侵入検知システム
【課題】検知範囲を所望範囲に設定でき、所望検知範囲外の物体移動による誤検知を低減し得る侵入検知システムを提供する。
【解決手段】侵入監視エリア15内に、侵入を検知するための検知用信号を送信する送信側漏洩伝送路とこの送信側漏洩伝送路から漏洩した検知用信号を受信する受信側漏洩伝送路とを離間して敷設し、受信側漏洩伝送路に受信された検知用信号の変化に基づき、侵入監視エリアへの侵入物体の有無を検知する侵入検知システムにおいて、送信側漏洩伝送路または受信側漏洩伝送路のいずれか一方の漏洩伝送路のうち、少なくともその一部を表面波型漏洩同軸伝送路22で構成し、他方の漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路24で構成した。
【解決手段】侵入監視エリア15内に、侵入を検知するための検知用信号を送信する送信側漏洩伝送路とこの送信側漏洩伝送路から漏洩した検知用信号を受信する受信側漏洩伝送路とを離間して敷設し、受信側漏洩伝送路に受信された検知用信号の変化に基づき、侵入監視エリアへの侵入物体の有無を検知する侵入検知システムにおいて、送信側漏洩伝送路または受信側漏洩伝送路のいずれか一方の漏洩伝送路のうち、少なくともその一部を表面波型漏洩同軸伝送路22で構成し、他方の漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路24で構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、侵入監視エリア内に漏洩伝送路を敷設して人等の侵入物体の有無を検知する侵入検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の侵入検知システムにおいては、特許文献1に示すように、送信側漏洩伝送路と受信側漏洩伝送路には放射型漏洩同軸伝送路を用い、送信側漏洩伝送路から漏洩した検知用信号を受信側漏洩伝送路で受信し、侵入物により検知用信号の信号レベルの変化にもとづき侵入物を検知するように構成されている。
放射型漏洩同軸伝送路は漏洩波モードにより電波を伝播する漏洩同軸ケーブルを用いた伝送路で、伝送路短手方向(漏洩伝送路方向の直角外側の方向)に多く検知用信号を放射する。
【0003】
【特許文献1】特開2007−179402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、侵入検知システムは、物体による検知用信号の散乱を観測するので、伝送路短手方向へ多く検知用信号を放射すると、伝送路短手方向を移動する物体による検知用信号の散乱が強くなる。
このことにより、検知範囲を所望の侵入監視エリアに設定したくても、実際の検知エリアは所望の侵入監視エリアより大きくなってしまう場合がある。
このため、物体サイズが非常に大きい場合、伝送路からの距離が遠くても、侵入監視エリアより外側の移動物体を不要に検知してしまう問題点があった。
【0005】
ところで、伝送路の周囲極近傍だけに表面電界が生じる表面波型漏洩同軸伝送路(表面波モードにより電波を伝播する漏洩同軸ケーブルを用いた伝送路)が知られているが、この表面波型漏洩同軸伝送路を用いると、検知用信号が伝送路の極近傍だけにしか届かないため、検知エリアが非常に小さくなりすぎてしまう問題点があった。
このことにより、所望の侵入監視エリアに対して検知できる伝送路からの高さが低くなってしまうという問題点があった。
以上に示すように、侵入検知システムにおいて放射型漏洩同軸伝送路を用いた場合には、遠方の不要な物体を検知してしまう問題があり、表面波型漏洩同軸伝送路を用いた場合には、必要以上に検知エリアが狭くなる問題があった。
【0006】
この発明は前記のような問題に鑑み、検知範囲を所望範囲に設定でき、所望検知範囲外の物体移動による誤検知を低減し得る侵入検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、侵入監視エリア内に、検知用信号を送信する送信側漏洩伝送路及びこの送信側漏洩伝送路から送信された検知用信号を受信する受信側漏洩伝送路を敷設し、前記受信側漏洩伝送路に受信された前記検知用信号の変化に基づき、前記侵入監視エリアへの侵入物体の有無を検知する侵入検知システムにおいて、前記送信側漏洩伝送路または受信側漏洩伝送路のいずれか一方の漏洩伝送路のうち、少なくともその一部を表面波型漏洩同軸伝送路で構成し、他方の漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路で構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の侵入検知システムによれば、高さ方向の検知範囲は変えずに、横幅の検知範囲を限定し、所望検知範囲外の物体移動による誤検知を低減し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
まず、この発明の基本となる侵入検知システムの概要を図1〜図6により説明する。
図1は、侵入検知システムの基本構成を示す図で、侵入検知装置1と、これに接続され侵入監視エリア内に併設された送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2で構成されている。侵入検知装置1は、送信回路3、受信回路4及び侵入検知部5で構成されている。送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2は、たとえば市販の漏洩同軸ケーブルなどを使用する。送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2の漏洩箇所21TH、22THは、市販の漏洩同軸ケーブルでは数メートル間隔にその外皮を貫通する貫通スロットである。
送信側の漏洩伝送路2−1に侵入検知装置1の送信回路3から検知用信号が漏洩伝送路2−1に送信され、その漏洩箇所21THから放射され、受信側の漏洩伝送路2−2で受信される。受信側の漏洩伝送路2−2で受信した検知用信号が変化すれば侵入検知部5により人等の侵入物体があったものと判定される。
【0010】
ここで、図2を用いて基本的な侵入検知方法の一例を説明する。
送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2として市販の漏洩同軸ケーブルを使用し、送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2との間隔を数メートル離間して敷設し、図2に示すように、例えば、送信回路3から1個の送信パルスを送信した場合、送信側の漏洩伝送路2−1の第1番目(最初)の孔(貫通スロット)からの漏洩電波は受信側の漏洩伝送路2−2の第1番目(最初)の孔(貫通スロット)を介して受信され受信回路4に受信信号として到達するが、その到達時間は送信信号発信からΔT1後である。
