説明

供試体台

【課題】 測定条件に応じて供試体台を移動させても脚部をターンテーブルに収めることができる供試体台を提供する。
【解決手段】 供試体台10は、天板11、脚部17等によって構成される。天板11の下面11Bには後方に引出し可能な引出し部13が設けられ、引出し部13の下面13Bに円弧状の回転移動ガイド16が設けられる。脚部17は、天板11の左,右両側に設けられる。各脚部17は、前側回転部19と後側固定部20からなる下側脚部18と、後側回転部28と前側移動部29からなる上側脚部27とによって構成される。天板11を後方に移動させるときには、下側脚部18に対して、上側脚部27および天板11を後方に移動させる。このとき、後側回転部28と前側回転部19を天板11の中心側に向けて回転移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体(被測定物)の電磁計測を行うときに用いて好適な供試体台に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種の電子機器に対するノイズ測定(電磁計測)を行うときには、被測定物となる電気機器等を机形状の供試体台に載置した状態でノイズ測定を行う。この供試体台は、電磁波の反射が少ない材料を用いて形成され、平板状の天板と、該天板を支持する脚部とによって構成されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された供試体台では、天板はハニカム状または発泡体からなる絶縁体を用いて形成されると共に、この天板に脚部が一体に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−270468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放射エミッション測定用の電波無響室には、供試体(以下、EUTという)を回転させるためのターンテーブルと、測定用アンテナを上,下方向に走査させるためのアンテナポジショナとが設けられている。放射エミッションの測定時には、ターンテーブル上に供試体台が配置されると共に、供試体台の天板上にEUTが載置される。この状態で、EUTから一定の測定距離だけ離れた測定用アンテナを上,下方向に走査したり、ターンテーブルを回転させながら、EUTからの最大放射ノイズを測定する。
【0005】
ここで、例えばCISPR(Comite International Special des Perturbations Radioelectriques)のような放射エミッションの測定規格によれば、供試体台は、次の2つの測定条件で配置する必要がある。即ち、(A)ターンテーブルの回転中心上に天板の中心を合わせる、または(B)ターンテーブルの回転中心上に天板の前縁を合わせるように、供試体台を配置する必要がある。
【0006】
一方、測定規格であるCISPR22では、供試体台の天板の大きさが縦方向に1.5mで横方向に1.0mに決められている。これに加え、電波無響室の小型化等を図るために、ターンテーブルも例えば直径が1.5m程度のようにできるだけ小さいものが使用されることがある。この場合、CISPR22に応じた供試体台で、上述した2つの測定条件(A),(B)で放射エミッションを測定しようとすると、供試体台の脚部がターンテーブルからはみ出し、ターンテーブルを回転させることができなくなる。この結果、2つの測定条件(A),(B)に応じて、別個の供試体台が必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、測定条件に応じて供試体台を移動させても脚部をターンテーブルに収めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために請求項1の発明は、前,後方向および左,右方向に広がる天板と、該天板の左,右方向の両側に配設され該天板を支持する左,右の脚部とを備えた供試体台において、前記各脚部は、下側脚部と、該下側脚部の上側に位置して該下側脚部に対して前,後方向に移動可能に取付けられた上側脚部とによって構成され、前記天板は、前記上側脚部と共に前,後方向に移動可能となり、前記上側脚部は、後側に位置して前記天板の中心側に向けて回転移動可能な後側回転部を備え、前記下側脚部は、前側に位置して前記天板の中心側に向けて回転移動可能な前側回転部を備える構成としたことを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明では、前記天板の下面側には、前記上側脚部の後側回転部と共に前,後方向に移動可能な引出し部を設け、該引出し部には、前記後側回転部の回転移動をガイドする回転移動ガイドを設け、前記上側脚部は、前記後側回転部に加え、前記後側回転部の前側に位置して前記天板に取付けられ前記下側脚部に対して前,後方向に移動可能な前側移動部を備える構成としている。
