説明

併用剤

【課題】前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを組み合わせてなる、ホルモン依存性前立腺癌のホルモン非依存性癌への変化を抑制することによる優れた前立腺癌治療薬の提供。
【解決手段】前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬を組み合わせてなる前立腺癌の予防・治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを組み合わせてなる新規医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
LHRH(またはGnRH)として知られる黄体形成ホルモン放出ホルモンは視床下部から放出され、下垂体のレセプターに結合する。これによって放出されるLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)は性腺に作動してステロイド性ホルモンを合成する。黄体形成ホルモン放出ホルモン作用が強い化合物の連続投与は、利用可能なレセプター数の減少をもたらし、性腺由来ステロイド性ホルモンの形成が抑制される。このことを利用してGnRH作用を有する化合物は、前立腺癌、良性前立腺肥大、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、乳癌等の性ホルモン依存性疾患などの治療薬として臨床適応されている。
特許文献1には、ホルモン系薬剤と、(i)EGFまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質、(ii)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質または(iii)FGFまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質などを中和するか、それらの受容体への刺激作用を阻害する薬剤とを組み合わせることを特徴とする、ホルモン依存性癌のホルモン非依存性癌への変化遅延剤が記載されている。
特許文献2には、GnRHアゴニストとSERM剤(ラロキシフェン等)、性ホルモン合成阻害薬(リアーゼ阻害剤)、受容体型チロシンキナーゼ阻害薬(イレッサ等)、副作用緩和剤・骨代謝調節薬(アレンドロン酸、イプリフラボン等)、免疫療法剤、サイトカイン・ケモカイン阻害剤、エンドセリン受容体アンタゴニストなどとの併用薬が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO00−20034号公報
【特許文献2】WO03−15820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを組み合わせてなる、ホルモン依存性前立腺癌のホルモン非依存性癌への変化を抑制することによる優れた前立腺癌治療薬を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、チロシンキナーゼ阻害薬であるラパチニブが予想外にもホルモン依存性前立腺癌のホルモン非依存性癌への変化を抑制することを見いだし、さらに研究した結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
[1]
前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬を組み合わせてなる前立腺癌の予防・治療剤;
[2]
前立腺癌治療薬が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z
[式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5、NH-NH-CO-NH2、NH-C2H4-NH2またはGly-NH2をそれぞれ示す]で表わされるペプチドまたはその塩である上記[1]記載の剤;
[3]
前立腺癌治療薬が、5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5またはその酢酸塩である上記[1]記載の剤;
[4]
チロシンキナーゼ阻害薬がホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化を抑制する薬剤である上記[1]記載の剤;
[5]
ホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化を抑制する薬剤がHER2チロシンキナーゼ阻害薬である上記[4]記載の剤;
[6]
ホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化を抑制する薬剤がラパチニブである上記[4]記載の剤;
[7]
哺乳動物に対して、前立腺癌治療薬の有効量とチロシンキナーゼ阻害薬の有効量を組み合わせて投与することを特徴とする前立腺癌の予防・治療方法;
[8]
前立腺癌の予防・治療剤を製造するための前立腺癌治療薬およびチロシンキナーゼ阻害薬の使用;
[9]
ラパチニブを含有してなるホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化抑制剤;
[10]
哺乳動物に対して、ラパチニブの有効量を投与することを特徴とするホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化抑制方法;および
[11]
ホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化抑制剤を製造するためのラパニチブの使用;
に関する。
【発明の効果】
【0006】
前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬を併用することにより、前立腺癌を効果的に予防・治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、ラパチニブを含む培地でのLNCaP−FGC細胞の増殖曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いられる前立腺癌治療薬としては、例えば、一般式〔I〕
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z
〔式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5、NH-NH-CO-NH2、NH-C2H4-NH2またはGly-NH2をそれぞれ示す〕で表わされる生理活性ペプチドまたはその塩などが用いられる。特に、YがDLeuで、ZがNH-C2H5であるペプチド(即ち、5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5で表されるペプチド)またはその塩、特にその酢酸塩(酢酸リュープロレリン:武田薬品工業株式会社製)が好適である。
【0009】
該前立腺癌治療薬として例示したペプチドは薬理学的に許容される塩であってもよい。このような塩としては、該ペプチドがアミノ基等の塩基性基を有する場合、無機酸(例、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等)、または有機酸(例、炭酸、重炭酸、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等)などとの塩が挙げられる。
該ペプチドがカルボキシル基等の酸性基を有する場合、無機塩基(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等)、または有機塩基(例、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等)などとの塩が挙げられる。また、該ペプチドは金属錯体化合物(例、銅錯体、亜鉛錯体等)を形成していてもよい。
これらのペプチドまたはその塩は、トリートメント ウイズ GnRH アナログ:コントラバーシス アンド パースペクテイブ(Treatment with GnRH analogs: Controversies and perspectives)[パルテノン バブリッシング グループ(株)(The Parthenon Publishing Group Ltd.)発行1996年]、特表平3−503165号公報、特開平3−101695号、同7−97334号および同8−259460号公報などに記載の方法またはこれに準じる方法で製造することができる。
【0010】
該前立腺癌治療薬として、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の他に好ましい具体例としては、例えば、
(1)ゴセレリン(Goserelin)
【化1】

(米国特開第4100274号,特開昭52−136172号)、
(2)ブセレリン(Buserelin)
【化2】

(米国特許No.4,024,248、ドイツ特許第2438352号,特開昭和51−41359号)、
(3)トリプトレリン(Triptorelin)
【化3】

(米国特開第4010125号,特開昭52−31073号)、
(4)ナファレリン(Nafarelin)
【化4】

(米国特開第4234571号,特開昭55−164663号,同昭63−264498号,同昭64−25794号)、
(5)ヒストレリン(Histrelin)
【化5】

(6)デスロレリン(Deslorelin)
【化6】

(米国特開第4569967号,同4218439号)、
(7)メテレリン(Meterelin)
【化7】

(PCT WO 91/18016)、
(8)ゴナドレリン(Gonadrelin)
【化8】

(ドイツ特許第2213737号)またはそれらの塩などが挙げられる。
【0011】
