説明

使い捨て着用物品

【課題】肌対向面に位置する一対のカフシートが着用者の鼠蹊部に密着するとともに、着用中において吸収体が垂れ下がるのを防止することができる使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】カフシート60の遠位縁部64には、遠位弾性体65が伸長状態で収縮可能に取り付けられる。裏面シート30と防漏シート70との間には、前後ウエスト弾性体91,92と前後レッグ弾性体93,94とが取り付けられる。前後ウエスト弾性体91,92の一部は、吸収体40の非肌対向面に重なる。前後レッグ弾性体93,94は、シャーシの両側縁に沿って延びる両側縁部分93a,94aと、両側縁部分93a,94aの間であって仮想縦中心線を横切って横方向へ延びる中央部分93b,94bとを有し、少なくとも中央部分93b,94bは、吸収体40に重なるとともに、中央部分93b,94bが交点95において互いに交差されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、縦方向へ延びる一対のカフシートを有する使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、縦方向へ延びる一対のカフシートを有する着用物品は公知である。例えば、特許文献1には、表面シートと防漏シートと、吸収性本体と、吸収性本体の外側に位置する外層体とを有する使い捨ておむつが開示されている。吸収性本体には、立体ガード(カフシート)が設けられ、立体ガード弾性部材の伸縮によって立体ガードが起立して、吸収性本体の幅方向への液の流出が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−291798号公報(JP2002−291798A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1において、立体ガードは、幅方向外側が吸収性本体に固定され、幅方向内側が固定されずに立体ガード弾性部材が取り付けられている。立体ガード弾性部材が取り付けられた幅方向内側が、着用者の鼠蹊部に密着し排泄物の漏れを防止している。しかし、吸収性本体に排泄物が吸収されると、吸収性本体が重くなり、下方へと垂れ下がるとともに、立体ガードも下方へと引っ張られ、内側が着用者の鼠蹊部から離間してしまう。
【0005】
この発明では、肌対向面に位置する一対のカフシートが着用者の鼠蹊部に密着するとともに、着用中において吸収体が垂れ下がるのを防止することができる使い捨て着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、縦方向および横方向を有し、肌対向面およびその反対側である非肌対向面と、前後ウエスト域と、これら前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記横方向における寸法を二等分する仮想縦中心線とを有するシャーシと、少なくとも前記クロッチ域に位置する吸収体と、前記シャーシの前記肌対向面に位置し前記横方向へ離間して取り付けられた一対のカフシートと、前記シャーシの両側縁に沿って取り付けられたレッグ弾性体とを含む使い捨て着用物品の改良にかかわる。
【0007】
この発明は、前記使い捨て着用物品において、前記カフシートは、前記シャーシに接合された近位縁部と、前記シャーシから離間可能にされた遠位縁部と、前記近位縁部と前記遠位縁部との間に位置し前記縦方向へ延びる仮想折曲線とを有し、前記近位縁部は、前記縦方向へ連続して延びる第1接合部と、前記第1接合部よりも前記横方向内側へ位置し前記カフシートの前後端縁に沿って形成されるとともに、前記縦方向へ離間された第2接合部とによって、前記シャーシに接合され、前記遠位縁部は、前記第2接合部に重なって位置するとともに前記縦方向へ離間された第3接合部によって前記近位縁部に接合され、前記第3接合部の前記縦方向間には、少なくとも3本の遠位弾性体が前記縦方向へ延びるとともに伸長状態で収縮可能に取り付けられ、前記第2および第3接合部の少なくとも一部は、前記吸収体に重なって形成され、前記レッグ弾性体は、前記シャーシの両側縁に沿って延びる両側縁部分と、前記両側縁部分の間を前記横方向へ延びる中央部分とを有し、前記中央部分は、前記吸収体に重なるとともに、前記遠位縁部よりも前記横方向内側に延在し、前記前後ウエスト域には、前記横方向へ延びるウエスト弾性体が伸長状態で収縮可能に取り付けられ、前記吸収体は、前記クロッチ域から前記前後ウエスト域へ延びるとともに、前記ウエスト弾性体に重なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の特にそのひとつ以上の実施態様によれば、カフシートの遠位縁部に少なくとも3本の遠位弾性体を伸長状態で収縮可能に取り付けることとしたので、遠位縁部が着用者の鼠蹊部に密着可能となるとともに、遠位縁部が着用者によって押し付けられたとしても、押し付けられることによる遠位縁部の移動は、遠位弾性体によって緩和され、遠位縁部全体が大きく移動することがない。