説明

使い捨て滅菌済み流体レセプタクルサンプリング装置

【課題】使い捨ての廃棄性を推進するようその構造が十分に安価であり、流体レセプタクルにおいて一般的に見られる標準工業ポートにおいて使用することが可能であり、1回の滅菌周期および/または排気される前に幾つかの良好な滅菌された流体試料を抽出することを可能にする流体サンプリング装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ポート挿入部と、複数の可撓性導管と、複数の試料用容器とを有する流体サンプリング装置を提供する。ポート挿入部は、複数のシャフトが中を通るボディ、および、流体が中を流れることを可能にする上記シャフトのいずれかを個別的に開閉する試料ゲート手段を含む。可撓性導管は、細長い部材と同じ数だけ設けられ、各可撓性導管は個々のシャフトに接続されるか流体連通される。試料用容器は、導管と同じ数だけ設けられ、各試料用容器はシャフトに接続される側とは反対側で個々の導管に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に流体サンプリング装置に関し、特に、「一回使用の、廃棄性」に適した構造を有する一方で良好な無菌サンプリングを可能にする流体サンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理の進行をモニタリングするために「閉じられた」流体レセプタクル内で複雑なおよび/または注意を要する流体処理を行うとき、レセプタクルを「開ける」際に起こり得るような処理の妨げを生ずることなく流体の試料を抽出し分析することが望まれることが多い。例えば、生化学製品(例えば、生物薬剤)の研究および/または製造において、生化学的流体は無菌で「閉じられた」発酵タンク、バイオリアクタ、または同様の流体レセプタクルにしばしば含まれ、このとき流体は様々な変化する化学的且つ環境的条件下で比較的長時間にわたって処理される。処理の過程で断続的に流体の試料を抽出し分析することで処理の進行をよりよく理解することができ、必要であれば、その結果を変えるために予防的措置がとられる。
【0003】
同様のことが、流体が導管あるいはパイプまたは他の同様の流体レセプタクルを通って導かれるときにも生ずる。この流体のサンプリングは、しばしば困難である。なぜなら、多くの工業システムにおいて、特に滅菌状態で流体の試料を抽出することを可能にするよう上記レセプタクルを簡単に開け、または、分解することができないためである。
【0004】
幾つかの流体サンプリング技法は公知であるが、ある技術的問題について述べる。例えば、ある一体化した流体サンプリング取付具は、生物薬学的用途において困難な蒸気滅菌および洗浄を使用前にしばしば必要とするステンレス鋼製のバルブおよびパイピングを有する(例えば、1999年9月7日にL.D.Witteらに発行された米国特許第5,948,998号明細書参照)。他の流体サンプリング装置は、例えば、ホスト流体レセプタクルに特別に適合されるポートの設置を必要とすることにより既存の流体処理システムと一体化することが困難である(例えば、2000年3月7日にNils Arthunらに発行された米国特許第6,032,543号明細書参照)。他の装置は、標準工業ポートにおける使用に適合されるものの、全て正確に配置されるバルブ、入口、出口、シール部、針、および他の構成要素を有するが一回の滅菌周期当たり単一の無菌試料だけが可能な複雑且つ高価な機器である(例えば、1987年6月2日にPio Meyerに発行された米国特許第4,669,312号明細書参照)。最後に、上述した多くの場合のように流体サンプリング装置の大半は皮下注射器を用いて隔壁を穿孔することをそれぞれの動作において必要とする(例えば、1984年1月にK.Ottungに発行された米国特許第4,423,641号明細書;1958年7月29日にF.W.Guibertに発行された米国特許第2,844,964号明細書参照)。
【特許文献1】米国特許第5,948,998号明細書
【特許文献2】米国特許第6,032,543号明細書
【特許文献3】米国特許第4,669,312号明細書
【特許文献4】米国特許第4,423,641号明細書
