使用済原子燃料の再処理方法
【課題】簡易に再処理を行う。放射性廃棄物の量を減らす。
【解決手段】使用済原子燃料36を部分的に溶融し、その溶融部分37を移動させて原子燃料物質と核分裂生成物とを分離する。使用済原子燃料36を被覆材9に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させることもできる。
【解決手段】使用済原子燃料36を部分的に溶融し、その溶融部分37を移動させて原子燃料物質と核分裂生成物とを分離する。使用済原子燃料36を被覆材9に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させることもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済原子燃料の再処理方法に関する。さらに詳述すると、本発明は化学薬品や溶液等を使わずに使用済原子燃料中の核分裂生成物を分離する使用済原子燃料の再処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼後の原子燃料中には原子燃料資源が多く残っていため、使用済原子燃料の再処理が行われる。再処理方法には、原子燃料を溶かして溶媒抽出する湿式法と、水を使わない乾式法がある。
【0003】
湿式再処理方法として、ピューレックス(PUREX)法が実用化されている。ピューレックス法では、溶媒に燐酸トリブチル(TBP)を使用する。TBPをドデカン(希釈剤)に溶かした有機溶媒を、使用済原子燃料を溶かした硝酸溶液に混ぜると、ウランとプルトニウムは溶媒側に移り、核分裂生成物の大部分は硝酸溶液に残る。これを利用してウラン及びプルトニウムと核分裂生成物とを分離することができる。
【0004】
また、乾式再処理方法としては、例えば高温でフッ化物として蒸留する方法、溶融塩として処理する方法等が研究されている。
【0005】
【非特許文献1】「新版 原子力ハンドブック」オーム社 平成元年3月30日第1版第1刷発行 p.561−565
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の各再処理方法は大掛かりな装置や設備類が必要であり、簡易な方法の開発が要請されている。また、上述の湿式再処理方法は溶液を使用しており、放射性廃棄物を多量に発生させてしまう。
【0007】
本発明は、簡易な方法で使用済原子燃料中の原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することができると共に、放射性廃棄物の発生量を減らすことができる使用済原子燃料の再処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の使用済原子燃料の再処理方法は、使用済原子燃料を部分的に溶融し、その溶融部分を移動させて原子燃料物質と核分裂生成物とを分離するものである。
【0009】
使用済原子燃料には原子燃料物質であるウランやプルトニウムの他に、セシウム、ストロンチウムなどの核分裂生成物(FP)が含まれている。核分裂生成物は一般的に化合物の状態で存在しており、金属燃料として存在する原子燃料物質よりも溶融温度が高い。この溶融温度の差を利用して原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することができる。つまり、使用済原子燃料を部分的に溶融し、その溶融部分を移動させると、溶融温度が低く溶けやすい金属燃料が上に、溶融温度が高く溶けにくい核分裂生成物が下にそれぞれ移動するので、これらを分離することができる。
【0010】
また、請求項2記載の使用済原子燃料の再処理方法は、使用済原子燃料を被覆材に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させるものである。燃料要素の被覆材はその性質上熱伝達に優れているので、被覆材の外側から内側の使用済原子燃料を加熱することができる。外側から加熱された原子燃料は被覆材の中で部分的に溶融し、その溶融部分を移動させることで原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の使用済原子燃料の再処理方法では、使用済原子燃料を部分的に溶融し、その溶融部分を移動させて原子燃料物質と核分裂生成物とを分離するので、簡易な方法で原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することができる。原子燃料物質と核分裂生成物との分離に化学薬品や溶液等を使用しないので、安全性が高く、また放射性廃棄物を減らすことができる。また、分離に必要な処理工程を減らすことができると共に、分離に必要な装置・設備類が簡単なものとなる。これらのため、分離に要するコストを抑えることができる。また、例えば原子力施設等の空きスペースなどに再処理ラインを設けることが可能になり、原子力施設の敷地内での再処理が可能になるので、大変合理的であると共に、核輸送の面からも安全である。さらに、原子燃料物質の臨界質量は周りの物質条件によって大きく影響され、水(水素と酸素の化合物)の様な軽い元素からなる物質があると極端に小さくなってしまうが、本発明では分離に水を使用しないので臨界質量の極端な減少を防止することができ、安全性に優れている。また、例えば分離性能をある程度犠牲にしても簡易な方法で原子燃料物質と核分裂生成物との分離を行う必要がある場合や、原子燃料物質と核分裂生成物とを大まかに分離できれば良い場合などに、特に有効な方法である。
【0012】
なお、原子燃料物質と核分裂生成物とを分離した後、核分裂生成物を機械的に除去し、例えば劣化ウラン等の燃料物質を追加することで、燃料要素を継続して利用することができる。このため、燃料資源を有効に活用することができる。
【0013】
また、請求項2記載の使用済原子燃料の再処理方法では、使用済原子燃料を被覆材に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させるので、使用済原子燃料を被覆材の中で原子燃料物質と核分裂生成物とに分離することができ、原子炉から取り出した燃料要素をそのまま処理することができる。このため、少なくとも原子燃料物質と核分裂生成物との分離工程では核分裂性物質や放射性物質を裸のかたちで取り扱わずに済み、安全性に優れている。また、分離した核分裂生成物を除去した後、原子燃料を補充することで燃料要素を再使用することができる。このため経済的であり、しかも放射性廃棄物を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1から図5に、本発明の使用済原子燃料の再処理方法の実施形態の一例を概念的に示す。この使用済原子燃料の再処理方法(以下、単に再処理方法という)は、使用済原子燃料36を部分的に溶融し、その溶融部分37を移動させて原子燃料物質36aと核分裂生成物36bとを分離するものである。本実施形態では、使用済原子燃料36を被覆材9に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させる。即ち、燃料要素3の状態で原子燃料物質36aと核分裂生成物36bとの分離が行われる。
【0016】
使用済原子燃料36は、例えば溶融状態で被覆材9内に流し込んで固化させた金属燃料2を燃焼させたものである。この金属燃料2は、例えばU−Zr等の金属燃料である。ただし、U−Zrに限るものではなく、その他のウラン合金、プルトニウム合金等でも良く、金属ウラン、金属プルトニウム等でも良い。使用済原子燃料36中には燃え残りの原子燃料物質36aや新たに生成された原子燃料物質36aが金属燃料の形態で多量に含まれている。金属燃料(原子燃料物質)36aの溶融温度は比較的低く、例えば1100℃程度の温度では溶融している。また、使用済原子燃料36中に含まれる核分裂生成物36bは一般的に化合物となっているので、溶融温度が比較的高く、例えば1500℃以上である。
【0017】
燃料要素3の被覆材9としては、例えばステンレス鋼やジルコニウム合金が使用される。ただし、被覆材9の材料はステンレス鋼やジルコニウム合金に限るものではなく、被覆材9としての性質を有し、ヒータ38に加熱されても溶融しない材料であれば特に限定されない。
【0018】
燃料要素3の周囲にはヒータ38が設けられている。ヒータ38は、例えば高周波誘導加熱用のヒータであり、被覆材9の周囲から加熱を行い使用済原子燃料36を部分的に溶融させる。ただし、加熱方法としては高周波誘導加熱に限るものではない。ヒータ38は図示しない駆動装置に支持されており、燃料要素3の一端に対向する位置から他端に対向する位置まで移動できる。本実施形態では、燃料要素3の上端に対向する位置から下端に対向する位置まで移動できる。ヒータ38が移動すると、使用済原子燃料36の溶融部分37も移動する。
【0019】
