説明

作用状態を可視化した緩衝部材並びにその製造方法並びに作用状態を可視化した緩衝部材が組み込まれた要緩衝機材

【課題】 緩衝部材が緩衝機能を発揮している様子を視認できるようにすることにより、緩衝部材に新たな機能を付与することのできる標示手法を開発することを技術課題とした。
【解決手段】 緩衝機能基材Rを目的形状に成型して部材本体1とし、この部材本体1の表面に対して、部材本体1にかかる外力による変形に伴って歪むインジケーション模様2が設けられたことを特徴として成り、インジケーション模様2の状態によって部材本体1にかかっている外力の様子を視認することが可能となる。また従来は触覚でしか知覚できなかった部材本体1の柔軟性や弾性等を、視覚で知覚することが可能となる。またインジケーション模様2は、部材本体1そのものの性状に変化を及ぼしてしまうことが無いため、部材本体1の性状低下を招いてしまうことが無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばスポーツシューズ等における緩衝部材に関するものであって、特に緩衝部材にかかる外力を視認できるようにした新規な標示手法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スポーツシューズ等には高い緩衝機能が求められ、このため軟質な樹脂やゲル等を素材とする緩衝部材を靴底に埋め込み、所望の性能が発揮できるような構成が採られている。
加えて、その高性能であることを視覚的に積極的に顕示するとともに、装飾効果を発揮させて商品性を高める工夫がされている。具体的には、靴底から、あるいは靴底側縁または後縁等から緩衝部材の一部を外部より露見できる状態に組み込み、装飾部材としての機能を発揮できるような構成が採られている。
【0003】
そしてこの種の装飾部材の一例として、緩衝部材に、その緩衝機能を損なわない範囲の量及び種類の装飾材料として、例えば着色剤、金属粒子、蓄光体、着色ガラスビーズのような無機微粒子等を配合することにより、緩衝部材自体に美観やファッション性を付与することができる発明がなされ、既に特許出願されている(特許文献1参照。)。
しかしながらこのように緩衝部材に無機微粒子等を配合する場合には、緩衝機能を損なわない範囲での量及び種類しか配合できないため、装飾機能の拡張に関して改善の余地があった。
【特許文献1】特開平11−48378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、緩衝部材が緩衝機能を発揮している様子を視認できるようにすることにより、緩衝部材に新たな機能を付与し、もって製品への信頼性をも高めることのできる標示手法を開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の作用状態を可視化した緩衝部材は、緩衝機能基材を目的形状に成型して部材本体とし、この部材本体の表面に対して、部材本体にかかる外力による変形に伴って歪むインジケーション模様が設けられたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、インジケーション模様の状態によって部材本体にかかっている外力の様子を視認することが可能となる。
また従来は触覚でしか知覚できなかった部材本体の柔軟性や弾性等を、視覚で知覚することが可能となる。
更にまた前記インジケーション模様は、部材本体そのものの性状に変化を及ぼしてしまうことが無いため、部材本体の性状低下を招いてしまうことが無い。
【0006】
また請求項2記載の作用状態を可視化した緩衝部材は、前記要件に加え、前記緩衝機能基材は、スチレン系、ウレタン系、ケイ素系の樹脂あるいはシリコーンゲルを素材としたものであることをとして成るものである。
この発明によれば、従来より一般的に広く用いられている素材に対して、新たな機能を付与することが可能となる。
【0007】
更にまた請求項3記載の作用状態を可視化した緩衝部材は、前記要件に加え、前記インジケーション模様は、水圧転写により形成されたものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、複雑な形状の部材本体であっても、その曲面に馴染んだ状態でインジケーション模様を設けることができる。
またインジケーション模様を部材本体に密着して固着させることができるため、部材本体の変形に対するインジケーション模様の追随性を高いものとすることができる。
【0008】
更にまた請求4項記載の作用状態を可視化した緩衝部材は、前記要件に加え、前記部材本体は透明であることを特徴として成るものである。
この発明によれば、インジケーション模様を浮き上がらせたように表示することができるとともに、インジケーション模様の歪みの様子を際立たせることが可能となる。
【0009】
更にまた請求5項記載の作用状態を可視化した緩衝部材は、前記要件に加え、前記インジケーション模様の表面にコーティングが施されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝部材がスポーツシューズ等の要緩衝機材に組み込まれて使用される際に、インジケーション模様の汚損を防ぐことができる。