【特許文献5】米国特許第2,844,964号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記観点から、使い捨ての廃棄性を推進するようその製造が十分に安価であり、流体レセプタクルにおいて一般的に見られる標準工業ポートにおいて使用することが可能であり、1回の滅菌周期毎におよび/または排気される前に幾つかの良好な滅菌された流体試料を抽出することを可能にする流体サンプリング装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポート挿入部と、複数の可撓性導管と、複数の試料用容器とを有する流体サンプリング装置を提供する。ポート挿入部は、複数のシャフトを中に含むボディと、中を通る流体の流れを制御するために上記シャフトのいずれかを個別に開閉する試料ゲート手段とを有する。試料ゲート手段は、「開」位置および「閉」位置の間で移動可能な単一のまたは複数の部材を有し、流体は上記「開」位置において上記シャフトの一つを通って上記ボディを流れることができ、上記「閉」位置では流れることができない。各シャフトは、可撓性導管と流体連通しており、可撓性導管は、試料用容器と流体連通している。試料用容器は柔軟な袋であることが好ましく、導管は可撓性管であることが好ましい。
【0007】
主な実施形態では、ポート挿入部は、複数の剛性の細長い部材が中を通るよう配置されるモノリシックボディとして構成され、上記部材は上記「閉」位置と「開」位置の間で線形移動可能である。ポート挿入部が流体レセプタクルに設けられる適切なポートに取り付けられると、細長い部材が「開」位置に移動され、それによりレセプタクル内に含まれる流体が細長い部材に流れ、可撓性導管を通って最終的に試料用容器に流れる。所望の量の流体が試料用容器で収集されると、細長い部材は「閉」位置に移動されロックされ、可撓性導管が切断され(好ましくは、無菌で)、試料用容器が更なる分析のために取り除かれる。残りの細長い部材を用いることで処理は繰り返される。全ての細長い部材が使い果たされると、ポート挿入部は完全に使用済みとなり、流体レセプタクルにおける流体処理が終了した後に簡単に除去され置き換えられる。
【0008】
上述の観点から、本発明の主な目的は流体サンプリング装置を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、流体レセプタクルから流体の試料を幾つか抽出することを可能にする流体サンプリング装置を提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、流体レセプタクルから流体の試料を幾つか抽出することを可能にし、上記抽出が実質的に滅菌された状態で行われ、試料相互間の二次汚染が実質的に阻止される流体サンプリング装置を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、流体レセプタクルから流体の試料を幾つか抽出することを可能にする流体サンプリング装置を提供することであり、流体サンプリング装置はいわゆる「一回使用、廃棄性」を推進するよう構成されることができる。
【0012】
本発明の別の目的は、ポート挿入部と、複数の可撓性導管と、複数の試料用容器(好ましくは、柔軟な袋のような試料用容器)とを有する流体サンプリング装置を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、流体サンプリング装置を形成する上で有用なポート挿入部を提供することであり、上記ポート挿入部は最小限の数の比較的安価な構成要素で機能性を最大限にするため上記「一回使用、廃棄性」を推進する。
【0014】
本発明の更なる目的は、流体サンプリング装置の組み立てられた、部分的に組み立てられた、または未組み立ての構成要素を滅菌済みパッケージで含むキットを提供することであり、このとき全ての含まれる構成要素は滅菌されている。
【0015】
本発明のこれらおよび他の目的は、添付の図面とともに本願の詳細な説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に例示するように、本発明の流体サンプリング装置100は、一般的に、ポート挿入部10と、複数の可撓性導管120と、複数の試料用容器130とを有する。ポート挿入部10がホスト流体レセプタクル(例えば、バイオリアクタ管またはパイプ)に「差し込まれ」ると、流体の試料は、ホスト内で行われているどの現在進行中の流体処理も実質的に妨げたり、破壊したりまたは別な方法で影響を与えたりすることなくホスト流体レセプタクルから順次除去され、個々の試料用容器に収集される。この流体処理が完了すると、使用済み(または部分的に使用済み)の流体サンプリング100が除去され、更なる上記流体処理を行う前に新たなユニットと比較的簡単に置き換えることが可能になる。
