説明

作業車輌

【課題】ボンネット本体の湾曲部に形成された通風孔を内側から覆う樹脂製のネット部材を、該湾曲部の内面に密着させることで、エンジンルームの防塵性を高めることを可能とする作業車輌を提供する。
【解決手段】作業車輌(トラクタ)のボンネット部は、前面から側面にかけて湾曲した湾曲部11dを有するボンネット本体11を備えており、その湾曲部11dに形成された通風孔を内側から覆うように樹脂製のネット部材20が貼り合わされる。湾曲部11dの部分において、さらに内側からプレート部材21を貼り合わせ、ボンネット本体11とプレート部材21との間にネット部材20を挟み込む。湾曲したネット部材20にしわが生じることがなく、ネット部材20がボンネット本体11に密着し、エンジンルームの防塵性が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車輌に係り、詳しくは走行機体前部に配置されるエンジンを覆うボンネット部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクタ等の作業車輌は、走行機体の前部にエンジンが配置され、更にその前方にラジエータ等の補機が配置されており、これらエンジン及びラジエータ等を覆うようにボンネット部が配設されている。ボンネット部は、前部を覆うフロントグリル、左右の側面を覆う左右サイドカバー、及び上部を覆うボンネットフードを有して構成される。ボンネット部の前方から側面にかけては、ラジエータの冷却風の通路となる複数の通風孔が形成されており、それら通風孔は、その内側から防塵等のためにメッシュ状のネット部材で覆われている。
【0003】
このメッシュ状のネット部材としては、パンチングメタルを用いるものが主流であるが、パンチングメタルを用いると、ボンネット形状に合わせるために曲げ加工が多くなるなどしてコストダウンの妨げとなる。そのため、パンチングメタルの代わりに、樹脂製ネットを用いたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−85475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ボンネット部は、エンジンを覆うドーム状に形成されており、例えばボンネットフード等に形成された複数の通風孔は、湾曲された部分に形成されている通風孔もある。しかしながら、一方で上記樹脂製ネットは、一般的に平面シート状に形成されるものである。
【0006】
そのため、ボンネットフード等の湾曲した部分に形成された通風孔を塞ぐように、上記樹脂製ネットをボンネットフードの内面に貼り合わせると、樹脂製ネットの端部にしわが生じ易くなって部分的に膨出してしまい、ボンネットフードの内面に密着せずに隙間を生じてしまう虞があり、エンジンルームの防塵性に影響を与える虞があるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、ボンネット本体の湾曲部に形成された通風孔を内側から覆うネット部材を、該湾曲部の内面に密着させることで、エンジンルームの防塵性を高めることを可能とする作業車輌を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行機体(5)の前部に配設されたエンジンと、該エンジンを覆うボンネット部(7)と、を備えた作業車輌(1)において、
前記ボンネット部(7)は、
前記走行機体(5)に固定自在に構成されると共に、少なくとも前面(11c)から両側面(11b)に向かって湾曲する湾曲部(11d)に貫通形成された通風孔(13)を有するボンネット本体(11)と、
樹脂製からなるメッシュ状に形成されていると共に、前記ボンネット本体(11)の内側から前記通風孔(13)を覆うように配設されるネット部材(20)と、
前記通風孔(13)に対応する部分に貫通孔(21a,21b)が形成されていると共に、前記ボンネット本体(11)の内側に取付けられ、少なくとも前記ボンネット本体(11)の湾曲部(11d)の内面との間にあって前記ネット部材(20)を挟み込むプレート部材(21)と、を有することを特徴とする。
【0009】
また具体的に、前記プレート部材(21)は、前記ネット部材(20)よりも剛性が高い材料からなることを特徴とする。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、通風孔に対応する部分に貫通孔が形成されていると共に、ボンネット本体の内側に取付けられ、少なくともボンネット本体の湾曲部の内面との間にあってネット部材を挟み込むプレート部材を有しているので、プレート部材によって、該ボンネット本体の湾曲部の内面に対してネット部材を挟み込んで密着させることができ、ネット部材とボンネット本体との間に隙間を生じてしまうことを防止して、エンジンルームの防塵性を高めることができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、プレート部材がネット部材よりも剛性が高い材料からなるので、プレート部材によってネット部材をボンネット本体の内面に強く押し付けることができ、ネット部材の膨出をより確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用し得る作業車輌であるトラクタを示す側面図。
