説明

作業車

【課題】操作の煩わしさの少ない状態で燃料消費の抑制や騒音の低減を図ることが可能なものでありながら、エンジン始動処理が良好に行えるようにして作業性の低下を回避することが可能となる作業車を提供する。
【解決手段】キースイッチがオン操作されている状態において、キースイッチ以外の他の操作具の操作に基づいてエンジンの作動を停止させるエンジン停止処理及びエンジン始動処理を実行する制御手段Hが備えられ、エンジン温度検出手段S3の検出結果に基づいて、エンジンがエンジン始動処理を実行するのに適したエンジン適温状態であるか否かを判別する適温状態判別処理、及び、エンジン適温状態であることが判別されると、そのことを報知手段100にて報知させる適温状態報知処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キースイッチがオン操作されている状態において、前記キースイッチ以外の他の操作具の操作に基づいてエンジンの作動を停止させるエンジン停止処理、及び、そのエンジン停止処理にて前記エンジンの作動を停止させたのちに前記エンジンを始動させるエンジン始動処理を実行する制御手段が備えられている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車の一例としての乗用型田植機では、従来、前記他の操作具としての走行用の変速操作具がエンジン停止位置に操作されるとエンジン停止処理を実行し、走行用の変速操作具がエンジン停止位置から別の操作位置に操作されると、エンジン始動処理を実行するようになっており、エンジンの作動状態がどのような作動状態であっても、このようなエンジン停止処理及びエンジン始動処理を実行するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記構成は、前記エンジン停止処理を実行することにより、例えば、圃場での作業の途中で、消費された植付け苗を補給する作業等、エンジンの動力を必要としない作業を行うために圃場内での苗植付け作業を一時中断させるような場合に、運転するときに操作している走行用の変速操作具を操作することによりエンジンを停止させることができ、操作の煩わしさの少ない状態で燃料の無駄な消費を抑制したり、騒音の低減を図ることが可能となるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−94753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成では、エンジンの作動状態がどのような作動状態であっても、上述したようなエンジン停止処理及びエンジン始動処理を実行するように構成されていたから、次のような不利な面があった。
【0006】
すなわち、エンジンが作動停止して低い温度にまで低下している状態からエンジンを始動させて作業を行う場合に、エンジンが充分に暖機されていない状態において、上記したようなエンジン停止処理やエンジン始動処理を実行するようにすると、エンジンの温度がエンジン始動処理を実行するのに適した温度よりも低い温度になっていることがある。そのような場合には、エンジンを停止させている状態でエンジン始動処理を実行しても、エンジン始動処理が良好に行われないおそれがある。そのとき、エンジン始動処理が良好に行われないので、運転者が故障であると誤判断する等の不利がある。
【0007】
本発明の目的は、操作の煩わしさの少ない状態で燃料消費の抑制や騒音の低減を図ることが可能なものでありながら、運転者が故障であると誤判断する等の不利を回避することが可能となる作業車を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車は、キースイッチがオン操作されている状態において、前記キースイッチ以外の他の操作具の操作に基づいてエンジンの作動を停止させるエンジン停止処理、及び、そのエンジン停止処理にて前記エンジンの作動を停止させたのちに前記エンジンを始動させるエンジン始動処理を実行する制御手段が備えられているものであって、
その第1特徴構成は、
前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段が備えられ、
前記制御手段が、前記エンジン温度検出手段の検出結果に基づいて、前記エンジンが前記エンジン始動処理を実行するのに適した温度であるエンジン適温状態であるか否かを判別する適温状態判別処理、及び、その適温状態判別処理にて前記エンジン適温状態であることが判別されると、そのことを報知手段にて報知させる適温状態報知処理を実行するように構成されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、エンジンの温度がエンジン温度検出手段により検出され、制御手段は、そのエンジン温度検出手段の検出結果に基づいて、エンジンが前記エンジン始動処理を実行するのに適した温度であるエンジン適温状態であるか否かを判別する。そして、この判別結果によりエンジン適温状態であることが判別されると、そのことを報知手段にて報知させるのである。
【0010】
そして、作業車を運転する運転者は、報知手段の報知状態によって、エンジン適温状態であるか否かが判るので、エンジン適温状態であれば、キースイッチ以外の他の操作具の操作に基づいてエンジン停止処理を実行し、さらに、エンジン始動処理を実行するようにしても、エンジン始動処理が良好に行われることになる。すなわち、圃場での作業の途中でエンジンの動力を必要としない作業を行うような場合、キースイッチ以外の他の操作具を操作することによりエンジンを停止させることができ、操作の煩わしさの少ない状態で燃料の無駄な消費を抑制したり、騒音の低減を図ることが可能となる。
【0011】
これに対して、エンジン適温状態でないときは、エンジン停止処理の後にエンジン始動処理を実行すると、エンジン始動処理が良好に行われないおそれがあるから、上述したように、エンジン適温状態であることが判別されると、そのことを報知手段にて報知させる構成とすることで、運転者は、エンジン適温状態でないことを報知手段の報知内容から認識することができ、他の操作具の操作に基づくエンジン停止処理の実行を行わないようにすることができる。つまり、エンジン適温状態でないにもかかわらずエンジン停止処理を実行することによって運転者が故障であると誤判断する等の不利を回避することができる。
【0012】
従って、操作の煩わしさの少ない状態で燃料消費の抑制や騒音の低減を図ることが可能なものでありながら、運転者が故障であると誤判断する等の不利を回避することが可能となる作業車を提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記制御手段が、人為操作式の報知状態切換手段の指令に基づいて、前記適温状態報知処理を実行する状態と実行しない状態とに切り換え自在に構成されている点にある。
【0014】