したがって、遠位縁部が着用者の鼠蹊部から離間することがなく、密着した状態を維持できる。また、レッグ弾性体が仮想縦中心線を横切って延びる中央部分を有し、この中央部分によって吸収体が着用者側へと持ち上げられるから、吸収体が垂れ下がることがなく、これに伴う遠位部分の鼠蹊部からの離間を未然に防止することができる。さらに、吸収体は、前後ウエスト弾性体によって、着用者の身体側へと押し付けられるから、より一層、吸収体を垂れ下がり難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】使い捨て着用物品の一実施形態である使い捨ておむつの着用状態を示す斜視図。
【図2】展開したおむつの肌対向面から見た平面図。
【図3】おむつの分解斜視図。
【図4】図2のIV−IV線拡大断面図。
【図5】図2のV−V線拡大断面図。
【図6】おむつの一部構成を示す概要図。
【図7】おむつの着用状態における図4と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜5を参照すると、おむつ1は、縦方向Yおよび横方向Xを有し、前ウエスト域11および後ウエスト域12、これら前後ウエスト域11,12間に位置するクロッチ域13と、横方向Xへ延びる前後端縁14,15と、縦方向Yへ延びる両側縁16とを有する。なお、図2〜6において、各弾性体は、その収縮力に抗して伸長させた状態で示している。
【0011】
おむつ1は、横方向Xにおける寸法を二等分する仮想縦中心線P−Pと、縦方向Yにおける寸法を二等分する仮想横中心線Q−Qとを有し、仮想縦中心線P−Pにおいてほぼ対称にされている。対称にされた同様の構成要素については、図面においてその一部の符号を省略している。
【0012】
おむつ1は、肌対向面に位置する難透液性または不透液性のカバーシート20と、その反対側である非肌対向面に位置する裏面シート30と、これらシート20,30の間に位置する吸収体40と、カバーシート20と吸収体40の間に位置する透液性の身体側ライナ50と、身体側ライナ50に取り付けられた一対のカフシート60と、吸収体40および裏面シート30の間に位置する難透液性または不透液性の防漏シート70とを含む。身体側ライナ50および裏面シート30によって、実施形態にかかるおむつのシャーシ10を形成している。
【0013】
裏面シート30としては、例えば、質量約10〜30g/mのスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(以下SMSとする)繊維不織またはスパンボンド繊維不織布を用いることができる。
【0014】
裏面シート30には、図示しないホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって、防漏シート70が接合されている。防漏シート70として、難透液性、好ましくは、不透液性かつ通気性のプラスチックフィルムを用いることができる。防漏シート70は、吸収体40よりもその面積が大きくされ尿等の排泄物がおむつ1から漏れるのを防止している。
【0015】
防漏シート70には、図示しないホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって、吸収体40が取り付けられている。吸収体40は、クロッチ域13から前後ウエスト域11,12へと延出して、比較的広範囲で尿等の排泄物を吸収することができるようにしてある。吸収体40は、吸液性の芯材をティッシュペーパ等の液拡散性の被覆シートで覆うことによって形成されている。芯材として木材フラッフパルプ、高吸収性ポリマー粒子、またはこれらの混合物を用いることができる。芯材と被覆シートとは、図示しないホットメルト接着剤等の公知の接合手段を用いて互いに接合することができる。
【0016】
