価値担持書類及び価値担持書類作成方法
【課題】 価値担持書類(1)、及び、価値担持書類(1)の作成方法を提供する。
【解決手段】 価値担持書類(1)は、紙材からなるキャリヤ(2)と、一つ以上のセキュリティー機能(51、52)及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層構成及びキャリヤ膜を有し、該キャリヤに圧着される積層膜(3)とを具備する。該積層膜(3)は該積層膜(3)の強度を低減するための所定の中断個所を備える。
【解決手段】 価値担持書類(1)は、紙材からなるキャリヤ(2)と、一つ以上のセキュリティー機能(51、52)及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層構成及びキャリヤ膜を有し、該キャリヤに圧着される積層膜(3)とを具備する。該積層膜(3)は該積層膜(3)の強度を低減するための所定の中断個所を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙材からなるキャリヤと、一つ以上の光学セキュリティー機能を有する装飾層及びキャリヤ膜を有し、該キャリヤに圧着される積層膜とを備える価値担持書類に関し、ならびに、そのような価値担持書類の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
価値担持書類の偽造防止性を高めるために、例えば、光学セキュリティー機能を有するホットスタンプフィルムを紙幣またはビザに圧着することが知られている。ホットスタンプフィルムが価値担持書類に圧着される際、キャリヤ膜ではなく、ホットスタンプフィルムの転写層のみが転写される。転写層の層アレイの厚さは一般的に6〜12μmなので、圧着作業は比較的低温・低圧で行うことが可能である。つまり、ホットスタンプ作業の間、また、ホットスタンプ作業実施後の冷却処理の際には、低い熱応力しか生じないので、価値担持書類及び層アレイを構成する複合材料において、せいぜい最小限の変形しか生じない。転写層の特性を好適にすることによって、価値担持書類及び転写層の層アレイを構成する複合材料の熱応力を更に最小限に抑えることができる。
【0003】
一般的に、転写層は、キャリヤとは全く異なった物理的性質(熱伝導率、熱容量、熱膨張など)を持つ金属層、ラッカー、及び接着剤から成る。
【0004】
転写された層アレイは厚さが薄く、また元来、安定性が低いので、転写後、圧着されたホットスタンプフィルムの転写層を、破損させずに価値担持書類からはがすのはほぼ不可能である。つまり、原本からホットスタンプフィルムの転写層をはがし、はがした層アレイを偽造書類に圧着して偽造書類を作成することは非常に困難である。
【0005】
また、積層膜を使って、光学セキュリティー機能を紙幣に持たせることが知られている。ホットスタンプフィルムとは対照的に積層膜は、紙幣上に転写される膜本体において、例えば厚さ19〜50μmのポリエステル膜からなり、積層膜にある程度の固有の機械的安定性を与えるキャリヤ膜を有する。欧州特許第0723501B1には、紙幣のペーパーキャリヤに開口部を形成し、少なくとも開口部周辺の領域を覆いうる透明なカバー膜を用いてその開口部を再び閉じることが開示されている。その場合、カバー膜は、透明キャリヤ膜および該透明キャリヤ膜にしっかりと付着する装飾層を含む積層膜を構成する。そのような構成において、装飾層は、少なくとも開口部周辺領域において少なくとも領域レベルで透明なラッカー層を有する。その場合、光回折効果を有し、光学セキュリティー機能を提供する回折構造が、上記ラッカー層に形成される。
【0006】
価値担持書類に積層膜を圧着することにより、一回の圧着作業で複数のセキュリティー機能を転写することが可能となり、また、その他の機能をスタンプ工程を介して書類上に転写することが可能となる。このことは、特に、開窓部付き価値担持書類の作成だけでなく、電気的機能付き価値担持書類の作成、例えば、集積回路、アンテナ及びディスプレイ付き書類の作成においても効果を発揮する。積層膜はそのキャリヤ膜の機械的安定性が、圧着作業においては優れた加工性を保証する一方、圧着後の書類上における層アレイの安定化を保証するので、ホットスタンプフィルムよりも上記使用目的に適している。また、積層膜のキャリヤ膜は、環境の影響および改竄の試みから書類を保護する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、積層膜を紙基材に圧着する際、ホットスタンプフィルム圧着時よりも、相当高い温度および圧力が必要となる。膜と基材は熱膨張係数が互いに異なるが、それらをその違いが顕れる程度にまで加熱すると、冷却が始まる時に高い熱応力が誘発されることとなり、結果として、膜及び基材からなる複合体に歪みを招き、それにより、価値担持書類を平坦に置くことができなくなる場合がある。さらにまた、例えば、用紙を積み重ねる際の取扱いや加工が困難になる場合がある。
【0008】
さらに、欧州特許第0748286B1から、例えば、シリアル番号のような個別のパターンが印刷された小切手、紙幣又はクレジットカードのキャリヤに、レーザービームを用いて穴のあいたパターンを導入することも知られている。印刷された個体識別可能化パターンは、穿孔によって形成された個体識別可能化パターンと同様に人間の目で認識され得る。穴のあいたパターンと印刷されたパターンは、偽造を簡単に見つけられるよう、同様の文字を有している。その場合、結果得られる穴を埋めることはほぼ不可能なので、価値担持書類を偽造することは特に難しい。
【0009】
そこで、本発明は、積層膜を圧着し、改良された価値担持書類、及び、そのような価値担持書類の作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、紙材からなるキャリヤと、一つ以上のセキュリティー機能及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層及びキャリヤ膜を有し、該キャリヤに圧着される積層膜とを備える価値担持書類によって達成され、該価値担持書類において、該積層膜はその強度を低減するために所定の中断個所を備える。
【0011】
さらに、上記目的は、一つ以上のセキュリティー機能及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層及びキャリヤ膜を有する積層膜が、紙材からなる価値担持書類のキャリヤに圧着されている価値担持書類の作成方法によって達成され、該作成方法において、該積層膜はその強度を低減するために所定の中断個所を備える。
【0012】
本発明によれば、上述したように、価値担持書類のキャリヤに圧着された積層膜は所定の中断個所を備えることが提案されている。それにより、積層膜をキャリヤに圧着する際に生じる熱応力が吸収され、膜-紙基材の歪みが防止される。さらに、改竄の試みはますます難しくなる。積層膜は元来、それに使用されるキャリヤ膜が機械的安定性に優れているため、ホットスタンプフィルムと比べて機械的安定性に優れているが、該所定の中断個所によってその機械的安定性は弱められる。そのため、その後、圧着された積層膜を破損させずに価値担持書類からはがすことはほぼ不可能となる。従って、原本から積層膜をはがし、はがした積層膜を偽造書類に圧着して偽造書類を作成することはほぼ不可能となる。すなわち、圧着特性に優れ、改竄に対する高度な保護を可能とするホットスタンプフィルムの利点と、高度なセキュリティー機能を実現しうる積層膜の特性とを、本発明により組み合わせることが可能となり、また本発明により、該作成方法及び価値担持書類の偽造防止性の両方を改善することが可能となる。
【0013】
この場合、装飾層に含まれるセキュリティー機能は、光学的に識別可能なセキュリティー機能であることが好ましい。しかしながら、それらのセキュリティー機能は、例えば、装飾層を構成する磁気性又は導電性の層によって提供される、磁気性又は導電性のセキュリティー機能のような、機械で読み取り可能なセキュリティー機能であってもよい。加えて、上記セキュリティー機能は、無線によって始動することができるセキュリティー機能、又は、例えば、蛍光素子によって形成されるセキュリティー機能であってもよい。電気的機能を持つ構成部品としては、例えば、アンテナ、コイル、キャパシタンス、及び、トランジスタのような能動部材、といった電気又は電子部材を用いることが好ましい。
【0014】
本発明の有利な展開が付随の特許請求の範囲で定義される。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、積層膜の一つ以上の層に穴をあけるか、又は、それらを部分的に切断することによって、所定の中断個所の領域における、積層膜の強度及び機械的安定性は低減する。その場合、該所定の中断個所はレーザー照射によって生成されることが好ましい。そのために、積層膜の一つ以上の層は、レーザーを利用した溶融、蒸発又は分解によって、所定の中断個所の領域において、少なくとも部分的に除去される。それにより、一方では非常に小径の所定の中断個所を生成でき、他方ではコンタクトが少なく摩耗を伴わない手段で作業を実行することができるという利点が得られる。
【0016】
さらに、レーザービームの好適な制御、例えば、積層膜上の位置決めマークを参照することによって、正確な位置あわせに基づく処理が実施可能であることにより、利点が得られる。上述のように、所定の中断個所は積層膜のセキュリティー素子のパターン領域との間で正確な位置関係を持って生成され、積層膜のセキュリティー機能デザインに組み込まれる。
【0017】
従って、例えば、積層膜に存在する脱金属化領域との正確な位置関係を持って所定の中断個所を生成することが可能である。そしたまた、レーザーで積層膜の金属塗膜を部分的に除去できる場合、所定の中断個所を脱金属化デザインに組み込むこと、又は、該所定の中断個所によって脱金属化される領域を形成することが可能である。
【0018】
さらに、レーザーを利用することにより、人間の目の分解能以下の直径(好ましくは50μm未満の直径)の微小な穿孔を、積層膜の所定の中断個所の領域に設けることができる。しかも、該所定の中断個所を、少なくとも入射光によっては、見る者にとって認知できないものとすることができる。
【0019】