同様に、送信回路3から1個の送信パルスを送信した場合、送信側の漏洩伝送路2−1の第2番目の孔からの漏洩電波は、受信側の漏洩伝送路2−2の第2番目の孔を介して受信され受信回路4に受信信号として到達するが、その到達時間は送信信号発信からΔT2後である。
同様に第3番目の孔を経た受信信号の到達時間は送信信号発信からΔT3後である。
そして、これらΔT1、ΔT2、ΔT3・・・、つまり到達時間ΔTは、信号伝送路の長さがわかれば、信号の伝播速度が30万km/秒(空気中の場合)であることから演算により容易に求められる。
【0011】
従って、受信回路4においては、システム構成から事前に演算した到達時間ΔTのデータを保存しておくことにより、受信した実受信信号を当該保存データと照合すれば、どの孔(貫通スロット)を経由してきた受信信号であるか判別できる。
また、漏洩電波の存在領域に人が侵入した場合、侵入者により、当該漏洩電波が、形状が変わるなど変化する。
従って、受信回路4が受信した信号の変化を侵入検知部5で検知すれば、送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2に沿ったどの位置に侵入したのか、検知し、報知することができる。
【0012】
なお、実際には、送信信号としては単一パルスを数秒に1度程度発信するのではなく、例えば図3に例示するようなPN符号と言われている擬似拡散符号、例えば数万個のランダムパルス列からなるコード化信号を使えことにより、検知精度を上げることができる。同一のPN符号を繰り返し発信してもよいし、異なるPN符号を図3の第1、第2、第3送信信号のように次々に発信してもよい。PN符号自体は一般的に知られている公知の符合である。
図1に例示の侵入検知システムで、PN符号を使う場合は、侵入検知装置1は、拡散符号を発生する送信回路3の出力で、高周波の搬送波を位相変調し、送信側漏洩伝送路2−1に対して出力する。送信側漏洩伝送路2−1から出力された電波は、受信側漏洩伝送路2−2で受信され、受信回路4を経由して、侵入検知部5へ伝達される。侵入検知部5では、受信電波が侵入距離に関連した参照拡散符号と位相演算され、(これを逆拡散という。)演算結果として得られた受信電波の電界強度の変化により侵入距離に対応する侵入者検知が行われる。
【0013】
前記のような侵入検知システムを採用した場合、発明者などの試験研究では、漏洩伝送路2−1、2−2を600m前後敷設して、漏洩伝送路2−1、2−2への人の侵入の有無及び侵入位置を、600m前後の長距離に渡って検知できることがわかっている。人の侵入の有無及び侵入位置を600m前後の長距離に亘って検知できれば一般の工場、変電所、空港、駐車場等にも適用可能である。
ところで、600m前後の長距離に亘って検知できるようになれば、600m前後の長距離になるが故に、侵入監視エリアに、たとえば通用門があったり、一般道が介在したりするケースが出てくる。このような場合は、非検知領域を設定して、通用門や一般道を通る人を、侵入者と見なさないようにシステム上で工夫することも必要となる。例えば、通用門や一般道を通る人により漏洩電波は乱れて受信信号は変化するが、受信側では侵入者と見なさない処理が行われるようにすることも必要となる。
【0014】
そこで、この種の侵入検知システムでは、図4に示すように、侵入検知装置1における侵入検知部5に、受信回路4での各受信信号の状態から侵入者の侵入位置を検知する侵入位置検知機能部51以外に、非検知領域を設定できる検知テーブル521を格納した記憶部52を設け、侵入位置検知機能部51で検知した侵入位置の情報と検知テーブル521の設定情報とを、CPU53で照合し、侵入位置検知機能部51で検知した侵入位置の情報が、検知テーブル521に設定された検知領域外であれば、検知結果出力部54から検知結果を出力しないようになされている。
【0015】
図5は侵入検知装置1における検知テーブル521の一例を示す図である。
図5及び前述の図1において、X1、X2、X3は侵入者を検知したい範囲(位置)であり、Y1、Y2は侵入者を検知したくない範囲(位置)である。図5に例示の検知テーブル521は、検知可能な侵入位置X1、X2、X3、Y1、Y2と検知エリア、非検知エリアとを関連付けた検知テーブルである。
侵入位置検知機能部51での侵入位置検知情報が、検知テーブル521における検知エリアに該当する場合は、検知結果を検知結果出力部54から出力し、検知テーブル521における非検知エリアに該当する場合は、検知結果を検知結果出力部54から出力することはしない。
【0016】
次に、図6に示す動作フローチャートを使って、図1、図4を参照しながら侵入位置装置1の動作を説明する。
図6のステップST11でシステムが動作を開始した後、図1における漏洩伝送路2−1、2−2間に侵入者が入ると、侵入検知装置1は、ステップST12で検知用信号である電磁波の変化「有り」かどうか判別し、電磁波の変化から侵入者の有無を判別する。
図6のステップST12での判定結果、電磁波の変化があった場合(侵入者があった場合)は、ステップST13において侵入位置検知機能部51(図4参照)により、その侵入位置がX1、X2、X3であるか否か判定される。
次にステップST14で、ステップST13の判定結果(侵入位置検知機能部51での侵入位置検知情報)と検知テーブル521のデータとを比較し、検知エリアでの侵入検知であれば、最終的に、侵入者ありと判断し、侵入者の侵入位置を、検知結果出力部54から出力する。検知テーブル521に設定された検知エリア外であれば、検知結果出力部54から検知結果が出力されない。
【0017】
なお、PN符号を使用した場合は、範囲X1、X2、X3は、参照拡散符号により、関係づけられている。例えば範囲X1は特定の参照拡散符号PNX1〜特定の参照拡散符号PNXXの範囲となる。
受信電波が、特定の参照拡散符号と位相演算され、特定の参照拡散符号に対する電界強度計算がされ、その電界強度の変化が大きい場合に、特定の参照拡散符号での侵入、即ち、範囲X1内での侵入と関係づけられる。
【0018】
前記のような侵入検知システムによれば、検知テーブル521と照合するだけで、容易に、かつ高精度に、侵入検知でき、しかも検知範囲、非検知範囲を設定でき、設定変更もでき、また、長距離に亘って、例えば、2m間隔で侵入検知したり、5m間隔で侵入検知したりすることもできる。侵入者検知システムの適用範囲も格段に拡大される。
以上が侵入検知システムの基本的な構成と動作である。
【0019】
ところで、この発明は、上述した基本的な侵入検知システムにおいて、検知範囲を所望範囲に設定し、所望検知範囲外の物体移動による誤検知を低減するために、送信側漏洩伝送路または受信側漏洩伝送路のいずれか一方の漏洩伝送路のうち、少なくともその一部を表面波型漏洩同軸伝送路で構成し、他方の漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路で構成したことを特徴とするものである。
