説明

使い捨て紙おむつ

【課題】製品の見栄え及びフィット性の両者を改善する。
【解決手段】使用状態においてウエスト開口部WO及び左右のレッグ開口部LOが形成され、ウエスト開口縁を含むウエスト部Wと、ウエスト部Wの下端からレッグ開口始端に至る腰下部Uとからなる胴周り部Tにおいて、周方向に沿いかつ縦方向に間隔をおいて配置された多数の伸縮部材を有し、かつ縦方向に沿って前記腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有する使い捨て紙おむつであって、伸縮部材は、胴周り部Tの60%以上の長さ範囲にわたって間隔を7.0mm以下とされた状態で配置され、腰下部Uの伸縮部材は、腰下部Uの中央部を除く左右脇部に配置され、腰下部Uの伸縮部材の配置間隔が、ウエスト部Wの伸縮部材の配置間隔に対して同じかあるいは短く、かつ太さが620dtex以下で、伸長率が150〜350%あることを特徴とする使い捨て紙おむつとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て紙おむつ、特に使用状態においてウエスト開口部及び左右のレッグ開口部が形成され、少なくとも前記ウエスト開口縁から前記レッグ開口始端に至る長さ範囲の胴周り部において周方向に沿い、かつ縦方向に間隔を有する多数の伸縮部材を有する形態などの使い捨て紙おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パンツ型使い捨て紙おむつが汎用されている。この場合における伸縮部材は、特に胴周りについては通常は糸ゴムが使用され、この糸ゴムは、胴周り部(ウエスト開口縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の領域)のウエスト開口縁側に偏在させた領域の全周に配置し、配置間隔は10mm以上である。また、通常は、ウエスト開口部の配置間隔を小さく、腹部の過度の圧迫を防止するために腰下部(ウエスト開口部より股下側の部分)の配置間隔を大きくしてある。
他方、製品を装着したときのずれ落ちを防止するために、各糸ゴムの太さを太くし、収縮力を大きくしてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし従来のものの最大の欠点は、体裁の悪い皺が発生することである。すなわち非装着段階において、図1に示すように、糸ゴムGの収縮に伴って発生する皺は、隣接する糸ゴムGの一方から他方に亘る形態で発生し、この凹凸の皺が周方向に繰り返し状態で生成する。さらに隣接する糸ゴムG相互間の皺と、一つ隣の隣接する糸ゴムG相互間の皺とは、連続せず独立的な傾向をもって生成する。
【0004】
これらの皺は、糸ゴムG相互の配置間隔が大きいほど、その離間距離に応じた長い稜または谷を持ち、かつ周方向の凹凸のピッチが大きい。したがって、製品の外面において全体的に見れば大きい皺がランダムに生成するために、製品の外面が「モコモコ」したものとなり、パンツ衣類とはまったく遠く離れた感覚を与えるものである。
【0005】
さらに、各糸ゴムGの太さが太く、収縮力が大きいので、たとえば一つの山皺を例に採ると、その山の糸ゴムG側の谷が深くなり、糸ゴムGの存在が明瞭となる。また、山または谷が大きくかつ収縮力が強く作用するので、山部または谷部に複雑な小皺がランダムに生成する。
【0006】
他方、太い糸ゴムGの存在が明瞭であるために、消費者はその太い糸ゴムGによって装着者の肌を強く締め付けるのではないかとのおそれを抱き、消費意欲を減退させる。実際に、吸収コアが存在しない脇部においては、太い糸ゴムGの収縮力が強く作用し、その部分が肌にゴム跡となって残ることもあることが知見されている。また、主に各糸ゴムが肌に当たる部分における製品の内面と肌との摩擦により製品のずれ落ちを防止しているが、単位面積当たりの糸ゴム本数は少ないので、よほど大きい収縮力でないと製品のずれ落ちのおそれがある。
【0007】
したがって、本発明の主たる課題は、皺が目立たないで、すっきり感を与える、すなわち製品の外面が「モコモコ」せず、見えるとしても木目細かい皺であり、全体的には平坦面状の外面を呈し、見栄えに優れた使い捨て紙おむつを提供することにある。他の課題は、面として肌に対して押圧されるようにすることにより、局部的な過度の肌への圧迫がないことによりゴム跡の生成がなく、製品の内面と肌との摩擦が全体に及び、ぴったり接触することによりフィット性が良好であり、製品のずれ落ちを防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