さらに、人間の目の分解能範囲内ではあるが非常に小径のレーザービームを利用することにより、例えば、マイクロスクリプトの形式で、従来の方法では達成し得なかった精度で、積層膜に光学的に識別可能な穿孔パターンを形成することが可能である。そのような穿孔パターンは、積層膜の金属層をレーザービームによって切断することにより、とりわけ簡単に識別することができる。その場合、当該穿孔パターンを、セキュリティー素子の脱金属化デザインに組み込むことも可能である。
【0020】
また、せん断切断又は穴形成などの機械的方法で、所定の中断個所を積層膜に導入することが可能である。積層膜の一つ又は複数の層を上記のような機械的方法によって切断、又は、切り込むことにより、該所定の中断個所の領域における、積層膜の強度が低減される。それにより、積層膜のキャリヤ層が切り込まれるが打ち抜かれない程度に、工具を調整することが可能である。
【0021】
本発明のさらに好適な実施形態によれば、積層膜の一つ又は複数の層の物理的性質を部分的に変化させることで、所定の中断個所の領域における、該積層膜の強度が低減される。これは、例えば、該積層膜の一つ又は複数の層に化学変化を引き起こす電磁放射線を積層膜に部分的に照射することで実施可能である。
【0022】
所定の中断個所の領域においてキャリヤ膜を切断することで、該所定の中断個所の領域における積層膜の強度を低減することが好ましい。従って、例えば、キャリヤ膜は、所定の中断個所の領域において溶融又は蒸発により部分的に除去されるレーザー放射吸収材を含む。さらに、キャリヤ膜は、所定の中断個所の領域において、該キャリヤ膜を完全には分断しない止まり穴を設けることが可能である。そうすることにより、該止まり穴の領域における、積層膜の強度が大幅に低減される一方で、キャリヤ膜は、所定の中断個所の領域において、その下方に配置される装飾層の保護層としての機能をなお果たすことができる。さらにまた、上記手順に従うことで、止まり穴の深さを調整し、積層膜の機械的性質に具体的目標に合わせた影響を与えることが可能である。
【0023】
その場合、キャリヤ膜の表面、すなわち、見る者に向かう表面が平面を成すように、紙材で構成されるキャリヤに向かうキャリヤ膜側に、止まり穴が設けられることが好ましい。装飾層が好適な構成で成る場合、止まり穴は、上述のように、光学的に隠蔽されたままであり、上述の可能性と比較して、積層膜の耐摩耗性及び耐候性は増大する。
【0024】
所定の中断個所の領域に、紙キャリヤに対向する積層膜の層が穿孔を備えることにより、さらに有利な効果が得られる。積層膜を紙材からなるキャリヤに圧着させる前に、所定の中断個所の領域において、キャリヤに対向する側から積層膜に止まり穴を形成する場合、積層膜の圧着時に紙キャリヤの紙繊維が止まり穴内で連結される。それにより、紙キャリヤと積層膜との接着が向上する。
【0025】
本発明の好適な実施形態によれば、所定の中断個所によって積層膜の強度を弱めることにより、積層膜の機械的性質が、紙キャリヤの機械的性質に適合するように、所定の中断個所の配置及び寸法が選択される。所定の中断個所の断面、寸法、外形、配置及び間隔にとって好適な構成により、膜の強度を調整することが可能であり、それにより、それらの加工性が維持される一方、熱的又は機械的影響による、積層膜及び紙キャリヤ間の応力の発生を回避することが可能である。このように、例えば、所定の中断個所による積層膜に対するその強度の弱体化効果によって、積層膜の膨張係数は紙キャリヤの膨張係数以上となり、積層膜が圧着される価値担持書類の領域と、積層膜が圧着されない領域との間に歪みが生じないといった利点が得られる。さらに、該膜の強度は、該膜がその圧着前にダメージを受けずにはがせないものの、その加工性は維持されるように、調整されることが好ましい。
【0026】
積層膜において、圧着工程後の冷却時に生じる応力を低減可能とするために、所定の中断個所を、膨張方向における線上、又は、膨張方向に対して直角な線上に配置することが有利であることが判明した。積層膜が短冊形状である場合、歪みの発生を確実に防ぐために、所定の中断個所は短冊の長手方向において、一つ又は複数の線上に配置されることが好ましい。
【0027】
所定の中断個所を生成する作業は、積層膜を価値担持書類に圧着する前、すなわち、成膜の間に実行することが好ましい。あるいは、所定の中断個所を生成する作業は、膜を書類に圧着する直前又は圧着した直後に圧着機によって実行することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下において、本発明を、一例として、複数の実施形態を用い、添付の図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1に、例えば、紙幣、ビザ、身分証明書類、又は、ソフトウェア証明書などの、価値担持書類1を示す。価値担持書類1は、図1に示すように、短冊形状の積層膜が圧着され、パターン4が重ね刷りされたキャリヤ2を具備する。
【0030】
キャリヤ2は、紙材からなり、約100μmの厚さを有する。この点で、キャリヤ2上には、公知の方法で、セキュリティー素子、例えば、透かし模様又はセキュリティープリントを施すことが可能である。キャリヤ2には、例えば、スタンピングによって、窓状の開口部22がさらに形成され、該開口部は積層膜3により閉じられる。
【0031】
積層膜3は、二つのセキュリティー機能51、52を有し、その内のセキュリティー機能52は、該窓状開口部22の領域に配置される。この場合、積層膜3の圧着領域において価値担持書類1が厚くならないように、積層膜3はキャリヤ2の凹部に圧着されることが好ましい。そうすることにより、価値担持書類1の積み重ね性さらにまた加工性が、積層膜3の圧着によって、悪影響を受けないことが保証される。この場合、凹部21は、紙の生産工程において、キャリヤ2に形成することができるが、スタンピング作業や、積層膜3の圧着時にキャリヤ2に加えられる圧力、及び、結果生じる紙材の部分圧縮によっても凹部は形成することができる。
【0032】
図1に示すように、積層膜3は、線61上に配置される所定の中断個所を備え、該中断個所は、積層膜3のキャリヤ2への圧着前に、せん断切断、又は、穴あけなどの機械加工によって、しかし好ましくは、レーザー照射によって、積層膜3に形成される。
【0033】
図2は、セキュリティー機能51、52の領域における、積層膜3の構造を示す。
【0034】
積層膜3は、接着層31、キャリヤ膜32、ならびに、接着層33、二つのラッカー層34、35、および接着層36を有する装飾層構成30を、この層順序で備える。
【0035】
接着層31、33および36は、0.2〜2μm、好ましくは、0.5〜1.2μmの厚さを有する。後工程である、圧着された積層膜の重ね刷りが省略される場合、接着層31を省略することが可能である。接着層36は、圧着時に積層膜3を紙キャリヤ2上に確実に接着させる、熱活性化可能な接着剤層であることが好ましい。また一方で、接着層36は、UV-架橋性接着剤層を含むこともできる。
【0036】
キャリヤ膜32は、厚さ12〜50μm、さらに好ましくは、25〜50μmの、プラスチックフィルム、好ましくは、ポリエステル又はポリカーボネートフィルムである。キャリヤ膜32は、積層膜3に対して、例えば、窓状開口部22を閉じる際の機械的負荷に耐えるのに必要な、機能的に必須の、元来の機械的安定性を与える。
【0037】
ラッカー層34は、厚さ0.8〜2μmの複製ラッカー層であり、ラッカー層中に、領域レベルで回折構造38が形成される。上述のように、ラッカー層34は、例えば、熱により変形可能なベースラッカー層を含み、その中で、例えば、さまざまなホログラフィック表示やキネグラム(登録商標)を生成する互いに異なる回折構造が、セキュリティー機能51、52の領域において、加熱したスタンプ・パンチを用いて形成される。セキュリティー機能52の領域において、回折構造38は、部分的に金属より成る塗膜39を備え、それにより、反射・回折セキュリティー機能が与えられることとなる。ここで、金属化は、例えば、真空中で圧着される、アルミニウム、クロム、金、又は、銀を含む。金属塗膜の代わりに、好適な誘電体、例えば、TiO2やZnSを含む、HRI又はLRI層(HRI=高屈折率;LRI=低屈折率)を、反射増幅層として、ラッカー層34に圧着することも可能である。
【0038】
次に、ラッカー層35が、保護ラッカー層として圧着される。セキュリティー機能51の領域において、複製ラッカー層と保護ラッカー層との間に、領域方向に配備されているのは、さらに着色されたラッカー層37であり、それは、パターン形状に圧着され、更なる装飾素子として機能する。ラッカー層35を省略することも可能である。
【0039】
ここでは、UV-架橋性複製ラッカー層をラッカー層34として使用することもでき、また、UV複製プロセスを用いて、回折構造38をラッカー層34に形成することもできる。さらに、開口部22の領域に、透明回折セキュリティー機能を配備することもできる。その場合、不透明な金属塗膜39は省かれ、該金属塗膜はむしろ透明であるか、あるいは、金属塗膜39は完全に省かれる。また、ラッカー層35に使用する材料は、ラッカー層34とは大きく異なる屈折率を有するものである。
【0040】
次に、図3aは、原寸に忠実ではないが、窓状開口部22の領域における価値担持書類1の断面図を、キャリヤ2、凹部21、及び、パターン4が重ね刷りされた積層膜3と共に示す。金属層39を備える回折構造38によって得られるセキュリティー機能が透明な窓で囲まれるよう、キャリヤ膜22、接着層31、33、36、および、ラッカー層34、35は透明である。図3aから判るように、全側面において開口部22の向こう側へ突出する積層膜3によって該開口部が閉じられ、十分に大きな面積の接着領域23において、積層膜3がキャリヤ2に接着される。
【0041】
さらにまた、上記回折セキュリティー素子の代わり又はそれに加えて、干渉層又は(コレステリック)液晶層を用いて、視角に依存する色ずれを実現する薄膜層構造を、積層膜3の装飾層30に取り込むことが可能である。また、当該セキュリティー素子の代わり又はそれに加えて、例えば、集積回路、アンテナ、ディスプレイなどの電気機能を、積層膜3の装飾層30に組み込むことも可能である。
【0042】
