の前方に前従動輪体21を移動し、走行クローラ25の張力を増大させ、走行クローラ25の張力を一定に維持する。図33に示す如く、外筒体226の前端開口から突出する内筒体227の突出長さLBが長い(図33の状態)場合、即ち、内筒体227と支持板体228の間隔Lxが、従動輪ホルダ222とスライド筒体230との間隔であるバネストロークLCよりも大きい場合、従動輪ホルダ222とスライド筒体230との間隔であるバネストロークLCが略一定に保たれる。つまり、間隔LxがバネストロークLCよりも大きいときは、テンションバネ232のストロークが間隔Lxにて決定される。
【0087】
一方、外筒体226の前端開口から突出する内筒体227の突出長さLAが短い場合、即ち、内筒体227と支持板体228の間隔Lxが、従動輪ホルダ222とスライド筒体230との間隔であるバネストロークLCよりも小さい場合でも、走行クローラ25の張力が一定以上であれば、従動輪ホルダ222とスライド筒体230との間隔であるバネストロークLCが略一定に保たれる。なお、図31に示す走行クローラ25に張力を負荷する前の組立途中の状態では、間隔LxがバネストロークLCよりも小さい場合で、走行クローラ25の張力が一定以下のときには、前記バネストロークLCが変化する。つまり、走行クローラ25の張力の変動に伴い、バネストロークLC変動するから、間隔LxがバネストロークLCよりも小さいときは、テンションバネ232のストロークがバネストロークLCにて決定される場合もある。
【0088】
また、支持板体228の外側に突出させる回転操作用角頭部229cの突出量が常に一定であり、支持板体228の外側で略一定位置に角頭部229cが支持されるから、前下端枢着軸30の軸受筒体77と角頭部229cとの間に、回転操作具としてのレンチ等を装着する空間を充分に確保できる。
【0089】
前記アイドラホークの固定側ケース体としての外筒体226と、前記アイドラホークの可動側ケース体としての内筒体227に位置決め孔239をそれぞれ形成する。外筒体226に内筒体227を組付けるときに、外筒体226の位置決め孔239に内筒体227の位置決め孔239を一致させ、それぞれの位置決め孔239にピン等の棒状体を差し込んで、外筒体226に内筒体227を固定し、外筒体226と内筒体227のずれまたは脱落を防止した状態で、空転防止ナット体234等を取り付けることができる。
【0090】
図34〜図36を参照して、テンションバネ232のストローク規制構造を説明する。図34に示す如く、テンションボルト229のテンションバネ座231に対向する従動輪ホルダ222にバネ圧縮ストッパ241を設け、前記アイドラホークの一部としての従動輪ホルダ222にバネ圧縮ストッパ241を配置し、バネ圧縮ストッパ241にテンションバネ座231を当接させ、バネ圧縮ストッパ241にてテンションバネ232の圧縮量を規制する。なお、支持板体228のネジ部228aにテンションボルト229のテンションネジ部229aを螺着させ、空転防止ナット体234にて支持板体228にテンションボルト229を固着する一方、空転防止ナット体234を緩めて、テンションボルト229を回転させ、テンションバネ232力を調節する。
【0091】
図35に示す如く、図34のバネ圧縮ストッパ241に対向させて、テンションバネ座231にもバネ圧縮ストッパ242を設け、各バネ圧縮ストッパ241,242の当接にてテンションバネ232の圧縮量を規制してもよい。また、図36に示す如く、テンションバネ232の外側に円筒状のバネ圧縮ストッパ243を設け、バネ圧縮ストッパ243にテンションバネ座231を当接させ、バネ圧縮ストッパ241にてテンションバネ232の圧縮量を規制してもよい。
【0092】
図3、図4、図13を参照して、トラックフレーム17の泥付着防止構造を説明する。図3、図4、図13に示す如く、前後方向に長い四角柱状のトラックフレーム17の平坦上面のうち、前下端枢着軸30と後下端枢着軸31の間の平坦上面に四角板状のフレーム補強リブ246を立設固定する。トラックフレーム17の平坦上面のうち機体内側寄りにフレーム補強リブ246の下端縁を溶接固定する。即ち、トラックフレーム17の平坦上面の左右幅中心に対して機体内側方にフレーム補強リブ246をオフセットさせて配置している。