【0010】
請求項3の発明では、前記下側脚部と前記上側脚部との間には、前記下側脚部に対して前記上側脚部が前,後方向に移動可能な状態で互いに係合する係合機構を設け、該係合機構は、前記上側脚部の後側回転部が前記下側脚部に対して後方に移動して所定の後部位置に配置されたときに、前記後側回転部と前記下側脚部とが非係合状態となり、前記後側回転部が回転移動可能となる構成としている。
【0011】
請求項4の発明では、前記後側回転部には、前側に位置して上,下方向に移動可能な係合ピンを設け、前記下側脚部には、前記後側回転部が前記後部位置に配置されたときに、前記係合ピンが挿入される係合穴を設け、前記後側回転部は、前記係合穴に挿入された係合ピンを支点として回転移動する構成としている。
【0012】
請求項5の発明では、前記下側脚部は、前記前側回転部に加え、前記前側回転部の後側に位置した後側固定部を備え、該後側固定部と前記前側回転部とには、これらが前,後方向に並んだ状態で前記前側回転部の回転移動を規制する回転規制部を設ける構成としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、天板は上側脚部と共に前,後方向に移動可能となるから、天板を前,後方向に移動させることによって、天板の中心をターンテーブルの回転中心上に合わせた状態から、天板の前縁をターンテーブルの回転中心上に合わせた状態に変更することができる。
【0014】
また、上側脚部は、後側に位置して天板の中心側に向けて回転移動可能な後側回転部を備える構成とした。このため、上側脚部が天板と共に前,後方向に移動して、脚部の後側がターンテーブルからはみ出すときでも、後側回転部を天板の中心側に向けて回転移動させることによって、上側脚部をターンテーブルの範囲内に収めることができる。
【0015】
さらに、下側脚部は、後側に位置して天板の中心側に向けて回転移動可能な前側回転部を備える構成とした。このため、上側脚部が天板と共に前,後方向に移動して、下側脚部の前側が天板よりも前方にはみ出すときでも、前側回転部を天板の中心側に向けて回転移動させることによって、下側脚部を天板の範囲内に収めることができる。
【0016】
これにより、測定条件に応じて天板を前,後方向に移動させることができると共に、天板の中心をターンテーブルの回転中心上から位置ずれさせたときでも、左,右の脚部をターンテーブルの範囲内に収めることができる。このため、単一の供試体台を用いて、2つの測定条件で放射エミッション等を測定することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、天板の下面側には、上側脚部の後側回転部と共に前,後方向に移動可能な引出し部を設けたから、上側脚部の後側回転部と引出し部を天板および前側移動部とは別個に前,後方向に移動させることができる。このため、例えば天板から引出し部が後方に引き出された状態となるように、上側脚部の後側回転部を移動させることができ、この状態で引出し部の下側で回転移動ガイドに沿って後側回転部を回転移動させることができる。
【0018】
これにより、天板から引き出された引出し部の下側で後側回転部を回転移動させることができるから、例えば天板上にEUTが載置された状態であっても、後側回転部に作用するEUTや天板の重量の影響を小さくすることができ、後側回転部を容易に回転移動させることができる。また、後側回転部の回転移動が終了した後に、天板および前側移動部を前,後方向に移動させることができ、後側回転部と一緒に移動させる場合に比べて、EUTの位置ずれを抑えることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、下側脚部と上側脚部との間には係合機構を設けたから、係合機構によって後側回転部の回転移動を規制した状態で、後側回転部を前,後方向に移動することができる。また、係合機構は、上側脚部の後側回転部が下側脚部に対して後方に移動して所定の後部位置に配置されたときに、後側回転部と下側脚部とが非係合状態となるから、この状態で後側回転部を天板の中心側に向けて回転移動させることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、後側回転部には係合ピンを設けると共に、下側脚部には、後側回転部が所定の後部位置に配置されたときに、係合ピンが挿入される係合穴を設けたから、後側回転部は、係合穴に挿入された係合ピンを支点として回転移動させることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、下側脚部は前側回転部と後側固定部とを備え、前側回転部と後側固定部とには回転規制部を設ける構成とした。このため、回転規制部によって前側回転部と後側固定部とが前,後方向に並んだ状態で前側回転部の回転移動を規制することができると共に、このように前側回転部と後側固定部とが前,後方向に並んだ状態でこれらに沿って上側脚部を前,後方向に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態による供試体台を電波無響室内に配置した状態を示す説明図である。
