説明

侵入検知装置、侵入検知方法、侵入検知プログラムおよび侵入検知システム

【課題】電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制する。
【解決手段】侵入検知装置101は、所定エリアにおける複数の装置から送信される無線信号の中から対象無線信号を選択的に受信するための受信部22と、受信部22によって受信された対象無線信号に基づいて所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部11と、空間特徴量算出部11によって算出された空間特徴量に基づいて所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部12と、対象無線信号が送信されるタイミングを制御するためのタイミング制御部14とを備える。受信部22は、タイミング制御部14によって制御されたタイミングに従って、無線信号の中から対象無線信号を選択的に受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入検知装置、侵入検知方法、侵入検知プログラムおよび侵入検知システムに関し、特に、空間特徴量を用いて人間の動作を検知する侵入検知装置、侵入検知方法、侵入検知プログラムおよび侵入検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内等の所定エリアにおいて、人の動作を検知する侵入検知装置が開発されている。侵入検知方法の一例として、たとえば、「UWB−IRによる屋内侵入者検知に関する検討」寺阪圭司 他、電子情報通信学会論文誌B、第J90-B巻、第1号、pp.97-100、2007年1月1日(非特許文献1)には、UWB−IR(Ultra WideBand-Impulse Radio)による伝搬遅延プロファイルすなわち電力遅延プロファイルを用いる方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、広帯域の信号を用いることから他の無線サービスとの干渉が問題となり、また、受信信号の電力を用いることから屋内におけるマルチパスフェージングの影響を受け、検出精度が劣化する場合がある。
【0004】
このような問題点を解決するための技術として、たとえば、特開2008−216152号公報(特許文献1)には、以下のような構成が開示されている。すなわち、イベント検出装置は、各アレイアンテナの受信信号に基づいて固有ベクトルすなわち到来角分布を計算し、当該固有ベクトルと、比較基準となる平時の固有ベクトルとの内積値を計算する。そして、イベント検出装置は、この内積値と所定の閾値との比較結果に基づいて、イベントの発生すなわち侵入者の検知を行なう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「UWB−IRによる屋内侵入者検知に関する検討」寺阪圭司 他、電子情報通信学会論文誌B、第J90-B巻、第1号、pp.97-100、2007年1月1日
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−216152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のイベント検出装置が用いる電波をたとえば無線LAN(Local Area Network)における2.4GHz帯の電波とした場合には、電子レンジおよびZigBee機器等の他の電子機器が出力する、当該電波と同一または近接する周波数帯の電波が検知対象エリアに多数存在することになる。このため、イベント検出装置が、使用すべき電波以外の電波を用いて侵入検知のための演算を行なってしまい、誤検知が生じてしまう。
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することが可能な侵入検知装置、侵入検知方法、侵入検知プログラムおよび侵入検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる侵入検知装置は、複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知装置であって、上記無線信号の中から対象無線信号を選択的に受信するための受信部と、上記受信部によって受信された上記対象無線信号に基づいて上記所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部と、上記空間特徴量算出部によって算出された上記空間特徴量に基づいて上記所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部と、上記対象無線信号が送信されるタイミングを制御するためのタイミング制御部とを備え、上記受信部は、上記タイミング制御部によって制御された上記タイミングに従って、上記無線信号の中から上記対象無線信号を選択的に受信する。
【0010】
このような構成により、対象無線信号を送信しない他の装置からの信号を、侵入検知用の演算対象から除外することができるため、乱立する無線信号のために、どの無線信号がモニタすべき無線信号であるかが不明瞭な環境下において、モニタすべきタイミングを明瞭にし、侵入検知を良好に行なうことができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0011】
