説明

併用判定モジュール検証方法

【課題】SFカードと特急線の乗車券とを併用利用可能とする自動改札機に搭載される併用判定モジュールの検証方法を提供する。
【解決手段】本発明の併用判定モジュール検証方法は、SFカードと特急線の乗車券とを併用利用可能とする自動改札機に搭載される併用判定モジュールの突合検証を行うものである。このために、複数の在来線用の既存判定モジュール(30)によって特定エリア限界駅と指定された駅間の最短経路データを生成し、これらの複数の最短経路データのうちから、さらに最短経路のデータを抽出して、この抽出された最短経路データと、併用判定モジュールに登録されている最短経路データとを突合処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SFカードと特急線の乗車券とを併用利用可能とする自動改札機に搭載される併用判定モジュールの検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特急利用時における乗車券は、特定のエリア内の各駅における乗降を許可する券(特定都区市内発着券)となっている。このことを、図4を参照しつつ説明する。
【0003】
図4において、白黒のまだらで示された線は特急の線路Xであり、黒い線で示された線は在来線の線路(L1乃至L8)である。また、白抜きの丸は駅を示しており、斜線の範囲内が特定都区市内(以下、「特定エリアZ」という。)を示している。
【0004】
L1線におけるA1駅、L2線におけるA2駅、L3線におけるA3駅、L4線におけるA4駅、L5線におけるA5駅、L6線におけるA6駅、L7線におけるA7駅、L8線におけるA8駅は特定エリアZの域内の限界の駅であり、これらA1駅、A2駅、A3駅、A4駅、A5駅、A6駅、A7駅、A8駅より斜線内の各駅での乗降は、特急利用時の乗車券においては許されている。すなわち例えば、特急線Xの乗車券によってS駅から乗車し、T駅で特急線Xに乗り換え特急線Xを利用することができ、また、特急線Xの乗車券によってT駅に到着後、T駅にて乗り換えてS駅で降車することもできる。
【0005】
ところで、在来線においては、SF(ストアードフェア)カード等から乗車料金を引き落とす運賃収受システムの導入が進んでいる。このような運賃収受システムに用いるSFカードとしては、リサイクル使用できるICカードが利用され始めている。このようなSFカードは、自動改札機等に内蔵されたカードリーダーライタとの間で、非接触式で無線通信を行うように設定されている非接触式ICカードであり、例えば『Suica(登録商標)』などと呼ばれ、定期券やストアードフェア型の乗車券として広く普及し始めている。このようなSFカードと特急線Xの乗車券とを併用することが可能となれば、利用者にとっての利便性が高まることが予想される。SFカードと特急線Xの乗車券とを併用するためには、SFカードと特急線Xの乗車券とを併用可能とする自動改札機には、SFカードと特急線乗車券との併用を判定した上で、SFカードから収受する乗車料金を計算する併用判定モジュールを設けておかなくてはならない。次に、このような併用判定モジュールが判定すべき内容を説明する。
【0006】
図5は、特定エリアZの外の路線も示したものであり、先の図と同様で白黒のまだらで示された線は特急の線路Xであり、黒い線で示された線は在来線の線路(L1乃至L8)である。また、この図5においては、L1線、L2線、L3線と交差するLM線が示されている。LM線とは、L1線のM1駅、L2線のM2駅、L3線のM3駅において交差する。
【0007】
特急線Xを所持している利用者が、LM線のN1駅においてSFカードで乗車し、T駅にて特急線Xに乗り換える場合を想定する。LM線のN1駅からT駅までの経路は、
経路1:N1駅→(LM線)→M1駅→(L1線)→A1駅→T駅、
経路2:N1駅→(LM線)→M2駅→(L2線)→A2駅→T駅、
経路3:N1駅→(LM線)→M3駅→(L3線)→A3駅→T駅、
の3通りが存在する。SFカードから料金を収受する運賃収受システムにおいては、どのような乗車経路を利用しても入場駅と出場駅間の最短経路に基づいて乗車料金を算出する、という決まりがある。先のSFカードと特急線Xの乗車券とを併用可能とする自動改札機はT駅に設置されるものである。この自動改札機に搭載される併用判定モジュールは、先の決まりにより、特急線Xの乗車券がカバーする特定エリアZに限界駅であるA1駅、A2駅、A3駅までの
経路1’:N1駅→(LM線)→M1駅→(L1線)→A1駅、
経路2’:N1駅→(LM線)→M2駅→(L2線)→A2駅、
経路3’:N1駅→(LM線)→M3駅→(L3線)→A3駅、