図7は、この発明の実施の形態1に係る侵入検知システムの構成を示すもので、侵入監視エリア15を監視するために、検知用信号を送受信して侵入を検知する侵入検知装置21(図1の侵入検知装置1に相当)、この侵入検知装置21の検知用信号送信端に接続された表面波型漏洩同軸伝送路22、この表面波型漏洩同軸伝送路22の終端口に接続された送信用ターミネータ23、送信された検知用信号を受信するために、侵入検知装置21の検知用信号受信端に接続された放射型漏洩同軸伝送路24、この放射型漏洩同軸伝送路24の終端口に接続された受信用ターミネータ25及び侵入検知装置21にて侵入者を検知した後に監視員等に侵入者の有無を知らせる警報器26から構成されている。
【0020】
次に実施の形態1の動作について、図7,図8に基づいて説明する。
侵入を検知するために、侵入検知装置21の送信端に接続された表面波型漏洩同軸伝送路22にて検知用信号を送信し、放射型漏洩同軸伝送路24にて検知用信号を受信する。受信した検知用信号は侵入検知装置21に入力され、この信号を基に侵入検知を行う。
仮に、人が表面波型漏洩同軸伝送路22と放射型漏洩同軸伝送路24の間に侵入した場合、受信する検知用信号は、人体や衣服による検知用信号の反射や吸収が起きて、直前に取り込んだ検知用信号を比較した場合、無侵入時と比べて大きく変化する。侵入検知装置21は、人が侵入したことによる検知用信号の変化を観測する。
次に、侵入検知装置21はこの検知用信号の乱れについて、観測直後数点の検知用信号を用いて、これらの差分を求め、この差分値が所定の閾値を超えた場合に侵入と判断し、警報器26で知らせる。
【0021】
ここで、放射型漏洩同軸伝送路24と表面波型漏洩同軸伝送路22の特徴について示す。両伝送路とも意図的に伝送路外へ電波を放射させるためのものであるが、放射型漏洩同軸伝送路は漏洩波モードにより電波を伝播する漏洩同軸ケーブルを用いた伝送路で、伝送路短手方向(漏洩伝送路方向の直角外側の方向)に多く電波を放射し、一方、表面波型漏洩同軸伝送路は表面波モードにより電波を伝播する漏洩同軸ケーブル(開放同軸ケーブルとも呼ばれる)を用いた伝送路で、伝送路の周囲極近傍だけに表面電界を生じる。
このため両伝送路は、放射電波の伝送路短手方向距離に対する減衰量が異なり、放射型漏洩同軸伝送路では伝送路からの距離に反比例し、表面波型漏洩同軸伝送路では同距離に対して指数関数的に減衰する。従って、伝送路短手方向に多くの電波を放射する場合には、放射型漏洩同軸伝送路の方が優れている。
【0022】
図7において、検知用信号を送信するために用いている表面波型漏洩同軸伝送路22は、伝送路短手方向への放射減衰量が大きいため、実際の検知エリア16の伝送路からの距離17を狭くすることができる。
実験によると、放射型漏洩同軸伝送路の伝送路短手方向の検知範囲と表面波型漏洩同軸伝送路の伝送路短手方向の検知範囲では差が生じる。これを図8により説明する。
図8は検知用信号を送信するための表面波型漏洩同軸伝送路22、検知用信号を受信するための放射型漏洩同軸伝送路24、侵入監視エリア15、検知高さ19を示しているが、表面波型漏洩同軸伝送路22の伝送路短手方向の検知範囲17−1は、放射型漏洩同軸伝送路24の伝送路短手方向の検知範囲17−2より狭くなる。このことから、検知エリアを特に狭くしたい方向に表面波型漏洩同軸伝送路を配置すれば、不要な検知を避けられる。
【0023】
従って、図7のような構成とすることで、実際の検知エリア16と侵入監視エリア15を同範囲に確保することができ、侵入検知に対して信頼性の高いシステムを得ることができる。このことにより、図9に示すように希望検知範囲外の移動物体18による誤報を無くすことができる。
また、検知用信号を受信する伝送路に放射型漏洩同軸伝送路24を使用しているため、送・受信伝送路間の距離20を拡げることができ、検知できる高さ19を高くすることができる。
なお、送・受信伝送路を入れ替えて、送信側漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路で構成し、受信側漏洩伝送路を表面波型漏洩同軸伝送路で構成しても同様の効果を得ることができる。
【0024】
実施の形態2.
図10はこの発明の実施の形態2に係る侵入検知システムの構成図である。図10において、図7と同じ符号のブロックは実施の形態1に説明したもとの同一の機能を有する。
図10に示す侵入検知システムは、送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の途中に、伝送中の検知用信号を増幅する増幅器28を備えたことを特徴とするものである。
検知用信号は漏洩伝送路の伝送距離に応じて減衰するため、検知用信号レベルが所定の値以下となると正常な侵入検知ができなくなる。増幅器28は検知用信号が所定のレベル以下となる前に、検知用信号を増幅するように、図10に示すように送信側漏洩伝送路22の途中に挿入する。
【0025】
この増幅器28は送信側の漏洩伝送路の途中にのみ挿入し、受信側には挿入しない。その理由は、増幅器は信号レベルを増幅することができるが、同時にノイズを付加してしまうためである。受信側に挿入すると、受信信号の信号品質(信号対ノイズ比)が悪化する。そのため、受信側に挿入すると、逆に全体の検知性能が悪化し、検知エリアが狭くなるなど問題が生じる。送信信号は元々信号レベルが強いため、増幅器28によって生じるノイズは無視でき、送信側に追加した場合は検知性能が悪化するなどの問題が生じない。
以上のことから、検知用信号が所定のレベル以下となる前に、検知用信号を増幅するように、送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の途中に増幅器28を挿入することにより、長距離にわたって正確な侵入検知が可能となる。
【0026】
ところで、漏洩伝送路の直角方向の検知距離である侵入検知距離29を部分的に広げたい場合がある。
このようなとき、増幅器28を図11に示すように挿入すると侵入検知距離29を部分的に広げることができる。なお、侵入検知距離29を狭くしたい場合は減衰器を挿入すればよい。
また、周囲環境によって侵入検知距離が狭くなる場合がある。
たとえば、漏洩伝送路を地中に入れる場合、漏洩伝送路がやぶや樹林地帯の中を通過する場合などがある。このようなとき、増幅器28を図12に示すように挿入すると侵入検知距離29を広げることができる。
このように実施の形態2では送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の途中に増幅器28を挿入する構成とするため、長距離にわたって正確な侵入検知をする効果がある。
【0027】
実施の形態3.
