説明

侵入検出装置

【課題】 監視領域への物の侵入を安定して高い精度で検出できる侵入検出装置を提供する。
【解決手段】 フェンス10によって規定された監視領域に応じて配設され、外力が加えられたときに、伝搬する光を当該外力に応じて偏波変動させる光ファイバ4と、光ファイバ4内に光を出射する光源2と、光ファイバ4内を伝搬する光の偏波変動に応じた周波数を持つ演算結果信号S22を生成する演算処理部22と、演算結果信号S22に含まれる周波数成分のうち、前記物の侵入が無いときに前記光伝搬線内を伝送する光に生じた偏波変動による周波数成分を除去して演算結果信号S23を生成するバンドパスフィルタ23と、演算結果信号S23に基づいて前記光の偏波変動を監視し、当該監視の結果に基づいて監視領域への前記者の侵入の有無を判断する侵入判断部25とを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、監視領域への侵入物を検出する侵入検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】外部から人間などが侵入することが禁止されている鉄道沿線などには、侵入防止用のフェンスと共に、例えば、当該フェンスが破壊されたことを検出する侵入検出装置が設けられている。従来の侵入検出装置としては、例えば、ワイヤーを張りめぐらせたフェンスに、侵入者によってワイヤーが切断されたときに同時に切断されるようにメタル線を張りめぐらせ、メタル線の切断をメタル線切断検出手段で検出するものがある。メタル線切断検出手段は、例えば、メタル線の一端部から他端部に向けて電流を流し、他端部において電流を検出することで、メタル線の切断を検出する。
【0003】また、従来のその他の侵入検出装置としては、例えば、ワイヤーを張りめぐらせたフェンスに、侵入者によってワイヤーが切断されたときに同時に切断されるように光ファイバを張りめぐらせ、光ファイバの切断を光ファイバ切断検出手段で検出するものがある。光ファイバ切断検出手段としては、例えば、光ファイバにレーザー光を入射して後方散乱させ、その反射光を受光するまでの時間を測定することで、光ファイバの切断の有無を検出するOTDR(Optical Time DomainReflectometer) などが用いられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述した従来のメタル線を張りめぐらせた侵入検出装置では、落雷や空間ノイズなどの電磁気的なノイズによる影響で誤動作が生じるという問題がある。また、メタル線が、腐食により、破損および断線してしまう可能性が高いという問題もある。
【0005】また、前述した従来の光ファイバを張りめぐらせた侵入検出装置では、電磁気的なノイズによる誤動作はないが、後方散乱光の反射光の受光量が低いため、長い検出距離を持たせることが困難であるという問題がある。また、OTDR自体が非常に高価であるという問題がある。
【0006】また、前述した従来のメタル線や光ファイバを張りめぐらせた侵入検出装置では、メタル線や光ファイバが切断されない限り侵入を検知できず、例えば、侵入者がワイヤーの位置をずらして侵入した場合には、当該侵入を検知できないという問題がある。
【0007】また、上述したような侵入検出装置は、通常、屋外に配設されるが、この場合に、温度変化や風雨などの環境的な要因により、侵入検出の精度が低下することがあるという問題がある。