【図2】図1の供試体台を単体で示す斜視図である。
【図3】図2の供試体台を分解して示す分解斜視図である。
【図4】供試体台を図5の矢示IV−IV方向からみた断面図である。
【図5】図2の供試体台を示す右側面図である。
【図6】供試体台の引出し部を後方に引き出した状態を示す斜視図である。
【図7】供試体台を図8の矢示VII−VII方向からみた断面図である。
【図8】図6の供試体台を示す右側面図である。
【図9】係合ピン等を図8の矢示IX−IX方向からみた拡大断面図である。
【図10】第1,第2の回転規制機構を図8の矢示X−X方向からみた拡大断面図である。
【図11】供試体台の後側回転部を回転移動させた状態を示す斜視図である。
【図12】供試体台を図13の矢示XII−XII方向からみた断面図である。
【図13】図11の供試体台を示す右側面図である。
【図14】供試体台の天板を後方に移動させた状態を示す斜視図である。
【図15】供試体台を図16の矢示XV−XV方向からみた断面図である。
【図16】図14の供試体台を示す右側面図である。
【図17】供試体台の前側回転部を回転移動させた状態を示す斜視図である。
【図18】供試体台を図19の矢示XVIII−XVIII方向からみた断面図である。
【図19】図17の供試体台を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態による電磁計測用の供試体台を添付図面に従って詳細に説明する。なお、説明の便宜上、X軸方向を前,後方向とし、Y軸方向を左,右方向とし、Z軸方向を上,下方向とする。
【0024】
図において、電波無響室1は、例えば前,後,左,右の壁面1Aおよび天井面1Bに電波吸収体2が設けられる。この電波無響室1の内部には、電磁計測用のアンテナ3がアンテナポジショナ4によって上,下方向等に変位可能に設けられる。また、電波無響室1の床面1Cには、後述する供試体台10が載置されるターンテーブル5が設けられる。このターンテーブル5は、Z軸方向に延びる軸線O−Oを中心として水平状態で回転する。供試体台10上にはEUT6が載置されると共に、供試体台10の前方にはアンテナ3が配置される。なお、床面1Cにも電波吸収体2を設ける構成としてもよい。
【0025】
供試体台10は、図2ないし図19に示すように、後述の天板11、脚部17等によって構成される。また、供試体台10は、天板11、脚部17等を含めた全体が、比誘電率が1に近い非導電性材料として例えば硬質発泡体等を用いて形成される。
【0026】
天板11は、例えば四角形の平板状に形成され、前,後方向(X軸方向)および左,右方向(Y軸方向)に広がる。天板11は、所定の厚みを持って形成され、EUT6が載置される平坦な上面11Aと、脚部17によって支持される下面11Bと、前縁をなす前側面11Cと、後縁をなす後側面11Dと、左側面11Eと、右側面11Fとを備える。
【0027】
天板11の下面11Bには、左,右方向に離間して前,後方向に並行に延びる2本のスライドガイド12が形成される。スライドガイド12は、例えば天板11の下面11Bに凹陥された細長い溝によって形成され、後側面11D側が開放される。
【0028】
引出し部13は、天板11よりも前,後方向の長さが短い四角形の平板状に形成され、天板11の下面11B側に位置して、前,後方向(X軸方向)に移動可能に設けられる。引出し部13は、天板11と脚部17の後側回転部28との間に挟持され、後側回転部28と一緒に天板11の後方に引き出される。
【0029】
また、引出し部13の上面13Aには、天板11のスライドガイド12に係合する2本のガイド突起14が取付けられる。ガイド突起14は、前,後方向に延びる細長い突起によって形成され、スライドガイド12に挿入される。そして、ガイド突起14は、スライドガイド12と共に、引出し部13を前,後方向にスライド移動可能に案内する天板係合機構15を構成する。
【0030】
天板係合機構15により、引出し部13は、スライドガイド12に沿って前,後方向に移動し、天板11の下面11Bに全体が覆われた位置と、スライドガイド12に沿って天板11の後方に引き出された位置との間を移動する。
