説明

使い捨て吸収性物品

【課題】吸収体を広い範囲で有効に使用することができる使い捨て吸収性物品を提供する。
【解決手段】尿パッド1は、表面シート20と、裏面シート30と、これらシート20,30の間に位置する第1の吸収体40とを含む。吸収体40は、中間域13の横方向Xにおける寸法が前後域11,12のそれよりも小さくされ、横方向X中央に位置する中央領域46と、その横方向X外側に位置し、中央領域46よりも剛性が低い低剛性両側領域47とを含む。吸収体40の中央領域46には、芯材41が実質的に存在しない複数の条溝43が形成される。吸収体40と裏面シート30との間には、横方向Xへ延びる複数の弾性体60が伸長状態で収縮可能に取り付けられる。弾性体60は、中間域13に配置され、吸収体40の両側縁の外側へ延出して延びて取り付けられ、吸収体40の横方向X全域においてその収縮力が作用する。条溝43の縦方向Y外側には、条溝が形成されない、すなわち、芯材41が存在する前後吸収部48,49が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨て吸収性物品に関し、より詳しくは、溝が形成された吸収体を有する使い捨て尿パッド、使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨ての吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面シートと、裏面シートと、これら表裏面シートの間に配置された吸収体とを有する吸収性物品は公知である。例えば、特許文献1には、吸収体に他の部分よりも厚さ方向の寸法が小さくされた肉薄部が形成された使い捨ておむつが開示されている。肉薄部は、吸収体の縦方向へ延びるとともに、横方向へ離間して複数形成される。吸収体の裏面シート側には、肉薄部を横断する方向へ収縮力を与える弾性部材が設けられる。肉薄部は、縦方向へ並ぶ前面部と中間部と後面部とに離間してそれぞれ設けられ、これら肉薄部が不連続とされる。弾性部材は、前面部と中間部との間であって、肉薄部が不連続な部分に設けられる。このように、弾性部材を設けることで、吸収体および裏面シートが横方向へ収縮してフロントギャザーが形成され、中間部が着用者の股間に挟まれたときに、体から離れる方向へのふくらみが発生しなくなり、着用者の股間にフィットし易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3558801号公報(JP3558801B)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1において、弾性部材は、肉薄部が不連続な部分に設けられるから、横方向における収縮が吸収体によって阻害されてしまう。また、体液は肉薄部によって形成された溝に沿って流れるが、不連続な部分によってその溝が中断されるから、体液がそれ以上縦方向外側へ流れることができない。したがって、中間部では吸収体の芯材に体液が吸収されるが、前面部および後面部の芯材では体液が吸収されず、芯材がほぼ未使用のまま廃棄される。このように特許文献1では、吸収体全体を有効に使用することができないという問題があった。
【0005】
この発明では、吸収体を広い範囲で有効に使用することができる使い捨て吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、縦方向および横方向を有し、肌対向面およびその反対側である非肌対向面と、前記縦方向へ連なる前後域および前記前後域の間に位置する中間域と、前記肌対向面に位置する表面シートと、前記非肌対向面に位置する裏面シートと、前記表裏面シートの間に位置する第1の吸収体と、前記第1の吸収体の前記縦方向へ延びる第1の条溝と、前記横方向へ収縮可能な弾性体とを含む使い捨て吸収性物品の改良にかかわる。
【0007】
この発明は、前記使い捨て吸収性物品において、前記第1の吸収体は、吸液性の芯材を有し、前記条溝は、前記芯材の実質的な非存在によって形成され、前記中間域から前記前後域に連続して前記縦方向へ延びるとともに、前記第1の吸収体の厚さ方向へ延びる一対の側壁面と、前記側壁面の間に位置するとともに、前記裏面シートに沿って形成された底面とを有し、前記条溝の前記縦方向外側には、前記芯材がほぼ全域に存在する前後吸収部が形成され、前記弾性体は、前記中間域に位置し前記条溝を横切ってこれに重なるとともに、その両端部が前記条溝の前記横方向外側へ延出して取り付けられ、前記表面シートは、前記条溝では、その前記側壁面および前記底面に沿って配置され、前記弾性体の収縮時において、前記条溝の前記側壁面が互いに離間距離を小さくして接近することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の特にそのひとつ以上の実施態様によれば、第1の吸収体に縦方向へ延びる条溝を形成するとともに、この条溝が吸収性物品の中間域から前後域に連続して延びるので、中間域に排泄された尿などの体液は、条溝に沿って前後域まで移行することができる。