説明

供給装置

【課題】気相中で固体前駆体化合物を反応器に供給するための供給装置が提供される。
【解決手段】当該装置は、出口室と、固体前駆体化合物および固体前駆体化合物上に配置された充填材料の層を含む前駆体組成物を含む入口室とを含む、固体前駆体化合物用の気相供給装置である。かかる装置は、その上に充填材料の層を有する固体前駆体化合物の前駆体組成物を含む。CVD反応器内への供給のために前駆体化合物によって飽和されたキャリアガスを移送するための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、気相堆積装置で使用するための蒸気発生器システムに関する。特に本発明は、気相エピタキシーおよび他の化学気相堆積装置の要件のために設計された蒸気発生器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な構成成分を有し、かつマイクロメートルの何分の1〜数マイクロメートルの範囲の厚さを有する各種の単結晶層を含む、第III−V族化合物半導体材料は、多くの電子および光電子デバイス、たとえばレーザー、LEDおよび光検知器の生産に使用される。有機金属化合物を使用する化学気相堆積(「CVD」)法は、典型的には金属薄膜または半導体薄膜、たとえば第III−V族化合物の膜の堆積に利用される。かかる有機金属化合物は、液体または固体であり得る。
【0003】
CVD法において、反応性ガス流は典型的には、所望の膜を堆積させるために反応器に供給される。反応性ガス流は典型的には、前駆体化合物蒸気によって飽和されたキャリアガス(たとえば水素)より成る。前駆体化合物が液体である場合、反応性ガス流は典型的には、供給装置(すなわちバブラー)内で液体前駆体化合物にキャリアガスを通過(すなわちバブリング)することによって得られる。典型的には、固体前駆体は、円筒状容器またはコンテナ中に入れられ、固体前駆体を気化させるために一定温度に付される。キャリアガスは、前駆体化合物蒸気を捕捉し、それを気相堆積システムに移送するのに使用される。大半の固体前駆体は、従来のバブラー型前駆体供給容器において使用されると、低く一定しない供給速度を示す。かかる従来のバブラーシステムは、特に固体有機金属前駆体化合物が使用される場合、前駆体蒸気の不安定な、不均一な流速を生じうる。不均一な有機金属気相濃度は、金属有機気相エピタキシー(「MOVPE」)反応器内で成長されている膜、特に半導体膜の組成に悪影響をもたらす。
【0004】
固体前駆体化合物を反応器に供給することの問題への対処を試みる供給装置が開発されている。これらの供給装置のいくつかは、均一な流速を提供することが見出されているが、それらは前駆体物質の一貫した高濃度を提供できなかった。固体前駆体からの供給蒸気の一貫した高濃度での安定供給を達成できないことは、特に半導体デバイス製造におけるかかる装置のユーザーにとって問題である。不安定な前駆体の流速は、化学物質の蒸発が起こる化学物質の総面積の連続的な減少、固体前駆体化合物を通チャネリング、およびキャリアガスとの有効な接触が困難又は不可能である、供給システムの部分への前駆体固体物質の昇華物を含む様々な因子によるものでありうる。経路を固体前駆体化合物のベッドを通して作った場合、キャリアガスは前駆体化合物のベッドを経由するよりもかかる経路を優先的に流れ、キャリアガスと前駆体化合物との接触減少が発生する。かかるチャネリングは、固体前駆体化合物の気相濃度の低下を引き起こし、供給装置内に残る未使用の固体前駆体化合物を生じさせる。
【0005】
より高いキャリアガス流速は、前駆体化合物の気相反応器へのより高い移送速度を与える。かかるより高い流速は、より短時間でより厚い膜を成長させるために必要とされる。たとえばある用途において、成長速度は2.5μm/時から10μm/時に増加される。一般に、固体前駆体化合物によるより高いキャリアガス流速の使用は、気相での前駆体化合物の安定濃度の維持に有害である。したがって、従来の固体前駆体供給システムによって提供されるよりも、より高い流速にて、気相中の固体前駆体化合物を気相反応器に供給するための改良されたシステムへの要求がある。
【0006】
特公平第06−020051号(宇部興産へ与えられた)は、金属充填剤をシリンダーに装填することと、昇華によって金属充填剤の表面上に有機金属化合物を装填することとによって、固体有機金属化合物のための供給シリンダーを装填する方法を開示している。金属充填剤のもう1つの層が有機金属化合物上に配置される。この特許で開示されたシリンダーは、ディップチューブを含有し、2つの金属充填剤層の間に挟まれた有機金属化合物の3層系と、金属充填剤上層と有機金属化合物層を通過し金属充填剤の下層にて終わるディップチューブを有する。この手法は、高度に反応性の有機金属化合物と併せて使用される特定の金属充填剤が、所望の有機金属化合物と共に気相中で移送可能である有害な金属不純物がその場で発生する確率を上昇させるという問題を伴う。特定の金属、たとえばニッケルおよびクロムは、第III族有機金属化合物の分解を増加させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平第06−020051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
気相中で固体前駆体化合物を供給する従来の手法は、供給装置から固体前駆体化合物が使い尽くされるまでのプロセスを通じて前駆体蒸気の均一で高い濃度を十分に提供しない。供給装置から固体前駆体化合物が使い尽くされる、及び固体前駆体化合物の気相濃度が均一で十分に高い濃度のままである、固体前駆体化合物の蒸気を供給するための改良された供給装置および方法への要求がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
固体前駆体化合物および固体前駆体化合物上の充填材料の層を含む前駆体組成物を含む気相供給装置が、かかる充填材料のない同じシステムと比較して、高い流速、低い圧力または高いおよび低い圧力の組合せにおいてさえ、気相中でさらに一貫した安定な前駆体化合物濃度を提供することが見出された。その上に充填材料の層を有する固体前駆体化合物を含むかかる組成物は、二室化された供給装置で使用するのに特に好適である。気相中でのかかる一貫した安定な前駆体の濃度は、固体前駆体化合物をその分解温度またはその付近で加熱する必要なしに達成することができる。
【0010】
本発明は、出口室と、固体前駆体化合物および固体前駆体化合物の上に配置された充填材料の層を含む前駆体組成物を含む入口室とを含む、固体前駆体化合物のための気相供給装置を提供する。1つの実施形態において、供給装置はディップチューブを含有しない。「ディップチューブ」は単室を有するシリンダーにおいて使用され、キャリアガスを前駆体化合物中に導き、キャリアガスを前駆体化合物の下部に供給し、それにより次いで、キャリアガスが前駆体化合物を通って上方に移動する管である。