【0017】
ポート挿入部10は、ホスト流体レセプタクルから上記試料容器130の一つに流体が流れるための道をそれぞれ提供する複数のシャフトを含む。ポート挿入部10は、さらに、中を通る流体の流れを制御するために上記シャフトを個別的に開閉する試料ゲート手段を含む。試料ゲート手段は、「開」位置と「閉」位置との間で移動可能な単一のまたは複数の部材を有し、流体は「開」位置では上記ボディを通って上記シャフトの一つを通ることができ、「閉」位置では通ることができない。個々の細長い部材それぞれは可撓性導管に接続(さもなければ流体連通)され、可撓性導管は試料用容器に接続(さもなければ流体連通)される。
【0018】
動作において、流体で満たされる前にホスト流体レセプタクルは処理のために洗浄され、滅菌され、または別な方法で準備される。滅菌済みの流体サンプリング装置は、ホストに設けられる既存のポートに取り付けられ、蒸気「定位置滅菌」される。流体レセプタクルは、流体で満たされ、流体処理が開始される。
【0019】
流体の処理中、分析のために試料が望まれると、試料ゲート手段が「開」位置に移動され、流体がホストレセプタクルから活性シャフトを通り、さらに、取り付けられた流体導管を通って最終的に試料用容器に流れる。所望の量の流体が収集されると、試料ゲート手段が「閉」位置に移動される。可撓性導管が次に二箇所でクランプオフされ、2つのクランプの間で切断されることで捕捉された試料が分析のために除去される。導管を同時に切断し密閉するために熱ナイフ、炎などが用いられることが好ましい。
【0020】
流体処理が続けられるに従って更なる試料が望まれると、残りの別の未使用シャフトが活性化される。これは、全てのシャフトが使用済みとなるか流体処理が完了するまで続けられる。流体処理の終わりでは、流体サンプリング装置は除去され、適当な工業的措置にしたがって処理される。ホストレセプタクルが別の処理動作のために再び必要となると、新たなサンプリング装置が取り付けられる。
【0021】
流体サンプリング装置100は、「一回使用」アイテムとして形成されることが好ましい。これに関して、所望の(または所定の)数の流体サンプリング動作の終了時に装置100が除去(例えば、ある環境的に規制された物質のサンプリングの後法律でしばしば必要とされる)または部分的にリサイクル(例えば、非規制物質を施した後)される点で「一回使用」である。
【0022】
幾つかの様々な構造に左右されるが、ポート挿入部の好ましい実施例は図2に示される。ポート挿入部10は、モノリシックボディ20および複数の細長い部材30を中に有する。好ましくはモノリシックエラストマー材料よりなるボディ20は第1の開端24を第2の開端22に接続するシャフト26を中に含む。ボディは、コルク、プラグまたはストッパのようにホストレセプタクルポート5内に略水密式に嵌合され、第1の開端24が流体レセプタクル3の内側に面し、第2の開端22が流体レセプタクル3の外側に面すように成形される。
【0023】
材料および方法に関して、ポート挿入部10のボディ20は、例えば、周知の射出成形または同様の処理によってポリマー材料からモノリシック構造に(即ち、一つの、一様な、単一の、未組立部として)一般的に形成される。
【0024】
好適なポリマー材料の例は、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、PTFE樹脂および他のフルオロポリマー、アクリルおよびメタクリル樹脂および共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ABSおよびその混和物並びに混合物、ポリウレタン、熱硬化性ポリマー、ポリオレフィン(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、および超高分子量ポリエチレンおよびその共重合体)、ポリプロピレンおよびその共重合体、および、メタロセン生成ポリオレフィンを含むがこれらに制限されない。