したがって、吸収体を広い範囲で有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】使い捨て吸収性物品の一実施形態である使い捨て尿パッドの斜視図。
【図2】展開した尿パッドの肌対向面から見た平面図。
【図3】図2のIII-III線断面図。
【図4】図1のIV−IV線断面図。
【図5】他の実施形態の尿パッドの平面図。
【図6】他の実施形態の尿パッドの一部切欠平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜4を参照すると、尿パッド1は、縦方向Yおよび横方向Xを有し、前域11および後域12、これら前後域11,12間に位置する中間域13と、横方向Xへ延びる前後端縁14,15と、縦方向Yへ延びる両側縁16とを有する。図2,3において、各弾性体は、その収縮力に抗して伸長させた状態で示す。
【0011】
尿パッド1は、横方向Xにおける寸法を二等分する仮想縦中心線2−2と、縦方向Yにおける寸法を二等分する仮想横中心線3−3とを有し、仮想縦中心線2−2においてほぼ対称にされる。
【0012】
尿パッド1は、肌対向面に位置する透液性かつ親水性の表面シート20と、その反対側である非肌対向面に位置する難透液性または不透液性の裏面シート30と、これらシート20,30の間に位置する第1の吸収体40とを含む。表面シート20には、縦方向Yへ延びるとともに、横方向Xへ離間する一対のバリアカフシート50が取り付けられる。
表裏面シート20,30は、ほぼ同形同大とされるとともに、吸収体40よりもその面積が大きくされ、吸収体40の縦方向Yおよび横方向Xからそれぞれ延出し、延出した表裏面シート20,30が互いに図示しないホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって接着される。
【0013】
表面シート20としては、例えば、質量約15〜35g/m、好ましくは約18〜23g/mのスパンボンド繊維不織布またはポイントボンド繊維不織布を用いることができる。裏面シート30としては、例えば、質量約10〜30g/mのスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(以下SMSとする)繊維不織布、スパンボンド繊維不織布、または、これら繊維不織布の少なくともひとつとプラスチックフィルムとのラミネートを用いることができる。
【0014】
バリアカフシート50としては、例えば、質量約10〜30g/mのSMS繊維不織布を用いることができる。バリアカフシート50は、前端縁14および後端縁15間において縦方向Yへ延びるとともに、横方向Xへ延びる前後端縁51,52と、縦方向Yへ延びるとともに、表面シート20に接合される近位縁部53と、表面シート20から離間可能な遠位縁部54とを有する。遠位縁部54には、バリアカフシート50によってスリーブが形成され、スリーブ内に縦方向Yへ延びるバリアカフ弾性体55が伸長状態で収縮可能に取り付けられる。バリアカフ弾性体55の収縮力によって遠位縁部54が表面シート20から起立するように離間して、着用者の鼠蹊部近傍に密着し、体液の漏れを防止する。
【0015】
吸収体40は、中間域13から前後域11,12へと延出し、比較的広範囲で体液を吸収することができる。吸収体40は、吸液性の芯材41と、芯材41を覆うティッシュペーパ等の液拡散性の被覆シート42とによって形成される。芯材41として木材フラッフパルプ、高吸収性ポリマー粒子、またはこれらの混合物等を用いることができる。芯材41と被覆シート42とは、図示しない間欠的に塗布されたホットメルト接着剤等の公知の接合手段を用いて互いに接合される。
【0016】