従って、図3bは、例えば、光学的に識別可能な回折セキュリティー機能の他に、RF識別回路(RF=無線周波数)が装飾層30に組み込まれた、価値担持書類1の領域を示す。該領域において、積層膜3は、図2に示すように、接着層31、33、36、ラッカー層34、35、および、金属塗膜39を備える回折構造38を有する。また、ラッカー層34、35の間に、アンテナ42、接着剤層41、電子回路43が導入される。アンテナ42は、例えば、異方性の導電接着層41により電子回路43に結合する、部分的に金属より成る塗膜を備える。キャリヤ膜32は、電子回路43を安定させ、同時に環境の影響および改竄の試みから保護する。図3bに示すように、電子回路43の領域において、積層膜3の圧着時に、別の凹部が紙キャリヤ2に形成され、それにより、電子回路43の領域に、価値担持書類1に対して平らな面が実現する。
【0043】
図1に示すように、所定の中断個所は、膜方向において互いに平行な線61上に配置される。さらに、図4aおよび図4bに示すように、円形の断面を持つ所定の中断個所62が、線61に沿って積層膜3に導入され、キャリヤ32と積層膜3の装飾層30との両方を完全に切断する。積層膜の強度は、関連する断面、寸法、外形、及び、配置、つまり、所定の中断個所62同士の間隔に関するデザインによって定められる。その点に関して、高熱負荷を伴う圧着工程中と通常環境の影響下との双方において、積層膜の膨張係数及び熱膨張が、それぞれ、紙キャリヤの膨張係数及び熱膨張以上となるように、積層膜の強度が設定されることが好ましい。さらに、積層膜が剥離不可能(つまり、積層膜と紙キャリヤと間の接着力が、積層膜の引き裂き強度より大きい)であるにもかかわらず、なお加工に十分な安定性を有するように、積層膜の強度が調整される。以上のように、所定の中断個所62の構成・配置の双方が、積層膜3の膜特性、キャリヤ2の基質特性、そして、積層膜3をキャリヤ2に圧着する際に実施される圧着工程の特性によって決定される。その点に関して、特に重要な要因としては、キャリヤ膜の材料の種類、キャリヤ膜3の熱容量、キャリヤ膜の熱伝導率、キャリヤ膜の膨張係数、キャリヤ膜の厚さ、装飾層構成の層順序と層組成、及び、装飾層構成の熱容量、熱伝導率と膨張係数が挙げられる。さらに、キャリヤ2の材料の種類、熱容量、熱伝導率、膨張係数、厚さ、及び、表面粗さは、特に重要である。さらにまた、圧着方法の種類、及び、圧力、温度、接触時間などの工程パラメータは特に重要である。キャリヤ2及び積層膜3の層の熱容量、熱伝導率、厚さ、及び、圧着工程に関係する圧力、温度、接触時間によって、圧着工程時に積層膜の層と基材との間に生じる熱差が決定され、それは次に、積層膜3とキャリヤ2のそれぞれの熱膨張係数に基づいて、熱膨張を決定する。そのようにして、各使用状況に対応した、所定の中断個所の最適なデザインが、そのような複雑な関係に基づいた試験によって解明されることが好ましい。
【0044】
所定の中断個所62を形成するため、図4cに示すように、レーザービームは、装飾層構成30側から、該装飾層構成の層33乃至36、及び、キャリヤ膜32に作用し、該レーザービーム照射領域において、溶融、蒸発、又は、分解により、それらの層が除去されるように作用する。その点に関して、上記のようなやり方で材料を除去するためには、キャリヤ膜32、及び、装飾層構成30の少なくとも一部の層が、レーザー照射を吸収する必要がある。それは、材料の温度上昇、及び、材料除去を引き起こすエネルギーの吸収にも関係している。
【0045】
この場合において、層31乃至36の除去に使用可能なレーザービーム源は以下の通りである。
レーザー 波長 動作モード
CO2レーザー 10.6μm cw、パルス
Nd:YAGレーザー 1.064μm、532nm、355nm cw、パルス
ダイオードレーザー 650〜950nm cw、パルス
エキシマーレーザー 157nm、193nm、248nm、308nm、351nm パルス
キャリヤ膜32がポリエステルキャリヤを備える場合、ポリエステルの分光透過特性を考慮して、308nmまたはそれ未満の波長を持つエキシマーレーザー、及び、CO2レーザーがふさわしい。Nd:YAGおよびダイオードレーザーの放射線は、ポリエステルを透過しても、せいぜい装飾層構成の層アレイと相互作用し、該層アレイを除去することしかできない。
【0046】
また、吸収体(例えば、TiO2)の添加、又は、結合剤構造における変化によって、Nd:YAGまたはダイオードレーザーの波長領域における吸収を実現することも可能である。その点に関して、装飾層構成における吸収剤層または吸収性のものに変化した層は、できる限りキャリヤ膜の近くに配置されることが好ましい。吸収されたレーザー照射は該層の温度を上昇させ、それに応じて、その上に配置されている層も、液状化、ガス発生、蒸発によって除去することができる。
【0047】
その点に関して、図4cに示すような貫通孔ではなく、図5aおよび図5bに示すような、積層膜3の止まり穴が結果として得られるように、レーザービームのパラメータ、つまり、強度および照射時間が調整されるならば、特に有利な効果が得られる。図5aは、図2に示す積層膜3と同様、接着層31、キャリヤ膜32、接着層33、回折構造38が形成されたラッカー層34、35、及び、接着層36により構成される積層膜81を示す。次に、形成された所定の中断個所63が、キャリヤ膜32を完全には切断しない止まり穴として積層膜81中に形成されるよう、レーザービーム72の強度が選択される。価値担持書類のキャリヤに積層膜81を圧着した後、所定の中断個所63は積層膜81に確かに存在するが、図5bに示すように、表面的には見えない。止まり穴によって低下する強度は、止まり穴の深さは、積層膜の機械特性を調整するための変数となるという上述の利点を提供する。他方、積層膜81が所定の中断個所を備えていることは、それを見る人に対して隠されたままである。その結果、所定の中断個所63も積層膜81のセキュリティー機能デザインに影響を与えることはない。
【0048】
所定の中断個所を形成するさらに可能な方法としては、キャリヤ膜側から積層膜にレーザーを照射することが含まれる。図6は、上記の方法で加工され、図2に示す接着層31、キャリヤ膜32、接着層33、回折構造38が形成されたラッカー層34、35、及び、接着層36により構成される積層膜82を示す。積層膜82にはレーザー73が照射され、キャリヤ膜32を完全にではなく部分的に切断する止まり穴が、所定の中断個所64として、キャリヤ膜32に形成されるよう、レーザー73の強度および照射時間が調節される。この選択は、それ自身が、圧着機による積層膜の圧着直前に所定の中断個所が積層膜に形成されるかどうか、あるいは、圧着がキャリヤ上で実行された後かを示している。後者の場合、照射は、実際、キャリヤ膜側からのみ可能であり、対照的に、価値担持書類のキャリヤの通常透明でない側からの照射は不可能である。
【0049】
レーザービーム73は積層膜82を完全には切断しないことから、ここで、所定の中断個所64は、見る者から実質光学的に隠されたままとなり、そのため、セキュリティー機能のデザインにほとんど影響を与えることはない。さらに、この場合、キャリヤ膜による装飾層構成内の層の保護も、キャリヤ膜が実際完全に切断されないため、そのまま維持される。その場合、所定の中断個所64の直径はできるだけ小さくなるよう選択されることが好ましく、人間の目の分解能以下であることが好ましい。それにより、光学的外観、及び、風化の影響からの保護も最適化される。
【0050】
図7a及び図7bは、本発明に係る、価値担持書類のキャリヤ2への圧着前後の積層膜83を示す。円形断面の所定の中断個所64は、積層膜83において、膨張方向で線上に形成される。形成された所定の中断個所によって、圧着後の冷却時の応力を低減することができる。図7bに示すように、所定の中断個所64の断面は、冷却後、楕円形に変形されている。つまり、所定の中断個所64は、積層膜83の対応する膨張を可能にし、それにより、積層膜83を囲む領域における価値担持書類の歪みを防いだことになる。
【0051】
また、円形断面を有する所定の中断個所の代わりに、適切なビーム成形光学系を利用して、長方形、正方形又はその他の形状の断面を有する所定の中断個所を形成することも可能である。
【0052】
ある状況下では、所定の中断個所を、膨張方向に対して直角な線上に延びるよう配置することも有利となる。図8a及び図8bにそれが示されている。
【0053】
図8a及び図8bは、価値担持書類のキャリヤ2への圧着前後の積層膜84を示す。所定の中断個所64は、膨張方向に対して直角に延びる、互いに平行な線上に配置される。図8bに示すように、所定の中断個所は、冷却後、楕円形に変形され、それにより、圧着の際、積層膜84の対応する膨張が可能となる。
【0054】
また、積層膜85に関して図9a及び図9bに示されるように、所定の中断個所を、膨張方向の線上とそれに対して直角な線上の両方に配置することも可能である。あるいは、積層膜86に関して図10a及び図10bに示されるように、所定の中断個所を、例えば、ジグザグパターンに配置することも可能である。
【0055】
所定の中断個所は、いかなる配置で形成することも可能である。
【0056】
さらに、所定の中断個所が、積層膜のセキュリティー機能デザインに組み込まれる可能性もある。そこで、図11に、部分的な金属化によって形成される、積層膜87のセキュリティー機能53を示す。セキュリティー素子53の脱金属化領域は、全表面にわたって圧着された金属塗膜を、従来方法、例えば、ポジティブ・ネガティブエッチング、又は、レーザー切断を用いて、領域方向に除去する手法で形成される。それにより、セキュリティー機能53の中央の領域においては、脱金属化が “1”の形状として現れ、一方、その中央領域を囲む領域においては、金属化が、ポジ・スクリプト“VALID”の形状として現れる。次に、レーザービームの適切な制御、例えば、積層膜87上の位置決めマークに基づいて、セキュリティー機能53の領域の積層膜87に所定の中断個所63が形成される。その状態で、所定の中断個所は、セキュリティー機能53の金属化されたエッジ短冊に、正確な位置関係を保ちつつ形成され、それにより、セキュリティー機能53の脱金属化デザインに組み込まれる。その場合、レーザービームの直径が非常に小さいことにより、従来方法では達し得なかった、脱金属化の精度を実現することが可能である。それにより、所定の中断個所は、さらなるセキュリティー機能としての役割を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の価値担持書類を示す概略図である。