【図2】ボンネット本体を示す正面図。
【図3】ボンネット本体の内側を示す斜視図。
【図4】ネット部材及びプレート部材を取付けたボンネット本体の内側を示す斜視図。
【図5】ボンネット本体の湾曲部における断面図。
【図6】ネット部材及びプレート部材を示す分解図で、(a)はネット部材の図、(b)はプレート部材の図。
【図7】ネット部材及びプレート部材の組付け状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。トラクタ(作業車輌)1は、図1に示すように、前輪2及び後輪3により支持される走行機体5を有しており、走行機体5はエンジン、クラッチハウジング、トランスミッションケースを一体に結合して構成され、エンジンの前方にその補機であるラジエータが搭載され、かつその後部には運転席6が配置されている。
【0015】
走行機体5の前部には、上記エンジン等が配設されたエンジンルームを囲うようにボンネット部7が配置され、該ボンネット部7は、上記エンジン等の前部を覆うフロントグリル9と、その左右側面を覆う左右サイドカバー10と、その上部を覆うボンネット本体11とからなる。ボンネット本体11は、後側において枢支されて開閉自在に、かつ閉じた状態で固定自在となっている。フロントグリル9は上部が前照灯18となっており、下部に通気用の複数の開口19が形成されている。フロントグリル9及び左右のサイドカバー10は走行機体5と一体の固定部材に対して着脱自在に取付けられている。
【0016】
ボンネット本体11は、図2に示すように、エンジンの上方を覆う上面11aと、該上面11aから両サイドの下方に屈曲して延ばされ、上記サイドカバー10の上方に配置される側面11b,11bと、該上面11aから前方の下方に屈曲して延ばされ前面11cと、を有して構成されており、前面11cと側面11bのそれぞれとを繋げる部分は、前面11cから両側面11b,11bに向かって湾曲するように形成された湾曲部11d,11dとなっている。
【0017】
ボンネット本体11の前面11cから両側面11b,11bにかけては、エンジンルームに通気するための通風孔12,13が貫通形成されている。詳細には、ボンネット本体11の前面11cから両側面11b,11bにかけて開口した部分に、横方向に架け渡された横フレーム11eと、中央部分にて縦方向に架け渡された中央縦フレーム11fと、前面11cの両脇付近にて縦方向に架け渡されたサイド縦フレーム11g,11gと、が格子状に配置されており、これらフレームに区画された形で、前面11cに4箇所の通風孔12と、湾曲部11dを含む前面11cから側面11bにかけて4箇所の通風孔13とが貫通形成されている。
【0018】
ボンネット本体11の内側にあっては、図3に示すように、上記複数の通風孔12,13の外縁を成す部分に、複数のボルト孔11hが周回するような形で配置されている。このうち、通風孔12,13の上方に配置されるボルト孔11hが形成される部分は、ボンネット本体11の内面11ifを盛り上げたリブ状に形成されており、その尾根状部分が後述するネット部材20の上端部との当接面11jとなっている。また、両側の通風孔13の後側部分には、上下2箇所の合計4箇所に内面11ifを盛り上げたリブ11rが形成されており、そのリブ11rの尾根状部分の表面が後述するネット部材20の側端部との当接面11mとなっている。
【0019】
そして、上下に2箇所に配置された通風孔12,13のそれぞれの下方の縁部分、中央縦フレーム11fの両脇部分、サイド縦フレーム11g,11gの内側が、ボンネット本体11の内面11ifを盛り上げたリブ状に形成されており、その尾根状部分のそれぞれが後述するネット部材20との当接面11kとなっている。つまり、後述するネット部材20は、上段で左右に延びる当接面11j、中段及び下段で左右上下に延びる当接面11k,11k、両脇で上下に延びる4箇所の当接面11mに対して密着し、通風孔12,13を内側から覆うことになる。
【0020】
なお、ボンネット本体11の上面11aの内面には、支持フレーム15が固着されており、該支持フレーム15の両側端部には、ボンネット本体11を閉めた際の衝撃を吸収すると共に走行中のがたつきを防止するためのスプリング17,17が配置され、支持フレーム15の中央付近には、エンジンルームに設置されたフックに係合するコの字状のバー16が配置されている。
