説明

使い捨て着用物品

【課題】シャーシの身体側に位置する肌当シートが、縦方向または横方向にシャーシと相対的に移動することができる使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】使い捨ての尿取用パッド1を形成するシャーシ10は、内面シート17と、外面シート、これら内外面シートの間に位置する吸液性のパネル状のコア19とを含む。コア19は、少なくともクロッチ域13に位置するとともに、前後ウエスト域11,12に向かって縦方向Yに延びている。後ウエスト域12において、内面シート17の内側には、着用者の肌に接触可能な肌当シート30が取り付けられている。肌当シート30は、横方向Xに延びる前後端部31,32と、縦方向Yに延びる両側部33とを有し、両側部33のみが内面シート17にホットメルト接着剤などの接合手段34によって接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、使い捨て尿取り用パッド、使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後ウエスト域と、これら前後ウエスト域の間に位置するクロッチ域とを有する使い捨ておむつにおいて、おむつが内外面シートと、内外面シートの間に位置する吸収性コアとを含み、内面シートの身体側に位置する別体のシートが取り付けられることは公知である。例えば、特許文献1には、内面シートにさらにバリアシートを積層したおむつが開示されている。特許文献2には、内面シートにシート状のポケットカフスが形成されたおむつが開示されている。
【0003】
特許文献1および2のおむつでは、内面シートに積層された別体のシートは、おむつの横方向に延びるとともに、その両側部分と、両側部分に交差する前後端部分のうちの少なくとも一方とが内面シートに接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3493211号公報(JP 3493211 B2)
【特許文献2】特許第3457003号公報(JP 3457003 B2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載されたおむつでは、いずれも内面シートに積層された別体のシートは、両側部分のみならず、少なくとも前後端部分の一方が内面シートに接合されているから、このシートは、内面シートに対してずれるようにして縦方向または横方向に相対的に移動することができない。
【0006】
この発明では、シャーシの身体側に位置する肌当シートが、縦方向または横方向にシャーシと相対的に移動することができる使い捨て着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前記縦方向に連なる前後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記縦方向に延びる両側部および前記横方向に延びる前後端部とを含むシャーシと、前記シャーシの前記身体側に位置する肌当シートとを有する使い捨て着用物品の改良にかかわる。
【0008】
この発明は、前記肌当シートは、前記横方向に延びるとともに、少なくとも前記後ウエスト域に位置し、その両側部のみが前記シャーシに接合されることを特徴とする。
【0009】
この発明の実施態様のひとつとして、前記肌当シートは、少なくとも前記横方向へ弾性的に伸縮可能にされる。
【0010】
他の実施態様のひとつとして、前記肌当シートは、前記縦方向に延びる複数の畝部と、これら畝部の間に形成された溝部とを有する。
【0011】
他の実施態様のひとつとして、前記肌当シートは、前記横方向に延びる前後端部と、前記後端部に向かって開口する切欠き部とを有する。
【0012】
他の実施態様のひとつとして、前記肌当シートは、前記縦方向に並んで複数取り付けられる。
【0013】
他の実施態様のひとつとして、前記肌当シートと前記シャーシとが重なる部分であって、前記肌当シートの前記シャーシに対向する面、および、前記シャーシの前記肌当シートに対向する面の少なくともいずれか一方の面に、摩擦抵抗低減手段が形成される。
【0014】
他の実施態様のひとつとして、前記摩擦抵抗低減手段は、滑性材料によって形成される。
【0015】
他の実施態様のひとつとして、前記滑性材料は、シリコン樹脂である。
【0016】
