説明

供給源から酸素および/または水素を発生させるためのフィルター材料

【課題】本発明は、患者による呼吸に必要な適切な酸素レベルを維持できる実際に携帯可能な酸素発生システムに使用され得るフィルター材料を提供する。
【解決手段】本発明のフィルター材料は、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜と直接接触するジルテニウム/ジルテニウム分子を含む多孔性のホウ素でドープされた炭素膜、ナノカーボンチューブと直接接触する少なくとも1つのゼオライト結晶体を有する合成膜、または連続した交互配置においてその両方を有する供給源から酸素および/または水素ガスを生成するためのフィルター材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2007年9月7日に出願された米国仮出願第60/967,756号に対する優先権を主張し、それは本明細書に参照として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、水および/または呼気の二分子の酸素および/または水素ガスへの酸化のためのフィルター材料に関する。具体的には、ホウ素でドープされた炭素膜に結合された少なくとも1つのジルテニウム/ジルテニウム錯体およびゼオライト結晶を含む合成膜を含むフィルター材料に関する。本発明のフィルター材料は、ジルテニウム/ジルテニウム錯体の使用に起因する高分離効率だけでなく、ジルテニウム/ジルテニウム錯体の触媒特性と、埋め込まれたナノカーボンチューブを用いるゼオライトの吸着高分離効率とを合わせることによるさらなる分離効率もまた提供する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、酸素発生は、水の電気分解、光分解および化学変換により成されている。今日、当業者が使用するのは、特許文献1(本明細書に参照として援用される)に記載される圧力スイング吸着サイクル(「PSA」)である。PSAシステムにおいて、酸素は、供給エアストリームから窒素の選択吸着により生成される。PSAは、少なくとも1つ、しばしば2つの吸着床を有し、これは、低圧で酸素ガスを引き付け、高圧で吸収酸素を放出するように設計されている。PSAプロセスは、特定のガスが、他のガスより多かれ少なかれ異なる強さで固体表面に引き付けられる傾向があるため、混合物中のガスを分離するために使用され得る。
【0004】
PSAプロセスの原理の一部を使用する別の酸素発生プロセスは、真空スイング吸着(VSA)と呼ばれている。「VSA」プロセスにおいて、ガスは圧力を用いて分離されるが、PSAプロセスとは異なり、より低い絶対圧力で行われる。これらの方法は効果があるが、それらは、複数の加圧容器およびバルブシステムを必要とし、携帯性を与えることは不可能とは言えないまでも困難である。つまり、これらのシステムは、自動的に行われるか、またはPLCにより制御される注意深く計算された計時サイクルのいずれかによるバルブ操作を必要とする。従って、これらのシステムは極めて大きく、それ故、患者が直接、携帯用システムとして酸素発生システムを装着することができない。
【0005】
数年にわたって、本明細書に参照として援用される特許文献2などにおいてPSAおよびVSAシステムに対する改良がなされてきた。以前のPSAおよびVSAシステムは、酸素純度の高い生成物を生成するために、交差している弁の調節およびゼオライト吸着物質を使用しているが、これらのシステムはいずれも一貫性がなく、単純でもない。一定した酸素生成物を維持するために、特許文献2は、パージされている容器または床(bed)から「廃ガス」と呼ばれる吸着部分を吸引するために真空ポンプを使用している。しかしながら、以前のPSAおよびVSAシステムに対するこれらの開発は、数サイクルによる生成物としての酸素ガスが使用者または患者を通して行き来するように、付加される相制御、例えば、ガス流入、真空化再加圧およびダンピングを含む、より複雑な電気機械設計付加を必要とし、そうすることでより高い収率を与えた。これは、窒素負荷対酸素の比に関する問題も補わないし、ゼオライト表面で増加する帯電に関する問題も補わず、酸素の移動を妨げ、防ぎ、妨害する。
【0006】
酸素濾過における次の開発は1980年に起こり、本明細書に参照として援用される特許文献3に記載されている。この特許において、吸着濾過材料の容器または床は、両方とも周期的に吸着期間を受けて、前記容器または床は圧縮機からガスを受け、次いで、真空ポンプを用いて床から再吸収される。見られ得るように、この改良は、さらに多くの装置を付加し、携帯用システムとしてさらに使用できそうにない。
【0007】
従って、必要とされるものは、増加する帯電、窒素負荷対酸素吸着の比の妨害がなく使用されることができ、費用を減少させ、携帯用呼吸装置において使用される十分な量の酸素を発生できる大きな加圧チャンバ/バルブおよび他の大きな装置を排除するフィルターである。それは、加圧および圧抜きチャンバ、ならびに開け閉め用の複雑なバルブシステムのない、患者が呼吸を維持するのに必要な割合および濃度で酸素を生成できるフィルター材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2,944,627号明細書
【特許文献2】米国特許第3,313,091号明細書
【特許文献3】米国特許第4,222,750号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は従来技術の欠点を克服し、患者による呼吸に必要な適切な酸素レベルを維持できる実際に携帯可能な酸素発生システムに使用され得るフィルター材料を提供する。本発明は以下の段落に考察される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、操作するための加圧チャンバを必要としないフィルター材料に関する。具体的には、本発明は、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜と直接接触するジルテニウム/ジルテニウム分子および少なくとも1種類の陰イオンを含む多孔性のホウ素でドープされた炭素膜を含み、それにより、前記フィルター材料を通過する場合に供給源から酸素および/または水素ガスが生成される、水および/または呼気から酸素および/または水素ガスを取り出すためのフィルター材料に関する。
【0011】
本発明の一実施形態において、ホウ素でドープされた炭素膜のジルテニウム/ジルテニウム分子の各々のうちの1つのジルテニウム分子は、以下の式[Ru(CO)(u−n2−CR)を有し、式中、uは、[Ru(EDTA)2−、(CO)、F、Co−2、NO(カチオン性)、水素結合芳香族/カルボン酸−(二重結合酸素またはその中の部位における重合としての複数の結合あるいは単一の結合のいずれかに関する)、エチレンジアミン、アニオン性配位子としてハロゲン化物、カルボン酸、不飽和炭化水素、直線状または曲線状のいずれかの金属中心に配位する硝酸、ブタジエン、カルボキシレート配位子、アニオン性(RO−およびRCO−2(ここでRはHまたはアルキル基である)または中性配位子(R、RS、CO、CN)、CHCN(アセトニトリル)、NH(アンモニアアミン)F、Cl、トリス(ピラゾリル)ホウ酸塩、スコルピオナート配位子(3つのピラゾールに結合されたホウ素);化合物の「挟み(pincer)」とは、金属に結合できる2つのピラゾール基(C)由来の窒素へテロ原子を指す)およびそれらの混合物、好ましくは[Ru(EDTA)2−からなる群より選択される架橋配位子であり;
