説明

使い捨ておむつ

【課題】装着時に吸収体を着用者の股間部に容易に密着させる。
【解決手段】使い捨ておむつ1は、上端に胴部開口を有し、下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプであり、不織布にて形成される外装シート4は、着用者の前側を覆う前方部401および後側を覆う後方部403、並びに、前方部401と後方部403との間の中間部402を有する。外装シート4上には、前方部401から後方部403に亘って吸収体20が取り付けられ、着用者からの排泄物が吸収される。前方部401および後方部403のそれぞれにはシート部材5が接合され、吸収体20の各端部がシート部材5と外装シート4との間に挟まれて固定される。使い捨ておむつ1では、シート部材5がプラスチックフィルムと不織布との積層体とされることにより、シート部材5の伸張が抑制され、装着時に吸収体20を着用者の股間部に容易に密着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツタイプの使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、着用者からの排泄物を受ける吸収性物品の1つとして、上端に胴部開口を有するとともに下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプの使い捨ておむつが利用されている。このような使い捨ておむつでは、着用者の前側を覆う前方部と後側を覆う後方部とが中間部を介して連続する外装シートにおいて、前方部の両側端を後方部の両側端にそれぞれ接合することにより、胴部開口および一対の脚部開口が形成される。また、着用者からの排泄物を吸収する吸収体が、前方部から後方部に亘って外装シート上に取り付けられる。
【0003】
なお、特許文献1では、前方部および後方部にそれぞれ接合されて吸収体の長手方向の両端部を被覆する一対のエンド押さえシートが開示されており、エンド押さえシートにより吸収体が外装シート上に強固に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−97979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、不織布にて形成される外装シートを薄くして柔らかくすることにより、使い捨ておむつの着用感を向上させることが進められているが、このような使い捨ておむつでは、外装シートが伸張しやすくなる。したがって、使い捨ておむつを着用者に装着する際に、吸収体を着用者の股間部に密着させるために、前方部や後方部を引き上げたとしても、外装シートの伸張により吸収体自体を引き上げることが容易ではない。吸収体が着用者の股間部に密着していない状態では、排泄物が吸収体に適切に吸収されず、外部に漏出する虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、装着時に吸収体を着用者の股間部に容易に密着させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上端に胴部開口を有し、下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプの使い捨ておむつであって、着用者の前側を覆う前方部および後側を覆う後方部の間の中間部で折り曲げられ、前記前方部の両側端が、前記後方部の両側端にそれぞれ接合されることにより、前記前方部および前記後方部の上端に胴部開口が形成され、前記前方部および前記後方部の下側において前記中間部の両側方に一対の脚部開口が形成される外装シートと、前記前方部から前記後方部に亘って前記外装シート上に取り付けられて着用者からの排泄物を吸収する吸収体と、前記前方部または前記後方部において、前記上端の縁に沿って伸びるとともに前記外装シートの内面上に接合され、前記外装シートとの間にて前記吸収体の一方の端部を固定するシート部材とを備え、前記外装シートが、不織布にて形成され、前記シート部材が、プラスチックフィルムと不織布との積層体であり、着用者に対向する面が前記不織布にて形成される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上端に胴部開口を有し、下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプの使い捨ておむつであって、着用者の前側を覆う前方部および後側を覆う後方部の間の中間部で折り曲げられ、前記前方部の両側端が、前記後方部の両側端にそれぞれ接合されることにより、前記前方部および前記後方部の上端に胴部開口が形成され、前記前方部および前記後方部の下側において前記中間部の両側方に一対の脚部開口が形成される外装シートと、前記前方部から前記後方部に亘って前記外装シート上に取り付けられて着用者からの排泄物を吸収する吸収体と、前記前方部または前記後方部において、前記上端の縁に沿って伸びるとともに前記外装シートの内面上に接合され、前記外装シートとの間にて前記吸収体の一