の経路のうち最短のものを判定して、この判定によって選択された最短経路に基づいてSFカードから乗車料金を収受しなければならない。すなわち、SFカードと特急線Xの乗車券とを併用判定する自動改札機は、例えば、
経路1’:N1駅→(LM線)→M1駅→(L1線)→A1駅のキロ程:21.20km
経路2’:N1駅→(LM線)→M2駅→(L2線)→A2駅のキロ程:18.40km
経路3’:N1駅→(LM線)→M3駅→(L3線)→A3駅のキロ程:23.70km
という計算を実行した上で、最短経路であるのは経路2である、という判定を行い、さらにこの判定に基づいて経路2で乗車料金を徴収しなくてはならない。
【0008】
前述したように、近年SFカードは、非接触式ICカードが利用されている。SFカードと特急線Xの乗車券とを併用可能とする自動改札機においては、利用者がSFカードを、当該自動改札機のカードリーダーライタにかざしている時間内に、以上のような最短経路を判定した上で、判定された経路に基づいてSFカードから乗車料金を収受しなければならない。ところが、利用者がSFカードをかざしている時間内に以上のような処理を行うことは不可能である。
【0009】
そこで、併用判定モジュールにおいては、N1駅からT駅までの最短経路を逐次計算するのではなく、N1駅からT駅までの最短経路データを保持しておく、という方式を採用する。すなわち、併用判定モジュールは、
(SFカードと特急線Xの乗車券とを併用利用する場合)N1駅→T駅の場合の最短経路:18.40km、
という構造のデータを全駅について保持するようにしている。
【0010】
ところで、自動改札機に搭載する各種の判定モジュールについては、複数タイプ開発された判定モジュールのそれぞれの経路判定が正しいかどうかを、互いに突合しあって検証することにようにしている。この突合についてより詳しく説明する。判定モジュールAと、これとは別に開発された同一機能の判定モジュールBとで、例えば、C駅−D駅間の最短経路を判定させて、この結果が、判定モジュールAと判定モジュールBとで一致するかどうか、を調査する検証作業を突合と称している。このような突合によって、幾通りも存在する2つの駅の組み合わせについて、それぞれ判定モジュールAと判定モジュールBとで一致するかどうか調べて、一致しないような場合については、詳細な調査でもってフォローして、料金判定の基礎となる判定モジュールの完璧を期すようにするわけである。このようして、機種毎の判定モジュール間で互い同士の検証を行い、料金の誤収受を避けるようにしている。
【0011】
この突合による検証作業ついては、例えば、本件出願人による特許文献1(特願2005−83268号)に記載がある。
【特許文献1】特願2005−83268号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、先のSFカードと特急線Xの乗車券とを併用利用する併用判定モジュールについては、それほど多くの需要があるわけではないので、複数タイプの開発が行われているわけではない。従って、従来の在来線のための判定モジュールにおいて用いられた突合という検証作業を行うことができない。しかしながら、料金の誤収受を避けるために、料金判定の基礎となる併用判定モジュールの検証作業は完璧を期すようにしなければならない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために、突合検証作業を行うことなく、併用判定モジュールを検証する方法に係るものであり、請求項1に係る発明は、SFカードと特急線の乗車券とを併用利用可能とする自動改札機に搭載される併用判定モジュールの検証方法において、複数の在来線用の既存判定モジュールによって特定エリア限界駅と指定された駅間の最短経路データを生成し、これらの複数の最短経路データのうちから、さらに最短経路のデータを抽出して、この抽出された最短経路データと、併用判定モジュールに登録されている最短経路データとを突合処理することを特徴とする併用判定モジュール検証方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、SFカードと特急線Xの乗車券とを併用利用可能とする自動改札機に搭載される併用判定モジュールの突合対象データを、既存の在来線のための判定モジュールを複数用いて行うことができるようになるために、料金判定の基礎となる併用判定モジュールの検証作業の完璧を期すことができ、料金の誤収受を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る併用判定モジュール検証方法におけるシステム構成を示す図である。以下、本実施形態においては、図5で示した特定エリアZを例に併用判定モジュールの検証方法について説明する。特定エリアZの概念については背景技術において説明したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。図1において、10は突合部、20はシミュレート部、30は既存判定モジュール部、40は突合結果記憶部、50は併用判定モジュールをそれぞれ示している。