式中、nは、少なくとも2であり、かつ分子の配位座数(denticity)に依存し(つまり、同じ中心原子に結合される所定の配位子からの供与基の数);
式中、Lは、[Ru(PhPCHCHPPh)(EDTA)]2+、C、RC=CR(ここでRはHまたはアルキルである)、1,1−ビスジフェニルホスフィノメタン、ジエチレントリアミン[ジエン]結合、好ましくは三座、トリアザシクロノナン[ジエン]結合、好ましくは三座、トリフェニルホスフィンおよびそれらの混合物からなる群より選択される配位子であり;
式中、CRは、カルボン酸、カルボキシレート配位子、アニオン性(ROおよびRCO(ここでRはアルキル基である))または中性配位子(R、RS、CO、CN(ここでRはアルキル基である))およびそれらの混合物であり;ならびにxは1〜約30の間、好ましくは1〜約20、より好ましくは1〜約10である。
【0012】
ホウ素でドープされた炭素膜のジルテニウム/ジルテニウム分子の各々のうちの他のジルテニウム分子は、以下の式[WZnRuIII(OH)(HO)(ZnW34−14を有する電気化学的触媒としてのジルテニウム置換ポリオキソメタレートに結合される。これらの特性に加えて、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜は、埋め込まれたナノカーボンチューブのメッシュ状の網をさらに含んでもよい。
【0013】
ルテニウムイオンは患者に有害な作用を与え得るので、そのイオンはフィルターから除去されなければならず、本発明のフィルター材料は、ルテニウムイオンを捕捉するシデロフォアをさらに含んでもよい。そのシデロフォアは、ジルテニウム/ジルテニウム分子が結合される多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の反対側の面に結合されてもよい。そのシデロフォアは、プレートの形態または軽金属合金、アルミニウム銅酸化物から製造される中空の管としての構造であってもよく、例えば、その中空の管はポリスルフェート樹脂、EDTAまたはそれらの混合物で含浸される。その中空の管は、遊離したイオン的に帯電しているイオンを捕捉するのを支援するように全体にわたって分散された複数の孔を有してもよい。特に、そのシデロフォアは、ルテニウムイオンが患者に流れる前に多孔性のホウ素でドープされた炭素膜から除去され得る任意の遊離ルテニウムイオンを捕捉するように荷電されてもよい。
【0014】
フィルター材料はまた、ナノカーボンチューブと直接接触する膜およびゼオライト結晶体に結合されたカーボンナノチューブを有する薄い合成膜を含んでもよい。ゼオライトは典型的に、微孔構造を有する水和されたアルミノケイ酸塩鉱物である。従って、本発明の合成ゼオライトの合成膜は、ゼオライトの孔に入り得る分子またはイオン種の最大サイズが、通常、開口部の環の大きさによって規定される篩中の穴の直径によって制御される分子篩として動作する。例えば、8員環構造を有するゼオライト複合体は、8つの四面体配位のケイ素(またはアルミニウム)原子および8つの酸素原子から構築された閉ループであり、それ自体、複数の孔を含む。つまり、ゼオライト合成膜の内部細孔容積への特定のイオンの流入を制御するそのゼオライト合成膜の開口部のサイズは、環内のT原子(T=SiまたはAl)および酸素の数によって決定される。その開口部は、超大型(12員環より大きい)、大型(12)、中型(10)または小型(8)と分類される。開口部のサイズは、ゼオライトAなどの8員環構造について約0.4nm、ZSM−5などの10員環構造について約0.54nm、ならびにゼオライトXおよびZSM−12などの12員環構造について約7.4nmの範囲であり、それらの全ては本発明において使用されてもよい。
【0015】
合成膜自体は約0.1〜約3.0nmの直径を有する複数の孔を含み、酸素ふるい効果(O=2.96ÅおよびN=3.16Å)を与える。ナノカーボンチューブに結合されたゼオライト結晶体は、孔の少なくとも一部と重なる。結合されたカーボンナノチューブおよびそのナノカーボンチューブと直接接触するゼオライト結晶体を有する薄い合成膜とともにジルテニウム/ジルテニウム分子を含む多孔性のホウ素でドープされた炭素膜は、供給源から酸素および/または水素ガスを取り出すために使用され得るフィルターを構成するために使用され得る繰り返しユニットを形成する。
【0016】
本発明のさらなる実施形態および詳細は、図面および以下の詳細な説明に与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明のフィルター材料のジルテニウム/ジルテニウム分子を含む、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の前面の斜視図を示す。
【図2】図2は、本発明のフィルター材料のジルテニウム/ジルテニウム分子およびシデロフォアプレートを含む、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の裏面の斜視図を示す。
【図3】図3は、本発明のフィルター材料のゼオライト結晶体を含む、合成膜の表面の断面図を示す。
【図4】図4は、本発明のフィルター材料の複数の交互スクリーンの断面図を示す。
【図5】図5は、フィルターカートリッジにおける本発明のフィルター材料の複数の交互スクリーンの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、交互方向において2つの異なる触媒スクリーンを含む高酸素発生フィルター材料に関する。ジルテニウム/ジルテニウムスクリーンは、酸素を発生する電気触媒として機能し、一方で、ゼオライトは吸着スクリーンとして機能する。一緒に埋め込まれたナノカーボンチューブのメッシュ状の網を有する両方の種類のスクリーンは、従来技術よりより高い流速において、かつより高い酸素生成の達成を可能にする。従来のPSAおよびVSAシステムにおいて、呼吸促迫患者および/または5LPMより高い流速は、装置からでる酸素濃度の減少を示し、典型的に、6.5LPMより高い従来のシステムなどからでる1リットルの流れは、発生する酸素濃度の4〜8%の減少が測定されることを示すが、本発明は、酸素濃度効果をほとんど減少せず(1〜2%未満である)、8〜12LPMの1リットルの流れを達成する。
【0019】
交互方向は特に、酸素生成フィルターの分解を引き起こす酸素生成の間のラジカル中間体の増加、およびフィルター材料上の過剰な水の増加の両方を防ぐように設計される。同様に、帯電の使用を組み込む設計は、従来技術には有さない、特に携帯性を達成できない、吸着されない表面フィルター構成要素の除去および通気を高める。
【0020】