【図2】図1に示す価値担持書類に使用できる積層膜の二つの領域を示す断面図である。
【図3a】図1に示す価値担持書類の二つの異なる領域を示す断面図である。
【図3b】図1に示す価値担持書類の二つの異なる領域を示す断面図である。
【図4a】図1に示す価値担持書類に使用でき、所定の中断個所を備える積層膜の一部を示 す図である。
【図4b】図1に示す価値担持書類に使用でき、所定の中断個所を備える積層膜の一部を示す図である。
【図4c】図4bの詳細図である。
【図5a】本発明の他の実施形態に係る積層膜または価値担持書類を示す断面図である。
【図5b】本発明の他の実施形態に係る積層膜または価値担持書類を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る積層膜を示す断面図である。
【図7a】価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図7b】価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図8a】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図8b】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図9a】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図9b】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図10a】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図10b】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類に圧着される積層膜の平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 価値坦持書類
2 キャリア
3 積層膜
30 装飾層
32 キャリア膜
51 セキュリティー機能
62 中断個所
71 レーザビーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙材からなるキャリヤと、一つ以上の光学セキュリティー機能を有する装飾層及びキャリヤ膜を有し、該キャリヤに圧着される積層膜とを備える価値担持書類に関し、ならびに、そのような価値担持書類の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
価値担持書類の偽造防止性を高めるために、例えば、光学セキュリティー機能を有するホットスタンプフィルムを紙幣またはビザに圧着することが知られている。ホットスタンプフィルムが価値担持書類に圧着される際、キャリヤ膜ではなく、ホットスタンプフィルムの転写層のみが転写される。転写層の層アレイの厚さは一般的に6〜12μmなので、圧着作業は比較的低温・低圧で行うことが可能である。つまり、ホットスタンプ作業の間、また、ホットスタンプ作業実施後の冷却処理の際には、低い熱応力しか生じないので、価値担持書類及び層アレイを構成する複合材料において、せいぜい最小限の変形しか生じない。転写層の特性を好適にすることによって、価値担持書類及び転写層の層アレイを構成する複合材料の熱応力を更に最小限に抑えることができる。
【0003】
一般的に、転写層は、キャリヤとは全く異なった物理的性質(熱伝導率、熱容量、熱膨張など)を持つ金属層、ラッカー、及び接着剤から成る。
【0004】
転写された層アレイは厚さが薄く、また元来、安定性が低いので、転写後、圧着されたホットスタンプフィルムの転写層を、破損させずに価値担持書類からはがすのはほぼ不可能である。つまり、原本からホットスタンプフィルムの転写層をはがし、はがした層アレイを偽造書類に圧着して偽造書類を作成することは非常に困難である。
【0005】
また、積層膜を使って、光学セキュリティー機能を紙幣に持たせることが知られている。ホットスタンプフィルムとは対照的に積層膜は、紙幣上に転写される膜本体において、例えば厚さ19〜50μmのポリエステル膜からなり、積層膜にある程度の固有の機械的安定性を与えるキャリヤ膜を有する。欧州特許第0723501B1には、紙幣のペーパーキャリヤに開口部を形成し、少なくとも開口部周辺の領域を覆いうる透明なカバー膜を用いてその開口部を再び閉じることが開示されている。その場合、カバー膜は、透明キャリヤ膜および該透明キャリヤ膜にしっかりと付着する装飾層を含む積層膜を構成する。そのような構成において、装飾層は、少なくとも開口部周辺領域において少なくとも領域レベルで透明なラッカー層を有する。その場合、光回折効果を有し、光学セキュリティー機能を提供する回折構造が、上記ラッカー層に形成される。
【0006】
価値担持書類に積層膜を圧着することにより、一回の圧着作業で複数のセキュリティー機能を転写することが可能となり、また、その他の機能をスタンプ工程を介して書類上に転写することが可能となる。このことは、特に、開窓部付き価値担持書類の作成だけでなく、電気的機能付き価値担持書類の作成、例えば、集積回路、アンテナ及びディスプレイ付き書類の作成においても効果を発揮する。積層膜はそのキャリヤ膜の機械的安定性が、圧着作業においては優れた加工性を保証する一方、圧着後の書類上における層アレイの安定化を保証するので、ホットスタンプフィルムよりも上記使用目的に適している。また、積層膜のキャリヤ膜は、環境の影響および改竄の試みから書類を保護する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、積層膜を紙基材に圧着する際、ホットスタンプフィルム圧着時よりも、相当高い温度および圧力が必要となる。膜と基材は熱膨張係数が互いに異なるが、それらをその違いが顕れる程度にまで加熱すると、冷却が始まる時に高い熱応力が誘発されることとなり、結果として、膜及び基材からなる複合体に歪みを招き、それにより、価値担持書類を平坦に置くことができなくなる場合がある。さらにまた、例えば、用紙を積み重ねる際の取扱いや加工が困難になる場合がある。
【0008】
さらに、欧州特許第0748286B1から、例えば、シリアル番号のような個別のパターンが印刷された小切手、紙幣又はクレジットカードのキャリヤに、レーザービームを用いて穴のあいたパターンを導入することも知られている。印刷された個体識別可能化パターンは、穿孔によって形成された個体識別可能化パターンと同様に人間の目で認識され得る。穴のあいたパターンと印刷されたパターンは、偽造を簡単に見つけられるよう、同様の文字を有している。その場合、結果得られる穴を埋めることはほぼ不可能なので、価値担持書類を偽造することは特に難しい。
【0009】
そこで、本発明は、積層膜を圧着し、改良された価値担持書類、及び、そのような価値担持書類の作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、紙材からなるキャリヤと、一つ以上のセキュリティー機能及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層及びキャリヤ膜を有し、該キャリヤに圧着される積層膜とを備える価値担持書類によって達成され、該価値担持書類において、該積層膜はその強度を低減するために所定の中断個所を備える。
【0011】
さらに、上記目的は、一つ以上のセキュリティー機能及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層及びキャリヤ膜を有する積層膜が、紙材からなる価値担持書類のキャリヤに圧着されている価値担持書類の作成方法によって達成され、該作成方法において、該積層膜はその強度を低減するために所定の中断個所を備える。
【0012】
本発明によれば、上述したように、価値担持書類のキャリヤに圧着された積層膜は所定の中断個所を備えることが提案されている。それにより、積層膜をキャリヤに圧着する際に生じる熱応力が吸収され、膜-紙基材の歪みが防止される。さらに、改竄の試みはますます難しくなる。積層膜は元来、それに使用されるキャリヤ膜が機械的安定性に優れているため、ホットスタンプフィルムと比べて機械的安定性に優れているが、該所定の中断個所によってその機械的安定性は弱められる。そのため、その後、圧着された積層膜を破損させずに価値担持書類からはがすことはほぼ不可能となる。従って、原本から積層膜をはがし、はがした積層膜を偽造書類に圧着して偽造書類を作成することはほぼ不可能となる。すなわち、圧着特性に優れ、改竄に対する高度な保護を可能とするホットスタンプフィルムの利点と、高度なセキュリティー機能を実現しうる積層膜の特性とを、本発明により組み合わせることが可能となり、また本発明により、該作成方法及び価値担持書類の偽造防止性の両方を改善することが可能となる。
【0013】
この場合、装飾層に含まれるセキュリティー機能は、光学的に識別可能なセキュリティー機能であることが好ましい。しかしながら、それらのセキュリティー機能は、例えば、装飾層を構成する磁気性又は導電性の層によって提供される、磁気性又は導電性のセキュリティー機能のような、機械で読み取り可能なセキュリティー機能であってもよい。加えて、上記セキュリティー機能は、無線によって始動することができるセキュリティー機能、又は、例えば、蛍光素子によって形成されるセキュリティー機能であってもよい。電気的機能を持つ構成部品としては、例えば、アンテナ、コイル、キャパシタンス、及び、トランジスタのような能動部材、といった電気又は電子部材を用いることが好ましい。
【0014】
本発明の有利な展開が付随の特許請求の範囲で定義される。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、積層膜の一つ以上の層に穴をあけるか、又は、それらを部分的に切断することによって、所定の中断個所の領域における、積層膜の強度及び機械的安定性は低減する。その場合、該所定の中断個所はレーザー照射によって生成されることが好ましい。そのために、積層膜の一つ以上の層は、レーザーを利用した溶融、蒸発又は分解によって、所定の中断個所の領域において、少なくとも部分的に除去される。それにより、一方では非常に小径の所定の中断個所を生成でき、他方ではコンタクトが少なく摩耗を伴わない手段で作業を実行することができるという利点が得られる。