吸収体40は、中間域13の横方向Xにおける寸法が前後域11,12のそれよりも小さくされる。中間域13は、仮想横中心線3−3上に位置するとともに、仮想横中心線3−3近傍から前域11へと延びて、尿パッド1の前方に偏倚されている。吸収体40は、横方向X中央に位置する中央領域46と、その横方向X外側に位置し、中央領域46よりも剛性が低い低剛性両側領域47とを含む。低剛性両側領域47は、吸収体40の両側縁に沿って縦方向Yへ延びる。この実施形態では、低剛性両側領域47は、中央領域46よりも芯材41の質量が小さくされて、厚さ方向における寸法が小さくされる。具体的には、中央領域46の芯材41の質量は約300〜700g/m、厚さ方向における寸法が約5〜15mmであり、低剛性両側領域47の質量は約150〜400g/m、厚さ方向における寸法が約1〜10mmとすることができる。低剛性両側領域47は、前域11、中間域13、後域12において縦方向Yへ連なって形成される。
【0017】
<厚さ方向における寸法の測定方法>
吸収体40の厚さ方向における寸法は、ピーコック社製の厚さ測定器(バネ無し)を用い測定した。具体的には、測定台の上に吸収体40を載せ、その上から、直径50mmの測定端子を載せ、端子の自重で吸収体40を挟み、測定台と測定端子との離間寸法を測定し、吸収体の厚さとした。測定端子の質量は、約2.3〜3.6gf/cmであり、この範囲において、吸収体40に荷重がかけられた状態で測定される。
【0018】
吸収体40の中央領域46には、芯材41が存在しない、または実質的に存在しない複数の第1の条溝43が形成される。芯材が実質的に存在しないとは、僅かに存在するが吸収体40の吸収能力にほとんど影響を与えないものであって実質的には非存在である場合をいう。条溝43は、縦方向Yへ延びるとともに、横方向Xへ離間して並んでいる。条溝43は、吸収体40によって形成されるとともに厚さ方向へ延びる一対の側壁面44と、これら側壁面44の間に位置する底面45とを有する。
【0019】
吸収体40と裏面シート30との間には、横方向Xへ延びる複数の弾性体60が伸長状態で収縮可能に取り付けられる。弾性体60は、縦方向Yへ離間して取り付けられるとともに、吸収体40のほぼ中間域13に配置される。弾性体60は、吸収体40の両側縁の外側へ延出して延びて取り付けられ、吸収体40の横方向X全域においてその収縮力が作用する。弾性体60としては、太さ約300〜940dtex、好ましくは約300〜600dtexのストランド状またはストリング状のものを用いることができ、伸長倍率を約2.0〜3.0として取り付けることができる。
【0020】
図2を参照すると、弾性体60を伸長させた状態において、尿パッド1の中間域13の横方向Xにおける寸法は約200mmとされる。条溝43の横方向Xにおける寸法は、約5〜20mm、好ましくは約8〜15mmとされる。条溝43の縦方向Yにおける寸法は、約60〜600mm、好ましくは約80〜300mmとされる。
尿パッド1の縦方向Yにおける寸法は、約400〜800mmであって、条溝43の縦方向Yにおける寸法は、尿パッド1のそれの約15〜75%とされる。このような尿パッド1において、条溝43の縦方向Y外側には、条溝が形成されない、すなわち、芯材41が存在する前後吸収部48,49が形成される。後吸収部49の縦方向Yにおける寸法は、前吸収部48のそれよりも大きくされる。
【0021】
条溝43は、例えば、芯材41を被覆シート42で覆った後に、カッター等で芯材41および被覆シート42を同時に切除することによって形成することもできる。この場合には、条溝43において芯材41および被覆シート42のいずれも非存在とされる。また、条溝43の形成部分に芯材41を積層させず、これを被覆シート42で覆うことによって形成することもできる。この場合には、条溝43が形成された部分に被覆シート42が存在するとともに、条溝43に僅かに芯材41が残存することもある。
【0022】
表裏面シート20,30は、吸収体40の縦方向Yおよび横方向Xの外側では、互いに対向して直接接着されるとともに、条溝43においても互いに対向し、ホットメルト接着剤等の公知の手段によって接着される。ただし、条溝43に被覆シート42が存在する場合には、被覆シート42を介して表裏面シート20,30が互いに接着され、被覆シート42が存在しない場合には、表裏面シート20,30が直接接着される。このような尿パッド1において、条溝43での表裏面シート20,30の接着を強固なものとするために、ロール等で条溝43を加圧することができる。また、表面シート20と吸収体40とは、少なくともいずれか一方に塗布されたホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって接着されるが、接着剤は、縦方向Yおよび横方向Xにおいて間欠的に塗布することができる。この場合において、条溝43における表面シート20の接着を強固にするために、条溝43に対応する位置において、縦方向Yへ連続して接着剤を塗布することもできる。接着剤としては、疎水性または濡れ強度が高いものを用いることが好ましい。