【0093】
また、トラックフレーム17の上面側に泥滑落体としての四角板状の滑落カバー247を設けている。トラックフレーム17の平坦上面のうち機体外側端部とフレーム補強リブ246の上端縁とに滑落カバー247の上下端縁を溶接固定する。トラックフレーム17の左右幅内に泥滑落体としてのフレーム補強リブ246と滑落カバー247を山形状に立設している。滑落カバー247が外向きのシュート形状に配置される。トラックフレーム17の上面に落下する泥土が、滑落カバー247の案内にて滑落し、トラックフレーム17の上面に堆積する泥土量を低減し、トラックフレーム17の上面に泥土が堆積するのを防止している。なお、フレーム補強リブ246と滑落カバー247は、トラックフレーム17の補強部品として形成される。トラックフレーム17の軽量化またはコスト低下が可能でありながら、走行クローラ25の支持剛性を簡単に向上できる。
【0094】
図1、図3、図4、図31〜図33に示す如く、エンジン8を搭載する走行機体と、走行機体11の下側に設けるトラックフレーム17と、トラックフレーム17に従動輪体21を介して装着する走行クローラ25と、前従動輪体21を支持する伸縮可能なアイドラホークとしての外筒体226及び内筒体227と、外筒体226及び内筒体227を伸長させるテンションバネ232を備える作業車両において、外筒体226及び内筒体227にテンションボルト229を設け、テンションバネ232力をテンションバネ座231にて受止め、テンションバネ232力をテンションボルト229にて調節する構造であって、外筒体226及び内筒体227にテンションボルト229の操作部としての回転操作用角頭部229cを遊転可能に連結し、テンションボルト229のテンションネジ部229aに螺着体としてのスライド筒体230を介してテンションバネ座231を連結している。したがって、テンションボルト229を設ける簡単なテンション調節構造でありながら、外筒体226及び内筒体227からテンションボルト229の操作部229cだけを突出して、前記走行クローラ25のテンション調節用の工具を操作部229cに装着するスペースを広く形成できる。テンションバネ232力を調節する作業スペースが簡単に確保できる。また、テンションバネ232力の調節に際し、グリス注入器具などを使用する面倒を省くことができる。
【0095】
図3、図4、図31〜図33に示す如く、前記アイドラホークの固定側ケース体としての外筒体226の側面部と、前記アイドラホークの可動側ケース体としての内筒体227の側面部とに、ピン等が同時に挿入可能な位置決め孔239をそれぞれ形成している。したがって、組立作業において、前記位置決め孔239にピン等を挿入して、外筒体226に内筒体227を簡単に仮り固定でき、内筒体227の位置ずれまたは脱落などを簡単に防止できる。前記テンションバネ232部の組付け作業性を向上できる。
【0096】
図3、図4、図13に示す如く、前記トラックフレーム17の上面側に泥滑落体としてのフレーム補強リブ246または滑落カバー247を設けている。したがって、走行クローラ25の非接地側から泥土が落下しても、フレーム補強リブ246または滑落カバー247の案内によってその泥土を路面側に落下させることができ、その泥土が前記トラックフレームの上面側に堆積するのを防止できる。走行クローラ25部に付着する泥土によって駆動負荷が増大するのを防止でき、走行駆動負荷を軽減して燃費効率等を向上できる。走行クローラ25部の重量変化を少なくして、走行クローラ25のテンションの変動幅を低減でき、走行クローラ25への動力伝達効率を安定させ、走行クローラ25の駆動に伴う振動などを低減できる。
【0097】
