説明

作業車

【課題】変速操作と駐車ブレーキ操作とを一の操作レバーによって行う作業車において、駐車ブレーキの操作性を向上させる。
【解決手段】操作レバー19Aと変速装置とを連係する第一リンク機構44と、操作レバー19Aと駐車ブレーキ機構17との連係及び連係解除が可能な第二リンク機構70と、を備え、操作レバー19Aが、変速経路及び中立経路の何れかに操作されると、第二リンク機構70は操作レバー19Aと駐車ブレーキ機構17とを連係せず、操作レバー19Aが、中立経路から連係経路に操作されると、第二リンク機構70は操作レバー19Aと駐車ブレーキ機構17とを連係し、さらにブレーキ経路に操作されると、駐車ブレーキ機構17が作動し、さらにロック経路に操作されると、ロック機構18が作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速操作と駐車ブレーキ操作とを一の操作レバーによって行う作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような作業車として、例えば、特許文献1に記載の技術のごとく、エンジンからの回転駆動力を走行装置に伝達する伝動機構と、伝動機構に配設され、回転駆動力を変速して機体速度を変更可能な変速装置(文献では、「主変速装置」)と、伝動機構の動作を規制可能な駐車ブレーキ機構(文献では、「駐車ロック装置」)と、手動によって揺動操作自在であって、変速装置の変速操作及び駐車ブレーキ機構のブレーキ操作が可能な一の操作レバーと、を備えたトラクタがあった。
【0003】
このトラクタは、操作レバーの操作に追従して動作するように操作レバーに連結され、かつ、操作レバーと変速装置及び駐車ブレーキ機構とを連係する一つの操作軸と、操作レバーまたは操作部材の位置を拘束して、駐車ブレーキ機構を、伝動機構の動作を規制した状態に維持可能なロック機構(文献では、「レバーガイド」及び操作レバーの下端部である「係合部」)と、を備えている。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、一つの操作軸が操作レバーと変速装置及び駐車ブレーキ機構とを連係する構成を採用することで、一つの操作レバーによる操作で、変速操作と駐車ブレーキ操作との両方の操作を行うものである。
【0005】
また、特許文献1に記載の技術では、中立経路を、変速経路を設けた範囲よりも延長した上で、中立経路の終端から中立経路に交差する方向(変速経路と平行な方向)に対して直線状に延びるブレーキ操作経路を備えている。このブレーキ操作経路に沿って操作レバーを操作することにより、操作部材が回動して駐車ブレーキ機構が揺動し、駐車ブレーキがなされる。
【0006】
さらに、ブレーキ経路の終端の先に、ロック機構が動作するロック経路を備えると共に、操作レバーを押し下げ操作しなければ操作レバーをロック経路から中立経路の側(ブレーキ経路)に操作できないように構成し、操作レバーがブレーキ経路から抜け出して駐車ブレーキが不測に解除されるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3979706号公報(段落[0007]乃至段落[0019]、段落[0033]乃至段落[0038],図7乃至図17)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
引用文献1に記載のトラクタでは、操作レバーをブレーキ経路からロック経路へ操作したり、あるいは、ロック経路からブレーキ経路へ操作したりするために、操作レバーを一旦押し下げる必要があり、駐車ブレーキの操作性には向上の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、このような実情に鑑み、変速操作と駐車ブレーキ操作とを一の操作レバーによって行う作業車において、駐車ブレーキの操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る作業車の第一特徴構成は、エンジンからの回転駆動力を走行装置に伝達する伝動機構と、前記伝動機構に配設され、前記回転駆動力を変速して機体速度を変更可能な変速装置と、前記伝動機構の動作を規制可能な駐車ブレーキ機構と、手動によって揺動操作自在であって、前記変速装置の変速操作及び駐車ブレーキ機構のブレーキ操作が可能な一の操作レバーと、前記操作レバーと前記変速装置とを連係する第一リンク機構と、前記操作レバーと前記駐車ブレーキ機構との連係及び連係解除が可能な第二リンク機構と、前記操作レバーの位置を拘束して、前記駐車ブレーキ機構を、前記伝動機構の動作を規制した状態に維持可能なロック機構と、を備え、前記操作レバーの変速操作経路として、前記変速装置の中立状態に対応する中立経路と、前記中立経路から直線状に延び、前記変速装置の変速状態に対応する変速経路と、を備え、前記ブレーキ操作は前記操作レバーの揺動操作のみによって行うものであって、前記操作レバーのブレーキ操作経路として、前記中立経路から前記変速経路と交差する方向に延びる連係経路と、前記連係経路の終端から前記連係経路と交差する方向に延びるブレーキ経路と、少なくとも前記ブレーキ経路の終端から前記ブレーキ経路と交差する方向に延びるロック経路と、を備え、前記操作レバーが、前記変速経路及び前記中立経路の何れかに操作されると、前記第二リンク機構は前記操作レバーと前記駐車ブレーキ機構とを連係せず、前記操作レバーが、前記中立経路から前記連係経路に操作されると、前記第二リンク機構は前記操作レバーと前記駐車ブレーキ機構とを連係し、さらに前記ブレーキ経路に操作されると、前記駐車ブレーキ機構が作動し、さらに前記ロック経路に操作されると、前記ロック機構が作動する点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、操作レバーと変速装置とを連係する第一リンク機構、及び、操作レバーと駐車ブレーキ機構とを連係可能な第二リンク機構を別々に備えて、操作レバーの操作経路に工夫をすることにより、変速操作及び駐車ブレーキ操作が操作レバーの一連の揺動操作のみによって行うことが可能となる。即ち、本特徴構成を採用することにより、駐車ブレーキの操作性が非常に良くなる。
【0012】
なお、操作レバーの一連の揺動操作のみによって変速操作及び駐車ブレーキ操作が可能なように構成すると、両操作間における誤操作を引き起こす可能性が生じる。しかし、本特徴構成では、第二リンク機構は、操作レバーと駐車ブレーキ機構との連係及び連係解除が可能であり、操作レバーが変速経路及び中立経路の何れかに操作されている間は、操作レバーと駐車ブレーキ機構とを連係せず、操作レバーが中立経路から連係経路に操作されて初めて、操作レバーと駐車ブレーキ機構とを連係する。したがって、変速操作及び駐車ブレーキ操作を操作レバーの一連の揺動操作のみによって行うものとしても、両操作間における誤操作の虞がない。
【0013】
本発明に係る作業車の第二特徴構成は、前記ロック機構は、前記操作レバーの側の部材に連結された係止部と、前記操作レバーに対して相対的に静止している部材に固定された被係止部と、を備え、前記操作レバーが前記ロック経路に操作されると、前記係止部が前記被係止部に係止するように構成してある点にある。
【0014】
本特徴構成のように、ロック機構を構成する係止部(または被係止部)を操作レバーの側の部材に設けると、操作レバーの操作とロック機構の作動との連動関係が直接的なものとなり、ロック機構の誤作動が生じにくい。
【0015】
本発明に係る作業車の第三特徴構成は、前記ロック経路は、前記ブレーキ経路の終端から、前記ブレーキ経路と交差する方向のうち前記中立経路の側に延びる第一ロック経路と、前記第一ロック経路の終端から、前記第一ロック経路と交差する方向のうち前記中立経路の側に延びる第二ロック経路と、を備えている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、操作レバーを第二ロック経路から中立経路に戻すには、先ず中立経路から遠ざかる方向へ操作し、そして方向変換して第一ロック経路を中立経路から遠ざかる方向に操作し、さらにもう一度方向転換してブレーキ経路に沿って連係経路に操作する必要がある。このように、ロック機構による拘束を解除するには少なくとも2回の経路変更が必要となるので、駐車ブレーキが不測に解除されにくい。
【0017】
本発明に係る作業車の第四特徴構成は、前記ロック機構は、前記操作レバーの側の部材に連結された係止部と、前記操作レバーに対して相対的に静止している部材に固定された被係止部と、を備え、前記操作レバーが前記ロック経路に操作されると、前記係止部が前記被係止部に係止するように構成してあり、前記被係止部に、前記係止部が入り込み可能な第一開口部と、前記第一開口部に隣接する突起部と、を備えると共に、前記係止部に、前記突起部が入り込み可能な第二開口部を備え、前記操作レバーが、前記変速経路または前記中立経路に操作されると、前記係止部と前記被係止部とが離間し、前記中立経路から前記連係経路の終端に操作されると、前記係止部と前記被係止部とが近接し、さらに前記連係経路の終端から前記ブレーキ経路の終端に操作されると、前記係止部が前記第一開口部に入り込んで、前記第二開口部が前記突起部に対向し、さらに前記ブレーキ経路の終端から前記第一ロック経路の終端に操作されると、前記突起部が前記第二開口部に入り込み、さらに前記第一ロック経路の終端から前記第二ロック経路の終端に操作されると、前記突起部と前記第二開口部の縁部とが係止する点にある。
【0018】
本特徴構成によると、駐車ブレーキがかかってから最終的にその状態がロックされるまでには、係止部が被係止部側の第一開口部に入り込み、続いて、被係止部側の突起部が係止部側の第二開口部に入り込み、そして、突起部と第二開口部の縁部とが係止しなければならない。即ち、ロック機構は、係止部と被係止部とのうち一方が他方に係止するという単純な係止ではなく、係止部と被係止部との相互の複雑な入り込み関係に基づく係止によるものであるので、ロック機構による拘束が不測に解除されにくい。
【0019】