他の実施態様のひとつとして、前記クロッチ域の前記横方向の長さ寸法は、前記前後ウエスト域のそれよりも小さくされる。
【0017】
他の実施態様のひとつとして、前記後ウエスト域の前記縦方向の長さ寸法は、前記前ウエスト域のそれよりも大きくされる。
【0018】
他の実施態様のひとつとして、前記シャーシの身体側には、前記着用物品の両側部に沿って前記縦方向に延びるとともに、前記シャーシに接合される接合領域と、前記シャーシに接合されることなく前記シャーシから離間可能な離間領域とを有し、前記横方向に離間する一対の漏れバリアカフが形成され、前記肌当シートは、少なくともその一部が前記漏れ防止カフに重なって取り付けられる。
【0019】
他の実施態様のひとつとして、前記肌当シートは、前記漏れ防止カフと、前記シャーシとの間に取り付けられる。
【0020】
他の実施態様のひとつとして、前記肌当シートは、前記漏れバリアカフと重なる領域で前記横方向に弾性的に伸縮可能にされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特にそのひとつ以上の実施態様によれば、シャーシの身体側に位置する肌当シートは、その両側縁のみ、シャーシに接合することとしたので、両側縁以外の非接合部分は、シャーシに相対的に移動することができる。肌当シートとシャーシとが相対的に移動するので、肌当シートが着用者の身体に追従するとともに着用物品が着用者の肌に対して擦れることがなく、着用者の肌への刺激を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態の使い捨て着用物品の一例である使い捨ての尿取り用パッドの平面図。
【図2】図1の分解組立図。
【図3】図1のIII−IIII線断面図。
【図4】パッドの着用状態を示す説明図。
【図5】パッドの着用状態を示す説明図。
【図6】パッドの着用状態を示す説明図。
【図7】第2の実施形態の肌当シートの斜視図。
【図8】図7の肌当シートの収縮した図。
【図9】パッドの着用状態を示す図6と同様の図。
【図10】第3の実施形態のパッドの一部破断平面図。
【図11】図10のXI−XI線断面図。
【図12】肌当シートの一部破断説明図。
【図13】第4の実施形態のパッドの平面図。
【図14】第5の実施形態の肌当シートの平面図。
【図15】第6の実施形態の使い捨て着用物品の一例である使い捨ておむつの斜視図。
【図16】おむつの一部破断展開平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ての尿取り用パッド1の平面図、図2は、パッド1の一部を破断した分解斜視図、図3は、図1のIII−III線断面図、図4および5は、パッド1の着用状態を示した図、図6は、着用状態におけるパッド1の説明図である。パッド1は、横方向Xの長さ寸法を二等分した仮想縦中心線P−P、縦方向Yの長さ寸法を二等分した仮想横中心線Q−Qを有し、仮想縦中心線P−Pに関してほぼ対称とされている。対称の部分では、その一方にのみ符号を付し、他方では一部省略している。
【0024】
パッド1は、着用者の身体側およびその反対側である着衣側と、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前後ウエスト域11,12間に位置するクロッチ域13とを有するシャーシ10と、シャーシ10の身体側に取り付けられた肌当シート30とを含む。
【0025】
シャーシ10は、互いに仮想横中心線Q−Qに関して対向し、横方向Xに延びる前後端部14,15と、互いに仮想縦中心線P−Pに関して対向し、縦方向Yへ延びる両側部とを有する。両側部は、前ウエスト域11に位置する前側部16aと、後ウエスト域12に位置する後側部16bと、クロッチ域13に位置するクロッチ側部16cとを有する。前後側部16a,16bは、仮想縦中心線P−Pにほぼ平行に延びるとともに、クロッチ側部16cは、着用時に着用者の大腿部に沿ってフィットするように凹曲状に形成されている。このようなクロッチ側部16cによってクロッチ部13が形成される。この実施形態では、クロッチ域13の大部分は、仮想横中心線Q−Qよりも縦方向Yの前方に形成され、後ウエスト域12の縦方向Yの長さ寸法は、前ウエスト域11のそれよりも大きくされている。
【0026】