また、上記の前立腺癌治療薬(好ましくは、式 5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5で表されるぺプチドまたはその塩(以下、単に「リュープロレリンまたはその塩」と称する場合がある)、より好ましくは酢酸リュープロレリン)は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、徐放性製剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液または懸濁液剤、徐放性製剤(特に徐放型マイクロカプセル)などの注射剤、埋め込み剤(生体内分解性ポリマーを基材として成型されたもの、チタンなどの生体内適合性金属の筒に封入され、一定速度で活性成分を放出するもの)、生体に投与可能な有機溶媒に生体内分解性ポリマーおよび薬物を溶解あるいは分散した注射剤、または溶液、懸濁液剤などの経鼻投与製剤の形で非経口的に投与できるが、好ましくは徐放性製剤として、特に好ましくは徐放性注射剤として投与される。また、徐放性製剤が徐放型マイクロカプセルである場合、2カ月以上にわたって前立腺癌治療薬を放出する長期徐放型マイクロカプセルであることが好ましい。
【0012】
リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリンを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって上記製剤を製造することができる。
【0013】
注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウム等)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール等)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80(TM)、HCO−50等)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、上記製剤は、例えば、緩衝剤(例、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(例、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン等)、安定剤(例、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール等)、保存剤(例、ベンジルアルコール、フェノール等)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプル、バイアルなどの密封容器に充填される。
【0014】
上記の前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を含有してなる徐放性製剤(特に徐放型マイクロカプセル)は、自体公知の方法、例えば、特開昭60−100516号、特開昭62−201816号、特開平4−321622号、特開平6−192068号、特開平9−132524号、特開平9−221417号、特開平11−279054号、WO 99/360099号公報などに記載の方法に従って製造することができる。
上記の徐放性製剤の中でも、特に特開平4−321622号に記載されている「2カ月以上にわたって生理活性物質をゼロ次放出する長期徐放型マイクロカプセル」が好ましく用いられる。
上記徐放型マイクロカプセルの製造方法の一例を以下に記載する。
【0015】
まず、水に前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を約20%ないし70%(w/w)、好ましくは25ないし65%(w/w)、より好ましくは35ないし60%(w/w)溶解し、これに必要であればゼラチン、または塩基性アミノ酸などの薬物保持物質を溶解または懸濁し、内水相液とする。
これらの内水相液中には、前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の安定性、溶解性を保つためのpH調整剤として、炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アルギニン、リジンまたはそれらの塩などを添加してもよい。また、さらに前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の安定化剤として、アルブミン、ゼラチン、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、デキストリン、亜硫酸水素ナトリウム、ポリエチレングリコールなどのポリオール化合物などを、または保存剤として、一般に用いられるパラオキシ安息香酸エステル類(例、メチルパラベン、プロピルパラベン等)、ベンジルアルコール、クロロブタノール、チメロサールなどを添加してもよい。
このようにして得られた内水相液を、高分子重合物を含む溶液(油相)中に加え、ついで乳化操作を行い、W/O型乳化物を形成させる。該乳化操作は、公知の分散法が用いられ、例えば、断続振とう法、プロペラ型攪拌機あるいはタービン型攪拌機などのミキサーによる方法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法などが挙げられる。
ついで、このようにして調製されたW/O型エマルションをマイクロカプセル化工程に付す。該工程としては水中乾燥法あるいは相分離法が適用できる。水中乾燥法によりマイクロカプセルを製造する場合は、該W/Oエマルションをさらに第3相目の水相中に加え、W/O/W型の3相エマルションを形成させた後、油相中の溶媒を蒸発させ、マイクロカプセルを調製する。
【0016】
上記外相の水相中に乳化剤を加えてもよく、その例としては、一般に安定なO/W型エマルションを形成するものであればいずれでもよいが、例えば、アニオン界面活性剤(例オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)、非イオン性界面活性剤(例、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[Tween 80、Tween 60、アトラスパウダー社]、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体[HCO−60、HCO−50、日光ケミカルズ]等)、またはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチンなどが挙げられ、これらの中の1種類を、またはいくつかを組み合わせて使用してもよい。使用の際の濃度は、約0.01%ないし20%の範囲から適宜選択でき、より好ましくは約0.05%ないし10%の範囲で用いられる。
油相の溶媒の蒸発には、通常用いられる方法が採用される。該方法としては、プロペラ型攪拌機、またはマグネチックスターラーなどで攪拌しながら徐々に減圧して行うか、ロータリーエバポレーターなどを用いて、真空度を調節しながら行う。この場合、高分子重合物の固化がある程度進行した時点で、W/O/W型エマルションを徐々に加温することにより、溶媒の脱離をより完全にし、かつ所要時間を短縮することができる。
【0017】
このようにして得られたマイクロカプセルは遠心分離あるいは濾過して分取した後、マイクロカプセルの表面に付着している遊離の前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)、薬物保持物質、乳化剤などを、蒸留水で数回繰り返し洗浄した後、再び、蒸留水などに分散して凍結乾燥する。この際に凝集防止剤(例、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖等)を加えてもよい。必要であれば加温し、減圧下でマイクロカプセル中の水分および有機溶媒の脱離をより完全に行う。
【0018】
相分離法によりマイクロカプセルを製造する場合は、該W/Oエマルションに攪拌下、コアセルベーション剤を徐々に加え、高分子重合物を析出、固化させる。
コアセルベーション剤としては、高分子重合物の溶剤に混和する高分子系、鉱物油系または植物油系の化合物で、カプセル化用重合体を溶解しないものであればよく、例えば、シリコン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどが挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。
このようにして得られたマイクロカプセルは、濾過して分取した後、ヘプタン等により繰り返し洗浄し、コアセルベーション剤を除去する。さらに、水中乾燥法と同様の方法で遊離薬物の除去、溶媒の脱離を行う。洗浄中の粒子同士の凝集を防ぐために、凝集防止剤を加えてもよい。
【0019】
上記で得られたマイクロカプセルは、必要であれば軽く粉砕した後、篩過して、大きすぎるマイクロカプセル部分を除去する。マイクロカプセルの粒子径は、平均径として約0.5ないし1000μmの範囲であり、より好ましくは約2ないし500μmの範囲である。懸濁注射剤として使用する場合には、その分散性、通針性を満足させる範囲であればよく、例えば、約2ないし100μmの範囲にあることが望ましい。
【0020】
上記高分子重合物としては、生体内分解性ポリマー、例えば、α−ヒドロキシモノカルボン酸類(例、グリコール酸、乳酸等)、α−ヒドロキシジカルボン酸類(例、リンゴ酸等)、α−ヒドロキシトリカルボン酸(例、クエン酸等)等のα−ヒドロキシカルボン酸類の1種以上から合成され、遊離のカルボキシル基を有する重合体、共重合体、またはこれらの混合物;ポリ(α−シアノアクリル酸エステル);ポリアミノ酸(例、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタミン酸)等);無水マレイン酸系共重合体(例、スチレン−マレイン酸共重合体等)などが用いられる。
【0021】