【0023】
条溝43の横方向Xにおける寸法は、吸収体40の中央領域46の厚さ寸法よりも大きくすることが好ましい。このように条溝43の寸法を大きくすることによって、条溝43の底面45における表裏面シート20,30の接着面積を広くすることができ、これらシートを確実に接着することができるからである。
【0024】
図4を参照すると、上記のような尿パッド1が弾性体60の収縮力によって横方向Xへ収縮すると、これに重なる吸収体40が条溝43の対向する側壁面44の横方向Xにおける離間距離を小さくして接近する。弾性体60は、中間域13に取り付けられるから、より一層中間域13の横方向Xにおける寸法が小さくされる。このように横方向Xにおける寸法が小さくされた中間域13を着用者の股間部に対応させて着用することによって、尿パッド1を着用者に密着させることができ、着用者が動いたりした場合であっても、尿パッド1がずれるのを防止することができる。図4に示した尿パッド1の中間域13の横方向Xにおける寸法は、約130〜180mmとすることができる。
【0025】
弾性体60が収縮し、条溝43の側壁面44の離間距離が小さくされ、その一部では、側壁面44に位置する表面シート20が互いに接触する。このように、側壁面44が互いに接触することによって、吸収体40の吸収面に位置する表面シート20が平面的に着用者の肌に接触する。したがって、表面シート20の着用者に対する刺激を低減することができる。弾性体60の収縮力が大きい場合には、条溝43間に位置する芯材41までもその収縮力によって変形する可能性がある。また、弾性体の収縮力が小さい場合には、条溝43が十分に縮められずに、表面シート20が平面的に着用者の肌に接触することができない。吸収体40の剛性と弾性体60の収縮力との関係において適宜、弾性体60の太さおよび伸長倍率を変更することができる。
【0026】
尿パッド1は、例えば、寝たきりの高齢者等に好適に用いることができる。寝たきりの着用者は、褥瘡の予防のために、仰向け姿勢と横向き姿勢とを交互に繰り返すことが多い。特に、横向き姿勢になった場合には、排泄された尿が尿パッド1の横方向Xへ向かって流れようとする。しかし、条溝43は、縦方向Yにおいて連続して形成されるから、横方向Xへ向かって流れようとする尿を、条溝43を伝って縦方向Yへ拡散させることができる。縦方向Yへ拡散された尿は、拡散されながら横方向Xへとさらに拡散し吸収されるか、条溝43の縦方向Y外側に位置する前後吸収部48,49に吸収される。条溝43が形成されない場合には、尿は、中間域13において横方向Xへ流れるから、前後域11,12には移行されない。したがって、前後域11,12に位置する吸収体40の芯材41がほとんど未使用の状態となってしまう。また、中間域13のみの芯材で尿を吸収するので、吸収しきれなかった尿が漏れる可能性がある。これに対して、この実施形態の尿パッド1では、条溝43が前後域11,12にまで延びるので、そこに位置する芯材41を有効に使用することができ、尿の漏れを防止することもできる。
【0027】
着用者が仰向け姿勢の場合には、尿が後域12へと流れやすいが、後域12には、後吸収部49が形成されるから、尿を確実に吸収することができ、後端縁15側へと漏れるのを防止することができる。また、後吸収部49を前吸収部48よりも広くしているので、後域12に流れた尿をより一層確実に吸収することができる。
【0028】
弾性体60は中間域13に取り付けられ、条溝43は中間域13を超えて縦方向Yへ延びる。したがって、中間域13の外方に位置する前後域11,12にまで条溝43に沿って排泄物を誘導することができ、かつ、弾性体60の収縮力によって、中間域13を横方向Xへと円滑に収縮させることができる。仮に、条溝43が中間域13にのみ形成されると、その外側に位置する芯材等によって、横方向Xの収縮が阻害され、中間域13が十分に収縮されないおそれがある。また、弾性体60の収縮時において、中間域13の条溝43は、側壁面44に位置する表面シート20が互いに一部接触するか、または、接触するほどに接近している。前後域11,12の条溝43の側壁面44は、中間域13のそれよりも横方向Xにおける離間寸法が大きくされる。したがって、前後域11,12に流れた尿は、条溝43によって隣接する芯材41への移行が阻害され、尿が横方向Xへと移動しにくくすることができる。また、前後域11,12に前後吸収部48,49を形成することによって、吸収体40の縦方向Y外側における剛性を確保することができ、吸収体40全体がよれるのを防止し、着用者の肌への密着性を維持することができる。