使用状態においてウエスト開口部及び左右のレッグ開口部が形成され、ウエスト開口縁を含むウエスト部と、該ウエスト部の下端から前記レッグ開口始端に至る腰下部とからなる胴周り部において、周方向に沿い、かつ縦方向に間隔をもって配置された多数の伸縮部材を有し、かつ縦方向に沿って前記腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有する使い捨て紙おむつであって、
さらに、この使い捨て紙おむつは、製品の外面を構成し、前記胴周り部の前記伸縮部材が配置された外形シートと、前記外形シートの内面側に固定され、前記吸収コア、透液性トップシート及び不透液性バックシートを有する吸収主体と、を備えており、
少なくとも前身頃において、前記伸縮部材は、前記胴周り部の60%以上の長さ範囲にわたって前記間隔を7.0mm以下とされた状態で配置され、
前記ウエスト部の前記伸縮部材は、ウエスト部全体に周方向に沿って連続して配置され、
前記腰下部の複数の前記伸縮部材は、その端部が前記吸収コアの側縁部と重なって前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され、太さが620dtex以下であり、配置間隔が前記ウエスト部の伸縮部材の配置間隔に対して短く配置され、
前記レッグ開口部を形成する長さ範囲である股部の40%以上の長さ範囲にわたってレッグ開口部側に偏倚した部位に複数の股部伸縮部材が、縦方向の間隔を7.0mm以下とされた状態で前記外形シートに配置され、前記股部伸縮部材は、その端部が前記吸収コアの側縁部と重なって前記股部の中央部を除く左右脇部に周方向に配置され、太さが620dtex以下であり、前記股部の股部伸縮部材の配置間隔が、前記ウエスト部の前記伸縮部材の配置間隔に対して短い、
ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。
【0009】
(作用効果)
本発明では、ウエスト開口縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の胴周りの60%以上の長さ範囲にわたって存在する伸縮部材の太さが620dtex以下とされ、かつ配置が7.0mm以下とされる。
その結果、図2に模式的に示すように、生成する皺は周方向に幅狭であり、縦方向(周方向に直交する方向)に長さが短く、皺がほぼ縦方向に連続する形態で生成する。そして、各皺の凹または凸はごく小さい。しかも、糸ゴムg部分での括れが殆どなく、外面を構成するシートの色と糸ゴムgの色とが同色である場合に糸ゴムgの存在が判別し難い。
【0010】
その結果、皺が目立たず、見えるとしても木目細かい皺であり、全体的には平坦面状の外面を呈し、すっきり感、すなわち製品の外面が「モコモコ」せず、見栄えに優れた使い捨て紙おむつとなる。しかも、面として肌に対して押圧されるようにすることにより、局部的な過度の肌への圧迫がないことによりゴム跡の生成がなく、製品の内面と肌との摩擦が全体に及び、ぴったり接触することによりフィット性が良好であり、製品のずれ落ちを防止できる。
【0011】
製品を見るとき、目立つのは中央部(周方向の中央部)であるところ、腰下部の複数の伸縮部材は中央部を除く左右脇部においてのみ伸縮部材が存在するので、製品の見栄えに優れる。
【0012】
半剛性の吸収コアが縦方向に沿って配置された構成の下で、腰下部の複数の伸縮部材が中央部を除く左右脇部のみに存在する。吸収コアは可撓性のシートに比較して半剛性を示すので、伸縮部材による収縮力の伝達により変形したり皺を生じたりすることが少ない。その結果、製品として目立つ中央部が変形したり皺を生じたりすることがないので、見栄えに優れた製品となる。製品の中央部には、キャラクターなどのデザインを施すが、この部分が変形したり皺を生じたりすることがないためにそのデザインが崩れることなく鮮明に分かるものとなる。また、製品の周方向の締め付け力は、主に胴周り部の脇部に作用し、肌との摩擦力により吸収コアの中央に向かうに従って減衰されるので、吸収コアのほぼ全体領域においては周方向の締め付け力が小さいものとなり、お腹を過度に圧迫することがない。
【0013】
<請求項2記載の発明>
前記腰下部に配置された前記伸縮部材の少なくとも一部は、5.0mm以下の間隔をもって、隣接して5本以上配置されている、請求項1記載の使い捨て紙おむつ。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は、前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さい、請求項1または2に記載の使い捨て紙おむつ。
【0015】
<請求項4記載の発明>