モノマーの結合様式としては、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよい。また、上記α−ヒドロキシモノカルボン酸類、α−ヒドロキシジカルボン酸類、またはα−ヒドロキシトリカルボン酸類が分子内に光学活性中心を有する場合、D−、L−、DL−体のいずれを用いてもよい。これらの中でも、乳酸−グリコール酸重合体(以下、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)または乳酸−グリコール酸共重合体と称する場合があり、特に明示しない限り、乳酸、グリコール酸のホモポリマー(重合体)及びコポリマー(共重合体)を総称する。また乳酸ホモポリマーは乳酸重合体、ポリ乳酸、またはポリラクチドと、またグリコール酸ホモポリマーはグリコール酸重合体、ポリグリコール酸、またはポリグリコリドと称される場合がある。)、ポリ(α−シアノアクリル酸エステル)などが好ましい。さらに好ましくは、乳酸−グリコール酸重合体であり、より好ましくは、末端に遊離のカルボキシル基を有する乳酸−グリコール酸重合体である。
【0022】
生体内分解性ポリマーは塩であってもよい。塩としては、例えば、無機塩基(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等)や有機塩基(例、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等)などとの塩、または遷移金属(例、亜鉛、鉄、銅等)との塩および錯塩などが挙げられる。
【0023】
生体内分解性ポリマーとして乳酸−グリコール酸重合体を用いる場合、その組成比(モル%)は約100/0〜約40/60が好ましく、約100/0〜約50/50がより好ましい。また、2カ月以上にわたって生理活性物質をゼロ次放出する長期徐放型マイクロカプセルの場合、組成比が100/0である乳酸ホモポリマーも好ましく用いられる。
該「乳酸−グリコール酸重合体」の最小繰り返し単位の一つである乳酸の光学異性体比は、D−体/L−体(モル/モル%)が約75/25〜約25/75の範囲のものが好ましい。このD−体/L−体(モル/モル%)は、特に約60/40〜約30/70の範囲のものが汎用される。
該「乳酸−グリコール酸重合体」の重量平均分子量は、通常、約3,000〜約100,000、好ましくは約3,000〜約60,000、さらに好ましくは約3,000〜約50,000のものが用いられる。
【0024】
また、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、通常約1.2〜約4.0が好ましく、さらには約1.5〜3.5が特に好ましい。
該「乳酸−グリコール酸重合体」の遊離のカルボキシル基量は、重合体の単位質量(グラム)あたり通常約20〜約1000μmol(マイクロモル)が好ましく、さらには約40〜約1000μmol(マイクロモル)が特に好ましい。
【0025】
上記の重量平均分子量、数平均分子量および分散度とは、重量平均分子量が1,110,000、707,000、455,645、354,000、189,000、156,055、98,900、66,437、37,200、17,100、9,830、5,870、2,500、1,303、および504の15種類の単分散ポリスチレンを基準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量および算出した分散度をいう。測定は、高速GPC装置(東ソー製、HLC−8120GPC、検出方式は示差屈折率による)、GPCカラムKF804L×2(昭和電工製)を使用し、移動相としてクロロホルムを用いる。流速は1ml/分で行う。
【0026】
上記の遊離のカルボキシル基量とはラベル化法により求めたもの(以下、「ラベル化法によるカルボキシル基量」と称する)をいう。具体的にポリ乳酸の場合について述べると、ポリ乳酸 Wmgを5N塩酸/アセトニトリル(v/v=4/96)混液2mlに溶解し、0.01M o−ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩(ONPH)溶液(5N塩酸/アセトニトリル/エタノール=1.02/35/15)2mlと0.15M 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩溶液(ピリジン/エタノール=4v/96v)2mlを加えて40℃で30分反応させた後溶媒を留去する。残滓を水洗(4回)した後、アセトニトリル2mlで溶解し、0.5mol/lのエタノール性水酸化カリウム溶液1mlを加えて60℃で30分反応させる。反応液を1.5N水酸化ナトリウム水溶液で希釈してYmlとし、1.5N水酸化ナトリウム水溶液を対象として544nm吸光度A(/cm)を測定する。一方、DL−乳酸水溶液を基準物質として、その遊離カルボキシル基量 Cmol/Lをアルカリ滴定で求め、またONPHラベル化法でDL−乳酸ヒドラジドとしたときの544nm吸光度を B(/cm)とするとき、重合体の単位質量(グラム)あたりの遊離のカルボキシル基のモル量は以下の数式で求められる。
[COOH](mol/g)=(AYC)/(WB)
また、該「カルボキシル基量」は生体内分解性ポリマーをトルエン−アセトン−メタノール混合溶媒に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてこの溶液をアルコール性水酸化カリウム溶液でカルボキシル基を滴定して求めることもできる(以下、この方法によって求めた値を「アルカリ滴定法によるカルボキシル基量」と称する)が、滴定中にポリエステル主鎖の加水分解反応と競合する結果、滴定終点が不明確になる可能性があり上記ラベル化法で定量するのが望ましい。
【0027】
該「乳酸−グリコール酸重合体」は、例えば、乳酸とグリコール酸からの無触媒脱水重縮合(特開昭61−28521号)またはラクチドとグリコリド等の環状ジエステル化合物からの触媒を用いた開環重合(Encyclopedic Handbook of Biomaterials and Bioengineering Part A: Materials, Volume 2, Marcel Dekker, Inc. 1995年)で製造できる。上記の公知の開環重合方法によって得られる重合体は、得られる重合体の末端に遊離のカルボキシル基を有しているとは限らないが、例えば、EP−A−0839525号に記載の加水分解反応に付すことにより、単位質量当たりにある程度のカルボキシル基量を有する重合体に改変することができ、これを用いることもできる。
上記の「末端に遊離のカルボキシル基を有する乳酸−グリコール酸重合体」は公知の製造法(例えば無触媒脱水重縮合法、特開昭61−28521号公報参照)と同様の方法またはそれに準じた方法により製造できる。
【0028】
該マイクロカプセルを注射剤とするには、マイクロカプセルを分散剤(例、Tween 80、HCO−60、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等)、保存剤(例、メチルパラベン、プロピルパラベン等)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖等)などと共に水性懸濁剤とするか、ゴマ油、コーン油などの植物油と共に分散して油性懸濁剤とし、実際に使用できる徐放性注射剤とする。
【0029】
上記の前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を含有してなる剤(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩(好ましくは酢酸リュープロレリン)を含有してなる徐放型マイクロカプセルを含有してなる剤)は、そのまま皮下、筋肉内、血管など(好ましくは皮下など)に容易に注射剤および埋め込み剤など(好ましくは注射剤など)として投与することができる。また、その他上記の種々の製剤に成形して投与することもでき、そのような製剤を製造する際の原料物質としても使用され得る。
【0030】
また、上記製剤の投与量は、前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の含量、剤形、前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の持続時間、投与対象動物[例、温血哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ等)等]により種々異なるが、該前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)の医薬としての有効量であればよい。例えば、上記温血哺乳動物に1回あたり投与量として、約0.01mg〜100mg/kg体重、好ましくは約0.02mgないし50mg/kg体重、さらに好ましくは0.05mgないし20mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。
また、上記製剤を注射剤として投与する場合、成人の前立腺癌の患者(体重60kgに対し)においては、一回につき前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を通常約0.01ないし50mg程度、好ましくは約0.1ないし20mg程度、より好ましくは約0.1ないし15mg程度を皮下あるいは筋肉内に投与すればよい。また、上記の前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を含有してなる徐放型マイクロカプセルを含有する注射剤として投与する場合には、徐放型マイクロカプセルの薬物徐放期間によって、投与量が異なり、例えば、約1ヶ月に一回の投与を行う場合には、成人の前立腺癌の患者(体重60kgに対し)において、一回につき前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を通常約0.01ないし20mg程度、好ましくは約0.1ないし10mg程度、より好ましくは約0.1ないし5mg程度を皮下あるいは筋肉内に投与すればよく、例えば、約3ヶ月に一回の投与を行う場合には、成人の前立腺癌の患者(体重60kgに対し)において、一回につき前立腺癌治療薬(好ましくは、リュープロレリンまたはその塩、より好ましくは酢酸リュープロレリン)を通常約0.1ないし30mg程度、好ましくは約0.1ないし20mg程度、より好ましくは約1ないし15mg程度を皮下あるいは筋肉内に投与すればよい。