図13は実施の形態3に係る侵入検知システムの構成図である。
図13に示す侵入検知システムは、送信側漏洩伝送路の一部(図では両端部)を表面波型漏洩同軸伝送路22−1,22−2で構成し、残りの部分(図では中間部)を放射型漏洩同軸伝送路24−1で構成したことを特徴とするものである。
図13において、漏洩伝送路から放射された検知用信号を反射や吸収することで、検知用信号を乱す。よって駐車場31などが存在する場所では、検知用信号は乱れやすい。車30などの影響で検知用信号が乱れると、散乱が大きくなる。すると正常な侵入検知ができなくなる。特に、送信側漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路とすると、放射される検知用信号の量が多いため、散乱が大きくなってしまう。駐車場31付近にて、車30などの影響による検知用信号の散乱を小さくするために、図13に示すように、送信側漏洩伝送路の一部に表面波型漏洩同軸伝送路22−1,22−2を設置する。表面波型漏洩同軸伝送路から放射される検知用信号の量は少なくなるために、車30などのの影響による検知用信号の乱れは小さくなる。
以上のことから、送信側漏洩伝送路の一部を表面波型漏洩同軸伝送路にすることで、より正確な侵入検知が可能となる。
【0028】
ところで、漏洩伝送路の直角方向の検知距離である侵入検知距離29を部分的に広げたい場合がある。このようなとき、図14に示すように送信側漏洩伝送路の一部に放射型漏洩同軸伝送路24−1を挿入すると侵入検知距離29を広げることができる。また実施の形態2と組み合わせることも可能であり、実施の形態2で示した増幅器28を付け加えることで侵入検知エリア15を適宜拡大することもできる。なお、侵入検知距離29を狭くしたい場合は減衰器を挿入すればよい。
これにより、実施の形態3では図13、図14のような構成をとることによって検知用信号を乱すものがあっても、正確な侵入検知を行える効果が生じる。
【0029】
実施の形態4.
図15は実施の形態4に係る侵入検知システムの構成図である。
図15に示す侵入検知システムは、送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路の所定箇所に、空中に電波を放射させない同軸伝送路を介在させたことを特徴とするもので、送信側漏洩伝送路の湾曲部に同軸伝送路32を用いて、直線以外にも検知用信号の送・受信伝送路及びこれに伴う侵入監視エリアを確保することができるようにしたものである。同軸伝送路32は、表面波型漏洩同軸伝送路や放射型漏洩同軸伝送路とは特性が違い、空中に電波を放射させない伝送路である。
【0030】
表面波型漏洩同軸伝送路は曲げてしまうと、放射特性を決める外部導体の形が変化して放射型漏洩同軸伝送路のような放射特性を示す。従って、図16に示すように表面波型漏洩同軸伝送路22を湾曲させると、湾曲箇所の実際の検知エリア16は、侵入監視エリア15に比べて範囲が大きくなってしまい、このエリアは誤報発生エリアとなってしまう。
この実施の形態4のように送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の湾曲箇所に、同軸伝送路32を用いることで、誤報発生エリアを無くし、かつ直線以外の表面波型漏洩同軸伝送路及びこれに伴う侵入監視エリアを確保することができる。
【0031】
実施の形態5.
図17は実施の形態5に係る侵入検知システムの構成図である。
図17に示す侵入検知システムは、受信側漏洩伝送路の終端箇所25を送信側漏洩伝送路の終端箇所23より遠方に配置したことを特徴とするものである。
図17に示すように、送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の伝送路長手方向に対する放射特性33は、送信用ターミネータ23の方向に向かって多く放射する。従って、このような放射特性を持つ伝送路を検知用信号の送信側として用いた場合、受信側漏洩伝送路の終端箇所25を送信側漏洩伝送路の終端箇所23より遠方に配置することで、検知用信号をより多く受信し、効率的に侵入監視エリアを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係る侵入検知システムの基本的な構成を示す図である。
【図2】図1の侵入検知システムにおける侵入位置の検知概念を説明するための図である。
【図3】図1の侵入検知システムにおける送信信号の一例を示す図である。
【図4】図1における侵入検知装置の内部構成を示すブロック図である。
【図5】図1における侵入検知装置における検知テーブルの一例を示す図である。
【図6】図1における侵入検知装置における動作フローを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【図8】実施の形態1に係る侵入検知システムの検知範囲を説明するため概念図である。
【図9】実施の形態1に係る侵入検知システムの検知範囲を説明するため概念図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【図11】実施の形態2に係る侵入検知システムの他の例を示す構成図である。
【図12】実施の形態2に係る侵入検知システムの更に他の例を示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【図14】実施の形態3に係る侵入検知システムの他の例を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【図16】実施の形態4に係る侵入検知システムを説明するための構成図である。
【図17】この発明の実施の形態5に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1:侵入検知装置 2−1:送信側伝送路 2−2:受信側伝送路 3:送信回路 4:受信回路 5:侵入検知部 51:侵入位置検知機能部 52:記憶部 521:検知テーブル 53:CPU 54:検知結果出力部
15:侵入監視エリア 16:実際の検知エリア 17:伝送路からの検知距離 20:伝送路間距離 20:伝送路間距離 21:侵入検知装置 22:表面波型漏洩同軸伝送路 23:送信用ターミネータ 24:放射型漏洩同軸伝送路 25:受信用ターミネータ 26:警報器
【技術分野】
【0001】
この発明は、侵入監視エリア内に漏洩伝送路を敷設して人等の侵入物体の有無を検知する侵入検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の侵入検知システムにおいては、特許文献1に示すように、送信側漏洩伝送路と受信側漏洩伝送路には放射型漏洩同軸伝送路を用い、送信側漏洩伝送路から漏洩した検知用信号を受信側漏洩伝送路で受信し、侵入物により検知用信号の信号レベルの変化にもとづき侵入物を検知するように構成されている。
放射型漏洩同軸伝送路は漏洩波モードにより電波を伝播する漏洩同軸ケーブルを用いた伝送路で、伝送路短手方向(漏洩伝送路方向の直角外側の方向)に多く検知用信号を放射する。
【0003】
【特許文献1】特開2007−179402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、侵入検知システムは、物体による検知用信号の散乱を観測するので、伝送路短手方向へ多く検知用信号を放射すると、伝送路短手方向を移動する物体による検知用信号の散乱が強くなる。
このことにより、検知範囲を所望の侵入監視エリアに設定したくても、実際の検知エリアは所望の侵入監視エリアより大きくなってしまう場合がある。