【0016】
さらに、レーザービームの好適な制御、例えば、積層膜上の位置決めマークを参照することによって、正確な位置あわせに基づく処理が実施可能であることにより、利点が得られる。上述のように、所定の中断個所は積層膜のセキュリティー素子のパターン領域との間で正確な位置関係を持って生成され、積層膜のセキュリティー機能デザインに組み込まれる。
【0017】
従って、例えば、積層膜に存在する脱金属化領域との正確な位置関係を持って所定の中断個所を生成することが可能である。そしたまた、レーザーで積層膜の金属塗膜を部分的に除去できる場合、所定の中断個所を脱金属化デザインに組み込むこと、又は、該所定の中断個所によって脱金属化される領域を形成することが可能である。
【0018】
さらに、レーザーを利用することにより、人間の目の分解能以下の直径(好ましくは50μm未満の直径)の微小な穿孔を、積層膜の所定の中断個所の領域に設けることができる。しかも、該所定の中断個所を、少なくとも入射光によっては、見る者にとって認知できないものとすることができる。
【0019】
さらに、人間の目の分解能範囲内ではあるが非常に小径のレーザービームを利用することにより、例えば、マイクロスクリプトの形式で、従来の方法では達成し得なかった精度で、積層膜に光学的に識別可能な穿孔パターンを形成することが可能である。そのような穿孔パターンは、積層膜の金属層をレーザービームによって切断することにより、とりわけ簡単に識別することができる。その場合、当該穿孔パターンを、セキュリティー素子の脱金属化デザインに組み込むことも可能である。
【0020】
また、せん断切断又は穴形成などの機械的方法で、所定の中断個所を積層膜に導入することが可能である。積層膜の一つ又は複数の層を上記のような機械的方法によって切断、又は、切り込むことにより、該所定の中断個所の領域における、積層膜の強度が低減される。それにより、積層膜のキャリヤ層が切り込まれるが打ち抜かれない程度に、工具を調整することが可能である。
【0021】
本発明のさらに好適な実施形態によれば、積層膜の一つ又は複数の層の物理的性質を部分的に変化させることで、所定の中断個所の領域における、該積層膜の強度が低減される。これは、例えば、該積層膜の一つ又は複数の層に化学変化を引き起こす電磁放射線を積層膜に部分的に照射することで実施可能である。
【0022】
所定の中断個所の領域においてキャリヤ膜を切断することで、該所定の中断個所の領域における積層膜の強度を低減することが好ましい。従って、例えば、キャリヤ膜は、所定の中断個所の領域において溶融又は蒸発により部分的に除去されるレーザー放射吸収材を含む。さらに、キャリヤ膜は、所定の中断個所の領域において、該キャリヤ膜を完全には分断しない止まり穴を設けることが可能である。そうすることにより、該止まり穴の領域における、積層膜の強度が大幅に低減される一方で、キャリヤ膜は、所定の中断個所の領域において、その下方に配置される装飾層の保護層としての機能をなお果たすことができる。さらにまた、上記手順に従うことで、止まり穴の深さを調整し、積層膜の機械的性質に具体的目標に合わせた影響を与えることが可能である。
【0023】
その場合、キャリヤ膜の表面、すなわち、見る者に向かう表面が平面を成すように、紙材で構成されるキャリヤに向かうキャリヤ膜側に、止まり穴が設けられることが好ましい。装飾層が好適な構成で成る場合、止まり穴は、上述のように、光学的に隠蔽されたままであり、上述の可能性と比較して、積層膜の耐摩耗性及び耐候性は増大する。
【0024】
所定の中断個所の領域に、紙キャリヤに対向する積層膜の層が穿孔を備えることにより、さらに有利な効果が得られる。積層膜を紙材からなるキャリヤに圧着させる前に、所定の中断個所の領域において、キャリヤに対向する側から積層膜に止まり穴を形成する場合、積層膜の圧着時に紙キャリヤの紙繊維が止まり穴内で連結される。それにより、紙キャリヤと積層膜との接着が向上する。
【0025】
本発明の好適な実施形態によれば、所定の中断個所によって積層膜の強度を弱めることにより、積層膜の機械的性質が、紙キャリヤの機械的性質に適合するように、所定の中断個所の配置及び寸法が選択される。所定の中断個所の断面、寸法、外形、配置及び間隔にとって好適な構成により、膜の強度を調整することが可能であり、それにより、それらの加工性が維持される一方、熱的又は機械的影響による、積層膜及び紙キャリヤ間の応力の発生を回避することが可能である。このように、例えば、所定の中断個所による積層膜に対するその強度の弱体化効果によって、積層膜の膨張係数は紙キャリヤの膨張係数以上となり、積層膜が圧着される価値担持書類の領域と、積層膜が圧着されない領域との間に歪みが生じないといった利点が得られる。さらに、該膜の強度は、該膜がその圧着前にダメージを受けずにはがせないものの、その加工性は維持されるように、調整されることが好ましい。
【0026】
積層膜において、圧着工程後の冷却時に生じる応力を低減可能とするために、所定の中断個所を、膨張方向における線上、又は、膨張方向に対して直角な線上に配置することが有利であることが判明した。積層膜が短冊形状である場合、歪みの発生を確実に防ぐために、所定の中断個所は短冊の長手方向において、一つ又は複数の線上に配置されることが好ましい。
【0027】
所定の中断個所を生成する作業は、積層膜を価値担持書類に圧着する前、すなわち、成膜の間に実行することが好ましい。あるいは、所定の中断個所を生成する作業は、膜を書類に圧着する直前又は圧着した直後に圧着機によって実行することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下において、本発明を、一例として、複数の実施形態を用い、添付の図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1に、例えば、紙幣、ビザ、身分証明書類、又は、ソフトウェア証明書などの、価値担持書類1を示す。価値担持書類1は、図1に示すように、短冊形状の積層膜が圧着され、パターン4が重ね刷りされたキャリヤ2を具備する。
【0030】
キャリヤ2は、紙材からなり、約100μmの厚さを有する。この点で、キャリヤ2上には、公知の方法で、セキュリティー素子、例えば、透かし模様又はセキュリティープリントを施すことが可能である。キャリヤ2には、例えば、スタンピングによって、窓状の開口部22がさらに形成され、該開口部は積層膜3により閉じられる。
【0031】
積層膜3は、二つのセキュリティー機能51、52を有し、その内のセキュリティー機能52は、該窓状開口部22の領域に配置される。この場合、積層膜3の圧着領域において価値担持書類1が厚くならないように、積層膜3はキャリヤ2の凹部に圧着されることが好ましい。そうすることにより、価値担持書類1の積み重ね性さらにまた加工性が、積層膜3の圧着によって、悪影響を受けないことが保証される。この場合、凹部21は、紙の生産工程において、キャリヤ2に形成することができるが、スタンピング作業や、積層膜3の圧着時にキャリヤ2に加えられる圧力、及び、結果生じる紙材の部分圧縮によっても凹部は形成することができる。
【0032】
図1に示すように、積層膜3は、線61上に配置される所定の中断個所を備え、該中断個所は、積層膜3のキャリヤ2への圧着前に、せん断切断、又は、穴あけなどの機械加工によって、しかし好ましくは、レーザー照射によって、積層膜3に形成される。
【0033】
図2は、セキュリティー機能51、52の領域における、積層膜3の構造を示す。
【0034】
積層膜3は、接着層31、キャリヤ膜32、ならびに、接着層33、二つのラッカー層34、35、および接着層36を有する装飾層構成30を、この層順序で備える。
【0035】
接着層31、33および36は、0.2〜2μm、好ましくは、0.5〜1.2μmの厚さを有する。後工程である、圧着された積層膜の重ね刷りが省略される場合、接着層31を省略することが可能である。接着層36は、圧着時に積層膜3を紙キャリヤ2上に確実に接着させる、熱活性化可能な接着剤層であることが好ましい。また一方で、接着層36は、UV-架橋性接着剤層を含むこともできる。
【0036】
キャリヤ膜32は、厚さ12〜50μm、さらに好ましくは、25〜50μmの、プラスチックフィルム、好ましくは、ポリエステル又はポリカーボネートフィルムである。キャリヤ膜32は、積層膜3に対して、例えば、窓状開口部22を閉じる際の機械的負荷に耐えるのに必要な、機能的に必須の、元来の機械的安定性を与える。
【0037】
ラッカー層34は、厚さ0.8〜2μmの複製ラッカー層であり、ラッカー層中に、領域レベルで回折構造38が形成される。上述のように、ラッカー層34は、例えば、熱により変形可能なベースラッカー層を含み、その中で、例えば、さまざまなホログラフィック表示やキネグラム(登録商標)を生成する互いに異なる回折構造が、セキュリティー機能51、52の領域において、加熱したスタンプ・パンチを用いて形成される。セキュリティー機能52の領域において、回折構造38は、部分的に金属より成る塗膜39を備え、それにより、反射・回折セキュリティー機能が与えられることとなる。ここで、金属化は、例えば、真空中で圧着される、アルミニウム、クロム、金、又は、銀を含む。金属塗膜の代わりに、好適な誘電体、例えば、TiO2やZnSを含む、HRI又はLRI層(HRI=高屈折率;LRI=低屈折率)を、反射増幅層として、ラッカー層34に圧着することも可能である。
【0038】
次に、ラッカー層35が、保護ラッカー層として圧着される。セキュリティー機能51の領域において、複製ラッカー層と保護ラッカー層との間に、領域方向に配備されているのは、さらに着色されたラッカー層37であり、それは、パターン形状に圧着され、更なる装飾素子として機能する。ラッカー層35を省略することも可能である。
【0039】
ここでは、UV-架橋性複製ラッカー層をラッカー層34として使用することもでき、また、UV複製プロセスを用いて、回折構造38をラッカー層34に形成することもできる。さらに、開口部22の領域に、透明回折セキュリティー機能を配備することもできる。その場合、不透明な金属塗膜39は省かれ、該金属塗膜はむしろ透明であるか、あるいは、金属塗膜39は完全に省かれる。また、ラッカー層35に使用する材料は、ラッカー層34とは大きく異なる屈折率を有するものである。