他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0031】
前記した前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを組み合わせることにより、チロシンキナーゼ阻害薬がホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化を抑制するため、前記した前立腺癌治療薬の奏功期間を延長させ、より効果的に前立腺癌を治療することができる。
【0032】
チロシンキナーゼ阻害薬としては、ホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化を抑制するものが好ましい。さらに、チロシンキナーゼ阻害薬としては、受容体型チロシンキナーゼ阻害薬が好ましく、例えば、ゲフィチニブ(イレッサ(iressa)TM)、メシル酸イマチニブ(グリベックTM)、ODI−774、セマキサニブ、SU−6668、SU−101、ラパチニブ(Lapatinib;Tykerb(登録商標))、CI−1033、セツキシマブ、2−[1−[3−[4−[2−[(E)−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エテニル]オキサゾール−4−イル]メトキシフェニル]プロピル]−1H−イミダゾール−2−イル]−1−エタノール、1−{3−[3−({2−[(E)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)エテニル]−1,3−オキサゾール−4−イル}メトキシ)フェニル]プロピル}−1H−1,2,3−トリアゾール、1−(4−{4−[(2−{(E)−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エテニル}−1,3−オキサゾール−4−イル)メトキシ]フェニル}ブチル)−1H−1,2,3−トリアゾール、2−[1−[4−[4−[[2−[(E)−2−(4−エチルフェニル)エテニル]−1,3−オキサゾール−4−イル]メトキシ]フェニル]ブチル]−1H−イミダゾール−2−イル]−1−エタノール、[1−[4−[4−[[2−[(E)−2−(2,6−ジフルオロフェニル)エテニル]−1,3−オキサゾール−4−イル]メトキシ]フェニル]ブチル]−1H−1,2,3−トリアゾール、3−[1−(3−{3−[(2−{(E)−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エテニル}−1,3−オキサゾール−4−イル)メトキシ]フェニル}プロピル)−1H−イミダゾール−2−イル]−1,2−プロパンジオール、3−(1−{4−[4−({2−[(E)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)エテニル]−1,3−オキサゾール−4−イル}メトキシ)フェニル]ブチル}−1H−イミダゾール−2−イル)−1,2−プロパンジオール、[1−[4−[4−[[2−[(E)−2−(4−メチルフェニル)エテニル]−1,3−オキサゾール−4−イル]メトキシ]フェニル]ブチル]−1H−1,2,3−トリアゾール、1−(3−{3−[(2−{(E)−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エテニル}−1,3−オキサゾール−4−イル)メトキシ]フェニル}プロピル)−1H−1,2,3−トリアゾールもしくは1−(3−{3−[(2−{(E)−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エテニル}−1,3−オキサゾール−4−イル)メトキシ]フェニル}プロピル)−1H−1,2,3−トリアゾール、N−{2−[4−({3−クロロ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]フェニル}アミノ)−5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−5−イル]エチル}−3−ヒドロキシ−3−メチルブタンアミドまたはその塩などが用いられ、なかでもラパチニブやN−{2−[4−({3−クロロ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェノキシ]フェニル}アミノ)−5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−5−イル]エチル}−3−ヒドロキシ−3−メチルブタンアミドまたはその塩などのHER2チロシンキナーゼ阻害薬が好ましい。
【0033】
前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬の併用に際しては、前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬の投与時期は限定されず、前立腺癌治療薬またはその製剤とチロシンキナーゼ阻害薬またはその製剤とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。チロシンキナーゼ阻害薬の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
【0034】
前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを組み合わせてなる医薬(以下、本発明の併用薬と略記する場合がある)の投与形態は、特に限定されず、投与時に、前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とが組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、(1)前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、前立腺癌治療薬;チロシンキナーゼ阻害薬の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)などが挙げられる。
【0035】
上記チロシンキナーゼ阻害薬を含有する製剤は、毒性が低く、例えば、併用薬を自体公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して製剤、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等として、経口的又は非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。注射剤は、静脈内、筋肉内、皮下または臓器内投与あるいは直接病巣に投与することができる。
【0036】
該製剤の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機または無機担体物質が挙げられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
結合剤としては、例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
等張化剤としては、例えばブドウ糖、D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。
緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。
防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
【0037】
チロシンキナーゼ阻害薬を含有する製剤におけるチロシンキナーゼ阻害薬の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし100重量%、好ましくは約0.1ないし50重量%、さらに好ましくは約0.5ないし20重量%程度である。
なお、前記した前立腺癌治療薬を含有する製剤にチロシンキナーゼ阻害薬を配合させる場合も同様の含有量でよい。
チロシンキナーゼ阻害薬を含有する製剤における担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1ないし99.99重量%、好ましくは約10ないし90重量%程度である。
【0038】
これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる自体公知の方法により製造することができる。
例えば、チロシンキナーゼ阻害薬は、分散剤(例、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン等)、安定化剤(例、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、界面活性剤(例、ポリソルベート80、マクロゴール等)、可溶剤(例、グリセリン、エタノール等)、緩衝剤(例、リン酸及びそのアルカリ金属塩、クエン酸及びそのアルカリ金属塩等)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖等)、pH調節剤(例、塩酸、水酸化ナトリウム等)、保存剤(例、パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール等)、溶解剤(例、濃グリセリン、メグルミン等)、溶解補助剤(例、プロピレングリコール、白糖等)、無痛化剤(例、ブドウ糖、ベンジルアルコール等)などと共に水性注射剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコールなどの溶解補助剤に溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤に成形し、注射剤とすることができる。
【0039】