【0025】
ボディ20は、その場での蒸気滅菌の過程で直面する可能性のある状態を考慮して形成されるべきである。この滅菌の温度および圧力はそれぞれ典型的には約121℃で大気圧より1バール高い。最大で142℃および3バールまたはそれ以上の温度および圧力の使用は珍しくはない。
【0026】
ホストレセプタクルへの流体サンプリング装置の簡単な取り付けを提供するために、ポート挿入部は、形状が略円筒形で、外径が約0.985インチ(2.5cm)であるべきである。生物薬学分野では、このような構造により、更なる特別に適合された工学技術を要することなく、上述のような寸法を有するポート(例えば、いわゆる「Ingoldポート」)を既に含み、現在プローブまたは他のセンサに使用されている幾つかの市販のタイプのバイオリアクタに流体サンプリング装置10を取り付けることが可能となる。
【0027】
細長い部材30それぞれはモノリシックで剛性であり、前部30および後部30を有する。それらは前部30が第1の開端24に近接し、後部30が第2の開端22に近接するように上記シャフト26内に略水密式に嵌合されるよう成形される。細長い部材30それぞれは閉位置Pから開位置Pまで上記シャフト26内で移動可能であり、上記ポート挿入部10を通る上記流体レセプタクルからの流体の排出は細長い部材30が閉位置Pを占有するとき妨げられ、細長い部材30が開位置Pを占有するとき可能となる。
【0028】
所望の実施形態では、1.600インチ(4.064cm)と等しいまたは僅かに大きい長さをそれぞれ有する4つの細長い部材がポート挿入部10に設けられる。図2に示すように、細長い部材30は前部30から後部30の略全長にわたって延び、部材の両端にある開口部34および32に達する流路を含む中空の管として構成されることが好ましい。前端30にある開口部34は「被覆されていない」またはさもなければ細長い部材がその「開」位置Pに移動されたときだけ流体にアクセスすることができるよう形成される。
【0029】
ポート挿入部10は、使用中にポートに出入りすることを防止するためにホストポートにぴったりと嵌合するよう構成されているが、更なる機械的制限が非常に望ましい。図2に示すように、これは上記カラー40がポート5に螺合されるときに、ポート挿入部に設けられる環状のリップ部45と係合し保持するねじ込みカラー40によって実現される。クランプ、ねじ、ボルト、または合わせ連結部のような他の機械的制限が技術において周知である。機械的制限は、使用済みの装置の簡単な取り外しおよび除去を可能にする一時的な機械的装置であることが好ましい。
【0030】
複数の細長い部材を有する試料ゲート手段の代替例として、本発明は、ポート挿入部に設けられる各シャフトを単独で選択的に且つ個別的に「開ける」および「閉じる」よう機能する単一の移動可能部材を有するポート挿入部も検討する。このような試料ゲート手段の代表的な例は図3Aに示される。
【0031】
図3Aでは、代替的なポート10は(a)複数のシャフト26を中に有するボディ20と、(b)回転式に移動可能な部材36とを有する。回転式に移動可能な部材36には、ボディ20に配置されるシャフト開口部24a、24b、24c、および24dのいずれかと整列されるよう選択的に回転される路38が設けられる。路38と開口部が整列されると、流体試料はポート挿入部10を通ってそれぞれの選択されたシャフトに流れる。
【0032】
実際には、図3Aの概略的な性質と比べて、路38と部材36の両方は、例えば、いわゆる「デッドスペース」を最小化するようこれら部品を合理化することで流体の流れを最適化するよう構造的に構成されるべきである。このような構造は、適用法によって様々である。それにも関わらず、適切な流れ最適化戦略が技術において周知である。
【0033】
回転式に移動可能な部材36は、ボディ20を通り且つ越えて延在する一体化されたハンドル(図3Aに部分的に示す)を用いて回転される。適当な場所では、ハンドルは導管がバーブ70に接続されるよう十分な間隙を設けるようボディ20から十分遠くまで延在すべきであり、それにより、導管を挟みつけることおよび/または過剰に曲げることによる流れへの潜在的な制約が阻止される。
【0034】
