説明

使用済排出海水の泡採取装置

【課題】放水路に放出される排出海水に同伴される泡を簡易に採取して短時間で分析用の試料とすることができる使用済排出海水の泡採取装置を提供する。
【解決手段】使用済の排出海水11の放水路12の前記排出海水11に浮遊している泡22を採取する採取口を有する泡採取チューブ14と、前記泡採取チューブ14に介装され、泡22を吸い上げるチューブポンプ15と、前記チューブポンプ15により採取された泡22を移動させるメッシュベルト16と、メッシュベルト16の端部に当接され表面の泡22を押圧するヘラ17と、該ヘラ17で消泡された泡由来の液体(泡成分)18を回収する泡成分回収容器19と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所や原子力発電所等の発電プラントや化学プラント等の冷却水として、あるいは排ガスの洗浄用水として、海水を使用した後に再び海へ排出する使用済排出海水に同伴される泡を監視する使用済排出海水の泡採取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、火力発電所などの種々の発電プラントでは、海水は復水器等の冷却水や、海水脱硫設備の排ガス処理用の水や熱交換器等の熱交換用の水として多量に使用されている。復水器で使用された後の使用済の排出海水、海水脱硫設備で用いた使用済の排出海水、熱交換器等から排出される排出海水は、温排水として放水路に排出され、海域や河川域に排出されている。
【0003】
放水路には、一般に海の潮位の変動に対応するため堰を設置しているが、この堰を越えて排水が下流側に流れ落ちて空気を巻き込むことで、放水路の水面上には多量の泡が発生する。また、放水路には、排水が空気を巻き込むことで生じる泡の他に、界面活性剤などの化学薬品、微生物や生物死骸など汚染物などの様々な原因により生じている泡も含まれている場合がある。
【0004】
空気を巻き込むことで生じる泡のほとんどは放水路の途中で消泡するが、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、化学薬品や汚染物等による界面活性作用により容易に破泡しないため、使用済海水や排出海水の表面に浮遊している場合が多く、放水路の排出口から海に排出される場合がある。
【0005】
従来より、例えば、冷却水として用いる海水中に消泡剤等の薬剤を添加し、海水を冷却水として用いる際に泡が発生するのを抑制する発泡抑制方法などが用いられていた(例えば、特許文献1参照)。これにより、放水路の水面上に泡が発生するのを抑制し、放水路に流れる使用済海水や排出海水に泡が同伴して海域や河川域に流れ出さないようにしていた。
【0006】
また、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、空気を巻き込むことで生じる泡に比べ外観も悪く、排水基準に泡の規制がないが、これらに起因して生じた泡が同伴された排出海水は、外観的に汚濁排水と認識されやすい。そのため、排水が放水される周辺の海域や河川域で行われている漁業や農業の安全性を確保する観点から、泡の安全性の確認や証明を行う場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/041400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、泡の安全性の確認や証明を行う際に、放水路から使用済海水や排出海水に浮遊している泡を回収し、分析等を行うためには、泡を液体にした状態で少なくとも数リットル確保する必要がある。また、放水路から使用済海水や排出海水に浮遊している泡を回収する際、放水路でバケツ等を用いて泡を袋や容器等に回収し、回収した泡を手で潰すなどして液体にしてから分析用の容器等に集める必要があった。
【0009】
しかしながら、泡は多くの気泡を含んでいることから、分析用の試料として、泡を液体にした状態で数リットルを確保しようとすると、泡を採取し、分析用の試料を確保するためだけでも少なくとも1日以上要していた、という問題がある。
【0010】
このように、放水路から使用済海水や排出海水に浮遊している泡を回収し、分析等を行うには、人手により行われる作業が多く労力を要することが多いことから、放水路の水面上に浮遊している泡を簡易に採取して短時間で分析用の試料とすることができる泡の泡検知装置が切望されている。
【0011】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、放水路に放出される排出海水に同伴される泡を簡易に採取して短時間で分析用の試料とすることができる使用済排出海水の泡採取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、使用済の排出海水の放水路の前記排出海水に浮遊している泡を採取する採取口を有する泡泡採取チューブと、前記泡採取チューブに介装され、泡を吸い上げるチューブポンプと、前記チューブポンプにより採取された泡を移動させるメッシュベルトと、該メッシュベルトの端部に当接され表面の泡を押圧するヘラと、該ヘラで消泡された泡由来の液体を回収する泡成分回収容器と、を具備することを特徴とする使用済排出海水の泡採取装置にある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記メッシュベルトが、ゴム層と、該ゴム層に積層されるメッシュ層とからなることを特徴とする使用済排出海水の泡採取装置にある。
【0014】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記メッシュベルトに加温手段を有することを特徴とする使用済排出海水の泡採取装置にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の使用済排出海水の泡採取装置によれば、放水路に放出される排出海水に同伴される泡を簡易に採取して短時間で分析用の試料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る使用済排出海水の泡採取装置の構成の概略図である。