【0011】
固体前駆体化合物および充填材料を含む前駆体組成物を含み、充填材料が安定剤を含む供給装置が提供される。1つの実施形態において、固体前駆体化合物は有機金属化合物である。
【0012】
本発明によって:a)上述の供給装置であって、ガス入口およびガス出口を有する供給装置を提供することと;b)ガス入口を通してキャリアガスを供給装置に導入することと;c)充填材料および固体前駆体化合物を通してキャリアガスを流し、キャリアガスを前駆体化合物によって実質的に飽和させることと;d)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを供給装置からガス出口を通して出すことと;e)基体を含有する反応容器に前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを供給することと;およびf)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを前駆体化合物を分解するのに十分な条件に付し、基体上に膜を形成すること;を含む、膜を堆積する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】環状設計および円錐形状下部を有し、その上に配置された充填材料の層を有する固体前駆体化合物、たとえばTMIを含有する、本発明の供給装置を示す断面図である。
【図2】非環状設計を有し、その上に配置された充填材料の層を有する固体前駆体化合物を含有する、本発明の供給装置を示す断面図である。
【図3】非同心の入口室と出口室を有し、その上に配置された充填材料の層を有する固体前駆体化合物を含有する、本発明の供給装置を示す断面図である。
【図4】非環状設計および円錐形状下部を有し、その上に配置された充填材料の層を有する固体前駆体化合物を含有する、本発明の供給装置を示す断面図である。
【図5】固体前駆体化合物と、安定剤を含む充填材料とを含む前駆体組成物を含む、供給装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書を通じて使用する場合、以下の省略形は、別途明確に示さない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏温度;sccm=1分間当たり標準立方センチメートル;cm=センチメートル;mm=ミリメートル;μm=ミクロン=マイクロメートル;g=グラム;kPa=キロパスカル;PTFE=ポリテトラフルオロエチレン;HDPE=高密度ポリエチレン;およびTMI=トリメチルインジウム。
【0015】
「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指し、「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。同様に「ハロゲン化」は、フッ素化、塩素化、臭素化およびヨウ素化を指す。「アルキル」は、直鎖、分岐および環状アルキルを含む。本明細書で使用する場合「前駆体化合物」という用語は、基体上での膜の成長に使用される成分の気相濃度を提供する任意の固体化合物を指す。すべての数値範囲は、かかる数値範囲は境界値を含み、かつ合計100%となるように制約されていることが明らかな場合を除いて任意の順序で組合せ可能である。
【0016】
本発明の蒸気発生器または供給装置は、固体前駆体化合物の完全に均一に使い切ることを提供できないこと並びに既知の設計によって示される不十分で一定しない供給速度を排除するように設計されている。広範囲に渡る供給装置は、本発明から恩恵を受け得る。供給装置は典型的には、出口室および入口室を含む二室装置を包含し、入口室は固体前駆体化合物および固体前駆体化合物の上に配置された充填材料の層を含む前駆体組成物を含む。入口室は、出口室と通じている。1つの実施形態において、入口室は多孔性要素を介して出口室と通じている。さらなる実施形態において、多孔性要素は入口室の床にある。
【0017】
有用な供給装置の1つの種類は、多孔性要素が第1室(典型的には、入口室)を第2室(典型的には、出口室または出口管)から隔てる二室化された構造を有するものである。1つの実施形態において、好適な二室化された供給装置は、円筒部の全長に渡って実質的に一定な断面を画定する内面を有する細長円筒形状部と、頂部閉鎖部と、底部閉鎖部と、流体連絡(fluid communication)し且つ多孔性要素によって隔てられた入口室および出口室とを有し、頂部閉鎖部が充填栓およびガス入口開口を有し、充填栓およびガス入口開口は入口室に通じており、出口開口は出口室に通じており、多孔性要素が底部閉鎖部から離されており、多孔性要素が入口室の床に含有されている、二室化された供給装置である。かかる二室容器において、前駆体組成物は入口室内に含有される。
【0018】
別の実施形態において、入口室は多孔性要素を含有する円錐形状下部をさらに含む。さらなる実施形態において、円錐形状下部は多孔性要素に向けて断面が縮小する。なおさらなる実施形態において、多孔性要素は円錐形状下部の床を形成する。さらなる実施形態において、入口室および出口室は同心性である。入口および出口室が同心性であるとき、入口室が出口室内に含有されてもよいし、または出口室が入口室内に含有されてもよい。さらに別の実施形態において、出口室は、第2の多孔性要素を、例えばガスが多孔性要素を通過することによって容器を出るようにガス出口開口に位置させて含有することができる。さらに別の実施形態において、入口室は、第2の多孔性要素を、例えばガスが多孔性要素を通過することによって入口室に入るようにガス入口開口に位置させて含有することができる。当業者によって、他の好適な供給装置が使用されうることが認識される。
【0019】
これらの供給装置(またはシリンダー)は、材料がそれに含有される前駆体化合物に対して不活性であり、使用中の温度および圧力条件に耐えられる限り、任意の好適な材料、たとえばガラス、PTFEおよび金属によって構成することができる。典型的には、シリンダーは金属によって構成される。金属の例として、これに限定されないが、ニッケル合金およびステンレス鋼が挙げられる。好適なステンレス鋼としては、これに限定されるわけではないが、304、304L、316、316L、321、347および430が挙げられる。ニッケル合金の例として、これに限定されるわけではないが、インコネル、モネル、およびハステロイが挙げられる。当業者によって、かかるシリンダーの製造に材料の混合物が使用され得ることが認識されるであろう。
【0020】