第2特徴構成によれば、報知状態切換手段の指令に基づいて前記適温状態報知処理を実行する状態に切り換えておくと、エンジン適温状態でないときは、運転者が報知手段の報知状態よりそのことを判断することができる。
そして、報知状態切換手段の指令に基づいて前記適温状態報知処理を実行しない状態に切り換えておくと、エンジン適温状態であることが判別される毎に、報知処理が行われることがないので、このような報知が必要とされない場合における報知状態の紛らわしさを回避することができる。
【0015】
このように適温状態報知処理を実行する状態と実行しない状態のうちの運転者が希望する所望の状態に切り換えて使用することができ、使い勝手がよいものとなる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、前記制御手段が、前記エンジン適温状態でないと判別すると、前記他の操作具の操作にかかわらず前記エンジン停止処理を実行しないように構成されている点にある。
【0017】
第3特徴構成によれば、エンジン適温状態でないときは、他の操作具が操作されてもエンジンが停止することがないから、それに引く続くエンジン始動処理も行われないので、エンジンの温度が低いことに起因してエンジン始動処理が良好に行われないという不都合を未然に回避することができる。
尚、このとき、エンジンが作動しているのでエンジンの温度は徐々に上昇することになり、報知手段にてエンジン適温状態になったことを報知手段にて確認したのちは、他の操作具の操作に基づくエンジン停止処理を実行させることが可能となる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、前記制御手段が、人為操作式の動作モード切換手段の指令に基づいて、前記エンジン温度検出手段の検出結果に基づいて、前記エンジン適温状態でないと判別すると、前記他の操作具の操作にかかわらず前記エンジン停止処理を実行しない停止処理牽制モードと、前記エンジン温度検出手段の検出結果にかかわらず、前記他の操作具の操作に基づいて前記エンジン停止処理を実行する停止処理実行モードとに切り換え自在に構成されている点にある。
【0019】
第4特徴構成によれば、動作モード切換手段の指令により停止処理牽制モードに切り換えておくと、エンジン適温状態でないときは、他の操作具が操作されてもエンジンが停止することがない。又、動作モード切換手段の指令により停止処理実行モードに切り換えておくと、エンジン適温状態でなくても他の操作具の操作に基づいてエンジン停止処理を実行するのでエンジンの作動を停止させることができる。このようにエンジン適温状態でないときに、エンジンの作動を停止させたのち、エンジン始動処理を実行してもエンジンが良好に始動しないおそれがあるが、この場合には、運転者がキースイッチを始動位置に操作することによりエンジンを始動させることができる。
【0020】
このように、エンジン適温状態でないときは他の操作具が操作されてもエンジンが停止しない状態と、エンジン適温状態であるか否かにかかわらず他の操作具の操作に基づいてエンジンを停止させる状態、のうちの運転者が希望する所望の状態に切り換えて使用することができ、使い勝手がよいものとなる。
【0021】
本発明の第5特徴構成は、前記エンジン温度検出手段が、前記エンジンの温度としてエンジン冷却水の温度を検出するように構成されている点にある。
【0022】
エンジン冷却水はエンジンを冷却させるために循環通流しており、エンジンの温度を検出するのに適したものであり、又、従来より、エンジンの作動状態を検出するために、エンジン冷却水の水温を検出するセンサが備えられるのが一般的である。
【0023】
第5特徴構成によれば、エンジン温度検出手段がエンジンの温度としてエンジン冷却水の温度を検出するように構成されるものであるから、エンジン温度検出手段として、このような既存の水温センサを利用することが可能であり、構成が複雑化することのない状態でエンジンの温度を検出することが可能となる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、前記制御手段が、前記エンジン停止処理にて前記エンジン並びに前記エンジンにて駆動される冷却ファンの作動を停止させたのちに、前記エンジン温度検出手段にて検出される前記エンジンの温度が上限値を超えると、前記エンジン始動処理を実行するように構成されている点にある。
【0025】
エンジンが作動するときは、エンジンにて冷却ファンが駆動され、この冷却ファンが生起する風によりエンジンを冷却させることができる。そして、特に周囲温度が高い場合等において、エンジン停止処理を実行してエンジンと冷却ファンの作動を停止させると、それまで作動していたエンジンに対する冷却ファンによる冷却作用が停止することにより、エンジンの温度が上昇することがあり、このようにエンジンの温度が上限値を超えると、エンジンや周囲の装置に対して悪影響を与えるおそれがある。
【0026】
そこで、第6特徴構成によれば、エンジン停止処理にてエンジン並びにエンジンにて駆動される冷却ファンの作動を停止させたのちに、エンジン温度検出手段にて検出されるエンジンの温度が上限値を超えると、エンジンを始動させて冷却ファンが生起する風によりエンジンを冷却させるのである。
【0027】
従って、エンジンを停止させることによりエンジンの温度が上昇するようなことがあっても、冷却ファンによる冷却作用を発揮させることで、温度の上昇を抑制することができる。
【0028】
本発明の第7特徴構成は、前記制御手段が、前記エンジンが作動しているときに、前記エンジン温度検出手段にて検出される前記エンジンの温度が上限値を超えると、前記他の操作具の操作にかかわらず前記エンジン停止処理を実行しないように構成されている点にある。
【0029】
特に周囲温度が高い場合等において、エンジンが作動しているときに、エンジンの温度が上限値を超えるような場合には、前記他の操作具の操作に基づくエンジン停止処理を実行すると、さらにエンジンの温度が上昇してエンジンや周囲の装置に対して悪影響を与えるおそれがある。
【0030】
そこで、第7特徴構成によれば、エンジンが作動しているときに、エンジン温度検出手段にて検出されるエンジンの温度が上限値を超えるような場合には、他の操作具の操作にかかわらずエンジン停止処理を実行しないようにしている。
【0031】
このように構成することで、エンジンの温度が上限値を越えてさらに上昇することを回避させることができ、エンジンの温度が上昇してエンジンや周囲の装置に対して悪影響を与えるおそれが少ないものとなる。
【0032】
本発明の第8特徴構成は、前記制御手段が、前記エンジン停止処理にて前記エンジンの作動を停止させてから前記エンジン始動処理を実行するまでの間のエンジン停止時間の積算値を求めるように構成され、且つ、前記エンジン停止処理にて前記エンジンの作動を停止させてから前記エンジン始動処理を実行するまでの間は、前記エンジン停止時間の積算値を表示手段に表示させるように構成されている点にある。