ヒータ38によって使用済原子燃料36は金属燃料36aが溶融し且つ化合物の状態の核分裂生成物(以下、単に核分裂生成物という)36bは溶融しない温度Tに加熱される。つまり、溶融部分37では、金属燃料36aは溶融しているが、核分裂生成物36bは溶融していない。ヒータ38は使用済原子燃料36を温度Tに加熱できる温度で加熱を行う。本実施形態では、更に被覆材9を溶融させない温度でヒータ38は加熱を行う。なお、温度Tは、金属燃料36aは溶融し且つ核分裂生成物36bは溶融しない温度であれば特に限定されないが、例えば1400℃〜1500℃の範囲の温度であることが好ましい。下限温度を例えば1400℃としたのは、1400℃未満では溶融しない金属燃料36aが残存する虞があるからである。また、上限温度を1500℃としたのは、1500℃を超えると核分裂生成物36bが溶融する虞があるからである。なかでも例えば1500℃付近の温度が好ましい。ただし、これらの温度は厳密な値ではなく、多少の誤差があっても良い。
【0020】
ヒータ38によって使用済原子燃料36を部分的に溶融させ、ヒータ38をゆっくり移動させて溶融部分37を移動させる(領域溶融法)。溶融部分37では、金属燃料36aのみが溶融しており、核分裂生成物36bは溶融していない。溶融部分37を数回往復させることで、図2に示すように金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離することができる。
【0021】
分離では金属燃料36aは上に、核分裂生成物36bは下に移動するので、例えば燃料要素3の上下を逆にして被覆材9の下蓋部分を切断した後、被覆材9の中から核分裂生成物36bを取り出す(図3)。そして、例えば劣化ウラン等の金属燃料39を補充し(図4)、新しい下蓋9aを溶接して密封することで、これから燃焼させる金属燃料2を被覆材4内に収容した燃料要素3を製造することができる(図5)。即ち、燃料要素3を再生し、金属燃料2の反応性能を回復することができる。
【0022】
なお、核分裂生成物36bは放射性廃棄物であるが、固体の状態であり取り扱いや管理が容易である。核分裂生成物36bを含め発生した放射性廃棄物は、例えば既に実用化されている方法で処分される。
【0023】
本発明の再処理方法では使用済原子燃料36を燃料要素3の状態で再処理することができるので、大変合理的である。また、少なくとも分離工程(図1,図2)では原子燃料物質36aや放射性物質を裸のかたちで取り扱わずに済み、再処理工程全体としても原子燃料物質36aや放射性物質を裸のかたちで取り扱う工程を少なくできるので、安全性に優れている。
【0024】
また、分離した核分裂生成物36bを除去した後、原子燃料を補充することで燃料要素3を再使用することができるため、経済的であり、しかも放射性廃棄物を減らすことができる。
【0025】
また、使用済原子燃料36を部分的に溶融させ、その溶融部分37を移動させることで金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離しているので、簡易な方法となる。また、金属燃料36aと核分裂生成物36bとの分離に化学薬品や溶液等を使用しないので、安全性が高く、また廃液等の放射性廃棄物の発生を抑えることができる。また、分離に必要な処理工程を減らすことができると共に、分離に必要な装置・設備類が簡単なものとなる。これらのため、分離に要するコストを抑えることができる。
【0026】
また、大掛かりな装置・設備類を必要としないため、例えば原子力施設等の空きスペースなどに再処理ラインを設けることが可能になり、原子力施設の敷地内での再処理が可能になる。このため、使用済原子燃料36の輸送を不要にし大変合理的であると共に、核輸送の面(核拡散防止)からもさらに安全である。
【0027】
原子燃料物質36aの臨界質量は周りの物質条件によって大きく影響され、水(水素と酸素の化合物)の様な軽い元素からなる物質があると極端に小さくなってしまうが、本発明の再処理方法では分離に水を使用しないので臨界質量の極端な減少を防止することができ、安全性に優れている。
【0028】
本発明の再処理方法は簡易な方法である。例えば分離性能をある程度犠牲にしても簡易な方法で原子燃料物質と核分裂生成物との分離を行う必要がある場合や、原子燃料物質と核分裂生成物とを大まかに分離できれば良い場合などに、特に有効である。
【0029】
本発明の再処理方法を適用可能な燃料要素3としては、例えば高速炉で使用される燃料要素や燃料棒等を例示できるが、これらに限るものではなく、金属燃料2を被覆材9で覆うタイプの燃料要素3であれば、サイズや形状、使用する原子炉の種類等とは無関係に適用可能である。
【0030】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0031】
例えば、上述の説明では、分離後の核分裂生成物36bを被覆材9の下蓋を切断して中から取り出し除去するようにしていたが、必ずしもこの方法に限るものではない。つまり、被覆材9の下蓋のみを切断して核分裂生成物36bを取り出すのではなく、例えば燃料要素3の核分裂生成物36bと金属燃料36aとの境界部分を被覆材9ごと切断し、被覆材9の切断と核分裂生成物36bの除去とを同時に行っても良い。
【0032】
また、上述の説明では、燃料要素3の状態のままで、即ち使用済原子燃料36を被覆材9の中に入れたままの状態で分離を行っていたが、分離を行う前に使用済原子燃料36を被覆材9の中から取り出し、例えば坩堝内で分離を行っても良い。即ち、使用済原子燃料36を被覆材9から取り出して坩堝に移した後、一旦溶融させ、全体を冷却固化させた後、部分的に溶融させてその溶融部分37を移動させることで金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離するようにしても良い。
【0033】
さらに上述の説明では、金属燃料2として溶融状態で被覆材9内に流し込んで固化させたものを対象にしていたが、これに限るものではなく、例えば粒子状の金属燃料を被覆材9内に充填したものを対象にすることもできる。
【0034】
本発明の再処理方法は、例えば図6及び図7に示す高速炉1の燃料要素3の再処理に適用できる。
【0035】
この高速炉1は、金属燃料2を有する燃料要素3と、燃料要素3を冷却する液体金属冷却材(ただし、液体ナトリウムを除く)4とを収容する原子炉容器5をプール6内に設置したものである。原子炉容器5内には多数の燃料要素3が若干の隙間7をあけて並べられており、炉心27が構成されている。なお、図6では2つの燃料要素3を記載しているが、実際には多数の燃料要素3が設けられている。燃料要素3の集合体の周囲には円筒体8が設けられている。
【0036】
燃料要素3の横断面を図7に示す。燃料要素3は、内部が密閉された燃料要素容器(被覆材)9と、燃料要素容器9内を上下方向に貫通する冷却管10とを備えると共に、少なくとも運転時には金属燃料2は燃料要素容器9の内側面及び冷却管10の外周面に接触しており、液体金属冷却材4によって燃料要素容器9の外側面と冷却管10の内周面を冷却している。つまり、高速炉1が運転されて金属燃料2が高温になると金属燃料2は膨張するが、少なくとも膨張したときには金属燃料2は燃料要素容器9と冷却管10に十分に接触し、金属燃料2で生じた熱を燃料要素容器9と冷却管10に良好に伝達することができる。
【0037】
液体金属冷却材4としては、水と激しく反応する液体ナトリウム以外の液体金属、例えば液体の鉛−ビスマスを使用する。ただし、液体金属冷却材4として液体の鉛−ビスマス以外の液体金属、例えば水銀、鉛等を使用しても良い。
【0038】
燃料要素容器9は、例えばステンレス鋼製のボックスである。また、冷却管10は、例えばステンレス鋼製の管である。ただし、これらの材料はステンレス鋼に限るものではなく、ステンレス鋼以外の材料を採用しても良い。複数の冷却管10が燃料要素容器9を上下方向に貫通している。
【0039】
金属燃料2は、例えばU−Zr等の金属燃料である。ただし、U−Zrに限るものではなく、その他のウラン合金、プルトニウム合金等でも良く、金属ウラン、金属プルトニウム等でも良い。金属燃料2は、例えば粒子形状を成しており、燃料要素容器9内に充填されている。燃料要素容器9内には金属燃料2が例えば充填率(スミヤー密度)50〜80%程度で充填されており、金属燃料2の隙間には例えばHe等の不活性ガスが充填されている。また、金属燃料2の上方空間は、例えばHe等の不活性ガス溜11となっている。粒子状の金属燃料2を充填しているので、燃料要素容器9内で金属燃料2が動くことができ、運転時の体積膨張を逃がすことができる。また、金属燃料2の核分裂によって発生したクリプトンやキセノン等のガスは不活性ガス溜11に溜められる。金属燃料2で発生した熱は接触によって燃料要素容器9や冷却管10に直接伝達されるが、隙間に充填された不活性ガスによっても伝達される。
【0040】