一体化されたハンドルの代替例として、回転式の移動可能な部材36を回動させるために別個のツール(例えば、アレンレンチまたはねじ回し)を使用してもよい。この場合、回転式に移動可能な部材は適当なツール係合構造(例えば、スロット、ナット、ボルトなど)で構成される。
【0035】
好ましくは、回転式に移動可能な部材36は単一方向、即ち、時計回りまたは反時計回りにだけ回転し、上記シャフトそれぞれの全ての実現可能な「閉」位置または「開」位置での整列が明確且つ別々に定められなくてはならない。部材36がいずれかの使用済みシャフトと整列するよう回転して戻されることを防止する手段も設けられるべきである。
【0036】
概略的に示すように、図3Bおよび図3Cでは、回転式に移動可能な部材36およびモノリシックボディ20それぞれに設けられる対応する連結構造62およびP1/P2を用いて個々の位置が定められる。構造62(例えば、タブ)が構造P1(例えば、スロット)で係合されるとき、路38は開口部24aと明確に整列される。したがって、開口部24aに対応するシャフト26は「開いている」または「活性化」しており、開口部24b、24c、および24dに対応するシャフトは「閉じている」または「不活性化」している。所望の容積の試料流体が通されると、「活性化」されたシャフトは、構造62が構造P2(例えば、別のスロット)と係合するよう部材36が回転されることで閉じられる。この位置では、路38は開口部24a、24b、24cおよび24dのいずれとも整列されず、したがって、それらに対応する全てのシャフトは「閉じている」または「不活性化」されている。所望の場合、残りの未使用のシャフトは同様にして順次「開けられる」および「閉じられる」。当業者には、部材26を一方向にだけ回転可能にし、一周以上回転することを防止する(例えば、ブレーキまたは他の物理的障害物)適切な構造(例えば、ラチェットのような構造)が明らかであろう。
【0037】
手動の回転および整列を更に補助するために、回転式に移動可能な部材26の現在の位置をユーザに通知するようグラフィカル、テキスト、または別な方法の情報指示または構造(例えば、記号アイコンと組み合わすポインタ)が例えば、ハンドル、ボディ20またはその両方に一体化されるかそれらに設けられる。同様にして、連結構造(例えば、38、P1、P2)が、回転式に移動可能な部材36の移動および/または位置を示す可聴的(例えば、クリッキング)または摩擦的(例えば、可変抵抗)ヒントをユーザに回転中に提供するよう構成される。
【0038】
前述の通り、本発明に使用される試料用容器は、特に、生物薬学的適用法または比較的高い無菌要件を有する同様の適用法で流体サンプリング装置を使用することを意図するとき柔軟な袋であることが好ましい。複数の従来のサンプリング装置と違って、本発明の流体サンプリング装置100は、ホスト流体レセプタクル5から利用可能な試料用容器130への試料液の流れを助け、促し、容易化し、さもなければ影響を与えるためにバルブ、ポンプ、および同様の外部機構に頼らない。流体は、むしろ周囲重力とホスト流体レセプタクルの現存の加圧の組み合わせによって装置100の無菌で隔離された流路を通って流れる。潰されたまたは部分的に潰された状態で最初に提供され、柔軟な袋(または機能的に同等の伸張性の流体容器)は抽出された流体が中に流れるにつれて膨張し、減圧し、または、さもなければ「膨らむ」。
【0039】
柔軟な袋のような試料用容器130の使用が好ましいが、剛性の容器も本発明の目的から逸脱することなく使用され得る。例えば、試料用容器は、広々とした、剛性の箱、バルブ、ガラス瓶、またはビンとして構成されてもよい。適度な構造であることが好ましい通気口が、試料である流体が中に流れると含有されるガスの移動を可能にするよう設けられてもよい。
【0040】
少ないコストで実施され得る一方で良好な無菌機能を提供する一つのタイプの通気口(図示せず)は、フルオロポリマー膜のガス透過性シート(例えば、Wilmington,DelawareのW.L.Gore and Associatesから市販されている「Gore−Tex」製膜)またはポリエチレン繊維の略ガス透過性シート(例えば、Wilmington,DelwareのE.I.du Pont de Nemours, Inc.から市販されている「Tyvek」製材料)で剛性の容器を「パッチング」し、開口(即ち、その予想流体充填レベルより上)することで構成される。