(2)好ましくは、上記対象無線信号は、上記対象無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、上記空間特徴量算出部は、上記干渉情報に基づいて、上記対象無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる上記対象無線信号を選択し、選択した上記対象無線信号に基づいて上記空間特徴量を算出する。
【0012】
このような構成により、対象無線信号に対する他の無線信号の干渉、特に、無線信号の送信タイミングの制御または把握ができない電子機器からの干渉を判断し、適切な対象無線信号を選択することができる。これにより、空間特徴量の算出の精度を高めることができ、人間の動作の有無をより正確に検知することができる。
【0013】
(3)より好ましくは、上記干渉情報は、上記対象無線信号の誤りを検出するための誤り検出用データを含み、上記侵入検知装置は、さらに、上記誤り検出用データに基づいて上記対象無線信号の誤りを検出するための誤り検出部を備え、上記空間特徴量算出部は、上記対象無線信号のうち、上記誤り検出部によって誤りの検出されなかった上記対象無線信号を選択し、選択した上記対象無線信号に基づいて上記空間特徴量を算出する。
【0014】
このように、誤り検出用データを用いた判定を行なう構成により、簡易な処理で適切な対象無線信号を選択することができる。
【0015】
(4)好ましくは、上記タイミング制御部は、上記所定エリアにおける他の上記装置が上記侵入検知装置へ上記対象無線信号を送信するトリガとなる送信要求情報を上記他の装置へ送信することにより、上記対象無線信号が送信されるタイミングを制御する。
【0016】
このような構成により、対象無線信号の送信タイミングを簡易な処理で制御することができる。また、対象無線信号の送信タイミングを制御するための送信要求情報をたとえば無線信号で送信すれば、対象無線信号の送信装置と侵入検知装置との有線接続を不要とすることができる。
【0017】
(5)好ましくは、上記対象無線信号は、IEEE802.11規格に従う無線信号である。
【0018】
このような構成により、一般に広く使用されている無線LANの環境下で、侵入検知装置を動作させ、人間の動作の有無を検知することができる。
【0019】
(6)またこの発明の別の局面に係わる侵入検知装置は、複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知装置であって、上記無線信号を受信するための受信部と、上記受信部によって受信された上記無線信号に基づいて上記所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部と、上記空間特徴量算出部によって算出された上記空間特徴量に基づいて上記所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部とを備え、上記複数の装置から送信される上記無線信号のうちの少なくとも1つは、上記無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、上記空間特徴量算出部は、上記干渉情報に基づいて、上記干渉情報を含む上記無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した上記無線信号に基づいて上記空間特徴量を算出する。
【0020】
このような構成により、侵入検知用の対象無線信号に対する他の無線信号の干渉、特に、無線信号の送信タイミングの制御または把握ができない電子機器からの干渉を判断し、適切な対象無線信号を選択することができる。これにより、空間特徴量の算出の精度を高めることができ、人間の動作の有無をより正確に検知することができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0021】
(7)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる侵入検知方法は、複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知する侵入検知方法であって、上記無線信号のうちの対象無線信号が送信されるタイミングを制御するステップと、制御した上記タイミングに従って、上記無線信号の中から上記対象無線信号を選択的に受信するステップと、受信した上記対象無線信号に基づいて上記所定エリアにおける空間特徴量を算出するステップと、算出した上記空間特徴量に基づいて上記所定エリアにおける人間の動作を検知するステップとを含む。
【0022】
このような構成により、対象無線信号を送信しない他の装置からの信号を、侵入検知用の演算対象から除外することができるため、乱立する無線信号のために、どの無線信号がモニタすべき無線信号であるかが不明瞭な環境下において、モニタすべきタイミングを明瞭にし、侵入検知を良好に行なうことができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0023】