経口投与用製剤とするには、自体公知の方法に従い、チロシンキナーゼ阻害薬を例えば、賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプン等)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウム等)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等)又は滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000等)などを添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより経口投与製剤とすることができる。そのコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン 80、プルロニック F68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ,メタアクリル酸・アクリル酸共重合)および色素(例、ベンガラ、二酸化チタン等)などが用いられる。経口投与用製剤は速放性製剤、徐放性製剤のいずれであってもよい。
【0040】
例えば、坐剤とするには、自体公知の方法に従い、チロシンキナーゼ阻害薬を油性又は水性の固状、半固状または液状の坐剤とすることができる。上記組成物に用いる油性基剤としては、例えば、高級脂肪酸のグリセリド〔例、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製,ドイツ)等〕、中級脂肪酸〔例、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製,ドイツ)等〕、または植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油等)などが挙げられる。また、水性基剤としては、例えばポリエチレングリコール類、プロピレングリコールなどが、水性ゲル基剤としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体などが挙げられる。
上記徐放性製剤としては、徐放性マイクロカプセル剤などが挙げられる。
徐放型マイクロカプセルとするには、自体公知の方法を採用できるが、例えば、下記〔2〕に示す徐放性製剤に成型して投与するのが好ましい。
以下に、〔1〕チロシンキナーゼ阻害薬の注射剤およびその調製、〔2〕チロシンキナーゼ阻害薬の徐放性製剤又は速放性製剤およびその調製、〔3〕チロシンキナーゼ阻害薬の舌下錠、バッカル又は口腔内速崩壊剤およびその調製について具体的に示す。
【0041】
〔1〕注射剤およびその調製
チロシンキナーゼ阻害薬を水に溶解してなる注射剤が好ましい。該注射剤には安息香酸塩又は/およびサリチル酸塩を含有させてもよい。
該注射剤は、チロシンキナーゼ阻害薬と所望により安息香酸塩又は/およびサリチル酸塩の双方を水に溶解することにより得られる。
上記安息香酸、サリチル酸の塩としては、例えばナトリウム,カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム,マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、その他トロメタモールなどの有機酸塩などが挙げられる。
注射剤中のチロシンキナーゼ阻害薬の濃度は0.5〜50w/v%、好ましくは3〜20w/v%程度である。また安息香酸塩又は/およびサリチル酸塩の濃度は0.5〜50w/v%、好ましくは3〜20w/v%が好ましい。
また、本剤には一般に注射剤に使用される添加剤、例えば安定化剤(アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、界面活性剤(ポリソルベート80、マクロゴール等)、可溶剤(グリセリン、エタノール等)、緩衝剤(リン酸及びそのアルカリ金属塩、クエン酸及びそのアルカリ金属塩等)、等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、分散剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン)、pH調節剤(塩酸、水酸化ナトリウム等)、保存剤(パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸等)、溶解剤(濃グリセリン、メグルミン等)、溶解補助剤(プロピレングリコール、白糖等)、無痛化剤(ブドウ糖、ベンジルアルコール等)などを適宜配合することができる。これらの添加剤は一般に注射剤に通常用いられる割合で配合される。
注射剤はpH調節剤の添加により2〜12好ましくは2.5〜8.0に調整するのがよい。
注射剤は前立腺癌治療薬またはチロシンキナーゼ阻害薬と所望により安息香酸塩又は/およびサリチル酸塩の双方を、また必要により上記添加剤を水に溶解することにより得られる。これらの溶解はどのような順序で行ってもよく、従来の注射剤の製法と同様に適宜行うことができる。
注射用水溶液は加温するのがよく、また通常の注射剤と同様に、例えば濾過滅菌、高圧加熱滅菌などを行うことにより注射剤として供することができる。
注射用水溶液は、例えば100℃〜121℃の条件で5分〜30分高圧加熱滅菌するのがよい。
さらに多回分割投与製剤として使用できるように、溶液の抗菌性を付与した製剤としてもよい。
【0042】
〔2〕徐放性製剤又は速放性製剤およびその調製
チロシンキナーゼ阻害薬を含んでなる核を所望により水不溶性物質や膨潤性ポリマーなどの被膜剤で被覆してなる徐放性製剤が好ましい。例えば、1日1回投与型の経口投与用徐放性製剤が好ましい。
被膜剤に用いられる水不溶性物質としては、例えばエチルセルロース、ブチルセルロースなどのセルロースエーテル類、セルロースアセテート、セルロースプロピオネートなどのセルロースエステル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレートなどのポリビニルエステル類、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート共重合体、エトキシエチルメタクリレート/シンナモエチルメタクリレート/アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(メタクリル酸アンヒドリド)、グリシジルメタクリレート共重合体、とりわけオイドラギットRS−100、RL−100、RS−30D、RL−30D、RL−PO、RS−PO(アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチル・アンモニウムエチル共重合体)、オイドラギットNE−30D(メタアクリル酸メチル・アクリル酸エチル共重合体)などのオイドラギット類(ローム・ファーマ社)などのアクリル酸系ポリマー、硬化ヒマシ油(例、ラブリーワックス(フロイント産業)等)などの硬化油、カルナバワックス、脂肪酸グリセリンエステル、パラフィンなどのワックス類、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
膨潤性ポリマーとしては、酸性の解離基を有し、pH依存性の膨潤を示すポリマーが好ましく、胃内のような酸性領域では膨潤が少なく、小腸や大腸などの中性領域で膨潤が大きくなる酸性の解離基を有するポリマーが好ましい。
このような酸性の解離基を有しpH依存性の膨潤を示すポリマーとしては、例えばカーボマー(Carbomer)934P、940、941、974P、980、1342等、ポリカーボフィル(polycarbophil)、カルシウムポリカボーフィル(carcium polycarbophil)(前記はいずれもBFグツドリッチ社製)、ハイビスワコー103、104、105、304(いずれも和光純薬(株)製)などの架橋型ポリアクリル酸重合体が挙げられる。
徐放性製剤に用いられる被膜剤は親水性物質をさらに含んでいてもよい。
該親水性物質としては、例えばプルラン、デキストリン、アルギン酸アルカリ金属塩などの硫酸基を有していてもよい多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有する多糖類、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
徐放性製剤の被膜剤における水不溶性物質の含有率は約30ないし約90%(w/w)、好ましくは約35ないし約80%(w/w)、さらに好ましくは約40ないし75%(w/w)、膨潤性ポリマーの含有率は約3ないし約30%(w/w)、好ましくは約3ないし約15%(w/w)である。被膜剤は親水性物質をさらに含んでいてもよく、その場合被膜剤における親水性物質の含有率は約50%(w/w)以下、好ましくは約5〜約40%(w/w)、さらに好ましくは約5〜約35%(w/w)である。ここで上記%(w/w)は被膜剤液から溶媒(例、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール等)を除いた被膜剤組成物に対する重量%を示す。
徐放性製剤は、以下に例示するように薬物を含む核を調製し、次いで得られた核を、水不溶性物質や膨潤性ポリマーなどを加熱溶解あるいは溶媒に溶解又は分散させた被膜剤液で被覆することにより製造される。
【0043】
I.薬剤を含む核の調製
被膜剤で被覆される薬物を含む核(以下、単に核と称することがある)の形態は特に制限されないが、好ましくは顆粒あるいは細粒などの粒子状に形成される。
核が顆粒又は細粒の場合、その平均粒子径は、好ましくは約150ないし2,000μm、さらに好ましくは約500ないし約1,400μmである。
核の調製は通常の製造方法で実施することができる。例えば、薬物に適当な賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤等を混合し、湿式押し出し造粒法、流動層造粒法などにより調製する。
核の薬物含量は、約0.5ないし約95%(w/w)、好ましくは約5.0ないし約80%(w/w)、さらに好ましくは約30ないし約70%(w/w)である。
核に含まれる賦形剤としては、例えば白糖、乳糖、マンニトール、グルコースなどの糖類、澱粉、結晶セルロース、リン酸カルシウム、コーンスターチなどが用いられる。中でも、結晶セルロース、コーンスターチが好ましい。