交互フィルター材料の第1のスクリーンは、炭素膜に直接結合されたジルテニウム/ジルテニウム分子および少なくとも1種類の陰イオンを含む、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜である。第1のスクリーンの後方に配置される第2のスクリーンは、合成膜に結合された同心円状に配置されたナノカーボンチューブと直接接触する少なくとも1つのゼオライト結晶体を含む合成膜を構成する。合成膜は、約0.1nm〜約3.0nmの直径を有する複数の孔を含む。ゼオライト結晶体は、ナノカーボンチューブに結合され、孔の少なくとも一部と重なる。この構造は、単一の繰り返し可能なユニットを構成し、所定の供給源からより多くの酸素生産量を生じさせるために連続して配置され得る。
【0021】
合成膜は、約0.1〜約3.0nmの直径を有する複数の孔を含む。ゼオライト結晶体は、ナノカーボンチューブに結合され、孔の少なくとも一部と重なる。この構造は、単一の繰り返し可能なユニットを構成し、水蒸気、呼気からの水蒸気または別の供給源から多くの酸素生産量を生じさせるために連続して配置され得る。
【0022】
第1のスクリーンに使用される特有のジルテニウム/ジルテニウム分子は、いくつかのルテニウム原子を含む。化学的に、「ルテニウム」は一般に、ウラル山脈ならびに北アメリカおよび南アメリカにおいて他の白金族金属とともに鉱石に見出される。少量だが、商業的に重要な量はまた、サドベリー、オンタリオ州から抽出される硫鉄ニッケル鉱、および南アフリカにおける輝岩堆積物にも見出される。市販のルテニウムは、複雑な化学プロセスを介して単離され、そこで水素が、粉末を生じる塩化アンモニウムルテニウムを減少させるために使用される。次いで、その粉末は粉末治金技術により固められる。歴史的に、ルテニウムは、天然のままの白金の溶解後に残った残渣からでると理解されていた。ルテニウムは遷移金属であり、ほとんどの遷移金属と同様に強力なルイス酸である。つまり、それらはルイス塩基として作用する多くの分子またはイオンから容易に電子を受容する。ルイス塩基がルイス酸とその電子対を示す場合、ルイス酸と配位するといわれ、配位共有結合を形成する。ルイス塩基が、ルイス酸として作用する金属と配位し、全体の構造単位を形成する場合、配位化合物が形成される。この種の化合物、または錯体において、ルイス塩基は配位子と呼ばれ、このような配位子は、カチオン性、アニオン性または電荷中性であってもよい。
【0023】
本発明のルテニウム錯体の別の部分は、ポリオキソメタレート、すなわち「POM」である。分類として、POMは、触媒として使用するために非常に機能的であり、酸化反応における試薬として酸素および/または過酸化水素の分子を活性化できる。しかしながら、触媒としてルテニウム含有分子を用いることに関する1つの主要な問題は、ルテニウム触媒の変性およびその結合カップルを除去/分解し得るイオンと接触するものに対するルテニウム有害作用の危険性である。本発明のフィルター材料の設計は、独自に設計したシデロフォアを用いることにより部分的にこれらの問題を克服する。
【0024】
本発明のフィルター材料の第1のスクリーンは、ホウ素でドープされた合成炭素薄膜およびルテニウム錯体の他に合成炭素薄膜の反対側に結合した帯電したプレートを含む。ホウ素でドープされた合成炭素薄膜および帯電したプレートの両方は、シデロフォアとして相乗的に機能する。シデロフォアは、遊離荷電イオンを引き付け、結合する化合物である。つまり、イオンがフィルター材料を通り、フィルターから出てヒトの空気の流れに入り続ける前に、錯体は遊離荷電イオンを捕捉する。本発明のシデロフォアは、ルテニウムイオンを含む正に荷電したイオンに特異的であるように負に帯電する。従って、本発明のジルテニウム/ジルテニウム錯体から除去され得る任意の正のルテニウムイオンを捕捉することは、酸素を発生させるための触媒としてルテニウムを用いることの欠点を克服し、従って、ルテニウム有害作用に対する安全策を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態は、供給源から酸素および/または水素ガスを取り出すためのフィルター材料を提供し、それは、ジルテニウム/ジルテニウム分子および炭素膜に直接結合されるか、または必要に応じて、中間体化合物および/または構造を介して、少なくとも1種類の陰イオンを有する多孔性のホウ素でドープされた炭素膜を含む。本発明のジルテニウム/ジルテニウム分子が、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜と直接接触されるか、または中間体化合物および/もしくは構造を介して結合されるか否かに関わらず、それらはイオン結合される。
【0026】
本発明の一実施形態において、本発明のジルテニウム/ジルテニウム分子の各々のうちの1つのジルテニウム分子は、以下の式(I)[Ru(CO)(u−n2−CR)を有し、式中、uは、[Ru(EDTA)2−、(CO)、F、Co−2、NO(カチオン性)、水素結合芳香族/カルボン酸−(二重結合酸素またはその中の部位における重合としての複数の結合あるいは単一の結合のいずれかに関する)、エチレンジアミン、アニオン性配位子としてハロゲン化物、カルボン酸、不飽和炭化水素、直線状または曲線状のいずれかの金属中心に配位する硝酸、ブタジエン、カルボキシレート配位子、アニオン性(RO−およびRCO−2(ここでRはHまたはアルキル基である))または中性配位子(R、RS、CO、CN)、CHCN(アセトニトリル)、NH(アンモニアアミン)F、Cl、トリス(ピラゾリル)ホウ酸塩、スコルピオナート配位子(3つのピラゾールに結合されたホウ素);化合物の「挟み(pincer)」とは、金属に結合できる2つのピラゾール基(C)由来の窒素へテロ原子を指す)およびそれらの混合物、好ましくは[Ru(EDTA)2−からなる群より選択される架橋配位子であり;
式中、nは、少なくとも2であり、かつ分子の配位座数(denticity)に依存し(つまり、同じ中心原子に結合される所定の配位子からの供与基の数);
式中、Lは、[Ru(PhPCHCHPPh)(EDTA)]2+、C、RC=CR(ここでRはHまたはアルキルである)、1,1−ビスジフェニルホスフィノメタン、ジエチレントリアミン[ジエン]結合、好ましくは三座、トリアザシクロノナン[ジエン]結合、好ましくは三座、トリフェニルホスフィンおよびそれらの混合物からなる群より選択される配位子であり;
式中、CRは、カルボン酸、カルボキシレート配位子、アニオン性(ROおよびRCO(ここでRはアルキル基である))または中性配位子(R、RS、CO、CN(ここでRはアルキル基である))およびそれらの混合物であり;ならびにxは約1〜約30、好ましくは1〜約20、より好ましくは1〜約10である。
【0027】