なお、実際には、例えば図8に示すように、炉心27の中央27aに上述の金属燃料2を充填した燃料要素3を配置し、その周囲27bにブランケット燃料を充填した燃料要素3を配置し、高速中性子の漏れ防止とプルトニウムの増殖が図られている。
【0041】
燃料要素3は、例えば10mmの間隔(燃料要素の間隔、ピッチ間隔は157mm)をあけて並べられている。また、燃料要素3の大きさは、横断面のサイズが例えば0.152m×0.152m、高さが例えば2mである。1つの燃料要素3には、例えば100本(図7では25本のみ図示)の冷却管10が設けられている。冷却管10の内径は、例えば11mmである。冷却管10は、例えば15mmの間隔をあけて並べられている。ただし、これらの数値は一例であり、これらの数値に限るものではない。必要な冷却能力や出力等に応じて適宜設計する。
【0042】
本実施形態では、液体金属冷却材4を冷却管10内に強制的に循環させる冷却材駆動機構12を燃料要素3毎に設けている。冷却材駆動機構12は、例えば電磁ポンプ(EMP)である。冷却材駆動機構12は燃料要素容器9の下端開口部分に設けられており、燃料要素3の下から液体金属冷却材4を吸い込んで冷却管10内に向けて吐出する。各冷却材駆動機構12毎に通電量を変えて吐出量を調節することができる。
【0043】
原子炉容器5内の上部には、例えばHe、窒素、アルゴン等の不活性ガスが充填された不活性ガス溜13となっている。液体金属冷却材4の温度変化に伴う体積変動を、不活性ガス溜13の体積を変化させることで吸収することができる。
【0044】
原子炉容器5内には蒸気発生器14が設置されている。蒸気発生器14は例えば円筒形状をなし、液体金属冷却材4の液面4aに近い位置に配置され、原子炉容器5の内周面に取り付けられている。蒸気発生器14には、二次冷却材15を循環させる流路16,17が接続されている。二次冷却材15は、例えば水/蒸気である。蒸気発生器14は、一次冷却材としての液体金属冷却材4と二次冷却材15としての水との間で熱交換を行い、蒸気を発生させる。
【0045】
原子炉容器5の上面には、制御棒や安全棒を駆動する駆動機構18が設置されている。なお、図6では制御棒と安全棒をまとめて棒19で示しているが、実際には複数の制御棒と複数の安全棒が設置されており、駆動機構18によって位置制御される。制御棒や安全棒は、各燃料要素3間の隙間7に挿入される。ただし、冷却管10と同様の燃料要素容器9を貫通するパイプを設け、このパイプ内に制御棒や安全棒を挿入するようにしても良い。
【0046】
原子炉容器5はプール6内に設置されている。プール6には、運転停止時にたとえ二次冷却材15による冷却が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水が蓄えられている。この水には、例えばエチレングリコール等の蒸気爆発防止剤が添加されている。プール6内は蓋20によって密閉され、加圧されている。例えば、10気圧〜数十気圧程度に加圧されている。プール6内の水の温度は、例えば常温である。なお、蓋20は放射性物質を閉じ込める機能も有している。
【0047】
高速炉1の燃料要素3を再処理する場合には、例えば次のようにする。つまり、燃料要素3を高速炉1から取り出した後、図示しないプール内で一定期間冷却する。その後、燃料要素3をプールから取り出し、燃料要素容器9の蓋を外して使用済原子燃料36を坩堝内に移し、上述の方法で金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離する。ただし、使用済原子燃料36を燃料要素3のままの状態で分離するようにしても良い。また、この場合には、冷却管10や冷却材駆動機構12を取り外しても良いが、冷却管10は取り外さなくても良い。
【0048】
また、本発明の再処理方法は、例えば図9及び図10に示す高速炉1の燃料要素3の再処理にも適用できる。
【0049】
この高速炉1は、金属燃料2を密封した燃料要素3をプール6内に設置すると共に、燃料要素3内に水蒸気又は水蒸気と水との2相流(水蒸気/水2相流)34を循環させて炉心27を冷却するものである。プール6内には多数の燃料要素3が若干の隙間7をあけて並べられており、炉心27が構成されている。燃料要素3はプール6内に直接設置されている。
【0050】
なお、図9では2つの燃料要素3を記載しているが、実際には多数の燃料要素3が設けられている。各燃料要素3間の隙間7を流れるプール6内の水又は水と水蒸気の2相流(水/水蒸気2相流)33は高速中性子を減速させるので、高速炉1では負の反応度を与えることになる。このため、隙間7を流れる水の流量は最大でも炉心27の核分裂連鎖反応を維持できる程度の流量とし、この流量にあわせて隙間7の広さを決定する。なお、本実施形態では、プール6内に貯める水又は水/水蒸気2相流33として、水33を使用する。ただし、水33に代えて、水と水蒸気とが混在した状態の水/水蒸気2相流33を使用しても良い。
【0051】
本実施形態では、炉心冷却材34として水(冷却材)を使用し、これを炉心27では水蒸気の状態又は水蒸気/水2相流の状態で使用する。炉心冷却材34としての水蒸気によって減速される高速中性子の数は少ないので、水蒸気34で炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。また、炉心冷却材34としての水蒸気/水2相流は、水蒸気と高ボイド率の水とが混在した状態のものであり、減速材となる水の存在割合が小さく減速される高速中性子の数は少ないので、水蒸気/水2相流34で炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。即ち、水蒸気/水2相流34としては、高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる程度に高ボイド率の水と水蒸気とが混在したものを使用する。
【0052】
燃料要素3の横断面を図10に示す。燃料要素3は、内部が密閉された燃料要素容器(被覆材)9と、燃料要素3内を循環し水蒸気又は水蒸気/水2相流34が流れる冷却管10とを備えると共に、少なくとも運転時には金属燃料2は冷却管10の外周面及び燃料要素容器9の内側面に接触しており、燃料要素3の内と外から冷却を行うようにしている。つまり、高速炉1が運転されて金属燃料2が高温になると金属燃料2は膨張するが、少なくとも膨張したときには金属燃料2は燃料要素容器9と冷却管10に十分に接触し、金属燃料2で生じた熱を燃料要素容器9と冷却管10に良好に伝達することができる。燃料要素容器9内の金属燃料2の下には、例えばSUS等のステンレス鋼製の反射体29が設けられている。ただし、反射体29の材料はSUS以外のステンレス鋼でも良く、またステンレス鋼以外の材料でも良い。
【0053】
反射体29は熱交換器としても機能する。つまり、燃料要素3の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体29を熱交換器としても使用している。これにより、燃料要素3の下部に熱交換器が設置され、燃料要素3に炉心冷却材として冷却水34を供給し、炉心27冷却後の水蒸気又は水蒸気/水2相流34によって炉心27冷却前の液体状態の冷却水34を加熱して水蒸気又は水蒸気/水2相流34にする。
【0054】
燃料要素容器9は、例えばステンレス鋼製のボックスである。また、冷却管10は、例えばステンレス鋼製の管である。ただし、これらの材料はステンレス鋼に限るものではなく、ステンレス鋼以外の材料、例えばジルコニウム合金やその他の材料を採用しても良い。冷却管10は、炉心冷却材34を循環させる流入管30と流出管31のいずれか一方より分岐して燃料要素3内に下から進入している。流入管30より分岐した冷却管(以下、流入側冷却管という)10と流出管31より分岐した冷却管(以下、流出側冷却管という)10とが1本ずつペアとなり、ペア毎に上端を連通させている。つまり、流入側冷却管10と流出側冷却管10とでU字管を構成している。各冷却管10の下端、具体的には流入側冷却管10の下端(上流端)と流出側冷却管10の下端(下流端)は反射体29を貫通している。冷却管10は反射体29に対して十分に接触しており、熱伝達が行われる。このように、金属燃料2と、金属燃料2を収容し、水又は水/水蒸気2相流33中に設置された燃料要素容器9と、燃料要素容器9内を循環し、水蒸気又は水蒸気/水2相流34が流れる冷却管10とを備える高速炉用燃料要素3が構成される。
【0055】
金属燃料2は、例えばU−Zr等の金属燃料である。ただし、U−Zrに限るものではなく、その他のウラン合金、プルトニウム合金等でも良く、金属ウラン、金属プルトニウム等でも良い。金属燃料2は、例えば粒子形状を成しており、燃料要素容器9内に充填されている。燃料要素容器9内には金属燃料2が例えば充填率(スミヤー密度)50〜80%程度で充填されており、金属燃料2の隙間には例えばHe等の不活性ガスが充填されている。また、金属燃料2の上方空間は、例えばHe等の不活性ガス溜11となっている。粒子状の金属燃料2を充填しているので、燃料要素容器9内で金属燃料2が動くことができ、運転時の体積膨張を逃がすことができる。また、金属燃料2の核分裂によって発生したクリプトンやキセノン等のガスは不活性ガス溜11に溜められる。金属燃料2で発生した熱は接触によって燃料要素容器9や冷却管10に直接伝達されるが、隙間に充填された不活性ガスによっても伝達される。