このため、物体サイズが非常に大きい場合、伝送路からの距離が遠くても、侵入監視エリアより外側の移動物体を不要に検知してしまう問題点があった。
【0005】
ところで、伝送路の周囲極近傍だけに表面電界が生じる表面波型漏洩同軸伝送路(表面波モードにより電波を伝播する漏洩同軸ケーブルを用いた伝送路)が知られているが、この表面波型漏洩同軸伝送路を用いると、検知用信号が伝送路の極近傍だけにしか届かないため、検知エリアが非常に小さくなりすぎてしまう問題点があった。
このことにより、所望の侵入監視エリアに対して検知できる伝送路からの高さが低くなってしまうという問題点があった。
以上に示すように、侵入検知システムにおいて放射型漏洩同軸伝送路を用いた場合には、遠方の不要な物体を検知してしまう問題があり、表面波型漏洩同軸伝送路を用いた場合には、必要以上に検知エリアが狭くなる問題があった。
【0006】
この発明は前記のような問題に鑑み、検知範囲を所望範囲に設定でき、所望検知範囲外の物体移動による誤検知を低減し得る侵入検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、侵入監視エリア内に、検知用信号を送信する送信側漏洩伝送路及びこの送信側漏洩伝送路から送信された検知用信号を受信する受信側漏洩伝送路を敷設し、前記受信側漏洩伝送路に受信された前記検知用信号の変化に基づき、前記侵入監視エリアへの侵入物体の有無を検知する侵入検知システムにおいて、前記送信側漏洩伝送路または受信側漏洩伝送路のいずれか一方の漏洩伝送路のうち、少なくともその一部を表面波型漏洩同軸伝送路で構成し、他方の漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路で構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の侵入検知システムによれば、高さ方向の検知範囲は変えずに、横幅の検知範囲を限定し、所望検知範囲外の物体移動による誤検知を低減し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
まず、この発明の基本となる侵入検知システムの概要を図1〜図6により説明する。
図1は、侵入検知システムの基本構成を示す図で、侵入検知装置1と、これに接続され侵入監視エリア内に併設された送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2で構成されている。侵入検知装置1は、送信回路3、受信回路4及び侵入検知部5で構成されている。送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2は、たとえば市販の漏洩同軸ケーブルなどを使用する。送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2の漏洩箇所21TH、22THは、市販の漏洩同軸ケーブルでは数メートル間隔にその外皮を貫通する貫通スロットである。
送信側の漏洩伝送路2−1に侵入検知装置1の送信回路3から検知用信号が漏洩伝送路2−1に送信され、その漏洩箇所21THから放射され、受信側の漏洩伝送路2−2で受信される。受信側の漏洩伝送路2−2で受信した検知用信号が変化すれば侵入検知部5により人等の侵入物体があったものと判定される。
【0010】
ここで、図2を用いて基本的な侵入検知方法の一例を説明する。
送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2として市販の漏洩同軸ケーブルを使用し、送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2との間隔を数メートル離間して敷設し、図2に示すように、例えば、送信回路3から1個の送信パルスを送信した場合、送信側の漏洩伝送路2−1の第1番目(最初)の孔(貫通スロット)からの漏洩電波は受信側の漏洩伝送路2−2の第1番目(最初)の孔(貫通スロット)を介して受信され受信回路4に受信信号として到達するが、その到達時間は送信信号発信からΔT1後である。
同様に、送信回路3から1個の送信パルスを送信した場合、送信側の漏洩伝送路2−1の第2番目の孔からの漏洩電波は、受信側の漏洩伝送路2−2の第2番目の孔を介して受信され受信回路4に受信信号として到達するが、その到達時間は送信信号発信からΔT2後である。
同様に第3番目の孔を経た受信信号の到達時間は送信信号発信からΔT3後である。
そして、これらΔT1、ΔT2、ΔT3・・・、つまり到達時間ΔTは、信号伝送路の長さがわかれば、信号の伝播速度が30万km/秒(空気中の場合)であることから演算により容易に求められる。
【0011】
従って、受信回路4においては、システム構成から事前に演算した到達時間ΔTのデータを保存しておくことにより、受信した実受信信号を当該保存データと照合すれば、どの孔(貫通スロット)を経由してきた受信信号であるか判別できる。
また、漏洩電波の存在領域に人が侵入した場合、侵入者により、当該漏洩電波が、形状が変わるなど変化する。
従って、受信回路4が受信した信号の変化を侵入検知部5で検知すれば、送信側の漏洩伝送路2−1及び受信側の漏洩伝送路2−2に沿ったどの位置に侵入したのか、検知し、報知することができる。
【0012】
なお、実際には、送信信号としては単一パルスを数秒に1度程度発信するのではなく、例えば図3に例示するようなPN符号と言われている擬似拡散符号、例えば数万個のランダムパルス列からなるコード化信号を使えことにより、検知精度を上げることができる。同一のPN符号を繰り返し発信してもよいし、異なるPN符号を図3の第1、第2、第3送信信号のように次々に発信してもよい。PN符号自体は一般的に知られている公知の符合である。
図1に例示の侵入検知システムで、PN符号を使う場合は、侵入検知装置1は、拡散符号を発生する送信回路3の出力で、高周波の搬送波を位相変調し、送信側漏洩伝送路2−1に対して出力する。送信側漏洩伝送路2−1から出力された電波は、受信側漏洩伝送路2−2で受信され、受信回路4を経由して、侵入検知部5へ伝達される。侵入検知部5では、受信電波が侵入距離に関連した参照拡散符号と位相演算され、(これを逆拡散という。)演算結果として得られた受信電波の電界強度の変化により侵入距離に対応する侵入者検知が行われる。
【0013】
前記のような侵入検知システムを採用した場合、発明者などの試験研究では、漏洩伝送路2−1、2−2を600m前後敷設して、漏洩伝送路2−1、2−2への人の侵入の有無及び侵入位置を、600m前後の長距離に渡って検知できることがわかっている。人の侵入の有無及び侵入位置を600m前後の長距離に亘って検知できれば一般の工場、変電所、空港、駐車場等にも適用可能である。
ところで、600m前後の長距離に亘って検知できるようになれば、600m前後の長距離になるが故に、侵入監視エリアに、たとえば通用門があったり、一般道が介在したりするケースが出てくる。このような場合は、非検知領域を設定して、通用門や一般道を通る人を、侵入者と見なさないようにシステム上で工夫することも必要となる。例えば、通用門や一般道を通る人により漏洩電波は乱れて受信信号は変化するが、受信側では侵入者と見なさない処理が行われるようにすることも必要となる。
【0014】