【0041】
完全剛性の代替として、試料用容器が潰されるかさもなければその体積が減少されることができるよう、折り目、または、ひだあるいは皺ゾーンなどに沿って屈曲し曲がる剛性の側壁を試料容器が有することが想像される。折り畳み可能な剛性構造の例は、アコーディオンのような構造、ベローズのような構造、およびプリーツ形側壁を有する他の構造を含む。
【0042】
流体サンプリング装置100の動作の根本的な機構は、細長い部材30の構造に幾らかの剛性を必要とする。耐久性は別として、剛性は、サンプリング不良および/より悲劇的には、現存の滅菌状況の断裂を可能性としてもたらす状況である、細長い部材の屈曲、折れ曲がり、皺、またはさもなければ変形を起こすことなく、液密密閉を形成する摩擦力を克服するために十分且つ適当な力で部材がシャフトを通ってそれぞれの開位置に押し進められることを可能にする。
【0043】
幾つかの剛性部材30がポート挿入部30を通って設けられているため、挿入部の直ぐ外側にある物理的な空間が締め付けられる可能性があり、所望の流体の容積を収集するに十分な試料用容器を受容できない場合がある。したがって、試料用容器は、細長い部材130の地理的に更に下流に配置され、ある長さの可撓性導管材料120がその間に設けられる。
【0044】
可撓性導管および柔軟な袋のような試料用容器は一つの構成要素として形成され得るが、可能性として、導管120および細長い部材30は、それぞれの異なる好ましい材料組成により、別々に形成され後で組立てられる。例えば、一実施形態では、導管120は可撓性エラストマー材料よりなり、細長い部材30は高衝撃性の剛性ポリマー材料よりなる。このような場合、各剛性の細長い部材30の後端30には、図2に示すようなバーブド端70のような可撓性導管を確実に取り付ける手段が設けられてもよい。
【0045】
好ましい構造では、細長い手段が開位置に時期尚早に移動されることを防止し、並びに、開位置および/または閉位置からあまりに遠くに動くことを防止するための手段が設けられるべきである。このような手段は、流体サンプリング装置の最終的な構造によって変わる一方で、図2に示す実施例はその特定の例を示す。例えば、アンカー50は、細長い部材30が時期尚早に開位置Pに押し進められることを防止するために設けられる。サンプリングが開始されると、アンカー50はシャフトを通る部材30の通過をもはや妨げなくなる位置に移動され得る。押し進められると、ブロック60は部材が押し進められ過ぎることを防止する。キャップ24が、液密密閉を形成することに加えて、部材30が抽出されることを防止するために部材30の前部30に設けられてもよい。
【0046】
比較的厳しい滅菌要件のある適用法(例えば、生物薬学的適用法)に関して、本発明は、次の主要なキットコンテンツを滅菌済みパッケージ内に含むキット形態に好ましくは具体化される:(a)説明したおよび/またはさもなければ本願で有効な全ての実施形態に従って構成される滅菌済みのポート挿入部、(b)好ましくは「ある長さに予め切断され」上記ポート挿入部の細長い部材に接続されるまたは接続可能な滅菌済みの可撓性管の供給、(c)上記可撓性管に接続されるまたは接続可能な予め滅菌された試料用容器であって、説明したおよび/またはさもなければ本願で有効な全ての実施形態に従って構成される予め滅菌された試料用容器の供給。キットが予め組立てられ、ガンマ放射線、エチレンオキサイドガスなどのような周知の手段を用いてその袋または容器で滅菌されることが好ましい。
【0047】
キット形態での本発明の対策は、さもなければ達成できないまたは達成することが困難なある目的を進歩させる。最も重要なことは、キットが、全てのそのコンテンツが予め滅菌され使用まで本質的にそのままで維持されることを確実にすることである。更に、設置、組立、および動作の容易性は、正しい嵌合および組立を確実にするために、全てのキットコンテンツが予め選択され、予め寸法が定められ、予め適合されているため改善される。同様の考えで、キットベースのアプローチ法はキットのコンテンツの標準化、並びに、その製造およびパッケージングを助け、製品価格の減少、製品の「廃棄性」の推進、および公衆に技術の利用性を広げることにつながる。
【0048】