【0029】
吸収体40の両側縁には、低剛性両側領域47が形成されるから、中央領域46との間に剛性差が生じる。吸収体40では、剛性差が生じた部分、すなわち、中央領域46と低剛性両側領域47との境界において屈曲し易くなる。また、弾性体60は、低剛性両側領域47の横方向X外側にまで延びているから、特に、弾性体60が取り付けられた領域においては、低剛性両側領域47が屈曲しやすい。表面シート20には、バリアカフシート50が取り付けられるが、このバリアカフシート50の遠位縁部54は、低剛性両側領域47に重なるように配置される。遠位縁部54にはバリアカフ弾性体55が取り付けられるから、バリアカフ弾性体55の収縮力によって、低剛性両側領域47は、中央領域46との境界から肌対向面に向かって屈曲する。したがって、吸収体40は、より一層着用者の肌に密着し易くなる。この実施形態において、低剛性両側領域47では、中央領域46よりも芯材を減量しているが、主に尿を吸収するのは中央領域46であるから、その両側で芯材を減量しても、吸収体40全体の吸収量に大きな影響を与えることがなく、尿漏れ等の誘因となることはない。
【0030】
弾性体60は、裏面シート30と吸収体40との間に取り付けられる。このような構成にすることによって、尿パッド1を製造する際に、弾性体60が製造過程で収縮することなく、すなわち、伸長状態を維持したまま取り付けることができる。具体的には、裏面シート30を回転ドラムに載置して搬送し、この回転ドラム上の裏面シート30に、伸長状態の弾性体60を配置するとともに、弾性体60の伸長状態を維持したまま、さらに吸収体40を積層させることができる。したがって、弾性体60を回転ドラム上で伸長させたまま、裏面シート30と吸収体40とを安定して積層および接合することができる。
【0031】
この実施形態において、複数の条溝43の縦方向Yにおける寸法がほぼ等しくされているが、これが異なるものであってもよい。また、条溝43は、1本であってもよいし、2本以上であってもよい。
吸収体40は、両側縁近傍に低剛性両側領域47が形成されるが、必ずしもこれが形成されなくてもよい。また、弾性体60として、ストランド状またはストリング状のものを用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、伸縮性を有する繊維不織布等を用いることもできる。
【0032】
この実施形態において、低剛性両側領域47は、芯材41の両側縁近傍に形成される。また、芯材41の両側縁とこれに隣接する条溝43との間には、質量が大きい中央領域46と低剛性両側領域47との両方が存在し、これらが隣接される。これに対して、芯材41の両側縁とこれに隣接する条溝43との間においては、低剛性両側領域47のみが存在するようにすることもできる。この場合には、条溝43を挟んで低剛性両側領域47の横方向X内側に中央領域46が存在する。条溝43を挟んで中央領域46と低剛性両側領域47とが分離されることによって、これら領域46,47の間の剛性差を大きくすることができ、低剛性両側領域47は、より一層、肌対向面へ起立するように屈曲し易くなる。
【0033】
上記のような尿パッド1において、条溝43に沿って尿パッド1を折り畳むことができる。具体的には、尿パッド1の両側縁16を横方向X内方に位置させるように条溝43に沿って折り畳むとともに、折り畳んだ部分では表面シート20を互いに対向させる。このように折り畳むことによって条溝43に沿って、縦方向Yに折曲線が形成される。特に、折り畳まれた尿パッドを複数積層させて圧縮しパッケージした場合には、条溝43の折曲線に沿って折癖がつき、これを着用する際には、芯材41が条溝43から着用者に向かって屈曲し易くなる。横方向Xの最も外側の条溝43で折り畳むと、より一層、芯材41の両側縁近傍を屈曲し易くすることができる。
【0034】
図5は、この発明の他の例を示したものであり、縦方向Yへ延びる第1の条溝43のほかに、吸収体40の後吸収部49において、横方向Xへ延びる第2の条溝70が形成されることを特徴とする。第2の条溝70を形成することによって後吸収部49に吸収された尿が、それ以上縦方向Y後方へと移動しないようにすることができる。したがって、尿が後端縁15から漏れるのをより一層防止することができる。第2の条溝70は、第1の条溝43と同様の方法で形成することができる。また、第2の条溝70においては、芯材41が存在しない場合、存在する場合、または、僅かに存在する場合のいずれであってもよい。芯材41が存在する場合には、他の領域に比べて芯材41の質量が小さくされているものであってもよいし、芯材41の質量は他の領域と同程度であって、圧縮等によって溝が形成されるようなものであってもよい。
