説明

使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法

【課題】現状では産業廃棄物として埋め立て処分されるか、または焼却処分されている、使用済みチップ型電子部品梱包材を、紙の部分は再生紙にマテリアルリサイクルし、プラスチックの部分はサーマルリサイクルする方法を提供する。
【解決手段】使用済みのチップ型電子部品梱包材を水に離解し、スクリーンでパルプとプラスチックを分離し、パルプは紙に再生し、プラスチックは燃焼させて熱エネルギーとして回収する使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法であり、離解は固形分濃度5%〜30%、且つ、50℃以上70℃未満の温度の条件下で離解し、スリット幅0.05〜0.3mmのスリットスクリーンを通過させてパルプとプラスチックを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法に関し、より詳しくは、使用済みのチップ型電子部品梱包材(キャリアテープ)から、紙の原料となるパルプと熱エネルギーとなるプラスチックを分離する使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リサイクル/リユースが求められながら現状では産業廃棄物として埋め立て処分されるか、または焼却処分されているものにチップ型電子部品梱包材がある。チップ型電子部品梱包材には部品をマトリクスに整列させるトレー、部品を筒状の中に一列に整列させるマガジンチューブ、部品をバラバラに袋或いは箱状に封入するバルク、部品をひとつひとつ個別に、しかも連続したテープを巻物にしたキャリアテープなどがある。トレーについては規格の統一化、基準化が進んでいるためリユースされている。またマガジンチューブについてもその動きが進んでおり、産業廃棄物削減の成果が上がっている。
【0003】
チップ型電子部品梱包材の中でキャリアテープは、設備対応普及度、多様化、作業性、信頼性、省スペースという点で最も優れたチップ型電子部品梱包材として大量に使用されている。キャリアテープは紙やプラスチック等から構成され,チップ型電子部品を収納するキャビティを持つ幅8mm程度のテープ状の基材とそのキャビティを塞ぐカバーテープとからなるものである。使用方法としてはキャリアテープを巻いてテープリールにし、テープリールを電子部品自動装着装置(マウンター)に装填する。そしてテープリールからキャリアテープを引き出し、電子部品装着装置の所定位置にキャリアテープが送られると、カバーテープが剥離され、電子部品自動装着装置のマシンハンドがキャリアテープに形成されているキャビティ内の電子部品を保持してキャリアテープから取り出し、この電子部品を回路基板の所定の位置に装着する。電子部品が取り外された使用済みのキャリアテープは、電子部品自動装着装置のキャリアテープは排出口から排出され、排出されたキャリアテープは作業者が適宜切断するか、自動的に適当な長さに切断されて、廃棄物として処理されている。
【0004】
上記使用済みキャリアテープは、作業者が適宜切断するタイプと、機械が自動的に排出口で切断するタイプがあり、前者の場合にはメートル単位の比較的長く切断された状態(長尺)で蓄積され、また、後者の場合には、数mm〜数cm単位の短い長さにカットされた状態で電子部品自動装着装置下部あるいは集塵の為の吸引ホースを通じて別途設置された箱中に堆積される。
【0005】
カット長さが上記2つのいずれのタイプにおいても、使用するチップ型電子部品により紙製のものとプラスチック製のものの両者とを用いており、混在した状態でしか回収できないのが殆どであるため、産業廃棄物として処理されているのが現状であった。また、紙製のキャリアテープにおいても、キャビティを作る際に打ち抜き処理をされたタイプ(パンチ品)については、ボトムテープと呼ばれる薄いプラスチックフィルム(ポリエチレンフィルムが主)が裏面にヒートシールされて、電子部品を格納するキャビティが形成されており、一般のラミネート古紙の処理以上に古紙パルプを得るのが困難な状況であった。
【0006】
紙とプラスチックが混在する使用済みキャリアテープから、パルプを再生する際の、もう一つの課題は、プラスチックの割合が多いことである。紙とプラスチックの割合は、電子部品が比較的大きい場合にはプラスチックエンボスが多く使用され、電子部品が比較的小さい場合には紙製が多く使用される、という特徴があるものの、平均すると全体の4割〜6割くらいプラスチックが混入しており、パルプの回収を妨げる要因となっている。