【0008】本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みてなされ、監視領域への物の侵入を安定して高い精度で検出できる侵入検出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明の侵入検出装置は、監視領域への物の侵入の有無を検出する侵入検出装置であって、前記監視領域に応じて配設され、外力が加えられたときに、伝搬する光を当該外力に応じて偏波変動させる光伝搬線と、前記光伝搬線の一端部に設けられ、前記光伝搬線内に光を出射する光源と、前記光伝搬線の他端部に設けられ、前記光伝搬線内を伝搬する光の偏波変動に応じた周波数を持つ第1の検出信号を生成する検出信号生成手段と、前記第1の検出信号に含まれる周波数成分のうち、前記物の侵入が無いときに前記光伝搬線内を伝送する光に生じた偏波変動による周波数成分を除去して第2の検出信号を生成するフィルタ手段と、前記第2の検出信号に基づいて前記光の偏波変動を監視し、当該監視の結果に基づいて監視領域への前記者の侵入の有無を判断する侵入判断手段とを有する。
【0010】本発明の侵入検出装置では、光源から出射された光が、前記光伝搬線内に伝送して検出信号生成手段に入射する。このとき、例えば、人の手などにより、光伝搬線に外力が加えられると、当該光伝搬線を伝送する光に偏波変動が発生する。検出信号生成手段では、前記光伝搬線内を伝搬する光の偏波変動に応じた周波数を持つ第1の検出信号が生成される。次に、フィルタ手段によって、前記第1の検出信号に含まれる周波数成分のうち、前記物の侵入が無いときに前記光伝搬線内を伝送する光に生じた偏波変動による周波数成分が除去されて第2の検出信号が生成される。次に、侵入判断手段によって、前記第2の検出信号に基づいて前記光の偏波変動が監視され、当該監視の結果に基づいて監視領域への前記物の侵入の有無が判断される。
【0011】また、本発明の侵入検出装置は、好ましくは、前記フィルタ手段は、前記第1の検出信号に含まれる周波数成分のうち、約1Hz以下の周波数成分と、約50〜約200Hzの周波数成分を除去して前記第2の検出信号を生成する。
【0012】また、本発明の侵入検出装置は、好ましくは、前記検出信号生成手段は、前記光伝搬線の他端部に設けられ、入力した光を水平偏向成分と垂直偏向成分とに分離する分離部と、前記水平偏向成分および前記垂直偏向成分の光強度をそれぞれSおよびPとした場合に、(S−P)/(S+P)、S/(S+P)またはP/(S+P)に相当する演算処理を行い、当該演算処理の結果に応じた前記第1の検出信号を生成する検出信号生成部とを有する。
【0013】また、本発明の侵入検出装置は、好ましくは、前記検出信号生成手段およびフィルタ手段は、電気回路によって構成される。
【0014】また、本発明の侵入検出装置は、好ましくは、前記検出信号生成手段およびフィルタ手段は、演算処理回路で、プログラムを実行することによって実現される。
【0015】また、本発明の侵入検出装置は、好ましくは、前記光伝搬線は、光ファイバである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態に係わる侵入検出装置について説明する。
第1実施形態図1は、本実施形態の侵入検出装置1の構成図である。本実施形態では、図1に示すように、フェンス10によって2次元の監視領域が規定されている。侵入検出装置1は、侵入者がフェンス10を破壊あるいは変形させて、監視領域に侵入する行為を検出する。
【0017】図1に示すように、侵入検出装置1は、光源2、光ファイバ4および侵入検出モジュール6を有する。光源2は、光ファイバ4の一端部から、光ファイバ4内に例えばレーザー光による光信号を出射する。
【0018】光ファイバ4は、ワイヤーを2次元的に弾力性を持たせた状態で張りめぐらせて構成されたフェンス10上に配設されている。具体的には、光ファイバ4は、複数の折り返し部を形成しながらフェンス10の略全域に所定の張力を持って張りめぐらされるように、フェンス10を支持するために所定間隔で設けられたポール5上に光ファイバ固定部12によって固定されている。光ファイバ4は、例えば、侵入行為によってフェンス10のワイヤーが引っ張られたり、切断されると、当該侵害行為による力が光ファイバ4に外力として伝わり、光ファイバ4の当該外力が加えられた部分に歪みが生じ、その結果、光ファイバ4内の当該歪みが生じた部分の屈折率分布が変化して当該部分を通過する光信号の偏波状態が変化する。侵入検出装置1では、後述するように、当該光信号の偏波変動に基づいて、侵入検出モジュール6において侵入行為の有無を検出する。
