説明

作業車輌のエンジンルーム構造

【課題】冷却風ダクト内側に、コンデンサと並列してレシーバを配置し、ボンネットの大型化を防止すると共に、冷房機能を向上する。
【解決手段】ラジエータサポート10の前側に冷却風ダクト13を取付け、該冷却風ダクトの一側に、ヒンジによりコンデンサブラケット15を回動自在に支持する。該コンデンサブラケット15に、冷却風ダクト13内において左右に並列するようにコンデンサ17とレシーバ19を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン(エアコンディショナー;クーラ)を装備したキャビンを有するトラクタ等の作業車輌に係り、詳しくはエンジン冷却用のラジエータの外に、コンデンサ(フィン)、レシーバ(ドライヤ)等のエアコン用部品が配置されるエンジンルーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、トラクタ等の作業車輌において、運転空間となるキャビンにエアコンを装備するものがあり、エアコンは、キャビン内に配置されるエアコンユニットの外に、冷媒をサイクルする部品として、コンプレッサ、コンデンサ、レシーバ及びこれらをつなぐ配管(パイプ、ホース)が必要となる。
【0003】
従来、ボンネットで開閉されるエンジンルーム構造において、エンジン前側に、前方に向けて順次、冷却ファン、ラジエータ、オイルクーラ、コンデンサ、そして防塵ネットを直列状に配置し、ラジエータ前方の固定枠(冷却風ダクト)に、縦軸を中心に回動枠を回動自在に設け、該可動枠にコンデンサ及びレシーバを取付けたものが案出されている(特許文献1参照)。
【0004】
該エンジンルーム構造は、上記回動枠の内部にコンデンサが取付けられ、該回動枠の側面外部にレシーバが取付けられている。
【0005】
上記エンジンルーム構造は、メンテナンス時に、回動枠を回動してコンデンサをオイルクーラ前面から退避し、更にオイルクーラを横軸を中心にラジエータ前面から退避して、清掃等の容易化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3895073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近時、エンジンに対する冷却能力をアップすべく、ラジエータの容量が次第に大きくなっているが、ボンネットをそれに合せて大型化、特に左右幅を増大することは、ボンネットの新たな金型のためのコストアップやコンパクトな機体構造を得る上で好ましくない。上記エンジンルーム構造のように、回動枠の外側にレシーバを配置することは、回動枠が、冷風用ダクト(通風口)を構成する固定枠に対して左右幅方向略々同じ寸法に構成される関係上、レシーバがボンネットと干渉してしまい、ボンネットの大型化に繋がってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、冷却風ダクトの内側に、コンデンサと並列してレシーバを配置することにより、上述した課題を解決した作業車輌のエンジンルーム構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走行機体(3)に搭載されたエンジンの前側に、前方に向けて順次冷却ファン、ラジエータ(12)及びコンデンサ(17)を配置した、作業車輌のエンジンルーム構造において、
前記走行機体(3)に固定されかつその後方に前記ラジエータ(12)を取付けたラジエータサポート(10)の前方に、冷却風ダクト(13)を設け、
該冷却風ダクトの左右一側に、ヒンジ(16,16)により回動自在にコンデンサブラケット(15)を支持し、
該コンデンサブラケットに、前記冷却風ダクト(13)内における左右いずれか一方に前記コンデンサ(17)が位置すると共に他方にレシーバ(19)が位置するように、前記コンデンサ及びレシーバを並設してなる、
ことを特徴とする作業車輌のエンジンルーム構造にある。
【0010】
また、例えば図4〜図6を参照して、前記コンデンサブラケット(15)を、前記冷却風ダクト(13)に左右に亘って位置する閉じ状態において固定する固定具(31)を用いて、前記コンデンサブラケットを、前記冷却風ダクト(13)の前方を開放した開き位置に固定する。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、近時のラジエータの大型化に伴う冷却風ダクトの大型化に対し、コンデンサの容量を必要最小限に抑えて、コストアップを防止すると共に、余裕のあるコンデンサブラケットに、上記コンデンサと左右に並列するようにレシーバを配置することにより、ボンネットとの干渉を防止して、ボンネットの大型化を防止することができる。
【0013】
また、冷却風ダクトに開閉自在に設けられたコンデンサブラケットに、コンデンサとレシーバとを一体に取付けることにより、コンデンサからのレシーバへの配管をパイプ化することができ、例えば可撓性のホースによる接続に比してコストダウンを図ることができる。
【0014】
更に、レシーバを、コンデンサに並設して冷却風ダクト内に配置するので、レシーバ自体を冷却風により効果的に冷却することができ、これによりコンデンサで冷却されて液化され切れなかった冷媒は、レシーバに至って液化が促進され、エアコンの冷房能力を向上することができる。