本発明に係る作業車の第五特徴構成は、前記第一リンク機構は、複数の変速位置に移動自在に支持された移動軸と、機体左右方向に沿う軸芯周りでの前記操作レバーの揺動操作を第一方向での前記移動軸の動きに変換する第一運動変換機構と、機体前後方向に沿う軸芯周りでの前記操作レバーの揺動操作を第二方向での前記移動軸の動きに変換する第二運動変換機構とを備えており、前記第一運動変換機構は、機体前後方向での前記操作レバーと前記移動軸との相対位置を調整自在な第一位置調整部材を含めて構成され、前記第二運動変換機構は、機体左右方向での前記操作レバーと前記移動軸との相対位置を調整自在な第二位置調整部材を含めて構成されている点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、第一運動変換機構と第二運動変換機構とによって、操作レバーの揺動操作が第一方向及び第二方向での移動軸の動きに変換され、移動軸を複数の変速位置に移動させて、変速装置の変速を行うことができる。ここで、操作レバーの設置位置については、変速操作経路に沿って移動自在となるように設置することが求められる。また、移動軸の設置位置についても、例えば、複数の変速位置に移動自在にカバー部材等に支持させるように設置することが求められる。よって、これらの要望に応えるためには、第一リンク機構として、操作レバーと移動軸との相対位置を調整することができながら、操作レバーの動きを移動軸の動きに変換することが求められる。そこで、本特徴構成によれば、第一運動変換機構は第一位置調整部材を含めて構成してあり、第二運動変換機構は第二位置調整部材を含めて構成している。これにより、第一位置調整部材によって機体前後方向で操作レバーと移動軸との相対位置を調整するができ、第二位置調整部材によって機体左右方向で操作レバーと移動軸との相対位置を調整するができる。しかも、操作レバーと移動軸とを直接連結するのではなく、操作レバーと移動軸との間に第一運動変換機構及び第二運動変換機構が介在することで、例えば、カバー部材等に支持される移動軸から操作レバーへ振動が伝達されるのを抑制することができる。
【0021】
本発明に係る作業車の第六特徴構成は、前記第一運動変換機構及び前記第二運動変換機構の一方側は、前記移動軸に連結する連結機構を備えており、その連結機構は、前記第一運動変換機構及び前記第二運動変換機構の他方側により変換される前記移動軸の動きを許容している点にある。
【0022】
例えば、第一運動変換機構及び第二運動変換機構の一方側を第二運動変換機構とし、第一運動変換機構及び第二運動変換機構の他方側を第一運動変換機構とし、第二運動変換機構に連結機構を備えた場合にて説明する。この場合には、機体前後方向に沿う軸芯周りで操作レバーを揺動操作すると、第二運動変換機構に備えられた連結機構によって、操作レバーの動きが移動軸に伝達されて、移動軸を第二方向に移動させることができる。一方、機体左右方向に沿う軸芯周りで操作レバーを揺動操作すると、第一運動変換機構により操作レバーの動きが第一方向での移動軸の動きとして変換される。このとき、連結機構は、この第一方向での移動軸の動きを許容しているので、第一運動変換機構により変換された移動軸の動きを阻害することなく、複数の変速位置への移動軸の移動を適切に行うことができる。
【0023】
本発明に係る作業車の第七特徴構成は、前記連結機構は、連結ピン部材と連結部材とを備え、前記連結部材は、前記第一方向又は前記第二方向に延びる間隔を隔てた一対の壁部位を備え、その一対の壁部位の間に前記連結ピン部材を配置させて前記連結ピン部材に連結されている点にある。
【0024】
本特徴構成によれば、連結機構として、連結ピン部材と一対の壁部位を有する連結部材とを備えるだけでよく、連結機構の構成の簡素化を図ることができる。
【0025】
本発明に係る作業車の第八特徴構成は、前記操作レバーの側の部材及び前記第二リンク機構の側の部材のうち何れか一方に配設された突出部と、前記操作レバーの側の部材及び前記第二リンク機構の側の部材のうち何れか他方に配設されると共に、前記突出部が入り込み可能な孔部と、を備え、前記孔部に前記突出部が入り込むと、前記操作レバーと前記駐車ブレーキ機構とが前記第二リンク機構を介して連係される点にある。
【0026】
本特徴構成であれば、第二リンク機構による操作レバーと駐車ブレーキ機構との連係及び連係解除が、操作レバー側の部材及び第二リンク機構側の部材に設けた突出部と孔部という簡易な構成で成り立っているので、部品点数が軽減されると共に故障も少ない。しかも、駐車ブレーキ機構が作動するには、突出部が孔部に入り込んでいる必要があるので、不測に駐車ブレーキ機構が作動することもない。
【0027】
本発明に係る作業車の第九特徴構成は、前記突出部は、前記連係経路に沿った方向に突出しており、前記突出部の長さは、前記操作レバーを前記連係経路に沿って操作したときの前記孔部の移動量よりも短く、かつ、前記操作レバーを前記ブレーキ経路及び前記ロック経路に沿って操作したときの、前記連係経路に沿った方向における前記孔部の移動量よりも長く設定されている点にある。
【0028】
本特徴構成によると、突出部の長さが、操作レバーを連係経路に沿って操作したときの孔部の移動量よりも短いので、操作レバーを連係経路から中立経路に戻すと、突出部は確実に孔部から抜け出し、操作レバーが変速経路及び中立経路に位置するときに駐車ブレーキ機構が不測に動作することがない。
【0029】
また、突出部の長さが、操作レバーをブレーキ経路及びロック経路に沿って操作したときの、連係経路に沿った方向における孔部の移動量よりも長いので、ブレーキ経路及びロック経路に沿って操作される間に、突出部が孔部から抜け出すことがない。即ち、駐車ブレーキ操作を行っている最中に第二リンク機構による連係が不測に解除されることがなく、駐車ブレーキ操作の確実性及び安定性が向上する。
【0030】
本発明に係る作業車の第十特徴構成は、前記ロック機構は、前記操作レバーの側の部材に連結された係止部と、前記操作レバーに対して相対的に静止している部材に固定された被係止部と、を備え、前記操作レバーが前記ロック経路に操作されると、前記係止部が前記被係止部に係止するように構成してあり、前記被係止部と、前記突出部及び前記孔部の何れか一方とは、前記操作レバーを揺動自在に支持するブラケットに支持してある点にある。
【0031】
本特徴構成であれば、被係止部と、突出部及び孔部の何れか一方とは、操作レバーを揺動自在に支持するブラケットに支持するので、部品点数の軽減を図ること可能である。しかも、使用頻度の高い操作レバーを支持するブラケットは、ある程度強度のある部材で構成するため、被係止部等は安定して支持される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るトラクタの右側面図である。
【図2】本発明に係る伝動機構のギアトレインを示す図である。
【図3】伝動機構の縦断右側面図である。
【図4】主変速レバー、カバー部材等の右側面図である。
【図5】主変速レバー、カバー部材等の背面図である。
【図6】主変速レバー、カバー部材等の上面図である。
【図7】駐車ブレーキ機構の正面図である。
【図8】駐車ブレーキ機構の上面図である。
【図9】解除状態のときの駐車ブレーキ機構等の背面図である。
【図10】規制状態のときの駐車ブレーキ機構等の背面図である。
【図11】操作軸の位置におけるカバー部材等の縦断背面図である。
【図12】主変速レバーの操作経路(レバーガイド)を示す図である。
【図13】主変速レバーの操作に対応したロック機構の各種状態を示す横断上面図であって、(a)は主変速レバーが中立経路に位置するときの状態、(b)はブレーキ経路の終端に位置するときの状態、(c)は第一ロック経路に位置するときの状態、(d)は第二ロック経路に位置するときの状態を示す。
【図14】ブラケット周辺の分解斜視図である。
【図15】ロック機構の分解斜視図であって、図14とは反対側から観た図である。
【図16】第一別実施形態に係るクリープ機構及び副変速装置周辺のギアトレインを示す図である。
【図17】主変速レバー、カバー部材等の右側面図である。
【図18】主変速レバー、カバー部材等の背面図である。
【図19】主変速レバー、カバー部材等の背面図である。
【図20】主変速レバー、カバー部材等の上面図である。
【図21】第一リンク機構、第二リンク機構等の分解斜視図である。
【図22】ロック機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明をトラクタに適用した例を図面に基づいて説明する。
【0034】
〔トラクタの概要〕
トラクタは、図1に示すごとく、エンジンEと、クラッチハウジングCHと、ミッションケースMCと、を備えている。エンジンEとミッションケースMCとは、クラッチハウジングCHを介して前後に連結してある。そして、「走行装置」としての前輪FW及び後輪RWによって機体を支持してある。クラッチハウジングCHの内部には、後述する主クラッチ2が配設してあり、ミッションケースMCの内部には、後述する伝動機構TMが配設してある。
【0035】
機体後部に運転部を設け、運転座席DSを備えている。運転座席DSの右側部に、「操作レバー」としての主変速レバー19Aと、副変速レバー19Bと、を運転部に備えた後述するレバーガイドに沿って前後左右に揺動操作自在に備えている。主変速レバー19Aの操作によって、後述する「変速装置」としての主変速装置6(図2参照)の変速操作と、後述する駐車ブレーキ機構17(図2,図5参照)の駐車ブレーキ操作と、を行う。副変速レバー19Bの操作によって、後述する副変速装置8の副変速操作を行う。
【0036】
〔主クラッチについて〕
主クラッチ2は、図2に示すごとく、エンジンEのクランク軸1に連結されており、「入り状態」と「切り状態」とに切り換え自在である。主クラッチ2が「入り状態」のとき、エンジンEからの回転駆動力(以下、「動力」と称する)が伝動機構TMに伝達され、「切り状態」のとき、動力は伝動機構TMに伝達されない。
【0037】
〔伝動機構について〕
伝動機構TMは、図2,図3に示すごとく、主クラッチ2を介してエンジンEと連結されており、走行時に、エンジンEの動力を前輪FW及び後輪RW、または、後輪RWのみに伝達することが可能である。伝動機構TMは、クランク軸1と同一軸芯状となるように機体前後方向に沿って配設された推進軸3と、推進軸3の後上方において推進軸3と平行に設けられた入力軸5と、推進軸3の後方において、推進軸3と同一軸芯状に、かつ、入力軸5と平行に配設された筒状のカウンタ軸7と、カウンタ軸7と平行に配設された出力軸9と、出力軸9と平行に配設された前輪推進軸10と、出力軸9の後方に直結された後輪推進軸11と、を備えている。なお、全ての軸は、機体前後方向に沿って配設され、ミッションケースMC等に回動自在に支持されている。
【0038】
動力は、クランク軸1から主クラッチ2を介して推進軸3に伝達され、さらに、推進軸3周りに設けられた前後進切換機構4によって前進の動力(正回転)のままとされるか、または、後進動力(逆回転)に変換される。前後進切換機構4は、前進クラッチ4Aと後進クラッチ4Bとを備えている。前進クラッチ4Aが「入り状態」かつ後進クラッチ4Bが「切り状態」のとき、動力は正回転のまま推進軸3から入力軸5に伝達される。前進クラッチ4Aが「切り状態」かつ後進クラッチ4Bが「入り状態」のとき、動力は逆回転に変換され、入力軸5に伝達される。
【0039】
入力軸5に伝達された動力は、主変速装置6によって、「1速」から「6速」の6速の何れかに変速されて、カウンタ軸7に伝達される。主変速装置6については後記で詳述する。カウンタ軸7に伝達された動力は、副変速装置8によって「高速」または「低速」の何れかにさらに変速されて、出力軸9に伝達される。そして、出力軸9に伝達された動力は、そのまま後輪推進軸11に伝達され、また、出力軸9にスプライン嵌合された出力ギア9aを介して前輪推進軸10に伝達される。後輪推進軸11に伝達された動力は、後輪デフ装置12を介して後輪RWに伝達される。前輪推進軸10に伝達された動力は、不図示の前輪FW装置を介して前輪FWに伝達される。
