説明

使い捨てカイロ

【課題】人体部位と衣類との間のぎりぎり手の届く位置に挿入し、一方の手で衣類の外方から使い捨てカイロを押さえ、他方の手でセパレータを剥離して貼着できる、使い捨てカイロを提供すること。
【解決手段】使い捨てカイロ本体10とセパレータ20とを備えてなる。使い捨てカイロ本体10は、両肩及び首周りに対応する形状であり袋体11の一方の面の少なくとも左右部分に弱粘着剤塗膜30、30を有し人体部位又は衣類(特に肌着)へ貼着するように構成され、セパレータ20は、シート材を半折され重ね合せ面同士を易剥離手段21、22で密着され一方の半面部の外面が離型性表面23になっていて、二つ折りの折り返し端が使い捨てカイロ本体の使用時に下端側となるように、離型性表面23で使い捨てカイロ本体10の弱粘着剤塗膜30を有する部分を覆って使い捨てカイロ本体10の一方の面に剥離可能に貼着されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類(特に肌着)の内側に挿入し人体部位、例えば両肩及び首周り等へ直貼りし又は衣類(特に肌着)に内貼りする使い捨てカイロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の使い捨てカイロの中には、袋内を複数に間仕切りした分室を作り、袋内の発熱体を大きく偏り移動しないようにして発熱量を制限し、また屈曲性・巻付性を良くしたものが提案されている。
【0003】
特許文献1に示される使い捨てカイロは、複数の縦列のシールと横列のシールで間仕切りし、更に間仕切りシールのシール幅中央にミシン目状カット線を付与してあり、ミシン目状カット線より手切りして一列複数の分室を有する大きさとし肩や腕、首や足等に追随変形し密着するので貼着することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−288008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の使い捨てカイロは両肩及び首周りに対応して衣類(特に肌着)の上に貼着するものであり、衣類(特に肌着)の内側に挿入し両肩及び首周りへ直ちに貼着し、または衣類(特に肌着)の内側に貼着するものではなく、発熱温度も直貼りに比較して高くなるように設定される。もし仮に、発熱温度も直貼り用に低くしたとしても、セパレータ(剥離紙)を剥離して衣類(特に肌着)の内側に挿入し両肩及び首周りへ貼着し又は衣類(特に肌着)の内面に貼着しようとすると、使い捨てカイロ本体を所定位置へ挿入する前に使い捨てカイロ本体に形成した弱粘着剤塗膜が肌又は衣類(特に肌着)内面に密着してしまうので、一人で使い捨てカイロ本体を所定位置へ挿入することが難しい場合が多い。
【0006】
本発明は、上述した点にかんがみ案出したもので、その目的とするところは、人体部位と衣類との間のぎりぎり手の届く位置に挿入し、一方の手で衣類の外方から使い捨てカイロを押さえ、他方の手でセパレータを剥離して貼着できる、使い捨てカイロを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の使い捨てカイロは、袋体内に発熱体を封入し該袋体の一方の外面に粘着剤塗膜を有し該粘着剤塗膜により人体部位又は衣類へ貼着する使い捨てカイロ本体と、シート材を半折しこの半折状態のシート材の一方の外面を前記粘着剤塗膜に重ねて前記袋体の一方の外面に貼着したセパレータと、を備えてなることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、セパレータを剥離しない状態の使い捨てカイロを人体又は衣類の貼着したい部位へ当てがい、その際に、セパレータを剥離する方向を決めて、セパレータの折り返し端が剥離開始端となるようにする。そして、セパレータの使い捨てカイロ本体に貼着していない半部の端縁(折り返し端と反対側)を引くと、セパレータは、折り返し端より180°めくりとなるように剥離し始める。セパレータを剥離していくと、使い捨てカイロ本体にコートしてある粘着剤塗膜が露出面積を次第に大きくし人体部位又は衣類に対向する。使い捨てカイロ本体を押さえる力を強くすれば、該使い捨てカイロ本体を人体部位又は衣類に貼着できる。
【0009】