【図2】図2は、図1のA−A断面図である。
【図3】図3は、図1のB−B方向から見た図である。
【図4】図4は、本発明の実施例1に係る他の使用済排出海水の泡採取装置を図1のB−B方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0018】
本発明による実施例に係る使用済排出海水の泡採取装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る使用済排出海水の泡採取装置の構成の概略図である。図2は、図1のA−A断面図であり、図3は、図1のB−B方向から見た図である。図1〜図3に示すように、本実施例に係る使用済排出海水の泡採取装置10Aは、使用済の排出海水11の放水路12の前記排出海水11に浮遊している泡22を採取する採取口13を有する泡採取チューブ14と、前記泡採取チューブ14に介装され、泡22を吸い上げるチューブポンプ15と、前記チューブポンプ15により採取された泡22を移動させるメッシュベルト16と、メッシュベルト16の端部に当接され表面の泡22を押圧するヘラ17と、該ヘラ17で消泡された泡由来の液体(泡成分)18を回収する泡成分回収容器19と、を具備するものである。図中、符号20a、20bはメッシュベルトの駆動輪である。
【0019】
排出海水11は、例えば、海30から取水した海水を例えば火力発電所、原子力発電所等の発電プラントの復水器の冷却水として用い、復水器で熱交換されて温められた温排水であり、復水器などの放水管31から海に向けて排出される使用済の海水である。
【0020】
放水路12には堰32が設けられ、放水路12の水面の高さは、例えば復水器の方が海域側よりも高くなるように形成され、海の潮位の変動を受けないようにしている。
【0021】
放水路12には、排出海水11が海30に向けて排出されるまでの間に、排出海水11には泡22が多量に発生し、泡22を同伴した排出海水11が海30に向けて流れている。泡22は、排出海水11が堰32を越えて下流側に流れ落ちた際に排出海水11が空気を巻き込むことで生じる泡や、界面活性剤などの化学薬品、微生物や生物死骸などの汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子などの様々な原因により生じている泡などがある。空気を巻き込むことで生じる泡のほとんどは放水路12の途中で消泡するが、汚染物等に起因して生じた泡は、水と水以外の物質(化学薬品や汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子)が攪拌されたときに曝気され,いったん沈んだ泡が浮上する際に加圧浮上することによって気泡の周囲に吸着することから界面活性剤としての機能を果たし、気泡が割れにくくなっている。また、こうした泡23に対しては、物理的な力を加えた場合でも、破泡、消泡せず、余計な泡を生じることが多い。すなわち、小さな泡が放水路12の下部から上昇する過程で排出海水11中や放水路12の底部に堆積した汚泥などの汚濁成分が泡に巻き込まれることで、化学薬品や汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子などを多く取り込み、泡の中に更に小さい泡が多数存在した状態の泡を形成することが考えられる。これにより、泡23の皮膜が厚く、強固となる結果、気泡が割れにくくなり、破泡、消泡し難くなっている。そのため、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、放水路12の排出口まで排出海水11の表面に着色した状態で浮遊している場合が多い。
【0022】
放水路12の下流側の放水路12と海域との境近傍には、泡22を同伴した排出海水11の表面近傍の流れを遮る浮体(フロート)23が放水路12の排出海水11の流れ方向と略直交する向きに複数係留して設けられている。フロート23を排出海水11に浮遊させることで排出海水11の表面近傍の流れを遮るため、排出海水11の海水表層に浮遊泡22が排出海水11に同伴して海に拡散するのを抑制している。また、フロート23同士は、例えば、紐等により各々連結されており、フロート23の数は、放水路12の幅大きさ等により調整される。また、発生する泡22に応じて、フロート23の高さや水没量を適宜調整するようにしてもよい。
【0023】
先端の採取口13を有する泡採取チューブ14は、放水路12の排出海水11に浮遊している泡22を採取し、放水路12の外部に送給する管であり、チューブポンプ15により吸い上げ、チューブポンプ15の出口側に設置したメッシュベルト16の上に落下させるようにしている。
【0024】
ここで、メッシュベルト16は、下層がゴム層16Bであると共に、該ゴム層16Bの上に積層されるメッシュ層16Aとから構成されている。
メッシュ層16Aのメッシュは、100メッシュ程度とするのが好ましい。これは余り細かいものとすると、泡22に同伴する固形分(SS分)が、詰まり、好ましくないからである。
【0025】
メッシュ層16Aとゴム層16Bとからなるメッシュベルト16に泡をチューブポンプ15により落下させ、メッシュベルト16の上を移動させて、メッシュベルト16の一端部(図中右端部)に当接した例えばゴム又はシリコン製のヘラ17により押圧させることで、泡22をつぶし、液体(泡成分)18を得るようにしている。
【0026】
メッシュ層16Aを構成する繊維は、親水性繊維を用いるのが好ましい。
親水性繊維としては、例えばポロオレフィン、ポリエステル等の材質を例示することができる。親水性繊維は表面張力を低下させる作用があるので、泡の表面張力をかき消すこととなり、ベルト上を移動する際においても、破泡を促進させる。
【0027】