多孔性要素は典型的には、制御された多孔率を有するフリット(frit)である。本発明では、広範囲に渡る多孔率を有する多孔性要素を使用することができる。詳細な多孔率は、当業者の能力の十分範囲内の各種の要因に依存する。典型的には、多孔性要素は1〜100μm、さらに典型的には1〜10μmの孔サイズを有する。しかしながら100μmを超える多孔率を有する多孔性要素が特定の用途には好適でありうる。同様に、1μm未満の多孔率を有する多孔性要素が特定の用途に好適でありうる。採用された条件下で使用される有機金属化合物に対して不活性であり、所望の多孔率が制御できるならば、多孔性要素を構成するために任意の材料を使用することができる。多孔性要素を形成するのに好適な材料としては、これに限定されるわけではないが、ガラス、PTFEおよび金属、たとえばステンレス鋼およびニッケル合金が挙げられる。上述のステンレス鋼およびニッケル合金のいずれも好適に使用されうる。典型的には、多孔性要素は焼結金属であり、さらに典型的にはステンレス鋼である。入口および出口室を隔離する多孔性要素が、ガス入口開口、ガス出口開口またはガス入口および出口開口の両方に位置する任意の他の多孔性要素と同じまたは異なっていても良いことは、当業者によって認識されるであろう。同様に、異なる多孔性要素が同じまたは異なる孔サイズを有してもよい。
【0021】
多孔性要素は入口室の床の一部または全体を構成し得る。入口室が円錐形状下部をさらに含むとき、多孔性要素は典型的には、かかる円錐形状部分内に含有される。典型的には、多孔性要素は、円錐形状下部の床を形成する。
【0022】
多孔性要素は、入口室内の前駆体組成物並びに充填材料を保持する。一般に円錐形状部分を備えた入口室を有するシリンダーにおいて、かかる円錐形状部分および多孔性要素の組合せは、ガス流に対して制限を与える。この制限は、固体前駆体化合物/充填材料層を通じた均一なキャリアガス流を供給する。円錐形状部分は、シリンダー内での固体前駆体化合物/充填材料層状化組成物の移動を増強し、固体前駆体化合物を多孔性要素の表面上に向かわせる。このことはシリンダー寿命の終わりに向かい、特に重要であり、シリンダーからの収率(すなわち反応室に供給される前駆体化合物の量)を改善する。入口室の下部の一般的な円錐形状部分は、入口室の床平面から測定して、任意の角度例えば1〜89度でもよい。典型的には、円錐部分は、20〜60度の角度を有する。
【0023】
多孔性要素のサイズは重要でない。一般に、入口室の床において多孔性要素は、入口室の直径までの任意の好適なサイズを有することができる。たとえば多孔性要素は、直径1cm(0.4インチ)以上、たとえば1.25cm(0.5インチ)、1.9cm(0.75インチ)、2.54cm(1インチ)、3.8cm(1.5インチ)、5cm(2インチ)以上を有する円板でありうる。多孔性要素は、様々な厚さ、たとえば0.3cm(0.125インチ)以上、たとえば0.6cm(0.25インチ)、1.25cm(0.5インチ)以上を有し得る。かかる多孔性要素の寸法は、十分に当業者の能力の範囲内である。別の実施形態において、多孔性要素は、その外径と同心性である内部管を有し得る。
【0024】
供給装置(シリンダー)の断面寸法は、広い範囲に渡って変化し得る。しかしながら、一般に断面寸法は、所与の用途ではシリンダーの性能にとって重要であり、それ以外ではシリンダーの寸法は重要でなく、いくつかあるうちの特にキャリアガス流、使用される固体前駆体化合物、および使用される特定の化学気相堆積システムに依存する。断面寸法は熱伝導に影響を及ぼし、所与の圧力および流速にてシリンダー内のガスの線速度を決定し、言い換えれば固体前駆体化合物とキャリアガスとの接触時間、それゆえキャリアガスの飽和を制御する。典型的には、シリンダーは5cm(2インチ)〜15cm(6インチ)、さらに典型的には5cm、7.5cm(3インチ)または10cm(4インチ)の断面寸法(直径)を有する。特定のシリンダーの他の寸法は、十分に当業者の能力の範囲内である。好適なシリンダーは、Rohm and Haas Electronic Materials LLC(モールバラ、マサチューセッツ州)によって販売されているようなシリンダーである。
【0025】
固体前駆体化合物は入口室内に含有される。かかる固体前駆体化合物は、前駆体化合物蒸気の源である。蒸気供給システムで使用するのに好適な任意の固体前駆体化合物が本発明に使用され得る。好適な前駆体化合物としては、これに制限されないが:インジウム化合物、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、およびガリウム化合物が挙げられる。前駆体化合物の例としては、これに制限されないが:トリアルキルインジウム化合物、たとえばトリメチルインジウムおよびトリtert−ブチルインジウム;トリアルキルインジウム−アミン付加体;ジアルキルハロインジウム化合物、たとえばジメチルクロロインジウム;アルキルジハロインジウム化合物、たとえばメチルジクロロインジウム;シクロペンタジエニルインジウム;トリアルキルインジウム−トリアルキルアルシン付加体、たとえばトリメチルインジウム−トリメチルアルシン付加体;トリアルキルインジウム−トリアルキル−ホスフィン付加体、たとえばトリメチルインジウム−トリメチルホスフィン付加体;アルキル亜鉛ハライド、たとえばエチル亜鉛ヨージド;シクロペンタジエニル亜鉛;エチルシクロペンタジエニル亜鉛;アラン−アミン付加体;アルキルジハロアルミニウム化合物、たとえばメチルジクロロアルミニウム;アルキルジハロガリウム化合物、たとえばメチルジクロロガリウム;ジアルキルハロガリウム化合物、たとえばジメチルクロロガリウムおよびジメチルブロモガリウム;ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(「CpMg」);四臭化炭素;金属ベータジケトナート、たとえばハフニウム、ジルコニウム、タンタルおよびチタンのベータジケトナート;金属ジアルキルアミド化合物、たとえばテトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム;ケイ素化合物およびゲルマニウム化合物、たとえばビス(ビス(トリメチルシリル)アミノ)ゲルマニウムが挙げられる。上記の前駆体化合物において、「アルキル」という用語は、(C−C)アルキルを指す。前駆体化合物の混合物は本供給装置にて使用され得る。
【0026】
任意に、固体前駆体化合物はフリット化されてもよい。本明細書で使用する場合、「フリット化」は、固体前駆体化合物の融合を指す。シリンダーでの固体前駆体化合物のフリットが、気相中での前駆体化合物のさらに一貫した安定な濃度を可能にして、従来の技法と比較した場合にシリンダーからの固体前駆体化合物のより優れた使いつくしを提供することが見出された。「固体前駆体化合物のフリット」は、実質的に平坦な上面およびキャリアガスがケーキを通過しうるのに十分な多孔率を有する固体前駆体化合物の溶融ケーキを指す。一般に固体前駆体化合物のフリットが最初に形成される場合、それはシリンダーの内寸に一致し、すなわちフリットは、入口室の内寸の実質的に等しい幅を有する。フリットの高さは、使用される固体前駆体化合物の量に依存する。