上記構成の発明は、前記セパレータが、シート材を半折し重ね合せ面同士を剥離性接着手段で密着してなる、ことが好ましい。この構成にすると、製造段階でセパレータが開かないので、使い捨てカイロを個包装し易い。使用時には、シート材の重ね合せ面をあらかじめ剥離してから、セパレータは、シート材を半折し重ね合せ面剥離展開されてから人体部位又は衣類に当てがい、剥離していく。
【0010】
上記構成の発明は、使い捨てカイロ本体は、両肩及び首周りに対応する長尺形状であり前記袋体の一方の外面の左右部分に前記粘着剤塗膜を有し、前記セパレータは、前記粘着剤塗膜を覆って左右一対に備えている、ことが好ましい。この構成にした場合は、以下のように取付ける。
まず、セパレータの外側半面部を皮膚に密着する側としかつ外側半面部の端縁が上端になるようにし、使い捨てカイロを衣類(特に肌着)の内側へ挿入する。直貼りするには、セパレータを肌側、使い捨てカイロ本体を衣類(特に肌着)側として挿入し、衣類(特に肌着)へ内貼りするには、セパレータを衣類(特に肌着)側、使い捨てカイロ本体を肌側として挿入する。使い捨てカイロ本体に形成した弱粘着剤塗膜をセパレータが覆っているので、挿入途中で弱粘着剤塗膜が肌又は衣類(特に肌着)に密着してしまうことがないから、一人で使い捨てカイロ本体を所定位置へ円滑に挿入できる。使い捨てカイロ本体を両肩及び首周りに対応する位置に挿入したら、その状態で、一方の手で使い捨てカイロ本体の首後面に対応する辺りを押さえる。次に、他方の手で、セパレータの端縁を摘んで引っ張ることにより、セパレータの二つ折りの折り返し端を180°捲りとなるように剥離していく。次に、セパレータの剥離により露出する弱粘着剤塗膜を介して皮膚に弱粘着でき、反対側も同様にして、セパレータを剥離して弱粘着剤塗膜を介して皮膚に弱粘着できる。それによって、使い捨てカイロ本体を両肩及び首周りに直貼り又は衣類(特に肌着)に内貼りできる。
このように構成すると、衣類(特に肌着)の内側の両肩及び首周りへ対応する位置へ一人で円滑に挿入できて、両肩及び首周りへ直貼り又は衣類(特に肌着)の内面に貼着することが一人で良好に行える、両肩及び首周り用の使い捨てカイロを提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セパレータを折り返し端より180°めくりとなるように剥離できるから、セパレータを剥離しない状態の使い捨てカイロを人体部位又は衣類の貼着したい部位へ当てがい衣類の外方から押しつけたままで、セパレータを剥離することが容易にできて使い捨てカイロ本体を人体部位又は衣類に貼着できる。したがって、特に、人体部位と衣類との間のぎりぎり手の届く位置に挿入し、一方の手で衣類の外方から使い捨てカイロを押さえ、他方の手でセパレータを剥離することができ、それにより、一人で体部位と衣類との間のぎりぎり手の届く位置へ使い捨てカイロ本体を貼着できる点で利便性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態に係る使い捨てカイロについて図面を参照して説明する。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
図1に示すように、この実施の形態の使い捨てカイロ1は、両肩及び首周りに対応する細長形状の使い捨てカイロ本体10と、この使い捨てカイロ本体10の一方の面部の両肩に対応する左右位置に剥離可能に貼着されたセパレータ20、20とを有してなる。
【0014】
図2に示すように、使い捨てカイロ本体10のセパレータ20、20が貼着される位置には弱粘着剤塗膜30、30が設けられる。セパレータ20は、二つ折り・剥離可能な接着状態を保持されて、弱粘着剤塗膜30を覆い隠しかつ二つ折りの折り返し端20cが使い捨てカイロ本体10の使用時に下になるように貼着されている。弱粘着剤塗膜30は、例えば弱粘着性のホットメルトの塗膜とできる。
【0015】
図1に示すように、使い捨てカイロ本体10は、通気性を有する扁平な袋体11内に空気の存在下で酸化発熱する発熱体12を封入してなる。袋体11は、両肩及び首周りに対応する細長形状であり、中央部上縁11aが首に対応した凹円弧状であり、両側部上隅11bが小円弧の隅丸に形成され、下縁両側部11cが大円弧の隅丸に形成されている。袋体11は、袋体の内部空間がヒートシールSにより両肩部及び首部に対応する3区分に仕切られ、扁平形状であり、3区分の各空間内に発熱体12が封入されてなる。