【0056】
燃料要素3は、例えば1.6mmの間隔(ただし燃料要素3の間隔。ピッチ間隔では100mm)をあけて並べられている。また、燃料要素3の大きさは、横断面のサイズが例えば0.1m×0.1m、高さが例えば2mである。1つの燃料要素3には、例えば64本(図10では24本のみ図示)の冷却管10が設けられている。冷却管10の内径は、例えば4mmである。冷却管10は、例えば13mmの間隔をあけて並べられている。ただし、これらの数値は一例であり、これらの数値に限るものではない。必要な冷却能力や出力等に応じて適宜設計する。
【0057】
なお、実際には、例えば図8に示すように、炉心27の中央27aに上述の金属燃料2を充填した燃料要素3を配置し、その周囲27bにブランケット燃料を充填した燃料要素3を配置し、高速中性子の漏れ防止とプルトニウムの増殖が図られている。金属燃料2は、例えば濃縮ウランとして10%のものを使用したU−10%Zr合金(Zrが10%、Uが90%)、ブランケット燃料は、例えば0.2%の劣化ウランを使用したU−10%Zr合金である。
【0058】
プール6内はプール蓋20によって密閉されている。プール6内の水33の水面33aの上には、例えばHe、窒素、アルゴン等の不活性ガスが充填された不活性ガス溜13となっている。水33の温度変化に伴う体積変動を、不活性ガス溜13の体積を変化させることで吸収することができる。
【0059】
プール6には、運転停止時にたとえ炉心冷却材34による冷却が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水33が蓄えられている。プール6内の水33の温度は、例えば常温である。なお、プール蓋20は放射性物質を閉じ込める機能も有している。
【0060】
なお、プール6内の水33を冷却するプール冷却系を設け、高速炉1の通常運転時における水33の温度上昇や、運転停止時の水33の温度上昇を防止するようにしても良い。また、プール冷却系に代えて、二次冷却系との間で熱交換を行う熱交換器を設けても良い。
【0061】
プール蓋20の上面には、制御棒や安全棒を駆動する駆動機構18が設置されている。なお、図9では制御棒と安全棒をまとめて棒19で示しているが、実際には複数の制御棒と複数の安全棒が設置されており、駆動機構18によって位置制御される。制御棒や安全棒は、例えば冷却管10と並べらて設置された管32内に挿入される。即ち、制御棒や安全棒は燃料要素3内に挿入される。ただし、各燃料要素3間の隙間7に制御棒や案内棒を挿入するようにしても良い。
【0062】
高速炉1の燃料要素3を再処理する場合には、例えば次のようにする。つまり、燃料要素3を高速炉1から取り出した後、図示しないプール内で一定期間冷却する。その後、燃料要素3をプールから取り出し、燃料要素容器9の蓋を外して使用済原子燃料36を坩堝内に移し、上述の方法で金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離する。ただし、使用済原子燃料36を燃料要素3のままの状態で分離するようにしても良い。また、この場合には、冷却管10や反射体29を取り外しても良いが、取り外さなくても良い。
【0063】
また、図9の高速炉1では、燃料要素3をプール6内に設置していたが、水又は水/水蒸気2相流33中、即ち外側冷却材33中であれば必ずしもプール6内に設置しなくても良い。例えば図11に示すように、原子炉容器25内に燃料要素3を設置すると共に、原子炉容器25内に水又は水/水蒸気2相流33を貯めるようにしても良い。なお、図11の高速炉1では図9の高速炉1と同一の部材については同一の符号を付してあり、それらの説明を省略する。
【0064】
図12に燃料要素3の横断面を、図13に燃料ユニット35の断面をそれぞれ示す。この例では、金属燃料2として、一旦溶融させたものを型に流し込んで冷却し固化させた燃料ユニット35を使用している。1つの燃料要素容器9内には、例えば64個(8列×8列)の燃料ユニット35が並べられている。各燃料ユニット35には予め冷却管10又は制御棒や安全棒を挿入する管32を設置した後に、溶融金属燃料を流し込んでいる。
【0065】
原子炉容器25内には、運転停止時にたとえ外部からの冷却材の供給が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水又は水/水蒸気2相流33が蓄えられている。原子炉容器25内には円筒状のシュラウド8が設けられており、このシュラウド8内に燃料要素3は設置されている。本実施形態では、燃料要素3の冷却管10は燃料要素容器9を上下に貫通している。図示しない制御棒や安全棒は、例えば炉心の下から挿入される。ただし、炉心の上から挿入する構成としても良い。
【0066】
外側冷却材である水又は水/水蒸気2相流33は流入管30から原子炉容器25内に供給され、原子炉容器25内の底部から燃料要素3の冷却管10内に流入し、炉心27の熱で水蒸気又は水蒸気/水2相流34(内側冷却材)となって上昇する。また、原子炉容器25の底部の水又は水/水蒸気2相流33の一部はそのまま外側冷却材として燃料要素3の間の隙間7に流入し、ここで加熱されて上昇する。そして、水面33aの上に到達した水蒸気は流出管31から流出し、例えば発電等に使用される。また、燃料要素3の内側又は外側を通り抜けた流れの液相部分はシュラウド8を越えて外側冷却材となり、シュラウド8の外側を下降する。このようにして炉心冷却材の流れが形成され、炉心27が冷却される。
【0067】
図11の高速炉1でも、図9の高速炉1と同様に、炉心27の冷却を主に行う内側冷却材34は水蒸気又は水蒸気/水2相流であり、また、炉心27における核分裂連鎖反応を考慮して外側冷却材が流れる隙間7の広さを決定しているので、炉心27において高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。
【0068】
この高速炉1でも燃料要素3を再処理する場合には、例えば次のようにする。つまり、燃料要素3を高速炉1から取り出した後、図示しないプール内で一定期間冷却する。その後、燃料要素3をプールから取り出し、燃料要素容器9の蓋を外して使用済原子燃料36を坩堝内に移し、上述の方法で金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離する。ただし、使用済原子燃料36を燃料要素3のままの状態で分離するようにしても良い。また、この場合には、冷却管10を取り外しても良いが、取り外さなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の使用済原子燃料の再処理方法を示し、溶融部分を移動させている状態を説明するための概念図である。
【図2】図1に続く状態を示し、金属燃料と核分裂生成物を分離した状態を説明するための概念図である。
【図3】図2に続く状態を示し、核分裂生成物を除去する様子を説明するための概念図である。
【図4】図3に続く状態を示し、金属燃料を補充する様子を説明するための概念図である。
【図5】図4に続く状態を示し、燃料要素を再生した様子を説明するための概念図である。
【図6】本発明が適用できる燃料要素を備える高速炉の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】図6の高速炉の燃料要素の断面図である。
【図8】図6の高速炉の炉心の概念図である。
【図9】本発明が適用できる燃料要素を備える高速炉の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図10】図9の高速炉の燃料要素の断面図である。
【図11】本発明が適用できる燃料要素を備える高速炉の第3の実施形態を示す概略構成図である。
【図12】図11の高速炉の燃料要素の断面図である。
【図13】図12の燃料要素を構成する燃料ユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0070】
9 被覆材
36 使用済原子燃料
36a 原子燃料物質(原子燃料)
36b 核分裂生成物
37 使用済原子燃料の溶融部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済原子燃料の再処理方法に関する。さらに詳述すると、本発明は化学薬品や溶液等を使わずに使用済原子燃料中の核分裂生成物を分離する使用済原子燃料の再処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼後の原子燃料中には原子燃料資源が多く残っていため、使用済原子燃料の再処理が行われる。再処理方法には、原子燃料を溶かして溶媒抽出する湿式法と、水を使わない乾式法がある。