結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、プルロニックF68、アラビアゴム、ゼラチン、澱粉などが用いられる。崩壊剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースカルシウム(ECG505)、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol)、架橋型ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)などが用いられる。中でも、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。滑沢剤、凝集防止剤としては例えばタルク、ステアリン酸マグネシウムおよびその無機塩、また潤滑剤としてポリエチレングリコールなどが用いられる。安定化剤としては酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸などの酸が用いられる。
核は上記製造法以外にも、例えば核の中心となる不活性担体粒子上に水、低級アルコール(例、メタノール、エタノールなど)等の適当な溶媒に溶解した結合剤をスプレーしながら、薬物あるいはこれと賦形剤、滑沢剤などとの混合物を少量ずつ添加して行なう転動造粒法、パンコーティング法、流動層コーティング法や溶融造粒法によっても調製することができる。不活性担体粒子としては、例えば白糖、乳糖、澱粉、結晶セルロース、ワックス類で製造されたものが使用でき、その平均粒子径は約100μmないし約1,500μmであるものが好ましい。
核に含まれる薬物と被膜剤とを分離するために、防護剤で核の表面を被覆してもよい。防護剤としては、例えば前記親水性物質や、水不溶性物質等が用いられる。防護剤は、好ましくはポリエチレングリコールやヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有する多糖類、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが用いられる。該防護剤には安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の酸や、タルクなどの滑沢剤を含んでいてもよい。防護剤を用いる場合、その被覆量は核に対して約1ないし約15%(w/w)、好ましくは約1ないし約10%(w/w)、さらに好ましくは約2ないし約8%(w/w)である。
防護剤は通常のコーティング法により被覆することができ、具体的には、防護剤を例えば流動層コーティング法、パンコーティング法等により核にスプレーコーティングすることで被覆することができる。
【0044】
II.核の被膜剤による被覆
前記Iで得られた核を、前記水不溶性物質及びpH依存性の膨潤性ポリマー、および親水性物質を加熱溶解あるいは溶媒に溶解又は分散させた被膜剤液により被覆することにより徐放性製剤が製造される。
核の被膜剤液による被覆方法として、例えば噴霧コーティングする方法などが挙げられる。
被膜剤液中の水不溶性物質、膨潤性ポリマー又は親水性物質の組成比は、被膜中の各成分の含有率がそれぞれ前記含有率となるように適宜選ばれる。
被膜剤の被覆量は、核(防護剤の被覆量を含まない)に対して約1ないし約90%(w/w)、好ましくは約5ないし約50%(w/w)、さらに好ましくは約5ないし35%(w/w)である。
被膜剤液の溶媒としては水又は有機溶媒を単独であるいは両者の混液を用いることができる。混液を用いる際の水と有機溶媒との混合比(水/有機溶媒:重量比)は、1ないし100%の範囲で変化させることができ、好ましくは1ないし約30%である。該有機溶媒としては、水不溶性物質を溶解するものであれば特に限定されないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等の低級アルコール、アセトンなどの低級アルカノン、アセトニトリル、クロロホルム、メチレンクロライドなどが用いられる。このうち低級アルコールが好ましく、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。水及び水と有機溶媒との混液が被膜剤の溶媒として好ましく用いられる。この時、必要であれば被膜剤液中に被膜剤液安定化のために酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸などの酸を加えてもよい。
噴霧コーティングにより被覆する場合の操作は通常のコーティング法により実施することができ、具体的には、被膜剤液を、例えば流動層コーティング法、パンコーティング法等により核にスプレーコーティングすることで実施することができる。この時必要であれば、タルク、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸などを滑沢剤として、グリセリン脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、クエン酸トリエチル、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどを可塑剤として添加してもよい。
被膜剤による被膜後、必要に応じてタルクなどの帯電防止剤を混合してもよい。
【0045】
速放性製剤は、液状(溶液、懸濁液、乳化物など)であっても固形状(粒子状、丸剤、錠剤など)であってもよい。経口投与剤、注射剤など非経口投与剤が用いられるが、経口投与剤が好ましい。
速放性製剤は、通常、活性成分である薬物に加えて、製剤分野で慣用される担体、添加剤や賦形剤(以下、賦形剤と略称することがある)を含んでいてもよい。用いられる製剤賦形剤は、製剤賦形剤として常用される賦形剤であれば特に限定されない。例えば経口固形製剤用の賦形剤としては、乳糖、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース(旭化成(株)製、アビセルPH101など)、粉糖、グラニュウ糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、L−システインなどが挙げられ、好ましくはコーンスターチおよびマンニトールなどが挙げられる。これらの賦形剤は一種又は二種以上を組み合わせて使用できる。賦形剤の含有量は速放性製剤全量に対して、例えば約4.5〜約99.4w/w%、好ましくは約20〜約98.5w/w%、さらに好ましくは約30〜約97w/w%である。
速放性製剤における薬物の含量は、速放性製剤全量に対して、約0.5〜約95%、好ましくは約1〜約60%の範囲から適宜選択することができる。
速放性製剤が経口固形製剤の場合、通常上記成分に加えて、崩壊剤を含有する。このような崩壊剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースカルシウム(五徳薬品製、ECG−505)、クロスカルメロースナトリウム(例えば、旭化成(株)製、アクジゾル)、クロスポビドン(例えば、BASF社製、コリドンCL)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学(株))、カルボキシメチルスターチ(松谷化学(株)、カルボキシメチルスターチナトリウム(木村産業製、エキスプロタブ)、部分α化デンプン(旭化成(株)製、PCS)などが用いられ、例えば水と接触して吸水、膨潤、あるいは核を構成している有効成分と賦形剤との間にチャネルを作るなどにより顆粒を崩壊させるものを用いることができる。これらの崩壊剤は、一種又は二種以上を組み合わせて使用できる。崩壊剤の配合量は、用いる薬物の種類や配合量、放出性の製剤設計などにより適宜選択されるが、速放性製剤全量に対して、例えば約0.05〜約30w/w%、好ましくは約0.5〜約15w/w%である。
速放性製剤が経口固形製剤である場合、上記の組成に加えて、所望により固形製剤において慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば結合剤(例えば、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリンなど)、滑沢剤(例えば、ポリエチレングリコール、ステアリン酸マグネシウム、タルク、軽質無水ケイ酸(例えば、アエロジル(日本アエロジル))、界面活性剤(例えば、アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体等の非イオン系界面活性剤など)、着色剤(例えば、タール系色素、カラメル、ベンガラ、酸化チタン、リボフラビン類)、必要ならば、矯味剤(例えば、甘味剤、香料など)、吸着剤、防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤などが用いられる。また、安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸などの有機酸を加えてもよい。
上記結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドンなどが好ましく用いられる。
【0046】
速放性製剤は、通常の製剤の製造技術に基づき、前記各成分を混合し、必要により、さらに練合し、成型することにより調製することができる。上記混合は、一般に用いられる方法、例えば、混合、練合などにより行われる。具体的には、例えば速放性製剤を粒子状に形成する場合、前記徐放性製剤の核の調製法と同様の手法により、バーチカルグラニュレーター、万能練合機(畑鉄工所製)、流動層造粒機FD−5S(パウレック社製)等を用いて混合しその後、湿式押し出し造粒法、流動層造粒法などにより造粒することにより調製することができる。
このようにして得られた速放性製剤と徐放性製剤とは、そのままあるいは適宜、製剤賦形剤等と共に常法により別々に製剤化後、同時あるいは任意の投与間隔を挟んで組み合わせて投与する製剤としてもよく、また両者をそのままあるいは適宜、製剤賦形剤等と共に一つの経口投与製剤(例、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル等)に製剤化してもよい。両製剤を顆粒あるいは細粒に製して、同一のカプセル等に充填して経口投与用製剤としてもよい。