シャーシ10は、身体側を形成する内面シート17と、その反対側である着衣側を形成する外面シート18、これら内外面シート17,18の間に位置する吸液性のパネル状のコア19とを含む。外面シート18とコア19との間には、コア19の底面を覆う漏れ防止フィルム20が介在されている。内面シート17とコア19、コア19と漏れ防止フィルム20、漏れ防止フィルム20と外面シート18は、それぞれ互いにホットメルト接着剤等によって間欠的に接合されている。
【0027】
内外面シート17,18は、スパンボンド繊維不織布、スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(SMS)繊維不織布、エアスルー繊維不織布等を用いることができる。漏れ防止フィルム20は、透湿性を有する不透液性のプラスチックフィルムを用いることができる。コア19は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子等との混合物を圧縮形成した吸液性の芯材21を液拡散性シート22で覆うことによって形成される。
【0028】
コア19は、少なくともクロッチ域13に位置するとともに、前後ウエスト域11,12に向かって縦方向Yに延びている。コア19は、クロッチ域13において、横方向Xの長さ寸法が小さくなり、仮想横中心線Q−Qに向かってくびれた形状を有している。
【0029】
後ウエスト域12において、内面シート17の内側には、着用者の肌に接触可能な肌当シート30が取り付けられている。具体的には、肌当シート30は、横方向Xに延びる前後端部31,32と、縦方向Yに延びる両側部33とを有している。肌当シート30は、シャーシ10の一方の後側部16bと他方の後側部16bとの間に延びるとともに、両側部33のみが内面シート17にホットメルト接着剤などの接合手段34によって接合されている。したがって、両接合手段34の間は、肌当シート30と内面シート17とが非接合となっている。このような肌当シート30は、例えば、スパンボンド繊維不織布、SMS繊維不織布等、着用者の肌に対して摩擦刺激が少ない材料を用いることができる。
【0030】
図4および5は、パッド1の着用状態を例示し、着用者Bを仮想線で示している。図示したように、クロッチ域13を着用者の股下にあてがい、前ウエスト域11を着用者の腹側に、後ウエスト域12を背側に位置させる。パッド1は、その上からさらにおむつやおむつカバーなどで覆われて、パッド1を着用者に密着させるように使用されるのが一般的である。図4,5では、おむつまたはおむつカバーを省略している。この実施形態では、パッド1の前側部16aと後側部16bとは互いに接触することなく、着用者の腹側と背側との間で離間している。
【0031】
パッド1は、後ウエスト域12が前ウエスト域11に比べて、縦方向Yの長さ寸法が大きくされているので、着用者の背側が広い範囲で覆われるようになる。図5に示したように、着用者Bの仙骨部分Cが後ウエスト域12で覆われている。パッド1は、着脱が容易であることから、ベッド等に寝ている時間が多い着用者に好適であるが、着用者が仰向けで寝ている場合には、尿は背中側へと流れるから、後ウエスト域12の縦方向Yの長さ寸法を大きくすることによって、着用者の背中側に流れた尿を吸収することができる。また、このように仰向けで寝ている場合には、他の部分よりも突出する仙骨が自重でベッド等に押し付けられ、褥瘡の原因になることもあるが、パッド1を仙骨とベッドとの間に位置させることによってクッションとして機能することも期待できる。
【0032】
上記のような肌当シート30は、その両側部33のみ、内面シート17に接合されているから、接合手段34の横方向Xの間では内面シート17に対して離間可能となり、肌当シート30は内面シート17と相対的に移動することができる。
【0033】
パッド1を着用すると、肌当シート30は着用者Bの背側であって、好ましくは仙骨部分Cに対応して位置する。この状態において、例えばベッドをリクライニングさせ、上半身を起こすと、着用者の体重によって臀部が前方に移動することがある。このような場合であっても、肌当シート30と内面シート17とがずれるように相対的に縦方向Yに移動し、肌当シート30は着用者Bに追従して移動することができる。
【0034】
図6は、肌当シート30が内面シート17に対してずれるように移動した状態を例示した図である。肌当シート30が着用者に追従し、内面シート17に対して相対的に移動すると、肌当シート30は、その横方向X中央部分を縦方向Yの下方に弛ませるように変形する。肌当シート30が弛むことによって、シャーシ10の後側部16bが引っ張られ、その形状を変化させる。このパッド1は、別体のおむつやおむつカバーによって、身体側に取り付けられるものであって、前後側部16a,16bを互いに接合することによって着用者に密着させるものではないため、上記のように、シャーシ10が変形可能とされる。