吸収体40には、図示しない、間欠的に塗布したホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって、身体側ライナ50が取り付けられている。身体側ライナ50としては、例えば、質量約15〜35g/m、好ましくは約18〜23g/mのスパンボンド繊維不織布またはポイントボンド繊維不織布を用いることができる。身体側ライナ50は、ほぼ矩形を有し、裏面シート30よりも縦方向Yおよび横方向Xにおいてその寸法が小さくされるとともに、吸収体40のほぼ全面を覆う大きさにされている。
【0017】
身体側ライナ50には、横方向Xへ離間する一対のカフシート60が取り付けられている。カフシート60としては、例えば、質量約10〜30g/mのSMS繊維不織布を用いることができる。図6は、カフシート60、身体側ライナ50および吸収体40の積層状態を示した図であって、説明のため一部破断している。また、これら構成要素は仮想縦中心線P−Pにおいて対称であるので、その一部を省略している。カフシート60は、横方向Xへ延びる前後端縁61,62と、縦方向Yへ延びるとともに、身体側ライナ50に接合される近位縁部63と、身体側ライナ50から離間可能な遠位縁部64とを有する。カフシート60の前後端縁61,62は、身体側ライナ50の前後端縁51,52と一致するように重ね合わせられている。
【0018】
図5および図6に示したように、カフシート60の近位縁部63と遠位縁部64との間には、仮想折曲線66が縦方向Yへ延びている。仮想折曲線66に沿って遠位縁部64が近位縁部63に重なるように折り曲げられている。上記のような近位縁部63は、縦方向Yへ連続して延びる第1接合部81と、第1接合部81よりも横方向X外側に位置する第2前後接合部82,83によって身体側ライナ50に接合されている。第2前後接合部82,83は、カフシート60の前後端縁61,62に沿って形成され、縦方向Yへ離間されている。第2前後接合部82,83は、少なくともその一部が吸収体40の芯材と重なる位置に形成されている。
【0019】
折り曲げられて重なった遠位縁部64と近位縁部63との間には、第3接合部84が形成され、カフシート60を介して互いに接合されている。第3接合部84は、第2前後接合部82,83にカフシート60を介して重なるとともに、縦方向Yへ離間して形成されている。
【0020】
遠位縁部64には、カフシート60によってスリーブが形成され、スリーブ内に縦方向Yへ延びる遠位弾性体65が伸長状態で収縮可能に取り付けられる。遠位弾性体65は、第1〜第3弾性体65a,65b,65cによって構成され、第1弾性体65aは、スリーブ状に折り返されたカフシート60の端部に位置されている。
【0021】
図4は、左側が遠位弾性体65をその収縮力に抗して伸長させた状態を示し、右側が遠位弾性体65の収縮力によって遠位縁部64が身体側ライナ50から離間した状態を示している。また、図4の右側においては、後レッグ弾性体94も収縮し、シャーシ10が図面上方へと持ち上げられている。遠位縁部64は、第2前後接合部82,83および第3接合部84の縦方向Yにおける間では、身体側ライナ50から離間可能にされているので、図4右側に示したように、遠位弾性体65の収縮によって、身体側ライナ50から起立するように離間する。
【0022】
図7は、おむつ1の着用状態における図4と同様の図である。図7の二点鎖線が着用者の股下部分を示している。図示したように、おむつ1の着用状態においては、カフシート60の遠位縁部64が身体側ライナ50から離間し、着用者の肌に向かって起立する。そうすると、遠位弾性体65が取り付けられた領域が、第1弾性体65aを外側に向けて面で着用者の股下に接触する。このような状態において、着用者が動いたりすると、遠位縁部64が図面横方向内側へ向かって押し付けられることがある。すなわち、第1弾性体65aが第2弾性体65b側へと押し付けられる。しかし、遠位縁部64は、面で着用者に接触しているので、起立した遠位縁部64が倒れにくく、着用者に密着した状態を維持することができる。しかも、第2および第3弾性体65b,65cが、それぞれ伸長されているから、第1弾性体65aが第2弾性体65b側に押し付けられたとしても、第2弾性体65bが第3弾性体65c側に屈曲されるだけで、遠位縁部64全体が横方向X内側へと移動し、着用者から離間されるのを防止することができる。また、遠位縁部64が倒れにくいので、カフシート60の横方向Xの離間状態を維持することができ、排泄物の吸収領域を広く維持することができる。
【0023】