【0027】
フリット化は典型的には、固体前駆体化合物に、実質的に平坦な表面を有する固体前駆体化合物のフリットを提供する条件に付すことによって実現される。典型的には、固体前駆体化合物は最初にシリンダーに(たとえば入口室に)添加され、シリンダーは攪拌されて実質的に平坦な表面を有する固体前駆体化合物を提供し、次に固体前駆体化合物はフリット化されて、固体前駆体化合物のフリットを形成する。かかるフリット化工程は任意に加熱を用いて実施されてもよく、好ましくは加熱を用いて実施される。別の実施形態において、攪拌工程は加熱を用いて実施されてもよい。攪拌は、任意の好適な手段、たとえばこれに限定されるわけではないが、タッピング、振動、回転、発振、ロッキング、かき混ぜ、加圧、電歪若しくは磁歪変換器による振動、または前駆体化合物の平坦な上面を提供するためのシリンダーの振とうによって実施され得る。かかる攪拌方法の組合せが使用され得る。
【0028】
加熱工程は、固体前駆体化合物の分解温度より低い温度にて実施される。典型的には、加熱工程は、固体前駆体化合物の分解温度より最大5℃低い、さらに典型的には、固体前駆体化合物の分解温度の最大10℃低い温度にて実施される。例えば、TMIは35〜50℃の温度にてフリット化され得る。かかる制御された加熱は、水浴、油浴、温風、加熱マントルなどを使用して実施され得る。フリット化工程は、固体前駆体化合物をフリットに溶融するのに十分な期間に渡って実施される。フリット化工程に使用される時間は、他にも因子はあるが、使用される特定の固体前駆体化合物、固体前駆体化合物の量、および使用される特定の温度に依存する。あるいはフリット化工程は、減圧下にて実施され得る。
【0029】
前駆体化合物フリットの特定の多孔率は、他にも因子はあるが、使用されるフリット化温度、使用される特定の前駆体化合物および前駆体化合物の開始粒径に依存する。固体前駆体化合物のより小さい粒子は典型的には、同じ固体前駆体化合物のより大きい粒子から形成されたフリットと比較して、より小さい孔を有するフリットを提供する。本明細書で使用する場合、「孔」は、溶融した固体前駆体化合物の粒子間の空間を指す。
【0030】
固体前駆体化合物の所望の粒子サイズは、様々な方法、たとえばこれに限定されるわけではないが、結晶化、粉砕およびふるい分けによって得ることができる。固体前駆体化合物は溶媒に溶解されることができ、及び所望の粒子を提供するために冷却により、非溶媒の添加により、またはその両方により結晶化されることができる。粉砕は、手動で、たとえば乳鉢および乳棒を用いて、または機械で、たとえば製粉機を用いて実施され得る。固体前駆体化合物の粒子は、実質的に均一な粒子サイズを有する固体前駆体化合物を提供するためにふるい分けされ得る。かかる方法の組合せを利用して、所望の粒子サイズの前駆体化合物を得ることができる。代替の実施形態において、異なる粒子サイズを有する粒子を有する固体前駆体化合物が使用され得る。かかる異なる粒子サイズの使用は、様々な孔サイズを有する固体前駆体化合物のフリットを提供し得る。
【0031】
さらなる実施形態において、固体前駆体化合物のフリットは、多孔率勾配、すなわち孔サイズの勾配を含有し得る。かかる孔サイズ勾配は、各種のサイズを有する固体前駆体化合物の勾配粒子をフリット化することによって得られうる。かかる勾配は、増大する(または縮小する)サイズの粒子をシリンダーに逐次的に添加すること;および平坦表面を有する固体前駆体化合物を提供するためにシリンダーを攪拌すること;および固体前駆体化合物をフリット化することによって形成できる。
【0032】
なお別の実施形態において、固体前駆体化合物のフリットは、異なる孔サイズの領域を含有し得る。たとえばフリットは比較的大きな孔サイズ、たとえば5μmを有する領域、および比較的小さい孔サイズ、たとえば2μmを有する領域を含有し得る。1つ以上の各領域があってもよい。1つを超える各領域があるとき、かかる領域は交互でもよい。加えて、さらに異なる孔サイズを有する1つ以上の他の領域があってもよい。
【0033】
固体前駆体化合物のフリットの孔サイズは、1以上の特定の多孔率形成助剤、たとえば有機溶媒または他の除去剤を使用することによっても制御できる。前駆体化合物と反応しない任意の有機溶媒が使用され得る。典型的な有機溶媒としては、これらに制限されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、エステル、アミド、およびアルコールが挙げられる。かかる有機溶媒は、固体前駆体化合物を溶解させる必要はないが、溶解させることもできる。1つの実施形態において、前駆体化合物および溶媒のスラリーがシリンダーに添加される。スラリーの実質的に平坦な表面が形成される。次に溶媒が除去され、固体前駆体化合物がフリット化される。溶媒がフリット化工程前、工程中、また工程後の間に除去されることが当業者によって認識される。
【0034】
本発明では使用条件下で固体前駆体化合物およびシリンダーに対して不活性であるならば、広範囲に渡る充填材料(フィラー)が使用できる。典型的には、充填材料は流動性である。たとえば前駆体化合物がシリンダーから消耗されると、シリンダー内の前駆体化合物の高さは低下し、充填材料は前駆体化合物層の表面の任意のくぼみを充填するように流動する必要がある。好適な充填材料としては、これら制限されないが、セラミックス、ガラス、粘土および有機ポリマーが挙げられる。充填材料の例としては、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ホウケイ酸塩、およびケイ酸アルミナが挙げられる。異なる充填材料の混合物も使用され得る。1つの実施形態において、充填材料は元素金属、たとえばニッケルまたは金属合金、たとえばステンレス鋼ではない。充填材料は、前駆体化合物、および非金属元素と組合せて金属を含有する他の物質を含む。別の実施形態において、充填材料として使用される有機金属化合物は、前駆体化合物と同じでもよい。たとえば粉末である固体前駆体化合物は圧縮されてペレットを形成し得る。ペレット化前駆体化合物は、(ペレット化形でない)同じ前駆体化合物の層上の充填材料として使用され得る。
【0035】
