併用化学療法の奏効性判定方法、奏効性判定プログラム及び奏効性判定装置

【課題】本発明の目的は、癌患者に対する併用化学療法の奏効性のより信頼性の高い判定方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1の比活性値及びCDK2の比活性値を取得する第1取得工程と、上記生体試料中のGSTπの発現量を取得する第2取得工程と、上記第1取得工程で取得したCDK1の比活性値及びCDK2の比活性値、並びに第2取得工程で取得したGSTπの発現量に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する判定工程とを有する併用化学療法の奏効性判定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、併用化学療法の奏効性判定方法、奏効性判定プログラム及び奏効性判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の一般的な治療法の一つに化学療法があり、この化学療法として各種の抗癌剤投与が行われている。特に最近では、抗癌剤のそれぞれの特性を生かし、2剤以上の抗癌剤を組み合わせて使用する併用化学療法により、手術の不可能な進行癌も治療できるようになってきている。しかし、このような併用化学療法の有効性は、癌の種類や患者毎に大きく異なることが知られている。従って、抗癌剤の選択を誤り効果的でない抗癌剤を投与した場合や、適切でない組み合わせの抗癌剤を併用した場合等は、癌の再発可能性が高まるばかりでなく、抗癌剤の副作用により患者の体力が低下し、次に有効な別の抗癌剤を投与しても十分な効果を得られない恐れがある。このことから、個々の患者に有効な抗癌剤及び併用化学療法に用いる抗癌剤の適切な組み合わせをその投与前に正確に特定することができるシステムの開発が切望されている。
【0003】
一方、癌に対する抗癌剤の選定方法としては、従来、患者から単離した癌細胞に様々な抗癌剤を接触させ、癌細胞の増殖抑制等を指標として、その癌細胞に有効と思われる抗癌剤を特定する方法が採用されてきた。しかしながら、このような試行錯誤的方法では、検査結果の再現性が不十分な場合も多いため、その検査結果が臨床治療効果に反映されないという不都合がある。また、上記感受性判定方法には、大量の癌細胞が必要となるため、患者への負担が大きいという不都合もある。そこで、抗癌剤を用いた併用化学療法の奏効性を予め判定できるシステムの確立は非常に重要である。
【0004】
そのための試みのひとつとして、抗癌剤の毒性を弱めることに関与していると考えられているグルタチオン-S-トランスフェラーゼπ(GSTπ)の癌組織における発現量に基づき、乳癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する方法が知られている(非特許文献1参照)。また、癌患者から採取した悪性腫瘍中のサイクリン依存性キナーゼ(Cyclin Dependent Kinase:CDK)1及びCDK2の比活性値に基づき、癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する方法が報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−057486号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Surg.Res.,Vol.113,No.1,pp.102−108,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、癌患者に対する併用化学療法の奏効性について、より信頼性の高い判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1の比活性値及びCDK2の比活性値を取得する第1取得工程と、
上記生体試料中のGSTπの発現量を取得する第2取得工程と、
上記第1取得工程で取得したCDK1の比活性値及びCDK2の比活性値、並びに上記第2取得工程で取得したGSTπの発現量に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する判定工程と
を有する併用化学療法の奏効性判定方法である。
【0009】
上記癌細胞としては乳癌の癌細胞が好ましい。
【0010】
当該奏効性判定方法は、アンスラサイクリン系抗癌剤及びタキサン系抗癌剤を用いる併用化学療法に好適に使用される。
【0011】
当該奏効性判定方法は、上記第1取得工程で取得したCDK1の比活性値及びCDK2の比活性値から下記式(1)を用いてリスクスコアを算出する算出工程をさらに含み、
上記判定工程は、上記算出工程で算出したリスクスコア及び上記第2取得工程で取得したGSTπの発現量に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定するとよい。
リスクスコア=F(x)×G(y) ・・・(1)
(式(1)中、xは、CDK1の比活性値である。yは、CDK1の比活性値に対するCDK2の比活性値の比である。)
【0012】
上記F(x)を下記式(2)で表し、G(y)を下記式(3)で表すとよい。
F(x)=a/(1+Exp(−(x−b)×c)) ・・・(2)
G(y)=d/(1+Exp(−(y−e)×f)) ・・・(3)
(式(2)及び(3)中、a〜fは定数である。)
【0013】
上記判定工程は、上記リスクスコアと第1の閾値を比較し、上記GSTπの発現量と第2の閾値を比較し、上記比較結果に基づいて上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定するとよい。
【0014】
上記判定工程は、上記リスクスコアが第1の閾値以下である場合又はGSTπの発現量が第2の閾値より大きい場合に、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定するとよい。
【0015】
当該奏効性判定方法の上記判定工程は、奏効性判定プログラムとコンピュータとの協働によって、又は奏効性判定装置によって実現させることができる。
【0016】
すなわち、本発明の奏効性判定プログラムは、
癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1及びCDK2の比活性値の情報を取得する機能と、
上記生体試料中のGSTπの発現量の情報を取得する機能と、
取得されたCDK1及びCDK2の比活性値の情報、並びにGSTπの発現量の情報に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラムである。
【0017】
CDK1及びCDK2の比活性値の情報を取得する機能が、CDK1の活性値と発現量からCDK1の比活性値を求め、CDK2の活性値と発現量からCDK2の比活性値を求め、求められたCDK1及びCDK2の比活性値をCDK1及びCDK2の比活性値の情報として取得してもよい。
【0018】
また、本発明の併用化学療法の奏効性判定装置は、
癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1の比活性値の情報、CDK2の比活性値の情報、及びGSTπの発現量の情報を取得する取得部と、
上記取得部によって取得されたCDK1の比活性値の情報、CDK2の比活性値の情報、及びGSTπの発現量の情報に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する判定部と
を備える。
【0019】
上記取得部が、CDK1の比活性値の情報としてCDK1の活性値と発現量を取得し、CDK2の比活性値の情報としてCDK2の活性値と発現量を取得し、
上記判定部が、上記取得部によって取得されたCDK1の活性値と発現量からCDK1の比活性値を求め、CDK2の活性値と発現量からCDK2の比活性値を求め、求められたCDK1及びCDK2の比活性値、並びにGSTπの発現量の情報に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の併用化学療法の奏効性判定方法によれば、信頼性高く、かつ簡易に、癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態2における併用化学療法の奏効性判定システムの概略構成図である。
【図2】図1のCPUが行う各手順を示すフローチャートである。
【図3】リスクスコアを用いてT−FEC後pCR予測を行った際のROC曲線である。
【図4】GSTπを用いてT−FEC後pCR予測を行った際のROC曲線である。
【図5】リスクスコア及びGSTπを用いてT−FEC後pCR予測を行った際のROC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態を詳説するが、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0023】