(8)またこの発明の別の局面に係わる侵入検知方法は、複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知方法であって、上記無線信号を受信するステップと、受信した上記無線信号に基づいて上記所定エリアにおける空間特徴量を算出するステップと、算出した上記空間特徴量に基づいて上記所定エリアにおける人間の動作を検知するステップとを含み、上記複数の装置から送信される上記無線信号のうちの少なくとも1つは、上記無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、上記空間特徴量を算出するステップにおいては、上記干渉情報に基づいて、上記干渉情報を含む上記無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した上記無線信号に基づいて上記空間特徴量を算出する。
【0024】
このような構成により、侵入検知用の対象無線信号に対する他の無線信号の干渉、特に、無線信号の送信タイミングの制御または把握ができない電子機器からの干渉を判断し、適切な対象無線信号を選択することができる。これにより、空間特徴量の算出の精度を高めることができ、人間の動作の有無をより正確に検知することができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0025】
(9)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる侵入検知プログラムは、複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知装置において用いられる侵入検知プログラムであって、コンピュータに、上記無線信号のうちの対象無線信号が送信されるタイミングを制御するステップと、制御した上記タイミングに従って、上記無線信号の中から上記対象無線信号を選択的に受信するステップと、受信した上記対象無線信号に基づいて上記所定エリアにおける空間特徴量を算出するステップと、算出した上記空間特徴量に基づいて上記所定エリアにおける人間の動作を検知するステップとを実行させるためのプログラムである。
【0026】
このような構成により、対象無線信号を送信しない他の装置からの信号を、侵入検知用の演算対象から除外することができるため、乱立する無線信号のために、どの無線信号がモニタすべき無線信号であるかが不明瞭な環境下において、モニタすべきタイミングを明瞭にし、侵入検知を良好に行なうことができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0027】
(10)またこの発明のある局面に係わる侵入検知プログラムは、複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知装置において用いられる侵入検知プログラムであって、コンピュータに、上記無線信号を受信するステップと、受信した上記無線信号に基づいて上記所定エリアにおける空間特徴量を算出するステップと、算出した上記空間特徴量に基づいて上記所定エリアにおける人間の動作を検知するステップとを実行させるためのプログラムであり、上記複数の装置から送信される上記無線信号のうちの少なくとも1つは、上記無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、上記空間特徴量を算出するステップにおいては、上記干渉情報に基づいて、上記干渉情報を含む上記無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した上記無線信号に基づいて上記空間特徴量を算出する。
【0028】
このような構成により、侵入検知用の対象無線信号に対する他の無線信号の干渉、特に、無線信号の送信タイミングの制御または把握ができない電子機器からの干渉を判断し、適切な対象無線信号を選択することができる。これにより、空間特徴量の算出の精度を高めることができ、人間の動作の有無をより正確に検知することができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0029】
(11)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる侵入検知システムは、複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、上記無線信号のうち、対象無線信号を送信するための対象装置と、上記所定エリアにおいて人間の動作を検知するための侵入検知装置とを備える侵入検知システムであって、上記侵入検知装置は、上記無線信号の中から対象無線信号を選択的に受信するための受信部と、上記受信部によって受信された上記対象無線信号に基づいて上記所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部と、上記空間特徴量算出部によって算出された上記空間特徴量に基づいて上記所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部と、上記対象無線信号が送信されるタイミングを制御するためのタイミング制御部とを備え、上記受信部は、上記タイミング制御部によって制御された上記タイミングに従って、上記無線信号の中から上記対象無線信号を選択的に受信する。