任意には、キットは、例えば、ホスト流体レセプタクル上に設けられるポート内にポート挿入部をロックする手段(例えば、カラー40)、流体サンプリング装置を組み立てるために使用される付属品および他の手段(例えば、クランプ、コネクタ、接合部、マニホールドなど)、ホストレセプタクルに対して組み立てられた流体サンプリング装置を取り付け、固定、および/または位置決めする手段(例えば、接着片、留め具、ブラケットなど)、および使用済みの流体サンプリング装置を処理するゴミ袋を含んでもよい。これらが含まれている場合、これらおよび他の任意のキットコンテンツは、それぞれのパッケージで滅菌される。主要および任意のキットコンテンツの両方は、望まれる場合、上記滅菌パッケージ内で個別的にまたは集合的に包まれて(即ち、グループで)設けられてもよく、それにより追加的な滅菌バリヤを提供する。
【0049】
本発明のある実施形態が開示されているが、本願で述べる本発明の教示の恩恵を受ける当業者は幾つかの変更をそれらに対して行うことができる。これら変更態様は、添付の特許請求の範囲に述べるような本発明の範囲内に包含されるとして解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】流体サンプリング装置100がポート挿入部10、複数の可撓性導管120、および複数の試料用容器130を有する、本発明の実施形態による流体サンプリング装置100を概略的に示す図である。
【図2】例えば、図1に示す流体サンプリング装置100への組み込みに好適なポート挿入部10の特定の実施形態を概略的に示す図である。
【図3A】例えば、図1に示す流体サンプリング装置への組み込みに好適なポート挿入部10の別の特定の実施形態を概略的に示す図である。
【図3B】例えば、図1に示す流体サンプリング装置への組み込みに好適なポート挿入部10の別の特定の実施形態を概略的に示す図である。
【図3C】例えば、図1に示す流体サンプリング装置への組み込みに好適なポート挿入部10の別の特定の実施形態を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0051】
5 ホストレセプタクルのポート
10 ポート挿入部
20 モノリシックボディ
22 第2の開端
24 第1の開端
24a、24b、24c、24d シャフト開口部
26 シャフト
30 細長い部材
30 前部
30 後部
32、34 開口部
36 回転式に移動可能な部材
38 路
40 カラー
45 リップ部
50 アンカー
60 ブロック
62 連結構造
70 バーブ
100 流体サンプリング装置
120 導管
130 試料用容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数のシャフトが中を通るボディ、および、流体の流れを可能にするよう前記シャフトのいずれかを個別的に開閉する試料ゲート手段を含み、前記試料ゲート手段が「開」位置と「閉」位置の間で移動可能な単一のまたは複数の部材を含み、流体は前記「開」位置では前記シャフトの一つを通って前記ボディを流れ、前記「閉」位置では流れない、ポート挿入部と、
(b)個々のシャフトとそれぞれ流体連通する、前記複数のシャフトと同じ数の複数の可撓性導管と、
(c)個々の導管とそれぞれ流体連通する、前記複数の導管と同じ数の複数の試料用容器とを有する、流体サンプリング装置。
【請求項2】
前記試料用容器は柔軟な袋である、請求項1に記載の流体サンプリング装置。
【請求項3】
前記試料ゲート手段が前記単一の部材を含み、前記単一の部材は、前記単一の部材が前記「開」位置と「閉」位置との間で移動されると前記シャフトの一つと整列する、または、ずれる路を中に含む、請求項1に記載の流体サンプリング装置。
【請求項4】
前記単一の部材は回転によって移動可能である、請求項3に記載の流体サンプリング装置。
【請求項5】
前記試料ゲート手段が前記複数の部材を含み、前記複数の部材それぞれは、前記「開」位置と「閉」位置との間で前記シャフトの一つの中で線形に移動可能な細長い部材である、請求項1に記載の流体サンプリング装置。
【請求項6】
モノリシックボディおよび細長い部材を含み、流体レセプタクルに設けられるポートに取り付けるのに好適なポート挿入部であって、
(a)ボディはモノリシックエラストマー材料よりなり第1の開端を第2の開端に接続するシャフトが中を通り、ボディは前記第1の開端が前記流体レセプタクルの内側に面し前記第2の開端が前記流体レセプタクルの外側に面すよう前記ポート内に略水密式に嵌合されるよう成形され、