【0047】
〔3〕舌下錠、バッカル又は口腔内速崩壊剤およびその調製
舌下錠、バッカル製剤、口腔内速崩壊剤は錠剤などの固形製剤であってもよいし、口腔粘膜貼付錠(フィルム)であってもよい。
舌下錠、バッカル又は口腔内速崩壊剤としては、チロシンキナーゼ阻害薬と賦形剤とを含有する製剤が好ましい。また、滑沢剤、等張化剤、親水性担体、水分散性ポリマー、安定化剤などの補助剤を含有していてもよい。また、吸収を容易にし、生体内利用率を高めるためにβ−シクロデキストリン又はβ−シクロデキストリン誘導体(例、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等)などを含有していてもよい。
上記賦形剤としては、乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられ、特に、ステアリン酸マグネシウムやコロイドシリカが好ましい。等張化剤としては塩化ナトリウム、グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、サッカロース、グリセリン、尿素などが挙げられ、特にマンニトールが好ましい。親水性担体としては結晶セルロース、エチルセルロース、架橋性ポリビニルピロリドン、軽質無水珪酸、珪酸、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウムなどの膨潤性親水性担体が挙げられ、特に結晶セルロース(例、微結晶セルロース等)が好ましい。水分散性ポリマーとしてはガム(例、トラガカントガム、アカシアガム、グアーガム等)、アルギン酸塩(例、アルギン酸ナトリウム等)、セルロース誘導体(例、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、ゼラチン、水溶性デンプン、ポリアクリル酸(例、カーボマー等)、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリカーボフィル、アスコルビン酸パルミチン酸塩などが挙げられ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどが好ましい。特にヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。安定化剤としては、システイン、チオソルビトール、酒石酸、クエン酸、炭酸ナトリウム、アスコルビン酸、グリシン、亜硫酸ナトリウムなどが挙げられ、特に、クエン酸やアスコルビン酸が好ましい。
舌下錠、バッカル又は口腔内速崩壊剤は、チロシンキナーゼ阻害薬と賦形剤とを自体公知の方法により混合することにより製造することができる。さらに、所望により上記した滑沢剤、等張化剤、親水性担体、水分散性ポリマー、安定化剤、着色剤、甘味剤、防腐剤などの補助剤を混合してもよい。上記成分を同時に若しくは時間差をおいて混合した後、加圧打錠成形することにより舌下錠、バッカル錠又は口腔内速崩壊錠が得られる。適度な硬度を得るため、打錠成形の過程の前後において必要に応じ水やアルコールなどの溶媒を用いて加湿・湿潤させ、成形後、乾燥させて製造してもよい。
【0048】
粘膜貼付錠(フィルム)に成型する場合は、チロシンキナーゼ阻害薬および上記した水分散性ポリマー(好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、賦形剤などを水などの溶媒に溶解させ、得られる溶液を流延させて(cast)フィルムとする。さらに、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤、緩衝剤、甘味剤などの添加物を加えてもよい。フィルムに適度の弾性を与えるためポリエチレングリコールやプロピレングリコールなどのグリコール類を含有させ、または口腔の粘膜ライニングへのフィルムの接着を高めるため生物接着性ポリマー(例、ポリカルボフィル、カルボポール等)を含有させてもよい。流延は、非接着性表面に溶液を注ぎ、ドクターブレードなどの塗布用具で均一な厚さ(好ましくは10〜1000ミクロン程度)にそれを広げ、次いで溶液を乾燥してフィルムを形成することにより達成される。このように形成されたフィルムは室温若しくは加温下乾燥させ、所望の表面積に切断すればよい。
【0049】
好ましい口腔内速崩壊剤としては、チロシンキナーゼ阻害薬と、チロシンキナーゼ阻害薬とは不活性である水溶性若しくは水拡散性キャリヤーとの網状体からなる固体状の急速拡散投与剤が挙げられる。該網状体は、前立腺癌治療薬またはチロシンキナーゼ阻害薬を適当な溶媒に溶解した溶液とから構成されている固体状の該組成物から溶媒を昇華することによって得られる。
該口腔内速崩壊剤の組成物中には、チロシンキナーゼ阻害薬に加えて、マトリックス形成剤と二次成分とを含んでいるのが好ましい。
該マトリックス形成剤としてはゼラチン類、デキストリン類ならびに大豆、小麦およびオオバコ(psyllium)種子タンパクなどの動物性タンパク類若しくは植物性タンパク類;アラビアゴム、ガーガム、寒天ならびにキサンタンなどのゴム質物質;多糖類;アルギン酸類;カルボキシメチルセルロース類;カラゲナン類;デキストラン類;ペクチン類;ポリビニルピロリドンなどの合成ポリマー類;ゼラチン−アラビアゴムコンプレックスなどから誘導される物質が含まれる。さらに、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトースならびにトレハロースなどの糖類;シクロデキストリンなどの環状糖類;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウムならびにケイ酸アルミニウムなどの無機塩類;グリシン、L−アラニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒドロシキプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシンならびにL−フェニルアラニンなどの炭素原子数が2〜12までのアミノ酸などが含まれる。
マトリックス形成剤は、その1種若しくはそれ以上を、固形化の前に、溶液又は懸濁液中に導入することができる。かかるマトリックス形成剤は、界面活性剤に加えて存在していてもよく、また界面活性剤が排除されて存在していてもよい。マトリックス形成剤はそのマトリックスを形成することに加えて、チロシンキナーゼ阻害薬の拡散状態をその溶液又は懸濁液中に維持する助けをすることができる。
【0050】
保存剤、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤、pH調整剤、香味料、甘味料若しくは食味マスキング剤などの二次成分を組成物中に含有していてよい。適当な着色剤としては、赤色、黒色および黄色酸化鉄類ならびにエリス・アンド・エベラールド社のFD&Cブルー2号およびFD&Cレッド40号などのFD&C染料が挙げられる。適当な香味料には、ミント、ラスベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、チェリーおよびグレープフレーバーならびにその組合せたものが含まれる。適当なpH調整剤は、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸およびマレイン酸が含まれる。適当な甘味料としてはアスパルテーム、アセスルフェームKならびにタウマチンなどが含まれる。適当な食味マスキング剤としては、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着質物質ならびにマイクロカプセル化アポモルフィンが含まれる。
製剤には通常約0.1〜約50重量%、好ましくは約0.1〜約30重量%のチロシンキナーゼ阻害薬を含み、約1分〜約60分の間、好ましくは約1分〜約15分の間、より好ましくは約2分〜約5分の間に(水に)チロシンキナーゼ阻害薬の90%以上を溶解させることが可能な製剤(上記、舌下錠、バッカルなど)や、口腔内に入れられて1ないし60秒以内に、好ましくは1ないし30秒以内に、さらに好ましくは1ないし10秒以内に崩壊する口腔内速崩壊剤が好ましい。
上記賦形剤の製剤全体に対する含有量は、約10〜約99重量%、好ましくは約30〜約90重量%である。β−シクロデキストリン又はβ−シクロデキストリン誘導体の製剤全体に対する含有量は0〜約30重量%である。滑沢剤の製剤全体に対する含有量は、約0.01〜約10重量%、好ましくは約1〜約5重量%である。等張化剤の製剤全体に対する含有量は、約0.1〜約90重量%、好ましくは、約10〜約70重量%である。親水性担体の製剤全体に対する含有量は約0.1〜約50重量%、好ましくは約10〜約30重量%である。水分散性ポリマーの製剤全体に対する含有量は、約0.1〜約30重量%、好ましくは約10〜約25重量%である。安定化剤の製剤全体に対する含有量は約0.1〜約10重量%、好ましくは約1〜約5重量%である。上記製剤はさらに、着色剤、甘味剤、防腐剤などの添加剤を必要に応じ含有していてもよい。
【0051】
チロシンキナーゼ阻害薬を含有する製剤の投与量は、チロシンキナーゼ阻害薬の種類、年齢、体重、症状、剤形、投与方法、投与期間などにより異なるが、例えば、前立腺癌の患者(成人、体重約60kg)一人あたり、通常、チロシンキナーゼ阻害薬として、それぞれ1日約0.01〜約1000mg/kg、好ましくは約0.01〜約100mg/kg、より好ましくは約0.1〜約100mg/kg、とりわけ約0.1〜約50mg/kgを、なかでも約1.5〜約30mg/kgを1日1回から数回に分けて静脈投与される。もちろん、前記したように投与量は種々の条件で変動するので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