【0030】
このような構成により、対象無線信号を送信しない他の装置からの信号を、侵入検知用の演算対象から除外することができるため、乱立する無線信号のために、どの無線信号がモニタすべき無線信号であるかが不明瞭な環境下において、モニタすべきタイミングを明瞭にし、侵入検知を良好に行なうことができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0031】
(12)またこの発明の別の局面に係わる侵入検知システムは、所定エリアにおいて無線信号を送信するための複数の装置と、上記所定エリアにおいて人間の動作を検知するための侵入検知装置とを備える侵入検知システムであって、上記侵入検知装置は、上記無線信号を受信するための受信部と、上記受信部によって受信された上記無線信号に基づいて上記所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部と、上記空間特徴量算出部によって算出された上記空間特徴量に基づいて上記所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部とを備え、上記複数の装置から送信される上記無線信号のうちの少なくとも1つは、上記無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、上記空間特徴量算出部は、上記干渉情報に基づいて、上記干渉情報を含む上記無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した上記無線信号に基づいて上記空間特徴量を算出する。
【0032】
このような構成により、侵入検知用の対象無線信号に対する他の無線信号の干渉、特に、無線信号の送信タイミングの制御または把握ができない電子機器からの干渉を判断し、適切な対象無線信号を選択することができる。これにより、空間特徴量の算出の精度を高めることができ、人間の動作の有無をより正確に検知することができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る侵入検知装置の使用イメージを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る侵入検知システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る侵入検知装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る侵入検知装置における制御部の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る装置間の通常時のアクセス手順の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る装置間の侵入検知動作時のアクセス手順の一例を示す図である。
【図7】図6に示すアクセス手順における侵入検知装置のWi−Fi通信部およびアレイ受信部の動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る侵入検知装置が侵入検知動作を行なう際の動作手順を定めたシーケンス図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る無線LANアクセスポイントが送信するACKフレームの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置の使用イメージを示す図である。
【0037】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置は、動体検知センサとして機能する。侵入検知装置として最低一組の送信機および受信機が、警戒エリアとしたい閉空間、たとえば家の中に設置される。そして、侵入検知装置は、送信機から一定間隔以内または連続的に送信される電波を受信機で受信し、受信した電波に基づいて信号処理を行なうことにより、室内に侵入した人間およびドアの開閉等を検知する。
【0038】
たとえば、侵入検知装置は、アレイ式電波センサであり、複数の受信アンテナ素子を備え、閉空間における電波伝搬の変化を利用して動体の検知機能を実現する。侵入検知装置が使用する電波は、原理上は周波数および帯域幅等に制約はない。
【0039】
[構成および基本動作]
図2は、本発明の実施の形態に係る侵入検知システムの構成を示す図である。
【0040】
図2を参照して、室内等の所定エリアにおいて、侵入検知装置101と、無線LANアクセスポイント(対象装置)151と、無線LAN端末161,162と、電子機器171とが設けられている。侵入検知装置101と無線LANアクセスポイント151とで侵入検知システム201が構成される。
【0041】
無線LANアクセスポイント151は、所定の無線通信方式たとえばIEEE802.11規格の無線LAN方式に従って無線LAN端末161,162との間で無線信号を送受信する。この無線信号は、たとえば2.4GHz帯の無線信号である。