【0021】
一方、上記通風孔12,13を内側から覆うネット部材は、図6(a)に示すように、樹脂製からなるメッシュ状に形成されており、ボンネット本体11の前面11cの内側にあって、通風孔12に対して貼り合わされる中央部20aと、前面11cから湾曲部11dを介して側面11bの内側にあって、通風孔13に対して貼り合わされる側方部20bとを有する平面形状に形成されている。ネット部材20の縁部分には、上記ボンネット本体11の複数のボルト孔11h(図3参照)に対応する位置に、複数のボルト通し孔20hが穿設されている。
【0022】
上記ボンネット本体11の内側に貼り合わされるネット部材20のさらに内側には、図6(b)に示すプレート部材21が貼り合わされる。該プレート部材21は、上記ネット部材20よりも剛性が高い樹脂材料からなり、図6(b)及び図7に示すように、ネット部材20の側方部20bの形状に合わせた外形状を有すると共に、通風孔13,13に対応する部分に、貫通孔21a,21bがそれぞれ貫通形成されている。また、上記ネット部材20の複数のボルト通し孔20hに対応する位置(即ち、ボンネット本体11のボルト孔11hに対応する位置)には、複数のボルト通し孔21hが穿設されており、つまり図7に示すように、ネット部材20及びプレート部材21を重ねると、ボルト通し孔20h及びボルト通し孔21hの位置が一致する。なお、プレート部材21は、ボンネット本体11の湾曲部11dの内面に合わせた曲率を有する湾曲形状に形成されている方が好ましい。
【0023】
以上のような形状からなるネット部材20及びプレート部材21は、図4に示すように、ボンネット本体11の通風孔12,13を覆うようにネット部材20が配置され、更に、ボンネット本体11の湾曲部11dの内面との間にあって該ネット部材20を挟み込むようにプレート部材21が配置され、複数のボルト25によって固定される。
【0024】
これにより、湾曲部11dにあっても、図5に示すように、プレート部材21によってネット部材20がボンネット本体11の湾曲部11dの内面(特にリブ状の尾根部分の当接面11j,11kにおける湾曲部分)に密着するように挟み込まれ、平面状のネット部材20が湾曲部11dに沿って湾曲されても、しわが生じないように貼り合わされて、樹脂製のネット部材20の端部(外縁部分)が部分的に膨出することを防止する。従って、樹脂製のネット部材20を用いてパンチングメタル等を用いる場合よりもコストダウンすることを可能にするものでありながら、ネット部材20とボンネット本体11との間に隙間を生じてしまうことを防止して、エンジンルームの防塵性を高めることができる。
【0025】
また、プレート部材21がネット部材20よりも剛性が高い樹脂材料からなるので、プレート部材21によってネット部材20をボンネット本体11の内面に強く押し付けることができ、ネット部材20の膨出をより確実に抑えることができる。
【0026】
なお、上記実施の形態においては、作業車輌としてトラクタのボンネット装置について説明したが、これに限らず、田植機等の他の作業車輌にも同様に適用可能である。
【0027】
また、本実施の形態においては、プレート部材21を剛性の高い樹脂材料で構成したものを説明したが、プレート部材を金属製で構成しても構わない。
【符号の説明】
【0028】
1 作業車輌(トラクタ)
5 走行機体
7 ボンネット部
11 ボンネット本体
11b 側面
11c 前面
11d 湾曲部
13 通風孔
20 ネット部材
21 プレート部材
21a,21b 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に配設されたエンジンと、該エンジンを覆うボンネット部と、を備えた作業車輌において、
前記ボンネット部は、
前記走行機体に固定自在に構成されると共に、少なくとも前面から両側面に向かって湾曲する湾曲部に貫通形成された通風孔を有するボンネット本体と、
樹脂製からなるメッシュ状に形成されていると共に、前記ボンネット本体の内側から前記通風孔を覆うように配設されるネット部材と、
前記通風孔に対応する部分に貫通孔が形成されていると共に、前記ボンネット本体の内側に取付けられ、少なくとも前記ボンネット本体の湾曲部の内面との間にあって前記ネット部材を挟み込むプレート部材と、を有する、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記プレート部材は、前記ネット部材よりも剛性が高い材料からなる、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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