【0040】
次に、図3aは、原寸に忠実ではないが、窓状開口部22の領域における価値担持書類1の断面図を、キャリヤ2、凹部21、及び、パターン4が重ね刷りされた積層膜3と共に示す。金属層39を備える回折構造38によって得られるセキュリティー機能が透明な窓で囲まれるよう、キャリヤ膜22、接着層31、33、36、および、ラッカー層34、35は透明である。図3aから判るように、全側面において開口部22の向こう側へ突出する積層膜3によって該開口部が閉じられ、十分に大きな面積の接着領域23において、積層膜3がキャリヤ2に接着される。
【0041】
さらにまた、上記回折セキュリティー素子の代わり又はそれに加えて、干渉層又は(コレステリック)液晶層を用いて、視角に依存する色ずれを実現する薄膜層構造を、積層膜3の装飾層30に取り込むことが可能である。また、当該セキュリティー素子の代わり又はそれに加えて、例えば、集積回路、アンテナ、ディスプレイなどの電気機能を、積層膜3の装飾層30に組み込むことも可能である。
【0042】
従って、図3bは、例えば、光学的に識別可能な回折セキュリティー機能の他に、RF識別回路(RF=無線周波数)が装飾層30に組み込まれた、価値担持書類1の領域を示す。該領域において、積層膜3は、図2に示すように、接着層31、33、36、ラッカー層34、35、および、金属塗膜39を備える回折構造38を有する。また、ラッカー層34、35の間に、アンテナ42、接着剤層41、電子回路43が導入される。アンテナ42は、例えば、異方性の導電接着層41により電子回路43に結合する、部分的に金属より成る塗膜を備える。キャリヤ膜32は、電子回路43を安定させ、同時に環境の影響および改竄の試みから保護する。図3bに示すように、電子回路43の領域において、積層膜3の圧着時に、別の凹部が紙キャリヤ2に形成され、それにより、電子回路43の領域に、価値担持書類1に対して平らな面が実現する。
【0043】
図1に示すように、所定の中断個所は、膜方向において互いに平行な線61上に配置される。さらに、図4aおよび図4bに示すように、円形の断面を持つ所定の中断個所62が、線61に沿って積層膜3に導入され、キャリヤ32と積層膜3の装飾層30との両方を完全に切断する。積層膜の強度は、関連する断面、寸法、外形、及び、配置、つまり、所定の中断個所62同士の間隔に関するデザインによって定められる。その点に関して、高熱負荷を伴う圧着工程中と通常環境の影響下との双方において、積層膜の膨張係数及び熱膨張が、それぞれ、紙キャリヤの膨張係数及び熱膨張以上となるように、積層膜の強度が設定されることが好ましい。さらに、積層膜が剥離不可能(つまり、積層膜と紙キャリヤと間の接着力が、積層膜の引き裂き強度より大きい)であるにもかかわらず、なお加工に十分な安定性を有するように、積層膜の強度が調整される。以上のように、所定の中断個所62の構成・配置の双方が、積層膜3の膜特性、キャリヤ2の基質特性、そして、積層膜3をキャリヤ2に圧着する際に実施される圧着工程の特性によって決定される。その点に関して、特に重要な要因としては、キャリヤ膜の材料の種類、キャリヤ膜3の熱容量、キャリヤ膜の熱伝導率、キャリヤ膜の膨張係数、キャリヤ膜の厚さ、装飾層構成の層順序と層組成、及び、装飾層構成の熱容量、熱伝導率と膨張係数が挙げられる。さらに、キャリヤ2の材料の種類、熱容量、熱伝導率、膨張係数、厚さ、及び、表面粗さは、特に重要である。さらにまた、圧着方法の種類、及び、圧力、温度、接触時間などの工程パラメータは特に重要である。キャリヤ2及び積層膜3の層の熱容量、熱伝導率、厚さ、及び、圧着工程に関係する圧力、温度、接触時間によって、圧着工程時に積層膜の層と基材との間に生じる熱差が決定され、それは次に、積層膜3とキャリヤ2のそれぞれの熱膨張係数に基づいて、熱膨張を決定する。そのようにして、各使用状況に対応した、所定の中断個所の最適なデザインが、そのような複雑な関係に基づいた試験によって解明されることが好ましい。
【0044】
所定の中断個所62を形成するため、図4cに示すように、レーザービームは、装飾層構成30側から、該装飾層構成の層33乃至36、及び、キャリヤ膜32に作用し、該レーザービーム照射領域において、溶融、蒸発、又は、分解により、それらの層が除去されるように作用する。その点に関して、上記のようなやり方で材料を除去するためには、キャリヤ膜32、及び、装飾層構成30の少なくとも一部の層が、レーザー照射を吸収する必要がある。それは、材料の温度上昇、及び、材料除去を引き起こすエネルギーの吸収にも関係している。
【0045】
この場合において、層31乃至36の除去に使用可能なレーザービーム源は以下の通りである。
レーザー 波長 動作モード
CO2レーザー 10.6μm cw、パルス
Nd:YAGレーザー 1.064μm、532nm、355nm cw、パルス
ダイオードレーザー 650〜950nm cw、パルス
エキシマーレーザー 157nm、193nm、248nm、308nm、351nm パルス
キャリヤ膜32がポリエステルキャリヤを備える場合、ポリエステルの分光透過特性を考慮して、308nmまたはそれ未満の波長を持つエキシマーレーザー、及び、CO2レーザーがふさわしい。Nd:YAGおよびダイオードレーザーの放射線は、ポリエステルを透過しても、せいぜい装飾層構成の層アレイと相互作用し、該層アレイを除去することしかできない。
【0046】
また、吸収体(例えば、TiO2)の添加、又は、結合剤構造における変化によって、Nd:YAGまたはダイオードレーザーの波長領域における吸収を実現することも可能である。その点に関して、装飾層構成における吸収剤層または吸収性のものに変化した層は、できる限りキャリヤ膜の近くに配置されることが好ましい。吸収されたレーザー照射は該層の温度を上昇させ、それに応じて、その上に配置されている層も、液状化、ガス発生、蒸発によって除去することができる。
【0047】
その点に関して、図4cに示すような貫通孔ではなく、図5aおよび図5bに示すような、積層膜3の止まり穴が結果として得られるように、レーザービームのパラメータ、つまり、強度および照射時間が調整されるならば、特に有利な効果が得られる。図5aは、図2に示す積層膜3と同様、接着層31、キャリヤ膜32、接着層33、回折構造38が形成されたラッカー層34、35、及び、接着層36により構成される積層膜81を示す。次に、形成された所定の中断個所63が、キャリヤ膜32を完全には切断しない止まり穴として積層膜81中に形成されるよう、レーザービーム72の強度が選択される。価値担持書類のキャリヤに積層膜81を圧着した後、所定の中断個所63は積層膜81に確かに存在するが、図5bに示すように、表面的には見えない。止まり穴によって低下する強度は、止まり穴の深さは、積層膜の機械特性を調整するための変数となるという上述の利点を提供する。他方、積層膜81が所定の中断個所を備えていることは、それを見る人に対して隠されたままである。その結果、所定の中断個所63も積層膜81のセキュリティー機能デザインに影響を与えることはない。
【0048】
所定の中断個所を形成するさらに可能な方法としては、キャリヤ膜側から積層膜にレーザーを照射することが含まれる。図6は、上記の方法で加工され、図2に示す接着層31、キャリヤ膜32、接着層33、回折構造38が形成されたラッカー層34、35、及び、接着層36により構成される積層膜82を示す。積層膜82にはレーザー73が照射され、キャリヤ膜32を完全にではなく部分的に切断する止まり穴が、所定の中断個所64として、キャリヤ膜32に形成されるよう、レーザー73の強度および照射時間が調節される。この選択は、それ自身が、圧着機による積層膜の圧着直前に所定の中断個所が積層膜に形成されるかどうか、あるいは、圧着がキャリヤ上で実行された後かを示している。後者の場合、照射は、実際、キャリヤ膜側からのみ可能であり、対照的に、価値担持書類のキャリヤの通常透明でない側からの照射は不可能である。
【0049】
レーザービーム73は積層膜82を完全には切断しないことから、ここで、所定の中断個所64は、見る者から実質光学的に隠されたままとなり、そのため、セキュリティー機能のデザインにほとんど影響を与えることはない。さらに、この場合、キャリヤ膜による装飾層構成内の層の保護も、キャリヤ膜が実際完全に切断されないため、そのまま維持される。その場合、所定の中断個所64の直径はできるだけ小さくなるよう選択されることが好ましく、人間の目の分解能以下であることが好ましい。それにより、光学的外観、及び、風化の影響からの保護も最適化される。
【0050】
図7a及び図7bは、本発明に係る、価値担持書類のキャリヤ2への圧着前後の積層膜83を示す。円形断面の所定の中断個所64は、積層膜83において、膨張方向で線上に形成される。形成された所定の中断個所によって、圧着後の冷却時の応力を低減することができる。図7bに示すように、所定の中断個所64の断面は、冷却後、楕円形に変形されている。つまり、所定の中断個所64は、積層膜83の対応する膨張を可能にし、それにより、積層膜83を囲む領域における価値担持書類の歪みを防いだことになる。
【0051】
また、円形断面を有する所定の中断個所の代わりに、適切なビーム成形光学系を利用して、長方形、正方形又はその他の形状の断面を有する所定の中断個所を形成することも可能である。
【0052】
ある状況下では、所定の中断個所を、膨張方向に対して直角な線上に延びるよう配置することも有利となる。図8a及び図8bにそれが示されている。
【0053】
図8a及び図8bは、価値担持書類のキャリヤ2への圧着前後の積層膜84を示す。所定の中断個所64は、膨張方向に対して直角に延びる、互いに平行な線上に配置される。図8bに示すように、所定の中断個所は、冷却後、楕円形に変形され、それにより、圧着の際、積層膜84の対応する膨張が可能となる。
【0054】
また、積層膜85に関して図9a及び図9bに示されるように、所定の中断個所を、膨張方向の線上とそれに対して直角な線上の両方に配置することも可能である。あるいは、積層膜86に関して図10a及び図10bに示されるように、所定の中断個所を、例えば、ジグザグパターンに配置することも可能である。
【0055】
所定の中断個所は、いかなる配置で形成することも可能である。
【0056】