前記ウエスト部、腰下部、及び股部の伸縮部材は紙おむつの外面を構成する外形シートに対して配置されており、前記外面を構成する外形シートと前記伸縮部材の色とが同色である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て紙おむつ。
【0016】
(作用効果)
糸ゴム部分での括れが殆どなく、外面を構成するシートの色と糸ゴムの色とが同色である場合に糸ゴムの存在が判別し難い。
その結果、皺が目立たず、見えるとしても木目細かい皺であり、全体的には平坦面状の外面を呈し、すっきり感、すなわち製品の外面が「モコモコ」せず、見栄えに優れた使い捨て紙おむつとなる。
【0017】
<請求項5記載の発明>
ウエスト開口縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の胴周り部に配置された伸縮部材は、前記ウエスト開口縁から縦方向に30mm以内の位置から、レッグ開口始端からウエスト開口縁側の10mm以内の位置に至る長さ範囲にわたって配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨て紙おむつ。
【0018】
(作用効果)
上記数値範囲を限定したものであると、本発明における作用効果がより一層明瞭になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、皺が目立たつことがなく、製品の見栄えとしてすっきりしたものとなり、しかもフィット性に優れるなどの利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来製品の皺の発生状況概要図である。
【図2】本発明製品の皺の発生状況概要図である。
【図3】本発明の用語説明のための、第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図4】第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図5】その5−5線矢視図である。
【図6】第1の実施の形態製品の斜視図である。
【図7】第2の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図8】第2の実施の形態製品の斜視図である。
【図9】第3の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図10】第3の実施の形態製品の斜視図である。
【図11】第4の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図12】伸縮部材の配設形態の説明図である。
【図13】伸縮部材の配設割合に関する説明図である。
【図14】製品の表裏のデザイン例を示す図である。
【図15】別の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図16】他の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図17】さらに別の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図18】整形伸縮部材を設けた形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図19】整形伸縮部材を設けた別の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図20】テープ式紙おむつの第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図21】5−5線相当位置矢視図である。
【図22】テープ式紙おむつの第2の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図23】5−5線相当位置矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しながらさらに詳説する。
以下、本発明の実施の形態について、まずパンツ型使い捨ておむつの例を採って詳説し、その後、おむつ使用時(装着時)に背側の左右両側部を腹側の左右両側部に持ち込み、これらをテープファスナー(粘着剤テープファスナー及び面ファスナーを含む)により接合するタイプのいわゆるテープ式紙おむつに対する適用例も説明する。
【0022】
(『本発明の用語の説明』、及びパンツ型使い捨ておむつの第1の実施の形態)
主に図3によって、本発明の部位や方向に関する用語説明をしつつ、図4及び図5によって、第1の実施形態(本発明)に係るパンツ型使い捨ておむつについて説明する。