方の端部を固定するシート部材とを備え、前記外装シートおよび前記シート部材が、不織布にて形成され、前記シート部材における不織布の繊維配向が前記上端の縁に垂直である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の使い捨ておむつであって、前記シート部材の全面が前記外装シート上に接合される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の使い捨ておむつであって、前記シート部材と同様の構造を有するもう1つのシート部材をさらに備え、前記シート部材および前記もう1つのシート部材が、前記前方部および前記後方部にそれぞれ設けられる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の使い捨ておむつであって、前記シート部材と、前記もう1つのシート部材とが識別可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装着時に吸収体を着用者の股間部に容易に密着させることができる。
【0013】
また、請求項1の発明では、排泄物の水分がシート部材を透過して外側に染み出すことを防止することができ、請求項3および4の発明では、吸収体を着用者の股間部にさらに容易に密着させることができ、請求項5の発明では、使い捨ておむつの前後を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る使い捨ておむつの外観を示す斜視図である。
【図2】展開した状態の使い捨ておむつの平面図である。
【図3】使い捨ておむつの断面図である。
【図4】シート部材の断面図である。
【図5】比較例の使い捨ておむつを示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係る使い捨ておむつの平面図である。
【図7】使い捨ておむつの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る使い捨ておむつ1の外観を示す斜視図である。図1に示すように、使い捨ておむつ1は、図1中の上側の端部である上端に胴部開口11を有し、下部に一対の脚部開口12を有するパンツタイプであり、着用者からの排泄物を受ける。
【0016】
図2は、使い捨ておむつ1を展開した状態で着用者側から見た平面図である。図2に示すように、使い捨ておむつ1は、外装シート4、外装シート4の内面(すなわち、着用者側の面)上に取り付けられて着用者からの排泄物を吸収する略シート状の吸収体20、および、吸収体20の長手方向(すなわち、図2中における上下方向)の両端部を覆うように外装シート4上に接合される2つのシート部材5(エンドシートまたはエンド押さえシートとも呼ばれる。)を備える。各シート部材5は、図2の横方向に関して外装シート4の幅のおよそ全体に亘って設けられる。以下、図2の横方向を「おむつの幅方向」と呼ぶ。
【0017】
使い捨ておむつ1では、図2中の上側の部位が着用者の前側(腹側の肌)を覆い、図2中の下側の部位が着用者の後側(背側の肌)を覆う。以下の説明では、着用者の前側および後側を覆う部位をそれぞれ、「前方部401」および「後方部403」と呼び、前方部401と後方部403との間で双方から連続するとともに着用者の股間部に対向する部位を「中間部402」と呼ぶ。
【0018】
使い捨ておむつ1が製造される際には、外装シート4が吸収体20と共に中間部402にて折り曲げられ、中間部402を下側に配置した際の前方部401の左右両側の端部と、後方部403の左右両側の端部とが、加熱および押圧による熱融着により接合される。このように、前方部401の両側端と後方部403の両側端とをそれぞれ接合することにより、図1に示すように、前方部401および後方部403の上端に胴部開口11が形成され、前方部401および後方部403の下側において中間部402の両側方に一対の脚部開口12が形成される。以下、図1の上下方向(重力方向であるとは限らない。)を「おむつの上下方向」と呼ぶ。
【0019】
図3は、使い捨ておむつ1を図2中に示すA−Aの位置(すなわち、中間部402)で切断した断面図である。図3では、図示の都合上、使い捨ておむつ1の構成を互いに離して描いている。
【0020】
図2および図3に示すように、吸収体20は、略シート状の本体部2、および、本体部2の両側部上(すなわち、おむつの幅方向の両端部)に配置されて本体部2の長手方向のおよそ全長に亘る一対のサイドシート3を備える。本体部2は、図3に示すように、トップシート21、バックシート23、および、トップシート21とバックシート23との間に配置された吸収コア22を備え、バックシート23がホットメルト接着剤等により外装シート4上に接合されて吸収体20が外装シート4に固定される。図2では、図の理解を容易にするために、吸収コア22の輪郭を太い破線にて描いている。図2に示すように、吸収コア22の長手方向の両端部における幅は、吸収コア22の長手方向の中央部における幅よりも大きい。換言すれば、吸収コア22は、いわゆる砂時計型である。