図3、図4、図13に示す如く、前記トラックフレーム17の左右幅内にフレーム補強リブ246及び滑落カバー247を山形状に立設している。したがって、走行クローラ25の接地側から持上げられる泥土などによってフレーム補強リブ246及び滑落カバー247が変形損傷するのを防止できる。フレーム補強リブ246及び滑落カバー247を軽量化できるものでありながら、フレーム補強リブ246及び滑落カバー247やトラックフレーム17の剛性または耐久性を向上できる。
【0098】
上記の説明並びに図1、図3、図4及び図31〜図33から明らかなように、前記トラックフレーム17には、前記走行クローラ25が巻回される従動輪体21を備えており、更に、前記従動輪体21を支持する伸縮可能なアイドラホークとしての外筒体226及び内筒体227と、前記走行クローラ25の内周側に前記従動輪体21を付勢するテンションバネ232とを有しているから、例えばテンションボルト229を設ける簡単なテンション調節構造によって、前記走行クローラ25の張力を調節・維持することが可能になる。
【0099】
次に、図3、図4及び図37〜図39を参照しながら、クローラガイド体41の詳細構造について説明する。図3、図4及び図38に示すように、トラックフレーム17の下面に、転動輪支持体としてのローラ支持筒体111がボルト締結されている。実施形態の転動輪26が前後三つ並べられている点から分かるように、ローラ支持筒体111も、トラックフレーム17の下面に前後三つ並べて配置されている。前ローラ支持筒体111と後ローラ支持筒体111とに、クローラガイド体41がそれぞれ2本の下方からのボルト250によって着脱可能に取り付けられている。
【0100】
図3、図4、図37及び図38に示すように、各クローラガイド体41は側面視逆T字状の舟形に形成されている。そして、クローラガイド体41において長手一端側と長手他端側とは非対称な形状に形成されている。実施形態では、転動輪26のローラ軸体113の軸線と直交する上下仮想線PLからの距離D1,D2は、従動輪体21,23に対峙する長手一端側251の距離D1の方が中央の転動輪26に対峙する長手他端側252の距離D2よりも長くなっている(D1>D2)。各クローラガイド体41の長手一端側251には、クローラガイド体41の長手中途部の横幅よりも幅狭な延長部253が形成されている。図39に示すように実施形態では、延長部253の横幅Wが従動輪体21,23の外周先端側の横幅Woと同じか又はそれよりも大きく設定されている(W≧Wo)。一方、各クローラガイド体41の長手他端側252は、上向きに突出するように湾曲形成されている。
【0101】
上記の説明並びに図3、図4及び図38の記載から明らかなように、エンジン8を搭載した走行機体11と、前記走行機体11の下部に設けたトラックフレーム17と、駆動輪体16、従動輪体21,23、転動輪26及びクローラガイド体41を介して前記トラックフレーム17に装着された走行クローラ25とを備えている作業車両であって、前記クローラガイド体41は側面視で舟形に形成されていて、前記従動輪体21,23に対峙する長手一端側251と、長手他端側252とが非対称形状に形成されているから、前記クローラガイド体41の前記長手一端側251が必要な機能に特化した形状になり、前記走行クローラ25の迎え角や背離角等に適応させて、横滑り力等によって前記走行クローラ25が脱落するのを効果的に防止できる。また、前記クローラガイド体41の前記長手他端側252も必要な機能に特化した形状になり、地面の石や段差等によって前記走行クローラ25が撓んだりしても、前記走行クローラ25の内周側が前記クローラガイド体41に圧接して、前記クローラガイド体41が摩耗・変形・損傷したり前記走行クローラ25の内周側が傷ついたりするのを低減できる。
【0102】
また、上記の説明並びに図3、図4、図37〜図39の記載から明らかなように、前記クローラガイド体41の前記長手一端側251に、前記クローラガイド体41の長手中途部の横幅よりも幅狭な延長部253が形成されているから、前記従動輪体21,23に前記延長部253の先端側を近接させて配置できる。従って、例えば前記クローラガイド体41の前記長手一端側251に対して前記走行クローラ25(芯金体95)の追従性を向上させることができ、前記走行クローラ25に横滑り力等が作用しても、前記従動輪体21,23や前記転動輪26等から、前記走行クローラ25が脱落するのを確実に防止できる。