本発明のジルテニウム/ジルテニウム分子の各々のうちの他の分子は、WZnRuIII(OH)(HO)(ZnW34−14に置換される以下の式(II)Na14[RuZn(HO)(ZnW34]を有するジルテニウム置換ポリオキソメタレートである。ジルテニウム分子における各ルテニウム間の距離は、約2.0オングストローム〜約3.18オングストローム、好ましくは約2.25オングストローム〜約3.0、そしてより好ましくは約2.50オングストローム〜約2.80オングストロームである。例えば、米国特許第7,208,244号に開示される電気触媒POMとしてWZnRuIII(OH)(HO)(ZnW34−14に置換されるNa14[RuZn(HO)(ZnW34]の3.18ÅのRu−Ru距離は、生成され得る酸素の量を制限する。また、従来技術に使用されるPOM構造は、水分子による衝突の際にねじれおよび回転を受けるため、酸素生成の濃度は、緩やかな速度でさえ流れる水を含むシステムにおいて必然的に制限される。従って、ジルテニウムPOMまたはジルテニウム木挽き台分子のいずれも、呼吸できる酸素の生成に今まで使用されていない。
【0028】
本発明の1つの特定の実施形態において、Shannonらによる米国特許第7,208,244号(その全体は本明細書に参照として援用される)に記載されているジルテニウム置換ポリオキソメタレートは、本発明のフィルター材料の利点を提供するように、上記のホウ素でドープされた炭素薄膜と関連して使用され得る。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態において、フィルター材料は、ジルテニウム/ジルテニウム分子が結合される炭素膜の反対面に結合されるルテニウムイオンを捕捉するシデロフォアプレートをさらに含む。シデロフォアプレートは、前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜から除去される遊離ルテニウムイオンを捕捉するようにイオン的に帯電される。シデロフォアプレートは、負または正に帯電したイオン、特に樹脂粘土からなる群より選択されてもよく、ここでその粘土は複数の孔を有する中空のチューブ状のプレートに成形される。特に、シデロフォアは、ポリスルフォネートが含浸した樹脂、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)含有物、およびそれらの混合物であってもよい。本発明の1つの特定の実施形態において、シデロフォアプレートは、炭素のドープされた膜のナノチューブの一端に結合され、そのシデロフォアプレートの少なくとも一部は、薄膜に直接結合され、および/または薄膜に埋め込まれる。この設計は、シデロフォアプレートが遊離ルテニウムイオンを捕捉でき、かつイオン結合できることを可能にする。
【0030】
上記のように、このことは、ルテニウム原子を有するフィルター材料が呼吸のための酸素を生成するために使用される場合、必須である。フィルター材料によって生成される酸素が呼吸のために使用されないが、代わりに工業用プロセスに使用される一実施形態においては、シデロフォアプレートはそれほど重要ではない。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態において、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜は、ナノカーボンチューブのメッシュ状の網をさらに含んでもよい。そのナノカーボンチューブのメッシュ状の網のナノチューブは、約20ナノメートル〜約450ナノメートル、好ましくは20ナノメートル〜約250ナノメートル、そしてより好ましくは約20ナノメートル〜約100ナノメートルの直径を有する。ナノカーボンチューブのメッシュ状の網は、各チューブが、比較的少ない抵抗の流れにおいて多くの流れを運搬できるように設計され、それは二分子の酸素および/または水素を生成するためにそれらの結合を分裂しやすくするように、水の酸素−水素結合を不安定にするために使用される。従って、その結合を分裂するのに必要なエネルギーおよび時間は少なく、それ故、二分子の酸素を迅速に、かつ容易に生成できる。ナノチューブの網は、約0.2〜約5.0ミクロンまで支持POMマトリクスの上に延びる。
【0032】
炭素薄膜へのジルテニウムの結合は、炭素の基質への結合で開始する。本発明の一実施形態において、化学蒸着(CDV)からの炭素原子が四面体配位型のSp3軌道ネットワークを開始する基質表面で核となることができるように、シリコン基質などが使用される。CDVは、前駆ガスとして水素およびメタンを使用し、「加熱方法」に用いる。例えば、加熱方法は、基質表面と相互作用し、炭素原子が表面によって吸着され得、生じる癒着が増加するように、反応種、主に「メチル基」の拡散を与えるためにフィラメントを使用してもよい。一旦完成すると、薄膜の表面は、主としてC−H単結合を有する第三炭素原子であると考えられる。
【0033】
炭素薄膜のドーピングは、ホウ素、フッ素および/または窒素を用いて完成されてもよい。ドーピングレベルの濃度が増加するにつれて、ダイヤモンド(炭素)の絶縁体の挙動は、半導体のものに変わり、さらに完全な金属的挙動に変わる。この電気化学効果を達成するために、ホウ素のドーピングのレベルは、ダイヤモンド(炭素)レベルにおいて低い抵抗降下を生じるのに十分でなければならないが、ドーピング合成の間にグラファイト相を誘導する結晶構造を変化させるか、または乱すほど低くなくてもよい。これを達成し得る1つの方法は、炭素薄膜と接触する際に配合される蒸気としてフッ素でドープすることであり、フッ素は、イオンとして結合を形成する水素およびホウ素と相互作用する。これを達成するための別の可能な方法は、ホウ素およびフッ素の両方の混合物で炭素をドーピングすることである。フッ素に関しては陰性ドーピングの場合である。すなわち、陰性F原子は余分な電子およびわずかに低いエネルギーレベルを有する(すなわち、約0.35eVのホウ素と対照的に約0.28〜0.32eV)。典型的に、ポリ(テトラフルオロエタン)およびテフロン(登録商標)などのいくつかの一般的なフルオロカーボン重合体に見られ得るように、炭素−フッ化物結合は共有結合で非常に安定である。代替的に、本発明は、基質上のグラファイトの堆積を利用して、高品質のグラファイトの微小機械的開裂によってナノチューブを生成してもよい。
【0034】
なおさらに別の代替は、酸化ホウ素および少量のモル濃度のフッ化水素酸塩(Hydroflourine)(約1.9リットル〜約2.5リットルのメタンあたり約0.22リットル〜約0.34リットル未満)を蒸発することである。上で考察したように、ペルフルオロアルキル−アルコキシシランおよび/またはトリフルオロプロピル−トリメトキシシラン(TFPTMOS)などのフッ素含有化合物が、炭素のホウ素でドープされた薄膜と相互作用するために使用されてもよい。ただし、そのフッ素含有化合物は、1分子あたり少なくとも1つの炭素−金属結合を有する。−CFおよび−OCF部分はさらなるバリエーション、およびより最近では−SF基を提供する。BFとしてフッ素原子を用いるホウ素によるドープを利用するさらなる代替がある。
【0035】
なおさらに別の代替は、メタンと相互作用するように酸化ホウ素およびフッ化水素酸塩ガスを蒸発させること、および上記で指摘したようにペルフルオロアルキル−アルコキシシランなど(トリフルオロプロピル−トリメトキシシラン(TFPTMOS)が好ましい)のフッ素含有化合物を使用することである。フッ素含有化合物は、1分子あたり少なくとも1つの炭素−金属結合を有することが必要条件である。
【0036】