この第1の実施形態(本発明)に係るパンツ型使い捨ておむつは、図3及び図4に示すように、可撓性の外形シート1と、この外形シート1内面に固定され、股下4を中心として縦方向(前後方向)に延在する吸収主体10とを主体として構成されている。
【0023】
外形シート1は2枚または3枚以上の通気・撥水性の不織布を積層固定してなり、この外形シート1と吸収主体10とを重ね合わせた後の製造工程の最終段階で、前身頃Fと後身頃Bとの両側縁部の長手方向全体を超音波シールや熱溶融などの手段により接合する(この接合部を符号30としてある)ことにより、図6に示されているようにウエスト開口部WOおよび左右一対のレッグ開口部LOを形成してある。
【0024】
図3の符号において、「縦方向」とは、腹側と背側を結ぶ方向を意味し、「周方向」とは前記縦方向と直交する方向を意味する。「ウエスト開口縁」とはウエスト開口部WOの縁を意味し、「レッグ開口縁」とはレッグ開口部LOの縁を意味する。「レッグ開口始端」とはレッグ開口部LOのレッグ開口縁と接合部30とが交差する位置を意味し、レッグ開口縁の始まり個所の意味である。「胴周り部」Tとは、ウエスト開口縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の全体領域を意味する。胴周り部Tは、概念的に「ウエスト部」Wと「腰下部」Uとに分けることができる。これらの縦方向の長さは、製品のサイズによって異なるが、ウエスト部Wは15〜40mm、腰下部Uは65〜120mmである。「股部」Lとは、レッグ開口部LOを形成する長さ範囲の全体領域を意味する。また、「中央部」とは、製品の中央線を含む側部を除く中間領域を意味する。「脇部」とは、胴周り部Tにおける両側部を意味する。
【0025】
吸収主体10は、図5にも示すように、不織布などからなり着用者の肌に直接触れる長方形の透液性トップシート11と、綿状パルプを主体とし、ある程度の剛性を有する(半剛性の)長方形の吸収コア13とその上下面全体を包む額巻きされた長方形のクレープ紙14とからなる吸収体ABと、この吸収体ABの裏面において両側縁近傍まで達する、ポリエチレンプラスチックフィルムなどからなる長方形の不透液性バックシート12とを有し、前記透液性トップシート11は、吸収体ABの両側縁を周り込んで裏面に達し、不透液性バックシート12に重ねられており、これらの各要素はホットメルト接着剤により接着(図中*で示しているのが接着部分である)一体化されたものである。必要に応じて、図示のように透液性トップシート11とクレープ紙14との間に透液性セカンドシート11Sを介在させることができる。この吸収主体10は、ほぼ裏面全体が前記外形シート1に対して、ホットメルト接着剤により接着して一体化してある。
【0026】
吸収主体10の両側部には、使用面側に突出する脚周り起立カフスC,Cがそれぞれ形成され、この起立カフスCは、実質的に幅方向に連続した起立シート40と、伸縮部材、たとえば糸ゴムからなる一本のまたは図示のように複数本の伸縮部材50,50…とにより構成されている。
【0027】
さらに詳細には、起立カフスCは、起立シート40を2重に形成され、各伸縮部材50,50…をホットメルト接着剤などにより固着した状態で包んで形成されたものである。各起立カフスC,Cを形成する起立シート40は、透液性でなく不透液性もしくは疎水性であるのが望ましい。また、不織布などの透液性シートに対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。さらに、通気もしくは蒸気透過性を有しているのが望ましい。
【0028】
二重の起立シート40の内面は、吸収体AB及び不透液性バックシート12の裏面側に回り込んでホットメルト接着剤などにより固着されている。その結果、二重の起立シート40のこの固着始端は、起立カフスCの起立端を形成している。
この起立端より先端側は、製品本体に固定されていない自由部分である。
【0029】
他方、長手方向前後端部において、ホットメルト接着剤などにより、前記自由部分は、その先端が物品の中央側に向かう状態で物品に、具体的には透液性トップシート11外面に固定されている。
【0030】
また、伸縮部材50,50…は、少なくとも1本が自由部分にあることを基本形態とするが、特にその伸縮部材50は自由部分の先端部にあることが好ましく、さらに、図5に示されているように、根元側にも伸縮部材50を有することが好ましい。先端部には、図示のように複数本有するのがさらに望ましい。
【0031】