【0103】
更に、上記の説明並びに図39の記載から明らかなように、前記延長部253の横幅Wが前記従動輪体21,23の外周先端側の横幅Woと同じか又はそれよりも大きく設定されているから、前記クローラガイド体41に横滑り力が作用したとしても、前記従動輪体21,23と前記クローラガイド体41との間において、前記走行クローラ25の脱落を阻止可能な横滑り幅内で、前記走行クローラ25の芯金体95等がスムーズに横移動することになる。また、前記従動輪体21から前記クローラガイド体41への芯金体95等の移動(前記走行クローラ25の移動)や、前記クローラガイド体41から前記従動輪体23への芯金体95等の移動をスムーズに実行できる。従って、前記従動輪体21,23や前記転動輪26等から、前記走行クローラ25が脱落するのをより的確に防止できる。
【0104】
しかも、上記の説明並びに図3、図4及び図38の記載から明らかなように、前記転動輪26を回転可能に軸支する転動輪支持体としてのローラ支持筒体111に、前記クローラガイド体41が着脱可能に取り付けられているから、前記転動輪26の設置数に合わせて、前記クローラガイド体41の設置数を増減できる。例えば前後の転動輪26間に一つ以上の中間の転動輪26を設けた場合において、前記前後の転動輪26以外で前記中間の転動輪26にも、必要に応じて前記クローラガイド体41を簡単に取り付けでき、作業条件等に応じて、前記走行クローラ25の脱落防止性能を向上できる。
【0105】
次に、図40〜図42を参照しながら、後クローラ走行装置13に装着可能な走行クローラ25の例について説明する。図40に示す走行クローラ25は、これまで実施形態で説明してきた標準仕様の走行クローラ25である。標準仕様の走行クローラ25では、芯金体95、接触凸部94a及び内周凸面部95bの左右幅中心線P、すなわち走行クローラ25における被係合部の左右幅中心線Pを、走行クローラ25自体の左右幅中心線Caに対して、機体内側方(左右内側方)に所定幅S1だけオフセットさせている。また、前述の通り、駆動輪体16の左右幅中心線Pに対して、機体内側方に所定幅Sだけ、従動輪体21,23及び転動輪26の左右幅中心線Qをオフセットさせている。即ち、走行クローラ25の芯金爪部95aに対して、駆動輪体16はスプロケット歯底部89が外側で接触する位置に、従動輪体21,23及び転動輪26はこの内側で接触する位置に、それぞれオフセットさせている。
【0106】
図41に示す走行クローラ25は、駆動輪体16等に対して機体外側方(左右外側方)に大きく張り出させて、左右の後クローラ走行装置13間のトレッドを拡大させたオフセット仕様の走行クローラ25である。オフセット仕様の走行クローラ25の左右幅寸法W2は、標準仕様の走行クローラ25の左右幅寸法W1と共通である(W2=W1)。オフセット仕様の走行クローラ25では、走行クローラ25における被係合部の左右幅中心線Pを、走行クローラ25自体の左右幅中心線Caに対して、機体内側方(左右内側方)に所定幅S1よりも大きい幅S2だけオフセットさせている。ただし、駆動輪体16の左右幅中心線Pに対して、機体内側方に所定幅Sだけ、従動輪体21,23及び転動輪26の左右幅中心線Qをオフセットさせる点は、標準仕様の走行クローラ25と共通している。この場合は、複雑なトレッド変更構造を採用しなくても、走行クローラ25の付け替えだけで左右の後クローラ走行装置13間のトレッドを変更できることになる。
【0107】