【0019】侵入検出モジュール6は、光ファイバ4の他端部から出射される光の偏波変動を検出し、フェンス10によって規定された監視領域内に何者かが侵入したか否かを検出する。
【0020】以下、侵入検出モジュール6について詳細に説明する。図1に示すように、侵入検出モジュール6は、偏波ビームスプリッタ20、光強度検出部21S,21P、演算処理部22、バンドパスフィルタ23、A/D変換部24および侵入判断部25を有する。偏波ビームスプリッタ20は、光ファイバ4から入力した光信号を水平偏向成分S20Sと垂直偏向成分S20Pとに分離し、水平偏向成分S20Sを光強度検出部21Sに出力し、垂直偏向成分S20Pを光強度検出部21Pに出力する。
【0021】光強度検出部21Sは、偏波ビームスプリッタ20から入力した水平偏向成分S20Sの光強度を検出し、当該検出した光強度Sを示す電気信号である検出信号S21Sを演算処理部22に出力する。光強度検出部21Pは、偏波ビームスプリッタ20から入力した垂直偏向成分S20Pの光強度を検出し、当該検出した光強度Pを示す電気信号である検出信号S21Pを演算処理部22に出力する。
【0022】演算処理部22は、光強度検出部21S,21Pから入力した検出信号S21SとS21Pとがそれぞれ示す光信号S4の水平偏向成分の光強度Sと垂直偏向成分の光強度Pとを用いて以下に示す演算を行い、当該演算の結果を示す演算結果信号S22(本発明の第1の検出信号)をバンドパスフィルタ23に出力する。すなわち、演算処理部22は、下記式(1)に相当する演算処理を、光強度検出部21S,21Pからの検出信号S21S,S21Pが示す光強度S,Pを用いて行って比率Rを示す演算結果信号S22を生成する。
【0023】
【数1】
R=(S−P)/(S+P) …(1)
【0024】演算処理部22は、例えば、上記(1)の演算を行う論理回路を用いて構成される。なお、本発明では、演算処理部22において、例えば下記式(2)あるいは(3)に相当する演算を行って比率Rを示す演算結果信号S22を生成してもよい。
【0025】
【数2】
R=S/(S+P) …(2)
【0026】
【数3】
R=P/(S+P) …(3)
【0027】バンドパスフィルタ23は、光ファイバ4内を伝送中の光信号に生じる例えば温度変化や風雨などの周囲の環境的な要因による偏波変動の影響を除去して侵入判断部25における侵入判断を高精度なものにするために、演算処理部22から入力した比率Rを示す演算結果信号S22に含まれる周波数成分のうち約1Hz以下の周波数成分と、約50〜約200Hzの周波数成分とを除去し、当該周波数成分が除去された演算結果信号S23(本発明の第2の検出信号)をA/D変換部24に出力する。光信号に偏波変動を生じさせる環境的な要因としては、温度、湿度、風および雨などがある。これは、例えば、直射日光による温度上昇によって光ファイバ4が延びたり、光ファイバ4内の光屈折率が変化したり、風雨によって光ファイバ4が振動するためである。
【0028】なお、図1に示すように、両端が光ファイバ固定部12によって固定されている光ファイバ4の振動周波数Fは、隣接した光ファイバ固定部12の間の光ファイバ4の長さLと、光ファイバ4の張力Tと、光ファイバ4の単位長さ当たりの重量σと、1以上の整数の定数値kとを用いて、近似的に、下記式(4)のように示される。
【0029】
【数4】
F=(k/2L)×(T/σ)1/2 …(4)
【0030】ところで、図1に示す侵入検出装置1を、温度変化や風雨などの環境的な要因による影響を受けない屋内に配置した場合、演算結果信号S23の振幅(電圧レベル)の時間的変化は、例えば図2に示すようになった。また、図1に示す侵入検出装置1を、上記環境的な要因による影響を受ける屋外配置した場合、演算結果信号S23の振幅(電圧レベル)の時間的変化は、例えば図3に示すようになった。また、図1に示す侵入検出装置1を、上記環境的な要因による影響を受けない屋内に配置した場合、手などを用いて光ファイバ4をずらしてフェンス10によって規定された監視領域に人間などが侵入した場合の演算結果信号S23の振幅(電圧レベル)の時間的変化は、例えば図4(A)に示すようになった。