[実施の形態1]併用化学療法の奏効性判定方法
当該奏効性判定方法は、癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1の比活性値及びCDK2の比活性値を取得する第1取得工程と、上記生体試料中のGSTπの発現量を取得する第2取得工程と、上記第1取得工程で取得したCDK1の比活性値及びCDK2の比活性値、並びに上記第2取得工程で取得したGSTπの発現量に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する判定工程とを有する。また、上記CDK1の比活性値及びCDK2の比活性値から、上記式(1)を用いてリスクスコアを算出する算出工程をさらに含むことが好ましい。以下、各工程について詳述する。
【0024】
(第1取得工程)
第1取得工程は、癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1の比活性値及びCDK2の比活性値を取得する工程である。
【0025】
上記第1取得工程における癌細胞としては、悪性腫瘍を構成する細胞であれば特に制限されるものではなく、例えば乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、脳腫瘍、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、白血病細胞等の癌細胞が挙げられる。これらのうち、乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、脳腫瘍、前立腺癌、皮膚癌、及び白血病細胞の癌細胞が好ましく、これらのうち乳癌の癌細胞がより好ましい。
【0026】
上記生体試料は、癌患者から採取された癌細胞を含む試料であれば特に限定されない。この生体試料としては、具体的には、癌患者の血液、血清、リンパ液、尿、乳頭分泌液、及び手術や生検により癌患者から採取した細胞や組織等が挙げられる。また、癌患者から採取した細胞や組織を培養して得られた試料を生体試料として用いることもできる。
【0027】
上記CDK1は、細胞周期のG2期からM期に移行する際に活性を示すタンパク質である。一方、CDK2は、細胞周期のG1期からS期に移行する際に活性を示すタンパク質である。一般に、癌細胞は正常な増殖制御を逸脱して増殖が活発に行われていることから、DNAの複製期であるS期と、DNA合成の終了から有糸分裂の開始の間であるG2期にある細胞の割合が多いと考えられる。また、癌細胞に見られる異数倍体性は、細胞が細胞分裂期であるM期を異常な状態で経過した場合、又はM期を経ずにG1期に進みそのままS期に移行した場合に発生するとされているため、M期に存在する細胞の割合が少ないと考えられる。このように、癌細胞においては細胞周期の制御に異常を来していることが多いため、細胞周期を制御する上記CDK1及びCDK2の発現量や活性値は、細胞が癌化しているか否かを判断する上でも、重要な因子であると考えられている。
【0028】
例えば、CDK1及びCDK2(以下、「CDK]ともいう)の比活性比(CDK2比活性値/CDK1比活性値)は、S期またはG2期にある細胞が、M期にある細胞に比べてどれだけ多く存在するかを反映する数値であると考えることができ、細胞の増殖能を正確に反映するパラメータとして用いることができる。
【0029】
上記CDK1及びCDK2の比活性値は、癌細胞を含む生体試料中のそれぞれのCDK活性値をCDK発現量で割って得られる値である。なお、当該奏効性判定方法の第1取得工程は、CDK1の比活性値及びCDK2の比活性値を取得できればよく、CDK活性値及びCDK発現量を測定するCDK測定工程と、上記CDK測定工程で得られた結果からそれぞれの比活性値を算出する比活性値算出工程を有してもよい。
【0030】
上記CDK活性値は、例えば、CDKによってリン酸化される基質の量から算出されるキナーゼ活性のレベル(単位をU(ユニット)で表す)等で表される。なお、CDKがリン酸化する基質として、例えばヒストンH1等が挙げられる。
【0031】
上記CDK測定工程においては、上記CDK活性値を公知のCDK活性測定方法によって測定することができる。上記公知の方法のうち、放射性物質を用いる方法としては、例えば測定試料の細胞可溶化液からCDKを含む試料を調製し、この試料と32P標識したアデノシントリホスフェート(γ−〔32P〕−ATP)とを用いて、基質タンパク質に32Pを取り込ませ、32P標識されたリン酸化基質の標識量を測定する方法等が挙げられる。また、放射性物質を用いない方法としては、米国特許出願第2002/0164673号に記載された方法等が挙げられる。この方法は、まず検体の細胞可溶化液から目的のCDKを含む試料を調製し、アデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(ATP−γS)と基質タンパク質を反応させて、この基質タンパク質のセリン又はスレオニン残基にモノチオリン酸基を導入する。導入された上記モノチオリン酸基の硫黄原子に標識蛍光物質又は標識酵素を結合させることによって基質タンパク質を標識し、標識されたチオリン酸基質の標識量を測定する方法である。
【0032】
上記測定試料の細胞可溶化液からCDKを含む試料を調製する方法としては、測定対象となる癌細胞を含む生体試料の可溶化液から、例えば抗CDK抗体等を用いてCDKを特異的に捕捉することにより調製する方法等が挙げられる。
【0033】
上記CDK発現量は、測定対象となる癌細胞を含む生体試料の可溶化液に含まれる目的のCDK量(分子個数に対応する単位)である。また、上記CDK測定工程において、上記CDK発現量は、上記の可溶化液からCDK量を測定する公知の方法で測定することができる。上記CDK発現量の測定方法としては、例えば目的のCDKを抗CDK抗体等の特異的抗体を用いて捕捉し、捕捉されたCDKを定量する方法等を用いることができ、具体的には、ELISA法、ウェスタンブロット法、米国特許出願第2004/0214180号に記載された方法等が挙げられる。
【0034】
(第2取得工程)
当該奏効性判定方法における第2取得工程とは、GSTπの発現量を取得する工程である。
【0035】
上記GSTπとは、ヒトのグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)ファミリーに属する酵素のうち、GSTP1遺伝子にコードされた分子量約22.5kDaのタンパク質である。GSTπは、還元型グルタチオン(GSH)と抗癌剤との抱合体形成を触媒することにより、抗癌剤の毒性を弱めることに関与している。そのため、一般的にGSTπが高発現している癌細胞は、GSTπが低発現している癌細胞に比べ、抗癌剤に対する耐性が高まると考えられている。
【0036】
当該奏効性判定方法の第2取得工程においては、GSTπの発現量を取得するのみでもよいし、GSTπの発現量を測定するGSTπ測定工程をさらに含んでいてもよい。
【0037】
上記GSTπ測定工程におけるGSTπの発現量の測定方法としては、GSTπタンパクの発現量、mRNAの発現量等を測定することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、SDSポリアクリルアミド電気泳動法、2次元電気泳動法、プロテインチップによる解析法、酵素結合免疫測定法(ELISA法)、免疫蛍光法、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、免疫沈降法、RT−PCR法、ノーザンブロット法、NASBA法及びDNAチップによる方法等が挙げられる。これらのうち、定量性、再現性、簡便さ等の観点から、GSTπタンパクの発現量の測定方法としてはウエスタンブロット法、ドットブロット法及びELISA法が好ましく、GSTπのmRNAの発現量の測定方法としてはノーザンブロット法が好ましい。なかでも、当該判定方法の正確性の観点から、GSTπタンパクの発現量の測定方法であるドットブロット法及びウエスタンブロット法がより好ましい。
【0038】
(算出工程)
算出工程とは、上記第1取得工程で取得したCDK1の比活性値及びCDK2の比活性値から上記式(1)を用いてリスクスコアを算出する工程である。
【0039】
上記式(1)中、xは、CDK1の比活性値である。yは、CDK1の比活性値に対するCDK2の比活性値の比である。
【0040】
ここで、CDK1比活性値xを第1のリスク要素とし、CDK比活性比(CDK2比活性値/CDK1比活性値)yを第2のリスク要素とし、第1及び第2リスク要素それぞれの値と併用化学療法が奏効しないリスクとの関係を評価することができる。併用化学療法が奏効しないリスクの数値的な評価のうち、第1リスク要素に基づく評価を関数F(x)で表す。また、併用化学療法が奏効しないリスクの数値的な評価のうち第2リスク要素に基づく評価を関数G(y)で表す。さらに、併用化学療法が奏効しないリスクの数値的な評価のうち、第1及び第2リスク要素に基づく評価をリスクスコアとし、このリスクスコアは、F(x)とG(y)の積で与えられるものとする。