発熱体12の形態・組成は、空気の存在下で酸化発熱する鉄粉等の金属粉末を主体とする発熱組成物であるが、特に限定しない。発熱体12は、一般的に、鉄粉、活性炭、塩類、吸水性樹脂および水を含んでなるか、あるいは、鉄粉等の金属粉末、塩類、水、活性炭及び保水剤を主成分とする。空気の存在下で酸化発熱する鉄粉は、例えば、反応助剤、水及び保水剤と混合して大気中で緩発熱する組成物用の原料鉄粉を含む。
【0016】
袋体11は、少なくとも一方の面部が通気性を有していれば足りる。袋体11のセパレータ20を備える面部には弱粘着剤塗膜30を形成するので、好ましくは、前記の少なくとも一方の面部とは、弱粘着剤塗膜30を形成しない面部であることが好ましい。例えば、袋体11のセパレータ20を備えない側の面部11dは、外層が不織布、内層が通気性を有するシーラントフィルム(ポリエチレンフィルム)で構成され突き刺し孔を設けて通気性を有し、またセパレータ20を備える側の面部11eは、弱粘着剤塗膜の形成に適した面性状とするため、単層のシーラントフィルム(ポリエチレンフィルム)或いは内層がシーラントフィルム(ポリエチレンフィルム)で構成される通気性を有しない積層フィルムで構成できる。
【0017】
袋体11のセパレータ20を備える側の面部11eの具体的な構成例として、無機フィラー入りポリエチレン1軸延伸フィルム(白色)、低密度ポリエチレン(LDPE)と、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とを三層共押出成形して通気性を有しない三層共押出フィルムを用いることができる。
【0018】
セパレータ20は、シート(例えば紙)を二つ折りとして重なる一対の半面部の中の、一方の半面部(短い寸法aの半面部)20aの中程に帯状に塗布形成された微粘着性のホットメルトの塗膜21と、他方の半面部(長い寸法bの半面部)20bに形成された離型剤塗布膜22と、が密着して易剥離性・接着状態を保持する。なお、微粘着剤塗膜21に替えて、イージーピールにして弱ヒートシールすることによっても易剥離性・接着状態を保持できる。
【0019】
セパレータ20は、外側の半面部の外面(短い寸法aの半面部20aの外面)に形成された離型剤塗布膜23が、袋体11に形成された弱粘着剤塗膜30に重なり、これにより、セパレータ20が袋体11に対して易剥離性・接着状態に貼着されている。
【0020】
セパレータ20は、二つ折りの折り返し端20cが使い捨てカイロ本体10の使用時に下端側となるように、袋体11に貼着されており、そして、二つ折り接着状態におけるプレス等による切断により、袋体11の下縁両側部11cの大円弧の隅丸に対応する弧状輪郭辺20dを有していることにより、袋体11からはみ出ないデザインとされている。
【0021】
セパレータ20は、展開する際の易剥離性を確保するための有利な構成として、微粘着性のホットメルトの塗膜21と離型剤塗布膜22との密着エリアが、全面的なものではなく、二つ折りシート(紙)の一方の半面部の端縁と他方の半面部の端縁に至っていない部分的なものとなっている。セパレータ20は、二つ折りシート(紙)の、微粘着性のホットメルトの塗膜21が形成された一方の半面部(短い寸法aの半面部)20aの端縁よりも、微粘着性のホットメルトの塗膜21が形成された他方の半面部(長い寸法bの半面部)20bの端縁が延びた状態に重ねられ、他方の半面部の端縁を摘んで展開することができ、易剥離性を保有させたので、容易に展開できるように構成されている。
【0022】
上記実施形態の使い捨てカイロ1によれば、使用前は、使い捨てカイロ本体10の一方の面に貼着されているセパレータ20が、シート材を2つ折り接着状態にあり展開していないから、個包装に適した形態である。
【0023】
直貼りするには、セパレータ20を肌側、使い捨てカイロ本体10を衣類(特に肌着)側として挿入し、衣類(特に肌着)へ内貼りするには、セパレータ20を衣類(特に肌着)側、使い捨てカイロ本体10を肌側として挿入する。図4(a)、(b)に示すように、セパレータ20が使い捨てカイロ本体10に形成された弱粘着剤塗膜30を覆っているので、該弱粘着剤塗膜30を挿入途中で皮膚又は衣類(特に肌着)の内面に密着させてしまうことを回避できて両肩及び首周りに対応した衣類(特に肌着)の内側に円滑に挿入させることができる。
【0024】