さらに、所定の中断個所が、積層膜のセキュリティー機能デザインに組み込まれる可能性もある。そこで、図11に、部分的な金属化によって形成される、積層膜87のセキュリティー機能53を示す。セキュリティー素子53の脱金属化領域は、全表面にわたって圧着された金属塗膜を、従来方法、例えば、ポジティブ・ネガティブエッチング、又は、レーザー切断を用いて、領域方向に除去する手法で形成される。それにより、セキュリティー機能53の中央の領域においては、脱金属化が “1”の形状として現れ、一方、その中央領域を囲む領域においては、金属化が、ポジ・スクリプト“VALID”の形状として現れる。次に、レーザービームの適切な制御、例えば、積層膜87上の位置決めマークに基づいて、セキュリティー機能53の領域の積層膜87に所定の中断個所63が形成される。その状態で、所定の中断個所は、セキュリティー機能53の金属化されたエッジ短冊に、正確な位置関係を保ちつつ形成され、それにより、セキュリティー機能53の脱金属化デザインに組み込まれる。その場合、レーザービームの直径が非常に小さいことにより、従来方法では達し得なかった、脱金属化の精度を実現することが可能である。それにより、所定の中断個所は、さらなるセキュリティー機能としての役割を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の価値担持書類を示す概略図である。
【図2】図1に示す価値担持書類に使用できる積層膜の二つの領域を示す断面図である。
【図3a】図1に示す価値担持書類の二つの異なる領域を示す断面図である。
【図3b】図1に示す価値担持書類の二つの異なる領域を示す断面図である。
【図4a】図1に示す価値担持書類に使用でき、所定の中断個所を備える積層膜の一部を示 す図である。
【図4b】図1に示す価値担持書類に使用でき、所定の中断個所を備える積層膜の一部を示す図である。
【図4c】図4bの詳細図である。
【図5a】本発明の他の実施形態に係る積層膜または価値担持書類を示す断面図である。
【図5b】本発明の他の実施形態に係る積層膜または価値担持書類を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る積層膜を示す断面図である。
【図7a】価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図7b】価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図8a】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図8b】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図9a】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図9b】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図10a】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図10b】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類のキャリヤへの圧着前後の積層膜を示す概略図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る価値担持書類に圧着される積層膜の平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 価値坦持書類
2 キャリア
3 積層膜
30 装飾層
32 キャリア膜
51 セキュリティー機能
62 中断個所
71 レーザビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙材からなるキャリヤ(2)と、一つ以上のセキュリティー機能(51、52、53)及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層(30)及びキャリヤ膜(32)を有し、該キャリヤに圧着される積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)とを備える、特に紙幣などの、価値担持書類(1)であって、
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)が、その強度を低減するために所定の中断個所(62、63、64)を備えることを特徴とする価値担持書類。
【請求項2】
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の一つ以上の層(31乃至36)に穴をあけるか、又は、それらを部分的に切断することによって、前記所定の中断個所(62、63、64)の領域において、該積層膜の強度が低減されることを特徴とする請求項1に記載の価値担持書類。
【請求項3】
前記所定の中断個所(62、63、64)の領域において、前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の一つ以上の層(31乃至36)が、レーザービーム(71、72、73)によって、少なくとも部分的に除去されることを特徴とする請求項2に記載の価値担持書類。
【請求項4】
前記所定の中断個所の領域において、前記積層膜の一つ以上の層には、レーザービームによって、微小な穿孔が形成されることを特徴とする請求項3に記載の価値担持書類。
【請求項5】
前記所定の中断個所の領域において、前記積層膜の一つ以上の層が、機械的方法によって、具体的には、せん断切断、穴あけ又は切り込みによって加工され、その強度が低減されることを特徴とする請求項2に記載の価値担持書類。
【請求項6】
前記所定の中断個所の領域において、前記積層膜の一つ以上の層の物理的性質が部分的に変化することによって、該積層膜の強度が低減することを特徴とする請求項1に記載の価値担持書類。
【請求項7】
前記所定の中断個所(62)の領域において、前記キャリヤ膜(32)が切断されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項8】
前記所定の中断個所(63、64)の領域において、前記キャリヤ膜(32)は、該キャリヤ膜を完全には切断しない止まり穴を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の価値担持書類。
【請求項9】
前記止まり穴(63)が、前記キャリヤ膜(32)の前記キャリヤ(2)に対向する側に設けられることを特徴とする請求項8に記載の価値担持書類。
【請求項10】
前記積層膜(81、82、83、84、85、86、87)は、全体を通じて一定の強度を持つ一つ以上の層を有し、該積層膜(81、82、83、84、85、86、87)の層の一部のみの強度が、前記所定の中断個所(63、64)の領域において、低減することを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項11】
前記所定の中断個所(62、63)の領域において、前記積層膜(31、81)の前記キャリヤ(2)に対向する側には、紙繊維を留めるための穿孔を備えることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項12】
前記所定の中断個所(62、63、64)によって前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の強度を低減することにより、該積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の機械特性が前記紙キャリヤ(2)の機械特性に適合するように、該所定の中断個所(62、63、64)の配置及び寸法が選択されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項13】
前記所定の中断個所(62、63、64)によって前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の強度を低減することにより、該積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の熱膨張が前記紙キャリヤ(2)の熱膨張と略等しくなるように、該所定の中断個所(62、63、64)の配置及び寸法が選択されることを特徴とする請求項12に記載の価値担持書類。
【請求項14】
前記所定の中断個所(64)が、膨張方向における線上に配置されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項15】
前記所定の中断個所(64)が、膨張方向に対して直角な線上に配置されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項16】
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)は短冊状に形成され、前記所定の中断個所(64)が前記短冊の長手方向において、一つ以上の線(61)上に配置されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項17】
前記所定の中断個所(63)が、前記積層膜(57)のセキュリティー素子(53)のパターン(92)と正確な位置関係を保って方向付けられることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項18】
前記装飾層構成(30)が、二つ以上の異なるセキュリティー素子(51、52、53)を有することを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項19】
前記キャリヤ(2)が、一つ以上の窓状開口部(22)を有し、全側面において前記開口部(22)の向こう側へ突出する前記積層膜(3)によって、前記開口部が閉じられることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項20】
一つ以上のセキュリティー機能(51、52、53)及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層(30)及びキャリヤ膜(32)を有する積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)が、価値担持書類(1)の紙材からなるキャリヤ(2)に圧着される、特に紙幣などの価値担持書類(1)の作成方法であって、