【0016】
突合部10は、併用判定モジュール50から生成される最短経路データと、シミュレート部20における擬似的併用判定モジュールによって生成される最短経路データとを突合する構成であり、従来から利用される突合部を利用することができる。突合の概念については、背景技術の欄にも記載したとおり従来と同様であるが、本発明の場合には、突合を行うのは、従来の在来線用の判定モジュールではなく、SFカードと特急線Xの乗車券とを併用利用を可能とする併用判定モジュール50である。この併用判定モジュール50の突合する相手が種々開発されていないために、シミュレート部20に、擬似的に併用判定モジュール50相当の動作をさせるように構成するわけである。
【0017】
シミュレート部20は、既存判定モジュール部30からのデータを援用することによって、擬似的に併用判定モジュール50と同等の動作を行うように構成されたものであり、既存判定モジュール部30からのデータを受けて、最短経路データを生成して、突合部10に受け渡す。
【0018】
既存判定モジュール部30は、在来線用の既存判定モジュール(1)31、在来線用の既存判定モジュール(2)32、在来線用の既存判定モジュール(3)33、在来線用の既存判定モジュール(4)34、在来線用の既存判定モジュール(5)35、在来線用の既存判定モジュール(6)36、在来線用の既存判定モジュール(7)37、在来線用の既存判定モジュール(8)38の群からなっている。ここで、既存判定モジュールが(1)〜(8)までに限定されているのは、特定エリアZに乗り入れる線がL1〜L8の8線であることと関連している。
【0019】
併用判定モジュール部50は、本発明における被検査対象のモジュールであり、SFカードと特急線Xの乗車券とが併用利用された場合に、SFカードからの料金収受を行うための料金計算を行う。前述したとおり、SFカードを用いた運賃収受システムにおいては、どのような乗車経路を利用しても入場駅と出場駅間の最短経路に基づいて乗車料金を算出する、というルールに基づいている。前述のようにSFカードは非接触式ICカードが利用されているため、併用判定モジュール部50は逐次最短経路を計算することはできない。そこで、併用判定モジュール部50は、全駅からT駅までの最短経路データをあらかじめ保持しておくように設定される。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態に係る併用判定モジュール部50が保持する最短経路データの構造を示す図である。図2においては、Nn駅からT駅までの最短距離に係るデータが示されており、左欄が駅名で、右欄が最短距離を示している。
【0021】
例えば、特急線Xに乗り継ぐためにN1駅を出発する場合、T駅に至るまでには、L1線のA1駅経由、L2線のA2駅経由、L3線のA3駅経由、L4線のA4駅経由、L5線のA5駅経由、L6線のA6駅経由、L7線のA7駅経由、L8線のA8駅経由のいずれの経路を利用したとしても、SFカードで収受する料金は、前述の通り最短距離に係るデータに基づくものでなくてはならない。そこで、併用判定モジュール部50は、図2に示すNn駅からT駅までの最短距離に係るデータを保持するようにしている。本発明の実施の形態においては、この併用判定モジュール部50が保持する図2のデータが正しいかどうかを検証することにある。しかしながら、前記の課題の欄において説明したように併用判定モジュール部50と突合させる相手が不在なわけである。
【0022】
そこで、既存判定モジュール部30において、在来線用の既存判定モジュール(1)31がL1線のA1駅を、在来線用の既存判定モジュール(2)32がL2線のA2駅を、在来線用の既存判定モジュール(3)33がL3線のA3駅を、在来線用の既存判定モジュール(4)34がL4線のA4駅を、在来線用の既存判定モジュール(5)35がL5線のA5駅を、在来線用の既存判定モジュール(6)36がL6線のA6駅を、在来線用の既存判定モジュール(7)37がL7線のA7駅を、在来線用の既存判定モジュール(8)38がL8線のA8駅をそれぞれエミュレートする