【0007】
特開2006−314912公報(特許文献1参照)には、キャリアテープの断裁片をプラスチック製と紙製のものに、振動分別機及び風力分別機で分離し、再利用可能な有価物として利用する方法が開示されている。しかしながら、この方法では大掛かりな設備が必要であり、また比重の差異によって分別する機構である為、比重の近い紙とプラスチックを正確に分別することは困難である。その他、使用済みキャリアテープの有効利用の方法としては、特願2007−31767号明細(特許文献2参照)には、産廃処理されている使用済みキャリアテープを、同じく産廃処理されているボイラ燃焼灰に混合することにより、ボイラ燃焼灰を再度燃料として有効活用できるようにする方法が記載されている。また、特願2007−83810号明細(特許文献3参照)には、使用済みキャリアテープを、水分を多く含むため処理に大きな費用のかかる、或いは、産廃処理されている、排水処理場や製紙工場などで発生する汚泥状の不溶性物質(スラッジ)に混合することにより、スラッジの水分を少なくし、そのままボイラ燃料としてサーマルリサイクルする方法が記載されている。これらは、現在産廃処理されている使用済みキャリアテープを、同じように産廃処理されている別の廃棄物と組合せることにより、燃料として有効活用して環境負荷を下げる、という点で効果があるが、使用済みキャリアテープの中の紙の部分をできれば再生紙として活用されることが望まれている。
【特許文献1】特開2006−314912号公報
【特許文献2】特願2007−31767号明細
【特許文献3】特願2007−83810号明細
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現状では産業廃棄物として埋め立て処分されるか、または焼却処分されている、チップ型電子部品梱包材を、効率的に紙の部分とプラスチックの部分に分け、紙の部分は再生紙に、プラスチックの部分は燃料として使用して、熱エネルギーとして有効活用する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記問題に鑑み、有効に利用されることなく廃棄物として廃棄される使用済みのチップ型電子部品梱包材を効率良く、パルプの部分とプラスチックの部分に分離する方法を見出して本発明を完成した。本発明は以下の発明を包含する。
(1)使用済みのチップ型電子部品梱包材を水に離解し、スクリーンでパルプとプラスチックを分離し、パルプは紙として再生し、プラスチックは燃焼させて、熱エネルギーとして回収する使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
(2)使用済みのチップ型電子部品梱包材を固形分濃度5%〜30%、且つ、50℃以上70℃未満の温度の条件下で離解し、スリット幅0.05〜0.3mmのスリットスクリーンを通過させてパルプを得る(1)記載の使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
(3)使用済みのチップ型電子部品梱包材を離解した直後に、孔径1.0〜5.0mmの丸穴スクリーンを通過させた後に、スリット幅0.05〜0.3mmのスリットスクリーンを通過させてパルプを得る(1)又は(2)に記載の使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
(4)使用済みのチップ型電子部品梱包材を15%〜30%の高濃度で離解する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
(5)前記使用済みチップ部品梱包材が長さとして500mm以下の大きさに細断・破砕処理する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
【発明の効果】
【0010】
リサイクル/リユースが求められながら現状では産業廃棄物として埋め立て処分されるか、または焼却処分されていたチップ型電子部品梱包材を、パルプの部分は再生紙としてマテリアルリサイクルし、プラスチックの部分はサーマルリサイクルすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