【0021】
図3に示すように、各サイドシート3は、長手方向の全長に亘って設けられた折り曲げ線39を境界として、本体部2側の部位である帯状の接合部33、および、他方の部位である側壁部34を備える。接合部33は、本体部2の側方エッジ近傍において長手方向のおよそ全長に亘って本体部2の上側(すなわち、着用者側)にホットメルト接着剤を用いて接合される。
【0022】
接合部33から折り曲げ線39を介して連続する側壁部34は、長手方向における両端部において接合部33上に重ねられ、熱融着接合、超音波接合または接着剤による接合により接合部33上に固定される。図2では、図の理解を容易にするために、接合部33上に固定される側壁部34の部位341に平行斜線を付している。また、側壁部34は、図2および図3に示すように、長手方向における中央において本体部2から上側へと起立する起立部342を備える。図3に示すように、側壁部34では、起立部342の自由端に弾性部材35が接合されており、弾性部材35が収縮することにより起立部342にギャザーが形成される。
【0023】
外装シート4は、内側シート41、および、内側シート41の下側(すなわち、着用者とは反対側)にて内側シート41に積層される外側シート42を備える。内側シート41と外側シート42との間には、図2に示すように、複数の脚周り弾性部材43、および、複数の胴周り弾性部材44がホットメルト接着剤等により接合される。使い捨ておむつ1では、脚周り弾性部材43が収縮することにより内側シート41および外側シート42(図3参照)が収縮されてレッグギャザーが形成される。また、胴周り弾性部材44が収縮することにより胴部ギャザーが形成される。なお、複数の胴周り弾性部材44うち、胴部開口11(図1参照)の縁近傍に配置される一部の胴周り弾性部材44は密に並べられており、これらの胴周り弾性部材44により、使い捨ておむつ1が着用者の腰周りにて強くフィットする。
【0024】
図2の前方部401および後方部403のそれぞれにおいて、外装シート4(の内側シート41)上には、既述のシート部材5がホットメルト接着剤等により接合される。シート部材5は、使い捨ておむつ1の上端の縁(すなわち、長手方向における外装シート4の両端部のエッジ)に沿って伸びており、本実施の形態では長方形となっている。シート部材5の接合では、シート部材5と重なる予定の外装シート4上の領域の全体にカーテンスプレーやコータによりホットメルト接着剤が塗布されることにより、シート部材5のほぼ全面が外装シート4の内面上に接合される。実際には、吸収体20が前方部401から後方部403に亘って外装シート4上に接合されており、吸収体20の各端部は、シート部材5と外装シート4との間に挟まれ、吸収体20が外装シート4上に強固に固定される。
【0025】
使い捨ておむつ1では、前方部401に接合されるシート部材5の色と、後方部403に接合されるシート部材5の色とが相違する。外装シート4は薄いため、使い捨ておむつ1を外側から見た場合に、シート部材5の色は、外装シート4を透過して容易に視認可能である。
【0026】
トップシート21は、透液性のシート材料であり、着用者からの排泄物の水分を速やかに捕捉して吸収コア22へと移動させる。トップシート21は、例えば、表面を界面活性剤により親水処理した疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)にて形成された透液性の不織布であり、当該不織布として、例えば、ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンボンド不織布が利用される。なお、トップシート21として、セルロースやレーヨン、コットン等の親水性繊維により形成された不織布(例えば、スパンレース不織布)が利用されてもよい。
【0027】
吸収コア22は、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維等の親水性繊維に粒状の高吸収性ポリマー(SAP(Super Absorbent Polymer))や高吸収性ファイバー等の高吸収性材料を混合したものをティッシュペーパーや透液性不織布等により包み込んで形成され、トップシート21を透過した水分を吸収して迅速に固定する。親水性繊維を包むティッシュペーパーや透液性不織布等は、親水性繊維および吸水性材料とホットメルト接着剤により接合されて、親水性繊維の型崩れ、および、吸水性材料の脱落(特に、吸水後における脱落)を防止する。本実施の形態では、吸収コア22はパルプ繊維およびSAPを含む。
【0028】
バックシート23としては、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用され、バックシート23に到達した排泄物の水分等が、本体部2の外側に染み出すのを防止する。バックシート23にプラスチックフィルムが利用される場合、使い捨ておむつ1のムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0029】