【0035】
上記のように、肌当シート30が身体に追従して移動することによって、身体の背側は、肌当シート30との間で擦れることがなく、擦れることによる肌への刺激を低減することができる。また、褥瘡が生じやすい仙骨部分Cに肌当シート30が対応するので、擦れることによる褥瘡の発生、および、褥瘡の悪化を防止することができる。
【0036】
この実施形態では、肌当シート30の横方向Xの長さ寸法が、内面シート17のそれとほぼ等しくしているが、内面シート17の長さ寸法よりも肌当シート30の方を長くして、肌当シート30を縦方向Yに延びる折曲線に沿って折り畳んで使用することができる。このように肌当シート30の横方向Xの長さ寸法を大きくすることによって、内面シート30に対する相対的な移動距離を大きくすることができ、シャーシ10の後側部16bを引っ張ることなく、肌当シート30が内面シート30に対してずれることができる。また、肌当シート30は、縦方向Yへの移動だけでなく、横方向Xへも移動可能となるので、例えば、着用者の寝返り時におけるシャーシ10と肌との擦れを防止することもできる。
【0037】
<第2の実施形態>
図7,8は、第2の実施形態のパッド1に用いられる肌当シート30を示したものである。図9は、パッド1の使用状態における形状を説明するための図であって、第1の実施形態の図6と同様の図である。この第2の実施形態では、肌当シート30の構成が第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0038】
肌当シート30は、身体側に位置する第1シート35と、その反対側であって内面シート17側に位置する第2シート36と、第1および第2シート35,36の間に取り付けられた複数の弾性部材37とを有する。第1シート35は、身体側に、縦方向Yに延びる複数の凸条35aを有する繊維不織布を用いている。例えば、第1シート35を構成する繊維ウェブの上部に配置されたノズルから連続的に気体を噴射することで、気体が噴射された部分で凹条が形成され、気体が直接噴射されなかった部分で凸条35aが形成される。隣接する一方の凸条35aから他方の凸条35aまでの長さ寸法であるピッチは、例えば、約3mm〜6mmとすることができる。このような第1シート35は、繊維ウェブの繊維の再配向により凸条35aに比べて、その間の凹条で密度を低くすることができる。また、噴射する気体の量を間欠的に多くすることによって、凹条に、縦方向Yに間欠的な透孔を形成することもできる。この製法のほかには、第1シート35のウォータージェット処理やスチームジェット処理、プレス加工またはギア加工によって、凸条を形成することもできる。
【0039】
第2シート36は、凸条のない一般的な繊維不織布を用いている。弾性部材37は、横方向Xに延びるとともに、縦方向Yに離間して、伸長状態で収縮可能に取り付けられる。また、弾性部材37は、両側部33までは取り付けられることなく、両側部33から離間して取り付けられている。
【0040】
図8は、上記のような肌当シート30の弾性部材37が、収縮した状態を示した図である。図示したように、第1シート35は、弾性部材37の収縮によって、隣接する凸条35aが互いに横方向Xに接近し、第2シート36は、弾性部材37の収縮によって、縦方向Yに延びる複数の畝部38と溝部39とが形成される。畝部38は、内面シート17に向かって突出する部分であり、溝部39は、複数の畝部38の間に形成されたものである。
【0041】
肌当シート30の両側部33には、弾性部材37が位置しないから、この両側部33では、畝部38および溝部39は形成されることがなく、平坦な状態を維持している。このような平坦な両側部33にホットメルト接着剤等の接合手段34を塗布し、肌当シート30を内面シート17に接合している。畝部38および溝部39が形成された部分で、接合するとその接合強度が低下する恐れがあるが、平坦な両側部33で内面シート17に接合されるので、接合強度の低下を防止することができる。
【0042】
肌当シート30は、弾性部材37を取り付けることによって、横方向Xへ弾性的に収縮可能にすることができる。このような肌当シート30は、図8に示したように、収縮した状態で、内面シート17に取り付けられる。