【0041】
上記F(x)が上記式(2)で表され、G(y)が上記式(3)で表されることが好ましい。上記式(2)及び(3)中、a〜fは定数である。
【0042】
上記定数a〜cは、CDK1比活性値と併用化学療法が奏効しない確率との関係で定まる定数であり、定数d〜fは、CDK2比活性値/CDK1比活性値と併用化学療法が奏効しない確率との関係で定まる定数である。
【0043】
(判定工程)
本発明の判定工程は、上記第1取得工程で取得したCDK1の比活性値及びCDK2の比活性値、並びに第2取得工程で取得したGSTπの発現量に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する工程である。
【0044】
上記併用化学療法とは、抗癌剤を2剤以上組み合わせて行う治療法である。具体的な併用化学療法としては、アンスラサイクリン系抗癌剤と他の抗癌剤とを用いる併用療法(1)、タキサン系抗癌剤と他の抗癌剤とを用いる併用療法(2)、アンスラサイクリン系抗癌剤とタキサン系抗癌剤とを用いる併用療法(3)、その他の抗癌剤を用いる併用療法(4)等に分類される。
【0045】
上記併用療法(1)としては、例えばAC、FAC、FEC、EC等が挙げられる。上記併用療法(2)としては、例えばTC等が挙げられる。上記併用療法(3)としては、例えばTAC、AC−T、FEC−T、T−FEC等が挙げられる。上記併用療法(4)としては、CMF等が挙げられる。なお、上記併用療法におけるA、C、F、E、Tは下記抗癌剤を示す。
【0046】
A:ドキソルビシン(アンスラサイクリン系)
C:シクロフォスファミド
F:フルオロウラシル
E:エピルビシン(アンスラサイクリン系)
T:パクリタキセル又はドセタキセル(タキサン系)
【0047】
また、AC−Tとは、A及びCの投与を行い、次いでTの投与を行う治療法を示し、FEC−Tとは、F、E及びCの投与を行い、次いでTの投与を行う治療法を示す。T−FECとは、逆にTの投与を先に行い、次いでF、E及びCの投与を行う治療法を示す。このように、全ての抗癌剤を同時に投与するだけでなく、時間をずらして投与する治療法も併用化学療法に含まれる。
【0048】
上記併用化学療法としては、アンスラサイクリン系抗癌剤及びタキサン系抗癌剤を用いる併用化学療法であることが好ましく、これらのうち、T−FEC、AC−T、TAC、FEC−Tがより好ましい。
【0049】
上記判定工程は、上記リスクスコアと第1の閾値を比較し、上記GSTπの発現量と第2の閾値を比較し、上記比較結果に基づいて上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定することが好ましい。
【0050】
上記判定工程は、上記リスクスコアが第1の閾値以下である場合又はGSTπの発現量が第2の閾値より大きい場合に、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定することが好ましい。
【0051】
上記第1の閾値としては、癌細胞の種類、生体試料の種類、CDKの発現量の測定方法等に応じて適切な値を適宜設定することができる。例えば、複数の癌患者から採取した生体試料中のCDK1及びCDK2の発現量及び活性値から算出されるリスクスコアと、それぞれの癌患者の併用化学療法に対する奏効性、すなわち併用化学療法による病理学的腫瘍消失(pCR)の有無とから閾値を算出することができる。これらのデータから閾値を設定する方法としては、例えばReceiver Operating Characteristic(ROC)分析、中央値の算出、平均値±標準偏差の算出等の方法が挙げられる。生体試料中のCDK1及びCDK2の発現量及び活性値から算出されるリスクスコアがこの閾値以下である場合には、その癌患者に対して併用化学療法は奏効性が低いと判定される。また、上記リスクスコアが上記閾値より大きい場合には、癌患者に対しての併用化学療法の奏効性について一定の傾向は得られないため、奏効性を判定することはできない。なお、ここで癌患者に対して併用化学療法が奏効性を示すとは、例えばT−FEC等の併用化学療法により腫瘍が消失すること等をいう。但し、併用化学療法が奏効性を示すと判断する基準は、癌の種類等によりそれぞれ適切な基準を設定する必要がある。
【0052】
上記第2の閾値としては、癌細胞の種類、生体試料の種類、GSTπの発現量の測定方法等に応じて適切な値を適宜設定することができる。例えば、複数の癌患者から採取した生体試料中のGSTπの発現量と、それぞれの癌患者の併用化学療法に対する奏効性、すなわち併用化学療法による病理学的腫瘍消失(pCR)の有無とから閾値を算出することができる。これらのデータから閾値を設定する方法としては、上記第1の閾値と同様の方法等を挙げることができる。生体試料中のGSTπの発現量が設定された閾値より大きい場合には、併用化学療法の奏効性が低いと判定される。なお、上記GSTπの発現量が上記閾値以下である場合には、癌患者に対しての併用化学療法の奏効性について一定の傾向は得られないため、奏効性を判定することはできない。
【0053】
なお、併用化学療法の奏効性判定において、リスクスコアとGSTπの発現量を組み合わせてその指標とすることにより、リスクスコア、GSTπの発現量それぞれを単独で用いた場合と比較して、より信頼性が高くなり、特に陰性適中率(Negative Predictive Value:NPV)に優れる。ここで、上記奏効性判定の信頼性は、P−valueにより判断することができ、その信頼性がより高い場合はP−valueがより小さい値となり、逆にその信頼性が低い場合はP−valueは大きい値となる。このように、リスクスコア及びGSTπの発現量を併用化学療法の奏効性判定の指標とすることは、T−FEC等の併用化学療法後pCR予測に有用である。
【0054】
[実施の形態2]奏効性判定プログラム
次に、実施の形態1の併用化学療法の奏効性判定方法をコンピュータに実現させる形態を図1及び2を用いて説明する。先ず、図1のシステム100の構成を説明する。図1のシステム100は、コンピュータ1と、キーボード2と、マウス3と、CDK測定装置4と、GSTπ測定装置5と、表示装置6とを有する。コンピュータ1は、キーボード2、マウス3、CDK測定装置4、GSTπ測定装置5及び表示装置6のそれぞれと通信ケーブルによって接続されている。
【0055】
コンピュータ1は、癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報を取得すると共に、上記生体試料中のGSTπの発現量の情報を取得し、取得した情報に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する装置である。コンピュータ1の構成の詳細は後述する。キーボード2及びマウス3は、医師等の使用者が上記の情報をコンピュータ1に入力するための装置である。
【0056】
CDK測定装置4は、癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のCDK1の活性値及び発現量を測定する装置である。また、CDK測定装置4は、上記生体試料中のCDK2の活性値及び発現量を測定する装置でもある。なお、CDK測定装置4は、測定したCDKの活性値を発現量で除してCDKの比活性値を算出する機能を有してもよい。CDK測定装置4は、CDK1の比活性値に関する情報(CDK1の活性値及び発現量、又はCDK1の比活性値)、及びCDK2の比活性値に関する情報(CDK2の活性値及び発現量、又はCDK2の比活性値)をコンピュータ1に入力する。GSTπ測定装置5は、上記生体試料中のGSTπの発現量を測定し、測定結果をGSTπの発現量の情報としてコンピュータ1に入力する装置である。表示装置6は、コンピュータ1によって得られた判定結果をコンピュータ1から受け取って表示する装置である。
【0057】
次に、コンピュータ1の構成を説明する。コンピュータ1は、入力ポート11と、CPU12と、HDD13と、RAM14と、出力ポート15とを有する。入力ポート11は、キーボード2、マウス3、CDK測定装置4及びGSTπ測定装置5のそれぞれと通信ケーブルによって接続されており、CPU12がキーボード2、マウス3、CDK測定装置4及びGSTπ測定装置5のいずれかからCDK1の比活性値に関する情報、CDK2の比活性値に関する情報、及びGSTπの発現量の情報を取得するためのインタフェイスである。
【0058】
CPU12は、入力ポート11、HDD13、RAM14及び出力ポート15のそれぞれと通信バスによって接続されており、下記の奏効性判定プログラムに含まれる機能を実現する。HDD13は、CPU12によって実現させる六つの機能を含む奏効性判定プログラムを記憶している。以下に、それら六つの機能を説明する。