【0042】
電子機器171は、たとえば電子レンジまたはZigBee機器であり、動作中に2.4GHz帯の電波を外部へ出力する。
【0043】
侵入検知装置101は、無線LANアクセスポイント151および無線LAN端末161,162および電子機器171等の複数の装置が無線信号を送信するエリアにおいて、人間の動作を検知する。
【0044】
より詳細には、侵入検知装置101は、所定エリアの状態を示す空間特徴量に基づいて、当該エリアにおける人間の動作を検知する。すなわち、侵入検知装置101は、反射および回折等の波動伝搬の性質に基づいて、所定エリア内の状態を監視する。具体的には、侵入検知装置101は、複数のアンテナの受信信号に基づいて計算された到来角分布を監視することにより、人間の動作を検知する。
【0045】
侵入検知システム201では、侵入検知装置101は、2.4GHz帯の無線LAN方式に従う通信信号の電波を利用して検知動作を行なう。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置の構成を示す図である。
【0047】
図3を参照して、侵入検知装置101は、Wi−Fi通信部51と、アレイ受信部52と、制御部53とを備える。Wi−Fi通信部51は、アンテナ41と、フラッシュメモリ42と、誤り検出部43と、暗号処理部44と、トランシーバ45と、パワーアンプ46と、インタフェース部47と、RAM(Random Access Memory)48と、ROM(Read Only Memory)49とを含む。アレイ受信部52は、アレイアンテナ部21と、受信部22と、分岐回路35と、発振器36とを含む。アレイアンテナ部21は、たとえば4本のアンテナを含む。受信部22は、アレイアンテナ部21におけるアンテナに対応して、バンドパスフィルタ(BPF)31、ローノイズアンプ32、直交復調器33およびA/Dコンバータ(ADC)34の組を4つ含む。
【0048】
Wi−Fi通信部51は、制御部53からSPI(Serial Peripheral Interface)インタフェース経由で受けた通信データを2.4GHz帯の無線LAN方式に従う無線信号に変換し、無線LANアクセスポイント151へ送信する。また、Wi−Fi通信部51は、無線LANアクセスポイント151から受信した無線信号を2.4GHz帯の無線LAN方式に従ってデジタル信号に変換し、SPI(Serial Peripheral Interface)インタフェース経由で制御部53へ出力する。
【0049】
Wi−Fi通信部51において、フラッシュメモリ42、RAM48およびROM49は、各種情報を記憶する。
【0050】
トランシーバ45は、たとえば、アンテナ41において受信された2.4GHz帯の無線信号からベースバンド帯のデジタル信号への変換、および制御部53から受けた通信データであるベースバンド帯のデジタル信号から2.4GHz帯の無線信号への変換を行なう。
【0051】
パワーアンプ46は、トランシーバ45によって変換された無線信号を増幅し、アンテナ41へ出力する。
【0052】
インタフェース部47は、制御部53との間でSPIインタフェース経由でデジタル信号を入出力する。
【0053】
誤り検出部43は、トランシーバ45によって変換されたデジタル信号を解析することにより、アンテナ41において受信された無線LANアクセスポイント151からの無線信号の誤りを検出する。
【0054】
アレイ受信部52のRF受信部22において、バンドパスフィルタ31は、アレイアンテナ部21における対応のアンテナにおいて受信された無線信号の周波数成分のうち、所定の周波数帯域外の成分を減衰させる。
【0055】
ローノイズアンプ32は、バンドパスフィルタ31を通過した無線信号を増幅して出力する。
【0056】
直交復調器33は、ローノイズアンプ32から受けた無線信号と分岐回路35を介して発振器36から受けたローカル信号とを乗算することにより、ローノイズアンプ32から受けた信号をたとえば直交復調してベースバンド帯の信号に変換し、A/Dコンバータ34へ出力する。
【0057】
A/Dコンバータ34は、直交復調器33から受けた信号をデジタル信号に変換し、制御部53へ出力する。
【0058】
図4は、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置における制御部の構成を示す図である。
【0059】
図4を参照して、制御部53は、空間特徴量算出部11と、検知部12と、サンプリングタイミング指示部13と、Wi−Fi通信データ処理部(タイミング制御部)14とを含む。
【0060】
空間特徴量算出部11は、アレイアンテナ部21における各アンテナに対応するデジタル信号をアレイ受信部52から受けて、これらのデジタル信号に基づいて、アレイアンテナ部21によって受信された無線信号のレベルおよび到着タイミングを算出する。そして、空間特徴量算出部11は、算出結果に基づいて、所定エリアにおける空間特徴量を算出する。すなわち、空間特徴量算出部11は、人間の動作を検知すべき所定エリアについて、当該所定エリアの状態を示す空間特徴量を算出する。
【0061】