(b)細長い部材はモノリシックで剛性であり、前部および後部を含み、前記シャフト内に略水密式に嵌合されるよう成形され、前記細長い部材は前部が前記第1の開端に近接し、後部が前記第2の開端に近接した状態で前記シャフト内に嵌合され、前記細長い部材は閉位置から開位置まで前記シャフト内で移動可能であり、前記細長い部材の前記後部は可撓性管を取り付ける手段を含み、前記流体レセプタクルから前記ポート挿入部を通る流体の排出は前記細長い部材が前記閉位置を占有するとき防止され、前記細長い部材が前記開位置を占有するとき可能となる、ポート挿入部。
【請求項7】
前記細長い部材を前記開位置または前記閉位置のいずれか一方あるいはその両方で固定する一体形ロッキング手段を更に有する、請求項6に記載のポート挿入部。
【請求項8】
複数の前記細長い部材が複数の前記シャフト内で適合され嵌合される、請求項6に記載のポート挿入部。
【請求項9】
前記装置が前記ボディおよび前記細長い部材だけよりなる、請求項6に記載のポート挿入部。
【請求項10】
前記流体レセプタクルの前記ポートに取り付け可能なカラーを更に有し、前記カラーを前記ポートに取り付けることで前記流体サンプリング装置が前記ポート内でロックされる、請求項6に記載のポート挿入部。
【請求項11】
前記カラーは前記流体サンプリング装置の一体部分である、請求項10に記載のポート挿入部。
【請求項12】
前記流体サンプリング装置のボディは外径が0.985インチ(2.5cm)の円筒形であり、細長い部材は1.600インチ(4.064cm)より長い長さを有する、請求項6に記載のポート挿入部。
【請求項13】
ポートが設けられる流体レセプタクルから流体の試料を無菌で抽出する流体サンプリングキットであって、
(a)モノリシックボディおよび細長い部材を有し、前記モノリシックボディは第1の開端を第2の開端に接続するシャフトを中に含み、前記ボディは前記第1の開端が前記流体レセプタクルの内側に面し前記第2の開端が前記流体レセプタクルの外側に面すよう前記ポート内に略水密式に嵌合されるよう成形され、前記細長い部材は前部および後部を含み、前記シャフト内に略水密式に嵌合されるよう成形され、前記細長い部材は前部が前記第1の開端に近接し、後部が前記第2の開端に近接した状態で前記シャフト内に嵌合され、前記細長い部材は開位置から閉位置まで前記シャフト内で移動可能であり、前記流体レセプタクルから前記流体サンプリング装置を通る流体の排出は前記細長い部材が前記閉位置を占有するとき防止され、前記細長い部材が前記開位置を占有するとき可能である、滅菌された流体サンプリング装置と、
(b)前記細長い部材の前記後部に接続されまたは接続可能な滅菌された可撓性管と、
(c)前記細長い部材が前記開位置に移動されるときに前記流体サンプリング装置を通って前記流体レセプタクルから排出される流体を収集する滅菌された収集レセプタクルであって、前記可撓性管に接続されまたは接続可能な滅菌された収集レセプタクルとを、滅菌されたパッケージ内に含んだ状態で有する、流体サンプリングキット。
【請求項14】
前記滅菌された収集レセプタクルが柔軟な袋である、請求項13に記載の流体サンプリングキット。
【請求項15】
前記流体サンプリング装置が複数の前記シャフトと適合され嵌合される複数の前記細長い部材を有する、請求項13に記載の流体サンプリングキット。
【請求項16】
前記流体サンプリング装置のボディは外径が0.985インチ(2.5cm)の円筒形であり、細長い部材は1.600インチ(4.064cm)より長い長さを有する、請求項13に記載の流体サンプリングキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2009−2965(P2009−2965A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−237495(P2008−237495)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【分割の表示】特願2004−369097(P2004−369097)の分割
【原出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】