図4は、紙おむつを長手方向に展開した状態を示しているが、装着時には、紙おむつが舟形に体に装着されるので、そして各伸縮部材50,50…の収縮力が作用するので、製品の前後端はそのままで、脚周りでは、各伸縮部材50,50…の収縮力により起立カフスCが起立する。そしてこのとき、吸収主体10の側部を変形させ持ち上げ、また若干吸収コア13も変形させつつ持ち上げ、深いポケット空間を形成する。
【0032】
左右の起立カフスC,Cで囲まれる空間は、尿または軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿は透液性トップシート11を通って吸収体AB内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、起立カフスCがバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。
【0033】
他方、前身頃F及び後身頃Bの長手方向端部において、ウエスト部Wにおける外形シート1の不織布間には、ウエスト周りのフィット性を高めるために、ウエスト開口部WOの端縁に平行に間隔を置いて細い糸ゴムからなるウエスト伸縮部材20F,20Bが伸縮するように伸長下に配置固定されている。ウエスト部Wにおけるウエスト伸縮部材20F,20Bの間隔および本数は適宜定めることができるが、例えば間隔としては4〜8mm程度、本数としては4〜10本程度が好ましい。
【0034】
そしてかかる構成のもと、本発明に従って前身頃F及び後身頃Bのウエスト部Wから股部Lまでの間の領域たる腰下部Uにおける、前身頃Fの下腹部及び後身頃Bの臀部に、周方向に沿って腰下部伸縮部材21F,21Bが設けられている。そして、腰下部伸縮部材21F,21Bはそれぞれ、前身頃F及び後身頃Bにおいて、一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収コア13のほぼ全体を除く製品の左右脇部に設けられている。
【0035】
図示例では、これら腰下部伸縮部材21F,21Bとして、細い糸ゴム、具体的に太さが620dtex以下とされた伸縮部材が用いられ、前身頃F及び後身頃Bの両者において、縦方向の間隔が7.0mm以下とされ、それぞれ平行に15〜40本、外形シート1の不織布間に配置固定されている。この腰下部伸縮部材21F,21Bおける相互間隔は、ウエスト伸縮部材20F,20Bの間隔に対して同じか、あるいはそれよりも短いものが望ましい。
【0036】
また、これら腰下部伸縮部材21F,21Bとして使用する糸ゴムは、前述のウエスト伸縮部材20F,20Bとして使用する細い糸ゴムよりも伸張応力および断面外径が小さいか、あるいは実質的に同一のものとすることができる。ここにおいて使用する細い糸ゴムとしては、具体的には、伸張応力が、150%伸長時において4〜17gの範囲、特に5〜10gの範囲のものが好適に使用される。
【0037】
他方、第1の実施の形態(本発明)においては、股部Lにおける中央部を除く左右部においても股部伸縮部材23を設けてある。この股部伸縮部材23についても、腰下部伸縮部材21F,21Bと同様に、太さが620dtex以下の伸縮部材を縦方向の間隔を7.0mm以下として不織布間に配置固定できる。
【0038】
(パンツ型使い捨ておむつの第2の実施の形態:参考形態)
図7及び図8に示す第2の実施の形態(参考形態)は、第1の実施の形態(本発明)と異なる点として、股部Lに股部伸縮部材23を設けない、しかも腰下部伸縮部材21F,21Bは吸収主体10を横断して周方向に連続して不織布間に配置固定したものである。
【0039】
(パンツ型使い捨ておむつの第3の実施の形態:参考形態)
図9は、第1の実施の形態(本発明)と異なる点として、股部Lに股部伸縮部材23を設けない、しかもウエスト伸縮部材20F,20Bを、中央にはこれを配置しないで脇部のみとした構造の、図3と同様の展開状態のものを示すものである。図10に使用状態を示す。
【0040】
(パンツ型使い捨ておむつの第4の実施の形態:参考形態)
図11は、外形シート1を、幅方向中央シート1Aと、両側部のサイドシート1B、1Bにより構成し、各サイドシート1B、1Bとしてたとえば不織布間に網目状たとえば格子状に糸ゴムを固定したものを用いたものである。そして幅方向中央シート1Aに両側部のサイドシート1B、1Bを接合し、各サイドシート1B、1Bを周方向及び前後方向に伸縮するようにしたものである。この場合における、周方向の糸ゴムはウエスト部W及び腰下部Uの伸縮部材を形成する。
【0041】
(パンツ型使い捨ておむつの各形態についての補足説明及び他の実施の形態)