薄膜は、ここで、ホウ素でドープされた合成ダイヤモンド(炭素)の薄膜からなる本発明者らのシェルのこの場合と同様に半導体として機能し、それはまた、20リットル/分より多い流量および/または4リットル/25秒より多い水量が本発明のフィルター材料を通過する場合、木挽き台配向におけるルテニウム錯体、およびPOMの配列が、過度に分離し、ねじれないように、アンカーおよび結合として使用される。従って、ホウ素でドープされた炭素薄膜は半導体の特性を与えるだけではなく、ジルテニウム分子が多流量下で歪められることを防ぐようにも機能する。さらに、フッ素と一緒にホウ素でドープされた炭素薄膜は、ルテニウム錯体および内圏配位子の両方に配向される木挽き台に結合される電気陰性部分を増幅する誘起効果を生じるが、外圏結合としてジルテニウム−POMから等しく伸びる。
【0037】
ダイヤモンドまたはグラファイト構造中の炭素はsp混成であるが、ホウ素(非炭素、すなわち、非ダイヤモンド)はsp種である。上記で考察した炭素およびホウ素の特定の混成状態は、薄膜に電気伝導度を与えるのに重要であり、その結果、薄膜は、固定基板および酸素生成電極の両方として機能する。上記の目的について効果的であるように、薄膜は、その薄膜(スクリーン)サイズの約2100ppm〜約6,800ppm/0.1cmの範囲においてホウ素でドープされなければならない。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明のフィルター材料は、そこに結合および/または埋め込まれる複数のナノカーボンチューブを含む合成膜をさらに含み、ナノカーボンチューブのメッシュ状の網を形成する。本発明の合成膜は、SiO、AlO、およびそれらの混合物からなる群より選択される。結晶構造は、四面体構造において4つの酸素原子(−2価)に囲まれているシリコン原子(+4価)からなる繰返しユニットに基づく。四面体の正味0の価数を与える2つのSi原子は、酸素分子を共有する。アルミニウム(+3の価数を有する)が四面体の配向において置換される場合、正味荷電−1が生じ、それ故、ゼオライトの陽イオン交換特性が生じる(さらに以下に記す)。合成膜は、シデロフォアが結合される多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の表面と近接するように配置される。本発明の合成膜は、それに結合および/または埋め込まれるナノカーボンチューブのメッシュ状の網と直接接触する少なくとも1つのゼオライト結晶体さらに含む。合成膜は、約0.1〜約3.0nm、好ましくは約0.1nm〜約3.4nm、そしてより好ましくは約2.0nm〜約2.9nmの直径を有する複数の孔を有する。
【0039】
本発明の一実施形態において、ゼオライト結晶体は、ナノカーボンチューブのメッシュ状の網のナノカーボンチューブに直接結合し、それによって、ゼオライト結晶体は、合成膜における孔の少なくとも一部と重なる。この構造により、水分子とゼオライト/ナノチューブとの反応から酸素および/または水素が生成されることを可能にし、それらは合成膜の孔を通って流れ、所定の目的のために回収され、使用される。ジルテニウム/ジルテニウムを含む多孔性のホウ素でドープされた炭素膜と、合成膜における孔の少なくとも一部と重なるナノカーボンチューブのメッシュ状の網に結合されるゼオライト結晶体を含む合成膜との組み合わせは、本発明のフィルター材料の繰返しユニットを形成する。
【0040】
本発明に使用されるゼオライトは、TO四面体構造から構成される結晶構造を有し、ここでTは、SiまたはAlのいずれかである。多数の天然のゼオライトに加えて、種々の合成ゼオライトも同様に存在する。ゼオライトの結晶構造は、四面体構造において4つの酸素原子(−2価)により囲まれるシリコン原子(+4価)からなる繰返しユニットに基づく。各酸素原子は2つのSi原子により共有され、ゼオライトを四面体構造にし、正味の荷電を0にする。アルミニウム(+3の価数を有する)が四面体構造において置換される場合、ゼオライトは−1の正味荷電を有する。この負の荷電はゼオライトの陽イオン交換特性を生じる。ゼオライトは、非常に均一の規定された孔のサイズおよび高い多孔率を有し、その結果としてそれら固有の結晶構造を生じる。この理由のために、ゼオライトは分子篩として有用である。
【0041】
しかしながら、分裂していない水は、頻繁に特定のゼオライトの孔を遮断し、それによって、それらのゼオライトはしばしば不良になり、それらの分離特性を低下させる。本発明のフィルター材料の構造により、チューブのメッシュ状の網に結合されるゼオライトが「詰まらない」状態のままになり、長期間機能することを可能にする。なぜなら、フィルター材料のナノチューブは、水の水素/酸素結合を不安定化し、それにより、フィルター材料のジルテニウム分子が水を酸素および水素に分解することを容易にするからである。ジルテニウム分子により分解される水が多くなると、多くの酸素/水素が生成し、本発明の合成膜のナノチューブに結合されるゼオライトの孔を塞ぐことのできる水は少なくなる。一旦酸素および/または水素が生成されると、呼吸、保存または工業的用途のために捕捉され、使用されることができる。
【0042】
使用されるゼオライトの孔のサイズも重要である。孔が非常に大きいと、水がゼオライトフィルターを通過することができ、酸素および水素に分解されず、非常に小さいと、生成される酸素および/または水素が保持されて、フィルターから外側へ通過できず、それらを利用することができない。従って、サイズに基づいて他の分子は排除するが、特定の分子の吸着を可能にするように、ゼオライトの孔の開口を微調整できるようにすることが重要である。ゼオライトの孔のサイズを変化させる1つの方法は、ある陽イオンから別の陽イオンへ交換性陽イオンを変化させることである。例えば、ゼオライトAにおいてNa+イオンをCa++イオンに変えると、有効な開口サイズは増加する。これはまた、ゼオライトのAl/Si比を変化させることによっても達成され得る。Alに対するSiの割合の増加は、単位格子サイズをわずかに減少させ、交換性陽イオンの数を減少させ、それにより、チャネルを遊離し、ゼオライトの特性をより疎水性にする。
【0043】
本発明に使用されるゼオライトは主にケイ酸アルミニウムから構成され、アルミナ基板は、選択される最終生成物を生成するように、他の原子は排除するが、一部の原子を通す分子篩として機能するアルミナ孔を含む。この適用の目的のために、用語「分子篩」とは、これらの物質の特定の特性、すなわち、サイズ排除プロセスに主に基づいて選択的に分子を分類する能力をいう。本発明に使用できるゼオライトは、含水ケイ酸アルミニウム無機物、典型的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のファミリーのうちのいずれか1つを含み、それらの分子は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウム、あるいは対応する合成化合物の陽イオンを含む。
【0044】