仮に、遠位弾性体65が第1および第2弾性体の2本であった場合には、第1弾性体が図面横方向内側に押し付けられると、第2弾性体との間のシートを介して、その移動が第2弾性体に伝わり、第2弾性体も内側へと移動し、結果として、遠位縁部64全体が内側へと倒れてしまう。しかし、遠位弾性体65が3本以上取り付けられることによって、第1弾性体の移動が第3弾性体以降へと伝わるのを防止することができ、遠位縁部64全体が内側に倒れるのを防止することができる。したがって、遠位弾性体65は、3本以上であれば何本取り付けてもよい。
【0024】
遠位縁部64は、遠位弾性体65が取り付けられるその端部においては二枚のシートによって形成され、その他の部分は一枚のシートによって形成されているから、これらの間には剛性差が生じ、その境界で遠位縁部64は折れ曲がりやすい。したがって、より一層、遠位縁部64は、面で着用者に接触することができる。
【0025】
図2および図3に示したように、カフシート60の肌対向面には、カバーシート20が取り付けられている。カバーシート20としては、例えば、質量約15〜35g/m、好ましくは約18〜23g/mのスパンボンド繊維不織布またはポイントボンド繊維不織布を用いることができる。カバーシート20は、その外形が裏面シート30とほぼ同形同大であり、その中央には、厚さ方向へ貫通する開口部21が形成されている。カバーシート20は、カフシート60に形成された第1接合部81、第2前後接合部82,83、第3接合部84に重なり、開口部21は、これら接合部が開口部21内へと延出しないような大きさにされている。また、開口部21は、身体側ライナ50よりもその面積が小さくされ、開口部21から、カフシート60の遠位縁部64の一部が露出し、着用時には着用者の肌側へ突出する。
【0026】
排泄物は、カバーシート20の開口部21から、カフシート60間を介して吸収体40に向かって排泄される。カバーシート20は、その周縁が裏面シート30に図示しないホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって、接合されている。したがって、排泄物がカフシート60とカバーシート20との間に流出しても、カバーシート20によって漏れるのを防止することができる。また、排泄物をカバーシート20と裏面シート30との間で保持することによって、排泄物が着用者の肌に付着するのを防止し、着用者の肌かぶれを予防することができる。
【0027】
カフシート60の前後端縁61,62近傍において、カバーシート20が重なることによって、遠位縁部64の起立が妨げられるが、カバーシート20は遠位縁部64の第2前後接合部82,83に重なるように配置されている。したがって、カバーシート20が遠位縁部64の起立性に大きく影響することがない。
【0028】
裏面シート30と防漏シート70との間には、前後ウエスト弾性体91,92と前後レッグ弾性体93,94とが取り付けられる。前後ウエスト弾性体91,92としては、太さ約310〜940dtexのストランド状またはストリング状のものを用いることができる。前後ウエスト弾性体91,92は、前後ウエスト域11,12において横方向Xへ伸長状態で収縮可能に取り付けられ、縦方向Yへ離間して複数本取り付けられる。これら前後ウエスト弾性体91,92は、横方向Xへ切断されることなく、連続して延びている。吸収体40は、クロッチ域13から前後ウエスト域11,12へと延びているから、少なくとも前後ウエスト弾性体91,92の一部は、吸収体40の非肌対向面に重なる。したがって、前後ウエスト弾性体91,92の収縮力によって吸収体40の前後端縁部分41,42が着用者の肌側へと押し付けられ、排泄物がおむつ1の前後端縁14,15から漏れるのを防止することができる。
【0029】
前後レッグ弾性体93,94としては、太さ約470〜940dtexのストランド状またはストリング状のものを用いることができる。前後レッグ弾性体93,94は、シャーシ10の両側縁16に沿って延びる両側縁部分93a,94aと、両側縁部分93a,94aの間であって仮想縦中心線P−Pを横切って横方向Xへ延びる中央部分93b,94bとを有している。少なくとも中央部分93b,94bは、吸収体40に重なるとともに、前レッグ弾性体93の中央部分93bと、後レッグ弾性体94の中央部分94bとが二つの交点95を介して互いに交差している。
【0030】