使用済チップ型電子部品梱包材の中でもキャリアテープといわれるものはチップ型電子部品の大きさや用途により紙製のものとプラスチック製のものがある。チップ型電子部品梱包材としての使用量は非常に多く、大量に発生するが、紙製のものとプラスチック製のものの両者が混在し、個別に回収することが困難で、産業廃棄物として処理するしかない状況にある。
紙製以外のプラスチック製のものでは原料としてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、ポリカーボネート、ポリエステルスルホン、フェノールホルムアルデヒド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、スチレンブタジエンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が使用可能とされており、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が主に使用されている。これらは燃焼時に4500kcal/kg以上の熱量を発するため、パルプ繊維分と分離した後のプラスチックは、熱回収ボイラの燃料とすることにより、熱エネルギーとして回収することが可能となる。
【0012】
本発明では、使用済みのチップ型電子部品梱包材を、紙とプラスチック混在のまま水に離解し、スクリーンでパルプとプラスチックを分離し、パルプは再生紙として利用するとともに、分離したプラスチックは燃焼させて、熱エネルギーとして回収する。
【0013】
また本発明では、使用済みのチップ型電子部品梱包材を離解する際には、固形分濃度5〜30%、且つ、50℃以上70℃未満の温度の条件下で離解し、スリット幅0.05〜0.3mmのスリット型スクリーンで処理することが好ましい。その理由は、自動的にカットされたタイプの使用済みキャリアテープについては、2mm程度の長さの紙テープやプラスチックテープが混在しているためである。使用済みキャリアテープのうち長尺品を破砕したものについては特に問題にはならない。プラスチックテープ、すなわちプラスチックエンボスについてはある程度の厚さがあるため、後段のスリット型スクリーンで比較的簡単に除去可能であるが、紙キャリアテープの裏面にヒートシールされているボトムテープは、通常15〜50μm程度の厚さのポリエチレン製のテープであるため、長さが数ミリと小さい場合、後工程のスリットスクリーンで通常の条件で処理される際は、厚さ方向でスリットを抜けてしまうとアクセプト側に流れてしまう。しかし本発明では、パルパーにて50℃以上70℃未満の温度をかけるために、ポリエチレンフィルムが変形し、後段のスクリーンスリットを通り抜けづらくしている。
本発明では離解中の固形分濃度は、5〜30質量%が好ましい。5%未満では温度をかける際にエネルギーの消費量が多くなり経済的でなく、30%以上ではパルパーの攪拌時に負荷が掛かりすぎ、うまく離解できないため好ましくない。中でも15〜30%の固形分濃度での離解がエネルギーと離解の効率の点でさらに好ましい。
【0014】
本発明において離解に使用するパルパーは、通常に製紙産業で使用されるものであれば特に制限はないが、低濃度(6%以下)、中濃度(6〜10%)、高濃度(10%〜30%)で、バッチ式、或いは連続式のパルパーが使用できる。より具体的には、低濃度パルパー、高濃度パルパー、ドラムパルパーなどが使用でき、低濃度パルパーとしては、ハイドラパルパー、ローターパルパー、横型パルパーなどが、高濃度パルパーとしては、ヘリディスクローター、ニーディングパルパーなどが挙げられるが、これにより限定するものではない。
【0015】
本発明では、50℃以上70℃未満の温度下で離解処理をされたパルプ含有スラリーを希釈してスクリーンによりパルプを取り出し、フィルムを除去する。スリットスクリーンは、製紙産業で通常使用される精選工程用スリットスクリーンが使用可能で、そのスリット幅は0.05〜0.30mmの範囲のものが好ましい。0.05mmより狭いとフィルムが通る確率は小さくなるがパルプが通りづらくなり処理量が上がらない。また、0.30mmより大きいとフィルムが通りやすくなってしまう。
【0016】
また、本発明では、使用済み電子部品梱包材を離解した直後に、孔径1.0〜5.0mmの丸穴スクリーンを通過させることが好ましい。使用済みキャリアテープの中のプラスチックエンボスの割合は実装機(マウンター)毎に相違があるが、平均すると通常4割〜6割程度あり、孔径1.0〜5.0mmの丸穴スクリーンで粗選のためのスクリーン処理を行うことにより、スラリー中のプラスチックの9割以上を取り除くことが可能となる。これにより後段のスリット幅は0.05〜0.30mmの範囲スリットスクリーン処理において、スクリーンバスケットにフィルム類が付着することによるスリット閉塞トラブルを回避することが可能となり、効率的にパルプとプラスチックを分離することが可能となる。