上記の第1〜第4の実施の形態を概念的に纏めると、それぞれ図12の(A)〜(D)に示すとおりとなる。これらを比較して推測できるように、ウエスト伸縮部材20F,20B、ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは、吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する形態と、吸収コア13が位置する中央部には存在せず、製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることができる。また、股部伸縮部材23の配設の有無についても選択可能である。さらに、前身頃Fと後身頃Bとの間で伸縮部材の配設形態を相違させることもできる。したがって、図12の(E)に他の実施の形態として示すように、ウエスト伸縮部材20F,20B、ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bを、吸収コア13が位置する中央部には存在せず、製品の左右脇部においてのみ配置固定し、さらに股部伸縮部材23を設けない形態や、図12の(F)に別の実施の形態として示すように、ウエスト伸縮部材20F,20B、ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bを、吸収コア13が位置する中央部には存在せず、製品の左右脇部のおいてのみ配置固定し、さらに股部伸縮部材23を設ける形態なども採用できる。このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言する。腰下部伸縮部材21F,21B、または股部伸縮部材23を、吸収コア13が位置する中央部には存在せず、製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する場合において、腰下部伸縮部材21F,21B端部、または股部伸縮部材23の端部が吸収コア13の側縁部に重なる場合と、吸収コア13の側縁に達しないで離間する場合との両者を含む。
【0042】
また、上記例はほぼ砂時計形状の外形シート1に対して長方形の吸収主体10を接合してあるが、外形シート1と同形状の透液性トップシート11を設け、これらの間に吸収体ABを設ける形態でもよい。さらに、外形シート1と吸収主体10とが境界なく一体化してある形態でもよい。
【0043】
製品の外面を構成するシートは、上記例では2枚または3枚以上の通気・撥水性の不織布を積層固定したものであるが、1枚の不織布でもよく、この場合にはその不織布の使用面側に伸縮部材を接合することができる。さらに積層する不織布間の中間にプラスチックシートを介在させたり、または裏面側不織布の使用面側に張り合わせたりすることができる。
【0044】
腰下部伸縮部材21Fまたは腰下部伸縮部材21Bは、格子網状に配設することでもよい。この1例が図11に示す形態(参考形態)である。この種の形態でも弾性伸縮部材は本発明で規定する縦方向に間隔を有する。
【0045】
さらに、本発明は、少なくとも前身頃Fのウエスト伸縮部材20F及び腰下部伸縮部材21Fが、ウエスト開口縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の胴周り部Tの60%以上,望ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の長さ範囲にわたって存在する限りにおいて、規定する太さ及び間隔を有すれば足りるものであり、したがって、最大40%領域においては、腰下部伸縮部材21Fが本発明で規定する太さまたは間隔を有しなくとも、全体としてのすっきり感を損なうことはない。
【0046】
具体例を挙げてより詳説すると、図13に拡大して示すように、7mm以下の間隔配置のウエスト伸縮部材20F,20F…の長さaと、腰下部伸縮部材21F,21F…の配置のうち、7mmを超える長さ範囲部分を除き、7mm以下の長さ範囲b及びcとの合計長さの、胴周り部Tの長さに対する割合が(すなわち(a+b+c)/T)が60%以上であることを規定するものである。
【0047】
他方で、製品の中央部(吸収コアのほぼ全体領域)に、図14に示すように、不透液性バックシート12の裏面側にキャラクターなどのデザインをたとえば印刷により施すことができる。このデザイン部分は、ある程度の剛性を有する吸収コア13を有し、かつ本発明にしたがって外形シート1が変形したり皺を生じたりすることがないために、そのデザインが崩れることなく鮮明に分かるものとなる。また、図14に示すように、製品の正面と裏面とに対応して、当該キャラクターの正面と背面とを施すと、誰でも一目で前後を判別でき、おむつ換えが楽しくなり、着用者も喜ぶものとなる。デザインを施したデザインデザインシートを外形シート間に介在させることでもよい。また、外形シート1にデザイン印刷することもできる。