【0003】
湿式再処理方法として、ピューレックス(PUREX)法が実用化されている。ピューレックス法では、溶媒に燐酸トリブチル(TBP)を使用する。TBPをドデカン(希釈剤)に溶かした有機溶媒を、使用済原子燃料を溶かした硝酸溶液に混ぜると、ウランとプルトニウムは溶媒側に移り、核分裂生成物の大部分は硝酸溶液に残る。これを利用してウラン及びプルトニウムと核分裂生成物とを分離することができる。
【0004】
また、乾式再処理方法としては、例えば高温でフッ化物として蒸留する方法、溶融塩として処理する方法等が研究されている。
【0005】
【非特許文献1】「新版 原子力ハンドブック」オーム社 平成元年3月30日第1版第1刷発行 p.561−565
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の各再処理方法は大掛かりな装置や設備類が必要であり、簡易な方法の開発が要請されている。また、上述の湿式再処理方法は溶液を使用しており、放射性廃棄物を多量に発生させてしまう。
【0007】
本発明は、簡易な方法で使用済原子燃料中の原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することができると共に、放射性廃棄物の発生量を減らすことができる使用済原子燃料の再処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の使用済原子燃料の再処理方法は、使用済原子燃料を部分的に溶融し、その溶融部分を移動させて原子燃料物質と核分裂生成物とを分離するものである。
【0009】
使用済原子燃料には原子燃料物質であるウランやプルトニウムの他に、セシウム、ストロンチウムなどの核分裂生成物(FP)が含まれている。核分裂生成物は一般的に化合物の状態で存在しており、金属燃料として存在する原子燃料物質よりも溶融温度が高い。この溶融温度の差を利用して原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することができる。つまり、使用済原子燃料を部分的に溶融し、その溶融部分を移動させると、溶融温度が低く溶けやすい金属燃料が上に、溶融温度が高く溶けにくい核分裂生成物が下にそれぞれ移動するので、これらを分離することができる。
【0010】
また、請求項2記載の使用済原子燃料の再処理方法は、使用済原子燃料を被覆材に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させるものである。燃料要素の被覆材はその性質上熱伝達に優れているので、被覆材の外側から内側の使用済原子燃料を加熱することができる。外側から加熱された原子燃料は被覆材の中で部分的に溶融し、その溶融部分を移動させることで原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の使用済原子燃料の再処理方法では、使用済原子燃料を部分的に溶融し、その溶融部分を移動させて原子燃料物質と核分裂生成物とを分離するので、簡易な方法で原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することができる。原子燃料物質と核分裂生成物との分離に化学薬品や溶液等を使用しないので、安全性が高く、また放射性廃棄物を減らすことができる。また、分離に必要な処理工程を減らすことができると共に、分離に必要な装置・設備類が簡単なものとなる。これらのため、分離に要するコストを抑えることができる。また、例えば原子力施設等の空きスペースなどに再処理ラインを設けることが可能になり、原子力施設の敷地内での再処理が可能になるので、大変合理的であると共に、核輸送の面からも安全である。さらに、原子燃料物質の臨界質量は周りの物質条件によって大きく影響され、水(水素と酸素の化合物)の様な軽い元素からなる物質があると極端に小さくなってしまうが、本発明では分離に水を使用しないので臨界質量の極端な減少を防止することができ、安全性に優れている。また、例えば分離性能をある程度犠牲にしても簡易な方法で原子燃料物質と核分裂生成物との分離を行う必要がある場合や、原子燃料物質と核分裂生成物とを大まかに分離できれば良い場合などに、特に有効な方法である。
【0012】
なお、原子燃料物質と核分裂生成物とを分離した後、核分裂生成物を機械的に除去し、例えば劣化ウラン等の燃料物質を追加することで、燃料要素を継続して利用することができる。このため、燃料資源を有効に活用することができる。
【0013】
また、請求項2記載の使用済原子燃料の再処理方法では、使用済原子燃料を被覆材に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させるので、使用済原子燃料を被覆材の中で原子燃料物質と核分裂生成物とに分離することができ、原子炉から取り出した燃料要素をそのまま処理することができる。このため、少なくとも原子燃料物質と核分裂生成物との分離工程では核分裂性物質や放射性物質を裸のかたちで取り扱わずに済み、安全性に優れている。また、分離した核分裂生成物を除去した後、原子燃料を補充することで燃料要素を再使用することができる。このため経済的であり、しかも放射性廃棄物を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1から図5に、本発明の使用済原子燃料の再処理方法の実施形態の一例を概念的に示す。この使用済原子燃料の再処理方法(以下、単に再処理方法という)は、使用済原子燃料36を部分的に溶融し、その溶融部分37を移動させて原子燃料物質36aと核分裂生成物36bとを分離するものである。本実施形態では、使用済原子燃料36を被覆材9に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させる。即ち、燃料要素3の状態で原子燃料物質36aと核分裂生成物36bとの分離が行われる。
【0016】
使用済原子燃料36は、例えば溶融状態で被覆材9内に流し込んで固化させた金属燃料2を燃焼させたものである。この金属燃料2は、例えばU−Zr等の金属燃料である。ただし、U−Zrに限るものではなく、その他のウラン合金、プルトニウム合金等でも良く、金属ウラン、金属プルトニウム等でも良い。使用済原子燃料36中には燃え残りの原子燃料物質36aや新たに生成された原子燃料物質36aが金属燃料の形態で多量に含まれている。金属燃料(原子燃料物質)36aの溶融温度は比較的低く、例えば1100℃程度の温度では溶融している。また、使用済原子燃料36中に含まれる核分裂生成物36bは一般的に化合物となっているので、溶融温度が比較的高く、例えば1500℃以上である。
【0017】
燃料要素3の被覆材9としては、例えばステンレス鋼やジルコニウム合金が使用される。ただし、被覆材9の材料はステンレス鋼やジルコニウム合金に限るものではなく、被覆材9としての性質を有し、ヒータ38に加熱されても溶融しない材料であれば特に限定されない。
【0018】
燃料要素3の周囲にはヒータ38が設けられている。ヒータ38は、例えば高周波誘導加熱用のヒータであり、被覆材9の周囲から加熱を行い使用済原子燃料36を部分的に溶融させる。ただし、加熱方法としては高周波誘導加熱に限るものではない。ヒータ38は図示しない駆動装置に支持されており、燃料要素3の一端に対向する位置から他端に対向する位置まで移動できる。本実施形態では、燃料要素3の上端に対向する位置から下端に対向する位置まで移動できる。ヒータ38が移動すると、使用済原子燃料36の溶融部分37も移動する。
【0019】
ヒータ38によって使用済原子燃料36は金属燃料36aが溶融し且つ化合物の状態の核分裂生成物(以下、単に核分裂生成物という)36bは溶融しない温度Tに加熱される。つまり、溶融部分37では、金属燃料36aは溶融しているが、核分裂生成物36bは溶融していない。ヒータ38は使用済原子燃料36を温度Tに加熱できる温度で加熱を行う。本実施形態では、更に被覆材9を溶融させない温度でヒータ38は加熱を行う。なお、温度Tは、金属燃料36aは溶融し且つ核分裂生成物36bは溶融しない温度であれば特に限定されないが、例えば1400℃〜1500℃の範囲の温度であることが好ましい。下限温度を例えば1400℃としたのは、1400℃未満では溶融しない金属燃料36aが残存する虞があるからである。また、上限温度を1500℃としたのは、1500℃を超えると核分裂生成物36bが溶融する虞があるからである。なかでも例えば1500℃付近の温度が好ましい。ただし、これらの温度は厳密な値ではなく、多少の誤差があっても良い。
【0020】