【0031】
引出し部13の下面13Bには、2本の回転移動ガイド16が設けられる。これら2本の回転移動ガイド16は、左,右方向(Y軸方向)に離間すると共に、例えば略90度の角度範囲をもった円弧形状をなしている。このため、各回転移動ガイド16は、一端側が引出し部13の後部側で例えばガイド突起14の下側に位置し、他端側が引出し部13の前部側で引出し部13の左,右方向の中央付近に位置している。また、各回転移動ガイド16は、例えば引出し部13の下面13Bに凹陥された細長い溝によって形成され、後側回転部28の回転移動をガイドする。
【0032】
脚部17は、左,右方向(Y軸方向)に離間して天板11の下面11B側に設けられる。これら2つの脚部17は、天板11の左,右方向の両側にそれぞれ配設され、天板11を支持する。各脚部17は、ターンテーブル5に設置される下側脚部18と、下側脚部18の上側に位置して下側脚部18に対して前,後方向(X軸方向)に移動可能に取付けられた上側脚部27とによって構成される。
【0033】
なお、左側の脚部17と右側の脚部17とは、左,右対称な構成となる。このため、以下では右側の脚部17を例に挙げて説明するが、左側の脚部17も右側の脚部17とほぼ同様な構成となる。
【0034】
下側脚部18は、前側に位置して天板11の中心側に向けて回転移動可能な前側回転部19と、前側回転部19の後側に位置してターンテーブル5に固定される後側固定部20とを備える。前側回転部19および後側固定部20は、いずれも細長いブロック体であり、例えば断面四角形の角柱状に形成される。前側回転部19の後端部と後側固定部20の前端部とは、連結部21によって連結される。後側固定部20の前端部には、左,右方向の内側(右側の後側固定部20では左側)に位置して、前側回転部19との干渉を防止するための円弧状の切欠きが設けられる。これにより、前側回転部19は、連結部21を支点として左,右方向の内側に向けて回転可能となる。
【0035】
前側回転部19と後側固定部20とには、これらが前,後方向に並んだ状態で前側回転部19の回転変位を規制する第1の回転規制部22が設けられる。図10に示すように、第1の回転規制部22は、例えば後側固定部20のうち左,右方向の外側(右側の後側固定部20では右側)に位置して前端部から前側に突出した突起22Aと、前側回転部19の後端部に凹陥され突起22Aが挿入可能な切欠き22Bとによって構成される。
【0036】
そして、前側回転部19と後側固定部20とが略直線状に並んだときには、突起22Aが切欠き22B内の端面に接触する。これにより、第1の回転規制部22は、前側回転部19と後側固定部20とが略直線状に並んだ状態を越えて、前側回転部19が回転移動するのを規制する。
【0037】
一方、前側回転部19と後側固定部20とが略直線状に並んだ状態から、前側回転部19が天板11の中心側に向けて回転移動すると、突起22Aは切欠き22Bから離れて、回転移動の規制が解除される。
【0038】
また、前側回転部19と後側固定部20とには、これらが略直交した状態で回転変位を規制する第2の回転規制部23が設けられる。第2の回転規制部23は、例えば後側固定部20のうち左,右方向の内側(右側の後側固定部20では左側)に位置して前,後方向(X軸方向)の途中位置から突出した突起23Aと、前側回転部19の後端部で突起23Aに接触可能な接触端面23Bとによって構成される。
【0039】
そして、前側回転部19と後側固定部20とが略直交した状態に屈曲したときには、突起23Aが接触端面23Bに接触する。これにより、第2の回転規制部23は、前側回転部19と後側固定部20とが略直交した状態を越えて、前側回転部19が回転移動するのを規制する。
【0040】
一方、前側回転部19と後側固定部20とが略直交した状態から、前側回転部19が前側に向けて回転移動すると、突起23Aは接触端面23Bから離れて、回転移動の規制が解除される。
【0041】
図2ないし図8に示すように、前側回転部19および後側固定部20の上面には、ガイド溝24,25が形成されている。これらのガイド溝24,25は、前側回転部19および後側固定部20が略直線状に並んだときに、連続した1本の長溝となり、上側脚部27を前,後方向(X軸方向)にスライド移動可能に案内する。ここで、前側回転部19のガイド溝24は、前側回転部19の前端側で閉塞され、後端側で開放されている。一方、後側固定部20のガイド溝25は、前,後方向の両端側がいずれも開放されている。また、ガイド溝25の底面には、後側固定部20のうち予め決められた所定の後部位置に略円形の係合穴26が形成される。
【0042】