サイドシート3のシート本体としては、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS不織布)が利用される。弾性部材35としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が利用され、本実施の形態では、ポリウレタン糸が弾性部材35として利用される。
【0030】
外装シート4の内側シート41および外側シート42としては、バックシート23と同様に、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布が利用される。また、内側シート41および外側シート42として、トップシート21と同様に、親水性繊維により形成された不織布や親水処理した疎水性繊維にて形成された透液性の不織布が利用されてもよい。このように、使い捨ておむつ1では、外装シート4が不織布により形成される。
【0031】
脚周り弾性部材43および胴周り弾性部材44としては、サイドシート3の弾性部材35と同様に、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が利用され、本実施の形態では、ポリウレタン糸が脚周り弾性部材43および胴周り弾性部材44として利用される。
【0032】
図4は、シート部材5の断面図である。シート部材5は、プラスチックフィルムにて形成される層51と、不織布にて形成される層52との積層体であり、着用者に対向する内面(外装シート4に接合されない層52の面)が不織布にて形成される。層52には、外装シート4およびバックシート23と同様に、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布、あるいは、トップシート21と同様に、親水性繊維により形成された不織布や親水処理した疎水性繊維にて形成された透液性の不織布が利用される。また、層51には、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用される。プラスチックフィルムとしては、透湿性(通気性)を有するものが好ましい。
【0033】
図1に示す使い捨ておむつ1が着用される際には、着用者の両脚が胴部開口11を介して一対の脚部開口12に挿入された後、胴部開口11の縁部を掴んで使い捨ておむつ1が着用者の腰周りまで引き上げられる。このとき、前方部401がシート部材5と共に上方(着用者の頭部側)に引き上げられ、後方部403もシート部材5と共に引き上げられることにより、吸収体20の各端部が上方に引き上げられ、吸収体20が着用者の股間部に密着する。
【0034】
図5は、比較例の使い捨ておむつ9を示す図であり、図2に対応する図である。比較例の使い捨ておむつ9では、シート部材91が不織布のみにて形成される。また、シート部材91の作製に用いられるロール状の不織布では、その引き出し方向に繊維配向(すなわち、不織布の変形に対する強度(剛性)が最大となる方向であり、伸縮性が最も低い方向である。)が揃っており、比較例の使い捨ておむつ9の製造を容易とするために、シート部材91における不織布の繊維配向が、おむつの幅方向(図5中の横方向)に平行となっている。不織布では、繊維配向におよそ垂直な方向にて伸縮性が最も高くなるため、比較例のシート部材91は、おむつの幅方向に垂直なおむつの上下方向に伸張しやすくなっている。図5では、横方向に伸びる平行線をシート部材91に付すことにより、シート部材91を形成する不織布の繊維配向が、おむつの幅方向に平行であることを示している。実際には、外装シート93における不織布の繊維配向も、おむつの幅方向に平行となっている。
【0035】
また、外装シート93上へのシート部材91の接合では、図5中にて符号94を付す太い破線にて示すように、ホットメルト接着剤が、おむつの幅方向に平行な複数のライン状にて外装シート93上に塗布された後、シート部材91が外装シート93上に重ねられて接合される。このような比較例の使い捨ておむつ9では、シート部材91が外装シート93と共におむつの上下方向に伸張しやすくなる。したがって、使い捨ておむつ9を着用者に装着する際に、吸収体92を着用者の股間部に密着させるために、外装シート93の前方部931や後方部932をシート部材91と共に引き上げたとしても、外装シート93およびシート部材91の伸張により吸収体92自体を引き上げることが容易ではない。また、排泄物の水分がシート部材91の内面に付着した場合に、体圧により排泄物の水分がシート部材91および外装シート93を透過して外装シート93の外側に染み出す虞もある。
【0036】
これに対し、図2の使い捨ておむつ1では、シート部材5がプラスチックフィルムと不織布との積層体とされることにより、シート部材5における不織布の繊維配向がおむつの幅方向に平行であっても、シート部材5の伸張が抑制される。これにより、装着時に吸収体20の両端部を確実に上方に引き上げて、吸収体20を着用者の股間部に容易に密着させる(すなわち、吸収体20の両側端を着用者の鼠径部に沿わせる)ことができる。また、排泄物の水分がシート部材5の内面に付着した場合であっても、排泄物の水分がシート部材5を透過して外装シート4の外側に染み出すことを防止することができる。