【0010】
また請求6項記載の作用状態を可視化した緩衝部材の製造方法は、出発状態を可塑状態とした緩衝機能基材を、目的形状をキャビティーとして有する型を用いて成型して部材本体とし、その後、この部材本体に対し、水圧転写によってその表面にインジケーション模様を形成することを特徴として成るものである。
この発明によれば、複雑な形状の部材本体を形成することができるとともに、その曲面に馴染んだ状態でインジケーション模様を付けることができる。
更にまた複雑な形状のインジケーション模様を形成することが可能となる。
またインジケーション模様を部材本体に密着して固着させることができるため、部材本体の変形に対するインジケーション模様の追随性を高いものとすることができる。
【0011】
更にまた請求項7記載の作用状態を可視化した緩衝部材の製造方法は、前記請求項6記載の要件に加え、前記インジケーション模様を形成した後、保護コーティングを施すことを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝部材がスポーツシューズ等の要緩衝機材に組み込まれて使用される際に、インジケーション模様の汚損を防ぐことができる。
【0012】
また請求項8記載の作用状態を可視化した緩衝部材が組み込まれた要緩衝機材は、前記請求項1乃至5記載の緩衝部材が、要緩衝個所に対して外部より視認可能な状態で具えられていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、スポーツシューズ等の要緩衝機材に組み込まれた緩衝部材が緩衝機能を発揮している様子が視認できるため、要緩衝機材に新たな標示機能を付与することができる。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、緩衝部材が緩衝機能を発揮している様子を視認することができるため、緩衝部材が組み込まれる要緩衝機材に新たな機能を付与し、もって製品への信頼性をも高める、その商品価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の「作用状態を可視化した緩衝部材並びにその製造方法並びに作用状態を可視化した緩衝部材が組み込まれた要緩衝機材」の最良の形態の一つは以下の実施例に説明するとおりであって、始めに「作用状態を可視化した緩衝部材及びこのものが組み込まれた要緩衝機材」について説明し、続いて「作用状態を可視化した緩衝部材の製造方法」について説明する。
なおこれらの実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0015】
図1中、符号Sで示すものは、要緩衝機材の一例であるスポーツシューズであって、この靴底部かかと側、あるいは側面等の要緩衝個所に、本発明の作用状態を可視化した緩衝部材A(以下、緩衝部材Aと称する。)が、その一部を外部に露出させ、インジケーション模様2が外部より視認可能な状態で組み付けられる。
また本発明の緩衝部材Aは、組み付け対象を前出のスポーツシューズSに限るものではなく、例えばヘルメット、身体用プロテクタ等を組み付け対象とすることができるものである。
【0016】
まず前記緩衝部材Aについて説明すると、このものは緩衝機能基材Rを目的形状に成型して部材本体1とし、この部材本体1の表面に対して、部材本体1にかかる外力による変形に伴って歪むインジケーション模様2が設けられ、更にこのインジケーション模様2の表面に透明なコート層3が設けられて成るものである。
そして前記緩衝部材Aは、インジケーション模様2が露出するようにスポーツシューズSに組み付けられるものであり、このインジケーション模様2が外部に露出された状態となる。すなわち前記コート層3を通して、その内部に位置するインジケーション模様2が視認されるものであり、更にインジケーション模様2の内側に位置する部材本体1も視認されることとなる。
【0017】
この実施例では部材本体1を形成するにあたって、後述するように、出発状態を可塑状態とした緩衝機能基材Rを、目的形状をキャビティーとして有する型5を用いることにより、部材本体1を複雑な形状のものとして形成することが可能となる。
また前記部材本体1の素材すなわち緩衝機能基材Rとしてスチレン系、ウレタン系、ケイ素系の樹脂あるいはシリコーンゲルが採用されるものであるが、これらの他、良好な緩衝性能が確保されたものであれば、適宜のものを採用することができる。
なおスチレン系、ウレタン系、ケイ素系の樹脂によって形成された部材本体1は保形性が高いため、無垢の状態とされ、一方、シリコーンゲルによって形成された部材本体1は保形性が低いため、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の透明樹脂を素材とした表殻部材によって保形されるものである。
更に部材本体1は透明あるいは透明度が保たれる程度の着色が施されたものとするが、緩衝部材Aの使用態様や顧客の要望に応じて、適宜着色して透明度を低下させるようにしてもよい。
【0018】
次に前記インジケーション模様2とは、部材本体1が外力を受けて変形したときに、この変形に追随して生じる歪みが視認できるような模様を意味するものであり、具体的には一例として模様要素2aが規則性を持って配列されたものである。
まず図2(a)に示すインジケーション模様2は、直線を模様要素2aとしたものであり、傾斜方向を異ならせた複数の直線が等間隔で互いに交差するようにしたものである。
また図2(b)に示すインジケーション模様2も直線を模様要素2aとしたものであり、垂直の模様要素2aと水平の模様要素2aとを等間隔で互いに交差するようにしたものである。
更にまた図2(c)(d)に示すインジケーション模様2は、ドットを模様要素2aとしたものであり、ドットを格子状に配置したものである。
更にまた図2(e)に示すインジケーション模様2は、白黒の方形を模様要素2aとして市松模様を形成したものである。
【0019】
そして以上に例示したインジケーション模様2にあっては、部材本体1が外力を受けて変形したときに、この変形に追随して生じた歪みによって模様要素2aの配列の規則性が壊されることとなり、この歪みが視認できるものである。
具体的には、例えばスポーツシューズSを履いたスポーツ選手が図3(a)に示すように直立している状態から、図3(b)に示すように踏ん張った状態となると、荷重のかかる部分において模様要素2a同士の間隔が狭まることとなり、その配列の規則性が壊れていることが視認できるものである。すなわちインジケーション模様2の状態によって部材本体1にかかっている外力の様子を視認することが可能となるものである。
また従来は触覚でしか感じられなかった部材本体1の柔軟性や弾性等を、インジケーション模様2の変化から視覚で感じることが可能となる。
【0020】
また前記模様要素2aの形態を、部材本体1が外力を受けて変形したときに、この変形に追随して生じる歪みが模様要素2a自体の変形として視認できるような形態としてもよい。
具体的には、まず図2(f)に示すインジケーション模様2は、模様要素2aを比較的複雑な形状且つ大型なものとしたものであり、模様要素2a自体の変形が目視できるようにしたものである。
また図2(g)に示すインジケーション模様2は、自動車の衝突試験等で使われるマーカーを模様要素2aとしたものである。
なお図2(f)及び図2(g)では、模様要素2aを規則性を持たせて配列することにより、模様要素2a自体の変形によって生じる歪みと、配列の規則性が壊されて生じる歪みとの双方の歪みを視認できるようにした例を示した。
【0021】
更には一見単なる装飾模様に見えるものであっても、部材本体1が外力を受けて変形したときに、この変形に追随して生じる歪みが模様要素2a自体の変形として視認できるような形態であれば、模様要素2aとして採用することが可能である。
具体的には図2(h)に示すような文字列や、記号を模様要素2aとして採用することが可能である。
また図2(i)に示すように、音符と、五線とをそれぞれ模様要素2aとすることにより、音符の変形によって生じる歪みと、五線の配列の規則性が壊されて生じる歪みとの双方の歪みを視認することができる。
【0022】
そしてこのように本発明の緩衝部材Aが組み込まれた要緩衝部材は、緩衝部材Aが緩衝機能を発揮している様子が視認的に実感できるものとなり、機能に対しての信頼性を高めるといった新たな標示機能が付与されたものとなる。
また前記緩衝部材Aが組み込まれた要緩衝部材の更なる活用例としては次に挙げるような事例がある。
例えばプロスポーツ選手用の特注品等を作成する際に、実際に選手にスポーツシューズSを着用させて競技を行ってもらい、このときのインジケーション模様2を動画撮影し、緩衝部材Aに実際に生じている歪みの様子を記録して、このデータを解析することにより、緩衝部材Aの最適な形状、硬さ等を決定する際のデータとして用いるようにする。
【0023】
因みに部材本体1の成型の際に、目視可能な金属粒子等を緩衝機能基材Rに混入することにより、インジケーション模様2を形成することもできるが、この場合には、緩衝機能基材Rの物性を損なってしまう恐れがある。
一方、本発明の緩衝部材Aは、インジケーション模様2が部材本体1そのものの性状に変化を及ぼしてしまうことが無いため、部材本体1の性状低下を招いてしまうことが無い。
またインジケーション模様2は水圧転写により形成されているため、部材本体1に密着して固着されており、部材本体1の変形に対して良好に追随し、部材本体1の変形を正確に可視化することができるものである。
更にまた部材本体1は透明であるため、インジケーション模様2を浮き上がらせたように表示することができるとともに、インジケーション模様2の歪みの様子を際立たせることができるものである。
【0024】
次に上述した緩衝部材Aを製造するプロセスと併せて、本発明の製造方法について説明する。
図4は液圧転写装置10を概略的に示したものであり、この装置は、転写槽11、活性剤散布装置12、把持装置13及びチェーンコンベヤ14を主要要素として具え、ワークたる部材本体1に対して、前記インジケーション模様2を付与するための装置である。
すなわち前記液圧転写装置10は、転写槽11の一端から転写フィルムFを搬入して転写槽11の他方に移送させながら、被転写体たる部材本体1の表面に転写フィルムFの転写インク面Faを転写するものである。
【0025】
ここで前記転写フィルムFは、例えばゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール樹脂等から成る水溶性フィルムを担持シートとするものであり、フィルムの表面には、水Wにより膨潤した転写フィルムFから転移し得るバインダー成分を有する転写インクをあらかじめ塗着して転写インク面Faが形成されている。
そしてこの転写インク面Faには、部材本体1への転写を行うべき所要の転写パターンたるインジケーション模様2が形成されている。
【0026】
また前記転写槽11内部には水W等の液体が貯留されており、この水Wは図4に示す実施例においては循環管路16を通じてポンプ17により液面に波立ちのない状態でゆっくりと循環するようになっている。なお、ここで用いる液体としては転写フィルムFの担持シートを膨潤または溶解し得ることが条件であり、このような条件を満たすものであるならば水W以外の液体も使用することができる。
また転写槽11内の水Wは必ずしも一定の流れを生じさせる必要はなく、転写槽11内に単に水Wを貯溜しただけのものであってもよく、流れを生じさせる手段としても堰等を用いて液面差を利用して流れを生じさせるもの等、他の手段を用いるものであってもよい。
【0027】
そしてこのような転写槽11には、転写フィルムFが、転写インク面Faを上向きにした状態で液面上を浮遊するように搬入されるものであり、転写槽11の一端には転写フィルムF搬入用の傾斜板15が設けられている。
この傾斜板15は、転写フィルムFを転写槽11に搬入する際の案内部材として作用するものであり、同様の作用が期待できるものであれば他の手法を用いてもよく、特にこのような傾斜板15を設けずとも転写フィルムFの搬入が充分に円滑な場合には、傾斜板15の設置を省略してもよい。
またこの実施例では、前記転写槽11に対して、カットシート状の転写フィルムFが一枚ずつ供給されるような構成が採られるものであり、前記傾斜板15の排出端付近にカット装置15aが設けられる。
なお転写フィルムFをカットシート状でなく、連続シート状で供給するような構成を採ることもできる。
【0028】
またこの実施例においては、傾斜板15から転写槽11内に供給された転写フィルムFが液面上を浮遊する領域を、投入側から順に膨潤領域E1、活性剤散布領域E2及び転写領域E3として区分している。
前記膨潤領域E1は、転写フィルムFが膨潤できるように転写フィルムFを所定時間水Wになじませるための領域であり、この膨潤領域E1で待機される時間は、使用される転写フィルムFの特性及び転写インクの活性化特性等に応じて設定される。
【0029】
また前記活性剤散布領域E2は、膨潤させた転写フィルムFの転写インク面Faに活性剤を散布する領域であり、この活性剤散布領域E2の上方には活性剤散布装置12が配設される。前記活性剤散布装置12は、適宜のタンクに貯溜されている液状の活性剤を、例えば遠心式または超音波式の霧化器で霧化し、その霧状になった活性剤を転写フィルムFの転写インク面Fa上に散布するというものである。
なお、前記活性剤としては、溶剤成分、樹脂成分、体質顔料等の混合物や、その他シンナー等の溶剤成分のみから成るもの等が適用される。
【0030】
また前記転写領域E3は、転写フィルムFの転写インク面Faに部材本体1を押圧させて転写を行う領域であり、この転写領域E3の上方には把持装置13が配設される。前記把持装置13は、一例として部材本体1を把持するためのハンドと、このハンドを上下方向に昇降させる昇降装置とを具えて成るものであって、被転写体たる部材本体1を円滑な転写がなされる角度に把持し、水Wの一定の深さに部材本体1を沈降させる役割を担うものである。
【0031】
そして前記転写槽11内には、転写槽11の左右両側の側壁近傍に一対のチェーンを配置したチェーンコンベヤ14が設けられるものであり、このチェーンコンベヤ14は上方の液面循環側においては転写フィルムFの供給進行方向と同じ向きに駆動されるものである。
またこのチェーンコンベヤ14は、転写フィルムFの幅方向の伸展を規制する役割も担うものである。
【0032】
本発明の「作用状況を可視化した緩衝部材の製造方法」を実施するための装置の一例である液圧転写装置10は一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置を用いた本発明の製造方法について説明を行う。
【0033】
〔部材本体の形成〕
まず部材本体1を得るものであり、図5に示すような目的形状をキャビティーとして有する型5を用いて、出発状態を可塑状態とした緩衝機能基材Rを所望の形状に成型する。
そして緩衝機能基材Rが硬化した時点で離型するものであり、緩衝機能基材Rが熱硬化性あるいは紫外線硬化性の樹脂である場合には、これらの硬化処理が施される。
【0034】
〔インジケーション模様の形成〕
次いで前記部材本体1を把持装置13にセットするとともに、傾斜板15よりカットシート状の転写フィルムFを一枚ずつ供給する。