上記のように、前後レッグ弾性体93,94の中央部分93b,94bが、吸収体40に重なっているから、吸収体40を着用者の身体側へと持ち上げることができ、吸収体40に排泄物が吸収されて重くなったとしても、これが身体から離間するのを防止することができる。また、吸収体40が身体から離間すると、着用者の腿に押し付けられてその横方向Xにおける見かけの寸法が小さくされる可能性があるが、吸収体40が身体から離間するのを防止することによって、これを予防することができる。交点95では、前後レッグ弾性体93,94による収縮力が集中して大きくなるから、交点95,96で確実に吸収体40を着用者の肌側へと押し付けることができる。さらに、前後レッグ弾性体93,94は、両側縁部分93a,94aおよび中央部分93b,94bにおいて、連続して形成されているから、その収縮力が分断されることなく、より一層吸収体40を着用者の肌側へと押し付けることが可能となる。
【0031】
前後レッグ弾性体93,94の両側縁部分93a,94aによって、シャーシ10の両側縁16近傍にガスケットカフ17が形成され、レッグ開口を着用者に密着させることができる。したがって、このレッグ開口からの排泄物の漏れを予防することができる。
【0032】
上記のようなおむつ1において、カフシート60は3本の遠位弾性体65によって確実に着用者の鼠蹊部またはその近傍に密着することができるとともに、前後レッグ弾性体93,94の中央部分93b,94bによって吸収体40が着用者側に保持されるから、より一層カフシート60が鼠蹊部またはその近傍から離間するのを防止することができる。さらに、吸収体40は、横方向Xへ連続した前後ウエスト弾性体91,92によってその前後端縁近傍も身体側に密着させられるので、排泄物をすばやく吸収し、漏れを防止することができるとともに、吸収体40のずり下がりを防止し、吸収体40のずり下がりによってカフシート60が鼠蹊部から離間するのを防止することもできる。
【0033】
カフシート60は、折曲線66によって折り畳むことによって、これらが伸展した際には、鼠蹊部に向かって起立する遠位縁部64の横方向Xにおける寸法を大きくすることができる。すなわち、鼠蹊部に向かう起立寸法を大きくすることができる。遠位縁部64の起立寸法が大きくなると、吸収体40が着用者から大きく離間することも考えられるが、この実施形態では、前後レッグ弾性体93,94によって、吸収体40を身体側へと押し付けるので、吸収体40が着用者から大きく離間するのを予防することができる。
【0034】
前後ウエスト弾性体91,92および前後レッグ弾性体93,94として、ストリング状またはストランド状の弾性体を用いているが、弾性を有する伸縮性繊維不織布等を用いることもできる。また、前後レッグ弾性体93,94の中央部分93b,94bは、両側縁部分93a,94aよりも伸張応力が強くされている。したがって、中央部分93b,94bで吸収体40に皺を形成することがなく、かつ、吸収体40全体を身体側に押し付けることができる。前後レッグ弾性体93,94は、クロッチ域13で互いに交差するようにされているが、これが交差することなく縦方向Yへ離間しているものであってもよい。
【0035】
前後レッグ弾性体93,94の中央部分93b,94bは、仮想縦中心線P−Pを越えて横方向Xに連続して延びているが、これらが仮想縦中心線P−P近傍で分断されていてもよい。この場合には、中央部分93b,94bの端部が、遠位縁部64を越えて、その横方向X内側にまで延在されるようにすることが好ましい。遠位縁部64に前後レッグ弾性体93,94が重なることによって、遠位縁部64を着用者の肌へと押し付けて肌に密着させることができる。また、前後ウエスト弾性体91,92は、吸収体40に重なるように取り付けられているが、いずれか一方のみが吸収体40に重なるようにされているものであってもよい。
【0036】
この実施形態において、第1接合部81は吸収体40の横方向Xの外側に位置し、吸収体40とは重ならないようにされているが、このような構成のおむつ1は、例えば、低月齢の乳幼児に好適に用いることができる。低月齢の乳幼児は、便が柔らかく、カフシート60と身体側ライナ50との間に形成されるポケットを大きくすることによって、軟便を十分に保持することができる。また、第1接合部81が吸収体40に重なる位置で形成されるようにすることもできる。この場合のおむつは、例えば、高月齢の幼児に対して好適に用いることができる。
【0037】
以上に記載したこの発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