【0059】
第1の機能は、癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報を取得する機能である。第2の機能は、上記生体試料中のGSTπの発現量の情報を取得する機能である。第3の機能は、第1の機能によって取得されたCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報と、実施の形態1において示した式(1)とを用いてリスクスコアを算出する機能である。
【0060】
第4の機能は、第3の機能によって算出されたリスクスコアと第1の閾値とを比較する機能である。第5の機能は、第2の機能によって取得された情報が示すGSTπの発現量と第2の閾値とを比較する機能である。第6の機能は、リスクスコアが第1の閾値以下である場合又はGSTπの発現量が第2の閾値より大きい場合、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定する機能である。併用化学療法は、アンスラサイクリン系抗癌剤及びタキサン系抗癌剤を用いる併用化学療法である。
【0061】
更に、HDD13は、上記の式(1)、第1の閾値及び第2の閾値を記憶している。上記の式(1)に含まれる関数F(x)は実施の形態1において示した式(2)により表現される関数であり、上記の式(1)に含まれる関数G(y)は実施の形態1において示した式(3)により表現される関数であって、関数F(x)には定数a〜cが含まれており、関数G(y)には定数d〜fが含まれている。そのため、HDD13は、上記の式(2)及び(3)並びに定数a〜fも記憶している。上記の式(2)における変数xはCDK1の比活性値であり、上記の式(3)における変数yはCDK2の比活性値である。上記の式(2)及び(3)並びに第1の閾値及び第2の閾値については、実施の形態1において詳述したので説明を省略する。
【0062】
次に、コンピュータ1のCPU12の動作を、図2を用いて説明する。CPU12は、入力ポート11を介して、キーボード2、マウス3又はCDK測定装置4から、癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報を取得する(S1)。CPU12は、使用者がキーボード2又はマウス3を用いて入力したCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報を受け付けることによってそれらの情報を取得してもよい。また、CPU12は、CDK測定装置4からCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報を受け取ることによってそれらの情報を取得してもよい。CPU12は、取得したCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報をRAM14に格納する。ここで、キーボード2、マウス3又はCDK測定装置4から入力されたCDK1の比活性値の情報が、CDK1の活性値とCDK1の発現量の場合、CPU12は、CDK1の活性値をCDK1の発現量で除してCDK1の比活性値を求める。そして、求めたCDK1の比活性値を、CDK1の比活性値の情報として、RAM14に格納する。また、入力されたCDK2の比活性値の情報が、CDK2の活性値とCDK2の発現量の場合、CPU12は、CDK2の活性値をCDK2の発現量で除してCDK2の比活性値を求める。そして、求めたCDK2の比活性値を、CDK2の比活性値の情報として、RAM14に格納する。
【0063】
次に、CPU12は、入力ポート11を介して、キーボード2、マウス3又はGSTπ測定装置5から、上記癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のGSTπの発現量の情報を取得する(S2)。CPU12は、使用者がキーボード2又はマウス3を用いて入力したGSTπの発現量の情報を受け付けることによってその情報を取得してもよいし、GSTπ測定装置5からからその情報を受け取ることによってその情報を取得してもよい。CPU12は、取得したGSTπの発現量の情報をRAM14に格納する。
【0064】
そして、CPU12は、RAM14からCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報を取得するとともに、HDD13から上記の式(1)、(2)及び(3)並びに定数a〜fを取得し、CDK1の比活性値をxとし、かつCDK2の比活性値をyとして、上記(1)、(2)及び(3)を用いてリスクスコアを算出する(S3)。
【0065】
次に、CPU12は、HDD13から第1の閾値を取得し、取得した第1の閾値とステップS3において算出したリスクスコアとを比較する(S4)。CPU12は、リスクスコアが第1の閾値以下であることを示す比較結果を得た場合(S4でYes)、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定する(S5)。
【0066】
他方、リスクスコアが第1の閾値より大きいことを示す比較結果を得た場合(S4でNo)、CPU12は、RAM14からGSTπの発現量の情報を取得するとともにHDD13から第2の閾値を取得し、GSTπの発現量と第2の閾値とを比較する(S6)。CPU12は、GSTπの発現量が第2の閾値より大きいことを示す比較結果を得た場合(S6でYes)、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定する(S7)。それに対して、GSTπの発現量が第2の閾値以下であることを示す比較結果を得た場合(S6でNo)、CPU12は、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いか否かは不明であると判定する(S8)。CPU12は、判定結果を出力ポート15を介して表示装置6に出力する。これにより、CPU12の動作は終了する。表示装置6は、コンピュータ1の出力ポート15から判定結果を受け取って表示する。
【0067】
上述の通り、CPU12は、癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のCDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報を取得するとともに、上記生体試料中のGSTπの発現量の情報を取得し、CDK1の比活性値及びCDK2の比活性値からリスクスコアを算出する。そして、CPU12は、リスクスコアと第1の閾値とを比較し、リスクスコアが第1の閾値以下である場合、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定する。また、CPU12は、GSTπの発現量が第2の閾値より大きい場合、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定する。表示装置6は判定結果を表示する。したがって、使用者は、コンピュータ1を用いることにより、簡便にかつ客観的に、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いか否かを認識することができる。すなわち、使用者は、高い信頼性で、癌患者に対する併用化学療法の効果を推定することができる。
【0068】
なお、上述した実施の形態2では、CPU12は、ステップS4においてリスクスコアと第1の閾値とを比較し、リスクスコアが第1の閾値より大きいことを示す比較結果を得た場合(S4でNo)、ステップS6においてGSTπの発現量と第2の閾値とを比較する。しかしながら、CPU12は、GSTπの発現量と第2の閾値との比較をリスクスコアと第1の閾値との比較より前に行ってもよい。すなわち、CPU12は、GSTπの発現量が第2の閾値以下であることを示す比較結果を得た場合、リスクスコアと第1の閾値とを比較してもよい。又は、CPU12は、リスクスコアと第1の閾値との比較と、GSTπの発現量と第2の閾値との比較とを、実質上同時に行ってもよい。いずれの場合であっても、CPU12は、リスクスコアが第1の閾値以下である場合又はGSTπの発現量が第2の閾値より大きい場合、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定する。
【0069】
また、上述した実施の形態2では、CPU12によって実現させる機能を含む奏効性判定プログラムは、HDD13によって記憶されている。しかしながら、その奏効性判定プログラムは例えば携帯可能な記憶媒体に記憶されていて、コンピュータ1のHDD13又はRAM14に格納された後にCPU12によって用いられてもよい。したがって、その奏効性判定プログラムの実施態様は、記憶媒体に記憶されること、及び、記憶媒体に記憶された状態で流通すること等を含む。