別の実施形態において、本発明では使用条件下で固体前駆体化合物およびシリンダーに対して不活性であるならば、追加の利点を提供する充填材料、たとえば安定剤を利用できる。安定剤の例としては、これらに制限されないが、脱酸素剤(ゲッター)、熱安定剤、抗酸化剤、帯電防止剤、フリーラジカル除去剤、およびタグ付け(マーキング)剤が挙げられる。好適なゲッター物質としては、これらに制限されないが、化合物および酸素反応性金属、たとえばナトリウム、カリウム、リチウム、アルミニウム、インジウム、ガリウム、マンガン、コバルト、銅、バリウム、カルシウム、ランタン、トリウム、マグネシウム、クロムおよびジルコニウムの化合物を含有する調合物が挙げられる。1つの実施形態において、安定剤は非極性および不揮発性であるイオン塩の種の一員、たとえば有機アルミニウムと混合されたテトラオルガニルアンモニウム化合物;アルミニウム、インジウムおよびガリウムの塩;有機リチウム;マグネシウム、ジルコニウム、およびランタンのメタロセン;アルミニウム、インジウム、ガリウム、バリウム、ストロンチウムおよび銅のジピバロイルメタノナト(「dpm」)化合物ならびにアルミニウム、インジウム、ガリウム、バリウム、ストロンチウムおよび銅のヘキサフルオロアセチルアセトナト(「hfac」)化合物を含む、金属ベータジケトナートである。充填材料は、安定剤を含有してもよいし、またはそれ自体が安定剤であってもよい。
【0036】
充填材料は、広範囲に渡る形状、たとえばビーズ、ロッド、チューブ、馬蹄形、リング、鞍状、ディスク、皿形、または好適な他の形態、たとえば針状、十字形、およびらせん形(コイルおよびスパイラル)のいずれでもよい。充填材料は一般に、様々な供給源から商業的に入手可能である。充填材料はそのまま使用できるが、典型的には、使用前に洗浄される。
【0037】
たとえば0.05mm以上、たとえば5mmまで、またはなお大きい様々なサイズ(たとえば直径)を有する充填材料が使用され得る。充填材料のサイズの好適な範囲は0.1〜5mmである。充填材料は均一サイズであってもよいし、複数のサイズの混合物であってもよい。1つの実施形態において、充填材料のサイズは、実質的に前駆体化合物の粒子サイズと実質的に同じであるように、すなわち充填材料の平均サイズが前駆体化合物の平均粒子サイズの25%以内であるように選択される。典型的には、充填材料の平均サイズは、前駆体化合物の粒子サイズの20%以内、さらに典型的には15%以内、そしてなおさらに典型的には10%以内である。
【0038】
前駆体組成物は典型的には、固体前駆体化合物の層を供給装置に導入することと、それに続いて固体前駆体化合物層の表面上に充填材料の層を堆積することとによって調製される。固体前駆体材料は、任意の好適な手段によって供給装置に添加され得る。同様に充填材料は、任意の好適な手段によって固体前駆体化合物の上に層状化され得る。固体前駆体化合物をフリット化するときに、充填材料はフリット化工程の前、工程中間、または工程後に添加され得る。代替的な実施形態において、前駆体組成物は、固体前駆体化合物および充填材料の両方を供給装置に導入することと、それに続いて固体前駆体化合物の下層および充填材料の上層を提供する条件を供給装置に付すことによって調製される。「上層」は、キャリアガスが最初に通過しなければならない材料の層を指す。
【0039】
固体前駆体化合物の充填材料に対する体積比は、幅広い範囲、たとえば10:1〜1:10に渡って変化し得る。典型的には、体積比は1:4〜4:1の範囲である。
【0040】
前駆体化合物と反応しない限り、任意の好適なキャリアガスが本シリンダーによって使用され得る。キャリアガスの詳細な選択は、様々な因子、例えば幾つかある中でも特に、使用される前駆体化合物および利用される特定の化学気相堆積システムに依存する。好適なキャリアガスとしては、これに限定されるわけではないが、水素、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。キャリアガスは、広範囲に渡る流速にて本シリンダーによって使用され得る。かかる流速は、シリンダー断面寸法および圧力の関数である。より大きな断面寸法は、所与の圧力において、より高いキャリアガス流、すなわち線速度を可能にする。たとえばシリンダーが5cmの断面寸法を有するとき、最大500sccmおよびそれ以上のキャリアガス流速が使用され得る。シリンダーに流入する、シリンダーから流出する、またはシリンダーに流入とシリンダーから流出する双方のキャリアガス流は、制御手段によって調節され得る。任意の従来の制御手段、たとえば手動稼動式制御バルブまたはコンピュータ稼動式制御バルブが使用できる。
【0041】
供給装置は、様々な温度において使用されうる。詳細な温度は、使用される特定の前駆体化合物および所望の用途に依存する。温度は、前駆体化合物の蒸気圧を制御し、蒸気圧は特定の成長速度に必要な物質または合金組成物の流量を制御する。かかる温度選択は、十分に当業者の能力の範囲内である。たとえば前駆体化合物がトリメチルインジウムである場合、シリンダーの温度は10〜60℃であり得る。他の好適な温度範囲としては、35〜55℃、35〜50℃が挙げられる。本シリンダーは、各種の加熱手段によって、たとえばシリンダーを恒温浴に配置することによって、加熱油浴中へのシリンダーの直接浸漬によって、またはシリンダーを包囲する金属管、たとえば銅管内を流れるハロカーボン油の使用によって加熱され得る。
【0042】
キャリアガスは、典型的には、シリンダー上部にあるガス入口開口を通じてシリンダーに入る。キャリアガスは入口室に入り、充填材料の層を通過し、次に固体前駆体化合物の層を通過して、気化した前駆体化合物を捕捉し、キャリアガスと混合した気化前駆体化合物を含むガス流を形成する。キャリアガスによって捕捉された気化化合物の量は制御することができる。キャリアガスが気化前駆体化合物によって飽和されることが好ましい。キャリアガスはガス出口開口を通って供給装置から出ていき、化学気相堆積システムに向かう。二室化された供給装置の場合、前駆体化合物で飽和されたキャリアガスは、たとえば多孔性要素を通過することによって、入口室から出口室へ通過し、次にガス出口開口を通ってシリンダーから出る。1つの実施形態において、ガス出口は頂部閉鎖部にある。本発明の供給装置は、好適な任意の化学気相堆積システムによっても使用できる。
【0043】
固体前駆体化合物がシリンダーから消耗された後、充填材料はシリンダーに残る。かかる充填材料はリサイクルおよび再利用され得る。充填材料が安定剤、たとえば脱酸素剤を含む場合、かかる充填材料は適用可能ならば再利用前にリサイクルおよび再生され得る。典型的には、すべての充填材料は再利用前に洗浄される。
【0044】