この発明は、以下の使い捨て着用物品1の改良にかかわる。使い捨て着用物品1は、縦方向Yおよび横方向Xを有し、肌対向面およびその反対側である非肌対向面と、前後ウエスト域11,12と、これら前後ウエスト域11,12間に位置するクロッチ域13と、前記横方向Xにおける寸法を二等分する仮想縦中心線P−Pとを有するシャーシ10と、少なくとも前記クロッチ域13に位置する体液吸収体40と、前記シャーシ10の前記肌対向面に位置し前記横方向Xへ離間して取り付けられた一対のカフシート60と、前記シャーシ10の両側縁16に沿って取り付けられたレッグ弾性体93,94とを含む。
【0038】
この発明は、上記使い捨て着用物品1において、以下の点を特徴とする。
前記カフシート60は、前記シャーシ10に接合された近位縁部63と、前記シャーシ10から離間可能にされた遠位縁部64と、前記近位縁部63と前記遠位縁部64との間に位置し前記縦方向Yへ延びる仮想折曲線66とを有する。
前記近位縁部63は、前記縦方向Yへ連続して延びる第1接合部81と、前記第1接合部81よりも前記横方向X内側へ位置し前記カフシート60の前後端縁61,62に沿って形成されるとともに、前記縦方向Yへ離間された第2接合部82,83とによって、前記シャーシ10に接合される。
前記遠位縁部64は、前記第2接合部82,83に重なって位置するとともに前記縦方向Yへ離間された第3接合部84によって前記近位縁部63に接合され、前記第3接合部84の前記縦方向Y間には、少なくとも3本の遠位弾性体65が前記縦方向Yへ延びるとともに伸長状態で収縮可能に取り付けられる。
前記第2および第3接合部82,83,84の少なくとも一部は、前記吸収体40に重なって形成される。
前記レッグ弾性体93,94は、前記シャーシ10の両側縁16に沿って延びる両側縁部分93a,94aと、前記両側縁部分93a,94aの間を前記横方向Xへ延びる中央部分93b,94bとを有し、前記中央部分93b,94bは、前記吸収体40に重なるとともに、前記遠位縁部64よりも前記横方向X内側に延在する。
前記前後ウエスト域11,12には、前記横方向Xへ延びるウエスト弾性体91,92が伸長状態で収縮可能に取り付けられる。
前記吸収体40は、前記クロッチ域13から前記前後ウエスト域11,12へ延びるとともに、前記ウエスト弾性体91,92に重なる。
【0039】
上記の発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。
(1)前記レッグ弾性体93,94は、前記中央部分93b,94bが前記仮想縦中心線P−Pを横切って前記横方向Xに連続して延びる。
(2)前記遠位弾性体65は、前記カフシート60によって形成されたスリーブ内に取り付けられる。
(3)前記レッグ弾性体は、前記前ウエスト域11から前記クロッチ域13へ向かって延びる前レッグ弾性体93と、前記後ウエスト域12から前記クロッチ域13へ向かって延びる後レッグ弾性体94とを含む。
(4)前記前レッグ弾性体93と、前記後レッグ弾性体94とは、前記クロッチ域13において、互いに交差する。
(5)前記ウエスト弾性体91,92は、前記横方向Xへ連続して延びるとともに、前記吸収体40の非肌対向面に重なって取り付けられる。
(6)前記シャーシ10は、前記非肌対向面に位置する裏面シート30と、前記吸収体40の前記裏面シート30に対向する面とは反対の面に積層される身体側ライナ50とを含む。
(7)前記カフシート60は、前記身体側ライナ50に接合される。
(8)前記肌対向面には、中央に開口部21が形成されたカバーシート20が配置され、前記カフシート60は、その一部が前記開口部21から露出する。
【0040】
使い捨て着用物品の一例である使い捨ておむつ1を構成する各構成部材には、この明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、この発明の明細書において、用語「第1」「第2」および「第3」は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられている。
【符号の説明】
【0041】
1 使い捨て着用物品(使い捨ておむつ)
10 シャーシ
11 前ウエスト域
12 後ウエスト域
13 クロッチ域
16 両側縁
20 カバーシート
21 開口部
30 裏面シート
40 吸収体
50 身体側ライナ
60 カフシート
61 前端縁
62 後端縁
63 近位縁部
64 遠位縁部
65 遠位弾性体
66 折曲線
81 第1接合部
82 第2前接合部(第2接合部)
83 第2後接合部(第2接合部)
84 第3接合部
91 前ウエスト弾性体