ヒータ38によって使用済原子燃料36を部分的に溶融させ、ヒータ38をゆっくり移動させて溶融部分37を移動させる(領域溶融法)。溶融部分37では、金属燃料36aのみが溶融しており、核分裂生成物36bは溶融していない。溶融部分37を数回往復させることで、図2に示すように金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離することができる。
【0021】
分離では金属燃料36aは上に、核分裂生成物36bは下に移動するので、例えば燃料要素3の上下を逆にして被覆材9の下蓋部分を切断した後、被覆材9の中から核分裂生成物36bを取り出す(図3)。そして、例えば劣化ウラン等の金属燃料39を補充し(図4)、新しい下蓋9aを溶接して密封することで、これから燃焼させる金属燃料2を被覆材4内に収容した燃料要素3を製造することができる(図5)。即ち、燃料要素3を再生し、金属燃料2の反応性能を回復することができる。
【0022】
なお、核分裂生成物36bは放射性廃棄物であるが、固体の状態であり取り扱いや管理が容易である。核分裂生成物36bを含め発生した放射性廃棄物は、例えば既に実用化されている方法で処分される。
【0023】
本発明の再処理方法では使用済原子燃料36を燃料要素3の状態で再処理することができるので、大変合理的である。また、少なくとも分離工程(図1,図2)では原子燃料物質36aや放射性物質を裸のかたちで取り扱わずに済み、再処理工程全体としても原子燃料物質36aや放射性物質を裸のかたちで取り扱う工程を少なくできるので、安全性に優れている。
【0024】
また、分離した核分裂生成物36bを除去した後、原子燃料を補充することで燃料要素3を再使用することができるため、経済的であり、しかも放射性廃棄物を減らすことができる。
【0025】
また、使用済原子燃料36を部分的に溶融させ、その溶融部分37を移動させることで金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離しているので、簡易な方法となる。また、金属燃料36aと核分裂生成物36bとの分離に化学薬品や溶液等を使用しないので、安全性が高く、また廃液等の放射性廃棄物の発生を抑えることができる。また、分離に必要な処理工程を減らすことができると共に、分離に必要な装置・設備類が簡単なものとなる。これらのため、分離に要するコストを抑えることができる。
【0026】
また、大掛かりな装置・設備類を必要としないため、例えば原子力施設等の空きスペースなどに再処理ラインを設けることが可能になり、原子力施設の敷地内での再処理が可能になる。このため、使用済原子燃料36の輸送を不要にし大変合理的であると共に、核輸送の面(核拡散防止)からもさらに安全である。
【0027】
原子燃料物質36aの臨界質量は周りの物質条件によって大きく影響され、水(水素と酸素の化合物)の様な軽い元素からなる物質があると極端に小さくなってしまうが、本発明の再処理方法では分離に水を使用しないので臨界質量の極端な減少を防止することができ、安全性に優れている。
【0028】
本発明の再処理方法は簡易な方法である。例えば分離性能をある程度犠牲にしても簡易な方法で原子燃料物質と核分裂生成物との分離を行う必要がある場合や、原子燃料物質と核分裂生成物とを大まかに分離できれば良い場合などに、特に有効である。
【0029】
本発明の再処理方法を適用可能な燃料要素3としては、例えば高速炉で使用される燃料要素や燃料棒等を例示できるが、これらに限るものではなく、金属燃料2を被覆材9で覆うタイプの燃料要素3であれば、サイズや形状、使用する原子炉の種類等とは無関係に適用可能である。
【0030】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0031】
例えば、上述の説明では、分離後の核分裂生成物36bを被覆材9の下蓋を切断して中から取り出し除去するようにしていたが、必ずしもこの方法に限るものではない。つまり、被覆材9の下蓋のみを切断して核分裂生成物36bを取り出すのではなく、例えば燃料要素3の核分裂生成物36bと金属燃料36aとの境界部分を被覆材9ごと切断し、被覆材9の切断と核分裂生成物36bの除去とを同時に行っても良い。
【0032】
また、上述の説明では、燃料要素3の状態のままで、即ち使用済原子燃料36を被覆材9の中に入れたままの状態で分離を行っていたが、分離を行う前に使用済原子燃料36を被覆材9の中から取り出し、例えば坩堝内で分離を行っても良い。即ち、使用済原子燃料36を被覆材9から取り出して坩堝に移した後、一旦溶融させ、全体を冷却固化させた後、部分的に溶融させてその溶融部分37を移動させることで金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離するようにしても良い。
【0033】
さらに上述の説明では、金属燃料2として溶融状態で被覆材9内に流し込んで固化させたものを対象にしていたが、これに限るものではなく、例えば粒子状の金属燃料を被覆材9内に充填したものを対象にすることもできる。
【0034】
本発明の再処理方法は、例えば図6及び図7に示す高速炉1の燃料要素3の再処理に適用できる。
【0035】
この高速炉1は、金属燃料2を有する燃料要素3と、燃料要素3を冷却する液体金属冷却材(ただし、液体ナトリウムを除く)4とを収容する原子炉容器5をプール6内に設置したものである。原子炉容器5内には多数の燃料要素3が若干の隙間7をあけて並べられており、炉心27が構成されている。なお、図6では2つの燃料要素3を記載しているが、実際には多数の燃料要素3が設けられている。燃料要素3の集合体の周囲には円筒体8が設けられている。
【0036】
燃料要素3の横断面を図7に示す。燃料要素3は、内部が密閉された燃料要素容器(被覆材)9と、燃料要素容器9内を上下方向に貫通する冷却管10とを備えると共に、少なくとも運転時には金属燃料2は燃料要素容器9の内側面及び冷却管10の外周面に接触しており、液体金属冷却材4によって燃料要素容器9の外側面と冷却管10の内周面を冷却している。つまり、高速炉1が運転されて金属燃料2が高温になると金属燃料2は膨張するが、少なくとも膨張したときには金属燃料2は燃料要素容器9と冷却管10に十分に接触し、金属燃料2で生じた熱を燃料要素容器9と冷却管10に良好に伝達することができる。
【0037】
液体金属冷却材4としては、水と激しく反応する液体ナトリウム以外の液体金属、例えば液体の鉛−ビスマスを使用する。ただし、液体金属冷却材4として液体の鉛−ビスマス以外の液体金属、例えば水銀、鉛等を使用しても良い。
【0038】
燃料要素容器9は、例えばステンレス鋼製のボックスである。また、冷却管10は、例えばステンレス鋼製の管である。ただし、これらの材料はステンレス鋼に限るものではなく、ステンレス鋼以外の材料を採用しても良い。複数の冷却管10が燃料要素容器9を上下方向に貫通している。
【0039】
金属燃料2は、例えばU−Zr等の金属燃料である。ただし、U−Zrに限るものではなく、その他のウラン合金、プルトニウム合金等でも良く、金属ウラン、金属プルトニウム等でも良い。金属燃料2は、例えば粒子形状を成しており、燃料要素容器9内に充填されている。燃料要素容器9内には金属燃料2が例えば充填率(スミヤー密度)50〜80%程度で充填されており、金属燃料2の隙間には例えばHe等の不活性ガスが充填されている。また、金属燃料2の上方空間は、例えばHe等の不活性ガス溜11となっている。粒子状の金属燃料2を充填しているので、燃料要素容器9内で金属燃料2が動くことができ、運転時の体積膨張を逃がすことができる。また、金属燃料2の核分裂によって発生したクリプトンやキセノン等のガスは不活性ガス溜11に溜められる。金属燃料2で発生した熱は接触によって燃料要素容器9や冷却管10に直接伝達されるが、隙間に充填された不活性ガスによっても伝達される。
【0040】
なお、実際には、例えば図8に示すように、炉心27の中央27aに上述の金属燃料2を充填した燃料要素3を配置し、その周囲27bにブランケット燃料を充填した燃料要素3を配置し、高速中性子の漏れ防止とプルトニウムの増殖が図られている。
【0041】
燃料要素3は、例えば10mmの間隔(燃料要素の間隔、ピッチ間隔は157mm)をあけて並べられている。また、燃料要素3の大きさは、横断面のサイズが例えば0.152m×0.152m、高さが例えば2mである。1つの燃料要素3には、例えば100本(図7では25本のみ図示)の冷却管10が設けられている。冷却管10の内径は、例えば11mmである。冷却管10は、例えば15mmの間隔をあけて並べられている。ただし、これらの数値は一例であり、これらの数値に限るものではない。必要な冷却能力や出力等に応じて適宜設計する。
【0042】
本実施形態では、液体金属冷却材4を冷却管10内に強制的に循環させる冷却材駆動機構12を燃料要素3毎に設けている。冷却材駆動機構12は、例えば電磁ポンプ(EMP)である。冷却材駆動機構12は燃料要素容器9の下端開口部分に設けられており、燃料要素3の下から液体金属冷却材4を吸い込んで冷却管10内に向けて吐出する。各冷却材駆動機構12毎に通電量を変えて吐出量を調節することができる。