【0070】
また、上述した実施の形態2では、CPU12は、CDK1の比活性値及びCDK2の比活性値からリスクスコアを算出する。しかしながら、CPU12は、リスクスコアを用いることなく、CDK1の比活性値及びCDK2の比活性値並びにGSTπの発現量に基づいて癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定することができれば、リスクスコアを算出することなく、CDK1の比活性値及びCDK2の比活性値並びにGSTπの発現量に基づいて癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定してもよい。
【0071】
また、上述した実施の形態2では、リスクスコアを算出するための式(1)に含まれる関数F(x)は式(2)によって表現され、式(1)に含まれる関数G(y)は式(3)によって表現される。しかしながら、リスクスコアを算出するために式(1)を用いる場合であっても、関数F(x)及びG(y)のそれぞれは、式(2)又は式(3)以外の式によって表現されてもよい。
【0072】
また、上述した実施の形態2では、CPU12は、リスクスコアが第1の閾値以下である場合又はGSTπの発現量が第2の閾値より大きい場合、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定する。しかしながら、その判定方法以外の方法を用いて癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いか否かを判定することができれば、CPU12は、リスクスコアと第1の閾値との比較と、GSTπの発現量と第2の閾値以上との比較との一方又は双方を行うことなく、CDK1の比活性値、CDK2の比活性値、及びGSTπの発現量に基づいて、癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定してもよい。
【0073】
また、上述した実施の形態2では、併用化学療法は、アンスラサイクリン系抗癌剤及びタキサン系抗癌剤を用いる併用化学療法である。しかしながら、併用化学療法は、アンスラサイクリン系抗癌剤及びタキサン系抗癌剤を用いる方法に限定されない。
【0074】
また、上述した実施の形態2では、図2のステップS1において、CPU12は、CDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報を受動的に取得する。しかしながら、CPU12は、CDK測定装置4にそれらの情報を出力することを定期的に又は不定期に要求してそれらの情報を能動的に取得してもよい。同様に、上述した実施の形態2では、図2のステップS2において、CPU12は、GSTπの発現量の情報を受動的に取得する。しかしながら、CPU12は、GSTπ測定装置5にその情報を出力することを定期的に又は不定期に要求してその情報を能動的に取得してもよい。
【0075】
また、上述した実施の形態2では、CDK測定装置4は、CDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報をコンピュータ1に入力する。しかしながら、CDK測定装置4は、CDK1の比活性値の情報及びCDK2の比活性値の情報をコンピュータ1に入力せずに、CDK1の活性値及び発現量の情報と、CDK2の活性値及び発現量の情報とをコンピュータ1に入力してもよい。その場合、CPU12は、入力ポート11を介して、CDK測定装置4からのCDK1の活性値及び発現量の情報と、CDK2の活性値及び発現量の情報とを受け取る。そして、CPU12は、CDK1の活性値をCDK1の発現量により除してCDK1の比活性値を算出し、それによりCDK1の比活性値を取得する。同様に、CPU12は、CDK2の活性値をCDK2の発現量により除してCDK2の比活性値を算出し、それによりCDK2の比活性値を取得する。CPU12は、CDK測定装置4に、CDK1の活性値及び発現量の情報と、CDK2の活性値及び発現量の情報とを定期的に又は不定期に要求してそれらの情報を能動的に取得してもよい。
【0076】
また、上述した実施の形態2では、上記の第1の閾値、第2の閾値、式(1)、式(2)、式(3)、及び定数a〜cは、HDD13によって記憶されている。それらは、使用者がキーボード2又はマウス3を用いてコンピュータ1に入力することによって、又はCDK測定装置4若しくはGSTπ測定装置5がコンピュータ1に入力することによって、CPU12によって取得された後にHDD13によって記憶されてもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態2では、コンピュータ1は、キーボード2、マウス3、CDK測定装置4、GSTπ測定装置5、及び表示装置6のそれぞれと通信ケーブルによって接続されている。しかしながら、コンピュータ1は、キーボード2、マウス3、CDK測定装置4、GSTπ測定装置5、及び表示装置6の全部又は一部と無線によって接続されてもよい。
【0078】
また、上述した実施の形態2では、コンピュータ1は表示装置6と接続されているが、コンピュータ1は、表示装置6の代わりに又は表示装置6とともに、スピーカ、印刷装置、又は携帯通信端末装置等と接続されてもよい。その場合、スピーカ等は判定結果を報知するので、使用者は、癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いか否かを認識することができる。
【0079】
更に、上述した実施の形態2の癌細胞は、乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、脳腫瘍、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、又は白血病細胞等の癌細胞である。また、上述した実施の形態2の生体試料は、癌患者から採取された癌細胞を含む試料である。例えば、実施の形態2の生体試料は、癌患者の血液、血清、リンパ液、尿、乳頭分泌液、又は、手術若しくは生検により癌患者から採取した細胞若しくは組織等である。生体試料は、癌患者から採取した細胞や組織を培養して得られた試料であってもよい。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0081】
<CDK1及びCDK2の比活性値の測定>
[測定用試料の調製]
(試薬の調整)
コンプリート溶解液:
コンプリート錠(Roche社)1錠を2mLの超純水に溶解し、調製した。
【0082】
緩衝液A:
50mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM EDTA(pH8.0)、50mM NaF、1mM NaVO、0.1% NP−40(CALBIOCHEM社)を最終濃度として含む溶液中に、コンプリート溶解液が25倍希釈されるよう添加し、調製した。
【0083】
(測定用試料の調整)
乳癌患者からマンモトームにより採取した腫瘍細胞塊を、チューブ内で緩衝液Aに懸濁した。緩衝液Aは、4mm角相当の腫瘍細胞塊に400μL、3mm角相当の腫瘍細胞塊に200μL、中間の大きさの腫瘍細胞塊に300μL添加した。電動ホモジナイザーを用いて、上記腫瘍細胞塊をホモジナイズし、腫瘍細胞を破砕して細胞可溶化液を調製した。上記細胞可溶化液を4℃で15000rpm、5分間遠心分離し、得られた上清を測定用試料として用いた。なお、上記乳癌患者から採取した腫瘍細胞塊は合計112検体であった。
【0084】
[CDK1及びCDK2の発現量の測定]
(試薬及び標準品の調整)
トリス緩衝生理食塩水(TBS):
10×TBS(2−Amino−2−hydroxymethy−1,3−propanediol 250mM、NaN 0.1%(w/v)、NaCl 1.5Mを最終濃度として含み、HClを用いてpH7.4に調製した溶液)を10倍希釈して、TBSを調製した。
【0085】
ブロッキング試薬:
上述のTBS中に、ウシ血清アルブミンBSA(Proliant Health & Biologicals社)を最終濃度が4%(w/v)、NaNを最終濃度が0.1%(w/v)となるように溶解し、ブロッキング試薬を調製した。
【0086】
1次抗体試薬:
Block Ace(粉末)(大日本住友製薬社)を最終濃度が3.2%(w/v)、NaNを最終濃度が0.1%(w/v)となるように超純水に溶解した溶液に、抗CDK1抗体を12μg/mLとなるように溶解し、抗CDK1抗体試薬を調製した。同様に、抗CDK1抗体に代えて、抗CDK2抗体を7.5μg/mLとなるように溶解し、抗CDK2抗体試薬を調製した。
【0087】
2次抗体試薬:
上述のTBS中に、BSAを最終濃度が1%(w/v)、NaNを最終濃度が0.1%(w/v)となるように溶解した溶液に、ビオチン化抗ウサギIgG抗体(Southern Biotech社)を8μg/mLとなるように溶解し、2次抗体試薬を調製した。