図に関して、同様の参照番号は同様の要素を指す。図1〜5は二室シリンダーを示す。図1は、環状設計および円錐形状下部を有し、固体前駆体化合物および固体前駆体化合物上の充填材料の層を含む前駆体組成物を含有する、本発明の二室化された供給装置の断面図を示す。本実施形態において、細長円筒状コンテナ10は、シリンダー10の全長にわたって実質的に一定の断面を画定する内面11と、頂部閉鎖部15と、平坦内側下部17を有する底部閉鎖部16とを有する。頂部閉鎖部15は充填ポート18と、入口開口19と、出口開口20を有する。入口管12および出口管13は、シリンダーの頂部閉鎖部15において入口開口19および出口開口20にそれぞれ通じている。入口管12を通ってコンテナに入るキャリアガス流は、制御バルブCV1によって調節される。出口管13を通ってコンテナから出るキャリアガス流は、制御バルブCV2によって調節される。入口開口19の下端は、円錐形状下部21を有する入口室25に直接通じている。入口室25および出口室30は同心性であり、入口室25は出口室30内に位置し、多孔性要素14の手段によって流体連絡している。多孔性要素14は入口室の円錐部21の先端または底部に位置する。出口開口20は出口室30に直接通じている。固体前駆体化合物27、たとえばTMI、および固体有機金属化合物27上の充填材料26、たとえばシリカ、ホウケイ酸ガラス、またはアルミナの層を含む前駆体組成物が入口室25内に位置し、前駆体組成物は多孔性要素14の上に配置されている。
【0045】
キャリアガスは入口管12を通ってコンテナへ入り、そして固体前駆体化合物/充填材料組成物を含有する入口室25内に入る。キャリアガスは充填材料26の層を通過し、次に固体前駆体化合物27を通過して、気化した前駆体化合物を捕捉してガス流を形成する。ガス流は多孔性要素14を通って入口室25を出て、出口室30に入る。次にガス流は出口開口20を通って出口室30から出口管13中へ出て、次に化学気相堆積システムへ向けられる。
【0046】
図2は、非環状設計を有し、その上に配置された充填材料の層を有する固体前駆体化合物を含有する本発明の供給装置の断面図を示す。本実施形態において、細長円筒状コンテナ10は、シリンダー10の全長にわたって実質的に一定の断面を画定する内面11と、頂部閉鎖部15と、平坦内側下部17を有する底部閉鎖部16とを有する。頂部閉鎖部15は充填ポート18と、入口開口19と、出口開口20を有する。入口管12および出口管13は、コンテナの閉鎖部15において入口開口19および出口開口20にそれぞれ通じている。入口管12を通ってコンテナに入るキャリアガス流は、制御バルブCV1によって調節される。出口管13を通ってコンテナから出るキャリアガス流は、制御バルブCV2によって調節される。入口開口19の下端は、その外径に同心性である中心管31および円錐形状下部21を有する入口室25に直接通じている。入口室25および出口室30は、多孔性要素14の手段によって流体連絡している。多孔性要素14は、入口室の円錐部21の先端または底部に位置する。出口開口20は、中心管31の手段によって出口室30に通ずる。その上に配置された充填材料26、たとえばアルミナビーズまたはシリカビーズの層を有する固体前駆体化合物27、たとえばTMIの前駆体組成物が、入口室25内に位置し、前駆体組成物は多孔性要素14の上に配置されている。
【0047】
キャリアガスは入口管12を通ってコンテナへ入り、そして固体前駆体化合物/充填材料組成物を含有する入口室25内に入る。キャリアガスは最初に充填材料26の層を通過し、次に固体前駆体化合物27を通過して、気化した前駆体化合物を捕捉してガス流を形成する。ガス流は多孔性要素14を通って入口室25を出て、出口室30に入る。次にガス流は中心管31を通過して、出口開口20を通って出口室30から出口管13内へ出て、次に化学気相堆積システムへ向けられる。
【0048】
さらなる実施形態を、非同心性の入口および出口室を有し、その上に配置された充填材料の層を有する固体前駆体化合物を含有する、本発明の供給装置の断面図である図3に示す。本実施形態において、細長円筒状コンテナ10は、シリンダー10の全長に渡って実質的に一定な断面を画定する内面と、頂部閉鎖部15と、平坦内側下部を有する底部閉鎖部16とを有する。頂部閉鎖部15は充填ポート18と、入口開口19と、出口開口20を有する。入口管12および出口管13は、コンテナの閉鎖部15において入口開口19および出口開口20にそれぞれ通じている。入口管12を通ってコンテナに入り、出口管13を通ってコンテナを出るキャリアガス流は、制御バルブによって調節される。矢印はガス流の方向を示す。入口開口19の下端は入口室25に直接通じている。入口室25および出口室30は、入口室床9に位置する多孔性要素14の手段によって流体連絡している。出口開口20は出口室30と通じている。第2の多孔性要素33は出口開口20に位置する。充填材料26、たとえばシリカ、ホウケイ酸ガラス、またはアルミナの層を有する、固体前駆体化合物27、たとえばシクロペンタジエニルマグネシウムを含む前駆体組成物が入口室25内に位置し、前駆体組成物は多孔性要素14の上に配置されている。
【0049】
キャリアガスは入口管12を通ってコンテナへ入り、そして固体前駆体化合物/充填材料組成物を含有する入口室25内に入る。キャリアガスは最初に充填材料26を通過し、次に固体前駆体化合物27を通過して、気化した前駆体化合物を捕捉してガス流を形成する。ガス流は多孔性要素14を通って入口室25を出て、出口室30に入る。次にガス流は第2の多孔性要素33を通過して、出口開口20を通じて出口室30から出口管13内へ出て、次に化学気相堆積システムへ向けられる。
【0050】
さらなる実施形態が、円錐形状下部を有し、固体前駆体化合物および固体前駆体化合物上の充填材料の層を含む前駆体組成物を含有する、本発明の二室化された供給装置の断面図を示す図4に示されている。本実施形態において、細長円筒状コンテナ10は、頂部閉鎖部15と、平坦内側下部17を有する底部閉鎖部16とを有する。頂部閉鎖部15は充填ポート18と、入口開口19と、出口開口20を有する。入口管12および出口管13は、入口開口19および出口開口20とそれぞれ通じている。入口管12を通ってコンテナに入るキャリアガス流は、制御バルブCV1によって調節される。出口管13を通ってコンテナから出るキャリアガス流は、制御バルブCV2によって調節される。入口開口19の下端は入口多孔性要素9を含有し、円錐形状下部21を有する入口室25と直接通じている。入口室25および出口室30は、多孔性要素14の手段によって流体連絡している。多孔性要素14は、入口室の円錐部21の先端または底部に位置する。出口開口20は出口室30と直接通じている。固体前駆体化合物27、たとえばTMIおよび固体前駆体化合物27上の充填材料26、たとえばシリカ、ホウケイ酸ガラス、またはアルミナの層を含む前駆体組成物は、入口室25内に位置する。
【0051】
キャリアガスは入口管12を通じてコンテナへ入り、入口多孔性要素9を介して、固体前駆体化合物/充填材料組成物を含有する入口室25内へ入る。キャリアガスは充填材料26の層を通過し、次に固体前駆体化合物27を通過して、気化した前駆体化合物を捕捉してガス流を形成する。ガス流は多孔性要素14を通って入口室25を出て、出口室30に入る。次にガス流は出口開口20を通って出口室30から出口管13内へ出て、次に化学気相堆積システムへ向けられる。