上側脚部27は、後側に位置して天板11の中心側に向けて回転移動可能な後側回転部28と、後側回転部28の前側に位置して天板11に取付けられ下側脚部18に対して前,後方向(X軸方向)に移動可能な前側移動部29とを備える。後側回転部28および前側移動部29は、例えば平板状に形成されると共に、下側脚部18に載置可能となるように所定の厚みを有する。具体的には、後側回転部28および前側移動部29は、下側脚部18のガイド溝24,25の溝幅よりも大きな厚みを有する。
【0043】
後側回転部28は、下側脚部18と引出し部13とに挟まれ、引出し部13を水平状態に支持する。また、後側回転部28の前方下側には、下側脚部18が収容可能な略四角形の下側脚部収容部30が形成される。後側回転部28の後方下側には、下側脚部18と略同じ高さ寸法をもって垂下した後端支持部31が設けられる。そして、後側回転部28は、下側脚部収容部30の下面が下側脚部18の上面に接触すると共に、後端支持部31の底面がターンテーブル5に接触する。これにより、後側回転部28は、前端部が下側脚部18によって支持されると共に、後端部が後端支持部31によって支持される。
【0044】
後側回転部28の下側脚部収容部30の下面には、ガイド突起32が設けられる。ガイド突起32は、下側脚部収容部30の下面に沿って延びる細長い突起によって形成され、下側脚部収容部30の下面よりも下方に突出する。ガイド突起32は、下側脚部18(後側固定部20)のガイド溝25に挿入され、ガイド溝25に沿って前,後方向にスライド移動可能となる。
【0045】
そして、ガイド突起32は、下側脚部18のガイド溝24,25および前側移動部29のガイド突起41と共に、係合機構としての脚部係合機構33を構成する。このため、脚部係合機構33は、下側脚部18と上側脚部27との間に設けられ、下側脚部18に対して上側脚部27が前,後方向に移動可能な状態で互いに係合する。
【0046】
また、ガイド突起32は、後側回転部28の前,後方向の中央部付近から後方に向けて延び、後側回転部28の前部側には形成されない。これにより、後側回転部28が下側脚部18に対して後方に移動し、所定の後部位置に到達すると、ガイド突起32が全て後側固定部20のガイド溝25から抜け出す。このとき、後側回転部28と下側脚部18とは非係合状態となり、後側回転部28が回転移動可能となる。
【0047】
図8および図9に示すように、後側回転部28には、上,下方向(Z軸方向)に延びるピン収容穴34が形成される。ピン収容穴34は、後側回転部28の前部側に位置して下側脚部収容部30の下面に開口する。ピン収容穴34には、例えば略円柱状の係合ピン35が上,下方向に移動可能に取付けられる。係合ピン35は、下側脚部収容部30の下面から突出すると共に、その突出端には、ガイド溝24,25に挿入可能な円筒状のガイドローラ36が取付けられる。係合ピン35の先端は、ガイドローラ36よりも下方に向けて突出可能となる。
【0048】
また、後側回転部28には、一端側がピン収容穴34に連通し、他端側が左,右方向の外側(右側の後側回転部28では右側)に開口した窓部37が形成される。窓部37には、係合ピン35に取付けられたレバー38が挿入される。窓部37は、上,下方向に延びる。これにより、係合ピン35が上,下方向に移動したときには、レバー38も窓部37内で上,下方向に移動する。
【0049】
そして、後側回転部28が下側脚部18に対して後方に移動し、所定の後部位置に到達すると、係合ピン35と係合穴26とが位置合わせされ、係合ピン35は係合穴26に挿入される。これにより、後側回転部28は、係合穴26に挿入された係合ピン35を支点として回転移動可能となる。
【0050】
図2ないし図8に示すように、後側回転部28の上面には、上側に向けて突出した略円柱状のガイド突起39が設けられる。ガイド突起39は、引出し部13の回転移動ガイド16に挿入され、回転移動ガイド16と共に回転移動ガイド機構40を構成する。
【0051】
後側回転部28が所定の後部位置に到達すると、係合ピン35が係合穴26に挿入されるから、後側回転部28は係合ピン35によって回転可能に軸支される。このとき、回転移動ガイド機構40により、後側回転部28は、回転移動ガイド16に沿って回転移動し、後側固定部20に沿って前,後方向に延びる位置と、後側固定部20と交差して左,右方向に延びる位置との間を移動する。
【0052】
前側移動部29は、天板11のスライドガイド12よりも前側に位置して、天板11の下面に例えば接着等の接合手段によって固着される。前側移動部29は、後側回転部28のうち下側脚部収容部30が設けられた前部側と略同じ高さ寸法を有する。また、前側移動部29は、下側脚部18に沿って前,後方向(X軸方向)に延びると共に、天板11と下側脚部18とに挟まれる。これにより、天板11の前部は、前側移動部29および下側脚部18によって支持される。一方、天板11の後部は、引出し部13を介して後側回転部28および下側脚部18によって支持される。