【0031】また、図4(A)に示す波形の演算結果信号S23をフーリエ変換を用いて周波数解析すると、図4R>4(B)に示すようになる。図4(B)から、手などを用いて光ファイバ4をずらしてフェンス10によって規定された監視領域に人間などが侵入した場合の光ファイバ4内で生じる偏波変動は、周波数約1〜約50Hzの周波数成分で構成されていることが分かる。また、図2および図3に示す波形データを含む種々のデータから、演算結果信号S23に含まれる、温度変化による光ファイバ4内の偏波変動の周波数成分は一般的に約1Hz以下であり、風雨による光ファイバ4内の偏波変動の周波数成分は一般的に約50Hz〜約200Hzであることが分かった。従って、バンドパスフィルタ23では、演算結果信号S22に含まれる周波数成分のうち約1Hz以下の周波数成分と、約50Hz〜約200Hzの周波数成分とを除去して演算結果信号S23を生成する。
【0032】A/D変換部24は、演算結果信号S23をアナログからデジタルに変換して演算結果信号S24を生成する。
【0033】侵入判断部25は、A/D変換部24から入力したデジタルの演算結果信号S24の振幅の最大値あるいはその時間微分値などを監視し、当該監視の結果に基づいて、フェンス10によって規定された監視領域への侵入行為が行われたか否かを判断する。侵入判断部25は、上記監視領域への侵入行為が行われたと判断すると、例えば、警報を出力したり、所定の管理所への通報を行う。
【0034】以下、図1に示す侵入検出装置1を屋外に設置した場合の侵入検出装置1の作用について説明する。先ず、フェンス10上に張りめぐらされた光ファイバ4に、光源2から光信号が出射され、当該光信号が光ファイバ4内を伝送中に偏波変動し、当該偏波変動した光信号S4が侵入検出モジュール6に入射する。侵入検出モジュール6では、偏波ビームスプリッタ20において、入射した光信号S4を、水平偏向成分S20Sと垂直偏向成分S20Pとに分離し、水平偏向成分S20Sを光強度検出部21Sに出力し、垂直偏向成分S20Pを光強度検出部21Pに出力する。
【0035】次に、光強度検出部21Sにおいて、偏波ビームスプリッタ20から入力した水平偏向成分S20Sの光強度を検出し、当該検出した光強度Sを示す電気信号である検出信号S21Sを演算処理部22に出力する。また、光強度検出部21Pにおいて、偏波ビームスプリッタ20から入力した垂直偏向成分S20Pの光強度を検出し、当該検出した光強度Pを示す電気信号である検出信号S21Pを演算処理部22に出力する。
【0036】次に、演算処理部22において、光強度検出部21S,21Pから入力した光信号S4の水平偏向成分の光強度Sと、垂直偏向成分の光強度Pとを用いて例えば前記式(1)に示す演算を行い、当該演算の結果を示す演算結果信号S22をバンドパスフィルタ23に出力する。
【0037】次に、バンドパスフィルタ23において、演算結果信号S22に含まれる周波数成分のうち約1Hz以下の周波数成分と、約50〜約200Hzの周波数成分とを除去して演算結果信号S23を生成し、当該演算結果信号S23をA/D変換部24に出力する。これにより、例えば、温度変化や風雨などの環境的な要因によって、光ファイバ4内を伝送している光信号に生じた偏波変動による周波数成分が除去された演算結果信号S23を生成できる。
【0038】次に、A/D変換部24において、演算結果信号S23をアナログからデジタルに変換して演算結果信号S24を生成し、演算結果信号S24を侵入判断部25に出力する。