【0015】
請求項2に係る本発明によると、コンデンサブラケットは、開き位置においても位置決め固定されるので、オイルクーラ等の他の冷却装置がメンテナンス等により回動する際、該他の冷却装置がコンデンサ(フィン)に当って傷付けることを防止することができる。また、上記開き位置での位置決め固定は、コンデンサブラケットを閉じ位置で冷却風ダクトに固定する固定具を用いるので、固定具の紛失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用し得るクローラトラクタを示す斜視図。
【図2】本発明に係るエンジンルームを示す正面図。
【図3】その平面図。
【図4】その側面図。
【図5】コンデンサブラケットを開いた状態を示す平面図。
【図6】その側面図。
【図7】エンジン部分を示す側面図。
【図8】その平面図。
【図9】その部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に沿って、作業車輌としてトラクタに適用した本発明の実施の形態について説明する。クローラトラクタ1は、図1に示すように、1対のクローラ走行装置2,2に支持される走行機体3を有しており、走行機体にはその前部にボンネット5により開放自在に覆われているエンジンルームが配置され、その後方にキャビン6により覆われている運転席が配置されている。上記走行機体3には油圧装置により昇降自在に作業機が装着又は牽引される。
【0018】
前記エンジンルームにはエンジンが配置され、その前方に冷却ファン及びラジエータが配置されている。該エンジンルームには、図2〜図4に示すように、ラジエータサポート10がボンネット5で閉じられた状態でのエンジンルームを仕切るようにして走行機体3に取り付けられており、該ラジエータサポート10の後方(エンジン側)には固定枠11が一体に固定されている。該固定枠11は冷却ファンを囲むように配置され、かつ該冷却ファンの前方において、上記ラジエータサポート10に取付けられてラジエータ12が配置されている。ラジエータサポート10の前方には、矩形筒状の冷却風ダクト13が一体に取付けられており、該ダクト13は前記冷却ファンによる吸気を前記ラジエータ12に導く。
【0019】
該冷却風ダクト13の内面における前部上方部分には枠からなるコンデンサブラケット15が配置されている。該コンデンサブラケット15の基端側(左)枠15aは、上記冷却風ダクト13内面一側(左側)に設けられたヒンジ16,16により回動自在になっており、上記ブラケットの他側(右側)部分にコンデンサ17が取付けられていると共に、一側(左側)部分にレシーバ(ドライヤ)19が取付けられている。コンデンサ17は、上記ブラケット15における枠の右側半部以上に亘って配置され、冷却風ダクト13に案内される空気の約1/4以上が通過して、該コンデンサを冷却し得る。上記ブラケット15の残りの部分である左側には該ブラケットの左枠15aとコンデンサ先端の中間枠15dに亘って穴あきプレート20が固定されており、該プレート20に上記レシーバ19が取付けられている。上記プレート20は、図3に示すように、段付き構造からなり、該段付き部20aのエンジン側に凹んだ部分に円筒形状のレシーバ19がその軸線方向を上下方向にしてレシーバホルダ18により取付けられている。
【0020】
上記コンデンサブラケット15の前方部分には、冷却風ダクト13に対して上下方向抜差し自在に上防塵ネット21が設けられており、またコンデンサブラケット15の下方には、同じく冷却風ダクト13に対して上下方向抜差し自在に下防塵ネット22が設けられている。上防塵ネット21は、コンデンサ17及びレシーバ19が並設されている矩形状のコンデンサブラケット15の前面を覆うように矩形状に形成され、同じく矩形状の下防塵ネット22と合せて、冷却風ダクト13の略々全面を覆うように構成されており、塵埃に対する密閉性が保たれている。なお、21a,22aはそれぞれ防塵ネット21,22を着脱するために把持するタブであり、23は冷却風ダクトの下部分を塞ぐ仕切りプレートであり、25はコンデンサ17とレシーバ19とを連通する接続パイプであり、26はコンデンサ17とコンプレッサを連通する接続ホースである。また、27は冷却水のリザーバタンクである。
【0021】
そして、図4〜図6に示すように、冷却風ダクト13の上面にはロックプレート30が取付けられており、該ロックプレート30の右端部分にロック用ネジ孔30aが形成されている。コンデンサブラケット15の先端側(左)枠15bには固定用ラグ15cが設けられており、コンデンサブラケット15を閉じた使用状態において、図4に示すように、上記ラグ15cの孔及び冷却風ダクト13に設けたネジ孔13cにロックボルト(固定具)31を螺着して、コンデンサ17及びレシーバ19がラジエータ12の前方に配置される使用(閉じ)位置に固定される。
【0022】
本エンジンルームは、クローラトラクタ1の使用状態(非メンテナンス状態)にあっては、上述したコンデンサブラケット15を閉じた状態にある。この状態では、エンジンの回転により冷却ファンが回転し、空気が冷却風ダクト13に案内されて吸込まれ、ラジエータ(及び図示しないオイルクーラ)を冷却する。更に、冷却風ダクト13内には、コンデンサ17及びレシーバ19が配置され、コンデンサ17によりガス状冷媒が冷却されて液状冷媒に変化しつつ、レシーバ(ドライバ)19に送られる。これにより、エアコンシステムが機能して、キャビン6に冷風が噴出される。この際、冷却風ダクト13内に位置するレシーバ19も冷されて、コンデンサ17で冷却されて液化しきれなかった冷媒は、レシーバ19に至って液化が促進される。