より詳細には、空間特徴量算出部11は、たとえば特許文献1に記載の構成と同様に、到来角分布を用いて空間特徴量を抽出する。すなわち、空間特徴量算出部11は、固有ベクトルの内積を算出することにより、空間特徴量P(t)を抽出する。この内積は、比較基準となる初期ベクトルからの変化量を示す。初期ベクトルすなわち侵入者無しのときの固有ベクトルをvnoとし、観測時tにおける固有ベクトルをvob(t)とすると、空間特徴量P(t)は以下の式で表される。
P(t)=vno・vob(t)
【0062】
検知部12は、空間特徴量算出部11によって算出された空間特徴量P(t)に基づいて、所定エリアにおける人間の動作を検知する。
【0063】
Wi−Fi通信データ処理部14は、無線LANアクセスポイント151へ送信すべき通信データを生成し、Wi−Fi通信部51へ出力する。また、Wi−Fi通信データ処理部14は、Wi−Fi通信部51から受けたデジタル信号に対して種々の信号処理を行ない、各種制御を行なう。
【0064】
ここで、Wi−Fi通信データ処理部14は、無線LANアクセスポイント151から対象無線信号すなわちACKが送信されるタイミングを制御する。
【0065】
より詳細には、Wi−Fi通信データ処理部14は、無線LANアクセスポイント151が侵入検知装置101へ応答情報としてACKを送信するトリガとなる送信要求情報を、無線LANアクセスポイント151へ送信することにより、無線LANアクセスポイント151からACKが送信されるタイミングを制御する。
【0066】
アレイ受信部52は、Wi−Fi通信データ処理部14によって制御されたタイミングに従って、所定エリアにおける各装置から送信される無線信号の中からACKを選択的に受信する。
【0067】
より詳細には、Wi−Fi通信データ処理部14は、サンプリングタイミング指示部13を制御することにより、A/Dコンバータ34のサンプリングタイミングを示すタイミング信号をアレイ受信部52へ出力する。
【0068】
A/Dコンバータ34は、サンプリングタイミング指示部13を介してWi−Fi通信データ処理部14から受けたタイミング信号に従い、直交復調器33から受けた信号をサンプリングし、デジタル信号に変換する。
【0069】
これにより、空間特徴量算出部11は、アレイ受信部52によって受信されたACKに基づいて所定エリアにおける空間特徴量を算出することが可能となる。
【0070】
また、無線LANアクセスポイント151が送信するACKは、ACKに対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含む。空間特徴量算出部11は、この干渉情報に基づいて、アレイ受信部52が受信したACKのうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となるACKを選択し、選択したACKに基づいて空間特徴量を算出する。
【0071】
たとえば、干渉情報は、ACKの誤りを検出するための誤り検出用データを含む。誤り検出部43は、この誤り検出用データに基づいてACKの誤りを検出する。
【0072】
空間特徴量算出部11は、アレイ受信部52が受信したACKのうち、誤り検出部43によって誤りの検出されなかったACKを選択し、選択したACKに基づいて空間特徴量を算出する。
【0073】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置が侵入検知を行なう際の動作について説明する。
【0074】
まず、通常時の無線LANのアクセス手順について説明する。
【0075】
図5は、本発明の実施の形態に係る装置間の通常時のアクセス手順の一例を示す図である。
【0076】
図5を参照して、まず、無線LAN端末161は、タイミングt1からDIFS(Distributed Coordination Function Inter Frame Space)時間が経過し(タイミングt2)、さらに固有のバックオフ時間が経過すると、RTS(Request To Send)を無線LANアクセスポイント151へ送信する(タイミングt3)。
【0077】
次に、無線LANアクセスポイント151は、無線LAN端末161からRTSを受信して(タイミングt4)、SIFS(Short Inter Frame Space)時間待機後、CTS(Clear To Send)を送信する(タイミングt5)。
【0078】
また、無線LAN端末162および侵入検知装置101は、無線LAN端末161からRTSを受信して、送信禁止期間NAV(Network Allocation Vector)に遷移する(タイミングt4)。
【0079】
次に、無線LAN端末161は、無線LANアクセスポイント151からCTSを受信して(タイミングt6)、SIFS時間待機後、送信データフレームを無線LANアクセスポイント151へ送信する(タイミングt7)。
【0080】
また、無線LAN端末162および侵入検知装置101は、無線LAN端末161からCTSを受信して(タイミングt6)、送信禁止期間NAVを継続する。なお、無線LAN端末162および侵入検知装置101は、無線LAN端末161からのRTSを受信できなかった場合には、このCTSにより、送信禁止期間NAVへ遷移することになる。