【0039】次に、侵入判断部25において、A/D変換部24から入力したデジタルの演算結果信号S24の振幅の最大値あるいはその時間微分値などを監視することで光ファイバ4からの光信号S4の偏波変動を検出し、当該検出の結果に基づいて、フェンス10によって規定された監視領域への侵入行為が行われたか否かを判断する。このとき、演算結果信号S24は、既に前述したように環境的な要因によって生じた偏波変動による周波数成分が除去されたものであるため、侵入判断部25は、演算結果信号S24に基づいて、環境的な要因を考慮せずに、光ファイバ4に侵入行為による偏波変動が生じたか否かを判断でき、侵入行為の有無を簡単な処理で正確に判断できる。侵入判断部25は、上記監視領域への侵入行為が行われたと判断すると、例えば、警報を出力したり、所定の管理所への通報を行う。
【0040】以上説明したように、侵入検出装置1によれば、侵入検出装置1が配置された環境的な要因による影響を受けずに、侵入防止用のフェンスなどにによって規定される2次元的な監視領域への侵入行為を安定して高精度に検出できる。また、侵入検出装置1によれば、侵入者が、当該フェンスを切断せずに、例えば、フェンスのワイヤーをずらして侵入行為を行った場合にも、当該侵入行為を検出できる。また、侵入検出装置1によれば、光ファイバを用いていることから、電磁気的なノイズの影響を受けずに、侵入の有無を検出できる。また、侵入検出装置1によれば、前述した従来の侵入検出装置のようにOTDRを用いてレーザー光を後方散乱させた反射光を受光して検出を行うのでなく、光ファイバを伝搬する直接光を受光して検出するため、受光量を増大させることができる。その結果、長い検出距離を持たせることができる。また、OTDRを用いた場合に比べて、装置を安価にできる。
【0041】第2実施形態図5は、本実施形態の侵入検出装置31の構成図である。図5に示すように、侵入検出装置31は、光源2、光ファイバ4および侵入検出モジュール36を有する。図5において、図1と同一符号を付した光源2および光ファイバ4は、前述した第1実施形態で説明したものと同じである。また、光ファイバ4は、第1実施形態と同様に、ワイヤーを2次元的に弾力性を持たせた状態で張りめぐらせて構成されたフェンス10上に配設されている。侵入検出装置31は、侵入検出モジュール36の構成が、図1に示す侵入検出モジュール6と異なる。
【0042】以下、侵入検出モジュール36について詳細に説明する。図5に示すように、侵入検出モジュール6は、偏波ビームスプリッタ20、光強度検出部21S,21P、A/D変換部34S,34Pおよび侵入判断部35を有する。ここで、偏波ビームスプリッタ20および光強度検出部21S,21Pは、第1実施形態で説明したものと同じである。
【0043】A/D変換部34Sは、光強度検出部21Sから入力した検出信号S21Sを、アナログからデジタルに変換して検出信号S34Sを生成し、これをフィルタ処理・侵入判断部35に出力する。A/D変換部34Pは、光強度検出部21Pから入力した検出信号S21Pを、アナログからデジタルに変換して検出信号S34Pを生成し、これをフィルタ処理・侵入判断部35に出力する。
【0044】フィルタ処理・侵入判断部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit) などを有し、所定のプログラムを実行することで、以下に示す処理を行う。すなわち、フィルタ処理・侵入判断部35は、検出信号S34S,S34Pが示す光強度S,Pを用いて前記式(1),(2)あるいは(3)に示す演算を行って比率Rを示す第1の演算結果信号を生成する。次に、フィルタ処理・侵入判断部35は、前記生成した第1の演算結果信号に含まれる周波数成分のうち約1Hz以下の周波数成分と、約50〜約200Hzの周波数成分とを除去して第2の演算結果信号を生成する。次に、フィルタ処理・侵入判断部35は、前記生成した第2の演算結果信号の振幅の最大値あるいはその時間微分値などを監視し、当該監視の結果に基づいて、フェンス10によって規定された監視領域への侵入行為が行われたか否かを判断する。フィルタ処理・侵入判断部35は、上記監視領域への侵入行為が行われたと判断すると、例えば、警報を出力したり、所定の管理所への通報を行う。