従って、本発明のフィルター材料は、膜の一方の側にジルテニウム分子、および他方の側に遊離ルテニウムイオンを補足するためのシデロフォアを含む炭素のホウ素でドープされた膜を含む繰返しユニット、続いて、合成膜に結合される炭素のナノチューブのメッシュ状の網およびゼオライト結晶体を含む合成膜から構成される。それらの繰返しユニットのいくつかは、フィルター材料が高生産量の酸素および/または水素の生成物を提供するように、連続して集められてもよい。この固有のフィルター材料は、2つの異なる材料を合わせており、これにより、基礎材料のものと異なる特徴を有する新規の材料が得られる。このように、本発明のフィルター材料は、多量の二分子の酸素を電気発生させるだけでなく、分子篩の「ゼオライト媒体」を介する直接的な濾過を用いることにより、呼吸装置、保存または工業的用途に使用するための二分子の酸素を捕捉する。
【0045】
合成膜の表面に埋め込まれるナノカーボンチューブのメッシュ状の網は、ゼオライトコーティング合成膜の表面上に約0.1〜約7ミリメートル、好ましくは約0.2〜約6ミリメートル、そしてより好ましくは約0.2〜約6ミリメートルまで延びる。ジルテニウムを含む炭素のドープされた膜に結合するナノチューブと同様に、ナノカーボンチューブは、約20ナノメートル〜約450ナノメートルの直径を有してもよい。ナノカーボンチューブのメッシュ状の網は、以下の手順、電子ビームリソグラフィー、原子間力顕微鏡、化学的に帯電した分子インク、結晶化自己集合、播種自己集合、およびそれらの組み合わせならびに埋め込まれる合成膜の孔に影響を与えない任意の他の手段のうちの任意のものを用いて合成膜の表面に埋め込まれてもよい。
【0046】
本発明に使用され得る1つの適用は、粉砕または堆積手順を実施しながら、分析者が特定の部位の画像を捕捉することを可能にする、高解像度SEMを備えるFIB(集束イオンビーム)を統合するFEI 830デュアルビームシステムを使用する「IBM Almaden’s Materials Characterization and Analysis Lab」のような組み込みプロセスの間の直接可視化の使用である。炭素薄膜を製造する際に、ホウ素でドープされた薄膜に埋め込まれるナノカーボンチューブについての最初の孔を掘るように、その薄膜は加速ガリウムイオンによって最初に粉砕される。一旦完了すると、炭素の金属酸化物は粉砕された領域内に堆積されて、パターンおよび望まれないカーボンチューブを形成するが、アルゴンなどの不活性ガスは、薄膜の表面に流れる。付加的な炭素でドープされた原子は、ガリウムイオンによって薄膜内に以前に形成されたナノカーボンチューブの凹上のアルゴンガス表面に堆積される。堆積は、ALD(原子層堆積)またはCVDのいずれかにより完了されてもよく、それによって、炭素チューブが、最も内側の点から薄膜の外側へ広がる同心円状に配置される。一旦、カーボンナノチューブが完成すると、そのカーボンナノチューブの端部は開いたままになり、それによって、流れがカーボンナノチューブ内に付与され得る。次いで、ジルテニウム分子は、新規に調製された薄膜表面においてホウ素、フッ素と結合するように、調製された表面にエアロゾル化されるか、またはCVDを用いて付与される。
【0047】
代替として、炭素のホウ素でドープされたフッ化物膜を形成するために使用される方法は、Ar−Flガス混合物中のh−BNおよびグラファイトからなる複合ターゲットを用いて高周波マグネトロンスパッタリングによってなされ得、固体アルゴンマトリクス中のフッ化水素の光分解によって形成される前記混合物は、アルゴンフッ素水素化物(HArF)の形成を誘導する。形成後、炭素のドープされたフッ化物の薄膜は、X線回折、フーリエ変換赤外線分光法および/またはX線光電子分光法によって特徴付けられ得る。これらの手順の詳細は、Preparation of boron carbon nitride thin films by radio frequency magnetron sputtering,Applied Surface Science,Volume252,Issue12,2006年4月15日,4185−4189ページ,Lihua Liu,Yuxin Wang,Kecheng Feng,Yingai Li,Weiqing Li,Chunhong Zhao,Yongnian Zhao;およびA stable argon compound.Leonid Khriachtchev,Mika Pettersson,Nino Runeberg,Jan Lundell & Markku Rasanen.Department of Chemistry,PO Box55(A.I.Virtasen aukio1),FIN−00014 University of Helsinki,Finland.Nature406,874−876(2000年8月24日)に見出され得る。
【0048】
ホウ素でドープされた膜および合成膜の両方のナノカーボンチューブのメッシュ状の網は、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜またはゼオライト合成膜のいずれかの中心領域から出発して外側へ同心円状に間隔をあけた円で配置され得る。
【0049】
本発明のフィルター材料全体は、ゼオライト合成膜のスクリーンが、ジルテニウムのホウ素でドープされた薄膜スクリーンの後方に配置されるように設計され、その結果、そのジルテニウムスクリーンは、空気の流れ付近に存在する。すなわち、空気の流れはまず、ジルテニウムスクリーンと接触する。このように、空気の流れに含まれる水分は影響を受け、水の水素および酸素への分解を高めるように電気化学的に支援される。ゼオライトおよびジルテニウムスクリーンは直列で機能する。本発明の1つの好ましい実施形態において、6つのスクリーンのセットが、患者の呼吸装置に使用され得るフレームを有するカートリッジ内に含まれ得る。ジルテニウム壁に結合され、囲まれるゼオライト中心を挟むジルテニウム中心および外側の境界は、その精度および結合面についてFTIRおよび/またはX線結晶学によって生成後、解析される。
【0050】
カートリッジは、必要な場合、除去され、交換され得るように設計される。カートリッジは再利用可能なように製造されてもよいし、または単一の使用装置であってもよい。カートリッジについての多くの異なる構造が可能であり、本発明のフィルター材料の機能性を限定または変更しない。つまり、新しい種類のジルテニウム/ジルテニウムのホウ素でドープされた薄膜スクリーンと、直列で機能する新しい種類のゼオライト合成膜スクリーンとの間を交互するフィルター材料を提供して、呼吸するための個々の患者、酸素保存装置、または工業的消費のために二分子の酸素を生成する。本発明固有の設計は同時に、酸素生成の間、ラジカル中間体を増加するのを防ぎ、本発明のフィルター材料に使用される酸素触媒および陰イオン電極の分解を防ぐ。
【0051】
本発明の具体的な実施形態は添付の図面と併せて記載され、これは、本発明をより詳細にするために与えられ、本発明を限定するものと決してみなされるべきではない。
【0052】
図1は、本発明のフィルター材料(10)のジルテニウム/ジルテニウム分子を含む多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の前面の斜視図である。上記および図1に示すように、スクリーンを構成するメッシュ様材料は炭素であり、上部(55)、底部(60)、右側(45)および左側(50)を有するホウ素でドープされたスクリーン(15)である。円形、卵形、楕円形、平行四辺形、特に正方形、長方形および三角形などの代替の形状もまた、本発明の範囲内である。