【0037】
また、使い捨ておむつ1では、シート部材5の全面が外装シート4上に接合されて、シート部材5と外装シート4とが一体化されることにより、シート部材5がより伸張しにくくなり、吸収体20を着用者の股間部にさらに容易に密着させることができる。さらに、前方部401のシート部材5の色が、後方部403のシート部材5の色と相違することにより、使い捨ておむつ1の前後を容易に認識することができる。
【0038】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る使い捨ておむつ1aを示す図であり、図2に対応する図である。図6の使い捨ておむつ1aでは、シート部材5aが不織布のみにて形成される点で、図2の使い捨ておむつ1と相違している。他の構成は図2と同様であり、同符号を付している。
【0039】
図6の各シート部材5aでは、不織布の繊維配向が、胴周り弾性部材44におよそ垂直であり、シート部材5aの伸縮性が、おむつの幅方向にて最も高くなる。換言すると、不織布の繊維配向が、吸収体20の長手方向に平行であり、前方部401の両側端を後方部403の両側端にそれぞれ接合した状態の使い捨ておむつ1(図1参照)において、シート部材5aの伸縮性が、おむつの上下方向にて最も低くなる。図6では、縦方向に伸びる平行線をシート部材5aに付すことにより、シート部材5aを形成する不織布の繊維配向が、吸収体20の長手方向に平行であることを示している。
【0040】
各シート部材5aの形状は、図2のシート部材5と同様に、前方部401または後方部403の端部の縁に沿って伸びる帯状であり、シート部材5aの全面が外装シート4の内面上に接合される。また、使い捨ておむつ1と同様に、前方部401のシート部材5aの色が、後方部403のシート部材5aの色と相違する。既述のように、外装シート4は不織布にて形成される。
【0041】
ここで、図5の比較例の使い捨ておむつ9では、シート部材91における不織布の繊維配向がおむつの幅方向に平行であるため、既述のように、シート部材91がおむつの上下方向に伸張しやすく、使い捨ておむつ9を着用者に装着する際に、吸収体92が着用者の股間部に密着するように吸収体92を引き上げることが困難である。また、シート部材91がおむつの幅方向に伸張しにくいため、胴周りが適切に締め付けられない場合がある。
【0042】
これに対し、図6の使い捨ておむつ1aでは、シート部材5aにおける不織布の繊維配向が、使い捨ておむつ1の上端の縁に垂直である(すなわち、おむつの上下方向に沿う)ことにより、シート部材5aが、おむつの上下方向に伸張しにくくなる。これにより、使い捨ておむつ1aを着用者に装着する際に、吸収体20の端部を上方に確実に引き上げることができ、吸収体20を着用者の股間部に容易に密着させることができる。
【0043】
また、使い捨ておむつ1aの装着において、使い捨ておむつ1aが、シート部材5aにおける不織布の繊維配向に沿って着用者の腰周りまで引き上げられるため、使い捨ておむつ1aの引き上げ時における着用者の肌触り感を、比較例の使い捨ておむつ9に比べて向上させることができる。さらに、シート部材5aの伸縮性が、おむつの幅方向にて最も高くなるため、比較例の使い捨ておむつ9に比べて、胴周りを適切に締め付けることができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0045】
使い捨ておむつ1,1aでは、前方部401および後方部403の一方のみにシート部材5,5aが設けられてもよく、この場合でも、シート部材5,5aにより覆われる吸収体20の一方の端部を、おむつの上下方向に容易に引き上げることができ、吸収体20を着用者の股間部に容易に密着させることができる。この場合に、吸収体20の他方の端部が、比較例の使い捨ておむつ9におけるシート部材91にて覆われてもよく、また、他方の端部がシート部材にて覆われなくてもよい。ただし、吸収体20を着用者の股間部にさらに容易に密着させるには、互いに同様の構造を有する2つのシート部材が、前方部401および後方部403にそれぞれ設けられることが好ましい。
【0046】
上記第1および第2の実施の形態では、カーテンスプレーやコータによるホットメルト接着剤の塗布によりシート部材5,5aの全面が外装シート4上に接合されるが、例えば、図7に示すように、ホットメルト接着剤がライン状に塗布される領域61(図7中にて平行斜線を付す領域)と、ホットメルト接着剤がスパイラル状に塗布される領域62とが、図7中の上下方向に交互に設けられてシート部材5のおよそ全面が外装シート4上に接合されてもよい(シート部材5aにおいて同様)。図7の領域62では、おむつの幅方向に伸びる2列(1列または3列以上であってもよい。)のスパイラル状にホットメルト接着剤が塗布されている。このような使い捨ておむつでは、胴回りにおける通気性および柔軟性が向上する。また、図5の比較例の使い捨ておむつ9と同様に、外装シート4上においてホットメルト接着剤が、おむつの幅方向に平行であり、かつ、おむつの上下方向に間隔を空けて配列される複数のライン状(スパイラル状であってもよい。)に塗布されることにより、シート部材5,5aが外装シート4の内面上に接合されてもよい。この場合でも、おむつの上下方向に伸張しにくいシート部材5,5aにより、吸収体20を着用者の股間部に容易に密着させることが可能となる。なお、使い捨ておむつ1,1aの設計によっては、外装シート4上においてホットメルト接着剤が、吸収体20の長手方向に平行な複数のライン状に塗布されることにより、シート部材5,5aが外装シート4の内面上に接合されてもよい。