【0043】
図9は、肌当シート30をシャーシ10に接合し、着用によって肌当シート30が縦方向Yにずれた状態を示したものである。着用者の背部に肌当シート30が接触し、背部に追従して移動すると、弾性的に収縮可能な肌当シート30は、伸長しながら内面シート17に対して相対的に移動することができる。したがって、シャーシ10の後側部16bが、引っ張られて変形してしまうことがない。
【0044】
肌当シート30の第2シート36には、弾性部材37の収縮による畝部38および溝部39が形成されているから、内面シート17との接触面積を小さくすることができる。接触面積を小さくすることによって、これらシートの間の摩擦抵抗を低減することができ、肌当シート30は内面シート17に対する移動が容易になる。
【0045】
第1シート35の身体側面には、複数の凸条35aを形成しているので、肌に接触する面積を小さくすることができ、肌に対する刺激を低減することができる。さらに、弾性部材37の収縮によって、隣接する凸条35aとの間隔が短くなり、全体的に柔軟性が向上される。第1および第2シート35,36、弾性部材37を接合するために、ホットメルト接着剤等を使用した場合には、接合部分で剛性が高くなる可能性もあるが、第1シート35の凸条35aが肌に接触することによって、高剛性部による肌の刺激を低減することができる。
【0046】
この実施形態では、横方向Xに弾性的に収縮可能な肌当シート30として、第1および第2シート35,36の間に弾性部材37を取り付けることとしたが、肌当シート30として、弾性繊維を含む伸縮性繊維不織布を用いることができる。ただし、この場合には、必ずしも畝部38および溝部39が形成されることがない。また、例えば、縦方向Yに延びる弾性部材を伸長状態で取り付けて、縦方向Yにも弾性的に収縮可能とすることもできるし、横方向Xに延びる弾性部材の一部を縦方向Yに突出させて、全体として湾曲させて取り付けることもできる。弾性部材37としては、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。例えば、弾性部材37は、図示例の糸状または紐状のもののほか、これらよりも幅が広いリボン状またはテープ状のものを用いることができ、その材料としては、例えば、糸状、紐状のものには、天然・合成ゴム、リボン・テープ状のものには、ポリウレタン、伸縮性繊維不織布を用いることができる。第1シート35として、凸条35aが形成された繊維不織布を用いているが、これが形成されない平坦な繊維不織布を用いることもできる。
【0047】
<第3の実施形態>
図10は、第3の実施形態におけるパッド1を示したものである。図11は、図10のXI−XI線断面図、図12は、肌当シート30の説明図である。この第3の実施形態におけるパッド1では、シャーシ10の身体側にさらに漏れバリアカフ40を取り付けることを特徴とする。第1の実施形態と同様の構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0048】
シャーシ10の両側部には、一対の漏れバリアカフ40が取り付けられている。漏れバリアカフ40は、横方向Xに離間して配置されるとともに、前端部14と後端部15との間に延びている。漏れバリアカフ40は、前後端部14,15、前後側部16a,16bおよびクロッチ側部16cにおいて、内面シート17とホットメルト接着剤等の接合手段41によって接合され、接合領域42が形成される。接合領域42以外の部分では、内面シート17に接合されることなく、内面シート17に離間可能な離間領域43が形成される。
【0049】
離間領域43の横方向X内側には、縦方向Yに延びるカフ弾性部材44が取り付けられている。カフ弾性部材44は、縦方向Yに伸長状態で取り付けられ、収縮可能にされている。このカフ弾性部材44の収縮によって、離間領域43が、内面シート17から起立するように離間し、尿等の漏れを防止することができる。
【0050】
上記のような漏れ防止カフ40と内面シート17との間に、肌当シート30を取り付けている。肌当シート30は、漏れ防止カフ40側に位置する第1シート35と、内面シート17側に位置する第2シート36と、これら第1および第2シート35,36の間に取り付けられた複数条の弾性部材37とを有している。図12は、弾性部材37の伸長状態の図であって、第2シート36側から見たときの平面図である。