【0023】
一方、エンジンルームのメンテナンス時は、まず、上下の防塵ネット21,22をそのタブ21a,22aを持って上方に引抜き、コンデンサブラケット15の前方を開放する。なお、コンデンサ17のみを清掃する場合は、上防塵ネット21を引抜けば足りる。そして、ロックボルト31を固定用ラグの孔及びネジ孔13cから外して、図5及び図6示すように、コンデンサブラケット15をヒンジ16,16を中心に回動して、ラジエータ12の前方を開放し、該コンデンサブラケット15が90度回動した状態で、上記ロックボルト31をロックプレート30のネジ孔30aに螺合して、該コンデンサブラケット15を開放位置に固定する。これにより、コンデンサブラケット15は、ホース26等の復元力等により戻ることはなく、開放位置に固定される。従って、コンデンサ17等は開放位置に固定されるので、例えばオイルクーラ等を下方位置にある横軸を中心に回動する場合にあっても、該オイルクーラ等の他の冷却装置がコンデンサ17に当ることがなく、コンデンサフィンを傷付けることがない。また、該開放位置での固定は、使用位置でコンデンサブラケット15を固定するロックピン31が用いられるので、ロックピン31を紛失することがない。
【0024】
この状態において、開放されたコンデンサブラケット15に並設されているコンデンサ17の清掃並びにレシーバ19のメンテナンスを行うことができると共に、前面が開放状態にあるラジエータ12(及びオイルクーラ)を清掃することができる。なお、コンデンサブラケット15を開放又は使用位置に移動する際に、コンデンサ17とレシーバ19は一体に動くので、両者は接続パイプ25に連通することが可能となり、またコンデンサ・コンプレッサ接続ホース26の取廻しも容易となる。
【0025】
ついで、燃料ウォータセジメンタについて、図7〜図9に沿って説明する。ディーゼルエンジン40は、走行機体3を構成するシャーシフレーム41に防振ゴム32を介在してカウントされている。上記エンジン40の一側下半部分に相当する位置に、エンジンフロントマウントブラケット33及びフィルタブラケット34を介してプライマリフィルタ35が取付けられている。プライマリフィルタ35には、燃料タンクから燃料が供給され、異物や水分が取り除かれた後、燃料転送ポンプによってセカンダリフィルタ36に導かれ、更にエンジンコントロールユニットを介して高圧ポンプによってコモンレールに入り、燃料噴射となる。
【0026】
上記プライマリフィルタ35は、燃料ウォータセジメンタが内蔵されており、該セジメンタは、燃料に混じっている水分やフィルタで除去できなかった微細な異物を分離するものであって、その下部に、水と油の比重差によって分離した水や沈殿物を溜める水溜り部37を有する。該水溜り部37の下面にはセジメンタ水抜き部39が設けられている。
【0027】
上記燃料ウォータセジメンタはエンジン40の下部に配置されているため、セジメンタ水抜き部39により水抜きを行う際、エンジンスタータ等の部品に水がかかることなく、拭取り作業が必要なくなる。また、従来必要であった上カバーを外す作業がなくなり、水抜き作業が容易となった。
【符号の説明】
【0028】
1 作業車輌(クローラトラクタ)
3 走行機体
5 ボンネット(エンジンルーム)
6 キャビン
10 ラジエータサポート
12 ラジエータ
13 冷却風ダクト
15 コンデンサブラケット
16 ヒンジ
17 コンデンサ(フィン)
19 レシーバ(ドライヤ)
31 固定具(ロットボルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載されたエンジンの前側に、前方に向けて順次冷却ファン、ラジエータ及びコンデンサを配置した、作業車輌のエンジンルーム構造において、
前記走行機体に固定されかつその後方に前記ラジエータを取付けたラジエータサポートの前方に、冷却風ダクトを設け、
該冷却風ダクトの左右一側に、ヒンジにより回動自在にコンデンサブラケットを支持し、
該コンデンサブラケットに、前記冷却風ダクト内における左右いずれか一方に前記コンデンサが位置すると共に他方にレシーバが位置するように、前記コンデンサ及びレシーバを並設してなる、
ことを特徴とする作業車輌のエンジンルーム構造。
【請求項2】
前記コンデンサブラケットを、前記冷却風ダクトに左右に亘って位置する閉じ状態において固定する固定具を用いて、前記コンデンサブラケットを、前記冷却風ダクトの前方を開放した開き位置に固定する、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車輌のエンジンルーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−1045(P2012−1045A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136145(P2010−136145)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】