【0052】
代わりの実施形態において、充填材料は安定剤、たとえば脱酸素剤を含む。充填材料が安定剤であるとき、充填材料の層は、キャリアガスが固体前駆体化合物に接触する前に、キャリアガスを乾燥および/または精製(たとえば酸素を除去)してもよい。追加の利点は、充填材料を固体前駆体化合物と混合することから得られる。たとえば固体前駆体化合物と脱酸素充填材料との混合は、蒸気/ガス流と充填材料との接触増大を提供し、このことは充填材料が前駆体化合物から酸素を除去する能力を向上させる。図5は、固体前駆体化合物28および安定剤充填材料29を含む混合組成物を含有する供給装置の1つの実施形態を示す。図5の残りの参照番号は、図1と同じ要素を指す。
【0053】
したがって本発明は:
a)ガス入口およびガス出口を有する上述の供給装置を提供する工程と;
b)ガス入口を通してキャリアガスを供給装置に導入する工程と;
c)キャリアガスを充填材料および固体前駆体化合物を通して流し、キャリアガスを前駆体化合物によって実質的に飽和させる工程と;
d)ガス出口を通して供給装置から化合物飽和キャリアガスを出す工程;
を含む、前駆体化合物で飽和されたキャリアガスより成る流体ガス流を化学気相堆積システムに供給する方法を提供する。典型的には、キャリアガスが気相中に前駆体化合物の十分な量を含有して、すなわち実質的に飽和されてCVD反応器内での膜成長に使用されるように、キャリアガスは十分な流速で充填材料および前駆体化合物を通過する。
【0054】
別の実施形態において、本発明は:
a)ガス入口およびガス出口を有する上述の供給装置を提供する工程と;
b)ガス入口開口を通してキャリアガスを入口室内に導入する工程と;
c)充填材料の層を通してキャリアガスを流し、固体前駆体化合物に接触させ、キャリアガスを前駆体化合物によって実質的に飽和させる工程と;
d)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを、入口室から入口室の床における多孔性要素を通して出口室内へ出す工程と;
e)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを、出口開口を通じて出口室から出させる工程;
を含む、前駆体化合物で飽和されたキャリアガスより成る流体ガス流を化学気相堆積システムに供給する方法を提供する。
【0055】
化学気相堆積システムは、典型的には、加熱された容器であって、その中で少なくとも1つの(可能ならば多く)の基体が配置される、堆積室を含む。堆積室は、副生成物を堆積室の中から引き出すため、及び適当である場合減圧を提供するための真空ポンプに典型的に接続される出口を有する。MOCVDは大気圧または減圧にて実施することができる。堆積室は、気化前駆体化合物の分解を誘起するために十分に高い温度に維持される。典型的な堆積室温度は、300〜1000℃であり、選択される的確な温度は、効率的な堆積を提供するために最適化される。任意に、基体が高温で維持される場合には、または他のエネルギー、たとえば無線周波(「RF」)エネルギーがRF源によって生成される場合には、堆積室内の温度を全体として低下させることができる。
【0056】
電子デバイス製造の場合における堆積のための基体の例としては、ケイ素、ヒ化ガリウム、およびリン化インジウムが挙げられる。他の材料を含む基体も好適に使用され得る。かかる基体は、集積回路の製造において特に有用である。
【0057】
堆積は所望の特性を有する金属膜を生成することが望ましい限り継続される。典型的には、膜厚は堆積が停止したときに、数百〜数千オングストローム以上となる。
【0058】
本発明によって:膜を堆積する方法であって
a)ガス入口およびガス出口を有する上記の供給装置を提供する工程と;
b)ガス入口を通してキャリアガスを供給装置に導入する工程と;
c)キャリアガスを充填材料および固体前駆体化合物に通して流し、キャリアガスを前駆体化合物によって実質的に飽和させる工程と;
d)ガス出口を通して供給装置から前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを出す工程と;
e)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを、基体を含有する反応容器に供給する工程と;
f)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを、前駆体化合物を分解するのに十分な条件に付し、基体上に膜を形成する工程;
を含む、膜を堆積する方法も提供される。
【0059】
さらに別の実施形態において、本発明は:
a)細長円筒形状部と、頂部閉鎖部と、底部閉鎖部と、流体連絡しており、入口室の床において多孔性要素によって隔てられた入口室および出口室とを有する二室容器を提供する工程であって、頂部閉鎖部が充填栓およびガス入口開口(充填栓およびガス入口開口は入口室と通じている)と、出口室と通じている出口開口とを有し、多孔性要素が底部閉鎖部から離隔され、入口室が床と、入口室内に包含された前駆体組成物とを有し、前駆体組成物が、固体前駆体化合物と、固体前駆体化合物の上に配置された充填材料の層とを含む、工程と;
b)ガス入口開口を通してキャリアガスを入口室に導入する工程と;
c)充填材料の層を通してキャリアガスを流し、固体前駆体化合物を接触させ、キャリアガスを前駆体化合物によって実質的に飽和させる工程と;
d)化合物飽和キャリアガスを、入口室から入口室の床における多孔性要素を通して出口室内へ出す工程と;
e)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを、出口開口を通して出口室から出させる工程と;
f)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを、基体を含有する反応容器に供給する工程と;
g)前駆体化合物で飽和されたキャリアガスを、前駆体化合物を分解するのに十分な条件に付し、基体上に膜を形成する工程;
を含む、膜を堆積する方法を提供する。
【0060】
本発明は様々なシステム圧で使用され得るが、本発明の利点は、特に≦10cmの直径を有するシリンダーに対して、より高い流速、より高い温度、より低い圧力またはより高い流速とより低い圧力の組合せを使用することができることである。本発明の供給装置は、充填された固体前駆体化合物/充填材料層状化組成物を流れる一貫した最大飽和度を備えた均質なキャリアガスを供給するさらなる利点を有する。
【0061】
以下の実施例は、本発明のさらなる様々な態様を示すことが期待される。
【実施例】
【0062】
比較実施例