【0051】
弾性部材37は、漏れ防止カフ40と重なる部分において取り付けられている。弾性部材37は、横方向Xに延びるとともに、縦方向Yに離間して取り付けられ、伸長状態で収縮可能に取り付けられる。ただし、両側部33の近傍には、取り付けられていない。したがって、肌当シート30は、弾性部材37が取り付けられた部分においては、縦方向Yに延びる畝部38と、これら畝部38の間に延びる溝部39が形成される。横方向X中央部および両側部33においては、弾性部材37の収縮力が作用することなく、平坦な状態を維持している。肌当シート30は、収縮した状態で、内面シート17に接合手段34によって接合される。接合手段34は、平坦にされている両側部33に形成される。弾性部材37は、第2の実施形態のそれと同様なものを用いることができる(段落0044参照)。
【0052】
このように弾性部材37を取り付けることによって、肌当シート30の一部を横方向Xに弾性的に収縮可能にすることができ、肌当シート30の内面シート17に対する移動距離を大きくすることができる。
【0053】
肌当シート30の第2シート36の内面シート17対向面には、摩擦抵抗低減手段50として、シリコン樹脂が塗布されている。摩擦抵抗低減手段50は、弾性部材37の間の平坦な部分に形成される。このように摩擦抵抗低減手段50を設けることによって、内面シート17との摩擦が低減し、より一層、肌当シート30が内面シート17に対して移動しやすくなる。
【0054】
摩擦抵抗低減手段50として、化粧的に許容可能な滑性材料、例えば、シリコン樹脂を用いた場合には、これを間欠的に塗布することもできる。例えば、縦方向Yに延びるとともに、横方向Xに離間する複数条のシリコン樹脂ラインを形成し、摩擦抵抗低減手段50とすることができる。また、摩擦抵抗低減手段50として、第2シート36にプラスチックフィルム等の摩擦係数の小さいフィルムをさらに積層させることもできる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレンによって形成されたものを用いることができる。
【0055】
摩擦抵抗低減手段50は、肌当シート30側に形成することとしているが、摩擦シート30に対向する内面シート17の部分に形成することもできる。この場合も、摩擦抵抗低減手段50は、シリコン樹脂を塗布するものや、プラスチックフィルムを貼付するものであってよい。
【0056】
漏れバリアカフ40は、横方向Xに離間し、これらの間に肌当シート30が露出されるので、肌当シート30は、着用者の身体に接触可能となる。また、これら肌当シート30の露出した部分には、弾性部材37が取り付けられず、畝部38および溝部39が形成されないこととしているので、これら畝部38および溝部39によって着用者の肌にこれらの圧迫による痕跡が残ってしまうのを防止することができるとともに、肌への刺激を低減することができる。
【0057】
この実施形態では、漏れバリアカフ40と内面シート17との間に肌当シート30を取り付けることとしているが、漏れバリアカフ40の身体側に取り付けることとしてもよい。この場合には、肌当シート30の移動がより容易になる。
【0058】
<第4の実施形態>
図13は、第4の実施形態のパッド1を示したものである。この実施形態では、肌当シートを複数取り付けたことを特徴とし、他の構成要素は第1の実施形態と同様である。その同様の構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0059】
シャーシ10の身体側であって、後ウエスト域12には、縦方向Yに離間する2つの肌当シート30a,30bが取り付けられている。肌当シート30aは、後端部15側に位置し、肌当シート30bはそのクロッチ域13側に位置している。肌当シート30a,30bは、その両側部33のみが接合手段34によって内面シート17に接合されている。肌当シート30aは、着用者の仙骨部分に対応する位置に配置され、肌当シート30bは、着用者の坐骨部分に対応する位置に配置されることが好ましい。
【0060】
上記のように複数の肌当シート30a,30bを形成することによって、より広い面積で着用者の身体に肌当シートを接触させることができるとともに、これらが別々に内面シート17に対して移動可能なので、より一層、パッド1との間で着用者の肌が擦れるのを防止することができる。特に、肌当シート30aは、他の部分よりも突出している仙骨部分に対応し、肌当シート30bは、座ったときに最も体圧が集中しやすい坐骨部分に対応する。これら仙骨部分および坐骨部分は、褥瘡が発生しやすい部分であり、肌当シート30a,30bによってこれを防止することができる。