【0053】
図1は、説明の目的のみのために長方形のスクリーンを示すが、他の形状が本発明の範囲内に含まれると想定される。ナノカーボンチューブ(20)が、炭素のホウ素でドープされたスクリーン(15)に配置されるか、または埋め込まれ、それは、スクリーンの中心点から始まり、放射状に外側に広がって、同心配置にゆるく充填されたコイル構造を形成する。ナノカーボンチューブは同心円状に配置されるが、代替的な実施形態において、ナノカーボンのナノチューブが、炭素のホウ素でドープされたスクリーン(15)の設計および形状に依存して異なるパターンで配置されてもよい。スクリーンの異なる形状のように、ナノチューブの異なる配置もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
炭素のホウ素でドープされたスクリーン(15)の全体にわたって分散されるのは、多数のホウ素原子(25)である。これらのホウ素原子(25)は、スクリーン全体にわたって均一に分散されてもよいか、またはナノカーボンチューブの領域内に集中されてもよい。ナノカーボンスクリーン(15)の中心領域付近に、少なくとも1つのジルテニウム置換ポリオキソメタレート(POM)錯体(40)が存在する。上記のように、本発明の一実施形態において、ジルテニウム置換ポリオキソメタレート(POM)錯体(40)は、POM(30)に結合されたジルテニウム木挽き台(sawhorse)分子(35)を含む。ジルテニウム木挽き台分子(35)は、スクリーンに最も近接して配置されるが、POM(30)はスクリーンの面から外側へ伸びる。この配置は、迅速で、かつ効果的な水の二分子の酸素および水素への分解を可能にする。この配置は、本発明のフィルター材料の繰返しユニットの第1のスクリーンを構成する。
【0055】
図2は、ジルテニウム/ジルテニウム分子およびシデロフォア(115)を含む多孔性のホウ素でドープされた炭素膜(100)の裏面の斜視図を示す。本発明の炭素のホウ素でドープされたスクリーンは、上部(105)、底部(110)、左側(120)および右側(125)を有する。図2に示されるシデロフォア(115)は、スクリーンの底部(110)に配置されるが、シデロフォア(115)が、スクリーンの形状およびナノチューブの配置に依存してスクリーンの他の部分に配置されることは本発明の範囲内である。炭素のホウ素でドープされたスクリーン(15)は、図1と同じ配向のホウ素原子(25)ならびに図1および上記に示す炭素ナノチューブ(20)および少なくとも1つのジルテニウム置換ポリオキソメタレート(POM)錯体(40)を含む。
【0056】
シデロフォア(115)は、複数の孔を有する中空のチューブ状構造の形態であってもよく、そのシデロフォア(115)の少なくとも一端は、ナノカーボンチューブの少なくとも一端と直接つながる。代替的に、シデロフォア(115)はイオン的に帯電したプレートの形態であってもよい。いずれの構造も、フィルター材料によって生成される酸素を吸う患者が遊離ルテニウムイオンを吸収するのを防ぐように、フィルター材料から除去され得るルテニウムイオンなどの荷電イオンを捕捉するように設計される。プレートまたは中空のチューブのシデロフォア(115)のいずれも、含浸されたポリスルフォネート樹脂、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびそれらの混合物から構成され得る。
【0057】
図3は、本発明のゼオライト結晶体を含む合成膜(200)の表面の断面図を示す。これは、フィルターの繰返しユニットに隣接するスクリーンであり、図2に示すシデロフォアを有するホウ素でドープされた炭素膜の裏面に対して配置される。合成膜(200)は、上部(205)、底部(210)、右側(220)および左側(225)を有し、長方形の形状で示される。第1のスクリーンと同様に、合成スクリーンは、長方形の形状で示されるが、円形、卵形、楕円形、平行四辺形、特に正方形、長方形、および三角形などの代替の形状が、本発明の範囲内に含まれることは想定される。つまり、図3は、説明の目的のみのために長方形のスクリーンを示すが、他の形状も本発明の範囲内である。
【0058】
図1および図2のホウ素でドープされた炭素膜と同様に、合成膜は、その合成膜に埋め込まれるか、または配置される炭素のナノチューブを有する。合成スクリーンはまた、ナノチューブ(215)、合成膜、またはその両方と直接接触するゼオライト結晶体(240)を有する。
【0059】
図4は、本発明のフィルター材料の複数の交互スクリーン(300)の断面図を示す。交互に積み重ねられた配置は、ジルテニウム/ジルテニウム分子および少なくとも1つのシデロフォアを含む第1のホウ素でドープされた炭素膜(305)を含む。本発明のフィルター材料における第2のスクリーンは、ゼオライトを含む合成膜(310)であり、これに続いて、別のホウ素でドープされた炭素スクリーン(315)および次に別のゼオライトを含む合成膜(320)がある。この2種類のスクリーンを繰り返して交互に積み重ねることは、所望の数のスクリーンに到達するまで繰り返されてもよい。このスクリーンは各々、カートリッジに入れられ得るフレームを有してもよいか、または代替的に、そのスクリーンはフレームを有さず、フレームを有さないものとしてカートリッジに入れられてもよい。カートリッジは、フィルター材料の整合性が交互に繰り返しているスクリーンからなるものであることを確実にする。
【0060】
図5は、フィルターカートリッジ(400)における本発明のフィルター材料の複数の交互スクリーンの斜視図を示す。このカートリッジ(400)は、多くの異なる形状およびサイズを有してもよく、呼吸するための酸素生成機械または代替的に、上記の工業目的のために使用される酸素生成装置に使用されてもよい。
【0061】
上記の説明は多くの仕様を含むが、それらの仕様は本発明の限定と解釈されるべきではなく、単に本発明の好適な実施形態の例示であると解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲および趣旨の範囲内において多くの他の実施形態を想定するだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給源から酸素および/または水素ガスを発生/取り出すためのフィルター材料であって、
ジルテニウム/ジルテニウム分子および少なくとも1種類の陰イオンを含む、多孔性のホウ素でドープされた炭素膜を含み、前記ジルテニウム/ジルテニウム分子および前記陰イオンは、前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜と直接接触する位置にあり、それによって、酸素および/または水素ガスが、前記フィルター材料を通過する場合に供給源から発生される、フィルター材料。
【請求項2】
前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜と直接接触する前記ジルテニウム/ジルテニウム分子は、イオン結合されている、請求項1に記載のフィルター材料。