図1に示す直径5cm(2インチ)のシリンダーにTMIを175g装填した。シリンダーには充填材料を添加しなかった。ガス流中の材料の濃度を時間の関数とし測定するEPISON III装置(Thomas Swanより入手可能)にシリンダーを取付けた。シリンダーを30℃および圧力80kPa(600mmHg)およびキャリアガス(水素)流速400sccmに維持した。流体流中のTMI濃度を2分間隔で140時間の期間に渡って測定した。流速および圧力はどちらも、評価の経過において一定であった。気相におけるTMIの濃度は、約140時間後に飽和レベル以下に降下を開始し、そのときに約60%の消耗に相当するTMI約70gがシリンダーに残った。
【0063】
実施例1
TMI(100g)を5cm(2インチ)UNI−FLO(商標)シリンダー(Rohm and Haas Electronic Materials LLC)に添加した。シリンダーへの添加前にTMIを微粉末に粉砕した。室温にて硬い表面上にシリンダーを静かにタッピングすることによって、シリンダーを攪拌して、実質的に平坦な表面を提供した。次にシリンダーを恒温浴中で30℃にて一晩(約12時間)静置することにより、TMIをフリット化した。新たに洗浄した乾燥石英フィルター(直径0.3mm、145g)をフリット化TMIに上層として配置した。
【0064】
流れ安定性および飽和蒸気流を測定するために、質量流コントローラ(mass flow controller)、圧力コントローラ、EPISON(商標)超音波モジュール、恒温浴、真空ポンプならびに連結バルブおよび配管より成る試験装置を組み立てた。シリンダーをシステム中に設置した。恒温浴を30℃に維持し、システム圧を80kPa(600mmHg)に維持し、水素キャリアガス流を400sccmに維持した。流速および圧力はどちらも、評価の経過において一定であった。水素中のTMI蒸気の安定濃度を超音波モニタによって測定されるように、120時間に渡って維持した。120時間後、88%の消耗に相当する12gのTMIがシリンダーに残った。
【0065】
実施例2
最初にTMIを3〜4mmの実質的に均一なサイズに粉砕することを除いて、実施例1の手順を反復する。一定の粒子サイズは、TMI粉末を精密ふるいに通過させることによって確保する。#5ふるいを通過したが#7ふるいに残った材料をシリンダーに移した。シリンダーを約45℃に加熱して、TMIの固体フリットを形成する。実施例1の同様の条件を使用すると、同様の結果が得られることが期待される。
【0066】
実施例3
2つの粒子サイズをシリンダーに導入することを除いて、実施例1の手順を反復する。#8および#10ふるいを使用してサイズ範囲2〜2.4mmの粒子を収集する。#45および#70ふるいを使用して粒径0.2〜0.4mmを収集する。実施例1で述べたようにシステムに取付けられたシリンダー中への導入前に、各粒子サイズの等量を混合する。次にシリンダーおよびその内容物を実施例1で使用した条件に付すと、同様な結果が期待される。
【0067】
実施例4
シリンダーの交互層に2つの粒子サイズを導入することを除いて、実施例1の手順を反復する。#8および#10ふるいを使用して、サイズ範囲2〜2.4mmの粒子を収集する。#45および#70ふるいを使用して、粒子サイズ0.2〜0.4mmを収集する。次に各粒子サイズの等量をシリンダー内の交互層で導入する。シリンダーは実施例1で述べたようにシステムに取付けられ、TMI蒸気の安定な濃度が期待される。
【0068】
実施例5
ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムを固体前駆体化合物フリットとして使用することを除いて、実施例4の手順を反復する。気相においてビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム蒸気の安定濃度が期待される。
【0069】
実施例6
四臭化炭素を固体前駆体化合物として使用することを除いて、実施例4の手順を反復する。25℃において四臭化炭素蒸気の安定濃度が期待される。
【0070】
実施例7
恒温浴を17℃に維持し、システム圧を40kPa(300mmHg)に維持して、水素キャリアガス流を600sccmに維持することを除いて、実施例1の手順を反復する。超音波モニタで測定されたように、水素中でのTMI蒸気の安定濃度が維持されることが期待される。
【0071】
実施例8−25
以下の固体前駆体化合物(「PC」)および充填材料(「PM」)を使用することを除いて、実施例1の手順を反復する。固体有機金属化合物がフリット化されるかどうかは、以下の表に「Y」=される、および「N」=されない、と示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表の組成物は、充填材料が使用されるシステムと比較して、前駆体化合物の一貫した安定な気相濃度を長期間に渡って提供することが期待される。
【0074】
実施例26
TMIの消耗に対する充填材料の層の効果を決定するために、実施例1の手順を反復した。各シリンダーは、以下の表に報告したようにTMIを装填した。石英充填材料の上層を含有しないシリンダー(試験I−IV)は比較試験であった。試験V−VIIで使用したシリンダーは、固体有機金属化合物の表面上に石英充填材料の層をそれぞれ含有した。各シリンダーは30℃の一定温度および80kPaのシステム圧に維持した。結果は下の表に報告され、充填材料の上層の添加によってTMI消耗はかなりの改善を示す。
【0075】
【表2】

【符号の説明】
【0076】
10 細長円筒状コンテナ、シリンダー
11 内面
12 入口管
13 出口管
14 多孔性要素
15 頂部閉鎖部
16 底部閉鎖部
17 平坦内側下部
18 充填ポート
19 入口開口
20 出口開口
21 円錐形状下部、円錐部
25 入口室
26 充填材料
27 固体前駆体化合物
28 固体前駆体化合物
29 安定剤充填材料
30 出口室
31 中心管
33 第2の多孔性要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体前駆体化合物と充填材料とを含む前駆体組成物を含む気相供給装置であって、充填材料が安定剤を含む、気相供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−82527(P2012−82527A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−14433(P2012−14433)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【分割の表示】特願2005−353257(P2005−353257)の分割
【原出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】