【0017】
本発明においては特に限定するわけではないが、離解時あるいは離解後に機械的剪断力をかけると、さらにフィルムを変形させることができるため好ましい。具体的には、スクリュー式の一軸ミキサーまたは二軸ミキサー、ディスパーザー、ニーダー、マイカプロセッサーなどが使用できる。これらの装置にパルプスラリーを温度が50℃以上70℃未満となるような条件で通過させ、フィルムが軟化している状態で機械的剪断力をかける。それにより、フィルムが平らな状態ではなく、カールしたような状態となり、その後のスクリーンを通過しなくなる。離解機としてニーディングパルパーを使用すれば、温度をかけながら離解工程と剪断力をかける工程を同時に経ることができるため効率が良い。
【0018】
本発明においては、使用済みキャリアテープが小片化されていることが好ましく、特に長さ500mm以下の大きさに予め細断又は破砕処理することが好ましい。本発明により処理される使用済みキャリアテープは、前述の長尺のタイプのもの、及び、自動的に細かくカットされたタイプのもの、いずれも使用することができるが、特に長尺のキャリアテープの場合には、細断又は破砕をすることにより、500mm以下の長さに切断されていると、離解機の中で絡まって離解されづらくなるのを防止することができるため好ましい。破砕の方法に制限は無く、一般に廃棄物処理等に利用されている破砕機類が使用可能であり、具体的には一軸破砕機、二軸破砕機などを用いて破砕することが可能である。その他小片化する方法としては、紙やプラスチック類を細かくするためのシュレッダー、断裁機等を使用することが出来るが数10cm程度の大きさ以下に細断出来るものであれば特に限定されるものではない。一方、カット品については、長尺のものが混入してない限り、小片化することなくそのまま使用することができる。
【0019】
本発明で得られるパルプは、紙キャリアテープの原料として使用されているパルプに、広葉樹・針葉樹晒クラフトパルプの含有率が高いことから、白色度が高い。印刷工程を経ることがないため脱墨の必要もなく強度の低下が少ないため、単独でも、他のパルプと混合しても、いろいろな用途の紙に再生することが可能である。他のパルプとしては例えば、針葉樹、広葉樹をクラフトパルプ化、サルファイトパルプ化、アルカリパルプ化して得られる未晒、及び晒化学パルプ、或いはコットンパルプ、リンターパルプ、或いはGP(グラウンドパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)等の機械パルプ、古紙パルプ等が挙げられる。古紙パルプとしては、上白・カード、特白・中白・白マニラ、模造・色上、新聞、雑誌、切付・中質反古、茶模造、段ボール、台紙・地券、ボール、等より調製されるパルプが使用できるが、本発明とともに使用される古紙として限定するものではない。これらの古紙は離解、除塵処理後、そのまま使用されることもあるが、必要に応じて、脱墨、漂白、インク分散、洗浄、等の各工程を経た後、古紙パルプとして使用できる。
【0020】
本発明で得られたパルプを含んだスラリー組成物には、必要に応じて、適宜、紙力増強剤、耐水化剤、撥水剤、発泡性マイクロカプセル、サイズ剤、染料、歩留向上剤、填料、PH調整剤、スライムコントロール剤、増粘剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、防腐剤、殺鼠剤、防虫剤、保湿剤、鮮度保持剤、脱酸素剤、マイクロカプセル、発泡剤、界面活性剤、電磁シールド材、帯電防止剤、防錆剤、芳香剤、消臭剤等を選択し配合することができる。これらは複数種併用することもできる。
【0021】
本発明により得られたパルプは、勿論、手抄により再生紙とすることも可能であるが、通常は、1つ以上のワイヤーパートを備えた抄紙機により抄造される。ワイヤー型式としては、円網式、短網式、長網式、傾斜式、ツインワイヤー式、等がある。また、本発明で得られたパルプは、板紙やライナー・中芯等、2層以上の厚紙を抄紙する際に使われる多段式の抄紙機にて使用することもできる。また、乾燥方法についても一般に製紙用として使用される方式、例えばヤンキードライヤー、多筒式ドライヤー等を使用することができる。
【0022】
上記再生紙には、必要に応じて、表面又は裏面へ、表面処理剤を塗工することや、顔料塗被組成物を塗工することができる。表面処理剤、顔料組成物、塗工量についても特に制限はない。
【0023】
一方、使用済みキャリアテープの中のプラスチック部分は、使用済みキャリアテープからパルプ繊維を分離する前述の工程の中で、スクリーンの目穴を通過できないリジェクト分として分離回収することが出来る。具体例を示すならば、離解工程では、低濃度パルパーの離解時に連続的に水に離解しないものを回収する、パルソーター、ハイドラパージ、セレクトパージ、ドラムスクリーン、トロンメル、スラッシュソーター等、高濃度パルパーでは希釈した後の、振動スクリーン、ヤンソンスクリーン等、ドラムパルパーでは古紙供給側と反対側から粕を直接排出することができる。その後の除塵工程では、高濃度クリーナー、低濃度クリーナー、粗選スクリーン、精選スクリーン、リジェクトセパレーター、スラッシュセパレーター、SSセパレーター、ダブルセパレーター等の機械の、各々のリジェクトとして分離回収することができる。また、抄紙直前の原料ラインでもスクリーンが設置されている場合には、そのスクリーンのリジェクトとして分離回収させることもできる。
【0024】
上記の通り、分離回収されたプラスチック部分は、勿論、プラスチックだけでなく、水に離解しきれなかった未離解パルプ繊維分とともに分離回収されるが、多くの水分を含んでいるため、ボイラ燃料に供給する前に脱水処理を施すことが望ましい。具体的には、ドラム式脱水機、スクリュープレス、シリンダープレス、サクションプレス、ドラムエキスト、フィルタープレス、ディスクフィルター、SPフィルター、等が挙げられるが、これにより限定されるわけではない。
【0025】
燃焼させる装置、すなわち、ボイラについては固体燃料を燃焼できる燃焼装置であれば特に制限は無いが、燃焼温度は800℃〜1,100℃で燃焼することが好ましい。800℃未満では、一般的に知られている通りダイオキシン等の発生が懸念されるため好ましくない。また1,100℃以上にしてもエネルギーの無駄であるし、炉が痛みやすく好ましくない。また、燃焼後の焼却灰は、有害物質を除去・封鎖し、セメント材料、土壌改良材、等として再利用することが環境への配慮上好ましい。
本発明により、使用済みキャリアテープ中のプラスチックがサーマルリサイクルされる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
紙製及びプラスチックエンボスの使用済みキャリアテープ長尺品を300kg準備した。紙製のものとプラスチック製のものの比率は質量比で6:4であった。またこの使用済みキャリアテープに含まれる樹脂の種類は、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンであった。二軸破砕機による破砕処理により、平均30cm程度の小片に破砕したものをニーディングパルパー(日本車輌製造製、型式:KNP−10型)に投入し、水で希釈して固形分濃度(質量)20%とすると同時に蒸気を入れ、離解時の温度を67℃とした。投入後30分でパルパー下部の取り出しスクリューから離解サンプルが出てきたため、これを水で希釈して固形分濃度1.5%に希釈しつつ、5mmφの丸穴のあいた振動スクリーンに投入し、アクセプトを原料タンクに溜め込んだ。このアクセプト原料を0.25mmのスリットバスケットを有するスクリーンに通して、スリットスクリーンアクセプト原料を得た。この乾燥原料100g分に含まれるプラスチックの量を測定した結果、0gであった。このアクセプト原料を白ライナー5層抄マシンの2層目(表下)の原料として使用し、白ライナーを抄造したが、特に問題なく抄造可能であった。
一方、ニーディングパルパー離解後の振動スクリーンでリジェクトされたもの、及び、スリットスクリーンのリジェクトは、いずれも主にプラスチックエンボスやボトムテープであり、熱により変形していた。これらはスクリュー式脱水機で固形分濃度20%程度まで脱水した後、ボイラに燃料として供給し、熱エネルギーとして回収することができた。
【0027】
実施例2