【0053】
前側移動部29の下面には、後側回転部28のガイド突起32とほぼ同様なガイド突起41が設けられる。後側回転部28および前側移動部29が下側脚部18上で前,後方向に略直線状に並んだときには、ガイド突起32,41も略直線状に並ぶ。一方、前側回転部19と後側固定部20とが略直線状に並んだときには、ガイド溝24,25も略直線状に並ぶ。このとき、後側回転部28および前側移動部29は、ガイド溝24,25に沿って前,後方向にスライド移動可能となる。
【0054】
本実施の形態による供試体台10は上述のように構成されるものであり、次に供試体台10を用いたノイズ測定について説明する。
【0055】
まず、ターンテーブル5の回転中心(軸線O−O)上に天板11の中心を合わせた測定条件(A)における放射エミッションの測定を行う場合について説明する。図2、図4および図5に示すように、ターンテーブル5の回転中心上に天板11の中心を合わせた状態で、供試体台10をターンテーブル5上に載置する。次に、図1に示すように、供試体台10の天板11上にEUT6を載置する。この状態で、アンテナ3を上,下方向に走査したり、ターンテーブル5を回転させながら、EUT6からの最大放射ノイズを、アンテナ3を用いて測定する。
【0056】
ここで、測定条件(A)の場合、天板11の下側に、引出し部13全体が収容される。また、下側脚部18および上側脚部27を、前,後方向に略直線状に並べる。さらに、下側脚部18の上面全体を覆って、上側脚部27を配置する。これにより、左,右の脚部17は、いずれも前,後方向に広がった平板状をなし、その上側全体が天板11によって覆われる。また、図4に示すように、左,右の前側回転部19は、それぞれ前端面がターンテーブル5の軸線O−Oとほぼ同じ位置に配置される。
【0057】
次に、測定条件(B)における放射エミッションの測定を行うために、供試体台10を移動して、ターンテーブル5の回転中心上に天板11の前縁を合わせる手順について説明する。
【0058】
まず、第1工程として、図6ないし図8に示すように、左,右の後側回転部28と一緒に引出し部13を天板11の後方に引き出す。このとき、脚部係合機構33のガイド溝25とガイド突起32とによって後側回転部28は左,右方向の変位が規制されているから、下側脚部18に沿って真直ぐ後方に移動する。そして、後側回転部28の後端支持部31はターンテーブル5よりも後方にはみ出した位置に配置される。
【0059】
また、スライドガイド12とガイド突起14とからなる天板係合機構15によって、引出し部13も左,右方向の変位が規制されている。このため、引出し部13は、天板11に略平行な状態で真直ぐ後方に移動する。そして、後側回転部28が所定の後部位置まで移動すると、後側回転部28の係合ピン35が後側固定部20の係合穴26に位置合わせされ、係合ピン35は、その重量によって係合穴26内に落下する。このとき、ガイド突起32全体がガイド溝25から抜け出し、後側回転部28は、脚部係合機構33による係合状態が解除される。
【0060】
次に、第2工程として、図11ないし図13に示すように、左,右の後側回転部28を引出し部13の回転移動ガイド16に沿って回転移動させる。このとき、係合ピン35は係合穴26によって位置決めされているから、後側回転部28は、係合ピン35によって回転可能に軸支される。このため、後側回転部28は、回転移動ガイド機構40によって回転移動ガイド16に沿って天板11の中心側に向けて回転移動し、前,後方向から左,右方向に向けて斜めに傾斜した状態になる。これにより、後側回転部28の後端支持部31は再びターンテーブル5上に移動するから、後側回転部28全体がターンテーブル5の範囲内に配置される。
【0061】
なお、左,右の後側回転部28は、その大きさによって天板11の中心側で互いに干渉する。このため、左,右の後側回転部28のうちいずれか一方は、ターンテーブル5の回転中心に近い内側に配置され、他方は外側に配置される。このとき、左,右の後側回転部28のうちいずれを内側に配置してもよい。
【0062】
次に、第3工程として、図14ないし図16に示すように、天板11を前側移動部29と一緒に後方に移動させる。このとき、脚部係合機構33のガイド溝24,25とガイド突起41とによって前側移動部29は左,右方向の変位が規制されているから、下側脚部18に沿って真直ぐ後方に移動する。このとき、引出し部13は、後側回転部28と回転移動ガイド機構40とによって前,後方向の移動が規制される。このため、引出し部13は、徐々に天板11の下側に収容される。そして、前側移動部29全体が下側脚部18の後側固定部20に移動すると、引出し部13全体が天板11に覆われる。このとき、天板11の前側面11Cは、ターンテーブル5の回転中心上に配置される。