【0047】
また、上記第1および第2の実施の形態では、前方部401のシート部材5,5aの色が、後方部403のシート部材5,5aの色と相違することにより、使い捨ておむつの前後が識別可能となるが、前方部401のシート部材5,5aおよび後方部403のシート部材5,5aの双方に異なる文字やマーク、模様等が形成される、または、一方のみに文字やマーク、模様等が形成されることにより、前方部401のシート部材5,5aと、後方部403のシート部材5,5aとが視覚により識別可能とされてもよい。
【0048】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0049】
1,1a 使い捨ておむつ
4 外装シート
5,5a シート部材
11 胴部開口
12 脚部開口
20 吸収体
51,52 層
401 前方部
402 中間部
403 後方部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に胴部開口を有し、下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプの使い捨ておむつであって、
着用者の前側を覆う前方部および後側を覆う後方部の間の中間部で折り曲げられ、前記前方部の両側端が、前記後方部の両側端にそれぞれ接合されることにより、前記前方部および前記後方部の上端に胴部開口が形成され、前記前方部および前記後方部の下側において前記中間部の両側方に一対の脚部開口が形成される外装シートと、
前記前方部から前記後方部に亘って前記外装シート上に取り付けられて着用者からの排泄物を吸収する吸収体と、
前記前方部または前記後方部において、前記上端の縁に沿って伸びるとともに前記外装シートの内面上に接合され、前記外装シートとの間にて前記吸収体の一方の端部を固定するシート部材と、
を備え、
前記外装シートが、不織布にて形成され、
前記シート部材が、プラスチックフィルムと不織布との積層体であり、着用者に対向する面が前記不織布にて形成されることを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
上端に胴部開口を有し、下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプの使い捨ておむつであって、
着用者の前側を覆う前方部および後側を覆う後方部の間の中間部で折り曲げられ、前記前方部の両側端が、前記後方部の両側端にそれぞれ接合されることにより、前記前方部および前記後方部の上端に胴部開口が形成され、前記前方部および前記後方部の下側において前記中間部の両側方に一対の脚部開口が形成される外装シートと、
前記前方部から前記後方部に亘って前記外装シート上に取り付けられて着用者からの排泄物を吸収する吸収体と、
前記前方部または前記後方部において、前記上端の縁に沿って伸びるとともに前記外装シートの内面上に接合され、前記外装シートとの間にて前記吸収体の一方の端部を固定するシート部材と、
を備え、
前記外装シートおよび前記シート部材が、不織布にて形成され、
前記シート部材における不織布の繊維配向が前記上端の縁に垂直であることを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の使い捨ておむつであって、
前記シート部材の全面が前記外装シート上に接合されることを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の使い捨ておむつであって、
前記シート部材と同様の構造を有するもう1つのシート部材をさらに備え、
前記シート部材および前記もう1つのシート部材が、前記前方部および前記後方部にそれぞれ設けられることを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項5】
請求項4に記載の使い捨ておむつであって、
前記シート部材と、前記もう1つのシート部材とが識別可能であることを特徴とする使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11113(P2012−11113A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152671(P2010−152671)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】