この際、メッシュベルト16に対して、消泡作用がある例えばアルコール等を噴霧又は散布するようにしてもよい。このアルコールが散布された結果、破泡がさらに促進される。
なお、繊維の膨潤作用があるイソプロピルアルコール(IPA)を用いる場合は、水で希釈させることにより、その膨潤作用を消失させるようにすればよい。
【0028】
図4は、本発明の実施例1に係る他の使用済排出海水の泡採取装置を図1のB−B方向から見た図である。
図4に示す他の使用済排出海水の泡採取装置10Bのように、前記メッシュベルト16に加温手段であるヒータ21を設けるようにしてもよい。
このヒータ21の加熱温度としては、80℃程度に加温し、破泡を促進させるようにしている。
【0029】
ここで、泡22を採取するには、先ず、放水路12を流れる排出海水11に浮遊泡22の分析をする場合、チューブポンプ15の駆動により、排出海水11に浮遊している泡22は排出海水11から吸い上げるようにしている。
なお、採取口13は手動で動かすようにしている。
【0030】
泡22を採取するチューブポンプ15は、弾力性のあるチューブ(ホース)をポンプを構成するローラーにて順次押圧し、吸引吐出させる液体送液ポンプをいう。
「ペリスタリックポンプ」又は「ローラーポンプ」とも称される。このポンプは、チューブの上をローラーが通過することで、チューブをしごき、その復元力を利用して流体を吸い込み、押し出す。この動作を繰り返し行うことで定量性を保ち、安定した搬送を行うようにしている。
【0031】
排出海水11に浮遊している泡22を採取する場合には、ポンプ流速を例えば1〜1,000mL/H程度とするのが好ましい。これは、ポンプ流速が早いと、チューブしごき部分で乱流が起きるため、再度発泡する不具合が発生するおそれがあるからである。
【0032】
また、チューブの材質は、例えばシリコンやタイロン等の材料を用いることができるが、限定されるものではない。
【0033】
また、泡22の採取量を多くする場合には、複数の泡採取チューブ14及びそれに介装されるチューブポンプ15を設けて、時間当たりの泡の採取量を増加するようにしてもよい。
【0034】
よって、本実施例に係る使用済排出海水の泡採取装置10A、10Bを放水路12に設け、泡22をチューブポンプ15を用いて、メッシュベルト16へ供給すると共に、メッシュベルト16上を移動させる際に、破泡させると共に、ヘラ17を用いてつぶして消泡することで、泡成分の液体を効率的に回収することができる。
このため、泡22を短時間で容易に液化し、分析用にして回収することができる。
【0035】
この採取した液体の泡成分は、別途公知の分析手段により分析される。
この泡の分析は、発泡原因となりうる有機物や生物等の調査、例えば泡の内容物や構成する物質の把握を行う場合には、例えば試料外観観察、顕微鏡観察、TOC(全有機炭素)分析、CHN分析、SS分測定、示差熱分析、重金属分析、写真判定分析等により行うことができる。
【0036】
また、泡22の採取、液化作業は簡易なチューブポンプ15のみの駆動で行うことができ、電気を余り消費することなく行うことができる。
【0037】
本実施例においては、排出海水11に浮遊している泡22を採取する回数は、1回としているが、これに限定されるものではなく、必要な採取量に応じて、排出海水11に浮遊している泡22を採取する回数は、複数回としてもよい。
【0038】
本実施例においては、フロート23でせき止められている泡22を採取するようにしているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、放水路12に設けられている堰32に滞留する泡22を採取するようにしてもよい。
【0039】
本実施例においては、排出海水11として、火力発電所、原子力発電所等の発電プラントの復水器等から排出される使用済海水に同伴される泡を監視し、処理する場合について説明したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、海水脱硫設備で用いた使用済の排出海水、熱交換器等から排出される排水、河川に排出される排水等についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10A、10B 使用済排出海水の泡採取装置
11 排出海水
12 放水路
13 採取口
14 泡採取チューブ
15 チューブポンプ
16 メッシュベルト
17 ヘラ
18 液体(泡成分)
19 泡成分回収容器
30 海

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済の排出海水の放水路の前記排出海水に浮遊している泡を採取する採取口を有する泡採取チューブと、
前記泡採取チューブに介装され、泡を吸い上げるチューブポンプと、
前記チューブポンプにより採取された泡を移動させるメッシュベルトと、
該メッシュベルトの端部に当接され表面の泡を押圧するヘラと、
該ヘラで消泡された泡由来の液体を回収する泡成分回収容器と、
を具備することを特徴とする使用済排出海水の泡採取装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記メッシュベルトが、ゴム層と、該ゴム層に積層されるメッシュ層とからなることを特徴とする使用済排出海水の泡採取装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記メッシュベルトに加温手段を有することを特徴とする使用済排出海水の泡採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36784(P2013−36784A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171242(P2011−171242)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】