そこで、この種の侵入検知システムでは、図4に示すように、侵入検知装置1における侵入検知部5に、受信回路4での各受信信号の状態から侵入者の侵入位置を検知する侵入位置検知機能部51以外に、非検知領域を設定できる検知テーブル521を格納した記憶部52を設け、侵入位置検知機能部51で検知した侵入位置の情報と検知テーブル521の設定情報とを、CPU53で照合し、侵入位置検知機能部51で検知した侵入位置の情報が、検知テーブル521に設定された検知領域外であれば、検知結果出力部54から検知結果を出力しないようになされている。
【0015】
図5は侵入検知装置1における検知テーブル521の一例を示す図である。
図5及び前述の図1において、X1、X2、X3は侵入者を検知したい範囲(位置)であり、Y1、Y2は侵入者を検知したくない範囲(位置)である。図5に例示の検知テーブル521は、検知可能な侵入位置X1、X2、X3、Y1、Y2と検知エリア、非検知エリアとを関連付けた検知テーブルである。
侵入位置検知機能部51での侵入位置検知情報が、検知テーブル521における検知エリアに該当する場合は、検知結果を検知結果出力部54から出力し、検知テーブル521における非検知エリアに該当する場合は、検知結果を検知結果出力部54から出力することはしない。
【0016】
次に、図6に示す動作フローチャートを使って、図1、図4を参照しながら侵入位置装置1の動作を説明する。
図6のステップST11でシステムが動作を開始した後、図1における漏洩伝送路2−1、2−2間に侵入者が入ると、侵入検知装置1は、ステップST12で検知用信号である電磁波の変化「有り」かどうか判別し、電磁波の変化から侵入者の有無を判別する。
図6のステップST12での判定結果、電磁波の変化があった場合(侵入者があった場合)は、ステップST13において侵入位置検知機能部51(図4参照)により、その侵入位置がX1、X2、X3であるか否か判定される。
次にステップST14で、ステップST13の判定結果(侵入位置検知機能部51での侵入位置検知情報)と検知テーブル521のデータとを比較し、検知エリアでの侵入検知であれば、最終的に、侵入者ありと判断し、侵入者の侵入位置を、検知結果出力部54から出力する。検知テーブル521に設定された検知エリア外であれば、検知結果出力部54から検知結果が出力されない。
【0017】
なお、PN符号を使用した場合は、範囲X1、X2、X3は、参照拡散符号により、関係づけられている。例えば範囲X1は特定の参照拡散符号PNX1〜特定の参照拡散符号PNXXの範囲となる。
受信電波が、特定の参照拡散符号と位相演算され、特定の参照拡散符号に対する電界強度計算がされ、その電界強度の変化が大きい場合に、特定の参照拡散符号での侵入、即ち、範囲X1内での侵入と関係づけられる。
【0018】
前記のような侵入検知システムによれば、検知テーブル521と照合するだけで、容易に、かつ高精度に、侵入検知でき、しかも検知範囲、非検知範囲を設定でき、設定変更もでき、また、長距離に亘って、例えば、2m間隔で侵入検知したり、5m間隔で侵入検知したりすることもできる。侵入者検知システムの適用範囲も格段に拡大される。
以上が侵入検知システムの基本的な構成と動作である。
【0019】
ところで、この発明は、上述した基本的な侵入検知システムにおいて、検知範囲を所望範囲に設定し、所望検知範囲外の物体移動による誤検知を低減するために、送信側漏洩伝送路または受信側漏洩伝送路のいずれか一方の漏洩伝送路のうち、少なくともその一部を表面波型漏洩同軸伝送路で構成し、他方の漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路で構成したことを特徴とするものである。
図7は、この発明の実施の形態1に係る侵入検知システムの構成を示すもので、侵入監視エリア15を監視するために、検知用信号を送受信して侵入を検知する侵入検知装置21(図1の侵入検知装置1に相当)、この侵入検知装置21の検知用信号送信端に接続された表面波型漏洩同軸伝送路22、この表面波型漏洩同軸伝送路22の終端口に接続された送信用ターミネータ23、送信された検知用信号を受信するために、侵入検知装置21の検知用信号受信端に接続された放射型漏洩同軸伝送路24、この放射型漏洩同軸伝送路24の終端口に接続された受信用ターミネータ25及び侵入検知装置21にて侵入者を検知した後に監視員等に侵入者の有無を知らせる警報器26から構成されている。
【0020】
次に実施の形態1の動作について、図7,図8に基づいて説明する。
侵入を検知するために、侵入検知装置21の送信端に接続された表面波型漏洩同軸伝送路22にて検知用信号を送信し、放射型漏洩同軸伝送路24にて検知用信号を受信する。受信した検知用信号は侵入検知装置21に入力され、この信号を基に侵入検知を行う。
仮に、人が表面波型漏洩同軸伝送路22と放射型漏洩同軸伝送路24の間に侵入した場合、受信する検知用信号は、人体や衣服による検知用信号の反射や吸収が起きて、直前に取り込んだ検知用信号を比較した場合、無侵入時と比べて大きく変化する。侵入検知装置21は、人が侵入したことによる検知用信号の変化を観測する。
次に、侵入検知装置21はこの検知用信号の乱れについて、観測直後数点の検知用信号を用いて、これらの差分を求め、この差分値が所定の閾値を超えた場合に侵入と判断し、警報器26で知らせる。
【0021】
ここで、放射型漏洩同軸伝送路24と表面波型漏洩同軸伝送路22の特徴について示す。両伝送路とも意図的に伝送路外へ電波を放射させるためのものであるが、放射型漏洩同軸伝送路は漏洩波モードにより電波を伝播する漏洩同軸ケーブルを用いた伝送路で、伝送路短手方向(漏洩伝送路方向の直角外側の方向)に多く電波を放射し、一方、表面波型漏洩同軸伝送路は表面波モードにより電波を伝播する漏洩同軸ケーブル(開放同軸ケーブルとも呼ばれる)を用いた伝送路で、伝送路の周囲極近傍だけに表面電界を生じる。
このため両伝送路は、放射電波の伝送路短手方向距離に対する減衰量が異なり、放射型漏洩同軸伝送路では伝送路からの距離に反比例し、表面波型漏洩同軸伝送路では同距離に対して指数関数的に減衰する。従って、伝送路短手方向に多くの電波を放射する場合には、放射型漏洩同軸伝送路の方が優れている。
【0022】
図7において、検知用信号を送信するために用いている表面波型漏洩同軸伝送路22は、伝送路短手方向への放射減衰量が大きいため、実際の検知エリア16の伝送路からの距離17を狭くすることができる。
実験によると、放射型漏洩同軸伝送路の伝送路短手方向の検知範囲と表面波型漏洩同軸伝送路の伝送路短手方向の検知範囲では差が生じる。これを図8により説明する。
図8は検知用信号を送信するための表面波型漏洩同軸伝送路22、検知用信号を受信するための放射型漏洩同軸伝送路24、侵入監視エリア15、検知高さ19を示しているが、表面波型漏洩同軸伝送路22の伝送路短手方向の検知範囲17−1は、放射型漏洩同軸伝送路24の伝送路短手方向の検知範囲17−2より狭くなる。このことから、検知エリアを特に狭くしたい方向に表面波型漏洩同軸伝送路を配置すれば、不要な検知を避けられる。
【0023】
従って、図7のような構成とすることで、実際の検知エリア16と侵入監視エリア15を同範囲に確保することができ、侵入検知に対して信頼性の高いシステムを得ることができる。このことにより、図9に示すように希望検知範囲外の移動物体18による誤報を無くすことができる。
また、検知用信号を受信する伝送路に放射型漏洩同軸伝送路24を使用しているため、送・受信伝送路間の距離20を拡げることができ、検知できる高さ19を高くすることができる。
なお、送・受信伝送路を入れ替えて、送信側漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路で構成し、受信側漏洩伝送路を表面波型漏洩同軸伝送路で構成しても同様の効果を得ることができる。
【0024】
実施の形態2.