92 後ウエスト弾性体
93 前レッグ弾性体
93a 両側縁部分
93b 中央部分
94 後レッグ弾性体
94a 両側縁部分
94b 中央部分
X 横方向
Y 縦方向
P−P 仮想縦中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向を有し、肌対向面およびその反対側である非肌対向面と、前後ウエスト域と、これら前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記横方向における寸法を二等分する仮想縦中心線とを有するシャーシと、少なくとも前記クロッチ域に位置する吸収体と、前記シャーシの前記肌対向面に位置し前記横方向へ離間して取り付けられた一対のカフシートと、前記シャーシの両側縁に沿って取り付けられたレッグ弾性体とを含む使い捨て着用物品において、
前記カフシートは、前記シャーシに接合された近位縁部と、前記シャーシから離間可能にされた遠位縁部と、前記近位縁部と前記遠位縁部との間に位置し前記縦方向へ延びる仮想折曲線とを有し、
前記近位縁部は、前記縦方向へ連続して延びる第1接合部と、前記第1接合部よりも前記横方向内側へ位置し前記カフシートの前後端縁に沿って形成されるとともに、前記縦方向へ離間された第2接合部とによって、前記シャーシに接合され、
前記遠位縁部は、前記第2接合部に重なって位置するとともに前記縦方向へ離間された第3接合部によって前記近位縁部に接合され、前記第3接合部の前記縦方向間には、少なくとも3本の遠位弾性体が前記縦方向へ延びるとともに伸長状態で収縮可能に取り付けられ、
前記第2および第3接合部の少なくとも一部は、前記吸収体に重なって形成され、
前記レッグ弾性体は、前記シャーシの両側縁に沿って延びる両側縁部分と、前記両側縁部分の間を前記横方向へ延びる中央部分とを有し、前記中央部分は、前記吸収体に重なるとともに、前記遠位縁部よりも前記横方向内側に延在し、
前記前後ウエスト域には、前記横方向へ延びるウエスト弾性体が伸長状態で収縮可能に取り付けられ、
前記吸収体は、前記クロッチ域から前記前後ウエスト域へ延びるとともに、前記ウエスト弾性体に重なることを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記レッグ弾性体は、前記中央部分が前記仮想縦中心線を横切って前記横方向に連続して延びる請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記遠位弾性体は、前記カフシートによって形成されたスリーブ内に取り付けられる請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記レッグ弾性体は、前記前ウエスト域から前記クロッチ域へ向かって延びる前レッグ弾性体と、前記後ウエスト域から前記クロッチ域へ向かって延びる後レッグ弾性体とを含む請求項1〜3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記前レッグ弾性体と、前記後レッグ弾性体とは、前記クロッチ域において、互いに交差する請求項4に記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記ウエスト弾性体は、前記横方向へ連続して延びるとともに、前記吸収体の非肌対向面に重なって取り付けられる請求項1〜5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記シャーシは、前記非肌対向面に位置する裏面シートと、前記吸収体の前記裏面シートに対向する面とは反対の面に積層される身体側ライナとを含む請求項1〜6のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項8】
前記カフシートは、前記身体側ライナに接合される請求項7記載の使い捨て着用物品。
【請求項9】
前記肌対向面には、中央に開口部が形成されたカバーシートが配置され、前記カフシートは、その一部が前記開口部から露出する請求項1〜8のいずれかに記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−81718(P2013−81718A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225345(P2011−225345)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】