【0045】侵入検出装置31によっても、前述した第1実施形態の侵入検出装置1と同様の効果を得ることができる。また、侵入検出装置31によれば、フィルタ処理・侵入判断部35における処理は、プログラムの記述に基づいて行うため、プログラムの記述を変更することでき、フィルタ処理の特性や侵入判断の処理内容を柔軟に変更できる。
【0046】第3実施形態本実施形態の侵入検出装置は、光ファイバの配設パターンおよび配設対象を除いて、基本的に図1に示す侵入検出装置1あるいは図5に示す侵入検出装置31と同じ構成をしている。図6は、本実施形態の侵入検出装置における光ファイバの配設パターンおよび配設対象を説明するための図である。本実施形態の侵入検出装置は、床などに規定された2次元的な監視領域に侵入物があったか否かを検出する際に用いられる。
【0047】図6に示すように、本実施形態の侵入検出装置では、1本の光ファイバ14が、光ファイバ敷設部16内で網目を形成するように張りめぐらされており、光ファイバ敷設部16が上部板18と下部板19とによって挟み込まれた状態で、例えば、床などに配設される。なお、上部板18の上には、例えば、マットや人工芝などのように、侵入物によって踏まれたときに、当該踏まれた力を光ファイバ14に効率的に伝達できる弾力性のある部材を配設して、侵入検出装置の存在を目立たないようにすることが望ましい。また、光ファイバ14が形成する網目の大きさは、例えば、人間などの侵入を検出する場合には、人間の足の大きさより小さく設定することが望ましい。
【0048】また、上部板18には、図7に示すように、光ファイバ14を押圧するための複数の凸部18aがマトリクス状に配設されている。また、下部板19には、図7に示すように、上部板18の凸部18aと対向する位置に、複数の凸部19aがマトリクス状に配設されている。
【0049】図6に示すように光ファイバ14を配設した本実施形態の侵入検出装置によれば、例えば、侵入者が上部板18を足で踏みつけたときに、当該踏みつけ力が、凸部18aおよび19aを介して、上部板18と下部板19との間に配設されている光ファイバ14に伝達され、光ファイバ14内の屈折率が変化して、図1あるいは図5に示す光源2から出射され光ファイバ14内を伝搬している光に偏波変動が生じ、当該偏波変動が図1に示す侵入検出モジュール6あるいは図5に示す侵入検出モジュール36において検出される。そして、侵入判断部25あるいはフィルタ処理・侵入判断部35から警報が出力される。
【0050】なお、上述した例では、図7に示すように、上部板18の凸部18aと下部板19の凸部19aとを対向させて配置した場合を例示したが、例えば、図8R>8に示すように、凸部18aと凸部19aとが噛み合うように配設してもよい。また、上部板18および下部板19に凸部を設けないよう構成にしてもよい。
【0051】本発明は上述した実施形態には限定されない。例えば、本発明の監視領域は、特に前述したものには限定されない。また、光ファイバの配設パターンは、監視領域の形状に応じて、任意に変更可能である。
【0052】また、上述した実施形態では、1本の光ファイバを監視領域内に張りめぐらせた場合を例示したが、2本以上の光ファイバを監視領域内に張りめぐらせてもよい。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の侵入検出装置によれば、監視領域への物の侵入を安定して高い精度で検出できる。また、本発明の侵入検出装置によれば、光ファイバを切断せずに行われた侵入行為も検出できる。また、本発明の侵入検出装置によれば、電磁気的なノイズの影響を受けずに、安価な構成で、侵入物の有無を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の侵入検出装置の構成図である。
【図2】図2は、図1に示す侵入検出装置を温度変化や風雨などの環境的な要因による影響を受けない屋内に配置した場合における、演算結果信号3の振幅(電圧レベル)の時間的変化を示す図である。