図10はこの発明の実施の形態2に係る侵入検知システムの構成図である。図10において、図7と同じ符号のブロックは実施の形態1に説明したもとの同一の機能を有する。
図10に示す侵入検知システムは、送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の途中に、伝送中の検知用信号を増幅する増幅器28を備えたことを特徴とするものである。
検知用信号は漏洩伝送路の伝送距離に応じて減衰するため、検知用信号レベルが所定の値以下となると正常な侵入検知ができなくなる。増幅器28は検知用信号が所定のレベル以下となる前に、検知用信号を増幅するように、図10に示すように送信側漏洩伝送路22の途中に挿入する。
【0025】
この増幅器28は送信側の漏洩伝送路の途中にのみ挿入し、受信側には挿入しない。その理由は、増幅器は信号レベルを増幅することができるが、同時にノイズを付加してしまうためである。受信側に挿入すると、受信信号の信号品質(信号対ノイズ比)が悪化する。そのため、受信側に挿入すると、逆に全体の検知性能が悪化し、検知エリアが狭くなるなど問題が生じる。送信信号は元々信号レベルが強いため、増幅器28によって生じるノイズは無視でき、送信側に追加した場合は検知性能が悪化するなどの問題が生じない。
以上のことから、検知用信号が所定のレベル以下となる前に、検知用信号を増幅するように、送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の途中に増幅器28を挿入することにより、長距離にわたって正確な侵入検知が可能となる。
【0026】
ところで、漏洩伝送路の直角方向の検知距離である侵入検知距離29を部分的に広げたい場合がある。
このようなとき、増幅器28を図11に示すように挿入すると侵入検知距離29を部分的に広げることができる。なお、侵入検知距離29を狭くしたい場合は減衰器を挿入すればよい。
また、周囲環境によって侵入検知距離が狭くなる場合がある。
たとえば、漏洩伝送路を地中に入れる場合、漏洩伝送路がやぶや樹林地帯の中を通過する場合などがある。このようなとき、増幅器28を図12に示すように挿入すると侵入検知距離29を広げることができる。
このように実施の形態2では送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の途中に増幅器28を挿入する構成とするため、長距離にわたって正確な侵入検知をする効果がある。
【0027】
実施の形態3.
図13は実施の形態3に係る侵入検知システムの構成図である。
図13に示す侵入検知システムは、送信側漏洩伝送路の一部(図では両端部)を表面波型漏洩同軸伝送路22−1,22−2で構成し、残りの部分(図では中間部)を放射型漏洩同軸伝送路24−1で構成したことを特徴とするものである。
図13において、漏洩伝送路から放射された検知用信号を反射や吸収することで、検知用信号を乱す。よって駐車場31などが存在する場所では、検知用信号は乱れやすい。車30などの影響で検知用信号が乱れると、散乱が大きくなる。すると正常な侵入検知ができなくなる。特に、送信側漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路とすると、放射される検知用信号の量が多いため、散乱が大きくなってしまう。駐車場31付近にて、車30などの影響による検知用信号の散乱を小さくするために、図13に示すように、送信側漏洩伝送路の一部に表面波型漏洩同軸伝送路22−1,22−2を設置する。表面波型漏洩同軸伝送路から放射される検知用信号の量は少なくなるために、車30などのの影響による検知用信号の乱れは小さくなる。
以上のことから、送信側漏洩伝送路の一部を表面波型漏洩同軸伝送路にすることで、より正確な侵入検知が可能となる。
【0028】
ところで、漏洩伝送路の直角方向の検知距離である侵入検知距離29を部分的に広げたい場合がある。このようなとき、図14に示すように送信側漏洩伝送路の一部に放射型漏洩同軸伝送路24−1を挿入すると侵入検知距離29を広げることができる。また実施の形態2と組み合わせることも可能であり、実施の形態2で示した増幅器28を付け加えることで侵入検知エリア15を適宜拡大することもできる。なお、侵入検知距離29を狭くしたい場合は減衰器を挿入すればよい。
これにより、実施の形態3では図13、図14のような構成をとることによって検知用信号を乱すものがあっても、正確な侵入検知を行える効果が生じる。
【0029】
実施の形態4.
図15は実施の形態4に係る侵入検知システムの構成図である。
図15に示す侵入検知システムは、送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路の所定箇所に、空中に電波を放射させない同軸伝送路を介在させたことを特徴とするもので、送信側漏洩伝送路の湾曲部に同軸伝送路32を用いて、直線以外にも検知用信号の送・受信伝送路及びこれに伴う侵入監視エリアを確保することができるようにしたものである。同軸伝送路32は、表面波型漏洩同軸伝送路や放射型漏洩同軸伝送路とは特性が違い、空中に電波を放射させない伝送路である。
【0030】
表面波型漏洩同軸伝送路は曲げてしまうと、放射特性を決める外部導体の形が変化して放射型漏洩同軸伝送路のような放射特性を示す。従って、図16に示すように表面波型漏洩同軸伝送路22を湾曲させると、湾曲箇所の実際の検知エリア16は、侵入監視エリア15に比べて範囲が大きくなってしまい、このエリアは誤報発生エリアとなってしまう。
この実施の形態4のように送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の湾曲箇所に、同軸伝送路32を用いることで、誤報発生エリアを無くし、かつ直線以外の表面波型漏洩同軸伝送路及びこれに伴う侵入監視エリアを確保することができる。
【0031】
実施の形態5.