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)が、その強度を低減するために所定の中断個所(62、63、64)を備えることを特徴とする価値担持書類(1)の作成方法。
【請求項21】
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)を前記キャリヤ(2)に圧着する前に、前記所定の中断個所(62、63、64)が該積層膜に導入されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記積層膜(72)を前記キャリヤ(2)に圧着する前に、前記所定の中断個所の領域に、前記キャリヤ(2)に対抗する側から止まり穴(63)を該積層膜(72)に設けることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記積層膜を前記価値担持書類に圧着した後、前記所定の中断個所が該積層膜に導入されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項1】
紙材からなるキャリヤ(2)と、一つ以上のセキュリティー機能(51、52、53)及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層(30)及びキャリヤ膜(32)を有し、該キャリヤに圧着される積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)とを備える、特に紙幣などの、価値担持書類(1)であって、
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)が、その強度を低減するために所定の中断個所(62、63、64)を備えることを特徴とする価値担持書類。
【請求項2】
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の一つ以上の層(31乃至36)に穴をあけるか、又は、それらを部分的に切断することによって、前記所定の中断個所(62、63、64)の領域において、該積層膜の強度が低減されることを特徴とする請求項1に記載の価値担持書類。
【請求項3】
前記所定の中断個所(62、63、64)の領域において、前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の一つ以上の層(31乃至36)が、レーザービーム(71、72、73)によって、少なくとも部分的に除去されることを特徴とする請求項2に記載の価値担持書類。
【請求項4】
前記所定の中断個所の領域において、前記積層膜の一つ以上の層には、レーザービームによって、微小な穿孔が形成されることを特徴とする請求項3に記載の価値担持書類。
【請求項5】
前記所定の中断個所の領域において、前記積層膜の一つ以上の層が、機械的方法によって、具体的には、せん断切断、穴あけ又は切り込みによって加工され、その強度が低減されることを特徴とする請求項2に記載の価値担持書類。
【請求項6】
前記所定の中断個所の領域において、前記積層膜の一つ以上の層の物理的性質が部分的に変化することによって、該積層膜の強度が低減することを特徴とする請求項1に記載の価値担持書類。
【請求項7】
前記所定の中断個所(62)の領域において、前記キャリヤ膜(32)が切断されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項8】
前記所定の中断個所(63、64)の領域において、前記キャリヤ膜(32)は、該キャリヤ膜を完全には切断しない止まり穴を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の価値担持書類。
【請求項9】
前記止まり穴(63)が、前記キャリヤ膜(32)の前記キャリヤ(2)に対向する側に設けられることを特徴とする請求項8に記載の価値担持書類。
【請求項10】
前記積層膜(81、82、83、84、85、86、87)は、全体を通じて一定の強度を持つ一つ以上の層を有し、該積層膜(81、82、83、84、85、86、87)の層の一部のみの強度が、前記所定の中断個所(63、64)の領域において、低減することを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項11】
前記所定の中断個所(62、63)の領域において、前記積層膜(31、81)の前記キャリヤ(2)に対向する側には、紙繊維を留めるための穿孔を備えることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項12】
前記所定の中断個所(62、63、64)によって前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の強度を低減することにより、該積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の機械特性が前記紙キャリヤ(2)の機械特性に適合するように、該所定の中断個所(62、63、64)の配置及び寸法が選択されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項13】
前記所定の中断個所(62、63、64)によって前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の強度を低減することにより、該積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)の熱膨張が前記紙キャリヤ(2)の熱膨張と略等しくなるように、該所定の中断個所(62、63、64)の配置及び寸法が選択されることを特徴とする請求項12に記載の価値担持書類。
【請求項14】
前記所定の中断個所(64)が、膨張方向における線上に配置されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項15】
前記所定の中断個所(64)が、膨張方向に対して直角な線上に配置されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項16】
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)は短冊状に形成され、前記所定の中断個所(64)が前記短冊の長手方向において、一つ以上の線(61)上に配置されることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項17】
前記所定の中断個所(63)が、前記積層膜(57)のセキュリティー素子(53)のパターン(92)と正確な位置関係を保って方向付けられることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項18】
前記装飾層構成(30)が、二つ以上の異なるセキュリティー素子(51、52、53)を有することを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項19】
前記キャリヤ(2)が、一つ以上の窓状開口部(22)を有し、全側面において前記開口部(22)の向こう側へ突出する前記積層膜(3)によって、前記開口部が閉じられることを特徴とする前記いずれか一つの請求項に記載の価値担持書類。
【請求項20】
一つ以上のセキュリティー機能(51、52、53)及び/又は一つ以上の電気的機能を持った構成部品を含む装飾層(30)及びキャリヤ膜(32)を有する積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)が、価値担持書類(1)の紙材からなるキャリヤ(2)に圧着される、特に紙幣などの価値担持書類(1)の作成方法であって、
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)が、その強度を低減するために所定の中断個所(62、63、64)を備えることを特徴とする価値担持書類(1)の作成方法。
【請求項21】
前記積層膜(3、81、82、83、84、85、86、87)を前記キャリヤ(2)に圧着する前に、前記所定の中断個所(62、63、64)が該積層膜に導入されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記積層膜(72)を前記キャリヤ(2)に圧着する前に、前記所定の中断個所の領域に、前記キャリヤ(2)に対抗する側から止まり穴(63)を該積層膜(72)に設けることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記積層膜を前記価値担持書類に圧着した後、前記所定の中断個所が該積層膜に導入されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【公表番号】特表2008−513243(P2008−513243A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531589(P2007−531589)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001621
【国際公開番号】WO2006/029609
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(506088850)レオンハード クルツ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001621
【国際公開番号】WO2006/029609
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(506088850)レオンハード クルツ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (15)
【Fターム(参考)】
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