【0043】
原子炉容器5内の上部には、例えばHe、窒素、アルゴン等の不活性ガスが充填された不活性ガス溜13となっている。液体金属冷却材4の温度変化に伴う体積変動を、不活性ガス溜13の体積を変化させることで吸収することができる。
【0044】
原子炉容器5内には蒸気発生器14が設置されている。蒸気発生器14は例えば円筒形状をなし、液体金属冷却材4の液面4aに近い位置に配置され、原子炉容器5の内周面に取り付けられている。蒸気発生器14には、二次冷却材15を循環させる流路16,17が接続されている。二次冷却材15は、例えば水/蒸気である。蒸気発生器14は、一次冷却材としての液体金属冷却材4と二次冷却材15としての水との間で熱交換を行い、蒸気を発生させる。
【0045】
原子炉容器5の上面には、制御棒や安全棒を駆動する駆動機構18が設置されている。なお、図6では制御棒と安全棒をまとめて棒19で示しているが、実際には複数の制御棒と複数の安全棒が設置されており、駆動機構18によって位置制御される。制御棒や安全棒は、各燃料要素3間の隙間7に挿入される。ただし、冷却管10と同様の燃料要素容器9を貫通するパイプを設け、このパイプ内に制御棒や安全棒を挿入するようにしても良い。
【0046】
原子炉容器5はプール6内に設置されている。プール6には、運転停止時にたとえ二次冷却材15による冷却が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水が蓄えられている。この水には、例えばエチレングリコール等の蒸気爆発防止剤が添加されている。プール6内は蓋20によって密閉され、加圧されている。例えば、10気圧〜数十気圧程度に加圧されている。プール6内の水の温度は、例えば常温である。なお、蓋20は放射性物質を閉じ込める機能も有している。
【0047】
高速炉1の燃料要素3を再処理する場合には、例えば次のようにする。つまり、燃料要素3を高速炉1から取り出した後、図示しないプール内で一定期間冷却する。その後、燃料要素3をプールから取り出し、燃料要素容器9の蓋を外して使用済原子燃料36を坩堝内に移し、上述の方法で金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離する。ただし、使用済原子燃料36を燃料要素3のままの状態で分離するようにしても良い。また、この場合には、冷却管10や冷却材駆動機構12を取り外しても良いが、冷却管10は取り外さなくても良い。
【0048】
また、本発明の再処理方法は、例えば図9及び図10に示す高速炉1の燃料要素3の再処理にも適用できる。
【0049】
この高速炉1は、金属燃料2を密封した燃料要素3をプール6内に設置すると共に、燃料要素3内に水蒸気又は水蒸気と水との2相流(水蒸気/水2相流)34を循環させて炉心27を冷却するものである。プール6内には多数の燃料要素3が若干の隙間7をあけて並べられており、炉心27が構成されている。燃料要素3はプール6内に直接設置されている。
【0050】
なお、図9では2つの燃料要素3を記載しているが、実際には多数の燃料要素3が設けられている。各燃料要素3間の隙間7を流れるプール6内の水又は水と水蒸気の2相流(水/水蒸気2相流)33は高速中性子を減速させるので、高速炉1では負の反応度を与えることになる。このため、隙間7を流れる水の流量は最大でも炉心27の核分裂連鎖反応を維持できる程度の流量とし、この流量にあわせて隙間7の広さを決定する。なお、本実施形態では、プール6内に貯める水又は水/水蒸気2相流33として、水33を使用する。ただし、水33に代えて、水と水蒸気とが混在した状態の水/水蒸気2相流33を使用しても良い。
【0051】
本実施形態では、炉心冷却材34として水(冷却材)を使用し、これを炉心27では水蒸気の状態又は水蒸気/水2相流の状態で使用する。炉心冷却材34としての水蒸気によって減速される高速中性子の数は少ないので、水蒸気34で炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。また、炉心冷却材34としての水蒸気/水2相流は、水蒸気と高ボイド率の水とが混在した状態のものであり、減速材となる水の存在割合が小さく減速される高速中性子の数は少ないので、水蒸気/水2相流34で炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。即ち、水蒸気/水2相流34としては、高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる程度に高ボイド率の水と水蒸気とが混在したものを使用する。
【0052】
燃料要素3の横断面を図10に示す。燃料要素3は、内部が密閉された燃料要素容器(被覆材)9と、燃料要素3内を循環し水蒸気又は水蒸気/水2相流34が流れる冷却管10とを備えると共に、少なくとも運転時には金属燃料2は冷却管10の外周面及び燃料要素容器9の内側面に接触しており、燃料要素3の内と外から冷却を行うようにしている。つまり、高速炉1が運転されて金属燃料2が高温になると金属燃料2は膨張するが、少なくとも膨張したときには金属燃料2は燃料要素容器9と冷却管10に十分に接触し、金属燃料2で生じた熱を燃料要素容器9と冷却管10に良好に伝達することができる。燃料要素容器9内の金属燃料2の下には、例えばSUS等のステンレス鋼製の反射体29が設けられている。ただし、反射体29の材料はSUS以外のステンレス鋼でも良く、またステンレス鋼以外の材料でも良い。
【0053】
反射体29は熱交換器としても機能する。つまり、燃料要素3の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体29を熱交換器としても使用している。これにより、燃料要素3の下部に熱交換器が設置され、燃料要素3に炉心冷却材として冷却水34を供給し、炉心27冷却後の水蒸気又は水蒸気/水2相流34によって炉心27冷却前の液体状態の冷却水34を加熱して水蒸気又は水蒸気/水2相流34にする。
【0054】
燃料要素容器9は、例えばステンレス鋼製のボックスである。また、冷却管10は、例えばステンレス鋼製の管である。ただし、これらの材料はステンレス鋼に限るものではなく、ステンレス鋼以外の材料、例えばジルコニウム合金やその他の材料を採用しても良い。冷却管10は、炉心冷却材34を循環させる流入管30と流出管31のいずれか一方より分岐して燃料要素3内に下から進入している。流入管30より分岐した冷却管(以下、流入側冷却管という)10と流出管31より分岐した冷却管(以下、流出側冷却管という)10とが1本ずつペアとなり、ペア毎に上端を連通させている。つまり、流入側冷却管10と流出側冷却管10とでU字管を構成している。各冷却管10の下端、具体的には流入側冷却管10の下端(上流端)と流出側冷却管10の下端(下流端)は反射体29を貫通している。冷却管10は反射体29に対して十分に接触しており、熱伝達が行われる。このように、金属燃料2と、金属燃料2を収容し、水又は水/水蒸気2相流33中に設置された燃料要素容器9と、燃料要素容器9内を循環し、水蒸気又は水蒸気/水2相流34が流れる冷却管10とを備える高速炉用燃料要素3が構成される。
【0055】
金属燃料2は、例えばU−Zr等の金属燃料である。ただし、U−Zrに限るものではなく、その他のウラン合金、プルトニウム合金等でも良く、金属ウラン、金属プルトニウム等でも良い。金属燃料2は、例えば粒子形状を成しており、燃料要素容器9内に充填されている。燃料要素容器9内には金属燃料2が例えば充填率(スミヤー密度)50〜80%程度で充填されており、金属燃料2の隙間には例えばHe等の不活性ガスが充填されている。また、金属燃料2の上方空間は、例えばHe等の不活性ガス溜11となっている。粒子状の金属燃料2を充填しているので、燃料要素容器9内で金属燃料2が動くことができ、運転時の体積膨張を逃がすことができる。また、金属燃料2の核分裂によって発生したクリプトンやキセノン等のガスは不活性ガス溜11に溜められる。金属燃料2で発生した熱は接触によって燃料要素容器9や冷却管10に直接伝達されるが、隙間に充填された不活性ガスによっても伝達される。
【0056】
燃料要素3は、例えば1.6mmの間隔(ただし燃料要素3の間隔。ピッチ間隔では100mm)をあけて並べられている。また、燃料要素3の大きさは、横断面のサイズが例えば0.1m×0.1m、高さが例えば2mである。1つの燃料要素3には、例えば64本(図10では24本のみ図示)の冷却管10が設けられている。冷却管10の内径は、例えば4mmである。冷却管10は、例えば13mmの間隔をあけて並べられている。ただし、これらの数値は一例であり、これらの数値に限るものではない。必要な冷却能力や出力等に応じて適宜設計する。
【0057】