図17は実施の形態5に係る侵入検知システムの構成図である。
図17に示す侵入検知システムは、受信側漏洩伝送路の終端箇所25を送信側漏洩伝送路の終端箇所23より遠方に配置したことを特徴とするものである。
図17に示すように、送信側漏洩伝送路を構成する表面波型漏洩同軸伝送路22の伝送路長手方向に対する放射特性33は、送信用ターミネータ23の方向に向かって多く放射する。従って、このような放射特性を持つ伝送路を検知用信号の送信側として用いた場合、受信側漏洩伝送路の終端箇所25を送信側漏洩伝送路の終端箇所23より遠方に配置することで、検知用信号をより多く受信し、効率的に侵入監視エリアを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係る侵入検知システムの基本的な構成を示す図である。
【図2】図1の侵入検知システムにおける侵入位置の検知概念を説明するための図である。
【図3】図1の侵入検知システムにおける送信信号の一例を示す図である。
【図4】図1における侵入検知装置の内部構成を示すブロック図である。
【図5】図1における侵入検知装置における検知テーブルの一例を示す図である。
【図6】図1における侵入検知装置における動作フローを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【図8】実施の形態1に係る侵入検知システムの検知範囲を説明するため概念図である。
【図9】実施の形態1に係る侵入検知システムの検知範囲を説明するため概念図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【図11】実施の形態2に係る侵入検知システムの他の例を示す構成図である。
【図12】実施の形態2に係る侵入検知システムの更に他の例を示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【図14】実施の形態3に係る侵入検知システムの他の例を示す構成図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【図16】実施の形態4に係る侵入検知システムを説明するための構成図である。
【図17】この発明の実施の形態5に係る侵入検知システムの概要を示す構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1:侵入検知装置 2−1:送信側伝送路 2−2:受信側伝送路 3:送信回路 4:受信回路 5:侵入検知部 51:侵入位置検知機能部 52:記憶部 521:検知テーブル 53:CPU 54:検知結果出力部
15:侵入監視エリア 16:実際の検知エリア 17:伝送路からの検知距離 20:伝送路間距離 20:伝送路間距離 21:侵入検知装置 22:表面波型漏洩同軸伝送路 23:送信用ターミネータ 24:放射型漏洩同軸伝送路 25:受信用ターミネータ 26:警報器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入監視エリア内に、侵入を検知するための検知用信号を送信する送信側漏洩伝送路とこの送信側漏洩伝送路から漏洩した前記検知用信号を受信する受信側漏洩伝送路とを離間して敷設し、前記受信側漏洩伝送路に受信された前記検知用信号の変化に基づき、前記侵入監視エリアへの侵入物体の有無を検知する侵入検知システムにおいて、
前記送信側漏洩伝送路または受信側漏洩伝送路のいずれか一方の漏洩伝送路のうち、少なくともその一部を表面波型漏洩同軸伝送路で構成し、他方の漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路で構成したことを特徴とする侵入検知システム。
【請求項2】
前記送信側漏洩伝送路を構成する前記表面波型漏洩同軸伝送路の途中に、伝送中の検知用信号を増幅する増幅器を備えたことを特徴とする請求項1記載の侵入検知システム。
【請求項3】
前記送信側漏洩伝送路のうち、一部を前記表面波型漏洩同軸伝送路とし、他の部分を放射型漏洩同軸伝送路としたことを特徴とする請求項1または2記載の侵入検知システム。
【請求項4】
前記送信側漏洩伝送路を構成する前記表面波型漏洩同軸伝送路の所定箇所に、空中に電波を放射させない同軸伝送路を介在させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の侵入検知システム。
【請求項5】
前記受信側漏洩伝送路の終端箇所を前記送信側漏洩伝送路の終端箇所より遠方に配置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の侵入検知システム。
【請求項6】
前記受信側漏洩伝送路により受信された検知用信号の変化に基づき、前記侵入物体の侵入位置を検知し侵入位置検知情報を出力する侵入位置検知機能部と、検知可能な侵入位置と検知エリアとを関連付けた検知テーブルと、前記侵入位置検知情報が前記検知テーブルにおける検知エリアに該当する場合は検知結果を出力する検知結果出力部とを含む侵入検知部を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の侵入検知システム。
【請求項1】
侵入監視エリア内に、侵入を検知するための検知用信号を送信する送信側漏洩伝送路とこの送信側漏洩伝送路から漏洩した前記検知用信号を受信する受信側漏洩伝送路とを離間して敷設し、前記受信側漏洩伝送路に受信された前記検知用信号の変化に基づき、前記侵入監視エリアへの侵入物体の有無を検知する侵入検知システムにおいて、
前記送信側漏洩伝送路または受信側漏洩伝送路のいずれか一方の漏洩伝送路のうち、少なくともその一部を表面波型漏洩同軸伝送路で構成し、他方の漏洩伝送路を放射型漏洩同軸伝送路で構成したことを特徴とする侵入検知システム。
【請求項2】
前記送信側漏洩伝送路を構成する前記表面波型漏洩同軸伝送路の途中に、伝送中の検知用信号を増幅する増幅器を備えたことを特徴とする請求項1記載の侵入検知システム。
【請求項3】
前記送信側漏洩伝送路のうち、一部を前記表面波型漏洩同軸伝送路とし、他の部分を放射型漏洩同軸伝送路としたことを特徴とする請求項1または2記載の侵入検知システム。
【請求項4】
前記送信側漏洩伝送路を構成する前記表面波型漏洩同軸伝送路の所定箇所に、空中に電波を放射させない同軸伝送路を介在させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の侵入検知システム。
【請求項5】
前記受信側漏洩伝送路の終端箇所を前記送信側漏洩伝送路の終端箇所より遠方に配置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の侵入検知システム。
【請求項6】
前記受信側漏洩伝送路により受信された検知用信号の変化に基づき、前記侵入物体の侵入位置を検知し侵入位置検知情報を出力する侵入位置検知機能部と、検知可能な侵入位置と検知エリアとを関連付けた検知テーブルと、前記侵入位置検知情報が前記検知テーブルにおける検知エリアに該当する場合は検知結果を出力する検知結果出力部とを含む侵入検知部を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の侵入検知システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−252020(P2009−252020A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100443(P2008−100443)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]