図42に示す走行クローラ25は、標準仕様の走行クローラ25の左右幅寸法W1よりも幅狭に設定された幅狭仕様の走行クローラ25である。幅狭仕様の走行クローラ25の左右幅寸法W3は、例えば畑における畝溝の溝幅に対応する左右幅寸法になっている。後クローラ走行装置13に幅狭仕様の走行クローラ25を装着したトラクタ10は、畝Gの角部を崩したりすることなく畝間走行をスムーズに行えることになる。幅狭仕様の走行クローラ25では、走行クローラ25における被係合部の左右幅中心線Pと走行クローラ25自体の左右幅中心線Caとを一致させている。ただし、駆動輪体16の左右幅中心線Pに対して、機体内側方に所定幅Sだけ、従動輪体21,23及び転動輪26の左右幅中心線Qをオフセットさせる点は、標準仕様やオフセット仕様の走行クローラ25と共通している。図40〜図42に示す走行クローラ25は、圃場状況や作業内容に応じて付け替えればよい。
【0108】
次に、図43を参照しながら、リンク機構である前後のリンク部材319,320の別例について説明する。当該別例では、後車軸ケース14にフランジ部材318を着脱可能に締結固定する。前記後車軸15よりも前側に配設する前リンク部材319と、前記後車軸15よりも後側に配設する後リンク部材320とを備える。フランジ部材318に各リンク部材319,320を介してトラックフレーム17を前後揺動可能に連結している。すなわち、フランジ部材318(走行機体11とも言える)、前後一対のリンク部材319,320及びトラックフレーム17が、四節リンク構造をなしている。当該四節リンク構造を採用している点は、先の実施形態と同様である。先の実施形態と大きく異なる点は、各リンク部材319,320がそれぞれ左右一対のリンク杆319a,319b,320a,320bを組み合わせた構造になっている点である。
【0109】
図43に示すように、別例におけるフランジ部材318は、鋼板製で平板形状の第1ブラケット体351と、鋼板製で平板形状の第2ブラケット体352と、鋼板製で平板形状の第3ブラケット体353とを有している。第1及び第2ブラケット体351,352は、左右方向に適宜間隔を空けて対峙させた状態で、それぞれの上部側を後車軸ケース14に溶接固定している。
【0110】
第3ブラケット体353は、第2ブラケット体352よりも更に機体外側方(左右外側方)に位置している。第3ブラケット体353と第2ブラケット体352とは、左右横長の連結軸体341を介して連結されている。連結軸体341の一端側に形成されたネジ部は第2ブラケット体352を貫通してナット締結されている。連結軸体341の他端側に形成されたネジ部は第3ブラケット体353を貫通してナット締結されている。すなわち、連結軸体241は、第2及び第3ブラケット体352,353に両持ち梁状に取り付けられている。
【0111】
また、第3ブラケット体353と第1ブラケット体351とは、先の連結軸体341とは別の連結軸体342を介して連結されている。連結軸体342の一端側に形成されたネジ部は第1ブラケット体351を貫通してナット締結されている。連結軸体342の他端側に形成されたネジ部は第3ブラケット体353を貫通してナット締結されている。すなわち、連結軸体342は、第1及び第3ブラケット体351,353に両持ち梁状に取り付けられている。
【0112】
フランジ部材318には前後の上端枢着軸327,328を設けている。前記後車軸15と平行に前後の上端枢着軸327,328を延設している。前後の上端枢着軸327,328に、前リンク部材319及び後リンク部材320の上端側ボス部を回転自在に軸支する。この場合、第3ブラケット体353と第1ブラケット体351との間に、前後の上端枢着軸327,328を回動可能に軸支する枢着軸用ボス体343を固定している。前後のリンク部材319,320の上端側ボス部345,346に前後の上端枢着軸327,328を貫通させた状態で、前後の上端枢着軸327,328の一端側を枢着軸用ボス体343に回動可能に軸支している。
【0113】
トラックフレーム17に前後の下端枢着軸330,331を設ける。前リンク部材319の下端側は、前記トラックフレーム17に前下端枢着軸330にて回転自在に連結されている。前上端枢着軸327よりも前下端枢着軸330を前側に位置させ、前リンク部材319を前向きに傾斜させて支持している。また、後リンク部材320の下端側は、前記トラックフレーム17に後下端枢着軸331にて回転自在に連結されている。後上端枢着軸328よりも後下端枢着軸331を後側に位置させ、後リンク部材320を後ろ向きに傾斜させて支持している。