【0061】
この実施形態では、2つの肌当シート30a,30bを用いているが、これが3以上であってもよく、その数を限定するものではない。また、肌当シートの数や大きさによっては、それらが離間されることなく、互いに接触しているような場合であってもよい。ただし、肌当シートを縦方向Yに離間させることによって、この離間領域と排便位置とを一致させた場合には、便が肌当シートに載るのを防止し、さらに、着用者の肌に便が付着するのを防止することができる。
【0062】
<第5の実施形態>
図14は、第5の実施形態にかかるパッドの肌当シート30を説明する図である。ここでは、肌当シート30のみを説明し、他の構成要素についてはその説明を省略する。
【0063】
肌当シート30は、前端部31の一部が切り欠かれた切欠き部45が形成されている。切欠き部45は、横方向Xのほぼ中央に位置するとともに、前端部31に向かって広がるV字形に形成されている。切欠き部45は、着用者の排便位置に対応させて着用するのが好ましい。
【0064】
このような肌当シート30を有するパッドにおいては、切欠き部45が排便領域となるので、排泄された便が肌当シート30に載ってしまうことがなく、便が着用者の肌に付着するのを防止することができる。また、切欠き部45を形成することによって、肌当シート30の縦方向Yの長さ寸法を大きくすることができ、より広い面積で着用者に接触させることができる。
【0065】
<第6の実施形態>
図15,16は、第6の実施形態であって、着用物品として使い捨ておむつ2を示したものである。図15は、おむつ2のウエスト開口を環状に保った状態の斜視図、図16は、おむつ2を展開した状態の平面図である。第1の実施形態におけるパッド1と共通する構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0066】
おむつ2の前側部16aと後側部16bとは、互いに接合されてシーム部61を形成している。これらシーム部61を形成することによって、ウエスト開口62およびレッグ開口63が形成される。おむつ2において、クロッチ域13は、仮想横中心線Q−Q上に位置し、前ウエスト域11と後ウエスト域12の縦方向Yの長さ寸法は、ほぼ等しくされている。
【0067】
上記のような構成のおむつ2において、肌当シート30は、シャーシ10の身体側であって後ウエスト域12に位置されている。具体的には、肌当シート30は、後ウエスト域12において内面シート17に接合手段34によって接合されている。接合手段34は、肌当シート30の両側部33にのみ位置し、これらの間では、内面シート12に接合されていない。したがって、肌当シート30は、接合手段34の間の非接合部分において、内面シート17に相対的に移動することができる。このような肌当シート30は、少なくとも横方向Xに弾性的に収縮可能にすることができる。
【0068】
この実施形態おいて、あらかじめ前後側部16a,16bが接合されたいわゆるプルオン・パンツ型のおむつを例に挙げて説明しているが、前後側部16a,16bが接合されていないオープン型のおむつに適用することも可能である。
【0069】
第1〜第6の実施形態においては、クロッチ域13において横方向Xの長さ寸法が小さくされた使い捨ての着用物品について説明したが、横方向Xの長さ寸法が、前後ウエスト域11,12およびクロッチ域13でほぼ等しい、略矩形の着用物品を排除するものではない。このような矩形の着用物品の場合には、着用時に着用者の股下に位置する部分をクロッチ域13とし、クロッチ域13よりも腹側に位置する部分を前ウエスト域11、背側に位置する部分を後ウエスト域12とすることができる。また、この場合には、少なくとも仮想横中心線Q−Qよりも後端部側に肌当シート30が位置することが好ましい。
【0070】
パッド1およびおむつ2を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。
【0071】
以上の実施形態において、ひとつの実施形態に他の実施形態の要素、構成を付加または組み合わせることができる。例えば、第2実施形態の摩擦抵抗低減手段50は、他の実施形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 尿取り用パッド(使い捨ての着用物品)