するとこの転写フィルムFはチェーンコンベヤ14によって搬送され、膨潤領域E1、活性剤散布領域E2、転写領域E3の順に移動することとなる。
そしてまず前記膨潤領域E1においては、転写フィルムFは所定時間水Wになじませられることにより膨潤する。
【0035】
次いで転写フィルムFは前記活性剤散布領域E2に移動するとともに、活性剤散布装置12によって転写インク面Faに活性剤が散布される。
続いて転写フィルムFは転写領域E3に移動するとともに、ここで前記把持装置13にセットされた部材本体1が水Wの一定の深さに沈降させられるものであり、この際、転写フィルムFの転写インク面Faは活性化しているので、部材本体1の表面に転写インク面Faが液圧により押圧されて転写が行われる。
次いで部材本体1を水Wから引き上げるとともに適宜乾燥処理を施すことにより、インジケーション模様2が形成された緩衝部材Aが得られる。
なお前記インジケーション模様2を、部材本体1の表面に付着するときに生じる変形を予め考慮して転写フィルムFに形成しておけば、部材本体1に固着された状態で歪みの無いものとして形成することができる。
【0036】
〔コート層の形成〕
更にこの実施例では、上述した液圧転写手法を用いてコート層3が形成されるものであり、この際には、転写インク面Faに透明皮膜が形成された転写フィルムFが用いられる。
なお、予めインジケーション模様2の表面にコート層3が形成された転写フィルムFを用いることにより、一度の液圧転写でインジケーション模様2とコート層3との双方を形成することもできる。
またコート層3は、部材本体1に透明液状樹脂等をスプレーして形成したり、部材本体1を透明液状樹脂等に浸漬させて形成してもよい。もちろんこれらの樹脂を熱硬化性あるいは紫外線硬化性のものとした場合には、これらの硬化処理が施される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の緩衝部材及びこのものが繰み込まれた要緩衝機材を示す斜視図並びに緩衝部材を示す縦断側面図である。
【図2】種々のインジケーション模様を示す正面図である。
【図3】緩衝部材が緩衝機能を発揮している状態を説明するための正面図である。
【図4】液圧転写装置を示す縦断面図である。
【図5】部材本体の形成の様子示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 部材本体
2 インジケーション模様
2a 模様要素
3 コート層
5 型
10 液圧転写装置
11 転写槽
12 活性剤散布装置
13 把持装置
14 チェーンコンベヤ
15 傾斜板
15a カット装置
16 循環管路
17 ポンプ
A 緩衝部材
E1 膨潤領域
E2 活性剤散布領域
E3 転写領域
F 転写フィルム
Fa 転写インク面
S スポーツシューズ
R 緩衝機能基材
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝機能基材を目的形状に成型して部材本体とし、この部材本体の表面に対して、部材本体にかかる外力による変形に伴って歪むインジケーション模様が設けられたことを特徴とする作用状況を可視化した緩衝部材。
【請求項2】
前記緩衝機能基材は、スチレン系、ウレタン系、ケイ素系の樹脂あるいはシリコーンゲルを素材としたものであることを特徴とする請求項1記載の作用状況を可視化した緩衝部材。
【請求項3】
前記インジケーション模様は、水圧転写により形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の作用状況を可視化した緩衝部材。
【請求項4】
前記部材本体は透明であることを特徴とする請求項1、2または3記載の作用状況を可視化した緩衝部材。
【請求項5】
前記インジケーション模様の表面にコーティングが施されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の作用状況を可視化した緩衝部材。
【請求項6】
出発状態を可塑状態とした緩衝機能基材を、目的形状をキャビティーとして有する型を用いて成型して部材本体とし、その後、この部材本体に対し、水圧転写によってその表面にインジケーション模様を形成することを特徴とする作用状況を可視化した緩衝部材の製造方法。
【請求項7】
前記インジケーション模様を形成した後、保護コーティングを施すことを特徴とする請求項6記載の作用状況を可視化した緩衝部材の製造方法。
【請求項8】
前記請求項1乃至5記載の緩衝部材が、要緩衝個所に対して外部より視認可能な状態で具えられていることを特徴とする作用状況を可視化した緩衝部材が組み込まれた要緩衝機材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−222545(P2007−222545A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49959(P2006−49959)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【出願人】(306011034)株式会社ジェルテック (11)
【Fターム(参考)】