【0081】
次に、無線LANアクセスポイント151は、無線LAN端末161から送信データフレームを受信して(タイミングt8)、SIFS時間待機後、ACK(Acknowledgement)を無線LAN端末161へ送信する(タイミングt9)。
【0082】
次に、無線LAN端末162は、無線LAN端末161が無線LANアクセスポイント151からACKを受信して(タイミングt10)、DIFS時間が経過し(タイミングt11)、さらに固有のバックオフ時間が経過すると、RTSを無線LANアクセスポイント151へ送信する(タイミングt12)。
【0083】
次に、無線LANアクセスポイント151は、無線LAN端末162からRTSを受信して(タイミングt13)、SIFS時間待機後、CTSを送信する(タイミングt14)。
【0084】
また、無線LAN端末161および侵入検知装置101は、無線LAN端末162からRTSを受信して、送信禁止期間NAVに遷移する(タイミングt13)。
【0085】
次に、無線LAN端末162は、無線LANアクセスポイント151からCTSを受信して(タイミングt15)、SIFS時間待機後、送信データフレームを無線LANアクセスポイント151へ送信する(タイミングt16)。
【0086】
また、無線LAN端末161および侵入検知装置101は、無線LAN端末162からCTSを受信して(タイミングt15)、送信禁止期間NAVを継続する。なお、無線LAN端末161および侵入検知装置101は、無線LAN端末162からのRTSを受信できなかった場合には、このCTSにより、送信禁止期間NAVへ遷移することになる。
【0087】
次に、侵入検知動作時の無線LANのアクセス手順について説明する。
【0088】
図6は、本発明の実施の形態に係る装置間の侵入検知動作時のアクセス手順の一例を示す図である。
【0089】
図6を参照して、まず、侵入検知装置101は、タイミングt21からDIFS時間が経過し(タイミングt22)、さらに固有のバックオフ時間が経過すると、RTSを無線LANアクセスポイント151へ送信する(タイミングt23)。
【0090】
次に、無線LANアクセスポイント151は、侵入検知装置101からRTSを受信して(タイミングt24)、SIFS時間待機後、CTSを送信する(タイミングt25)。
【0091】
また、無線LAN端末161および無線LAN端末162は、侵入検知装置101からRTSを受信して、送信禁止期間NAVに遷移する(タイミングt24)。
【0092】
次に、侵入検知装置101は、無線LANアクセスポイント151からCTSを受信して(タイミングt26)、SIFS時間待機後、送信データフレームを無線LANアクセスポイント151へ送信する(タイミングt27)。
【0093】
また、無線LAN端末161および無線LAN端末162は、侵入検知装置101からCTSを受信して(タイミングt26)、送信禁止期間NAVを継続する。なお、無線LAN端末161および無線LAN端末162は、侵入検知装置101からのRTSを受信できなかった場合には、このCTSにより、送信禁止期間NAVへ遷移することになる。
【0094】
次に、無線LANアクセスポイント151は、侵入検知装置101から送信データフレームを受信して(タイミングt28)、SIFS時間待機後(タイミングt29)、ACKを侵入検知装置101へ送信する。
【0095】
次に、侵入検知装置101は、無線LANアクセスポイント151からACKを受信して(タイミングt30)、当該ACKに基づいて空間特徴量を算出し、所定エリアにおける人間の動作を検知する。
【0096】
図7は、図6に示すアクセス手順における侵入検知装置のWi−Fi通信部およびアレイ受信部の動作を示す図である。
【0097】
図7を参照して、まず、Wi−Fi通信部51は、タイミングt21からDIFS時間が経過し(タイミングt22)、さらに固有のバックオフ時間が経過すると、RTSを無線LANアクセスポイント151へ送信する(タイミングt23)。
【0098】
次に、無線LANアクセスポイント151は、Wi−Fi通信部51からRTSを受信して(タイミングt24)、SIFS時間待機後、CTSを送信する(タイミングt25)。
【0099】
次に、Wi−Fi通信部51は、無線LANアクセスポイント151からCTSを受信して(タイミングt26)、SIFS時間待機後、送信データフレームを無線LANアクセスポイント151へ送信する(タイミングt27)。
【0100】
次に、無線LANアクセスポイント151は、Wi−Fi通信部51から送信データフレームを受信して(タイミングt28)、SIFS時間待機後(タイミングt29)、ACKを侵入検知装置101へ送信する。
【0101】
次に、Wi−Fi通信部51は、無線LANアクセスポイント151からのACKを受信する(タイミングt30)。
【0102】
また、アレイ受信部52は、無線LANアクセスポイント151からのACKを受信する。制御部53は、アレイ受信部52によって受信されたACKに基づいて空間特徴量を算出し、所定エリアにおける人間の動作を検知する(タイミングt30)。
【0103】