このことを図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る既存判定モジュール部30とシミュレート部20との関連性を示すブロック図である。図3は、図1のブロック図の既存判定モジュール部30とシミュレート部20の部分を抜き出して、両者の関係をより詳細に示したものである。図3において、シミュレート部20の21乃至28に示されているものは、既存判定モジュール(1)31乃至既存判定モジュール(8)38からのデータを一時的に記憶する一次記憶手段である。
【0023】
背景技術の欄においても示したN1駅からT駅までの最短経路の算出を例にとり説明する。すなわち、特急線Xを所持している利用者が、LM線のN1駅においてSFカードで乗車し、T駅にて特急線Xに乗り換える場合の最短経路を、併用判定モジュール部50とシミュレート部20とでどのように算出するかについて説明する。
【0024】
既存判定モジュール(1)31乃至既存判定モジュール(8)38は、前述のようにA1駅乃至A8駅をエミュレートするようになっている。これにより、既存判定モジュール(1)31がN1からA1駅までの最短経路を、既存判定モジュール(1)32がN1からA2駅までの最短経路を、既存判定モジュール(1)33がN1からA3駅までの最短経路を、・・・・既存判定モジュール(8)38がN1からA8駅までの最短経路を、というように算出する。この既存判定モジュール(1)31乃至既存判定モジュール(8)38の算出結果は、シミュレート部20の一次記憶手段21乃至28に入力される。
【0025】
シミュレート部20は、一次記憶手段21乃至28に入力された図示するようデータの大小関係を比較して、一次記憶手段21乃至28の中での最短の経路を選択して、これをN1駅からT駅までの最短経路とする。以上のような既存判定モジュール部30とシミュレート部20との関連によって、N1駅からNn駅までの全てについて最短経路データを生成する。
【0026】
以上のようにシミュレート部20から生成された最短経路データは、併用判定モジュール50から生成される最短経路データと突合される。ここで、一致、不一致を含めた全てのデータは、突合結果記憶部40に入力される。
【0027】
突合結果記憶部40における不一致データについては、誤収受なきように詳細に併用判定モジュール部50の調査を行うことによって完璧を期すようにする。
【0028】
以上、本発明によれば、SFカードと特急線Xの乗車券とを併用利用可能とする自動改札機に搭載される併用判定モジュールの突合対象データを、既存の在来線のための判定モジュールを複数用いて行うことができるようになるために、料金判定の基礎となる併用判定モジュールの検証作業の完璧を期すことができ、料金の誤収受を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る併用判定モジュール検証方法におけるシステム構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る併用判定モジュール部50が保持する最短経路データの構造を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る既存判定モジュール部30とシミュレート部20との関連性を示すブロック図である。
【図4】特定のエリアの概念について説明する図である。
【図5】SFカードと特急線Xの乗車券とを併用する際のN1駅からT駅までの最短経路を説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
10・・・突合部、20・・・シミュレート部、30・・・既存判定モジュール部、40・・・突合結果記憶部、50・・・併用判定モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SFカードと特急線の乗車券とを併用利用可能とする自動改札機に搭載される併用判定モジュールの検証方法において、
複数の在来線用の既存判定モジュールによって特定エリア限界駅と指定された駅間の最短経路データを生成し、これらの複数の最短経路データのうちから、さらに最短経路のデータを抽出して、この抽出された最短経路データと、併用判定モジュールに登録されている最短経路データとを突合処理することを特徴とする併用判定モジュール検証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−97429(P2008−97429A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280072(P2006−280072)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)