【0088】
蛍光標識試薬:
上述のTBS中に、BSAを最終濃度が1%(w/v)、NaNを最終濃度が0.1%(w/v)となるように溶解した溶液に、Fluorescein−StreptAvidin(Vector社)を10μg/mLとなるように溶解し、蛍光標識試薬を調製した。
【0089】
蛍光増強試薬:
3−Morpholinopropanesulfonic acid 100mM、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含み、NaOHを用いてpH7.9となるよう調製した。
【0090】
発現量用CDK標準品緩衝液:
上述のTBS中に、Sucrose 876.4mM、BSA 0.005%(w/v)、NP40 0.005%、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、発現量用CDK標準品緩衝液を調製した。
【0091】
CDK1/2発現量BG測定用標準品:
上述のTBS中に、BSA 0.005%(w/v)、NP40 0.005%、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、CDK1/2発現量BG測定用標準品を調製した。
【0092】
CDK1発現量測定用標準品:
CDK1/cyclinB1, active(Millipore社)を発現量用CDK標準品緩衝液に添加し、10μg/mLとなるように希釈した。この希釈液3mLを発現量用CDK標準品緩衝液95mLに添加し、CDK1発現量測定用標準品を調製した。
【0093】
CDK2発現量測定用標準品:
cdk2(Santa Cruz社)を発現量用CDK標準品緩衝液に添加し、10μg/mLとなるように希釈した。この希釈液1.3mLを発現量用CDK標準品緩衝液98mLに添加し、CDK2発現量測定用標準品を調製した。
【0094】
(CDK1及びCDK2の発現量の測定)
フィルタープレート(MultiScreen HTS PSQPlates)を30%エタノールで親水処理後、TBSを各ウェル200μL添加し、吸引することで洗浄を行った。各測定用試料を各ウェルに100μL添加し、吸引により水分を除去した。次に、TBSを各ウェル300μL添加して吸引する洗浄を行った。その後、ブロッキング試薬を各ウェル100μL添加し、吸引した。ブロッキング試薬を吸引後、抗CDK1抗体試薬(1次抗体試薬)を各ウェル50μL添加し、吸引した。再度抗CDK1抗体試薬を各ウェル50μL添加し、23℃で2時間静置した。その後、吸引により1次抗体試薬を除去した。次に、TBSを各ウェル300μL添加して吸引する洗浄を4回行った。洗浄後、2次抗体試薬を各ウェル50μL添加し、吸引した。再度2次抗体試薬を各ウェル50μL添加し、23℃で45分間静置した。その後、吸引により2次抗体試薬を除去した。次に、TBSを各ウェル300μL添加して吸引する洗浄を2回行った。洗浄後、蛍光標識試薬を各ウェル100μL添加し、吸引した。次に、TBSを各ウェル300μL添加して吸引する洗浄を4回行った。洗浄後、蛍光増強試薬を各ウェル200μL添加し、吸引した。その後、フィルタープレートを乾燥させた。
【0095】
乾燥後、上記フィルタープレート中の各ウェルについて、InfiniteF200(Tecan社)で蛍光強度を測定した。ここで、各測定用試料のCDK1及びCDK2の発現量の算出は、キャリブレーターを用いて作成した検量線により行った。キャリブレーターは、CDK1/2発現量BG測定用標準品300μL、CDK1/2発現量BG測定用標準品270μLにCDK1発現量測定用標準品30μLを添加したもの、CDK1/2発現量BG測定用標準品150μLにCDK1発現量測定用標準品150μLを添加したもの、CDK1発現量測定用標準品300μLを使用した。これらをそれぞれフィルタープレート(MultiScreen HTS FilterPlates)に各ウェル100μL添加し、上記測定用試料について行ったのと同様の方法によりブロッキング、1次抗体反応、2次抗体反応、蛍光標識反応等を行い、InfiniteF200を用いてそれぞれの蛍光強度を測定し、検量線を作成した。
【0096】
CDK2の発現量の測定は、1次抗体として抗CDK1抗体試薬の代わりに抗CDK2抗体試薬を用いること、キャリブレーターとしてCDK1/2発現量BG測定用標準品とCDK2発現量測定用標準品を用いること以外は上述のCDK1の発現量測定と同様の手順で行った。
【0097】
[CDK1及びCDK2の活性の測定]
(試薬及び標準品の調整)
1M Tris−HCl:
2−Amino−2−hydroxymethy−1,3−propanediol 1M、NaN 0.1%(w/v)を含み、HClを用いてpH7.4となるよう調製した。
【0098】
免疫沈降緩衝液:
1M Tris−HClを20倍希釈した溶液中に、NP40 0.1%、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、免疫沈降緩衝液を調製した。
【0099】
20%プロテインAビーズ溶液:
プロテインAビーズ(GE Healthcare社)300μLを2mLエッペンドルフチューブに加え、免疫沈降緩衝液900μLを加えて転倒混和し、2000rpmで20秒間遠心分離を行って上清を除去する操作を2回行った。ここに免疫沈降緩衝液1080μLを添加し、20%プロテインAビーズ溶液を調製した。
【0100】
CDK抗体希釈液:
1M Tris−HClを40倍希釈した溶液中に、Sucrose1M、NaCl 150mM、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、CDK抗体希釈液を調製した。
【0101】
抗CDK1抗体試薬:
CDK抗体希釈液1.9mLに10% NaN溶液(w/v)を190μL添加し、この溶液中に抗CDK1抗体(448μg/mL)を17.5mL添加して希釈した。この希釈液480μLに免疫沈降緩衝液840μLを添加し、抗CDK1抗体試薬を調製した。
【0102】
抗CDK2抗体試薬:
CDK抗体希釈液1.6mLに10% NaN溶液(w/v)を100μL添加し、この溶液中に抗CDK2抗体(360μg/mL)を8.3mL添加して希釈した。この希釈液240μLに免疫沈降緩衝液960μLを添加し抗CDK2抗体試薬を調製した。
【0103】
免疫沈降洗浄液1:
1M Tris−HClを20倍希釈した溶液中に、NP40 1%、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、免疫沈降洗浄液1を調製した。
【0104】
免疫沈降洗浄液2:
1M Tris−HClを20倍希釈した溶液中に、NaCl 300mM、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、免疫沈降洗浄液2を調製した。
【0105】
免疫沈降洗浄液3:
1M Tris−HClを20倍希釈した溶液中に、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、免疫沈降洗浄液3を調製した。
【0106】
Kinase反応試薬:
1M Tris−HClを18.4倍希釈した溶液中に、NaN 0.1%(w/v)、MgCl 20mM、ATP−γS(CALBIOCHEM社)2mM、Histone H1(Roche社)0.2mg/mLを最終濃度として含むよう添加し、Kinase反応試薬を調製した。
【0107】
2.2M MOPS−NaOH:
3−Morpholinopropanesulfonic acid 2.2M、NaN 0.1%(w/v)を含み、NaOHを用いてpH7.4となるよう調製した。
【0108】
蛍光標識反応緩衝液:
2.2M MOPS−NaOHを7.3倍希釈した溶液中に、EDTA 5mM、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、蛍光標識反応緩衝液を調製した。
【0109】
蛍光標識試薬:
5−(Iodoacetamido)fluorescein(Molecular Probes社)25mg、DMSO 6mLを蛍光標識反応緩衝液116mL添加し、蛍光標識試薬を調製した。
【0110】
蛍光標識反応停止液:
2.2M MOPS−NaOHを1.1倍希釈した溶液中に、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加した。この溶液498.95mL中にN−Acetyl−L−Cysteine 2.45gを溶解し、蛍光標識反応停止液を調製した。
【0111】
トリス緩衝生理食塩水(TBS):
10×TBS(2−Amino−2−hydroxymethy−1,3−propanediol 250mM、NaN 0.1%(w/v)、NaCl 1.5Mを最終濃度として含み、HClを用いてpH7.4に調製した溶液)を10倍希釈して、TBSを調製した。