【0114】
前後のリンク部材319,320は、それぞれ左右一対のリンク杆319a,319b,320a,320bを有している。前リンク部材319のリンク杆319a,319bの上部側は、左右方向に適宜間隔を空けて対峙させた状態で、上端側ボス部345に固定されている。上端側ボス部345が前上端枢着軸327に回動可能に被嵌されている。前リンク部材319のリンク杆319a,319bの下部側は、左右方向に適宜間隔を空けて対峙させた状態で、トラックフレーム17上面に設けられた前側の軸受筒体77に、前下端枢着軸330を介して連結されている。
【0115】
一方、後リンク部材320のリンク杆320a,320bの上部側は、左右方向に適宜間隔を空けて対峙させた状態で、上端側ボス部346に固定されている。上端側ボス部346が後上端枢着軸328に回動可能に被嵌されている。後リンク部材320のリンク杆320a,320bの下部側は、左右方向に適宜間隔を空けて対峙させた状態で、トラックフレーム17上面に設けられた後側の軸受筒体77に、後下端枢着軸331を介して連結されている。
【0116】
上記別例のように構成した場合も、先の実施形態におけるリンク部材19,20を採用した場合と同様の作用効果が得られることは言うまでもない。また、各リンク部材319,320がそれぞれ左右一対のリンク杆319a,319b,320a,320bを組み合わせた構造になっているから、例えば鋳造等の金属製のリンク部材を採用した場合に比べて大幅に軽量化を図れる。また、前記走行クローラ25の組付け作業性を向上できる。
【符号の説明】
【0117】
8 エンジン
11 走行機体
12 前車輪
15 後車軸
17 トラックフレーム
18 フランジ部材
19 前リンク部材
20 後リンク部材
21 前従動輪体
23 後従動輪体
25 走行クローラ
26 転動輪
27 前上端枢着軸
28 後上端枢着軸
30 前下端枢着軸
31 後下端枢着軸
77 軸受筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載する走行機体と、前記走行機体の下部に設けられ且つ走行クローラを巻回支持するトラックフレームとを備えており、前記走行機体にリンク機構を介して前記トラックフレームを前後揺動可能に取り付けている作業車両であって、
前記リンク機構を前後一対のリンク部材にて構成し、前記走行機体、前記前後一対のリンク部材及び前記トラックフレームが四節リンク構造をなしている、
作業車両。
【請求項2】
前記走行クローラの内周側に複数の芯金体を等間隔に備えており、前記走行クローラを周回駆動させる駆動輪体の外周側に、前記芯金体に係合する係止歯体と輪状部とを備えており、
前記走行クローラの内周側にはゴムベルト体が設けられており、前記駆動輪体の前記輪状部が前記ゴムベルト体に当接することによって、前記走行クローラが周回駆動するように構成されている、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記トラックフレームには、前記走行クローラが巻回される従動輪体を備えており、
更に、前記従動輪体を支持する伸縮可能なアイドラホークと、前記走行クローラの内周側に前記従動輪体を付勢するテンションバネとを有している、
請求項1又は2に記載の作業車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2013−86715(P2013−86715A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230761(P2011−230761)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)