【0033】
第8特徴構成によれば、エンジン停止処理にてエンジンの作動を停止させてからエンジン始動処理を実行するまでの間のエンジン停止時間の積算値を求め、エンジン停止処理にてエンジンの作動を停止させてからエンジン始動処理を実行するまでの間は、エンジン停止時間の積算値を表示手段に表示させるようにしたから、運転者は、表示手段に表示されるエンジン停止時間の積算値を目視することで、エンジンの動力を必要としない作業を行うために圃場内での作業を一時中断させてエンジンを停止させているときに、そのようにエンジンを停止させていた時間がどの程度の時間であるかを確認することができる。
【0034】
つまり、運転者が、不必要なエンジン作動を停止させて燃料消費を抑制するようにした時間の積算値を確認することで、省エネルギにどの程度寄与しているかを認識することができる。
【0035】
本発明の第9特徴構成は、前記制御手段が、前記キースイッチがエンジン始動位置に操作されると、前記エンジン温度検出手段の検出結果にかかわらず、前記エンジンを始動させるように構成されている点にある。
【0036】
第9特徴構成によれば、キースイッチをエンジン始動位置に操作することで、エンジン温度検出手段の検出結果にかかわらず、エンジンを始動させることができる。つまり、エンジン適温状態であるか否かにかかわらず、運転者の意思によりエンジンを始動させることができる。
【0037】
本発明の第10特徴構成は、前記制御手段が、前記エンジンが作動開始してから作動停止するまでの間のエンジン作動時間の積算値を求めるように構成され、且つ、前記キースイッチがオン操作されると、前記エンジン作動時間の積算値を表示手段に表示させるように構成されている点にある。
【0038】
第10特徴構成によれば、エンジンが作動開始してから作動停止するまでの間のエンジン作動時間の積算値、言い換えると、エンジンが実際に作動している実稼動時間の累積値を求め、キースイッチがオン操作されると、その値を表示手段に表示させることになる。
【0039】
そして、キースイッチをオン操作させる毎に、それまでのエンジンの実稼動時間の累積値が表示されるから、例えば、実稼動時間の累積値が設定時間に達すると必要とされるメンテナンス作業を適切なタイミングで行うことができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】動力系統図である。
【図4】主変速装置の操作構造を示す側面図である。
【図5】主変速装置の操作構造を示す正面図である。
【図6】変速操作用のガイド板の平面図である。
【図7】主変速レバーとブレーキ操作との連係状態を示す側面図である。
【図8】主変速レバーとブレーキ操作との連係状態を示す側面図である。
【図9】主変速レバーとブレーキ操作との連係状態を示す側面図である。
【図10】制御ブロック図である。
【図11】電源供給状態を示す図である。
【図12】情報表示部の表示内容を示す図である。
【図13】制御動作のフローチャートである。
【図14】制御動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る作業車の実施形態を作業車の一例としての乗用型田植機に適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0042】
図1及び図2に示すように、乗用型田植機は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪1、及び、左右一対の駆動自在な後輪2が装備された走行機体3を備え、この走行機体3の後部に作業装置としての苗植付装置4がアクチュエータとしての油圧シリンダ5にて駆動昇降自在にリンク機構6を介して連結され、走行機体3の車体後部に施肥装置7を備えて構成されている。
【0043】
走行機体3における機体フレーム8の前部には、前輪1を軸支したミッションケース9が連結固定されるとともに、機体フレーム8の後部には、後輪2を軸支した後部伝動ケース10がローリング自在に支持されている。また、ミッションケース9から前方に延出された前フレーム11にエンジン12が横向きに搭載されてボンネット13で覆われているとともに、エンジン12の後方に位置する機体操縦部には、前輪1を操向操作するためのステアリングハンドル14、運転座席15、運転部ステップ16などが備えられ、また、機体前部の左右には、予備苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台17が設けられている。
【0044】
エンジン12は水冷式であり、図示しないウォータージャケット内のエンジン冷却水をラジエータ30との間で循環させ、エンジン12にて駆動される冷却ファン31によりラジエータ30に送風して冷却するように構成されている。そして、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温センサS3(エンジン温度検出手段の一例)が備えられている(図10参照)。
【0045】
苗植付装置4は、6条分の苗を載置して設定ストロークで往復横移動される苗のせ台21、苗のせ台21の下端から1株分ずつ苗を切り出して田面Gに植付けてゆく6組の回転式の植付機構22、植付け箇所を整地する3個の接地フロート23等を備えて構成されている。
【0046】
施肥装置7は、運転座席15と苗植付装置4との間において走行機体3上に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー24、この肥料ホッパー24内の肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し機構25、繰り出された肥料を供給ホース26を介して各接地フロート23に備えた作溝器27に風力搬送する電動ブロア28等を備えており、作溝器27によって田面Gに形成した溝に肥料を送り込んで埋設してゆくよう構成されている。
【0047】
図1及び図3に示すように、ミッションケース9の側面には、エンジン12にベルト連動された静油圧式の無段変速装置(HST)からなる主変速装置41が連結され、その出力がミッションケース9に入力されて作業系と走行系とに分岐される。分岐された作業系の動力は、ワンウェイクラッチ42によってその正転動力のみが取出され、手動操作にて6段のギヤ変速が可能な株間変速機構43および植付クラッチ(図示せず)を経て作業用動力取出し軸(PTO軸)45(図1参照)から取出され、苗植付装置4に伝達されるようになっている。
【0048】
分岐された走行系動力は、ギヤ式の副変速装置47によって高低2段に変速された後、前輪系と後輪系に再度分岐され、前輪系の動力はデフロック可能な差動装置48を介して左右の前輪1に伝達されるとともに、後輪系の動力は伝動軸49を介して後部伝動ケース10に伝達され、多板式のサイドクラッチ50を介して左右の後輪2に伝達される。又、後部伝動ケース10には機体停止用の多板式のブレーキ51が装備されており、このブレーキ51は、運転部ステップ16の右側足元に配備された足踏み操作式のブレーキ操作具52に機械的に連動連結されている。
【0049】
又、図7〜図10に示すように、ブレーキ操作具52が踏み込み操作されたことを検出するブレーキセンサS1が備えられている。このブレーキセンサS1は、ブレーキ操作具52が踏み込み操作されていなければオフ状態となり、ブレーキ操作具52が踏み込み操作されるとオン状態に切り換わるように構成されている。
【0050】
次に、主変速装置41の変速操作構造について説明する。
主変速装置41は、ステアリングハンドル14の左脇に配備された変速操作具としての主変速レバー53(キースイッチ90以外の他の操作具Dの一例)で変速操作されるよう構成されている。
すなわち、図4及び図5に示すように、ステアリングハンドル14を支持するように立設されたハンドルポスト55には支持ブラケット56が固着され、この支持ブラケット56の左側端部には、支軸57を介してデテント板58が横向き支点a周りに前後揺動可能に支持され、このデテント板58に主変速レバー53が前後向き支点b周りに左右揺動可能に支持されている。ハンドルポスト55を立設支持する支持枠59に、横向き支点c周りに回動可能に中継回動部材60が支持されており、この中継回動部材60とデテント板58とが連係ロッド61を介して連係され、さらに、この中継回動部材60と、主変速装置41の変速操作軸62に連結された変速アーム63とが操作ロッド64を介して連係されている。
【0051】
支持ブラケット56にはガイド板65が固着されており、このガイド板65に形成された段違い状の案内溝66に係合する基端側案内部53aが主変速レバー53の基端部に一体的に設けられている。
すなわち、図5及び図6に示すように、主変速レバー53の基部に、棒体を略L字形に折り曲げて形成された基端側案内部53aが一体的に固定される状態で設けられている。この基端側案内部53aがデテント板58にて前後向き支点bの周りで回動自在に支持されており、案内溝66を上下に貫通しており、案内溝66と基端側案内部53aとの係合案内作用によって主変速レバー53を所定の段違い操作経路に沿って前後に揺動すべく案内するように構成されている。
【0052】
図6に示すように、段違い操作経路の段違い部位が主変速装置41の中立位置Nに相当し、中立位置Nは前進側中立位置Nfと後進側中立位置Nrとがあり、前進側中立位置Nfの前方に前進変速操作経路Fが形成され、且つ、後進側中立位置Nrの後方に後進変速操作経路Rが形成されている。前進側中立位置Nfと後進側中立位置Nrとが走行停止用の操作位置に相当し、前進変速操作経路Fと後進変速操作経路Rとが走行変速用の操作位置に相当しており、これらにより変速操作用の通常操作経路が構成される。
【0053】
図4に示すように、デテント板58の外周に並列形成した9つの凹部67に、片持ちバネレバー68の遊端に支持したデテントローラ69を弾性係入させることで、主変速レバー53を前進5段(F1〜F5)、中立位置N、および、後進3段(R1〜R3)の各変速位置に保持することができるようになっている。
【0054】
図6に示すように、ガイド板65に形成される案内溝66における前進側中立位置Nfの横外側には、走行停止状態をもたらすエンジン停止位置Qが設定されるとともに、主変速レバー53の基端側案内部53aがエンジン停止位置Qに操作されたことを検知する停止位置検出センサS2が装備されている。
【0055】
そして、主変速レバー53の横方向への操作の中心となる前後向き支点bには、ネジリバネ70が装備されており、主変速レバー53が前進側中立位置Nfに向けて移動付勢されるように構成されている。
又、案内溝66における前進側中立位置Nfとエンジン停止位置Qとの間には、バネ板からなる弾性抵抗部材79が設けられ、前進側中立位置Nfからエンジン停止位置Qへの移動に適度の抵抗が付与されるように構成されている。
【0056】
弾性抵抗部材79による抵抗力を、主変速レバー53がネジリバネ70によってエンジン停止位置Qに向けて操作される付勢力よりも大きく設定しておくことで、主変速レバー53が前進側中立位置Nfに位置する状態で手を離しても直ちにエンジン停止位置Qに移行することはなく、意識的に弾性抵抗部材79を乗り越える操作を行ってエンジン停止位置Qに移行させることになる。
【0057】
主変速レバー53をエンジン停止位置Qに操作すると停止位置検出センサS2がオン状態になり、主変速レバー53がエンジン停止位置Qから離れると、停止位置検出センサS2がオフ状態になるように構成されている。
【0058】
次に、図7〜図9を参照しながら、主変速レバー53とブレーキ操作具52との連係構造について説明する。
主変速レバー53が前進変速操作経路Fに操作されている前進走行状態、あるいは、後進変速操作経路Rに操作されている後進走行状態において、機体停止用のブレーキ操作具52が踏み込み操作されると、主変速レバー53が中立位置Nにまで強制的に復帰操作されるように、主変速レバー53とブレーキ操作具52とが連動連係されている。
【0059】
説明を加えると、中継回動部材60の機体後方側箇所に、支点e周りに前後揺動可能に牽制作動部材81が配備されている。この牽制作動部材81にはアジャストボルト81bによって支点f周りに位置微調節可能な牽制金具81aが備えられており、牽制作動部材81の前縁部が、前記中継回動部材60の支点cより上方箇所に設けた第1接当ピン82に後方から対向するよう構成されるとともに、牽制金具81aの前縁部が、中継回動部材60の支点cより下方箇所に設けた第2接当ピン83に後方から対向するよう配備されている。
【0060】
他方、ブレーキ操作具52を連結したペダル支軸84の他端部には牽制操作アーム85が固着され、この牽制操作アーム85の遊端に回動自在に枢支したボス部材86に、前記牽制作動部材81の下端から後方に向けて延出された押し引きロッド87の後端部が挿通連結されている。ここで、押し引きロッド87は、ボス部材86に対して一定範囲でのみ前後にスライド自在に挿通支持されるとともに、予め初期圧縮変形して押し引きロッド87に外嵌装着した圧縮コイルバネ88によって押し引きロッド87はボス部材86に対して前方スライド限界にスライド付勢されている。
【0061】
図7は、ブレーキ操作具52が踏み込み操作されないで主変速レバー53が前進の最高速である前進5速F5にある状態を示し、また、図8は、ブレーキ操作具52が踏み込み操作されないで主変速レバー53が後進の最高速である後進3速R3にある状態を示している。
【0062】
主変速レバー53が前進変速操作経路Fにある状態(図7の状態)でブレーキ操作具52が踏み込み操作されると、牽制操作アーム85が図中反時計方向に回動されることで押し引きロッド87が前方(図では左方)に突き出され、牽制作動部材81は支点e周りに時計方向に揺動操作される。これによって、図9に示すように、牽制作動部材81は第1接当ピン82を前方に接当押圧し、中継回動部材60は支点c周り反時計方向に強制回動され、主変速レバー53が中立位置N側に向けて戻される。
【0063】
また、主変速レバー53が後進変速操作経路Rにある状態(図8の状態)でブレーキ操作具52を踏み込み操作するときには、牽制作動部材81の牽制金具81aが第2接当ピン83を前方に接当押圧し、中継回動部材60は支点c周り時計方向に強制回動され、主変速レバー53が中立位置N側に向けて戻される。
【0064】
主変速レバー53が中立位置Nに到ると(図9の状態)、第1接当ピン82および第2接当ピン83が共に牽制作動部材81に接当することで、牽制作動部材81及び中継回動部材60は、主変速レバー53が中立位置Nとなる一定姿勢に保持される。
なお、牽制作動部材81の牽制金具81aを位置調節することで、第1接当ピン82および第2接当ピン83を共に牽制作動部材81に接当させて中継回動部材60を正確に中立復帰させることができる。
【0065】
ここで、圧縮コイルバネ88によって与えられた初期圧縮力は、主変速レバー53を強制移動させるのに必要な操作力より大きく設定されており、主変速レバー53が中立位置Nに到るまでは、圧縮コイルバネ88は操作反力で圧縮変形されることはない。そして、主変速レバー53が中立位置Nに到った後、更にブレーキ操作具52が踏み込み操作されると、前方に移動不能となった押し引きロッド87に対して牽制操作アーム85が圧縮コイルバネ88を更に圧縮変形させながら図中反時計方向に回動されることで十分なブレーキ操作ストロ−クが確保される。
【0066】
副変速装置47は、植付け作業用の植付け変速状態と路上走行用変速状態の2段階に切り換え自在に構成されるとともに、この副変速装置47は運転座席15の左脇に配備された副変速レバー54で操作されるように構成されている。つまり、副変速レバー54が、植付け変速用操作位置と、路上走行用操作位置とに切り換え自在に設けられ、その切り換え操作に基づいて副変速装置47の変速状態が切り換わる構成となっている。そして、圃場での植付け作業中は、副変速装置47は植付け変速状態に維持されることになる。
【0067】
図10に示すように、油圧シリンダ5に作動油を給排操作する制御弁29が備えられており、制御弁29により油圧シリンダ5に作動油が供給されると、油圧シリンダ5が収縮作動して苗植付装置4が上昇し、制御弁29により油圧シリンダ5から作動油が排出されると、油圧シリンダ5が伸長作動して苗植付装置4が下降するように構成されている。
【0068】
又、走行機体3に対するリンク機構6の昇降角度を検出するポテンショメータからなるリンク角センサS4が備えられて、リンク角センサS4の検出値が制御装置Hに入力されており、走行機体3に対するリンク機構6の角度を検出することにより、走行機体3に対する苗植付装置4の高さを検出することができるようになっている。
【0069】
運転座席15の前方に位置する操作パネル35の中央部には、液晶表示パネルを用いた情報表示部36が備えられている。詳述はしないが、情報表示部36には、例えば、苗のせ台21上に苗残量が少なくなったことやバッテリーVの電圧が低下していること等を表示したり、その他の種々の情報が表示される。
【0070】
図12に示すように、情報表示部36には4桁の数値表示部37が備えられ、この数値表示部37は、数値を表示するだけではなく、アルファベット及び*印等を表示することができるようになっており、後述する制御作動の状態表示としても利用するようになっている。ちなみに、図12(a)は数値表示部37の全てのセグメントが点灯している全点灯状態を示し、図12(b),(c),(d)は、後述するような制御における状態表示の表示例を示している。
【0071】
図10に示すように、ブレーキセンサS1、停止位置検出センサS2、冷却水温センサS3、リンク角センサS4の検出値が制御装置Hに入力されており、これ以外にも、エンジン12の回転数を検出するエンジン始動状態検出手段としてのエンジン回転数センサS5が備えられ、このエンジン回転数センサS5の情報も制御装置Hに入力されるように構成されている。尚、これ以外にもバッテリーVの電圧を検出する電圧検出手段(図示せず)が備えられる。
【0072】
図11は、制御装置Hやその他の電装品への電源供給状態を示しており、この図に示すように、制御装置Hは、キーKにて操作されるキースイッチ90が入位置(ON)に操作される(オン操作される)と、バッテリーVの電源が投入されて起動される。又、キースイッチ90が切位置(OFF)に操作されても(オフ操作されても)、直ちに電源の供給が停止されるのではなく、自己保持回路91によって電源供給が継続されるようになっており、キースイッチ90がオフ操作されたときにおける各部の動作状態を図示しない不揮発性メモリに書き込み記憶させたのちに、自己保持回路91を遮断して電源供給を停止するように構成されている。また、キースイッチ90が始動位置(ST)に操作されたときには、バッテリーVとエンジン始動用モータ93との間の電源供給路に介装されたスターター起動用のリレー92をオン状態に切り換えてエンジン始動用モータ93を作動させてエンジン12を始動させることになる。
【0073】
尚、図示はしていないが、エンジン12に対する燃料供給量を変更調節自在な調速装置が備えられ、主変速レバー53の操作状態に対応して速度が大になるほど燃料供給量を増加させるように調速装置を連動操作する連動操作機構が備えられている。
【0074】
又、バッテリーVから制御装置Hを含む全ての電装品に対して電力を供給する主電源線95には、電力供給を断続自在な断続回路96が介装されており、この断続回路96は、制御装置Hからの指令によって電力供給状態と遮断状態とに切り換えることができるように構成され、又、キースイッチ90が始動位置(ST)に操作されたときに電力が供給されて作動する駆動回路97によっても電力供給状態と遮断状態とに切り換えることができるように構成されている。
【0075】
そして、制御装置Hは、キースイッチ90が入位置に操作されている状態において、キースイッチ以外の他の操作具としての主変速レバー53のエンジン停止位置Qへの操作に基づいてエンジン12の作動を停止させるエンジン停止処理、且つ、エンジン停止処理にてエンジン12の作動を停止させたのちにエンジン始動用操作に基づいてエンジン12を始動させるエンジン始動処理を実行するように構成されている。
【0076】
このような処理は、圃場において苗植付け作業を行なっている場合に、例えば、苗植付け作業にて消費された植付け苗を補給する苗補給作業等を行うときに、エンジン12を一時的に停止させることにより、燃料の無駄な消費を抑制したり、騒音の低減を図ることが可能となるようにしたものである。又、苗補給作業等が終了すると、エンジン12を始動させて苗植付け作業を行うことができる。
【0077】
具体的には、変速レバー53がエンジン停止位置Qに操作されて、停止位置検出センサS2が設定時間(例えば数秒)継続してオン操作されると、エンジン12の作動を自動で停止させるエンジン停止処理を実行し、ブレーキ操作具52が新たに踏み込み操作されて、ブレーキセンサS1のオフ状態からオン状態への切り換わりが検出され、且つ、停止位置検出センサS2がオフ操作されるとエンジン12を始動させるエンジン始動処理を実行するように構成されている。
【0078】
停止位置検出センサS2が設定時間(例えば数秒)継続してオン操作されることを条件とするのは、誤操作により短時間だけオン操作されることによりエンジン12を停止させないようにしたものである。
【0079】
エンジン12を停止させるための構成としては、エンジン12に供給する燃料供給を遮断する燃料遮断弁74を遮断状態に切り換える構成である。尚、エンジン12を停止させるための構成としては、エンジン12が点火プラグを備えるものであれば、点火プラグに対する通電を遮断する構成とするものでもよい。
【0080】
制御装置Hは、冷却水温センサS3の検出結果に基づいて、エンジン12がエンジン始動処理を実行するのに適した温度であるエンジン適温状態であるか否かを判別する適温状態判別処理、及び、その適温状態判別処理にてエンジン適温状態であることが判別されると、そのことを報知手段100としての情報表示部36にて報知させる適温状態報知処理を実行するように構成されている。
【0081】
制御装置Hは、人為操作式の報知状態切換手段としての報知牽制スイッチ32の指令に基づいて、前記適温状態報知処理を実行する状態と実行しない状態とに切り換え自在に構成されている。さらに、人為操作式の動作モード切換手段としてのモード切換スイッチ33の指令に基づいて、冷却水温センサS3の検出結果に基づいて、エンジン適温状態でないと判別すると、変速レバー53のエンジン停止位置Qへの操作にかかわらずエンジン停止処理を実行しない停止処理牽制モードと、冷却水温センサS3の検出結果にかかわらず、変速レバー53のエンジン停止位置Qへの操作に基づいてエンジン停止処理を実行する停止処理実行モードとに切り換え自在に構成されている。
【0082】
又、制御装置Hは、エンジン12が作動している間は、エンジン12が作動開始してから作動停止するまでの間のエンジン作動時間の積算値を求めるように構成され、エンジン12が停止している間は、エンジン停止処理にてエンジン12の作動を停止させてからエンジン始動処理を実行するまでの間のエンジン停止時間の積算値を求めるように構成されている。そして、エンジン12が作動している間は、エンジン作動時間の積算値を表示手段101としての情報表示部36に表示させ、エンジン12が停止している間は、エンジン停止時間の積算値を表示手段101としての情報表示部36に表示させるように構成されている。
従って、この実施形態では、情報表示部36が、エンジン適温状態であることを報知する報知手段100と、エンジン作動時間の積算値やエンジン停止時間の積算値を表示する表示手段101とを兼用する構成となっている。
【0083】
次に、図13及び図14のフローチャートに基づいて、制御装置Hによる制御動作について説明する。
【0084】
キースイッチ90がオン操作されると、オン操作されてから設定時間(例えば数秒間)が経過するまでの間は、エンジン作動時間の積算値を情報表示部36に表示させる(ステップ1,2,3)。
このときの情報表示部36の表示内容としては、例えば、図12(b)に示すように、数値表示部37を利用してエンジン作動時間の積算値を数値で表示する(アワーメータ表示)。図12に示す例では、エンジン作動時間の積算値が「250時間」であることを表している。
【0085】
キースイッチ90がオン操作されてから設定時間が経過すると、そのとき、報知牽制スイッチ32にて適温状態報知処理を実行しない状態が指令されていれば、すぐに、情報表示部36の表示内容を変更する(ステップ4,5)。具体的には、例えば、図12(c)に示すように、情報表示部36に「*ECO」という表示を行う。
【0086】
報知牽制スイッチ32にて適温状態報知処理を実行する状態が指令されていると、オン操作されてから設定時間が経過しても、すぐに情報表示部36の表示内容が変更することはなく、冷却水温センサS3の検出結果に基づいてエンジン冷却水の温度が設定温度以上にまで上昇しているか否かを判別する(ステップ6)。このステップ6の判別処理が適温状態判別処理に対応する。この判別処理にてエンジン冷却水の温度が設定温度以上に上昇していれば、情報表示部36の表示内容を、エンジン12がエンジン始動処理を実行するのに適した温度になっていることを示す表示内容に変更する(ステップ8)。つまり、図12(c)に示すように、情報表示部36に「*ECO」という表示を行う。このステップ8の表示内容を変更する処理が適温状態報知処理に対応する。
【0087】
エンジン冷却水の温度を判別するための設定温度としては、エンジン12がエンジン始動処理を実行するのに適した温度であるエンジン適温状態であるか否かを判別するのに適した温度が予め設定されている。
【0088】
主変速レバー53がエンジン停止位置Qに操作されて、停止位置検出センサS2がオン状態になり、その状態が設定時間(数秒間)以上継続すると(ステップ9,10)、情報表示部36の表示内容を、エンジン12が停止している状態であることを表す表示に変更して(ステップ11)、苗植付装置4の上昇操作(ステップ12)を実行したのちに、燃料遮断弁74を遮断状態に切り換えてエンジン12を停止させるエンジン停止処理を実行する(ステップ13)。
【0089】
ステップ11の表示処理について説明すると、具体的には、図12(d)に示すように、情報表示部36に「*ECO」という文字を表示する状態と、エンジン停止時間の積算値を数値で表示する状態とを設定周期(数秒間)毎に交互に切り換えて表示する。図12に示す例では、エンジン停止時間の積算値が「15時間」であることを表している。
【0090】
ステップ12の苗植付装置4の上昇操作について説明を加えると、リンク角センサS4の検出情報に基づいて、油圧シリンダ5を収縮作動させるように制御弁29を制御して、苗植付装置4を最大上昇位置にまで上昇させる操作を実行する。
【0091】
尚、主変速レバー53がエンジン停止位置Qに操作されてエンジン12が停止したのちに、運転者が主変速レバー53から手を離しても、弾性抵抗部材79による抵抗力により主変速レバー53はエンジン停止位置Qに維持される。
【0092】
制御装置Hは、エンジン停止処理を実行する場合、それまで実行していた苗植付け作業における各部の動作状態(苗植付装置4の種々の作業条件等)について図示しない不揮発性メモリに記憶しておき、エンジン12を始動させて作業を再開するときに、記憶していた動作状態と同じ状態で作業を行うようにしている。
【0093】
エンジン停止処理を実行してから設定時間が経過しても、後述するようなエンジン始動条件が成立しないときは(ステップ16,17)、バッテリーVの放電を防ぐために電源供給を遮断するようになっている(ステップ15)。具体的には、断続回路96に電力遮断状態への切り換えを指令して断続回路96を遮断させ、すべての電装品への電力供給を遮断させる。
【0094】
このように電力遮断状態に切り換えられたのち、エンジン12を始動させるためには、運転者がキースイッチ90を始動位置(ST)に操作することで対応できる。つまり、キースイッチ90が始動位置(ST)に操作されると、駆動回路97が作動して断続回路96を電力供給状態に切り換えるので、制御装置Hやその他の電装品にも電力が供給され、エンジン12の始動も行われることになる。
【0095】
エンジン停止処理によってエンジン12を停止させている場合、エンジン停止処理を実行してから設定時間が経過するまでの間に、ブレーキ操作具52が新たに踏み込み操作されることにより、ブレーキセンサS1がオフ状態からオン状態に切り換わったことが検出され(ステップ16)、さらに、主変速レバー53がエンジン停止位置Qから外れて、停止位置検出センサS2がオフ状態に切り換わると(ステップ17)、エンジン12を始動させるエンジン始動処理を実行し(ステップ18)、情報表示部36に「*ECO」という表示を行う。
【0096】
エンジン始動処理について説明すると、エンジン始動用モータ93の回転作動を開始させてエンジン12の回転操作を開始した後、エンジン回転数センサS4にて検出されるエンジン回転数が設定回転数以上になってエンジン12が始動したことが検出されると、エンジン始動用モータ93の回転作動を停止させる。
【0097】
詳述はしないが、このエンジン始動処理においては、エンジン始動用モータ93の回転作動を開始してから始動用設定時間(例えば、数秒間)が経過してもエンジン12の始動が検出されないときは、エンジン12が始動していなくてもエンジン始動用モータ93の回転作動を停止させ、その後、待機用設定時間が経過すると、再度、エンジン始動用モータ93を作動するようにして、電力の無駄な消費を抑制しながらも的確にエンジン12を始動させることができるようにしている。ちなみに、始動処理を設定回数実行しても始動しなければ異常報知等を実行して処理を終了するようにしている。
【0098】
尚、運転者がブレーキ操作具52を踏み操作している状態で、主変速レバー53をエンジン停止位置Qに操作してエンジン12を停止させたような場合には、ブレーキセンサS1はオン状態に維持されているが、そのときは、オフ状態からオン状態への切り換わりではないので、ステップ16における切り換えの判別は行われず、エンジン12が始動することはない。又、エンジン12が停止したのちに、運転者が一旦、ブレーキ操作具52の踏み込み操作を解除してブレーキセンサS1をオフ状態に切り換えたのちに、再度、ブレーキ操作具52を踏み込み操作すると、ブレーキセンサS1のオフ状態からオン状態への切り換わりが検出されてエンジン12が始動することになる。
【0099】
モード切換スイッチ33にて停止処理牽制モードが指令されていれば、エンジン冷却水の温度が設定温度未満の低い温度であるときには、主変速レバー53のエンジン停止位置Qへの操作に基づくエンジン停止処理は実行しない(ステップ7,1〜6)。
【0100】
一方、モード切換スイッチ33にて停止処理実行モードが指令されていれば、エンジン冷却水の温度が設定温度未満の低い温度であっても、主変速レバー53のエンジン停止位置Qへの操作に基づくエンジン停止処理を実行することになる(ステップ7,9〜13)。
【0101】
キースイッチ90がオン操作されている状態から、キースイッチ90がオフ操作されると、そのときエンジン12が作動中であれば、エンジン12の作動を停止させる(ステップ20,21)。キースイッチ90が始動位置(ST)に操作されると、冷却水温センサS3の検出状態にかかわらず、始動位置(ST)に操作されている間は、エンジン始動用モータ93の回転作動させる(ステップ22)。エンジン12が始動して運転者がキースイッチ90から手を離すと、キースイッチ90はオン状態に自動復帰する。
【0102】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、ステップ4にて報知牽制スイッチ32にて適温状態報知処理を実行しない状態が指令されていることが判別されると、すぐに、情報表示部36の表示内容を変更する構成としたが、適温状態報知処理を実行しない構成としては、次の(1−1)、(1−2)に記載の構成としてもよい。
【0103】
(1−1)ステップ4にて報知牽制スイッチ32にて適温状態報知処理を実行しない状態が指令されていることが判別されても、情報表示部36の表示内容を変更しない構成、つまり、アワーメータ表示を継続して実行する構成。
【0104】
(1−2)ステップ4にて報知牽制スイッチ32にて適温状態報知処理を実行しない状態が指令されていることが判別されると、その後の情報表示部36における表示を停止する構成。この場合、例えば、次回のキースイッチ操作によるエンジン始動時まで表示を行わない。
【0105】
(2)上記実施形態では、報知牽制スイッチ32にて適温状態報知処理を実行する状態が指令されている場合に、停止処理実行モードであることが判別されると、エンジン冷却水の温度が設定温度未満であれば、情報表示部36に「*ECO」という表示を行う処理を行わず、エンジン冷却水の温度が設定温度以上になると、情報表示部36に「*ECO」という表示を行う処理を行うようにしたが、このような構成に代えて、適温状態報知処理を実行する状態が指令されている場合に、停止処理実行モードであることが判別されると、エンジン冷却水の温度がどのような温度であっても、情報表示部36に「*ECO」という表示を行う処理を行うようにしてもよい。
【0106】
(3)上記実施形態では、エンジン12が作動しているときには、主変速レバー53のエンジン停止位置Qに操作されると、エンジン停止処理を実行する構成としたが、このような構成に代えて、エンジン12が作動しているときに、エンジン冷却水の温度が予め設定している上限値(例えば、沸騰状態に対応する温度)を超えると、主変速レバー53のエンジン停止位置Qへの操作にかかわらずエンジン停止処理を実行しないように構成するものでもよい。
【0107】
(4)上記実施形態では、前記エンジン停止処理を実行したのちは、ブレーキセンサS1がオフ状態からオン状態に切り換わり、且つ、停止位置検出スイッチS2がオフ状態に切り換わるまで、エンジン12を停止させる構成としたが、このような構成に代えて、エンジン停止処理にてエンジン12を停止させたのちに、エンジン冷却水の温度が予め設定している上限値(例えば、沸騰状態に対応する温度)を超えると、エンジン始動処理を実行するように構成するものでもよい。
【0108】
(5)上記実施形態では、制御装置Hが、報知牽制スイッチ32の指令に基づいて、適温状態報知処理を実行する状態と実行しない状態とに切り換え自在に構成されるものを示したが、報知牽制スイッチ32を備えずに、制御装置Hが常に適温状態報知処理を実行する構成としてもよい。
【0109】
(6)上記実施形態では、制御装置Hが、モード切換スイッチ33の指令に基づいて停止処理牽制モードと停止処理実行モードとに切り換え自在に構成されるものを示したが、モード切換スイッチ33を備えずに、制御装置Hが常に停止処理牽制モードに設定される構成としてもよい。すなわち、制御装置Hが、エンジン適温状態でないと判別すると、主変速レバー53のエンジン停止位置Qへの操作にかかわらずエンジン停止処理を実行しないように構成するものでもよい。
又、モード切換スイッチ33を備えずに、制御装置Hが常に停止処理実行モードに設定される構成としてもよい。
【0110】
(7)上記実施形態では、エンジン温度検出手段として、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温センサS3を例示したが、エンジン12の表面の温度を検出するセンサ、エンジン12の周囲の雰囲気温度を検出するセンサ等、種々の構成のセンサを用いることができる。
【0111】
(8)上記実施形態では、エンジン適温状態であることを報知する報知手段100として情報表示部36を備える構成としたが、報知手段100としては、音声で報知するものや、ランプ表示で報知するもの等、種々の構成の報知手段100を用いることができる。
又、上記実施形態では、情報表示部36を表示手段101に兼用する構成としたが、表示手段10として1、報知手段100とは異なる専用の表示装置を備える構成としてもよい。
【0112】
(9)上記実施形態では、作業車として乗用型田植機を例示したが、本発明は乗用型の直播機や乗用型耕耘機等の作業車にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の作業車であって、キースイッチ以外の他の操作具の操作に基づいてエンジンの作動を停止させるように構成されている作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0114】
12 エンジン
30 冷却ファン
32 報知状態切換手段
33 動作モード切換手段
90 キースイッチ
100 報知手段
101 表示手段
D 他の操作具
H 制御手段
ST エンジン始動位置
S3 エンジン温度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キースイッチがオン操作されている状態において、前記キースイッチ以外の他の操作具の操作に基づいてエンジンの作動を停止させるエンジン停止処理、及び、そのエンジン停止処理にて前記エンジンの作動を停止させたのちに前記エンジンを始動させるエンジン始動処理を実行する制御手段が備えられている作業車であって、
前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記エンジン温度検出手段の検出結果に基づいて、前記エンジンが前記エンジン始動処理を実行するのに適した温度であるエンジン適温状態であるか否かを判別する適温状態判別処理、及び、その適温状態判別処理にて前記エンジン適温状態であることが判別されると、そのことを報知手段にて報知させる適温状態報知処理を実行するように構成されている作業車。
【請求項2】
前記制御手段が、人為操作式の報知状態切換手段の指令に基づいて、前記適温状態報知処理を実行する状態と実行しない状態とに切り換え自在に構成されている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記制御手段が、前記エンジン適温状態でないと判別すると、前記他の操作具の操作にかかわらず前記エンジン停止処理を実行しないように構成されている請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
前記制御手段が、人為操作式の動作モード切換手段の指令に基づいて、
前記エンジン温度検出手段の検出結果に基づいて、前記エンジン適温状態でないと判別すると、前記他の操作具の操作にかかわらず前記エンジン停止処理を実行しない停止処理牽制モードと、
前記エンジン温度検出手段の検出結果にかかわらず、前記他の操作具の操作に基づいて前記エンジン停止処理を実行する停止処理実行モードとに切り換え自在に構成されている請求項1又は2記載の作業車。
【請求項5】
前記エンジン温度検出手段が、前記エンジンの温度としてエンジン冷却水の温度を検出するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車。
【請求項6】
前記制御手段が、
前記エンジン停止処理にて前記エンジン並びに前記エンジンにて駆動される冷却ファンの作動を停止させたのちに、前記エンジン温度検出手段にて検出される前記エンジンの温度が上限値を超えると、前記エンジン始動処理を実行するように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車。
【請求項7】
前記制御手段が、
前記エンジンが作動しているときに、前記エンジン温度検出手段にて検出される前記エンジンの温度が上限値を超えると、前記他の操作具の操作にかかわらず前記エンジン停止処理を実行しないように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車。
【請求項8】
前記制御手段が、
前記エンジン停止処理にて前記エンジンの作動を停止させてから前記エンジン始動処理を実行するまでの間のエンジン停止時間の積算値を求めるように構成され、且つ、
前記エンジン停止処理にて前記エンジンの作動を停止させてから前記エンジン始動処理を実行するまでの間は、前記エンジン停止時間の積算値を表示手段に表示させるように構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の作業車。
【請求項9】
前記制御手段が、前記キースイッチがエンジン始動位置に操作されると、前記エンジン温度検出手段の検出結果にかかわらず、前記エンジンを始動させるように構成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の作業車。
【請求項10】
前記制御手段が、
前記エンジンが作動開始してから作動停止するまでの間のエンジン作動時間の積算値を求めるように構成され、且つ、前記キースイッチがオン操作されると、前記エンジン作動時間の積算値を表示手段に表示させるように構成されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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