【請求項3】
前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜は、ナノカーボンチューブのメッシュ状の網をさらに含む、請求項1に記載のフィルター材料。
【請求項4】
前記ジルテニウム/ジルテニウム分子の各々のうちの1つのジルテニウム分子は、以下の式(I)
[Ru(CO)(u−n2−CR) (I)
を有し、
式中、uは、[Ru(EDTA)2−、(CO)、F、Co−2、NO(カチオン性)、水素結合芳香族/カルボン酸−(二重結合酸素またはその中の部位における重合としての複数の結合あるいは単一の結合のいずれかに関する)、エチレンジアミン、アニオン性配位子としてハロゲン化物、カルボン酸、不飽和炭化水素、直線状または曲線状のいずれかの金属中心に配位する硝酸、ブタジエン、カルボキシレート配位子、アニオン性(RO−およびRCO−2(ここでRはHまたは炭化水素である))または中性配位子(R、RS、CO、CN)、CHCN(アセトニトリル)、NH(アンモニアアミン)F、Cl、トリス(ピラゾリル)ホウ酸塩およびそれらの混合物、好ましくは[Ru(EDTA)2−からなる群より選択される架橋配位子であり;
式中、nは、少なくとも2であり、かつ分子の配位座数(denticity)に依存し(つまり、同じ中心原子に結合される所定の配位子からの供与基の数);
式中、Lは、[Ru(PhPCHCHPPh)(EDTA)]2+、C、RC=CR(ここでRはHまたはアルキルである)、1,1−ビスジフェニルホスフィノメタン、ジエチレントリアミン[ジエン]結合、好ましくは三座、トリアザシクロノナン[ジエン]結合、好ましくは三座、トリフェニルホスフィンおよびそれらの混合物からなる群より選択される配位子であり;
式中、CRは、カルボン酸、カルボキシレート配位子、アニオン性(ROおよびRCO(ここでRはアルキル基である))または中性配位子(R、RS、CO、CN(ここでRはアルキル基である))およびそれらの混合物であり;ならびに
xは1〜約30の間である、
請求項1に記載のフィルター材料。
【請求項5】
式(I)の前記ジルテニウム/ジルテニウム分子のうちの1つのジルテニウムは、以下の式(II)
[WZnRuIII(OH)(HO)(ZnW34−14 (II)
を有するジルテニウム置換ポリオキソメタレートに結合される、請求項4に記載のフィルター材料。
【請求項6】
前記少なくとも1つのジルテニウム/ジルテニウム分子が結合される前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の反対面に結合されるルテニウムイオン捕捉シデロフォアプレートをさらに含み、前記シデロフォアプレートは、前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜から除去される遊離ルテニウムイオンを捕捉するようにイオン的に帯電する、請求項5に記載のフィルター材料。
【請求項7】
前記シデロフォアプレートは、ポリスルフォネート樹脂が含浸したプレート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項6に記載のフィルター材料。
【請求項8】
前記ジルテニウム分子における各々のルテニウム間の距離は、約2.75オングストロームである、請求項5に記載のフィルター材料。
【請求項9】
前記ナノカーボンチューブのメッシュ状の網の前記ナノチューブは、約20ナノメートル〜約450ナノメートルの直径を有する、請求項8に記載のフィルター材料。
【請求項10】
xは、1〜約10の間である、請求項4に記載のフィルター材料。
【請求項11】
ナノカーボンチューブのメッシュ状の網を形成するために合成膜の表面に結合および/または埋め込まれた複数のナノカーボンチューブを含む前記合成膜をさらに含み、前記合成膜は、前記シデロフォアを含む前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の前記表面と密接に接触する位置にある、請求項5に記載のフィルター材料。
【請求項12】
前記ナノカーボンチューブと直接接触する少なくとも1つのゼオライト結晶体をさらに含み、前記合成膜は、約0.1〜約3.0nmの直径を有する複数の孔を含み、前記ナノカーボンチューブに結合される前記ゼオライト結晶は、前記孔の少なくとも一部と重なり、供給源から酸素および/または水素ガスを取り出すための前記フィルター材料の繰返しユニットを形成する、請求項11に記載のフィルター材料。
【請求項13】
前記合成膜は、SiO、AlO、およびそれらの混合物である、請求項11に記載のフィルター材料。
【請求項14】
前記合成膜の前記表面に埋め込まれた前記ナノカーボンチューブのメッシュ状の網は、前記表面の上に約0.2〜約5ミリメートル延びている、請求項11に記載のフィルター材料。
【請求項15】
前記ナノカーボンチューブのメッシュ状の網の前記ナノカーボンチューブは、約20ナノメートル〜約450ナノメートルの直径を有する、請求項12に記載のフィルター材料。
【請求項16】
前記ナノカーボンチューブのメッシュ状の網は、電子ビームリソグラフィー、原子間力顕微鏡法、化学的に帯電された分子インク、結晶自己集合、播種自己集合およびそれらの混合物を用いて、前記合成膜の前記表面に埋め込まれる、請求項12に記載のフィルター材料。
【請求項17】
前記ナノカーボンチューブのメッシュ状の網は、前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の中心領域から出発して外側へ広がる、同心円状に間隔をあけた円で配置される、請求項2に記載のフィルター材料。
【請求項18】
合成膜を含む前記ゼオライトの前記表面に埋め込まれたナノカーボンチューブは、前記多孔性のホウ素でドープされた炭素膜の中心領域から出発して外側へ広がる、同心円状に間隔をあけた円で配置される、請求項11に記載のフィルター材料。
【請求項19】
式(II)の前記ジルテニウム置換ポリオキソメタレートは、Na14[RuZn(HO)(ZnW34]である、請求項5に記載のフィルター材料。
【請求項20】
式(II)の前記ジルテニウム置換ポリオキソメタレートは、Na14[RuZn(HO)(ZnW34]である、請求項12に記載のフィルター材料。
【請求項21】
前記フィルター材料から酸素および/または水素を生成するために、請求項12に記載のフィルター材料にわたって水を含む空気の流れを提供する工程を含む、酸素および/または水素を生成するための方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−537819(P2010−537819A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524029(P2010−524029)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/010388
【国際公開番号】WO2009/035525
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510061759)
【Fターム(参考)】