【0063】
次に、第4工程として、図17ないし図19に示すように、下側脚部17の前側回転部19を天板11の中心側に向けて回転移動させる。そして、前側回転部19が後側固定部20と略直交した状態になると、第2の回転規制部23によって前側回転部19の回転変位が規制される。
【0064】
以上の第1工程〜第4工程によって、供試体台10の天板11は、その前側面11Cは、ターンテーブル5の回転中心上に配置されると共に、左,右の脚部17が、ターンテーブル5の範囲内に配置され、かつ天板11の下側に収容された状態になる。
【0065】
この状態で、測定条件(A)の場合と同様に、アンテナ3を上,下方向に走査したり、ターンテーブル5を回転させながら、供試体台10上に載置したEUT6からの最大放射ノイズを、アンテナ3を用いて測定する。
【0066】
なお、測定条件(B)から測定条件(A)に変更する場合には、第1工程〜第4工程を逆に実行すればよい。ここで、第2工程から第1工程に移行するときには、窓部37から突出したレバー38を引き上げることによって、係合ピン35を係合穴26から抜き出せばよい。これにより、後側回転部28は下側脚部18に沿って前方に向けて移動可能となる。
【0067】
かくして、本実施の形態では、天板11は上側脚部27と共に前,後方向に移動可能となるから、天板11を前,後方向に移動させることによって、天板11の中心をターンテーブル5の回転中心上に合わせた状態から、天板11の前側面11Cをターンテーブル5の回転中心上に合わせた状態に変更することができる。
【0068】
また、上側脚部27は、後側に位置して天板11の中心側に向けて回転移動可能な後側回転部28を備える構成とした。このため、上側脚部27が天板11と共に前,後方向に移動して、脚部17の後側がターンテーブル5からはみ出すときでも、後側回転部28を天板11の中心側に向けて回転移動させることによって、上側脚部27をターンテーブル5の範囲内に収めることができる。
【0069】
さらに、下側脚部18は、後側に位置して天板11の中心側に向けて回転移動可能な前側回転部19を備える構成とした。このため、上側脚部27が天板と共に前,後方向に移動して、下側脚部18の前側が天板11よりも前方にはみ出すときでも、前側回転部19を天板11の中心側に向けて回転移動させることによって、下側脚部18を天板11の範囲内に収めることができる。
【0070】
これにより、測定条件に応じて天板11を前,後方向に移動させることができると共に、天板11の中心をターンテーブル5の回転中心上から位置ずれさせたときでも、左,右の脚部17をターンテーブル5の範囲内に収めることができる。このため、小型のターンテーブル5を用いるときでも、測定条件に応じて複数の供試体台を用意する必要がなくなる。これに加えて、測定条件に応じて供試体台10を速やかに移動させることができると共に、単一の供試体台10を用いて、2つの測定条件で放射エミッション等を容易に測定することができる。
【0071】
また、天板11の下面11B側には、上側脚部27の後側回転部28と共に前,後方向に移動可能な引出し部13を設けたから、上側脚部27の後側回転部28と引出し部13を、天板11および前側移動部29とは別個に前,後方向に移動させることができる。このため、例えば天板11から引出し部13が後方に引き出された状態となるように、上側脚部27の後側回転部28を移動させることができ、この状態で引出し部13の下側で回転移動ガイド16に沿って後側回転部28を回転移動させることができる。
【0072】
これにより、天板11から引き出された引出し部13の下側で後側回転部28を回転移動させることができるから、例えば天板11上にEUT6が載置された状態であっても、後側回転部28に作用するEUT6や天板11の重量の影響を小さくすることができ、後側回転部28を容易に回転移動させることができる。また、後側回転部28の回転移動が終了した後に、天板11および前側移動部29を前,後方向に移動させることができ、後側回転部28と一緒に移動させる場合に比べて、EUT6の位置ずれを抑えることができる。
【0073】
また、下側脚部18と上側脚部27との間には脚部係合機構33を設けたから、脚部係合機構33によって後側回転部28の回転移動を規制した状態で、後側回転部28を前,後方向に移動することができる。また、脚部係合機構33は、上側脚部27の後側回転部28が下側脚部18に対して後方に移動して所定の後部位置に配置されたときに、後側回転部28と下側脚部18とが非係合状態となるから、この状態で後側回転部28を天板11の中心側に向けて回転移動させることができる。