次に、使い捨てカイロ1を両肩及び首周りに当て、その状態で、剥離しようとする一方のセパレータ20とは反対側の手で使い捨てカイロ本体10の首後面に対応する辺りを押さえる。次に、剥離しようとする一方のセパレータ20と同側の手で、セパレータ20の端縁を摘んで引っ張ることにより、セパレータ20の二つ折りの折り返し端を180°捲りとなるように剥離していく。次に、セパレータ20の剥離により露出する弱粘着剤塗膜30を介して肌又は衣類(特に肌着)に弱粘着させることができ、反対側も同様にして、セパレータ20を剥離して弱粘着剤塗膜30を介して肌又は衣類(特に肌着)に弱粘着できる。それによって、使い捨てカイロ本体10を両肩及び首周りに貼着することができる。
【0025】
また、上記実施形態の使い捨てカイロ1によれば、セパレータ20は、一方の半面部(短い寸法aの半面部)20aの端縁と、他方の半面部(長い寸法bの半面部)20aの端縁とが不一致で重ならないから、他方の半面部20aの端縁を摘み易いから、使い捨てカイロ本体10を両肩及び首周りに当てた状態で、セパレータ20の他方の半面部20aの端縁を摘んで引っ張ることが容易に行えて、セパレータ20を剥離し易く、使い捨てカイロ本体10を両肩及び首周りに貼着し易い。
【0026】
更に、上記実施形態の使い捨てカイロ1によれば、使い捨てカイロ本体10は、袋体11の内部空間がヒートシールにより肩幅方向に3つに仕切られ、各空間内に発熱体12が封入され、かつ袋体11の中央部上縁11aが首周りに対応した凹円弧状であるので、袋体11の内部で発熱体12の偏り移動が規制され、全体的に発熱が均一化されるとともに、袋体11の上縁中央部が首周りに位置すると、両側部分を背中寄りでなく両肩上に位置させて貼着できる。
【0027】
〔その他の実施の形態〕
本発明は上記実施の形態にこれに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含まれるものである。
【0028】
セパレータ20は、紙以外のシート材を用いることができる。セパレータ20を量産するには、例えば、イージーピール面となっているシート材の原反ロールから、シート材を繰り出して三角フォーマに掛けて二つ折りに半折し、重ね合せ面同士を点ヒートシールして、二つ折り密着状態を保持し、ダイカットロール等によりパターンカットすることで実現できる。
そのほか、セパレータ20の二つ折り密着状態を保持する易剥離性接着手段として、イージーピールと微粘着性のホットメルトの塗膜を重ね合わせる接着手段を適用できる。
弱粘着剤塗膜30の形成方法は、袋体11に直接塗布形成するのが一般的であるが、セパレータ20に塗布形成した弱粘着剤塗膜30を袋体11に密着し転移させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施の形態に係る使い捨てカイロの正面図である。
【図2】図1の使い捨てカイロの組合せ状態の説明図である。
【図3】図1におけるIII−III断面図である。
【図4】(a)は図1の使い捨てカイロを両肩及び首周りへ貼着するところを示す正面図であり、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 使い捨てカイロ
10 使い捨てカイロ本体
11 袋体
11a 上縁中央部
11d 袋体のセパレータを備えない側の面部
11e 袋体のセパレータ20を備える側の面部
12 発熱体
20 セパレータ
21 微粘着性のホットメルトの塗膜(易剥離性接着手段)
22 離型剤塗布膜(易剥離性接着手段)
23 離型剤塗布膜(易剥離性接着手段)
30 弱粘着剤塗膜(易剥離性接着手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体内に発熱体を封入し該袋体の一方の外面に粘着剤塗膜を有し該粘着剤塗膜により人体部位又は衣類へ貼着する使い捨てカイロ本体と、
シート材を半折しこの半折状態のシート材の一方の外面を前記粘着剤塗膜に重ねて前記袋体の一方の外面に貼着したセパレータと、
を備えてなることを特徴とする使い捨てカイロ。
【請求項2】
前記セパレータは、シート材を半折し重ね合せ面同士を剥離性接着手段で密着してなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の使い捨てカイロ。
【請求項3】
前記使い捨てカイロ本体は、両肩及び首周りに対応する長尺形状であり前記袋体の一方の外面の左右部分に前記粘着剤塗膜を有し、
前記セパレータは、前記粘着剤塗膜を覆って左右一対に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使い捨てカイロ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate