説明

使用済み紙おむつ処理装置及び処理方法並びに発酵処理装置

【課題】 使用済み紙おむつから燃料を得る際の熱量転化効率を向上すると共にランニングコストを低下させ、且つ設備を小型化すると共にトータル的にCOの削減に寄与すると共に外部に臭気が漏れ出ることがない紙おむつ処理装置及び処理方法並びに発酵処理装置を提供する。
【解決手段】 使用済み紙おむつを投入する開閉自在な開口部24を有すると共に前記使用済み紙おむつを保持する処理槽21と、この処理槽21内に保持された前記使用済み紙おむつを破砕すると共に発酵菌と共に攪拌する破砕手段22と、前記処理槽21内の雰囲気ガスを吸引排気して当該処理槽21内を陰圧にする排気手段40と、この排気手段40による臭気ガスを脱臭する脱臭手段50と、前記処理槽21内の前記使用済み紙おむつの破砕物を加熱して当該使用済み紙おむつの水分含有量を調整して発酵処理物とすると共に当該発酵処理物を所定時間加熱殺菌して処理物とする加熱手段23とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつ発酵処理することで燃料となる処理物を得ることができる使用済み紙おむつ処理装置及び処理方法並びに使用済み紙おむつ等に利用されて使用済み紙おむつ等を破砕すると共に発酵させて燃料となる処理物を得ることができる発酵処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や老人ホーム、家庭などでは幼児用又は成人用として使い捨て可能な紙おむつが広く利用されている。このような紙おむつの使用済みのもの(使用済み紙おむつ)は焼却処分されているのが現状であるが、使用済み紙おむつは、し尿などの水分を含んでいることから燃焼温度を高くしなければ燃焼しきれず、処理コストの増大が問題となっている。また、使用済み紙おむつの埋め立て処分も検討されているが、し尿やパルプ類は土中の微生物によって分解されるものの、防水フィルムや不織布などは分解されずに残存するという問題がある。
【0003】
このため、使用済み紙おむつを処理することで燃料等として利用するための種々の方法が採用されている。使用済み紙おむつを処理する方法としては、例えば、水溶分離法、高温蒸気による炭化処理法、植物性油加熱加工処理法及び発酵菌を用いた発酵処理法などが挙げられる。
【0004】
水溶分離法を用いた紙おむつ処理装置は、例えば、紙おむつを粉砕する粉砕機、攪拌機を備える水混合槽、排水の浄化機能を有する浮遊物回収・沈殿槽、脱臭機能を有する脱水和槽などで構成されている。そして使用済み紙おむつをシュレッダー方式等の刃物によって粉砕した後、糞尿を水溶し、糞尿と紙おむつ成分のパルプ及び高分子ポリマー等の樹脂とを分離するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、水溶分離法による糞尿処理では、糞尿を含む水溶液の処理を行う為、浄化槽等の設備が必要となり、設備が複雑化してしまうと共に高コストになってしまうという問題がある。また、水溶分離法による紙おむつの処理では、単に水洗いを行うだけであり、衛生面及び排水等に問題があり、環境問題に何ら貢献しないという問題がある。
【0006】
さらに、使用済み紙おむつに使用されているプラスチック等の樹脂を破砕することによって刃物の摩耗や、刃物への糞尿及び樹脂のこびり付きなどにより破砕装置の破砕能力が劣化し易く、刃物の交換等のメンテナンスが必要となって高コストになってしまうという問題がある。
【0007】
また、高温蒸気による炭化処理法は、例えば、炭化装置、ボイラー、蒸気加圧加熱装置、冷却装置、脱臭装置、浄水浄化槽などで構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、高温蒸気による炭化処理では、高温蒸気作成のためのボイラー及び成果物冷却用のクーリング機構等の高額設備が必要になり、高コストになってしまうという問題がある。また、ボイラー及び成果物冷却用のクーリング装置は、燃料又は消費電力等の消費が大きく、紙おむつからの燃料転化効率が悪いという問題がある。
【0009】
また、高温蒸気法による成果物の排出工程では、成果物が一時的に高温になるため、処理停止時間が多くなるか冷却が必要になり、高コストになってしまうという問題がある。
【0010】
このように高温蒸気による炭化処理法では、衛生面では安全だが、設備が大型化してしまい、ランニングコストが高く、またボイラー等の使用でCOの排出による環境破壊につながるという問題がある。
【0011】
一方、上述した植物性油熱加工法の糞尿処理は、使用済み紙おむつを破砕することなく、有機溶剤もしくは油脂を処理触媒として間接加熱するようになっている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
しかしながら、植物性油熱加工法の糞尿処理では、植物性油等による糞尿の熱加工及びプラスチック等の樹脂を更に油を加熱し溶解するため、設備が大型化してしまうと共に油等の加熱コストがかかってしまうという問題がある。また、植物性油熱加工法の乾燥工程では、高熱溶解液状化工程後、冷却し、液状油成分と固形成分とゲル状成分をろ過分別しているが、これも設備が大型化してしまうという問題がある。
【0013】
このように植物性油熱加工法では、衛生面では安全だが、設備が大型化してしまいランニングコストが高く、またボイラー等の使用でCOの排出による環境破壊につながるという問題がある。
【0014】
また、使用済み紙おむつを発酵菌を用いて処理することでコンポストを形成する紙おむつ処理装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0015】
しかしながら、特許文献4に記載された紙おむつ処理装置では、使用済み紙おむつをコンポストとするだけであり、燃料化することは考えられていない。
【0016】
また、特許文献4でも、使用済み紙おむつをカッタとローラとによって裁断しており、使用済み紙おむつに使用されるプラスチック等の樹脂を裁断することによって刃物の摩耗や、刃物への糞尿及び樹脂のこびり付きなどにより裁断装置の裁断能力が劣化し易く、刃物の交換等のメンテナンスが必要となって高コストになってしまうという問題がある。
【0017】
【特許文献1】特開2004−025574号公報(第5〜6頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−113915号公報(第3〜4頁、第1図)
【特許文献3】特開2002−239494号公報(第3〜4頁、第1図)
【特許文献4】特開2000−247768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明はこのような事情に鑑み、使用済み紙おむつから燃料を得る際の熱量転化効率を向上すると共にランニングコストを低下させ、且つ設備を小型化すると共にトータル的にCOの削減に寄与すると共に外部に臭気が漏れ出ることがない紙おむつ処理装置及び処理方法並びに発酵処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、使用済み紙おむつを投入する開閉自在な開口部を有すると共に前記使用済み紙おむつを保持する処理槽と、この処理槽内に保持された前記使用済み紙おむつを破砕すると共に発酵菌と共に攪拌する破砕手段と、前記処理槽内の雰囲気ガスを吸引排気して当該処理槽内を陰圧にする排気手段と、この排気手段による臭気ガスを脱臭する脱臭手段と、前記処理槽内の前記使用済み紙おむつの破砕物を加熱して当該使用済み紙おむつの水分含有量を調整して発酵処理物とすると共に当該発酵処理物を所定時間加熱殺菌して処理物とする加熱手段とを具備することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0020】
かかる第1の態様では、排気手段が処理槽内を陰圧にすることで、処理槽内に使用済み紙おむつを投入する際に開口部を開放しても、開口部から外部に臭気ガスが漏れ出るのを防止することができる。また、使用済み紙おむつから処理物である燃料を得る際の熱量転化効率を向上すると共に、ランニングコストを低下させ、且つ設備を小型化すると共に対象物は燃料として使用することができるため、トータル的にCOの削減に寄与することができる。
【0021】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記開口部が廃棄袋に密封された複数の使用済み紙おむつをそのまま投入可能な開口面積を有することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0022】
かかる第2の態様では、廃棄袋のまま処理することができるため、汚物に直接触れることなく投入作業を簡略化することができると共に、使用済み紙おむつの臭気が周囲に漏れるのを防止することができる。
【0023】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記加熱手段が発酵処理及び乾燥処理の第1の温度と、殺菌処理の第2の温度とに加熱するように制御する制御手段を有することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0024】
かかる第3の態様では、使用済み紙おむつを破砕及び裁断した破砕物の発酵及び乾燥を容易に且つ確実に行うことができると共に、加熱殺菌することで安全性の高い処理物を製造することができる。
【0025】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記加熱手段が、熱風を用いた加熱を行うものであることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0026】
かかる第4の態様では、熱風により加熱することによって、処理槽内を均一に所定の温度で加熱することができると共に処理槽内の温度制御を容易に行うことができ、効率よく発酵、乾燥及び殺菌を行うことができる。
【0027】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記脱臭手段が、少なくとも前記臭気ガスを脱臭する脱臭装置と、前記臭気ガスを脱臭処理して得られた処理ガスを熱交換するための第1熱交換器と、該第1熱交換器から排出された処理ガスを熱交換する第2熱交換器とで構成されていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0028】
かかる第5の態様では、使用済み紙おむつの発酵処理に伴って発生する臭気ガスを脱臭して無臭化できると共に、脱臭処理後の処理ガスの熱を発酵処理や脱臭処理の熱源としてリサイクルすることによって、発酵処理と脱臭処理に必要な熱コストを低減することができる。
【0029】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記第1熱交換器で熱交換された熱が、前記脱臭装置で用いられることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0030】
かかる第6の態様では、脱臭処理後の処理ガスの熱を脱臭処理の熱源としてリサイクルすることによって、脱臭処理に必要な熱コストを低減することができる。
【0031】
本発明の第7の態様は、第5又は6の態様において、前記第2熱交換器で熱交換された熱が、前記加熱手段と共に前記処理槽内の加熱に用いられることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0032】
かかる第7の態様では、脱臭処理後の処理ガスの熱を発酵処理の熱源としてリサイクルすることによって、発酵処理に必要な熱コストを低減することができる。
【0033】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記破砕手段が、前記使用済み紙おむつを攪拌により粉砕することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0034】
かかる第8の態様では、使用済み紙おむつを攪拌しながら破砕することによって、使用済み紙おむつを微細な大きさに効率よく細分化することができる。
【0035】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様において、前記破砕手段が、水平方向が回転軸で且つ左右方向に前記使用済み紙おむつを移動させる構造を有する羽根を具備し、前記羽根が前記回転軸の軸方向に所定間隔で複数設けられていると共に、複数の羽根が前記回転軸の周りに螺旋状に配置されていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0036】
かかる第9の態様では、使用済み紙おむつを攪拌しながら破砕を行うことができると共に、発酵、乾燥を効率よく行うことができ、また、破砕物を所望の領域に寄せ集めることができ、処理物を処理槽から取り出すのを容易に且つ確実に行わせることができる。
【0037】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記処理槽には、前記羽根に対向する領域に固定刃が設けられていると共に、前記羽根の先端には、前記固定刃に対して凹部の設けられた回転刃が設けられていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0038】
かかる第10の態様では、固定刃と回転刃の凹部との間で使用済み紙おむつを容易に且つ確実に破砕して細分化した破砕物を製造することができる。
【0039】
本発明の第11の態様は、第10の態様において、前記固定刃が、前記回転刃との間で前記使用済み紙おむつを破砕すると共に前記回転刃の回転方向に所定の長さで設けられた破砕用固定刃と、前記凹部との間で前記使用済み紙おむつを裁断すると共に前記破砕用固定刃よりも短い裁断用固定刃とで構成されていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0040】
かかる第11の態様では、使用済み紙おむつを裁断しながら破砕することができ、使用済み紙おむつを効率よく細分化した破砕物とすることができる。
【0041】
本発明の第12の態様は、第11の態様において、前記回転刃が、前記回転軸の軸方向に対して所定角度傾斜して設けられていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0042】
かかる第12の態様では、回転刃を軸方向に対して所定角度傾斜して設けることで、使用済み紙おむつを処理槽の全体に亘って攪拌することで破砕を効率よく確実に行うことができると共に、発酵、粉砕を効率よく行うことができ、また、破砕物を所望の領域に寄せ集めることで、処理物を処理槽から取り出すのを容易に且つ確実に行わせることができる。
【0043】
本発明の第13の態様は、第1〜12の何れかの態様において、前記排気手段には、前記処理槽内の雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵するフィルターが設けられていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0044】
かかる第13の態様では、フィルターによって雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵することで、雰囲気ガスの脱臭を容易に且つ確実に行うことができる。
【0045】
本発明の第14の態様は、第13の態様において、前記フィルターが前記粉塵を集塵する面が鉛直方向下側となるように前記処理槽に設けられていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0046】
かかる第14の態様では、フィルターの集塵面を鉛直方向下側に設けることで、排気手段による排気を一時的に休止することによって、集塵面に集塵された粉塵の固まりを処理槽内に落下させることができ、フィルターの目詰まりを防止することができる。
【0047】
本発明の第15の態様は、第1〜14の何れかの態様において、前記処理槽内で処理した前記処理物を当該処理槽内から排出する運搬手段をさらに具備することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0048】
かかる第15の態様では、運搬手段によって処理槽内の処理物を容易に取り出すことができる。
【0049】
本発明の第16の態様は、第15の態様において、前記運搬手段が前記処理槽内の前記処理物を吸引して運搬することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0050】
かかる第16の態様では、運搬手段が処理物を空気輸送することによって、細分化された処理物を容易に且つ確実に処理槽から取り出すことができる。
【0051】
本発明の第17の態様は、第16の態様において、前記運搬手段が吸引した雰囲気ガスを前記脱臭手段によって脱臭することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置にある。
【0052】
かかる第17の態様では、運搬手段によって吸引された臭気ガスを脱臭することで、外部に臭気ガスが漏れ出るのを確実に防止することができる。
【0053】
本発明の第18の態様は、処理槽内の雰囲気ガスを吸引排気して当該処理槽内を陰圧にすると共に排気される前記雰囲気ガスを脱臭しながら、前記処理槽内に開閉自在な開口部から投入された使用済み紙おむつを破砕すると共に発酵菌と共に攪拌して破砕物とし、前記処理槽内の前記破砕物を加熱して当該使用済み紙おむつの水分含有量を調整して発酵処理物とすると共に当該発酵処理物を所定時間加熱殺菌して処理物とすることを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法にある。
【0054】
かかる第18の態様では、処理槽内を陰圧にすることで、処理槽内に使用済み紙おむつを投入する際に開口部を開放しても、開口部から外部に臭気ガスが漏れ出るのを防止することができる。また、使用済み紙おむつから処理物である燃料を得る際の熱量転化効率を向上すると共に、ランニングコストを低下させ、且つ設備を小型化すると共に対象物は燃料として使用することができるため、トータル的にCOの削減に寄与することができる。
【0055】
本発明の第19の態様は、第18の態様において、前記破砕物を前記発酵処理物とする工程では、前記破砕物を30〜80℃に加熱することを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法にある。
【0056】
かかる第19の態様では、破砕物を所定温度で加熱することで、破砕物に付着したし尿成分の発酵分解と乾燥とを確実に行うことができる。
【0057】
本発明の第20の態様は、第18又は19の態様において、前記破砕物を前記発酵処理物とする工程では、前記処理槽内を所定温度で5時間以上加熱することを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法にある。
【0058】
かかる第20の態様では、処理槽内を所定温度で5時間以上加熱することによって、破砕物に付着したし尿成分の発酵分解と乾燥とを確実に行うことができる。
【0059】
本発明の第21の態様は、第18〜20の何れかの態様において、前記発酵処理物を前記処理物とする工程では、前記発酵処理物を80〜125℃に加熱することを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法にある。
【0060】
かかる第21の態様では、発酵処理物を所定温度以上で殺菌することで処理物の安全性を高めると共に、使用済み紙おむつの樹脂部分を溶かさない温度で加熱することで、溶融した樹脂による処理不良等を防止することができる。
【0061】
本発明の第22の態様は、第18〜22の何れかの態様において、前記発酵処理物を加熱して処理物とする工程では、前記処理槽内を所定温度で2時間以上加熱することを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法。
【0062】
かかる第22の態様では、所定時間以上で加熱することで発酵処理物の殺菌を確実に行うことができる。
【0063】
本発明の第23の態様は、第18〜22の何れかの態様において、前記処理槽には、雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵するフィルターが集塵面を鉛直方向下側となるように設けられていると共に、前記処理槽内の雰囲気ガスの吸引排気を所定時間毎に一定時間停止することで、前記フィルターの前記集塵面に付着した粉塵を自重により剥離させることを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法にある。
【0064】
かかる第23の態様では、フィルターの集塵面に集塵された粉塵の固まりを排気を一時的に休止することで処理槽内に落下させることができ、フィルターの目詰まりを防止することができる。
【0065】
本発明の第24の態様は、使用済み紙おむつを投入する開閉自在な開口部を有すると共に前記使用済み紙おむつを保持する処理槽と、この処理槽内に保持された前記使用済み紙おむつを破砕すると共に発酵菌と共に攪拌する破砕手段と、前記処理槽内の前記使用済み紙おむつの破砕物を加熱して当該使用済み紙おむつの水分含有量を調整して発酵処理物とすると共に当該発酵処理物を所定時間加熱殺菌して処理物とする加熱手段とを具備し、前記破砕手段が、水平方向が回転軸で且つ左右方向に前記使用済み紙おむつを移動させる構造を有する羽根を具備し、前記羽根が前記回転軸の軸方向に所定間隔で複数設けられていると共に、複数の羽根が前記回転軸の周りに螺旋状に配置されていることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0066】
かかる第24の態様では、使用済み紙おむつを攪拌しながら破砕することによって、使用済み紙おむつを微細な大きさに効率よく細分化することができると共に、使用済み紙おむつから処理物である燃料を得る際の熱量転化効率を向上することができ、ランニングコストを低下させ、且つ設備を小型化することができる。さらに、対象物は燃料として使用することができるため、トータル的にCOの削減に寄与することができる。
【0067】
本発明の第25の態様は、第24の態様において、前記開口部が廃棄袋に密封された複数の使用済み紙おむつをそのまま投入可能な開口面積を有することを特徴とする発酵処理装置にある。
【0068】
かかる第25の態様では、廃棄袋のまま処理することができるため、汚物に直接触れることなく投入作業を簡略化することができると共に、使用済み紙おむつの臭気が周囲に漏れるのを防止することができる。
【0069】
本発明の第26の態様は、第24又は25の態様において、前記加熱手段が発酵処理及び乾燥処理の第1の温度と、殺菌処理の第2の温度とに加熱するように制御する制御手段を有することを特徴とする発酵処理装置にある。
【0070】
かかる第26の態様では、使用済み紙おむつを破砕及び裁断した破砕物の発酵及び乾燥を容易に且つ確実に行うことができると共に、加熱殺菌することで安全性の高い処理物を製造することができる。
【0071】
本発明の第27の態様は、第24〜26の何れかの態様において、前記加熱手段が、熱風を用いた加熱を行うものであることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0072】
かかる第27の態様では、熱風により加熱することによって、処理槽内を均一に所定の温度で加熱することができると共に処理槽内の温度制御を容易に行うことが出来、効率よく発酵、乾燥及び殺菌を行うことができる。
【0073】
本発明の第28の態様は、第24〜27の何れかの態様において、前記処理槽には、前記処理槽内の雰囲気ガスを吸引排気して前記処理槽内を陰圧にする排気手段と、当該排気手段の臭気ガスを脱臭する脱臭手段とが接続されると共に、前記脱臭手段が少なくとも前記臭気ガスを脱臭する脱臭装置と、前記臭気ガスを脱臭処理して得られた処理ガスを熱交換するための第1熱交換器と、該第1熱交換器から排出された処理ガスを熱交換する第2熱交換器とで構成され、前記第2熱交換器で熱交換された熱が、前記加熱手段と共に前記処理槽内の加熱に用いられることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0074】
かかる第28の態様では、排気手段が処理槽内を陰圧にすることで、処理槽内に使用済み紙おむつを投入する際に開口部を開放しても、開口部から外部に臭気が漏れるのを防止することができる。また、脱臭手段によって使用済み紙おむつの発酵処理に伴って発生する臭気ガスを脱臭して無臭化することができると共に、脱臭処理後の処理ガスの熱を発酵処理や脱臭処理の熱源としてリサイクルすることによって、発酵処理と脱臭処理に必要な熱コストを低減することができる。
【0075】
本発明の第29の態様は、第24〜28の何れかの態様において、前記処理槽には、前記羽根に対向する領域に固定刃が設けられていると共に、前記羽根の先端には、前記固定刃に対して凹部の設けられた回転刃が設けられていることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0076】
かかる第29の態様では、固定刃と回転刃の凹部との間で使用済み紙おむつを容易に且つ確実に破砕して細分化した破砕物を製造することができる。
【0077】
本発明の第30の態様は、第29の態様において、前記固定刃が、前記回転刃との間で前記使用済み紙おむつを破砕すると共に前記回転刃の回転方向に所定の長さで設けられた破砕用固定刃と、前記凹部との間で前記使用済み紙おむつを裁断すると共に前記破砕用固定刃よりも短い裁断用固定刃とで構成されていることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0078】
かかる第30の態様では、使用済み紙おむつを裁断しながら破砕することができ、使用済み紙おむつを効率よく細分化した破砕物とすることができる。
【0079】
本発明の第31の態様は、第29又は30の態様において、前記回転刃が、前記回転軸の軸方向に対して所定角度傾斜して設けられていることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0080】
かかる第31の態様では、回転刃を軸方向に対して所定角度傾斜して設けることで、使用済み紙おむつを処理槽の全体に亘って攪拌することで破砕を効率よく確実に行うことができると共に、発酵、粉砕を効率よく行うことができ、また、破砕物を所望の領域に寄せ集めることで、処理物を処理槽から取り出すのを容易に且つ確実に行わせることができる。
【0081】
本発明の第32の態様は、第28〜31の何れかの態様において、前記処理槽の前記排気手段が接続された領域には、前記処理槽内の雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵するフィルターが設けられていることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0082】
かかる第32の態様では、フィルターによって雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵することで、雰囲気ガスの脱臭を容易に且つ確実に行わせることができる。
【0083】
本発明の第33の態様は、第32の態様において、前記フィルターが前記粉塵を集塵する面が鉛直方向下側となるように前記処理槽に設けられていることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0084】
かかる第33の態様では、フィルターの集塵面を鉛直方向下側に設けることで、排気手段による排気を一時的に休止することによって、集塵面に集塵された粉塵の固まりを処理槽内に落下させることができ、フィルターの目詰まりを防止することができる。
【0085】
本発明の第34の態様は、第24〜33の何れかの態様において、前記処理槽には、内部で処理した前記処理物を当該処理槽内から排出する運搬手段が接続されていることを特徴とする発酵処理装置にある。
【0086】
かかる第34の態様では、運搬手段によって処理槽内の処理物を容易に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0087】
本発明は、使用済み紙おむつから燃料を得る際の熱量転化効率を向上すると共に、ランニングコストを低下させ、且つ設備を小型化すると共にトータル的にCOの削減に寄与することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0089】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る使用済みおむつ処理装置の概略構成を示す図であり、図2は、発酵処理装置の断面図及び上面図であり、図3は、発酵処理装置の要部断面図である。
【0090】
図1に示すように、本実施形態の使用済み紙おむつ処理装置10は、使用済み紙おむつが投入される処理槽21を有する発酵処理装置20と、処理槽21内の雰囲気ガスを吸引排気して処理槽を陰圧にする排気手段40と、排気手段40による排気ガスを脱臭する脱臭手段50と、処理槽21内で処理された処理物を処理槽21内から排出する搬送手段60とを具備する。
【0091】
発酵処理装置20は、図1及び図2に示すように、処理槽21と、処理槽21内に設けられて使用済み紙おむつを破砕すると共に発酵菌と共に攪拌する破砕手段22と、処理槽21内を所定温度に加熱して使用済み紙おむつに付着した有機物を発酵させると共に発酵処理された使用済み紙おむつの水分含有量を調整し、排出前に所定時間加熱殺菌する加熱手段23とを具備する。
【0092】
処理槽21は、図3(b)に示すように、箱形状を有し、内面の底面は後述する羽根32の回転方向に沿って半円筒形状に形成されている。すなわち、処理槽21は、内部にかまぼこ状の空間を有する。この処理槽21には、図1に示すように、長手方向の一端側で鉛直方向上側に使用済み紙おむつが投入される開口部24が設けられている。開口部24は、使用済み紙おむつが複数収容されて密封されたポリエチレン等の廃棄袋1が投入可能な開口面積で形成されている。なお、本実施形態では、例えば、開口部24は、70Lの廃棄袋1が投入可能な開口面積で形成されてる。
【0093】
また、処理槽21の鉛直方向上側の面には、開口部24の開口を塞ぐ蓋部材25が設けられている。この蓋部材25は、図示しない駆動モータ等により自動開閉されることで開口部24を開閉自在としている。このような開口部24から廃棄袋1が投入されると共に、開口部24から必要に応じて発酵処理に必要な発酵菌が適宜投入される。ここで「発酵処理」とは、し尿、パルプ等を微生物によって分解する処理を言う。し尿等を分解する具体的な発酵菌は特に限定されず、公知の発酵菌を用いればよい。発酵処理に使用される発酵菌は、好気性微生物又は嫌気性微生物の何れを用いてもよいが、管理容易性や発酵過程で発生する臭気レベルの低さから好気性微生物を用いることが望ましい。
【0094】
さらに、処理槽21には、図3(c)に示すように、側面の長手方向中央に内部の点検及びメンテナンスを行うための矩形状のハンドホール26が設けられており、ハンドホール26はハンドホール扉27によって開閉自在となっている。また、ハンドホール扉27には、運搬手段60が接続されるハンドホール26よりも小さな開口面積を有する円形状の吸引口28が設けられており、この吸引口28に対向する領域には、吸引口28の開閉を行うはめ込み扉29が設けられている。
【0095】
また、処理槽21内には、図2(a)に示すように、使用済み紙おむつを破砕する破砕手段22が設けられている。破砕手段22は、処理槽21の長手方向に亘って設けられた回転軸30と、回転軸30の一端部側に設けられて回転軸30を回転させる駆動モータ等の駆動手段31と、回転軸30の軸方向に所定の間隔で設けられた複数の羽根32とで構成されている。
【0096】
羽根32は、回転軸30に基端部が固定された一対の固定部材33と、一対の固定部材33の間の先端側に保持された板状の回転刃34とを具備する。回転刃34は、一辺が処理槽21の内面に相対向して一方面が回転方向となるように設けられている。また、回転刃34の処理槽21の内面に相対向する一辺には、凹部34aが設けられている。
【0097】
一方、処理槽21の底面には、図3(a)及び(b)に示すように、回転刃34の凹部34aに相対向する領域には、固定刃35が設けられている。この固定刃35は、処理槽21の半円筒形状の底面に回転刃34の回転方向に亘って所定の長さで設けられて断面が矩形状の破砕用固定刃35aと、破砕用固定刃35aよりも短く且つ回転刃34の凹部34a内に突出して先端に刃が回転方向に亘って設けられた裁断用固定刃35bとで構成されている。破砕用固定刃35aは、裁断用固定刃35bの両側面を保持して、破砕用固定刃35bが折れたり処理槽21から外れたりするのを防止すると共に、回転刃34によって軸方向に移動しようとする使用済み紙おむつの移動を抑えて、回転刃34と破砕用固定刃35aとの間及び回転刃34と処理槽21の底面との間で使用済み紙おむつを破砕するためのものである。また、裁断用固定刃35bは、回転刃34の凹部34aとの間で使用済み紙おむつを裁断するようになっている。すなわち、本実施形態では、回転刃34と固定刃35との間で使用済み紙おむつを破砕及び裁断して所望の大きさに細分化した破砕物を製造している。
【0098】
このような羽根32は、回転軸30の周りに螺旋状となるように所定間隔で複数設けられることで、回転方向によって中央部にある吸引口28に使用済み紙おむつを寄せ集めたり、左右両側に拡散させることができる。
【0099】
なお、吸引口28近傍の羽根32は、吸引口28に対向する領域には設けられておらず、吸引口28の両側を回転するように設けられている。そして、吸引口28の両側の羽根32が同時に吸引口28に処理物を集めると、処理物が圧迫されて吸引排出する際に吸引口28が詰まってしまうため、吸引口28の両側の羽根32は、回転軸30を中心として対称となるように設けられている。
【0100】
ここで、回転刃34が吸引口28を掬う方向に回転するのを正転、逆に回転刃34が吸引口28の上側から回転するのを逆転とすると、回転刃34の正転時に吸引口28に紙おむつを寄せ集め、回転刃34の逆転時に紙おむつを左右両側に拡散させるように、回転刃34は設けられている。
【0101】
すなわち、各羽根32の回転刃34は、回転軸30の軸方向に対して傾斜して設けられている。この回転刃34の傾斜方向は、正転させた際に破砕及び裁断する使用済み紙おむつに対して吸引口28とは反対側の端部が先に当接し、その後、吸引口28側の端部が当接する方向である。すなわち、各羽根32の回転刃34は、同一方向に傾斜しているのではなく、吸引口28の両側の回転刃34は、吸引口28を中心として対称となるように傾斜して設けられている。このように、回転刃34を回転軸30の軸方向に対して傾斜して設けることで、回転刃34が使用済み紙おむつに傾斜して当接し、使用済み紙おむつ破砕及び裁断しながら正転により吸引口28側に寄せ集めたり、逆転により処理槽21の両側に拡散させることができる。このような回転刃34の傾斜角度は、回転軸30の軸方向に対して10〜30度とするのが好ましく、本実施形態では、約20度となるようにしている。
【0102】
なお、吸引口28の両側の羽根32のそれぞれの回転刃34は、図2(a)に示すように、互いに軸方向にオーバーラップするように、吸引口28に対向する領域に延設された掻き出し部36を有する。このように、吸引口28の両側の羽根32に掻き出し部36を設けることによって、吸引口28から吸引させる処理物が残り少なくなったとしても、回転刃34を正転させることで掻き出し部36によって吸引口28に処理物を掻き集めることができ、処理物の全てを確実に吸引口28から吸引させることができる。
【0103】
このような破砕手段22は、上述のように使用済み紙おむつを攪拌しながら破砕及び裁断すると共に、正転により吸引口28に寄せ集めたり、逆転により処理槽21の両側に拡散させるようになっている。そして、処理槽21内には、開口部24から使用済み紙おむつと共に発酵菌が投入されるため、破砕手段22は、紙おむつを破砕及び裁断しながら発酵菌と共に攪拌し、発酵処理を行わせることができる。
【0104】
また、このような本実施形態の羽根32は、角部の全てがR状に面取りされている。このように、羽根32の角部を全て面取りすることで、回転刃34と処理槽21の内面との間で使用済み紙おむつを破砕した際に使用済み紙おむつが羽根32に引っかかるのを防止して、網状のからみつきの発生を防止することができる。なお、使用済み紙おむつが破砕されることなく絡み付くと、羽根32や回転軸30に網状に成長し、破砕、発酵、乾燥、排出と言った全ての攪拌効果を著しく阻害してしまう。本実施形態では、羽根32の角部の全てをR状に面取りすることで、攪拌効果を阻害するのを防止している。
【0105】
また、処理槽21内は、水分を含む使用済み紙おむつが投入されると共に、発酵菌を用いた発酵処理が行われるため、処理槽21及び処理槽21内に設けられた回転刃34を有する羽根32、固定刃35等は、耐食性に優れた材料を用いるのが好ましく、例えば、オーステナイト系ステンレスを用いることができる。但し、処理槽21内は処理物を排出する前に破砕物の加熱乾燥が定期的に行われるため、処理槽21及び処理槽21内に設けられた回転刃34を有する羽根32、固定刃35等に腐食が発生し難いので、耐腐食性は劣るが裁断能力に優れたマルテンサイト系ステンレスを用いてもよい。勿論、使用済み紙おむつの裁断を行う裁断用固定刃35aのみをマルテンサイト系ステンレスで形成し、他の部材をオーステナイト系ステンレスで形成するようにしてもよい。
【0106】
また、処理槽21の上部には、図2に示すように、処理槽21を加熱する加熱手段23が設けられている。この加熱手段23は、ヒータ、電熱器等の加熱部37と、加熱した酸素含有ガスを貯める熱風溜まり38と、熱風溜まり38内の加熱された酸素含有ガスを処理槽21内の鉛直方向上側に下側に向かって噴射する噴射パイプ39とで構成されている。
【0107】
熱風溜まり38は、処理槽21の上部に開口部24の設けられた一端側から他端側に設けられた排気口44近傍まで所定の長さで設けられており、噴射パイプ39は、一端が熱風溜まりに固定されて連通するように熱風溜まり38の鉛直方向下側に長手方向に亘って所定の間隔で複数設けられている。そして、詳しくは後述するが、処理槽21の上部には、開口部24が設けられた長手方向一端部とは反対側の他端部に処理槽21内の雰囲気ガスを吸引排気する排気手段40が接続される排気口44が設けられており、熱風溜まり38は、排気口44の設けられた領域まで延設されておらず、排気口44と噴射パイプ39とが所定の距離となるように設けられている。これにより、噴射パイプ39から噴射された酸素含有ガスが直接排気口44から排出されることなく、処理槽21の加熱効率が低下するのを防止している。
【0108】
このような加熱手段23は、噴射パイプ39によって熱風溜まり38内の加熱された酸素含有ガスを処理槽21の内部に均一に噴射することができ、処理槽21内の全体を所定の温度に加熱することができる。
【0109】
ここで、本実施形態の加熱手段23は、破砕手段22によって破砕された破砕物を発酵させる際の発酵菌の活性を促すと共に乾燥させて発酵処理物とするために処理槽21内を加熱する第1加熱温度と、処理槽21内の発酵処理物を加熱殺菌すると共に発酵処理物の残留水分を乾燥して処理物とするための第2加熱温度とに加熱するように制御される。
【0110】
第1加熱温度は、低すぎると発酵菌の活性化や、発酵処理物を乾燥させることができず、逆に高すぎると発酵菌が死滅してしまうため、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上であって、80℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下となるように制御するのが好適である。本実施形態では、加熱手段23が90℃の酸素含有ガスを間欠的に処理槽21に供給することによって、破砕物が45℃となるように温度調整した。このとき破砕物の実際の温度は43〜46℃となる。このような温度で処理槽21内を加熱することによって、発酵菌を活性させて発酵菌による処理を促進させることができると共に、破砕物を乾燥させて発酵処理物とすることができる。
【0111】
また、第2加熱温度は、処理槽21内の使用済み紙おむつ(発酵処理物)に付着した微生物を死滅又は不活性化すると共に、発酵処理物に残留した水分を乾燥させる温度である。例えば、O−157、大腸菌等を死滅又は不活性化させる温度が75℃程度であるため、第2加熱温度は、本実施形態では、80℃以上が好ましい。また、第2加熱温度が高すぎる(125℃より大きい)と、紙おむつに使用されている樹脂等が溶け出して処理槽21内や羽根32等に付着してしまい、使用済み紙おむつの破砕及び裁断効率が低下してしまうため、第2加熱温度は、125℃以下が好ましい。すなわち、第2加熱温度は、80〜125℃が好適である。本実施形態では、加熱手段23が160℃の酸素含有ガスを間欠的に処理槽21内に供給することによって、発酵処理物が80℃となるように温度調整した。このとき発酵処理物の実際の温度は90℃前後となる。
【0112】
なお、加熱手段23が、処理槽21内を第1及び第2加熱温度に効率よく加熱するためには、噴射パイプ39から噴射される酸素含有ガスの風速は、30〜60m/secが好ましく、より好ましくは40〜50m/secである。そして、この風速に指向性を付与するためには、噴出パイプ39の内径は圧損と風速とのバランスから2.54〜3.81cm、長さは処理槽21内の構造などから200〜300mmが好ましい。
【0113】
このような発酵処理装置20は、処理槽21の大きさ等によって発酵処理能力が異なるが、本実施形態の発酵処理装置20は、発酵処理時間が約12時間で300kg/日である。また、発酵処理装置20によって使用済み紙おむつを破砕・裁断、発酵、乾燥及び加熱殺菌することにより、投入時の使用済み紙おむつを容量が1/3程度の処理物とすることができる。このように、発酵処理装置20で処理された処理物は、減容されていると共に細分化されているので、運搬や造粒・成型を容易に行うことができる。また、処理物は燃焼に適した物質に限定され乾燥しているので、サーマルリサイクル等の再資源化に極めて好適な物性を有する。
【0114】
一方、処理槽21には、図1に示すように排気口44に接続された排気パイプ43を介して内部の雰囲気ガスを吸引排気して処理槽21内を陰圧にする吸引・排気ファンや真空ポンプなどの排気手段40が設けられている。
【0115】
詳しくは、図4に示すように、処理槽21の上部には、排気口44が設けられており、この排気口44に相対向する領域には、内部にフィルター41を有する箱形状の集塵部42が設けられている。そして、排気手段40は、集塵部42に接続された排気パイプ43を介して接続されている。
【0116】
このような排気手段40によって、処理槽21の内部が陰圧となるように雰囲気ガスを吸引排気すると、雰囲気ガスに含まれる微細な塵等がフィルター41によって集塵されるようになっている。なお、フィルター41は、処理槽21内の雰囲気ガスに含まれる微細な塵等を集塵することができれば、特に限定されず、例えば、網目状の繊維などを用いることができる。また、フィルター41は、雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵する集塵面41aが鉛直方向下側となるように設けられている。そして、詳しくは後述する排気制御手段によって、排気手段40による処理槽21内の雰囲気ガスの吸引排気を所定時間毎に一定時間停止することによって、集塵面41aに集塵された粉塵の固まり2をその自重により処理槽21内に落下させてフィルター41の排気詰まりを防止している。なお、処理槽21内に落下させた粉塵の固まり2は、吸引口28から処理物と共に排出される。また、このような排気詰まりを防止する排気詰まり防止工程は、詳しくは後述するが、本実施形態では、排気手段40を6時間毎に1分間停止することで行われるようになっている。
【0117】
そして、排気手段40によって処理槽21内の雰囲気ガスは常に吸引排気されているため、処理槽21内は陰圧に維持される。このため、開口部24から使用済み紙おむつを収容した廃棄袋1を投入するために、開口部24を開放しても、処理槽21内の臭気が開口部24から外部に漏れるのを防止することができる。
【0118】
なお、排気手段40の排気風量は、処理槽21内の使用済み紙おむつが乾燥除去された際に、処理槽21内の雰囲気ガスが飽和蒸気となっても、排気パイプ43に結露が生じるのを防ぐように余裕を持たせる必要がある。本実施形態では、発酵処理装置20の処理能力が300kg/日であるため、排気手段40の排気風量は7Nm/min以上が好ましく、処理槽内の排気による雰囲気ガスの流れを考慮すると、9Nm/min前後が好ましい。また、排気手段40の排気風量が大きすぎると、脱臭手段50の加熱エネルギーや加熱手段23の加熱エネルギーなどのコストが増大してしまうため、排気手段40の排気風量は9Nm/min前後が好適である。
【0119】
また、処理槽21と排気手段40との間の排気パイプ43の途中には、排気手段40が吸引した処理槽21内の雰囲気ガスを脱臭する脱臭手段50が設けられている。
【0120】
ここで、脱臭手段50について詳細に説明する。なお、図5は、脱臭手段を示す概略図である。
【0121】
脱臭手段50は、脱臭装置本体51内に、脱臭触媒層52と、脱臭触媒層52を加熱する電熱ヒータ等の触媒加熱手段53と、第1熱交換器54と第2熱交換器55とで構成されている。
【0122】
処理槽21内の雰囲気ガス(臭気ガス)は、排気手段40によって排気パイプ43を介して抜き出され、第1熱交換器54へ導入される。このとき、上述のようにフィルター41によって微細な粉塵が除去された臭気ガスが第1熱交換器54に導入される。なお、第1及び第2熱交換機54、55は、多管式熱交換機やプレート式熱交換機など各種公知の熱交換器を用いることができる。好ましくは熱伝導性の高いプレート式熱交換器である。
【0123】
第1熱交換器54に導入された臭気ガスは、脱臭触媒層52で脱臭処理された処理ガスと熱交換される。熱交換によって臭気ガスの温度は上昇し、一方、処理ガスの温度は低下する。臭気ガスの温度は特に限定されず、触媒の処理性能に応じて決定すればよい。例えば臭気成分であるアンモニアを後述する触媒で効率的に酸化分解して無臭化するには、臭気ガスを200℃以上にすることが好ましく、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは270℃以上とすることが望ましい。一方、臭気ガスの温度を高くし過ぎると触媒で処理した際にNOxが発生することがある為、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下とすることが望ましい。
【0124】
また、脱臭触媒層52へ供給する臭気ガスの供給量は特に限定されず、触媒の処理能力に応じて適宜決定すればよい。処理効率の観点から例えば空気速度を好ましくは15000〜40000hr−1、より好ましくは20000〜30000hr−1となるように臭気ガスの供給量と触媒能力とを排気手段40が調整するようにするのが望ましい。
【0125】
脱臭触媒層52には、臭気ガスに含まれる臭気成分を酸化分解・除去する性能を有する触媒が設けられている。用いる触媒としては、アルミニウム、カルシウム、チタン、ケイ素、ジルコニウムおよびセリウムよりなる群から選択される1種以上の元素の酸化物を担体とし、該坦体に、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガンおよび銅よりなる群から選択される1種以上の金属元素を坦持させたものが挙げられる。その中でも、カルシウムアルミネート(CaO・Al)、シリカまたは二酸化チタンを坦体として、白金、パラジウム等の白金属元素を坦持させたものが、アンモニア、硫化水素等の臭気成分に対して優れた分解・脱臭能力を有し、かつ比較的コストが低いので好ましく用いられる。勿論、これらの触媒は単独、或いは2種以上を併用してもよい。
【0126】
また、触媒の形状は特に限定されず、球状、ペレット状、ハニカム状、破砕片状、円柱状、粉末状などが例示されるが、これらの中でも強度、脱臭効率、交換容易性などの観点からハニカム状触媒が好ましい。また触媒のサイズ、細孔径、比表面積等も特に限定されず、公知の方法で製造された触媒を用いることができる。
【0127】
上記脱臭触媒層52によって臭気成分は酸化分解・除去され、無臭化された処理ガスが得られる。この処理ガスは高温であるため、第1熱交換器54へ導入して臭気ガスと熱交換する。第1熱交換器54での熱交換によって処理ガスの温度は低下しているものの、依然高温であるため、第1熱交換器54から排出された処理ガスをさらに第2熱交換器55に導入し、上記処理槽21に供給する酸素含有ガスと熱交換する。
【0128】
第2熱交換器55に導入する酸素含有ガスは、少なくとも発酵処理に必要な程度の酸素が含まれている気体であって、通常、外気(空気)を用いればよい。このように第2熱交換器55で昇温された酸素含有ガスは、処理槽21の加熱手段23に供給される。すなわち、加熱手段23は、第2熱交換器55で昇温された酸素含有ガスが所望の温度であれば、そのまま処理槽21内に供給し、酸素含有ガスが所望の温度以下の場合は、所望の温度まで加熱部37で加熱してから処理槽21内に供給するようになっている。
【0129】
このように、本実施形態では、第2熱交換器55で酸素含有ガスを加熱するため、加熱手段23だけで加熱する場合に比べて加熱コストを低減することができる。また、脱臭手段50は、第1及び第2熱交換器54、55によって2度に亘って処理ガスの温度を十分に低減することができるので、処理ガスの除熱処理等を施さなくても大気に放出することができ、設備面及び環境熱負荷の点で好ましい構成となっている。なお、第2熱交換器55で外気と熱交換して除熱された処理ガスは、大気に放出しているが、処理ガスは必要に応じて任意の処理工程(例えば処理ガスに含まれる特性成分を除去する処理等)に導入して所望の処理を施した後に大気に放出するようにしてもよい。
【0130】
また、脱臭手段50は、第1熱交換器54で昇温された臭気ガスを触媒加熱手段53に導入し、脱臭処理に適した温度に昇温しているため、加熱コストを低減することができる。特に臭気ガスを熱交換器に通さない場合と比べて触媒加熱手段53での加熱コストを低減することができる。
【0131】
さらに、処理槽21には、図1に示すように、使用済み紙おむつを発酵処理、裁断・破砕及び乾燥されて製造された処理物を外部に排出する運搬手段60が設けられている。運搬手段60は、処理槽21の幅方向中央の高さ方向で回転軸よりも若干下側となる位置に設けられた吸引口28にフレキシブルホース等の吸引パイプ61を介して接続された運搬装置本体62を有する。運搬手段60の排出パイプ61は、ハンドホール扉27のはめ込み扉29を抜き外すことで、吸引口28に接続されるようになっている。
【0132】
運搬装置本体62は、処理槽21内の処理物を吸引することで運搬する送風・排気装置や真空ポンプ等が挙げられる。この運搬装置本体62で吸引した処理物は、運搬装置本体62の下部に設置されたバケツ部材63に蓄積されるようになっている。すなわち、運搬手段60は、空気輸送によって処理物を処理槽21から取り出してバケツ部材63に蓄積するようになっている。また、運搬手段60が処理物を吸引した際に、同時に吸引した処理槽21内の雰囲気ガスは、排気手段40の排気パイプ43に接続されて脱臭手段50によって脱臭処理された後、外部に排気されるようになっている。
【0133】
このように運搬手段60で吸引した際に多少の臭気が残っていたとしても、脱臭手段50によって脱臭することで、無臭の排気を行わせることができる。なお、処理槽21で処理された処理物は、細かく、比重が0.2〜0.25と軽いため、処理物を掻き出すような取り出しでは周囲に舞い散ってしまうが、本実施形態では、運搬手段60が、処理物を空気輸送するため、処理物が周囲に舞い散るのを防止することができ、確実にバケツ部材63に貯留することができる。
【0134】
ここで、使用済み紙おむつ処理装置10の制御系について説明する。なお、図6は、使用済み紙おむつ処理装置の制御系を示すブロック図である。
【0135】
図6に示すように、制御部100は、加熱手段23による加熱温度を制御する加熱制御手段101と、破砕手段22による使用済み紙おむつの破砕及び裁断を制御する破砕制御手段102とを具備する。
【0136】
加熱制御手段101は、処理槽21の外面に設けられた温度センサ104が取得した温度から、処理槽21内が第1加熱温度及び第2加熱温度となるように加熱手段23を制御する。
【0137】
また、制御部100には、タイマー103が設けられており、タイマー103によって処理槽21内の処理物の排出予定時刻の7〜8時間前に第1加熱温度から第2加熱温度への切替時刻が設定されている。そして、本実施形態では、加熱制御手段101は、第1の加熱温度で切替時刻まで加熱が行われ、切替時刻から第2の加熱温度で加熱が行われるように加熱手段23を制御するようになっている。なお、第1加熱温度での加熱は、処理槽21内で破砕物の発酵及び乾燥を十分に行わせるために使用済み紙おむつの最後の投入から最低でも5時間以上が好ましく、また、第2加熱温度での加熱は、設定温度までの昇温に要する約4時間の後、処理槽21内の細菌の死滅及び不活性化を行わせるために連続2時間以上、好ましくは連続2時間から3時間、設定温度を持続することが好適である。このように第2の加熱温度で連続して加熱するのは、設定温度で加熱している途中で設定温度以下に温度が下がってしまうと、細菌が増殖する可能性があるためである。
【0138】
また、第2の加熱温度で加熱した後、処理物は排出可能な温度まで冷却する必要がある。これは、第2の加熱温度で加熱された処理物をそのまま排出すると、処理物に触れた作業者が火傷を負ったり、処理物を入れる袋等が溶けてしまうからである。
【0139】
このように、本実施形態の発酵処理槽20では、排出予定時刻の12時間から13時間前まで使用済み紙おむつを処理槽21内に投入することができる。このため、制御部100が、排出予定時刻の12時間から13時間前を過ぎた時点で、蓋部材25が開口部24を開口することができないように制御するようにしてもよい。これにより、使用済み紙おむつの発酵、乾燥及び殺菌が適正に行われるようにすることができる。
【0140】
また、加熱制御手段101は、開口部24周辺に設けられたスイッチ等の開閉センサ105から開口部24の開閉状態を取得し、開口部24が開口した場合には、加熱手段23を停止させるようになっている。これにより、開口部24を開放した際に、開口部24から処理槽21内に大量の外気が吸い込まれ、加熱手段23の通気速度が極端に弱まることによって加熱手段23が過熱して破壊されるのを防止するようにしている。
【0141】
さらに、制御部100の破砕制御手段102は、破砕手段22を制御することによって、破砕手段22に使用済み紙おむつの破砕及び裁断を行わせると共に発酵菌を攪拌するようになっている。この破砕制御手段102も、タイマー103から経過時間を取得して第1加熱温度で加熱する時間の間だけ破砕手段22に使用済み紙おむつを攪拌しながら破砕及び裁断させることにより、使用済み紙おむつの十分な破砕及び裁断と発酵を行わせることができる。
【0142】
また、処理槽21は、処理槽21の内面と羽根32との間などに、処理槽21内に混入した異物等が挟まることで、羽根32の回転運動が著しく阻害されると、処理槽21の壁構造や羽根32、回転軸30及び駆動部31に損傷を与えてしまう。このため、本実施形態では、制御部100に自己診断手段106を設けることによって、自己診断手段106に駆動部の電流値をモニタリングさせている。すなわち、自己診断手段106が駆動部31の過大な電流を検知すると、自動的に停止・反転して再び元の回転を試行するようになっている。この再試行は、過大電流を検知しなくなるまで繰り返されるが、予め設定した一定回数(例えば、10回)繰り返されると、致命的な阻害が発生していると見なして、緊急停止させるようになっている。このように自己診断手段106が破砕手段22を緊急停止させた際には、例えば、緊急停止した警告をディスプレイ等に表示させたり、警報を発するなどにより操作者に伝えるようにしてもよい。
【0143】
なお、本実施形態の制御部100は、排気手段40、脱臭手段50及び運搬手段60を制御して、処理物の運搬、処理槽21内の雰囲気ガスの排出及び脱臭を適宜行わせるようにしてもよい。
【0144】
ここで、このような使用済み紙おむつ処理装置による使用済み紙おむつの処理方法を説明する。なお、図7は、使用済み紙おむつの処理方法を示すフローチャートである。
【0145】
まず、ステップS1で、処理槽21の開口部24が開けられると(ステップS1;Yes)、ステップS2で加熱制御手段101が加熱手段23による処理槽21内の加熱を停止させて、加熱手段23の過熱を防止する。これにより、加熱手段23の破壊を防止する。そしてステップS3で、開口部24に使用済み紙おむつを複数収容した廃棄袋1を投入する。なお、発酵菌は、処理槽21内で前回処理された処理物が排出された後、処理槽21内に投入されている。また、ステップS1で開口部24が開けられない場合には(ステップS1;No)、待機状態となる。この待機状態では、加熱手段23によって処理槽21内を加熱していてもよい。
【0146】
次にステップS4で、開口部24が閉められた場合(ステップS4;Yes)、ステップS5で、加熱制御手段101が、加熱手段23を制御することによって処理槽21内を第1加熱温度で加熱する。本実施形態では、処理槽21内の内容物(破砕物)が45℃となるように調整する。また、ステップS6で、破砕制御手段102によって、破砕手段22による使用済み紙おむつの破砕及び裁断を行わせて破砕物とする。このとき、加熱手段23によって処理槽21内が加熱されているため、使用済み紙おむつを攪拌しながら破砕及び裁断して、使用済み紙おむつに付着した有機物を発酵菌により処理する。
【0147】
この加熱及び裁断中に、開口部24が開けられると(ステップS7;Yes)、ステップS2〜ステップS6を繰り返し行う。また、加熱及び裁断中に開口部24が開けられない場合には(ステップS7;No)、ステップS8で、制御部100がタイマー103によって予め設定された第2加熱温度への切替時刻になったか判断し、第2の加熱温度への切替時刻になった場合には(ステップS8;Yes)、ステップS9で加熱制御手段101が加熱手段23を制御することによって第2の加熱温度になるように発酵処理物を加熱する(昇温加熱)。そして、ステップS10で、加熱制御手段101が温度センサ104の取得した温度が第2の加熱温度に達したか判断し、ステップS10で温度センサ104の取得した温度が第2の加熱温度に達していない場合には(ステップS10;No)、ステップS9に戻り第2の加熱温度に達するまで昇温加熱を行う。また、ステップS10で温度センサ104が取得した温度が第2の加熱温度に達した場合には(ステップS10;Yes)、ステップS11で発酵処理物を第2の加熱温度で持続加熱を行う。なお、本実施形態では、処理槽21内の内容物(発酵処理物)が80℃に達するまで昇温加熱を行う。そして、ステップS12で第2の加熱温度が設定時間持続したか判断し、第2の加熱温度が設定時間持続してない場合には(ステップS12;No)、ステップS11に戻り、第2の加熱温度が設定時間持続するまで第2の加熱温度で持続加熱を行う。また、ステップS12で第2の加熱温度が設定時間持続した場合には(ステップS12;Yes)、ステップS13で、加熱制御手段101が加熱手段23を停止させる。なお、本実施形態では、第2の加熱温度で発酵処理物を2時間から3時間持続加熱するようにした。
【0148】
また、ステップS13で加熱制御手段101が加熱手段23を停止させた後は、ステップS14で加熱制御手段101が温度センサ104の取得した温度が設定された冷却温度に到達したか判断する。ステップS14で温度センサ104が取得した温度が設定された冷却温度に到達しない場合には(ステップS14;No)、ステップS13に戻り待機状態となる。また、ステップS14で温度センサ104が取得した温度が設定された冷却温度に到達した場合には(ステップS14;Yes)、ステップS15で運搬手段60による処理物の排出を行う。なお、本実施形態では、処理物の排出できる冷却温度は50〜60℃であり、処理物が第2の加熱温度から冷却温度に達するには、約1時間かかる。
【0149】
このような使用済み紙おむつ処理装置10を用いることで、外部に臭気が漏出することなく、使用済み紙おむつから燃料を得る際の熱量転化効率を向上すると共にランニングコストを低下させ、且つ設備を小型化することができる。
【0150】
また、使用済み紙おむつ処理装置10で製造された処理物は、そのまま燃料として使用することができるため、トータル的にCOの削減に寄与して、COの排出による環境破壊を低減することができる。
【0151】
さらに、処理物を冷却温度に達した後に排出することにより、作業者の火傷や処理物を入れる袋等が溶けるのを防止することができる。
【0152】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、使用済み紙おむつを処理する使用済み紙おむつ処理装置及び処理方法を例示したが、本発明の使用済み紙おむつ処理装置及び処理方法で処理する廃棄物は使用済み紙おむつに限定されるものではなく、例えば、使用済みの生理用品などでもよい。もちろん、上述した使用済み紙おむつ処理装置及び処理方法では、紙おむつと同様の廃棄物を同時に処理することができる。
【0153】
また、上述した実施形態1では、発酵菌等の発酵材料を処理槽21内に手動で投入するようにしたが、これに限定されず、例えば、所定量の発酵材料を自動的に投入するようにしてもよい。この発酵材料の自動投入は、例えば、開口部24の開閉に連動させて投入するようにしてもよく、一定時間毎に所定量の発酵材料を自動的に投入させるようにしてもよい。
【0154】
さらに、上述した実施形態1では、脱臭手段50として脱臭触媒を用いたが、特にこれに限定されず、例えば、脱臭手段として、臭気ガスを薬液(臭気成分に対する分解効果を有する)と気液接触する方法(気液接触装置)、臭気ガスの臭気成分を活性炭等の吸着材に吸着する方法(吸着装置)、臭気ガスの臭気成分をオゾン、紫外線等で分解する方法(オゾン発生装置、紫外線照射装置)などを用いるようにしてもよい。
【0155】
また、上述した実施形態1では、発酵処理装置20を用いた使用済み紙おむつ処理装置10を例示したが、発酵処理装置20は、使用済み紙おむつ処理装置10に使用するだけでなく、例えば、生ゴミ等の有機性廃棄物のゴミ処理装置に用いても好適なものである。
【0156】
(試験例)
微生物を接種する母材とする食品廃棄物を水分率60%となるまで加水し、オートクレーブを用いて母材の滅菌を行った。滅菌後、母材の一般生菌数を測定し、雑菌が完全に駆逐されていることを確認した後、試験用母材として使用した。
【0157】
Bacillus stearothermophilus JCM9488からなる試験株菌を55℃で前培養及び本培養を行い、濁度を測定することで試験株菌が十分増殖していることを確認した。
【0158】
そして、試験用母材に試験株菌を接種し、55℃で24時間培養した。培養後、標準寒天培地を用い、55℃で生菌数を測定したところ1.0×10cfu/gであった。なお、生菌数の測定は全て混釈法を用い、培養時間は48時間とした。
【0159】
また、乾熱機を予め30℃とし、この乾熱機に試験用母材を入れ、1時間かけて100℃まで温度を上昇させ、その後3時間保った。その間30分おきに母材の攪拌を行い、熱の伝わりが均一になるようにした。
【0160】
そして3時間後に接種母材を取り出し室温まで放置した後、標準寒天培地を用いて55℃での生菌数を測定したところ1.1×10cfu/gであった。
【0161】
また、同様に乾熱機で110℃まで温度を上昇させて同様の試験を行った結果は、8.2×10cfu/gであった。
【0162】
このような結果からも分かるように、非常に熱に強い菌株を用いて、しかも初発の生菌数が1.0×10cfu/gと高い菌数で試験を開始したが、実処理ではこのように高温に耐性を示す微生物のみが存在するとは考えられない。このため、実処理による効果は数段高くなることが見込まれる。従って、上述した実施形態1の発酵処理槽20では、第2の加熱温度を100℃とし、第2の加熱温度で発酵処理物を3時間加熱することで得られる処理物の十分な滅菌効果を得ることができると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明の実施形態1に係る使用済み紙おむつ処理装置の概略図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る発酵処理装置の断面図及び上面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る発酵処理装置の要部断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る発酵処理装置の要部断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る脱臭手段の概略図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る使用済み紙おむつ処理装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態1に係る使用済み紙おむつ処理方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0164】
10 使用済み紙おむつ処理装置
20 発酵処理装置
21 処理槽
22 破砕手段
23 加熱手段
40 排気手段
50 脱臭手段
60 運搬手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み紙おむつを投入する開閉自在な開口部を有すると共に前記使用済み紙おむつを保持する処理槽と、この処理槽内に保持された前記使用済み紙おむつを破砕すると共に発酵菌と共に攪拌する破砕手段と、前記処理槽内の雰囲気ガスを吸引排気して当該処理槽内を陰圧にする排気手段と、この排気手段による臭気ガスを脱臭する脱臭手段と、前記処理槽内の前記使用済み紙おむつの破砕物を加熱して当該使用済み紙おむつの水分含有量を調整して発酵処理物とすると共に当該発酵処理物を所定時間加熱殺菌して処理物とする加熱手段とを具備することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記開口部が廃棄袋に密封された複数の使用済み紙おむつをそのまま投入可能な開口面積を有することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記加熱手段が発酵処理及び乾燥処理の第1の温度と、殺菌処理の第2の温度とに加熱するように制御する制御手段を有することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記加熱手段が、熱風を用いた加熱を行うものであることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記脱臭手段が、少なくとも前記臭気ガスを脱臭する脱臭装置と、前記臭気ガスを脱臭処理して得られた処理ガスを熱交換するための第1熱交換器と、該第1熱交換器から排出された処理ガスを熱交換する第2熱交換器とで構成されていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項6】
請求項5において、前記第1熱交換器で熱交換された熱が、前記脱臭装置で用いられることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記第2熱交換器で熱交換された熱が、前記加熱手段と共に前記処理槽内の加熱に用いられることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかにおいて、前記破砕手段が、前記使用済み紙おむつを攪拌により粉砕することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかにおいて、前記破砕手段が、水平方向が回転軸で且つ左右方向に前記使用済み紙おむつを移動させる構造を有する羽根を具備し、前記羽根が前記回転軸の軸方向に所定間隔で複数設けられていると共に、複数の羽根が前記回転軸の周りに螺旋状に配置されていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項10】
請求項9において、前記処理槽には、前記羽根に対向する領域に固定刃が設けられていると共に、前記羽根の先端には、前記固定刃に対して凹部の設けられた回転刃が設けられていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項11】
請求項10において、前記固定刃が、前記回転刃との間で前記使用済み紙おむつを破砕すると共に前記回転刃の回転方向に所定の長さで設けられた破砕用固定刃と、前記凹部との間で前記使用済み紙おむつを裁断すると共に前記破砕用固定刃よりも短い裁断用固定刃とで構成されていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項12】
請求項11において、前記回転刃が、前記回転軸の軸方向に対して所定角度傾斜して設けられていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかにおいて、前記排気手段には、前記処理槽内の雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵するフィルターが設けられていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項14】
請求項13において、前記フィルターが前記粉塵を集塵する面が鉛直方向下側となるように前記処理槽に設けられていることを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項15】
請求項1〜14の何れかにおいて、前記処理槽内で処理した前記処理物を当該処理槽内から排出する運搬手段をさらに具備することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項16】
請求項15において、前記運搬手段が前記処理槽内の前記処理物を吸引して運搬することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項17】
請求項16において、前記運搬手段が吸引した雰囲気ガスを前記脱臭手段によって脱臭することを特徴とする使用済み紙おむつ処理装置。
【請求項18】
処理槽内の雰囲気ガスを吸引排気して当該処理槽内を陰圧にすると共に排気される前記雰囲気ガスを脱臭しながら、前記処理槽内に開閉自在な開口部から投入された使用済み紙おむつを破砕すると共に発酵菌と共に攪拌して破砕物とし、前記処理槽内の前記破砕物を加熱して当該使用済み紙おむつの水分含有量を調整して発酵処理物とすると共に当該発酵処理物を所定時間加熱殺菌して処理物とすることを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法。
【請求項19】
請求項18において、前記破砕物を前記発酵処理物とする工程では、前記破砕物を30〜80℃に加熱することを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法。
【請求項20】
請求項18又は19において、前記破砕物を前記発酵処理物とする工程では、前記処理槽内を所定温度で5時間以上加熱することを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法。
【請求項21】
請求項18〜20の何れかにおいて、前記発酵処理物を前記処理物とする工程では、前記発酵処理物を80〜125℃に加熱することを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法。
【請求項22】
請求項18〜21の何れかにおいて、前記発酵処理物を加熱して処理物とする工程では、前記処理槽内を所定温度で2時間以上加熱することを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法。
【請求項23】
請求項18〜22の何れかにおいて、前記処理槽には、雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵するフィルターが集塵面を鉛直方向下側となるように設けられていると共に、前記処理槽内の雰囲気ガスの吸引排気を所定時間毎に一定時間停止することで、前記フィルターの前記集塵面に付着した粉塵を自重により剥離させることを特徴とする使用済み紙おむつ処理方法。
【請求項24】
使用済み紙おむつを投入する開閉自在な開口部を有すると共に前記使用済み紙おむつを保持する処理槽と、この処理槽内に保持された前記使用済み紙おむつを破砕すると共に発酵菌と共に攪拌する破砕手段と、前記処理槽内の前記使用済み紙おむつの破砕物を加熱して当該使用済み紙おむつの水分含有量を調整して発酵処理物とすると共に当該発酵処理物を所定時間加熱殺菌して処理物とする加熱手段とを具備し、前記破砕手段が、水平方向が回転軸で且つ左右方向に前記使用済み紙おむつを移動させる構造を有する羽根を具備し、前記羽根が前記回転軸の軸方向に所定間隔で複数設けられていると共に、複数の羽根が前記回転軸の周りに螺旋状に配置されていることを特徴とする発酵処理装置。
【請求項25】
請求項24において、前記開口部が廃棄袋に密封された複数の使用済み紙おむつをそのまま投入可能な開口面積を有することを特徴とする発酵処理装置。
【請求項26】
請求項24又は25において、前記加熱手段が発酵処理及び乾燥処理の第1の温度と、殺菌処理の第2の温度とに加熱するように制御する制御手段を有することを特徴とする発酵処理装置。
【請求項27】
請求項24〜26の何れかにおいて、前記加熱手段が、熱風を用いた加熱を行うものであることを特徴とする発酵処理装置。
【請求項28】
請求項24〜27の何れかにおいて、前記処理槽には、前記処理槽内の雰囲気ガスを吸引排気して前記処理槽内を陰圧にする排気手段と、当該排気手段の臭気ガスを脱臭する脱臭手段とが接続されると共に、前記脱臭手段が少なくとも前記臭気ガスを脱臭する脱臭装置と、前記臭気ガスを脱臭処理して得られた処理ガスを熱交換するための第1熱交換器と、該第1熱交換器から排出された処理ガスを熱交換する第2熱交換器とで構成され、前記第2熱交換器で熱交換された熱が、前記加熱手段と共に前記処理槽内の加熱に用いられることを特徴とする発酵処理装置。
【請求項29】
請求項24〜28の何れかにおいて、前記処理槽には、前記羽根に対向する領域に固定刃が設けられていると共に、前記羽根の先端には、前記固定刃に対して凹部の設けられた回転刃が設けられていることを特徴とする発酵処理装置。
【請求項30】
請求項29において、前記固定刃が、前記回転刃との間で前記使用済み紙おむつを破砕すると共に前記回転刃の回転方向に所定の長さで設けられた破砕用固定刃と、前記凹部との間で前記使用済み紙おむつを裁断すると共に前記破砕用固定刃よりも短い裁断用固定刃とで構成されていることを特徴とする発酵処理装置。
【請求項31】
請求項29又は30において、前記回転刃が、前記回転軸の軸方向に対して所定角度傾斜して設けられていることを特徴とする発酵処理装置。
【請求項32】
請求項28〜31の何れかにおいて、前記処理槽の前記排気手段が接続された領域には、前記処理槽内の雰囲気ガスに含まれる粉塵を集塵するフィルターが設けられていることを特徴とする発酵処理装置。
【請求項33】
請求項32において、前記フィルターが前記粉塵を集塵する面が鉛直方向下側となるように前記処理槽に設けられていることを特徴とする発酵処理装置。
【請求項34】
請求項24〜33の何れかにおいて、前記処理槽には、内部で処理した前記処理物を当該処理槽内から排出する運搬手段が接続されていることを特徴とする発酵処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−7111(P2006−7111A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188367(P2004−188367)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(504246409)株式会社スーパー・フェイズ (6)
【Fターム(参考)】