【0040】
また、伝動機構TMは、動力の一部を取り出して作業機(アタッチメント)に伝達するPTO伝動系統も有する。伝動機構TMは、図2,図3に示すごとく、推進軸3の後端に同一軸芯状に連結されたPTO駆動軸13と、PTO駆動軸13の後端に連結されたPTOクラッチ14と、PTOクラッチ14の後部に連結され、PTO駆動軸13と同一軸芯状に配設されたPTO伝動軸15と、PTO伝動軸15の後下方に、PTO伝動軸15と平行に配設されたPTO出力軸16と、を備えている。なお、PTO駆動軸13は、上述した筒状のカウンタ軸7に内挿されている。
【0041】
主クラッチ2が「入り状態」のとき、推進軸3に伝達された動力は、前後進切換機構4の動作とは関係なく、そのままPTO駆動軸13に伝達される。PTO駆動軸13に伝達された動力は、PTOクラッチ14が「入り状態」のとき、PTO伝動軸15へ伝達され、さらにPTO出力軸16へと伝達される。また、PTO駆動軸13に伝達された動力は、PTOクラッチ14が「切り状態」のとき、PTO伝動軸15には伝達されない。なお、PTOクラッチ14は、不図示のPTOクラッチ14レバーによって、「入り状態」と「切り状態」とに切り換え自在である。
【0042】
〔主変速装置について〕
主変速装置6は、図2,図3に示すごとく、入力軸5とカウンタ軸7との間に亘って設けられている。主変速装置6は、入力軸5に対して回転自在に外挿された第一1速ギア20a乃至第一6速ギア20fを備えている。機体前方(図2,図3の紙面右側)から、第一4速ギア20d、第一3速ギア20c、第一6速ギア20f、第一5速ギア20e、第一2速ギア20b、第一1速ギア20aの順番で配設してある。また、入力軸5周りにおいて、第一4速ギア20dと第一3速ギア20cとの間に第二シフター22Bを配設し、第一6速ギア20fと第一5速ギア20eとの間に第三シフター22Cを配設し、第一2速ギア20bと第一1速ギア20aとの間に第一シフター22Aを配設してある。
【0043】
第二シフター22Bは、主変速レバー19Aの変速操作による第二シフトフォーク46B(図3,図6参照)の動作によって、入力軸5の軸芯方向に沿ってスライド移動し、入力軸5と、第一4速ギア20d及び第一3速ギア20cの何れか一方とを連結するか、または何れのギアも連結しないかを択一的に切り換える。つまり、第一4速ギア20d及び第一3速ギア20cのうち、入力軸5と連結されたギアのみが動力によって回転する。
【0044】
第三シフター22Cは、主変速レバー19Aの変速操作による第三シフトフォーク46C(図3,図6参照)の動作によって、入力軸5の軸芯方向に沿ってスライド移動し、入力軸5と、第一6速ギア20f及び第一5速ギア20eの何れか一方とを連結するか、または何れのギアも連結しないかを択一的に切り換える。つまり、第一6速ギア20f及び第一5速ギア20eのうち、入力軸5と連結されたギアのみが動力によって回転する。
【0045】
第一シフター22Aは、主変速レバー19Aの変速操作による第一シフトフォーク46A(図3,図6参照)の動作によって、入力軸5の軸芯方向に沿ってスライド移動し、入力軸5と、第一2速ギア20b及び第一1速ギア20aの何れか一方とを連結するか、または何れのギアも連結しないかを択一的に切り換える。つまり、第一2速ギア20b及び第一1速ギア20aのうち、入力軸5と連結されたギアのみが動力によって回転する。
【0046】
第一シフトフォーク46A乃至第三シフトフォーク46Cは、後述するが、主変速レバー19Aの変速操作によって何れか一つのみが動作するように構成してある。何れかのシフターが、入力軸5と何れかのギアとの連結をしている状態のときは、他の二つのシフターは、入力軸5を何れのギアとも連結しない状態となる。これにより、第一1速ギア20a乃至第一6速ギア20fのうち何れか一つのギアのみに入力軸5の動力が伝達される(本発明に係る「変速状態」)。また、全てのシフターが、入力軸5を何れのギアとも連結しない状態のときは、何れのギアにも入力軸5の動力は伝達されない(本発明に係る「中立状態」)。
【0047】
さらに、主変速装置6は、図2,図3に示すごとく、カウンタ軸7に対してスプライン嵌合されてカウンタ軸7と一体的に回転する、第二1速ギア21a乃至第二6速ギア21fを備えている。機体前方から、第二4速ギア21d、第二3速ギア21c、第二6速ギア21f、第二5速ギア21e、第二2速ギア21b、第二1速ギア21aの順番で配設してある。第二4速ギア21dは第二4速ギア20dと常時咬合し、第二3速ギア21cは第一3速ギア20cと常時咬合し、第二6速ギア21fは第一6速ギア20fと常時咬合し、第二5速ギア21eは第一5速ギア20eと常時咬合し、第二2速ギア21bは第一2速ギア20bと常時咬合し、第二1速ギア21aは第一1速ギア20aと常時咬合している。
【0048】
以上の主変速装置6の構成により、入力軸5に伝達された動力は、第一1速ギア20aと第二1速ギア21aとの間で変速されてカウンタ軸7に伝達されるか(「1速」の変速状態)、第一2速ギア20bと第二2速ギア21bとの間で変速されてカウンタ軸7に伝達されるか(「2速」の変速状態)、第一3速ギア20cと第二3速ギア21cとの間で変速されてカウンタ軸7に伝達されるか(「3速」の変速状態)、第一4速ギア20dと第二4速ギア21dとの間で変速されてカウンタ軸7に伝達されるか(「4速」の変速状態)、第一5速ギア20eと第二5速ギア21eとの間で変速されてカウンタ軸7に伝達されるか(「5速」の変速状態)、第一6速ギア20fと第二6速ギア21fとの間で変速されてカウンタ軸7に伝達されるか(「6速」の変速状態)、または、カウンタ軸7に伝達されない(上述の本発明に係る「中立状態」)。
【0049】
〔副変速装置について〕
副変速装置8は、図2,図3に示すごとく、カウンタ軸7と出力軸9との間に亘って設けられている。副変速装置8は、カウンタ軸7とギア連係されてカウンタ軸7と同期して回転する小径の高速ギア30と、カウンタ軸7に直接咬合されてカウンタ軸7と同期して回転する大径の低速ギア31と、を機体前方からこの順番で備えている。また、出力軸9周りにおいて、高速ギア30と低速ギア31とに亘って副変速シフター32を配設してある。副変速シフター32は、副変速レバー19Bの副変速操作による副変速シフトフォーク48(図3,図5,図6参照)の動作によって、出力軸9の軸芯方向に沿ってスライド移動し、高速ギア30及び低速ギア31の何れか一方を出力軸9と連結するか、または何れのギアも出力軸9と連結しないか、を択一的に切り換える。
【0050】
以上の副変速装置8の構成により、カウンタ軸7に伝達された動力は、出力軸9と高速ギア30とが連結されているときは、「高速」に変速されて出力軸9に伝達され(いわゆる「高速状態」)、出力軸9と低速ギア31とが連結されているときは、「低速」に変速されて出力軸9に伝達され(いわゆる「低速状態」)、出力軸9が何れのギアとも連結されていないときは、出力軸9に伝達されない(いわゆる「中立状態(副変速)」)。
【0051】
〔カバー部材について〕
図3乃至図6に示すごとく、ミッションケースMCの右側面を、取り外し可能なカバー部材40で構成し、カバー部材40を取り外せば、図3に二点鎖線で示す範囲(副変速機構を中心としたミッションケースMCの下部付近)が開放される。この構成により、伝動機構TMのメンテナンス等が容易となる。
【0052】
〔主変速レバーの構成及び操作経路について〕
主変速レバー19Aは、図12に示すごとく、矢印で示したレバーガイドの操作経路に沿って操作可能である。主変速レバー19Aの操作経路は、大きくは、主変速装置6の変速操作を行う変速操作経路と、駐車ブレーキ機構17のブレーキ操作を行うブレーキ操作経路と、の二つの経路に分けられる。
【0053】
変速操作経路は、主変速装置6の「中立状態」に対応し、機体左右方向に延びる直線状の中立経路81と、中立経路81から、中立経路81と直交する方向(機体前後方向)に直線状に延び、主変速装置6の「変速状態」(「1速」乃至「6速」)」に対応する変速経路80と、を備えている。
【0054】
ブレーキ操作経路は、中立経路81の延長線上に延び、即ち、変速経路80と直交する方向(機体左右方向)に延び、後述する連係経路82と、連係経路82の終端から連係経路82と直交する方向(機体前後方向)に延びるブレーキ経路83と、少なくともブレーキ経路83の終端からブレーキ経路83と直交する方向(機体左右方向)に延びロック経路(84,85)と、を備えている。
【0055】
ロック経路(84,85)は、ブレーキ経路83の終端からブレーキ経路83と直交する方向(機体左右方向)のうち中立経路81の側(機体左側)に延びる第一ロック経路84と、第一ロック経路84の終端から第一ロック経路84と直交する方向(機体前後方向)のうち中立経路81の側(機体後側)に延びる第二ロック経路85と、を備えている。
【0056】
次に、主変速レバー19Aの具体的な構成について説明する。主変速レバー19Aは、図4乃至図6に示すごとく、その下端部よりも少し上側の箇所を、ブラケット42を介してカバー部材40の外側面に支持してある。ブラケット42は、比較的厚肉のプレートを断面U字形状に曲げ加工したものである。ブラケット42は、機体左右方向内側の面の下部と、機体左右方向外側の面の下部と、をボルトによってカバー部材40に強固に固定してある。
【0057】
ブラケット42の機体左右方向内外面に亘って、機体左右方向向きの姿勢で支持軸43を固定してある(図14参照)。支持軸43の機体外側の端部は、ブラケット42の外側の面よりも機体外側方向に突出させてある。支持軸43の先端部に、支持軸43の軸芯X回り(機体前後方向)に揺動自在に、かつ、軸芯Xと直交する軸芯Y回り(機体左右方向)に揺動自在に、主変速レバー19Aを支持してある。
【0058】
主変速レバー19Aを中立経路81、連係経路82、または、第一ロック経路84(図12参照)に沿って操作すると、主変速レバー19Aは軸芯Y周り(機体左右方向)に揺動する。また、主変速レバー19Aを、変速経路80、または、ブレーキ経路83、第二ロック経路85(図12参照)に沿って操作すると、主変速レバー19Aは軸芯X周り(機体前後方向)に揺動する。
【0059】
〔操作軸について〕
図11に示すごとく、主変速レバー19Aの下端部に、ユニバーサルジョイントを介して、「第一リンク機構」としての操作軸44を連結してある。操作軸44は、断面円形状の棒部材である。ユニバーサルジョイントは、主変速レバー19Aの下端部に、主変速レバー19Aの長手方向に沿って設けた円筒状の孔部分と、操作軸44の外側の端部の上面に設けられた球状部分とからなる。球状部分は、上記孔部分に対して僅かな隙間をもって挿入されており、孔部分に対して回転可能かつスライド移動可能である。
【0060】
カバー部材40に、機体左右方向に沿った断面円形状のボス部40aを形成し、ボス部40aに対して操作軸44を、ミッションケースMCの内外に亘る状態で、スライド自在かつ回動自在に内挿してある。また、ボス部40aと操作軸44とに亘って、後述する付勢機構45を配設してある。付勢機構45の付勢力によって、主変速レバー19Aは、中立経路81の中央側、即ち、「3速」の変速経路80の始端、かつ、「4速」の変速経路80の始端となる位置に付勢されている(図12参照)。