【0074】
さらに、後側回転部28には係合ピン35を設けると共に、下側脚部18には、後側回転部28が所定の後部位置に配置されたときに、係合ピン35が挿入される係合穴26を設けたから、後側回転部28は、係合穴26に挿入された係合ピン35を支点として回転移動させることができる。
【0075】
これに加え、下側脚部18は前側回転部19と後側固定部20とを備え、前側回転部19と後側固定部20とには第1の回転規制部22を設ける構成とした。このため、第1の回転規制部22によって前側回転部19と後側固定部20とが前,後方向に並んだ状態で前側回転部19の回転変位を規制することができると共に、このように前側回転部19と後側固定部20とが前,後方向に並んだ状態でこれらに沿って上側脚部27を前,後方向に移動させることができる。
【0076】
なお、前記実施の形態では、天板11に前,後方向に移動可能な引出し部13を設ける構成としたが、引出し部13を省く構成としてもよい。この場合、下側脚部18に対して、後側回転部28、前側移動部29および天板11を一緒に前,後方向に移動させると共に、天板11の下面に回転移動ガイド16を設けるものである。
【0077】
また、後側回転部28の回転移動を安定させるために、後側回転部28と引出し部13との間には、係合ピン35と対応した位置に上側の回転支持機構を設ける構成としてもよい。
【0078】
さらに、下側脚部18に上側脚部27を円滑に移動させるために、ガイド溝24,25の底面またはガイド突起32,41の下面にはローラ等を設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
5 ターンテーブル
10 供試体台
11 天板
13 引出し部
16 回転移動ガイド
17 脚部
18 下側脚部
19 前側回転部
20 後側固定部
22 第1の回転規制部(回転規制部)
26 係合穴
28 後側回転部
29 前側移動部
33 脚部係合機構(係合機構)
35 係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前,後方向および左,右方向に広がる天板と、該天板の左,右方向の両側に配設され該天板を支持する左,右の脚部とを備えた供試体台において、
前記各脚部は、下側脚部と、該下側脚部の上側に位置して該下側脚部に対して前,後方向に移動可能に取付けられた上側脚部とによって構成され、
前記天板は、前記上側脚部と共に前,後方向に移動可能となり、
前記上側脚部は、後側に位置して前記天板の中心側に向けて回転移動可能な後側回転部を備え、
前記下側脚部は、前側に位置して前記天板の中心側に向けて回転移動可能な前側回転部を備える構成としたことを特徴とする供試体台。
【請求項2】
前記天板の下面側には、前記上側脚部の後側回転部と共に前,後方向に移動可能な引出し部を設け、
該引出し部には、前記後側回転部の回転移動をガイドする回転移動ガイドを設け、
前記上側脚部は、前記後側回転部に加え、前記後側回転部の前側に位置して前記天板に取付けられ前記下側脚部に対して前,後方向に移動可能な前側移動部を備える構成としてなる請求項1に記載の供試体台。
【請求項3】
前記下側脚部と前記上側脚部との間には、前記下側脚部に対して前記上側脚部が前,後方向に移動可能な状態で互いに係合する係合機構を設け、
該係合機構は、前記上側脚部の後側回転部が前記下側脚部に対して後方に移動して所定の後部位置に配置されたときに、前記後側回転部と前記下側脚部とが非係合状態となり、前記後側回転部が回転移動可能となる構成としてなる請求項1または2に記載の供試体台。
【請求項4】
前記後側回転部には、前側に位置して上,下方向に移動可能な係合ピンを設け、
前記下側脚部には、前記後側回転部が前記後部位置に配置されたときに、前記係合ピンが挿入される係合穴を設け、
前記後側回転部は、前記係合穴に挿入された係合ピンを支点として回転移動する構成としてなる請求項3に記載の供試体台。
【請求項5】
前記下側脚部は、前記前側回転部に加え、前記前側回転部の後側に位置した後側固定部を備え、
該後側固定部と前記前側回転部とには、これらが前,後方向に並んだ状態で前記前側回転部の回転移動を規制する回転規制部を設ける構成としてなる請求項1ないし4のいずれかに記載の供試体台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−88175(P2013−88175A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226816(P2011−226816)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】