2 おむつ(使い捨ての着用物品)
10 シャーシ
11 前ウエスト域
12 後ウエスト域
13 クロッチ域
14 前端部
15 後端部
16a 前側部(側部)
16b 後側部(側部)
16c クロッチ側部(側部)
30 肌当シート
31 前端部
32 後端部
33 両側部
38 畝部
39 溝部
40 漏れバリアカフ
42 接合領域
43 離間領域
45 切欠き部
50 摩擦抵抗低減手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前記縦方向に連なる前後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記縦方向に延びる両側部および前記横方向に延びる前後端部とを含むシャーシと、前記シャーシの前記身体側に位置する肌当シートとを有する使い捨て着用物品において、
前記肌当シートは、前記横方向に延びるとともに、少なくとも前記後ウエスト域に位置し、その両側部のみが前記シャーシに接合されることを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記肌当シートは、少なくとも前記横方向へ弾性的に伸縮可能にされる請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記肌当シートは、前記縦方向に延びる複数の畝部と、これら畝部の間に形成された溝部とを有する請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記肌当シートは、前記横方向に延びる前後端部と、前記前端部の一部が切り欠かれた切欠き部とを有する請求項1〜3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記肌当シートは、前記縦方向に並んで複数取り付けられる請求項1〜4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記肌当シートと前記シャーシとが重なる部分であって、前記肌当シートの前記シャーシに対向する面、および、前記シャーシの前記肌当シートに対向する面の少なくともいずれか一方の面に、摩擦抵抗低減手段が形成される請求項1〜5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記摩擦抵抗低減手段は、滑性材料によって形成される請求項6記載の使い捨て着用物品。
【請求項8】
前記滑性材料は、シリコン樹脂である請求項7記載の使い捨て着用物品。
【請求項9】
前記クロッチ域の前記横方向の長さ寸法は、前記前後ウエスト域のそれよりも小さくされる請求項1〜8のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項10】
前記後ウエスト域の前記縦方向の長さ寸法は、前記前ウエスト域のそれよりも大きくされる請求項1〜9のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項11】
前記シャーシの身体側には、前記着用物品の両側部に沿って前記縦方向に延びるとともに、前記シャーシに接合される接合領域と、前記シャーシに接合されることなく前記シャーシから離間可能な離間領域とを有し、前記横方向に離間する一対の漏れバリアカフが形成され、前記肌当シートは、少なくともその一部が前記漏れ防止カフに重なって取り付けられる請求項1〜10のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項12】
前記肌当シートは、前記漏れ防止カフと、前記シャーシとの間に取り付けられる請求項11記載の使い捨て着用物品。
【請求項13】
前記肌当シートは、前記漏れバリアカフと重なる領域で前記横方向に弾性的に伸縮可能にされる請求項11または12記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−167412(P2011−167412A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35253(P2010−35253)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】