【図3】図3は、図1に示す侵入検出装置1を、環境的な要因による影響を受ける屋外配置した場合における、演算結果信号の振幅(電圧レベル)の時間的変化を示す図である。
【図4】図4(A)は図1に示す侵入検出装置を、上記環境的な要因による影響を受けない屋内に配置した場合において、手などを用いて光ファイバをずらしてフェンスによって規定された監視領域に人間などが侵入した場合の演算結果信号振幅(電圧レベル)の時間的変化を示す図であり、図4(B)は図4(A)に示す波形の演算結果信号をフーリエ変換を用いて周波数解析したときの波形図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態の侵入検出装置の構成図である。
【図6】図6は、本発明の第3実施形態の侵入検出装置における光ファイバの配設パターンおよび配設対象を説明するための図である。
【図7】図7は、図6に示す上部板および下部板の断面構造を説明するための図である。
【図8】図7は、図6に示す上部板および下部板の断面構造のその他の例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…侵入検出装置、2…光源、4…光ファイバ、5…ポール、6,36…侵入検出モジュール、10…フェンス、12…光ファイバ固定部、20…偏波ビームスプリッタ、21S,21P…光強度検出部、22…演算処理部、23…バンドパスフィルタ、24,34S,34P…A/D変換部、25…侵入判断部、35…フィルタ処理・侵入判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】監視領域への物の侵入の有無を検出する侵入検出装置であって、前記監視領域に応じて配設され、外力が加えられたときに、伝搬する光を当該外力に応じて偏波変動させる光伝搬線と、前記光伝搬線の一端部に設けられ、前記光伝搬線内に光を出射する光源と、前記光伝搬線の他端部に設けられ、前記光伝搬線内を伝搬する光の偏波変動に応じた周波数を持つ第1の検出信号を生成する検出信号生成手段と、前記第1の検出信号に含まれる周波数成分のうち、前記物の侵入が無いときに前記光伝搬線内を伝送する光に生じた偏波変動による周波数成分を除去して第2の検出信号を生成するフィルタ手段と、前記第2の検出信号に基づいて前記光の偏波変動を監視し、当該監視の結果に基づいて監視領域への前記者の侵入の有無を判断する侵入判断手段とを有する侵入検出装置。
【請求項2】前記フィルタ手段は、前記第1の検出信号に含まれる周波数成分のうち、約1Hz以下の周波数成分と、約50〜約200Hzの周波数成分とを除去して前記第2の検出信号を生成する請求項1に記載の侵入検出装置。
【請求項3】前記検出信号生成手段は、前記光伝搬線の他端部に設けられ、入力した光を水平偏向成分と垂直偏向成分とに分離する分離部と、前記水平偏向成分および前記垂直偏向成分の光強度をそれぞれSおよびPとした場合に、(S−P)/(S+P)、S/(S+P)またはP/(S+P)に相当する演算処理を行い、当該演算処理の結果に応じた前記第1の検出信号を生成する検出信号生成部とを有する請求項1または請求項2に記載の侵入検出装置。
【請求項4】前記検出信号生成手段およびフィルタ手段は、電気回路によって構成される請求項1〜3のいずれかに記載の侵入検出装置。
【請求項5】前記検出信号生成手段およびフィルタ手段は、演算処理回路で、プログラムを実行することによって実現される請求項1〜3のいずれかに記載の侵入検出装置。
【請求項6】前記光伝搬線は、光ファイバである請求項1〜5のいずれかに記載の侵入検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−6055(P2001−6055A)
【公開日】平成13年1月12日(2001.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−175759
【出願日】平成11年6月22日(1999.6.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】