【0048】
ところで、外形シート1には、股間部または股下部をフィットさせるために、種々の形態で伸縮部材を設けることができる。
図15は、前脇部の端部から股部Lのレッグ開口縁にほぼ平行に後脇部の端部に亘って、それぞれ股部伸縮部材24,24を外形シート1の不織布間に固定したものである(参考形態)。この参考形態では、股部伸縮部材24がレッグ開口部LOを収縮させ、体液の漏れを防止する。なお、股部伸縮部材24,24を明示するために、吸収主体10を仮想線で示してある。
【0049】
図16は、前身頃F及び後身頃Bにおいて、左方の脇部の端部から股下部を横断するように右方の脇部の端部に亘って、それぞれ股間・股下部伸縮部材25F,25Bを外形シート1の不織布間に固定したものである(参考形態)。また、この参考例においては、前身頃F側と後身頃B側の股間・股下部伸縮部材25F,25Bが一部交差する形態としてある。
【0050】
図17は、前身頃F及び後身頃Bにおいて、左方の脇部の端部から股下部を横断するように右方の脇部の端部に亘って、それぞれ股間・股下部伸縮部材26F,26Bを外形シート1の不織布間に固定したものである(参考形態)。この参考例においては、股間・股下部伸縮部材26F,26Bは交差することなく、股下部において平行する形態としてある。
【0051】
一方、図18に示すように、股下部分において、吸収主体10、特に吸収コア13の幅より外形シート1の幅が狭いようにする(参考形態)こともできる。この図18の参考形態や前述の形態において、吸収コア13の側縁より外方へ食み出る外形シート1はヒラヒラしがちであり、製品全体にすっきり感を得ようとするときの問題となる。そこで、第1の形態の股部伸縮部材23と同様に、股部Lの両側に整形伸縮部材27を外形シート1の不織布間に設け、食み出る外形シート1を中央側に寄せることで、ヒラヒラ感を解消することができる。この場合において、整形伸縮部材27群の外端部はホットメルト接着剤によるシール線28により固定することにより、整形伸縮部材27群の外端部の中央側への引き込みを防止することができる。
【0052】
図19は同様にヒラヒラ感を解消するために、前身頃F及び後身頃Bにおいて、左方の脇部の端部から股部を横断するように右方の脇部の端部に亘って、それぞれ整形伸縮部材29,29を外形シート1の不織布間に固定したものである(参考形態)。この参考形態では、整形伸縮部材29に中間の周方向部分が、吸収コア13の側縁より外方に食み出る外形シート1を中央側に寄せることで、ヒラヒラ感を解消することができるとともに、整形伸縮部材29の端部が脇部の端部に亘るので、股部を胴周り部T側に持ち上げるように作用し、腹部及び臀部のたるみを解消し、よりすっきり感に富むものとなる。
【0053】
(テープ式紙おむつの第1の実施の形態:参考形態)
前述のように、本発明はパンツ型使い捨ておむつのほか、テープ式紙おむつをも対象とする。この第1の実施の形態(参考形態)を図20及び図21に示す。この参考例においては、両側部に起立シート41,41を有し、これらの自由起立部の先端部に伸縮部材51,51が設けられ、起立カフスC,Cを構成している。起立シート41は外形シートと同様の裏面シート1と接合されている。42は背側の左右両側部を腹側の左右両側部に持ち込み、接合するためのテープファスナーである。この例において、前身頃F及び後身頃Bの長手方向端部において、ウエスト部Wにおける外形シート(裏面シート)1の不織布間には、ウエスト周りのフィット性を高めるために、ウエスト開口部WOの端縁に平行に間隔を置いて細い糸ゴムからなるウエスト伸縮部材20F,20Bが伸縮するように伸長下に配置固定されている。さらに前身頃Fの下腹部及び後身頃Bの臀部に、中央部を除く脇部に周方向に沿って腰下部伸縮部材21F,21Bが設けられている。
【0054】
(テープ式紙おむつの第2の実施の形態:参考形態)
第2の実施の形態(参考形態)を図22及び図23に示す。この参考形態は起立カフスを有しない例である。そして、吸収コア13の外方のフラップ部に縦方向に沿って伸縮部材52,52が、透液性トップシート11とバックシート12との間に固定されている。この例においても、ウエスト伸縮部材20F,20B、及び腰下部伸縮部材21F,21Bが設けられている。
【0055】
(伸縮部材について)
上記の伸縮部材としては、天然ゴムや合成ゴムなどの材質のほか、ウレタンなどの弾性伸縮性のものを用いることができる。
【0056】
(実施例)
腰下部の伸縮部材の太さ及び配置間隔を種々変更した上で、得られた製品における外面に生成される皺の状態を観察したところ、表1に示すようになった。
【0057】
【表1】