【0112】
蛍光増強試薬:
Blocking One(Nacalai Tesque社)を10倍希釈した溶液中に、NaN 0.1%(w/v)を最終濃度として含むよう添加し、調製した。
【0113】
CDK1/2活性測定用標準品希釈液:
1M Tris−HClを20倍希釈した溶液中に、Sucrose 810.7mM、Block Ace(大日本住友製薬社)1%(w/v)、NaCl 150mM、NaN0.1%(w/v)、NP40 0.1%を最終濃度として含むよう添加し、CDK1/2活性測定用標準品希釈液を調製した。
【0114】
CDK1/2活性測定用標準品:
CDK1/2活性測定用標準品希釈液中に、Recombinant CDK1/cyclin B1, active(Millipore社)3ng/μL、Recombinant CDK2/cyclin E, active(Millipore社)1ng/μLを最終濃度として含むよう希釈し、CDK1/2活性測定用標準品を調製した。
【0115】
(CDK1及びCDK2の活性の測定)
フィルタープレート(MultiScreen HTS FilterPlates)の各ウェルに20% プロテインAビーズ溶液を30μL、抗CDK1抗体希釈液を90μL、各測定用試料を30μL添加した。これを4℃で120分間攪拌し、測定用試料中のCDK1と抗CDK1抗体とを反応させた。反応後、吸引により水分を除去した。次に、免疫沈降洗浄液1を各ウェル200μL添加し、吸引してビーズを洗浄した。続いて免疫沈降洗浄液2を各ウェル200μL添加し、吸引してビーズを洗浄した。更に、免疫沈降洗浄液3を各ウェル200μL添加し、吸引してビーズを洗浄した。これにより、抗CDK1抗体を介して各測定試料中のCDK1が結合したセファロースビーズをフィルタープレート上に得た。
【0116】
このフィルタープレートの各ウェルに、Kinase反応試薬を50μL添加し、37℃で60分間攪拌して反応させた。
【0117】
Kinase反応後、2000rpmで5分間遠心分離を行い、反応生成物を採取し、MicroAmp Optical 96−well Reaction Plate(Applied Biosystems社)の各ウェルに14μL添加した。この反応生成物に、蛍光標識試薬を各ウェル14μL添加し、25℃で20分間攪拌して反応させ、蛍光標識反応停止液を各ウェル200μL添加して反応を停止させた。
【0118】
フィルタープレートに70%エタノールを各ウェル100μL添加し、吸引により70%エタノールを除去した。次に、TBSを各ウェル200μL添加し、吸引する洗浄を2回行った。次に、Optical 96−well Reaction Plate中の蛍光標識反応停止後の反応液を、フィルタープレートの各ウェルに100μL添加し、吸引して反応液を除去した。続いて、TBSを各ウェル200μL添加し、吸引して除去する洗浄を2回行った。洗浄後、蛍光増強試薬を各ウェル200μL添加し、吸引して蛍光増強試薬を除去する反応を6回行った。その後、フィルタープレートを乾燥させた。
【0119】
乾燥後、上記フィルタープレート中の各ウェルについて、InfiniteF200(Tecan社)で蛍光強度を測定した。ここで、各測定用試料のCDK1の活性の算出は、キャリブレーターとしてCDK1/2活性測定用標準品を用いて作成した検量線により行った。なお、検量線の作成は、以下の方法により行った。CDK1/2活性測定用標準品をCDK1/2活性測定用標準品希釈液で1/4希釈したもの、同様に1/2希釈したもの、CDK1/2活性測定用標準品をそれぞれフィルタープレート(MultiScreen HTS FilterPlates)に各ウェル30μL添加し、上記測定用試料について行ったのと同様の方法により免疫沈降、Kinase反応、蛍光標識反応等を行い、InfiniteF200を用いてそれぞれの蛍光強度を測定し、検量線を作成した。
【0120】
CDK2活性の測定は、抗CDK1抗体の代わりに抗CDK2抗体を用いること以外は上述のCDK1活性測定と同様の手順で行った。
【0121】
[CDK1及びCDK2の比活性値の算出]
CDK1及びCDK2の比活性は、下記のように算出した。
各測定用試料について、検量線から算出したCDK1活性をもとに、測定用試料1μL中に含まれるCDK1活性(A)を算出した。また、各測定用試料について、検量線から算出したCDK1発現量をもとに、測定用試料1μL中に含まれるCDK1発現量(B)を算出した。CDK1比活性は、A/Bにより算出した。CDK2についても同様に比活性の算出を行った。
【0122】
<GSTπの発現量の測定>
[GSTπの発現量の測定に用いる試薬の調製]
GSTπの発現量を測定するために、ブロッキング試薬、トリス緩衝生理食塩水(TBS)、1次抗体試薬、2次抗体試薬及び蛍光標識試薬を調製した。それぞれの試薬の調製法を以下に示す。
【0123】
ブロッキング試薬:
Block Ace(粉末)(大日本住友製薬社)を、最終濃度が4%となるように超純水に溶解し、ブロッキング試薬を調製した。
【0124】
1次抗体試薬:
ブロッキング試薬を10倍希釈して調製したブロッキング溶液に、抗GSTπ抗体(BD Transduction社)を、5μg/mLとなるように溶解し、1次抗体試薬を調製した。
【0125】
トリス緩衝生理食塩水(TBS):
10×TBS(2−Amino−2−hydroxymethyl−1,3−propanediol 30.28g、NaCl 87.7g、6N HCl 110gを超純水に添加し、最終量を1Lとした溶液)を10倍希釈して、TBSを調製した。
【0126】
2次抗体試薬:
TBSに、ウシ血清アルブミンBSAを、最終濃度が1%となるように超純水に溶解し、TBS(1%BSA)を調製した。得られたTBS(1%BSA)に、Goat Anti−Mouse IgG(H+L)−BIOT Human/Mouse(Southern Biotech社)を、30μg/mLとなるように溶解し、2次抗体試薬を調製した。
【0127】
蛍光標識試薬:
上述のTBS(1%BSA)に、ストレプトアビジン−FITC(Vector社)を、10μg/mLとなるように溶解し、蛍光標識試薬を調製した。
【0128】
[GSTπの発現量の測定]
フィルタープレート(Multi Screen HTS PSQ Plates)を30%エタノールで親水処理後、各測定用試料を各ウェルに10μg添加し、吸引により水分を除去した。なお、測定用試料としては、上記第1取得工程において調製した試料を用いた。その後、ブロッキング試薬を各ウェル100μL加え吸引した。ブロッキング試薬を吸引後、1次抗体試薬を各ウェル50μL添加しすぐに吸引した。吸引後、再び1次抗体試薬を各ウェル50uL添加し2時間静置した。その後、吸引により1次抗体試薬を除去した。次に、TBSを、各ウェル300μL添加して吸引する洗浄を4回行った。洗浄後、2次抗体試薬を各ウェル50μL添加しすぐに吸引した。吸引後、再び2次抗体試薬を各ウェル50uL添加し1時間静置した。その後、吸引により2次抗体試薬を除去した。次に、TBSを各ウェル300μL添加し、吸引する洗浄を2回行った。洗浄後、蛍光標識試薬を各ウェル100μL添加しすぐに吸引した。次に、TBSを各ウェル300μL添加して吸引する洗浄を4回行った後、フィルタープレートを乾燥させた。
【0129】
乾燥後、上記フィルタープレート中の各ウェルについて、InfiniteF200(Tecan社)で蛍光強度を測定した。ここで、各測定用試料のGSTπの発現量の算出は、キャリブレーターとしてGSTP1 recombinant Protein(Abnova社 Cat No.H00002950−P01)を用いて作成した検量線により行った。なお、検量線の作成は、以下の方法により行った。0ng/100uL/ウェル、10ng/100uL/ウェル、30ng/100uL/ウェル、50ng/100uL/ウェルの各濃度となるようにフィルタープレート上に上記GSTP1 recombinant Proteinを添加し、上記測定用生体試料について行ったのと同様の方法によりブロッキング、1次抗体反応、2次抗体反応及び蛍光標識試薬反応等を行い、InfiniteF200を用いてそれぞれの蛍光強度を測定し検量線を作成した。
【0130】
<リスクスコアの算定>
得られたCDK1及びCDK2の比活性値を用いて、下記式に基づきリスクスコア(RS)を算出した。
【0131】
F(x)=0.15/(1+Exp(−(x−1.6)×7)
G(y)=0.25/(1+Exp(−(y−1.0)×6)
RS=3000×F(x)×G(y)
x=log(CDK1比活性値)
y=log(CDK2比活性値)−log(CDK1比活性値)
【0132】
<奏効性の判定>