なお、実際には、例えば図8に示すように、炉心27の中央27aに上述の金属燃料2を充填した燃料要素3を配置し、その周囲27bにブランケット燃料を充填した燃料要素3を配置し、高速中性子の漏れ防止とプルトニウムの増殖が図られている。金属燃料2は、例えば濃縮ウランとして10%のものを使用したU−10%Zr合金(Zrが10%、Uが90%)、ブランケット燃料は、例えば0.2%の劣化ウランを使用したU−10%Zr合金である。
【0058】
プール6内はプール蓋20によって密閉されている。プール6内の水33の水面33aの上には、例えばHe、窒素、アルゴン等の不活性ガスが充填された不活性ガス溜13となっている。水33の温度変化に伴う体積変動を、不活性ガス溜13の体積を変化させることで吸収することができる。
【0059】
プール6には、運転停止時にたとえ炉心冷却材34による冷却が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水33が蓄えられている。プール6内の水33の温度は、例えば常温である。なお、プール蓋20は放射性物質を閉じ込める機能も有している。
【0060】
なお、プール6内の水33を冷却するプール冷却系を設け、高速炉1の通常運転時における水33の温度上昇や、運転停止時の水33の温度上昇を防止するようにしても良い。また、プール冷却系に代えて、二次冷却系との間で熱交換を行う熱交換器を設けても良い。
【0061】
プール蓋20の上面には、制御棒や安全棒を駆動する駆動機構18が設置されている。なお、図9では制御棒と安全棒をまとめて棒19で示しているが、実際には複数の制御棒と複数の安全棒が設置されており、駆動機構18によって位置制御される。制御棒や安全棒は、例えば冷却管10と並べらて設置された管32内に挿入される。即ち、制御棒や安全棒は燃料要素3内に挿入される。ただし、各燃料要素3間の隙間7に制御棒や案内棒を挿入するようにしても良い。
【0062】
高速炉1の燃料要素3を再処理する場合には、例えば次のようにする。つまり、燃料要素3を高速炉1から取り出した後、図示しないプール内で一定期間冷却する。その後、燃料要素3をプールから取り出し、燃料要素容器9の蓋を外して使用済原子燃料36を坩堝内に移し、上述の方法で金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離する。ただし、使用済原子燃料36を燃料要素3のままの状態で分離するようにしても良い。また、この場合には、冷却管10や反射体29を取り外しても良いが、取り外さなくても良い。
【0063】
また、図9の高速炉1では、燃料要素3をプール6内に設置していたが、水又は水/水蒸気2相流33中、即ち外側冷却材33中であれば必ずしもプール6内に設置しなくても良い。例えば図11に示すように、原子炉容器25内に燃料要素3を設置すると共に、原子炉容器25内に水又は水/水蒸気2相流33を貯めるようにしても良い。なお、図11の高速炉1では図9の高速炉1と同一の部材については同一の符号を付してあり、それらの説明を省略する。
【0064】
図12に燃料要素3の横断面を、図13に燃料ユニット35の断面をそれぞれ示す。この例では、金属燃料2として、一旦溶融させたものを型に流し込んで冷却し固化させた燃料ユニット35を使用している。1つの燃料要素容器9内には、例えば64個(8列×8列)の燃料ユニット35が並べられている。各燃料ユニット35には予め冷却管10又は制御棒や安全棒を挿入する管32を設置した後に、溶融金属燃料を流し込んでいる。
【0065】
原子炉容器25内には、運転停止時にたとえ外部からの冷却材の供給が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水又は水/水蒸気2相流33が蓄えられている。原子炉容器25内には円筒状のシュラウド8が設けられており、このシュラウド8内に燃料要素3は設置されている。本実施形態では、燃料要素3の冷却管10は燃料要素容器9を上下に貫通している。図示しない制御棒や安全棒は、例えば炉心の下から挿入される。ただし、炉心の上から挿入する構成としても良い。
【0066】
外側冷却材である水又は水/水蒸気2相流33は流入管30から原子炉容器25内に供給され、原子炉容器25内の底部から燃料要素3の冷却管10内に流入し、炉心27の熱で水蒸気又は水蒸気/水2相流34(内側冷却材)となって上昇する。また、原子炉容器25の底部の水又は水/水蒸気2相流33の一部はそのまま外側冷却材として燃料要素3の間の隙間7に流入し、ここで加熱されて上昇する。そして、水面33aの上に到達した水蒸気は流出管31から流出し、例えば発電等に使用される。また、燃料要素3の内側又は外側を通り抜けた流れの液相部分はシュラウド8を越えて外側冷却材となり、シュラウド8の外側を下降する。このようにして炉心冷却材の流れが形成され、炉心27が冷却される。
【0067】
図11の高速炉1でも、図9の高速炉1と同様に、炉心27の冷却を主に行う内側冷却材34は水蒸気又は水蒸気/水2相流であり、また、炉心27における核分裂連鎖反応を考慮して外側冷却材が流れる隙間7の広さを決定しているので、炉心27において高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。
【0068】
この高速炉1でも燃料要素3を再処理する場合には、例えば次のようにする。つまり、燃料要素3を高速炉1から取り出した後、図示しないプール内で一定期間冷却する。その後、燃料要素3をプールから取り出し、燃料要素容器9の蓋を外して使用済原子燃料36を坩堝内に移し、上述の方法で金属燃料36aと核分裂生成物36bとを分離する。ただし、使用済原子燃料36を燃料要素3のままの状態で分離するようにしても良い。また、この場合には、冷却管10を取り外しても良いが、取り外さなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の使用済原子燃料の再処理方法を示し、溶融部分を移動させている状態を説明するための概念図である。
【図2】図1に続く状態を示し、金属燃料と核分裂生成物を分離した状態を説明するための概念図である。
【図3】図2に続く状態を示し、核分裂生成物を除去する様子を説明するための概念図である。
【図4】図3に続く状態を示し、金属燃料を補充する様子を説明するための概念図である。
【図5】図4に続く状態を示し、燃料要素を再生した様子を説明するための概念図である。
【図6】本発明が適用できる燃料要素を備える高速炉の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】図6の高速炉の燃料要素の断面図である。
【図8】図6の高速炉の炉心の概念図である。
【図9】本発明が適用できる燃料要素を備える高速炉の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図10】図9の高速炉の燃料要素の断面図である。
【図11】本発明が適用できる燃料要素を備える高速炉の第3の実施形態を示す概略構成図である。
【図12】図11の高速炉の燃料要素の断面図である。
【図13】図12の燃料要素を構成する燃料ユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0070】
9 被覆材
36 使用済原子燃料
36a 原子燃料物質(原子燃料)
36b 核分裂生成物
37 使用済原子燃料の溶融部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済原子燃料を部分的に溶融し、その溶融部分を移動させて原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することを特徴とする使用済原子燃料の再処理方法。
【請求項2】
前記使用済原子燃料を被覆材に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させることを特徴とする請求項1記載の使用済原子燃料の再処理方法。
【請求項1】
使用済原子燃料を部分的に溶融し、その溶融部分を移動させて原子燃料物質と核分裂生成物とを分離することを特徴とする使用済原子燃料の再処理方法。
【請求項2】
前記使用済原子燃料を被覆材に入れたままの状態で外から加熱して部分的に溶融させることを特徴とする請求項1記載の使用済原子燃料の再処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【公開番号】特開2006−322816(P2006−322816A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146518(P2005−146518)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
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