チロシンキナーゼ阻害薬は、副作用が問題とならない範囲でどのような量を設定することも可能である。チロシンキナーゼ阻害薬としての一日投与量は、症状の程度、投与対象の年齢、性別、体重、感受性差、投与の時期、間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類、有効成分の種類などによって異なり、特に限定されないが、薬物の量として通常、例えば経口投与で哺乳動物1kg体重あたり約0.001〜2000mg、好ましくは約0.01〜500mg、さらに好ましくは、約0.1〜100mg程度であり、これを通常1日1〜4回に分けて投与する。
チロシンキナーゼ阻害薬を含有する製剤を投与するに際しては、同時期に投与してもよいが、チロシンキナーゼ阻害薬を先に投与した後、前立腺癌治療薬を投与してもよいし、前立腺癌治療薬を先に投与し、その後でチロシンキナーゼ阻害薬を投与してもよい。時間差をおいて投与する場合、時間差は投与する有効成分、剤形、投与方法により異なるが、例えば、チロシンキナーゼ阻害薬を先に投与する場合、チロシンキナーゼ阻害薬を投与した後1分〜3日以内、好ましくは10分〜1日以内、より好ましくは15分〜1時間以内に前立腺癌治療薬を投与する方法が挙げられる。前立腺癌治療薬を先に投与する場合、前立腺癌治療薬を投与した後、1分〜1日以内、好ましくは10分〜6時間以内、より好ましくは15分から1時間以内にチロシンキナーゼ阻害薬を投与する方法が挙げられる。
【0052】
本明細書中に記載されるポリペプチドにおけるアミノ酸、ペプチド、保護基等に関し、略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものとし、また、アミノ酸に関し光学異性体がありうる場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
略号の例を以下に示す。
Abu :アミノ酪酸
Aibu :2−アミノ酪酸
Ala :アラニン
Arg :アルギニン
Gly :グリシン
His :ヒスチジン
Ile :イソロイシン
Leu :ロイシン
Met :メチオニン
Nle :ノルロイシン
Nval :ノルバリン
Phe :フェニルアラニン
Phg :フェニルグリシン
Pro :プロリン
(Pyr)Glu :ピログルタミン酸
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Trp :トリプトファン
Tyr :チロシン
Val :バリン
D2Nal :D-3-(2-ナフチル)アラニン残基
DSer(tBu):O-tert-ブチル−D−セリン
DHis(ImBzl) :Nim-ベンジル−D−ヒスチジン
PAM :フェニルアセタミドメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
Fmoc :9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロ−ベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモーベンジルオキシカルボニル
Bzl :ベンジル
Cl−Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Tos :p−トルエンスルホニル
HONb :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
HOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOOBt :3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1、2、3−ベンゾトリアジン
MeBzl :4−メチルベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Bum :t−ブトキシメチル
Trt :トリチル
DNP :ジニトロフェニル
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【実施例】
【0053】
実施例
以下に参考例、実施例、試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1 酢酸リュープロレリン含有マイクロカプセル
6.7mlの蒸留水に酢酸リュープロレリン5.8gを溶解した。これに別に溶解、濾過したポリ乳酸(重量平均分子量:15000)(51.6g)を含むジクロロメタン溶液138gを添加し、オートミニミキサーで9分間攪拌乳化(回転数:約6000rpm)した後、15℃に調整した。これを予め溶解、濾過し同じ温度に調整した0.1%ポリビニールアルコール(PVA)水溶液13.5Lに加えて乳化した。この場合、ホモミックラインフロー(特殊機化)を用い、ミキサーの回転数は約7000rpmで乳化した。このW/O/Wエマルションを軽く攪拌しながら約3時間脱溶媒した(水中乾燥法)。
得られたマイクロカプセルを74μmのフルイを通して粗い粒子を除去した後、濾過あるいは遠心分離によって分離した。これを蒸留水で洗浄し、遊離の薬物、PVAを除去した後、少量の水で再分散しDマンニトール8.7gを溶解し、篩過後、凍結乾燥した。乾燥時の棚温度は徐々に上昇させ、最終52℃で69時間乾燥させた。これを篩過粉砕してマイクロカプセル末を得た。この操作で15%D−マンニトール含有のマイクロカプセル末58gが得られた。
【0054】
参考例2 ラパチニブ含有錠剤
【表1】


ラパチニブ 5.0mgおよび食塩20.0mgを蒸留水に溶解させ、水を加えて全量2.0mlとする。溶液をろ過し、無菌条件下に2mlのアンプルに充填する。アンプルを滅菌した後、密封し注射用溶液を得る。
【0055】
参考例3
【表2】


常法に従い上記(1)〜(6)を混合し、打錠機により打錠し、錠剤を得た。
【0056】
実施例1
参考例1で得られた製剤と参考例2または3で得られた製剤とを組み合わせた。
【0057】
試験例1
試験化合物(ラパチニブ(lapatinib))の10mM DMSO溶液を作製し4℃で保存し、使用直前に培地に添加した。
LNCaP−FGC細胞はATCCから入手した。培地は、チャコール・デキストラン処理したFBSを10%含有するフェノール不含RPMI1640培地にペニシリンとストレプトマイシンを添加して使用し、37℃、5%CO条件下で培養した。
コントロールとしてDMSOのみ(アンドロゲン除去)、試験化合物(ラパチニブ)を1μM(DMSO 0.01%)で添加した培地中で培養した。4ディッシュ(n=4)を独立して培地交換、継代および細胞数のカウントを行った。細胞は3.0x10セル/10mL/10mmディッシュで播種し、週に2回培地交換をした。培養開始15、46、64および92日目(培養開始日を0日とする。)に継代した。継代時には0.25%トリプシン−EDTAを添加して細胞を剥離し、回収した細胞数をコールターカウンターで計測した。最終的な細胞数計数はDMSOのみのディッシュは99日目、ラパチニブのディッシュは102日目に行った。
試験化合物を含む培地で培養し続けた時の増殖曲線を図1に示す。DMSO添加FGC細胞では培養開始64日目から再増殖が認められin vitroでホルモン療法に対する抵抗性を獲得した。一方、ラパチニブ添加FGC細胞では培養開始102日目でも細胞は生存していたが、再増殖は抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬を併用することにより、前立腺癌を効果的に予防・治療することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌治療薬とチロシンキナーゼ阻害薬を組み合わせてなる前立腺癌の予防・治療剤。
【請求項2】
前立腺癌治療薬が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z
[式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5、NH-NH-CO-NH2、NH-C2H4-NH2またはGly-NH2をそれぞれ示す]で表わされるペプチドまたはその塩である請求項1記載の剤。
【請求項3】
前立腺癌治療薬が、5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5またはその酢酸塩である請求項1記載の剤。
【請求項4】
チロシンキナーゼ阻害薬がホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化を抑制する薬剤である請求項1記載の剤。
【請求項5】
ホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化を抑制する薬剤がHER2チロシンキナーゼ阻害薬である請求項4記載の剤。
【請求項6】
ホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化を抑制する薬剤がラパチニブである請求項4記載の剤。
【請求項7】
哺乳動物に対して、前立腺癌治療薬の有効量とチロシンキナーゼ阻害薬の有効量を組み合わせて投与することを特徴とする前立腺癌の予防・治療方法。
【請求項8】
前立腺癌の予防・治療剤を製造するための前立腺癌治療薬およびチロシンキナーゼ阻害薬の使用。
【請求項9】
ラパチニブを含有してなるホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化抑制剤。
【請求項10】
哺乳動物に対して、ラパチニブの有効量を投与することを特徴とするホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化抑制方法。
【請求項11】
ホルモン依存性前立腺癌からホルモン非依存性前立腺癌への変化抑制剤を製造するためのラパニチブの使用。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144436(P2012−144436A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110808(P2009−110808)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】