上記乳癌患者に対して、マンモトーム生検の後、週1回のパクリタキセル投与(T)を12サイクル、21日毎の5−FU、エピルビシン及びシクロフォスファミド投与(FEC)を4サイクル行い、病理学的腫瘍消失の有無を評価した。この評価において、病理学的完全奏効(pCR)となった患者を奏効例とした。
【0133】
上記CDK1及びCDK2の比活性値から算出されるリスクスコア(RS)を単独で指標として用い、T−FEC後pCR予測を行った際のROC曲線を図3に示す。このROC曲線のAUC(Area Under the Curve)=0.615、significance level P (area=0.5)=0.1124となった。また、GSTπを単独で指標として用い、同様にT−FEC後pCR予測を行った際のROC曲線を図4に示す。このROC曲線のAUC=0.608、significance level P (area=0.5)=0.1041となった。
【0134】
これに対し、リスクスコアとGSTπを組み合わせて指標として用い、T−FEC後pCR予測を行った際のROC曲線を図5に示す。このROC曲線のAUC=0.682、significance level P (area=0.5)=0.0025となった。リスクスコアに対してROC曲線を作成し、リスクスコアに関するカットオフを設定した後に、更にGSTπのROC曲線を作成してGSTπのカットオフを設定すると、表3が得られる。リスクスコアのカットオフ(閾値)は0.121に、GSTπのカットオフ(閾値)は93.1865に設定した。この時の陽性適中率(Positive Predictive Value:PPV)=34(%)、陰性適中率(Negative Predictive Value:NPV)=93.8(%)であった。この結果から、リスクスコアとGSTπの組み合わせは、T−FECに対して奏効しない患者を精度よく抽出できることが示唆され、奏効しない患者への不要な抗癌剤の投与を回避することで患者のQOL向上に貢献できると考えられる。
ROC曲線のAUC、並びにAUCのP−valueは、リスクスコアとGSTπを組み合わせることにより、リスクスコア、GSTπそれぞれを単独で用いた場合と比較して大幅に改善が認められた。これらの結果から、リスクスコアとGSTπの組み合わせはT−FEC後pCR予測に有用であると考えられる。
【0135】
リスクスコア(RS)及びGSTπの発現量(表中では「GSTπ」と表記)と、T−FECの奏効性の関係を表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
表1に示す通り、リスクスコアが低値又はGSTπの発現量が高値の乳癌患者は、T−FECによる奏効性を示さないnon−pCRの割合が顕著に高かった。従って、マンモトーム等により採取された生体試料のリスクスコアが低値又はGSTπの発現量が高値である乳癌患者については、T−FECによる併用化学療法以外の療法を選択することが好ましいと判定することができる。また、リスクスコアが高値かつGSTπが低値である乳癌患者は、T−FECによる奏効性について一定の傾向は示さなかった。なお、リスクスコアが高値とは上記閾値より大きいことをいい、リスクスコアが低値とは上記閾値以下であることをいう。また、GSTπの発現量が高値とは上記閾値より大きいことをいい、GSTπが低値とは上記閾値以下であることをいう。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明によると、癌患者への併用化学療法の奏効性について、より信頼性の高い判定方法を提供することができる。当該奏効性判定方法によると、患者は効果的でない可能性が高い不要な抗癌剤治療を回避することが可能となる。また当該奏効性判定方法を実現するための奏効性判定プログラム、及び奏効性判定装置は、癌患者への併用化学療法の奏効性を判定する手段として有用である。
【符号の説明】
【0139】
100 システム
1 コンピュータ
2 キーボード
3 マウス
4 CDK測定装置
5 GSTπ測定装置
6 表示装置
11 入力ポート
12 CPU
13 HDD
14 RAM
15 出力ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1の比活性値及びCDK2の比活性値を取得する第1取得工程と、
上記生体試料中のGSTπの発現量を取得する第2取得工程と、
上記第1取得工程で取得したCDK1の比活性値及びCDK2の比活性値、並びに上記第2取得工程で取得したGSTπの発現量に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する判定工程と
を有する併用化学療法の奏効性判定方法。
【請求項2】
上記癌細胞が乳癌の癌細胞である請求項1に記載の奏効性判定方法。
【請求項3】
上記併用化学療法が、アンスラサイクリン系抗癌剤及びタキサン系抗癌剤を用いる併用化学療法である請求項1又は請求項2に記載の奏効性判定方法。
【請求項4】
上記第1取得工程で取得したCDK1の比活性値及びCDK2の比活性値から下記式(1)を用いてリスクスコアを算出する算出工程をさらに含み、
上記判定工程は、上記算出工程で算出したリスクスコア及び上記第2取得工程で取得したGSTπの発現量に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の奏効性判定方法。
リスクスコア=F(x)×G(y) ・・・(1)
(式(1)中、xは、CDK1の比活性値である。yは、CDK1の比活性値に対するCDK2の比活性値の比である。)
【請求項5】
上記F(x)が下記式(2)で表され、G(y)が下記式(3)で表される請求項4に記載の奏効性判定方法。
F(x)=a/(1+Exp(−(x−b)×c)) ・・・(2)
G(y)=d/(1+Exp(−(y−e)×f)) ・・・(3)
(式(2)及び(3)中、a〜fは定数である。)
【請求項6】
上記判定工程は、上記リスクスコアと第1の閾値を比較し、上記GSTπの発現量と第2の閾値を比較し、上記比較結果に基づいて上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する請求項4又は請求項5に記載の奏効性判定方法。
【請求項7】
上記判定工程は、上記リスクスコアが第1の閾値以下である場合又はGSTπの発現量が第2の閾値より大きい場合に、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性が低いと判定する請求項6に記載の奏効性判定方法。
【請求項8】
癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1及びCDK2の比活性値の情報を取得する機能と、
上記生体試料中のGSTπの発現量の情報を取得する機能と、
取得されたCDK1及びCDK2の比活性値の情報、並びにGSTπの発現量の情報に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する機能と
をコンピュータに実現させるための奏効性判定プログラム。
【請求項9】
CDK1及びCDK2の比活性値の情報を取得する機能が、CDK1の活性値と発現量からCDK1の比活性値を求め、CDK2の活性値と発現量からCDK2の比活性値を求め、求められたCDK1及びCDK2の比活性値をCDK1及びCDK2の比活性値の情報として取得する、請求項8に記載の奏効性判定プログラム。
【請求項10】
癌患者から採取した癌細胞を含む生体試料中のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)1の比活性値の情報、CDK2の比活性値の情報、及びGSTπの発現量の情報を取得する取得部と、
上記取得部によって取得されたCDK1の比活性値の情報、CDK2の比活性値の情報、及びGSTπの発現量の情報に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する判定部と
を備える併用化学療法の奏効性判定装置。
【請求項11】
上記取得部が、CDK1の比活性値の情報としてCDK1の活性値と発現量を取得し、CDK2の比活性値の情報としてCDK2の活性値と発現量を取得し、
上記判定部が、上記取得部によって取得されたCDK1の活性値と発現量からCDK1の比活性値を求め、CDK2の活性値と発現量からCDK2の比活性値を求め、求められたCDK1及びCDK2の比活性値、並びにGSTπの発現量の情報に基づいて、上記癌患者に対する併用化学療法の奏効性を判定する、
請求項10に記載の奏効性判定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−228233(P2012−228233A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100184(P2011−100184)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】