【0035】
図6は、この発明のさらに他の例を示したものであり、第1の吸収体40の後吸収部49において、さらに第2の吸収体71が配置されたものである。第2の吸収体71としては、例えば、高吸収性ポリマー粒子を用いた芯材72を、被覆シート73で覆い、シート状に形成されたものを用いることができる。このような第2の吸収体71は、第1の吸収体40と表面シート20との間に配置することができる。芯材72は、縦方向Yに分断して複数配置され、その一部においては横方向Xにも分断される。また、芯材72の一部は条溝43に重なって位置し、他は吸収体40の後吸収部49に重なって位置する。第2の吸収体71を備えることによって、尿が溜まりやすい後吸収部49において尿の吸収量・保持量を増大させることができ、より一層尿漏れを防ぐことができる。さらに芯材72として水不溶性で自質量の10倍以上の吸収能を有する高吸収性ポリマー粒子を用いることによって、第1の吸収体40に吸収された尿が、着用者の肌に接触し、肌が濡れるのを防止することができる。芯材72は、縦方向Yおよび横方向Xに分断して配置することによって、これらが水分を吸収した際に膨張可能とされる。芯材72の形状や位置等については適宜変更可能である。
【0036】
以上に記載したこの発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
この発明は、以下の使い捨て吸収性物品1の改良にかかわる。吸収性物品1は、縦方向Yおよび横方向Xを有し、肌対向面およびその反対側である非肌対向面と、前記縦方向Yへ連なる前後域11,12および前記前後域11,12の間に位置する中間域13と、前記肌対向面に位置する表面シート20と、前記非肌対向面に位置する裏面シート30と、前記表裏面シート20,30の間に位置する第1の吸収体40と、前記第1の吸収体40の前記縦方向Yへ延びる第1の条溝43と、前記横方向Xへ収縮可能な弾性体60とを含む。
【0037】
この発明は、上記使い捨て吸収性物品1において、以下の点を特徴とする。
前記第1の吸収体40は、吸液性の芯材41を有する。
前記条溝43は、前記芯材41の実質的な非存在によって形成され、前記中間域13から前記前後域11,12に連続して前記縦方向Yへ延びるとともに、前記第1の吸収体40の厚さ方向へ延びる一対の側壁面44と、前記側壁面44の間に位置するとともに、前記裏面シート30に沿って形成された底面45とを有し、前記条溝43の前記縦方向Y外側には、前記芯材41がほぼ全域に存在する前後吸収部48,49が形成される。
前記弾性体60は、前記中間域13に位置し前記条溝43を横切ってこれに重なるとともに、その両端部が前記条溝43の前記横方向X外側へ延出して取り付けられる。
前記表面シート20は、前記条溝43では、その前記側壁面44および前記底面45に沿って配置される。
前記弾性体60の収縮時において、前記条溝43の前記側壁面44が互いに離間距離を小さくして接近する。
【0038】
上記の発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。
(1)前記条溝43は、前記横方向Xへ離間して複数形成される。
(2)前記第1の吸収体40は、前記横方向Xの中央に位置する中央領域46と、前記中央領域46の前記横方向外側に位置し、前記中央領域46よりも剛性が低い低剛性両側領域47とを有する。
(3)前記低剛性両側領域47は、前記第1の吸収体40の芯材41の質量が前記中央領域46よりも小さくされる。
(4)前記弾性体60は、前記低剛性両側領域47に重なって取り付けられる。
(5)前記表面シート20には、前記縦方向Yへ延びるとともに、前記横方向Xへ離間するバリアカフシート50が一対形成され、前記バリアカフシート50は、前記表面シート20に接合された近位縁部53と、前記表面シート20から離間可能で前記縦方向Yへ伸縮可能な遠位縁部54とを含む。
(6)前記第1の吸収体40は、前記第1の条溝43とは重ならない位置において前記横方向Xへ延びる第2の条溝70をさらに有する。
(7)前記第1の吸収体40と前記表面シート20との間には、第2の吸収体71がさらに配置される。
(8)前記第2の吸収体71は、高吸収性ポリマー粒子を含む。
【0039】