【0061】
操作軸44は、主変速レバー19Aを中立経路81、連係経路82、または、第一ロック経路84に沿って操作すると、軸芯Xの下方に位置する機体左右方向向きの軸芯Zに沿ってスライド移動する。即ち、主変速レバー19Aを右方向に揺動させると、操作軸44はミッションケースMCの内部側に向けてスライド移動し、主変速レバー19Aを左方向に揺動させると、操作軸44はミッションケースMCの外部側に向けてスライド移動する。また、操作軸44は、主変速レバー19Aを変速経路80、ブレーキ経路83、または、第二ロック経路85に沿って操作すると、軸芯Z周りに回動する。即ち、主変速レバー19Aを前方向に揺動させると、操作軸44は後方向に回動し、主変速レバー19Aを後方向に揺動させると、操作軸44は前方向に回動する。
【0062】
また、図11,図14に示すごとく、操作軸44のミッションケースMC内部側の端部において、その上部に上方に向けてシフト部44aを突設してある。
【0063】
図6,図9に示すごとく、カバー部材40の内側面には、第一シフトフォーク46A乃至第三シフトフォーク46Cが、機体前後方向(即ち、出力軸9の軸芯方向)にスライド移動可能な状態で、各別に支持されている。第一シフトフォーク46Aがそのスライド移動範囲の中間の位置にあるとき、第一シフター22Aは、第一2速ギア20b及び第一1速ギア20aの何れもと、入力軸5と、を連結しない状態となる。第二シフトフォーク46B及び第三シフトフォーク46Cについても同様である。
【0064】
シフト部44aは、図9に示すごとく、操作軸44のスライド移動に伴って、第一シフトフォーク46Aの動作系に係合する位置と、第二シフトフォーク46Bの動作系に係合する位置と、第三シフトフォーク46Cの動作系に係合する位置と、何れのシフトフォークの動作系とも係合しない位置とに、位置変更される。
【0065】
シフト部44aが第一シフトフォーク46Aの動作系に係合した状態で、主変速レバー19Aを変速経路80に沿って操作して前後に揺動させると、第一シフトフォーク46Aが中間位置から機体前後方向にスライド移動し、入力軸5と第一2速ギア20b及び第一1速ギア20aの何れか一方とが連結される。即ち、機体速度が「1速」または「2速」に変速される。
【0066】
同様に、シフト部44aが第二シフトフォーク46Bの動作系に係合した状態で、主変速レバー19Aを変速経路80に沿って操作して前後に揺動させると、第二シフトフォーク46Bが中間位置から機体前後方向にスライド移動し、入力軸5と第一4速ギア20d及び第一3速ギア20cの何れか一方とが連結される。即ち、機体速度が「3速」または「4速」に変速される。
【0067】
また、シフト部44aが第三シフトフォーク46Cの動作系に係合した状態で、主変速レバー19Aを変速経路80に沿って操作して前後に揺動させると、第三シフトフォーク46Cが中間位置から機体前後方向にスライド移動し、入力軸5と第一6速ギア20f及び第一5速ギア20eの何れか一方とが連結される。即ち、機体速度が「6速」または「5速」に変速される。
【0068】
〔付勢機構について〕
上記で触れた付勢機構45について詳述する。図11に示すごとく、ボス部40aのうち機体内側において、ボス部40aの内径を拡径すると共に、操作軸44の外径を縮径して、付勢機構45を配設する空間を形成してある。付勢機構45は、スプリング45aと、スプリング45bと、リング形状の内径側エンド部材45cと、円筒形状の外径側エンド部材45dと、リング形状の内径側エンド部材45eと、リング形状の外径側エンド部材45fと、を備えている。
【0069】
操作軸44のうち縮径された部分に、内径側エンド部材45cと内径側エンド部材45eとを機体外側からこの順となるように外挿し、機体内側からストッパーリング45gによって抜け止めしてある。また、内径側エンド部材45cと内径側エンド部材45eとの間に、スプリング45aを介装してある。スプリング45aの付勢力によって、内径側エンド部材45cは、操作軸44の縮径段差部分に当接するよう付勢され、内径側エンド部材45eはストッパーリング45gに当接するよう付勢されている。
【0070】
ボス部40aのうち拡径された部分に、外径側エンド部材45dと外径側エンド部材45fとを機体外側からこの順となるように内挿し、機体内側からストッパーリング45hによって抜け止めしてある。外径側エンド部材45dにおいて、円筒形状の機体内側の端部に径内方向へ鍔状に折り返した部分を設けてある。そして、この折り返し部分と外径側エンド部材45fとの間に、スプリング45bを介装してある。スプリング45bの付勢力によって、外径側エンド部材45dは、ボス部40aの拡径段差部分に当接するように付勢され、外径側エンド部材45fは、ストッパーリング45hに当接するように付勢されている。
【0071】
内径側エンド部材45cの外径は、外径側エンド部材45dの折り返し部分の内径よりも大きく設定してあって、内径側エンド部材45cの外径側エンド部材45dに対する相対的な移動は、外径側エンド部材45dの円筒部分の範囲でのみ可能である。また、内径側エンド部材45eの外径は、外径側エンド部材45fの内径よりも大きく設定してあって、内径側エンド部材45eの機体内側への絶対的な移動は、外径側エンド部材45fを介して、ストッパーリング45hの位置までである。
【0072】
以上の構成により、図11の状態(主変速レバー19Aが図12の位置)から、主変速レバー19Aを機体外側(「5速」及び「6速」の側)へ揺動させて、操作軸44を機体内側へスライドさせると、内径側エンド部材45cが機体内側へ移動し、スプリング45aが圧縮される。しかし、外径側エンド部材45dは動かない。したがって、主変速レバー19Aには、スプリング45aの付勢力のみが作用する。さらに操作軸44が機体内側にスライドされると、内径側エンド部材45cが外径側エンド部材45dの折り返し部分に当接し、外径側エンド部材45dも機体内側に移動し出す。即ち、スプリング45bも圧縮し始める。即ち、この状態からは、スプリング45a及びスプリング45bの両方の付勢力が主変速レバー19Aに作用することとなって、スプリング45aの付勢力のみが主変速レバー19Aに作用する場合と比べて、多少なりと操作抵抗が大きくなる。
【0073】
本実施形態においては、主変速レバー19Aが中立経路81と連係経路82との境界位置となったときに、内径側エンド部材45cが外径側エンド部材45dの折り返し部分に当接するように設定してあって、運転者は、スプリング45bの付勢力の上乗せに基づく操作抵抗の増加によって、中立経路81と連係経路82との境界を感覚的に把握できる。よって、主変速レバー19Aを不測に連係経路82に操作することを軽減でき、また、中立経路81と連係経路82との境界から延びる「5速」及び「6速」の変速経路80の始端に主変速レバー19Aを位置合わせし易いので、これらの変速経路80への変速操作が容易となる。
【0074】
一方、図11の状態(主変速レバー19Aが図12の位置)から、主変速レバー19Aを機体内側(「1速」及び「2速」の側)へ揺動させて、操作軸44を機体外側へスライドさせると、内径側エンド部材45eが機体外側へ移動し、スプリング45aが圧縮される。しかし、外径側エンド部材45fは動かない。したがって、主変速レバー19Aには、スプリング45aの付勢力のみが作用する。この後も、スプリング45bに操作力が作用することはない。
【0075】
つまり、スプリング45aは、主変速レバー19Aが何れの経路に位置していても機能するが、スプリング45bは、主変速レバー19Aが連係経路82乃至第二ロック経路85に位置するときのみに機能する。なお、スプリング45aが圧縮も引っ張りもされていない状態のとき、即ち、付勢力を発揮していない中立の状態のとき、主変速レバー19Aが、「3速」の変速経路80の始端、かつ、「4速」の変速経路80の始端となる位置となるように(図12参照)、スプリング45aの付勢力を設定してある。
【0076】
〔副変速レバーについて〕
副変速レバー19Bは、図4乃至図6に示すごとく、その下端部を上述した支持軸43に軸芯X回りに揺動自在に支持してある。カバー部材40の内側面には、副変速シフトフォーク48が、機体前後方向にスライド移動可能な状態で、支持されている。副変速レバー19Bと副変速シフトフォーク48とはリンク機構47によって連係されている。副変速レバー19Bを前後揺動操作すると、副変速シフトフォーク48は、上述したように、機体前後方向(出力軸9の軸芯方向)に沿ってスライド移動する。
【0077】
副変速レバー19Bを最も前側に揺動させた状態においては、副変速シフター32は、高速ギア30及び低速ギア31の何れもと出力軸9とを連結しない状態となる。その状態から、副変速レバー19Bを後側に揺動操作すると、副変速シフター32が前方向にスライド移動し、「低速状態」となる。「低速状態」から、さらに副変速レバー19Bを後側へ揺動操作すると、副変速シフター32がさらに前方向にスライド移動し、「高速状態」となる。
【0078】
〔駐車ブレーキ機構について〕
駐車ブレーキ機構17は、図2,図5に示すごとく、ミッションケースMCの内側に配設されており、伝動機構TMのうち出力軸9にスプライン嵌合された上述の出力ギア9aに咬合して、伝動機構TMの動作を規制可能である。駐車ブレーキ機構17は、図7,図8に示すごとく、第一部材61と、第二部材62と、第三部材63と、第四部材64と、を備えている。
【0079】
第一部材61は、軸部61aを備えている。軸部61aは、機体後方向きの姿勢で、その後端部を、ミッションケースMCの内部空間を前後に仕切る仕切部材SP(図3参照)に、機体前後方向の第一軸芯L1回りに回動自在に支持されている。軸部61aの後端部をミッションケースMCの外部まで延長し、ミッションケースMCの外部において、後述する第二リンク機構70の操作ボス部材77を連結してある。主変速レバー19Aをブレーキ経路83に沿って前側(第一ロック経路84の側)に揺動操作すると、その操作力が第二リンク機構70を介して第一部材61に伝達され、第一部材61は第一軸芯L1回りで時計回りに揺動する(図7の白抜き矢印参照)。逆に、主変速レバー19Aをブレーキ経路83に沿って後側(連係経路82の側)に揺動操作すると、第一部材61は、第一軸芯L1回りで反時計回りに揺動する。
【0080】
第三部材63は、軸部63aと摺動部63bとを備えている。軸部63aは、機体後方向きに突設されており、その後端部を、第一軸芯L1と平行な第二軸芯L2回りに回動自在に、仕切部材SPに支持されている。摺動部63bは、機体前方向向きに突設され、第四部材64の後述する凹部64bに摺接する。
【0081】
第二部材62は、第一部材61の上端部のルーズホールに係合された第一ピン部62aと、第三部材63の上面に当接する第二ピン部62bと、を備えている。第二部材62は、第三部材63のうち軸部63aに外挿されており、第二軸芯L2回りに、第三部材63に対して相対的に揺動自在である。
【0082】
第二部材62と第三部材63とに亘る状態で、第三部材63の軸部63aにスプリング63cが外装されている。スプリング63cの付勢力F3は、第三部材63には、正面視で、第二部材62に対して相対的に反時計回りに揺動するように作用し(図7,図8の点線矢印参照)、かつ、第二部材62には、正面視で、第三部材63に対して相対的に時計回りに揺動するように作用する。
【0083】
つまり、第一部材61が時計回りに揺動すると、第一ピン部62aを介して、第二部材62は反時計回りに揺動する(図7の白抜き矢印参照)。このとき、第二ピン部62bが第三部材63の上面から離間しようとするので、スプリング63cの付勢力F3によって、第三部材63も第二部材62に追従して反時計回りに揺動する。
【0084】
第四部材64は、出力ギア9a(図10参照)に咬合する部材であり、軸部64aと凹部64bと爪部64cとを備えている。軸部64aは、機体後方向きに突設されており、その後端部を、第一軸芯L1及び第二軸芯L2と平行な第三軸芯L3回りに回動自在に、仕切部材SPに支持されている。凹部64bは、出力ギア9aと反対側の面に形成され、摺動部63bと当接してその摺動力を受ける。爪部64cは、出力ギア9aの側の面に形成され、出力ギア9aと咬合可能である。軸部64aには、スプリング64dが外装されている。第四部材64は、スプリング64dの付勢力F4によって、正面視で反時計回りに付勢されている(図7,図8の点線矢印参照)。
【0085】
つまり、第三部材63が反時計回りに揺動すると、摺動部63bが凹部64bを摺動し、第四部材64は、付勢力F4に抗しつつ、時計回りに揺動する(図7の白抜き矢印参照)。
【0086】
なお、駐車ブレーキ機構17は、爪部64cが出力ギア9aに咬合した後も、操作軸44がミッションケースMCの内部側へスライドできるように、即ち、主変速レバー19Aをいわゆる「オーバーシフト」できるように構成している。この場合、ブレーキ経路83の終端側がオーバーシフトの経路となる。
【0087】
オーバーシフトの際、第一部材61が時計回りに揺動することによって、通常通り、第二部材62は反時計回りに揺動する。しかし、第四部材64は、爪部64cが出力ギア9aに咬合しているので、それ以上時計回りに揺動できない。この結果、第三部材63もそれ以上、反時計回りに揺動しない。したがって、第二ピン部62bが、第三部材63の上面から離間する。この結果、付勢力F3に抗して第二ピン部62bと第三部材63の上面とが引き離され、スプリング63cにはさらに付勢力がチャージされる。この付勢力は、第二リンク機構70を介して主変速レバー19Aに伝達され、主変速レバー19Aを機体後方側に付勢する。スプリング63cの構成により、第二ロック経路85に主変速レバー19Aを位置させると、上述のチャージされた付勢力によって、主変速レバー19Aは、第二ロック経路85の終端に付勢され、不測に第一ロック経路84に抜け出さない。
【0088】
最後に、主変速レバー19Aの操作に基づく駐車ブレーキ機構17の動作を順を追って説明する。主変速レバー19Aが変速経路80、中立経路81、連係経路82に位置するときは、爪部64cは出力ギア9aと咬合していない。主変速レバー19Aを連係経路82からブレーキ経路83に操作すると、第二リンク機構70を介して、第一部材61乃至第四部材64が連動して揺動する。主変速レバー19Aがブレーキ経路83の終端に位置すると、図10に示すごとく、爪部64cが出力ギア9aに咬合し、伝動機構TMの動作が規制され、駐車ブレーキがかかる。
【0089】
〔第二リンク機構について〕
第二リンク機構70は、主変速レバー19Aと駐車ブレーキ機構17との連係及び連係解除を可能にするものである。第二リンク機構70は、図4,図8,図9,図11,図14に示すごとく、ミッションケースMCの外側において、主変速レバー19Aと、駐車ブレーキ機構17のうち第一部材61の軸部61aにおける後端部と、に亘って設けられている。第二リンク機構70は、ピン形状の軸部材71と、筒部材72と、板形状の第一アーム部材73と、板形状の第二アーム部材74と、棒形状のロッド部材75と、板形状のレバー部材76と、筒形状の操作ボス部材77と、を備えている。
【0090】
軸部材71は、図9及び図11に示すごとく、支持軸43の下方において、支持軸43と平行な姿勢(機体左右方向に沿った姿勢)で、ブラケット42の機体左右方向内外面に亘って固定されている。軸部材71の機体外側の端部は、ブラケット42の外側の面よりも機体外側方向に突出させてある。
【0091】
軸部材71の先端部に、筒部材72を、軸部材71の軸芯であって、機体左右方向に沿った揺動軸芯S回りに揺動自在に支持してある。図4に示すごとく、筒部材72の外周部に、第一アーム部材73の一端を固定すると共に、第二アーム部材74の一端を固定してある。なお、第一アーム部材73は、機体前下方向きの姿勢に設定してあり、第二アーム部材74は機体後下方向きの姿勢に設定してある。これにより、第一アーム部材73が筒部材72を介して揺動軸芯S周りに揺動すると、第二アーム部材74も揺動軸芯S周りに揺動する。
【0092】
ロッド部材75の一端を、第二アーム部材74の他端に回動自在に支持してある。ロッド部材75は上下方向向きの姿勢となっている。第二アーム部材74が揺動すると、ロッド部材75は上下に移動する。
【0093】
レバー部材76の一端を、ロッド部材75の他端の後面に回動自在に支持すると共に、図8,図9に示すごとく、レバー部材76の他端に操作ボス部材77を固定し、操作ボス部材77を第一部材61の後端部に連結してある。レバー部材76は機体左右方向向きの姿勢となっている。ロッド部材75が上下に移動すると、レバー部材76は、第一部材61の機体前後方向に沿った第一軸芯L1回りに揺動する。
【0094】
図11,図14に示すごとく、第一アーム部材73の外側面に、機体左右方向外側向きの姿勢で、ピン形状の突出部73aを固設してある。また、操作軸44の端部の上面に、ブラケット42の側部付近まで上方に向って延びるプレート状の支持部材50を固定し、支持部材50の上端前方側に長孔状であって、突出部73aが入り込み可能な孔部50aを形成してある。孔部50aに突出部73aが入り込むと、主変速レバー19Aと駐車ブレーキ機構17とが第二リンク機構70を介して連係されることとなる。以下に、その連係の要領を詳述する。なお、支持部材50が本発明に係る「操作レバーの側の部材」に相当し、第一アーム部材73が本発明に係る「第二リンク機構の側の部材」に相当する。
【0095】
主変速レバー19Aが変速経路80及び中立経路81の何れかに操作されたときは、図9,図11に示すごとく、孔部50aは突出部73aと離間している。即ち、中立経路81のうち、「5速」の変速経路80の始端と「6速」の変速経路80の始端との合流点(図12参照)に主変速レバー19Aが位置するときにおいて、孔部50aは突出部73aと離間している。そして、主変速レバー19Aを中立経路81から、連係経路82に操作する(機体外側に操作する)と、孔部50aが機体内側に向って移動して突出部73aに近接していく。そして、主変速レバー19Aが連係経路82の終端に位置したとき、図10に示すごとく、孔部50aに突出部73aが入り込む。
【0096】
さらに、主変速レバー19Aを連係経路82から、ブレーキ経路83に操作する(機体前方側に操作する)と、孔部50aの内周部が突出部73aに係止し、第一アーム部材73が揺動軸芯S周りに機体後方側に揺動する(図4参照)。これにより、第二アーム部材74が揺動軸芯S周りに機体上方側に揺動し、そして、ロッド部材75が上方に移動する(図4,図10参照)。最終的に、レバー部材76が第一軸芯L1回りに機体上方側に揺動する(図10参照)。この結果、駐車ブレーキ機構17の第一部材61が、第一軸芯L1回りに機体下方側(図7における白抜き矢印の方向)に揺動して、駐車ブレーキ機構17が作動し、駐車ブレーキがかかる。
【0097】
なお、その後は、後述するように、主変速レバー19Aを第一ロック経路84を介して第二ロック経路85に操作することで、ロック機構18が作動し、駐車ブレーキがかかった状態が維持される。また、このように、駐車ブレーキ操作は、主変速レバー19Aの揺動操作のみによって行うことができるので、専用のレバーへの持ち替えを行う必要もなければ、主変速レバー19Aの通常の操作である揺動操作とは別の特別な操作をする必要もなく、非常に操作性が良い。
【0098】
なお、突出部73aの長さは、主変速レバー19Aを連係経路82に沿って操作したときの、連係経路82に沿った方向(機体左右方向)における孔部50aの移動量よりも短い。また、突出部73aの長さは、主変速レバー19Aを第一ロック経路84に沿って操作したときの、連係経路82に沿った方向(機体左右方向)における孔部50aの移動量よりも長く設定されている。
【0099】
したがって、主変速レバー19Aを連係経路82から中立経路81に戻すと、突出部73aが孔部50aから確実に抜け出し、主変速レバー19Aが変速経路80や中立経路81に位置するときに、駐車ブレーキ機構17が不測に動作することがない。また、主変速レバー19Aを第一ロック経路84に沿って操作している間に、突出部73aが孔部50aから抜け出すことがない。これにより、駐車ブレーキ操作を行っている最中に第二リンク機構70による連係が不測に解除されず、駐車ブレーキ操作の確実性及び安定性が向上する。
【0100】
〔ロック機構について〕
ロック機構18は、主変速レバー19Aの位置を拘束して、駐車ブレーキ機構17を、駐車ブレーキをかけた状態に維持する。ロック機構18は、図4,図9,図11,図13乃至図15に示すごとく、上述した支持部材50のうち孔部50aの下方に固定された「係止部」としての鉤状部材52と、上述したブラケット42に連結された「被係止部」としての受け部材53と、を備えている。ブラケット42は、主変速レバー19Aを支持する部材と、副変速レバー19Bを支持する部材と、受け部材53を支持する部材と、突出部73aを備えた第一アーム部材73を揺動自在に支持する部材と、を兼ねている。なお、ブラケット42が、本発明に係る「操作レバーに対して相対的に静止している部材」に相当する。
【0101】
受け部材53は、図13乃至図15に示すごとく、上面視で中央部分が凹入されたハット形状に形成してある。ブラケット42の機体外側の面のうち、支持軸43及び軸部材71の下方部分を長方形状に切り欠いて、その切欠き部分に受け部材53のうち突起した部分を挿入し、残りの鍔部分をブラケット42にボルト固定してある。受け部材53の機体後方側の角部分には、鉤状部材52が機体前後方向に沿って入り込み可能な第一開口部53aを形成してある。また、第一開口部53aの機体外側の周縁部にフック部53bを備えている。フック部53bは、受け部材53のうち第一開口部53aに隣接する箇所を、機体後方に向けて鉤形状に折り返して形成してある。
【0102】
鉤状部材52は、図14,図15に示すごとく、機体左右方向に沿ったプレート状の取付部材51を介して、支持部材50に固定してある。鉤状部材52は、上面視で、機体後方側に折り返したL字形状に形成してある。また、鉤状部材52の機体後方側に折り返した部分に、フック部53bが機体左右方向に沿って入り込み可能な第二開口部52aを形成してある。
【0103】
なお、鉤状部材52は、主変速レバー19Aの揺動支点(軸芯X及び軸芯Y)よりも下方に位置しているので、主変速レバー19Aの操作と逆の動きをする。即ち、主変速レバー19Aの機体前側への揺動操作、機体後側への揺動操作、機体外側への揺動操作、機体内側への揺動操作に対応して、鉤状部材52は、機体後側、機体前側、機体内側、機体外側に移動する。
【0104】
ロック機構18の動作について、図13(a)乃至(e)に基づいて説明する。主変速レバー19Aを変速操作しているとき、即ち、主変速レバー19Aが中立経路81または変速経路80に位置するときは、図13(a)に示すごとく、鉤状部材52はブラケット42及び受け部材53と離間している。したがって、主変速レバー19Aの変速操作がロック機構18によって阻害されることはない。
【0105】
駐車ブレーキをかけるべく、その前段階として、主変速レバー19Aを中立経路81から逸脱させ、連係経路82に沿って連係経路82の終端まで操作すると、図13(b)に示すごとく、鉤状部材52が機体内側に移動し、受け部材53の凹入された部分に当接する。このとき、第二リンク機構70においては、図10に示すごとく、孔部50aに突出部73aが入り込み、主変速レバー19Aと駐車ブレーキ機構17とが連係され、主変速レバー19Aの操作が駐車ブレーキ機構17に伝達可能な状態となる。
【0106】
続いて、主変速レバー19Aを、連係経路82の終端からブレーキ経路83の終端まで操作すると、図13(c)に示すごとく、鉤状部材52が受け部材53に沿って機体後側に移動し、第一開口部53aに入り込む。このとき、第二開口部52aがフック部53bに対向する。同時に、主変速レバー19Aの操作が第二リンク機構70を介して駐車ブレーキ機構17に伝達され、駐車ブレーキ機構17が作動して駐車ブレーキがかかる。
【0107】
なお、受け部材53の凹入された部分とフック部53bとの隙間は、鉤状部材52の厚みよりも僅かに広い程度に設定してあり、主変速レバー19Aを連係経路82の終端に確実に位置させなければ、鉤状部材52が第一開口部53aに入り込めないようにしてある。これにより、確実なレバー操作を運転者に促すことができる。
【0108】
さらに、主変速レバー19Aをブレーキ経路83の終端から第一ロック経路84の終端まで操作すると、図13(d)に示すごとく、鉤状部材52が機体外側に移動し、フック部53bが第二開口部52aに入り込む。このとき、第二リンク機構70においては、孔部50aが突出部73aに沿って摺動するだけであり、駐車ブレーキ機構17は駐車ブレーキをかけた状態のままである。
【0109】
そして、主変速レバー19Aを第一ロック経路84の終端から第二ロック経路85の終端まで操作すると、図13(e)に示すごとく、鉤状部材52が機体前側に移動し、フック部53bと第二開口部52aの縁部とが係止する。このとき、主変速レバー19Aは、付勢機構45の機体内側への付勢力と、上述のオーバーシフトによってスプリング63cにチャージされた機体前側への付勢力によって、主変速レバー19Aの位置が拘束され、駐車ブレーキ機構17は駐車ブレーキをかけた状態に維持される。
【0110】
〔第一別実施形態〕
上述の実施形態においては、副変速装置8が、高速状態と低速状態と中立状態とに切り換わる例を示したが、中立状態の代わりに、低速状態よりも更に低速である「超低速状態(クリープ状態)」に切り換えられるように構成してあっても良い。この場合は、超低速状態を現出するために、副変速装置8にクリープ機構90を備える。
【0111】
クリープ機構90は、図16に示すごとく、カバー部材40に取り外し自在に構成してある。クリープ機構90は、カバー部材40に対して取り外し自在な支持材91と、支持材91に機体前後方向に沿った状態で回動自在に支持された支軸92と、を備えている。支軸92には、機体前方から小径ギア93と、大径ギア94とを支持してある。小径ギア93は、支軸92にスプライン嵌合させてあり、支軸92と一体的に回転する。小径ギア93は、出力軸9にギア連係してある。
【0112】
大径ギア94は、支軸92に遊嵌させてある。大径ギア94は、出力軸9の出力ギア9aに咬合させてある。また、小径ギア93と大径ギア94との間に、クリープシフター95を、支軸92の軸芯方向に沿ってスライド移動自在に配設してある。クリープシフター95が小径ギア93と大径ギア94との間に亘って位置し、小径ギア93と大径ギア94とを連結すると、大径ギア94は、小径ギア93と共に回転する。
【0113】
クリープシフター95は、二股シフトフォーク96によってスライド操作する。二股シフトフォーク96は、上述の実施形態における副変速シフトフォーク48と交換してカバー部材40に取り付けられるものである。二股シフトフォーク96は、先端部が二股に分かれており、一方の先端部は副変速シフター32に係合され、他方の先端部はクリープシフター95に係合されている。二股シフトフォーク96のうち一方の先端部が、上述の実施形態における中立状態となったとき、他方の先端部は、クリープシフター95を小径ギア93と大径ギア94とに亘らせる状態となる。
【0114】
即ち、出力軸9からの動力は、小径ギア93を介してクリープ機構90に伝達され、小径ギア93から大径ギア94に同回転数で伝達され、そして、大径ギア94と出力ギア9aとの間で大きく減速されて、出力軸9に戻される(超低速状態)。
【0115】
このように、クリープ機構90をカバー部材40に取り付け、副変速シフトフォーク48を二股シフトフォーク96に交換するという簡単な作業で、「高速状態」、「低速状態」、及び「超低速状態」のに三つの副変速が可能となる。
【0116】
〔第二別実施形態〕
この第二別実施形態は、上述の実施形態における第一リンク機構の別実施形態である。以下、図17〜図21に基づいて、第二別実施形態における第一リンク機構の構成について説明する。その他の構成については、上述の実施形態と同様であるので、同符号を記す等により説明は省略する。
【0117】
まず、主変速レバー300(操作レバーに相当する)の支持構成について説明する。
主変速レバー300は、上述の実施形態と同様に、図17〜図19に示すように、機体左右方向に沿う軸芯X1周りに揺動自在に、且つ、機体前後方向に沿う軸芯Y1周りに揺動自在に支持されている。図17、図18、及び、図20は、主変速レバー300が図12において中立経路81に位置する状態を示している。図19は、主変速レバー300が図12において第二ロック経路85に位置する状態を示している。
【0118】
主変速レバー300の下端部には、図17〜図19及び図21に示すように、板状の第一支持体301と板状の第二支持体302とを重ね合わせた基台部が備えられている。第二支持体302の下端部には、機体前後方向に間隔を隔てて下方側に延びる延設部位303aを備えた第三支持体303が備えられ、その延設部位303aの間に第四支持体304が備えられている。第三支持体303は、図17に示すように、機体左右方向視でコ字状に形成された板状体にて構成されており、図21に示すように、第四支持体304は、機体左右方向で延設部位303aと同じ幅の厚みを有する形状に形成されており、その中央部に貫通孔部304aが形成されている。
【0119】
図21に示すように、カバー部材400側に備えられた支持軸401を第四支持体304の貫通孔部304aに挿通させることで、第四支持体304を機体左右方向に沿う軸芯X1周りに揺動自在に支持している。第一支持体301、第二支持体302、第三支持体303、及び、第四支持体304が一体的に移動自在に備えられている。これにより、主変速レバー300を機体左右方向に沿う軸芯X1周りに揺動自在に支持している。
【0120】
第三支持体303と第四支持体304との間での連結については、図17に示すように、第一連結ピン305により、第四支持体304が第三支持体303に対して機体前後方向に沿う軸芯Y1周りに揺動自在に支持されている。第一支持体301、第二支持体302、及び、第三支持体303が、第四支持体304に対して、一体的に移動自在に備えられている。これにより、主変速レバー300を機体前後方向に沿う軸芯Y1周りに揺動自在に支持している。
【0121】
第一リンク機構100は、上述の実施形態と同様に、主変速レバー300の動きと移動軸101の動きとを連係させて、主変速レバー300の揺動操作に伴って主変速装置6を「1速」〜「6速」の夫々に変速させるように構成されている。
【0122】
第一リンク機構100は、図21に示すように、複数の変速位置に移動自在に支持された移動軸101と、機体左右方向に沿う軸芯X1周りでの主変速レバー300の揺動操作を第一方向での移動軸101の動きに変換する第一運動変換機構102と、機体前後方向に沿う軸芯Y1周りでの主変速レバー300の揺動操作を第二方向での移動軸101の動きに変換する第二運動変換機構103とを備えている。ここで、第一方向での移動軸101の動きとは、機体左右方向に沿う軸芯X1周りでの揺動であり、第二方向での移動軸101の動きとは、機体左右方向でのスライド移動である。
【0123】
移動軸101は、上述の実施形態における操作軸44に相当するものであり、機体左右方向に沿う軸芯Z1周りに回動自在で、且つ、機体左右方向にスライド移動自在にカバー部材400に支持されている。そして、上述の実施形態と同様に、移動軸101は、機体左右方向に沿う軸芯Z1周りでの回動、及び、機体左右方向でのスライド移動によって、「1速」〜「6速」の夫々に対応する変速位置に移動自在に備えられている。
【0124】
〔第一運動変換機構について〕
第一運動変換機構102は、第三支持体303から下方側に延びるように設けられた第一アーム部材104と、その第一アーム部材104の下端部に枢支連結された第一ロッド部材105と、その第一ロッド部材105の下端部に枢支連結された第一連結部材106とを備えている。
【0125】
第一ロッド部材105は、その長手方向の両端部105aと中間部105bとを備えており、両端部105aと中間部105bとが螺合されている。これにより、両端部105aに対して中間部105bを回転させることで、第一ロッド部材105の長さを調整自在に構成されている。第一ロッド部材105の長さを調整することで、機体前後方向での主変速レバー300と移動軸101との相対位置を調整することができ、第一ロッド部材105が第一位置調整部材として構成されている。第一連結部材106は、移動軸101に固定支持されており、移動軸101の径方向の外側に延びる板状に形成されている。第一連結部材106の延設方向の中間部に第一ロッド部材105が連結されている。
【0126】