【0058】
この結果から、伸縮部材の太さと縦方向の間隔の両者が皺の生成に関与し、本発明で規定する範囲のもののみが皺が生成するとしても木目細かく、見栄えに優れた外観を呈するものが得られることが判る。
【符号の説明】
【0059】
1…外形シート、4…股下、10…吸収主体、12…バックシート、13…吸収コア、AB…吸収体、C…バリヤーカフス、20F,20B…ウエスト伸縮部材、21F,21B…腰下部伸縮部材、23…股部伸縮部材、T…胴周り部、U…腰下部、L…股部、W…ウエスト部、WO…ウエスト開口部、LO…レッグ開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用状態においてウエスト開口部及び左右のレッグ開口部が形成され、ウエスト開口縁を含むウエスト部と、該ウエスト部の下端から前記レッグ開口始端に至る腰下部とからなる胴周り部において、周方向に沿い、かつ縦方向に間隔をもって配置された多数の伸縮部材を有し、かつ縦方向に沿って前記腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有する使い捨て紙おむつであって、
さらに、この使い捨て紙おむつは、製品の外面を構成し、前記胴周り部の前記伸縮部材が配置された外形シートと、前記外形シートの内面側に固定され、前記吸収コア、透液性トップシート及び不透液性バックシートを有する吸収主体と、を備えており、
少なくとも前身頃において、前記伸縮部材は、前記胴周り部の60%以上の長さ範囲にわたって前記間隔を7.0mm以下とされた状態で配置され、
前記ウエスト部の前記伸縮部材は、ウエスト部全体に周方向に沿って連続して配置され、
前記腰下部の複数の前記伸縮部材は、その端部が前記吸収コアの側縁部と重なって前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され、太さが620dtex以下であり、配置間隔が前記ウエスト部の伸縮部材の配置間隔に対して短く配置され、
前記レッグ開口部を形成する長さ範囲である股部の40%以上の長さ範囲にわたってレッグ開口部側に偏倚した部位に複数の股部伸縮部材が、縦方向の間隔を7.0mm以下とされた状態で前記外形シートに配置され、前記股部伸縮部材は、その端部が前記吸収コアの側縁部と重なって前記股部の中央部を除く左右脇部に周方向に配置され、太さが620dtex以下であり、前記股部の股部伸縮部材の配置間隔が、前記ウエスト部の前記伸縮部材の配置間隔に対して短い、
ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。
【請求項2】
前記腰下部に配置された前記伸縮部材の少なくとも一部は、5.0mm以下の間隔をもって、隣接して5本以上配置されている、請求項1記載の使い捨て紙おむつ。
【請求項3】
前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は、前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さい、請求項1または2に記載の使い捨て紙おむつ。
【請求項4】
前記ウエスト部、腰下部、及び股部の伸縮部材は紙おむつの外面を構成する外形シートに対して配置されており、前記外面を構成する外形シートと前記伸縮部材の色とが同色である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て紙おむつ。
【請求項5】
ウエスト開口縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の胴周り部に配置された伸縮部材は、前記ウエスト開口縁から縦方向に30mm以内の位置から、レッグ開口始端からウエスト開口縁側の10mm以内の位置に至る長さ範囲にわたって配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨て紙おむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−81869(P2013−81869A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−27655(P2013−27655)
【出願日】平成25年2月15日(2013.2.15)
【分割の表示】特願2008−288487(P2008−288487)の分割
【原出願日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【出願人】(593070192)ダイオーペーパーコンバーティング株式会社 (20)
【Fターム(参考)】