使い捨て吸収性物品の一例である使い捨て尿パッド1を構成する各構成部材には、この明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられる、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、この発明の明細書において、用語「第1」および「第2」は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられる。
【符号の説明】
【0040】
1 尿パッド(使い捨て吸収性物品)
11 前域
12 後域
13 中間域
20 表面シート
30 裏面シート
40 第1の吸収体
43 第1の条溝
44 側壁面
45 底面
46 中央領域
47 低剛性両側領域
48 前吸収部
49 後吸収部
60 弾性体
70 第2の条溝
71 第2の吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向を有し、肌対向面およびその反対側である非肌対向面と、前記縦方向へ連なる前後域および前記前後域の間に位置する中間域と、前記肌対向面に位置する表面シートと、前記非肌対向面に位置する裏面シートと、前記表裏面シートの間に位置する第1の吸収体と、前記第1の吸収体の前記縦方向へ延びる第1の条溝と、前記横方向へ収縮可能な弾性体とを含む使い捨て吸収性物品において、
前記第1の吸収体は、吸液性の芯材を有し、
前記条溝は、前記芯材の実質的な非存在によって形成され、前記中間域から前記前後域に連続して前記縦方向へ延びるとともに、前記第1の吸収体の厚さ方向へ延びる一対の側壁面と、前記側壁面の間に位置するとともに、前記裏面シートに沿って形成された底面とを有し、前記条溝の前記縦方向外側には、前記芯材がほぼ全域に存在する前後吸収部が形成され、
前記弾性体は、前記中間域に位置し前記条溝を横切ってこれに重なるとともに、その両端部が前記条溝の前記横方向外側へ延出して取り付けられ、
前記表面シートは、前記条溝では、その前記側壁面および前記底面に沿って配置され、
前記弾性体の収縮時において、前記条溝の前記側壁面が互いに離間距離を小さくして接近することを特徴とする前記吸収性物品。
【請求項2】
前記条溝は、前記横方向へ離間して複数形成される請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の吸収体は、前記横方向の中央に位置する中央領域と、前記中央領域の前記横方向外側へ位置し、前記中央領域よりも剛性が低い低剛性両側領域とを有する請求項1または2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記低剛性両側領域は、前記第1の吸収体の芯材の質量が前記中央領域よりも小さくされる請求項3記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
前記弾性体は、前記低剛性両側領域に重なって取り付けられる請求項3または4記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記表面シートには、前記縦方向へ延びるとともに、前記横方向へ離間するバリアカフシートが一対形成され、前記バリアカフシートは、前記表面シートに接合された近位縁部と、前記表面シートから離間可能で前記縦方向へ伸縮可能な遠位縁部とを含む請求項1〜5のいずれかに記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記第1の吸収体は、前記第1の条溝とは重ならない位置において前記横方向へ延びる第2の条溝をさらに有する請求項1〜6のいずれかに記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項8】
前記第1の吸収体と前記表面シートとの間には、第2の吸収体がさらに配置される請求項1〜7のいずれかに記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項9】
前記第2の吸収体は、高吸収性ポリマー粒子を含む請求項8記載の使い捨て吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−94278(P2013−94278A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237795(P2011−237795)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】