主変速レバー300を機体左右方向に沿う軸芯X1周りで揺動操作すると、その主変速レバー300の動きが、第一アーム部材104及び第一ロッド部材105を介して第一連結部材106に伝達されて、第一連結部材106が機体左右方向に沿う軸芯周りに揺動される。そして、第一連結部材106に連結された移動軸101が、機体左右方向に沿う軸芯Z1周りで揺動される。
【0127】
〔第二運動変換機構について〕
第二運動変換機構103は、第二支持体302から機体左右方向の機体側に延出された第一延出部材107と、その第一延出部材107の下端部に枢支連結された第二ロッド部材108とを備えている。また、第二運動変換機構103は、第二ロッド部材108の下端部に枢支連結された第二アーム部材109と、カバー部材400に固定支持された第三アーム部材110と、第二アーム部材109の端部に連結された第一円柱部材111と、その第一円柱部材111の径方向の外側に延びるように備えられた第四アーム部材112とを備えている。さらに、第二運動変換機構103は、第四アーム部材112の先端部に備えられた第二連結ピン部材113と、その第二連結ピン部材113に連結された第二連結部材114とを備えている。
【0128】
第一延出部材107は、平面視でコ字状に形成されている。第二ロッド部材108は、その長手方向の両端部108aと中間部108bとを備えており、両端部108aと中間部108bとが螺合されている。これにより、両端部108aに対して中間部108bを回転させることで、第二ロッド部材108の長さを調整自在に構成されている。第二ロッド部材108の長さを調整することで、機体左右方向での主変速レバー300と移動軸101との相対位置を調整することができ、第二ロッド部材108が第二位置調整部材として構成されている。
【0129】
第三アーム部材110は、機体左右方向に延びる2つの挿通軸115をカバー部材400に形成された第一挿通孔402に挿通させて、カバー部材400に固定支持されている。第一円柱部材111は、第三アーム部材110に対して機体前後方向に沿う軸芯周りで回転自在に支持されている。これにより、第二アーム部材109が揺動することで、第一円柱部材111が機体前後方向に沿う軸芯周りで回転し、第四アーム部材112も機体前後方向に沿う軸芯周りで揺動する。
【0130】
第二連結部材114は、移動軸101に固定支持されている。そして、第二連結部材114は、機体左右方向に間隔を隔てた2つの壁部位114aを備えた平面視がコ字状に形成されており、2つの壁部位114aの間に第二連結ピン部材113が配置されている。上述の如く、第二アーム部材109の揺動によって、第一円柱部材111が機体前後方向に沿う軸芯周りで回転して、第四アーム部材112が機体前後方向に沿う軸芯周りで揺動すると、第二連結ピン部材113が機体左右方向に移動する。これにより、第二連結部材114は、第二連結ピン部材113により壁部位114aが機体左右方向に押圧されて、機体左右方向にスライド移動する。
【0131】
主変速レバー300を機体前後方向に沿う軸芯Y1周りで揺動操作すると、その主変速レバー300の動きが、第一延出部材107、第二ロッド部材108、第二アーム部材109、第一円柱部材111、及び、第四アーム部材112を介して、第二連結ピン部材113を機体左右方向に移動させる。そして、第二連結ピン部材113が第二連結部材114の壁部位114aを機体左右方向に押圧して、第二連結部材114が機体左右方向にスライド移動され、移動軸101が機体左右方向にスライド移動される。
【0132】
ここで、第二運動変換機構103と移動軸101との連結について、第二連結ピン部材113が第二連結部材114の一対の壁部位114aの間に配置されていることから、第二連結部材114は、第二連結ピン部材113が上下方向にスライド移動自在に第二連結ピン部材113に連結されている。これにより、第一運動変換機構102の変換により移動軸101が機体左右方向に沿う軸芯Z1周りで回転した場合に、第二連結ピン部材113が第二連結部材114の一対の壁部位114aの間を移動して、軸芯Z1周りでの移動軸101の回転を許容している。このようにして、第一運動変換機構102により変換される移動軸101の動きを許容する連結機構が第二運動変換機構103に備えられており、その連結機構が第二連結ピン部材113と第二連結部材114とから構成されている。
【0133】
この第二別実施形態では、第二リンク機構についても、上述の実施形態に対して、その形状等を変更しているので、以下、第二リンク機構200について説明する。
【0134】
第二リンク機構200は、上述の実施形態と同様に、主変速レバー300と駐車ブレーキ機構17の連係及び連係解除を可能とするものである。第二リンク機構200は、図21に示すように、第一運動変換機構102としても備えられた第一連結部材106と、機体左右方向に沿う軸芯周りで揺動自在な第一揺動部材201と、第一連結部材106に形成された長孔部202と、第一揺動部材201に備えられた第一ピン部材203とを備えている。
【0135】
第一揺動部材201は、その一端部に備えられた挿通軸204をカバー部材400に備えられた第二挿通孔403に挿通させることで、機体左右方向に沿う軸芯周りで揺動自在にカバー部材400に支持されている。図18に示すように、主変速レバー300が図12において中立経路81及び変速経路80に位置する場合には、第一ピン部材203が第一連結部材106から離れており、第一ピン部材203が長孔部202から離脱していることで、主変速レバー300と駐車ブレーキ機構17との連係が解除されている。
【0136】
そして、図19に示すように、主変速レバー300を機体前後方向に沿う軸芯Y1周りで揺動させて、主変速レバー300を図12においてブレーキ経路83に位置させる。その主変速レバー300の動きが、第二運動変換機構103により移動軸101を機体左右方向へのスライド移動に変換され、移動軸101が機体左右方向で機体内側にスライド移動する。これにより、移動軸101に固定支持された第一連結部材106が機体左右方向で機体内側にスライド移動し、第一ピン部材203が長孔部202に嵌り込むことで、主変速レバー300と駐車ブレーキ機構17とが連係される。
【0137】
主変速レバー300と駐車ブレーキ機構17とを連係させた状態で、主変速レバー300を機体左右方向に沿う軸芯X1周りで揺動させて、図12においてブレーキ経路83に沿って主変速レバー300を移動させる。この主変速レバー300の動きが、第一運動変換機構102により第一連結部材106を機体左右方向に沿う軸芯周りで揺動させるように伝達され、その第一連結部材106の動きに伴い第一揺動部材201も機体左右方向に沿う軸芯周りで揺動される。図17に示すように、第一揺動部材201は、上述の実施形態におけるロッド部材75に連結されており、第一揺動部材201の揺動によりロッド部材75を上下方向に移動させることで、第一揺動部材201の動きと駐車ブレーキ機構17の第一部材61の動きとを連係させている。そして、第一揺動部材201の揺動によって駐車ブレーキ機構17における第一部材61を揺動させることで、駐車ブレーキ機構17を作動させて駐車ブレーキをかけている。
【0138】
この第二別実施形態では、ロック機構についても、上述の実施形態に対して、その形状等を変更しているので、以下、ロック機構500について説明する。
【0139】
ロック機構500は、図21及び図22に示すように、主変速レバー300の側の部材に連結された係止部材501(係止部に相当する)と、カバー部材400に固定された被係止部材502(被係止部に相当する)とを備えている。係止部材501は、第一連結部材106から機体左右方向の機体内側に延びるように備えられている。係止部材501は、その先端部位503が、上方側に折り曲げたのち、さらに機体左右方向の機体外側に折り返した鉤状に形成されている。また、係止部材501の先端部位503には、機体前後方向で前方側に突出する突出部位504が備えられている。被係止部材502には、係止部材501の先端部位501aが挿脱自在な第一開口部505が形成されており、その第一開口部505の上部にも第二開口部506が形成されている。第一開口部505は、その下端部位から機体前後方向の後方側の斜め上方側に延びたのち、機体前後方向の前方側の斜め上方側に延びるように形成されている。第二開口部506は、機体前後方向に長尺の細長状に形成されている。
【0140】
主変速レバー300の動きに伴うロック機構500の動きについて説明する。
図19に示すように、主変速レバー300を機体前後方向に沿う軸芯Y1周りで揺動させて、主変速レバー300を図12においてブレーキ経路83に位置させる。その主変速レバー300の動きが、第二運動変換機構103により移動軸101を機体左右方向へのスライド移動に変換され、移動軸101が機体左右方向で機体内側にスライド移動する。これにより、移動軸101に固定支持された第一連結部材106が機体左右方向で機体内側にスライド移動し、係止部材501の先端部位503が第一開口部505に挿入される。
【0141】
そして、主変速レバー300を機体左右方向に沿う軸芯X1周りで揺動させて、主変速レバー300を図12においてブレーキ経路83に沿って移動させると、係止部材501の先端部位503が、第一開口部505に挿入されたまま、その第一開口部505内を上方側に移動する。次に、主変速レバー300を機体前後方向に沿う軸芯Y1周りで揺動させて、主変速レバー300を図12において第一ロック経路84に沿って移動させると、第一連結部材106が機体左右方向で機体外側にスライド移動し、係止部材501の先端部位503の鉤状部位が第二開口部506に挿入される。次に、主変速レバー300を機体左右方向に沿う軸芯X1周りで揺動させて、主変速レバー300を図12において第二ロック経路85に沿って移動させると、係止部材501の先端部位503の突出部位504が被係止部材502の機体内側に対向する面部に当接して係止される。これにより、主変速レバー300の位置が拘束されて、駐車ブレーキ機構17は駐車ブレーキをかけた状態に維持される。
【0142】
〔その他の別実施形態〕
(1)主変速レバー19Aの操作経路は図12のようなものでなくても良い。例えば、主変速装置6がHST(静油圧式無段変速機)の場合においては、上述の実施形態と同様に、中立経路81の延長上に連係経路82を設ければ良い。変速経路80が一直線に構成され、かつ、中立経路81が点であるような場合は、連係経路82は、その中立点から変速経路80に交差する方向に延長すれば良い。
【0143】
(2)上述の実施形態においては、中立経路81と変速経路80とが「直交」し、変速経路80と連係経路82とが「直交(90度交差)」する、等と記載したが、これらは「直交」していなくても、少なくとも「交差」していれば良い。
【0144】
(3)主変速装置6は、6速に変速可能なものでなくても、5速以下、7速以上に変速可能なものでも良い。
【0145】
(4)上述の実施形態においては、ミッションケースMCから取り外し自在なカバー部材40を設けて、ミッションケースMCの右側部を外部に開放可能に構成したが、これに限られるものではない。カバー部材40を設けずに、ミッションケースMCの右側部を開放できないように構成してあっても良い。
【0146】
(5)上述の第一別実施形態において、副変速機構を事後的に取り付けられる例を示したが、これに限られず、当初からクリープ機構90を備えていても良い。
【0147】
(6)主変速レバー19A及び副変速レバー19Bの配置は、運転座席DSに対して左右何れの側に設けてあっても良い。
【0148】
(7)上述の実施形態においては、鉤状部材52を支持部材50や取付部材51を介して操作軸44の端部に取り付けた例を示したが、これに限られるものではない。例えば、特に図示はしないが、鉤状部材52は主変速レバー19Aに直接支持しても良い。また、ロック機構18は、上述の実施形態のような鉤状部材52と受け部材53とのような構成でなくとも、主変速レバー19Aまたは操作軸44の位置を拘束可能なものであれば、その他の構成であっても良い。
【0149】
(8)上述の実施形態において、受け部材53は、ブラケット42を介してミッションケースMCに支持したが、これに限られるものではない。受け部材53は、操作軸44及び主変速レバー19Aに対して相対的に静止している部材であれば、その他の部材に固定されていても良い。
【0150】
(9)駐車ブレーキ機構17は、出力ギア9aに咬合する構成でなくても、伝動機構TMの動作を規制可能なものであれば、その他のギア等に咬合する構成であっても良い。また、駐車ブレーキ機構17は、ギアに咬合する構成でなくても、例えば、摩擦板式の構成であっても良い。
【0151】
(10)上述の第二別実施形態では、連結機構としての第二連結ピン部材113及び第二連結部材114を備えるに当たり、第一運動変換機構102及び第二運動変換機構103の一方側を第一運動変換機構102とし、第一運動変換機構102及び第二運動変換機構103の他方側を第二運動変換機構103として、第二運動変換機構103に第二連結ピン部材113及び第二連結部材114を備えている。例えば、機体左右方向に延びる一対の壁部位を有する連結部材と、その壁部位の間に連結ピン部材を位置させて連結部材と連結ピン部材を連結するようにして、第一運動変換機構に連結機構を備えることもできる。
【0152】
(11)上述の第二別実施形態では、連結機構としての第二連結ピン部材113及び第二連結部材114を備えるに当たり、第一運動変換機構102又は第二運動変換機構103の運動変換機構側に第二連結ピン部材113を備え、移動軸101側に第二連結部材114を備えている。逆に、第一運動変換機構102又は第二運動変換機構103の運動変換機構側に連結部材を備え、移動軸101側に連結ピン部材を備えることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、キャビンを備えていない四輪駆動式のトラクタに限らず、キャビンを備えたトラクタや、後輪の代わりにクローラ式の走行装置を備えたトラクタにも適用可能であり、その他の作業車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0154】
E エンジン
TM 伝動機構
FW 前輪(走行装置)
RW 後輪(走行装置)
6 主変速装置(変速装置)
17 駐車ブレーキ機構
18 ロック機構
19A 主変速レバー(操作レバー)
42 ブラケット(相対的に静止している部材)
44 操作軸(第一リンク機構)
50 支持部材(操作レバーの側の部材)
50a 孔部
52 鉤状部材(係止部)
52a 第二開口部
53 受け部材(被係止部)
53a 第一開口部
53b フック部(突起部)
70 第二リンク機構
73 第一アーム部材(第二リンク機構の側の部材)
73a 突出部
80 変速経路
81 中立経路
82 連係経路
83 ブレーキ経路
84 第一ロック経路(ロック経路)
85 第二ロック経路(ロック経路)
100 第一リンク機構
101 移動軸
102 第一運動変換機構
103 第二運動変換機構
105 第一位置調整部材
108 第二位置調整部材
113 連結ピン部材(第二連結ピン部材)
114 連結部材(第二連結部材)
114a 壁部位
300 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの回転駆動力を走行装置に伝達する伝動機構と、
前記伝動機構に配設され、前記回転駆動力を変速して機体速度を変更可能な変速装置と、
前記伝動機構の動作を規制可能な駐車ブレーキ機構と、
手動によって揺動操作自在であって、前記変速装置の変速操作及び駐車ブレーキ機構のブレーキ操作が可能な一の操作レバーと、
前記操作レバーと前記変速装置とを連係する第一リンク機構と、
前記操作レバーと前記駐車ブレーキ機構との連係及び連係解除が可能な第二リンク機構と、
前記操作レバーの位置を拘束して、前記駐車ブレーキ機構を、前記伝動機構の動作を規制した状態に維持可能なロック機構と、を備え、
前記操作レバーの変速操作経路として、前記変速装置の中立状態に対応する中立経路と、前記中立経路から直線状に延び、前記変速装置の変速状態に対応する変速経路と、を備え、
前記ブレーキ操作は前記操作レバーの揺動操作のみによって行うものであって、前記操作レバーのブレーキ操作経路として、前記中立経路から前記変速経路と交差する方向に延びる連係経路と、前記連係経路の終端から前記連係経路と交差する方向に延びるブレーキ経路と、少なくとも前記ブレーキ経路の終端から前記ブレーキ経路と交差する方向に延びるロック経路と、を備え、
前記操作レバーが、前記変速経路及び前記中立経路の何れかに操作されると、前記第二リンク機構は前記操作レバーと前記駐車ブレーキ機構とを連係せず、
前記操作レバーが、前記中立経路から前記連係経路に操作されると、前記第二リンク機構は前記操作レバーと前記駐車ブレーキ機構とを連係し、さらに前記ブレーキ経路に操作されると、前記駐車ブレーキ機構が作動し、さらに前記ロック経路に操作されると、前記ロック機構が作動する作業車。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記操作レバーの側の部材に連結された係止部と、前記操作レバーに対して相対的に静止している部材に固定された被係止部と、を備え、
前記操作レバーが前記ロック経路に操作されると、前記係止部が前記被係止部に係止するように構成してある請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記ロック経路は、前記ブレーキ経路の終端から、前記ブレーキ経路と交差する方向のうち前記中立経路の側に延びる第一ロック経路と、前記第一ロック経路の終端から、前記第一ロック経路と交差する方向のうち前記中立経路の側に延びる第二ロック経路と、を備えている請求項1または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記操作レバーの側の部材に連結された係止部と、前記操作レバーに対して相対的に静止している部材に固定された被係止部と、を備え、
前記操作レバーが前記ロック経路に操作されると、前記係止部が前記被係止部に係止するように構成してあり、
前記被係止部に、前記係止部が入り込み可能な第一開口部と、前記第一開口部に隣接する突起部と、を備えると共に、前記係止部に、前記突起部が入り込み可能な第二開口部を備え、
前記操作レバーが、前記変速経路または前記中立経路に操作されると、前記係止部と前記被係止部とが離間し、前記中立経路から前記連係経路の終端に操作されると、前記係止部と前記被係止部とが近接し、さらに前記連係経路の終端から前記ブレーキ経路の終端に操作されると、前記係止部が前記第一開口部に入り込んで、前記第二開口部が前記突起部に対向し、さらに前記ブレーキ経路の終端から前記第一ロック経路の終端に操作されると、前記突起部が前記第二開口部に入り込み、さらに前記第一ロック経路の終端から前記第二ロック経路の終端に操作されると、前記突起部と前記第二開口部の縁部とが係止する請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記第一リンク機構は、複数の変速位置に移動自在に支持された移動軸と、機体左右方向に沿う軸芯周りでの前記操作レバーの揺動操作を第一方向での前記移動軸の動きに変換する第一運動変換機構と、機体前後方向に沿う軸芯周りでの前記操作レバーの揺動操作を第二方向での前記移動軸の動きに変換する第二運動変換機構とを備えており、前記第一運動変換機構は、機体前後方向での前記操作レバーと前記移動軸との相対位置を調整自在な第一位置調整部材を含めて構成され、前記第二運動変換機構は、機体左右方向での前記操作レバーと前記移動軸との相対位置を調整自在な第二位置調整部材を含めて構成されている請求項1から4の何れか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記第一運動変換機構及び前記第二運動変換機構の一方側は、前記移動軸に連結する連結機構を備えており、その連結機構は、前記第一運動変換機構及び前記第二運動変換機構の他方側により変換される前記移動軸の動きを許容している請求項5に記載の作業車。
【請求項7】
前記連結機構は、連結ピン部材と連結部材とを備え、前記連結部材は、前記第一方向又は前記第二方向に延びる間隔を隔てた一対の壁部位を備え、その一対の壁部位の間に前記連結ピン部材を配置させて前記連結ピン部材に連結されている請求項6に記載の作業車。
【請求項8】
前記操作レバーの側の部材及び前記第二リンク機構の側の部材のうち何れか一方に配設された突出部と、前記操作レバーの側の部材及び前記第二リンク機構の側の部材のうち何れか他方に配設されると共に、前記突出部が入り込み可能な孔部と、を備え、
前記孔部に前記突出部が入り込むと、前記操作レバーと前記駐車ブレーキ機構とが前記第二リンク機構を介して連係される請求項1から7の何れか一項に記載の作業車。
【請求項9】
前記突出部は、前記連係経路に沿った方向に突出しており、
前記突出部の長さは、前記操作レバーを前記連係経路に沿って操作したときの前記孔部の移動量よりも短く、かつ、前記操作レバーを前記ブレーキ経路及び前記ロック経路に沿って操作したときの、前記連係経路に沿った方向における前記孔部の移動量よりも長く設定されている請求項8に記載の作業車。
【請求項10】
前記ロック機構は、前記操作レバーの側の部材に連結された係止部と、前記操作レバーに対して相対的に静止している部材に固定された被係止部と、を備え、
前記操作レバーが前記ロック経路に操作されると、前記係止部が前記被係止部に係止するように構成してあり、
前記被係止部と、前記突出部及び前記孔部の何れか一方とは、前記操作レバーを揺動自在に支持するブラケットに支持してある請求項8または9に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−67371(P2013−67371A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181816(P2012−181816)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】