紙製及びプラスチックエンボスの使用済みキャリアテープカット品を300kg準備した。紙製のものとプラスチック製のものの比率は質量比で6:4であった。樹脂の種類は、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンであった。二軸破砕機にかけたが、形状に変化はなく、ニーディングパルパー(日本車輌製造製、型式:KNP−10型)に投入し、水で希釈して固形分濃度(質量)20%とすると同時に蒸気を入れ、離解温度を67℃とした。投入後30分でパルパー下部の取り出しスクリューから離解サンプルが出てきたため、これを水で希釈して固形分濃度1.5%に希釈しつつ、5mmφの丸穴のあいた振動スクリーンに投入し、アクセプトを原料タンクに溜め込んだ。このアクセプト原料を0.15mmのスリットバスケットを有するスクリーンに通して、アクセプト原料を得た。この乾燥原料100g分に含まれるプラスチックの量を測定した結果、0gであった。このアクセプト原料を中芯原紙単層抄マシンの原料に固形分として10%分使用し、中芯原紙を抄造したが、特に問題なく抄造可能であった。
一方、ニーディングパルパー離解後の振動スクリーンでリジェクトされたもの、及び、スリットスクリーンのリジェクトは、いずれも主にプラスチックエンボスやボトムテープであり、熱により変形していた。これらはスクリュー式脱水機で固形分濃度20%程度まで脱水した後、ボイラに燃料として供給し、熱エネルギーとして回収することができた。
【0028】
比較例1
紙製及びプラスチックエンボスの使用済みキャリアテープカット品を300kg準備した。紙製のものとプラスチック製のものの比率は質量比で6:4であった。樹脂の種類は、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンであった。二軸破砕機にかけたが、形状に変化はなく、ニーディングパルパー(日本車輌製造製、型式:KNP−10型)に投入し、水で希釈して固形分濃度(質量)20%とすると同時に蒸気を入れ、離解温度を45℃とした。投入後30分でパルパー下部の取り出しスクリューから離解サンプルが出てきたため、これを水で希釈して固形分濃度1.5%に希釈しつつ、5mmφの丸穴のあいた振動スクリーンに投入し、アクセプトを原料タンクに溜め込んだ。このアクセプト原料を0.15mmのスリットバスケットを有するスクリーンに通して、アクセプト原料を得た。この乾燥原料100g分に含まれるプラスチックの量を測定した結果、0.32gであった。このアクセプト原料にはプラスチックが混入しているため製紙原料として使用すると欠点となる可能性があるため使用できなかった。
【0029】
現状では産業廃棄物として埋め立て処分されるか、または焼却処分されている使用済チップ型電子部品梱包材を、パルプの部分を効率的に再生紙にマテリアルリサイクルし、プラスチックの部分をボイラに供給することによりサーマルリサイクルすることが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みのチップ型電子部品梱包材を水に離解し、スクリーンでパルプとプラスチックを分離し、パルプは紙として再生し、プラスチックは燃焼させて、熱エネルギーとして回収することを特徴とする使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
【請求項2】
使用済みのチップ型電子部品梱包材を固形分濃度5%〜30%、且つ、50℃以上70℃未満の温度の条件下で離解し、スリット幅0.05〜0.3mmのスリットスクリーンを通過させてパルプを得ることを特徴とする請求項1記載の使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
【請求項3】
使用済みのチップ型電子部品梱包材を離解した直後に、孔径1.0〜5.0mmの丸穴スクリーンを通過させた後に、スリット幅0.05〜0.3mmのスリットスクリーンを通過させてパルプを得ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
【請求項4】
使用済みのチップ型電子部品梱包材を15%〜30%の高濃度で離解することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。
【請求項5】
前記使用済みチップ部品梱包材が500mm以下の大きさに予め細断又は破砕処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用済みチップ型電子部品梱包材の処理方法。

【公開番号】特開2009−45533(P2009−45533A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212520(P2007−212520)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】