図8は、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置が侵入検知動作を行なう際の動作手順を定めたシーケンス図である。侵入検知装置101は、シーケンスの各ステップを含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。このインストールされるプログラムは、たとえば記録媒体に格納された状態で流通する。図8において、WLAN側はWi−Fi通信部51および制御部53に相当し、アレイRX側はアレイ受信部52および制御部53に相当する。
【0104】
図8を参照して、まず、侵入検知装置101におけるWLAN側は、RTSを無線LANアクセスポイント151へ送信することにより、送信要求を行なう(ステップS1)。
【0105】
次に、無線LANアクセスポイント151は、侵入検知装置101からRTSを受信して、フレームの受信準備が完了すると、CTSを侵入検知装置101へ送信する(ステップS2)。
【0106】
次に、WLAN側は、無線LANアクセスポイント151からCTSを受信して、送信データフレームを無線LANアクセスポイント151へ送信する(ステップS3)。この送信データフレームが、無線LANアクセスポイント151が応答情報としてACKを送信するトリガとなる送信要求情報に該当する。
【0107】
次に、無線LANアクセスポイント151は、侵入検知装置101から送信データフレームを受信して、ACKを侵入検知装置101へ送信する(ステップS5)。
【0108】
ここで、WLAN側は、送信データフレームを無線LANアクセスポイント151へ送信し、送信が完了すると、サンプリング準備要求をアレイRX側へ出力する。より詳細には、制御部53におけるWi−Fi通信データ処理部14は、送信データフレームをWi−Fi通信部51へ出力し、出力が完了すると、送信データフレームを出力した旨をサンプリングタイミング指示部13に通知する(ステップS4)。
【0109】
次に、アレイRX側は、WLAN側からサンプリング準備要求を受けてから所定時間経過後にデータサンプリングを行なうことにより、ACKを受信する。より詳細には、制御部53におけるサンプリングタイミング指示部13は、Wi−Fi通信データ処理部14から通知を受けるとタイマを設定し、タイマが満了するとタイミング信号を受信部22におけるA/Dコンバータ34へ出力する。A/Dコンバータ34は、サンプリングタイミング指示部13から受けたタイミング信号に従い、直交復調器33から受けた信号すなわちACKをサンプリングし、デジタル信号に変換する(ステップS6)。
【0110】
ここで、Wi−Fi通信データ処理部14からサンプリングタイミング指示部13に通知されるサンプリング準備要求は、図6に示すタイミングt28を通知するためのものである。また、サンプリングタイミング指示部13は、たとえば、SIFS時間(図6のタイミングt28〜t29)ならびにACKの生成および送信時間(図6のタイミングt29〜t30)の合計を記憶しており、この合計時間が上記所定時間すなわちタイマの設定時間である。
【0111】
また、WLAN側は、無線LANアクセスポイント151からACKを受信して、ACKフレームの誤り検出を行ない、誤り検出結果をアレイRX側に通知する(ステップS7)。
【0112】
図9は、本発明の実施の形態に係る無線LANアクセスポイントが送信するACKフレームの構成を示す図である。
【0113】
図9を参照して、ACKフレームは、10オクテットのMAC(Media Access Control)ヘッダと、4オクテットのFCS(フレームチェックシーケンス)とを含む。MACヘッダは、フレーム種別を示す2オクテットのフレーム制御情報と、通信タイミングを示す2オクテットのデュレーション情報と、6オクテットの受信局アドレスとを含む。
【0114】
Wi−Fi通信部51における誤り検出部43は、ACKフレームにおけるFCSを解析することにより、ACKフレームの誤りを検出し、誤り検出結果を示す信号を制御部53へ出力する。
【0115】
再び図8を参照して、次に、アレイRX側は、WLAN側から誤り検出結果の通知を受けて、ACKフレームが誤っていない場合には、サンプリングしたデータを取得し、ACKフレームが誤っていた場合には、サンプリングしたデータを破棄する(ステップS8)。
【0116】
次に、アレイRX側は、取得したデータを用いて空間特徴量を算出し(ステップS9)、侵入検知を行なう(ステップS10)。
【0117】
ここで、侵入検知を行なう状況としては、家庭および職場等においてそれぞれ居住者および従業員が存在せず、無線LANによる通信の頻度が低い状況が想定される。このような状況では、無線LAN端末から送信される無線信号はゼロまたは僅かである。本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、このような状況でも無線信号を送信する頻度の高い無線LANアクセスポイント151からの無線信号を用いて侵入検知を行なう構成により、侵入検知を行なう状況に適した無線信号を対象とし、侵入検知を良好に行なうことができる。
【0118】
ところで、特許文献1に記載のイベント検出装置が用いる電波をたとえば無線LANにおける2.4GHz帯の電波とした場合には、電子レンジおよびZigBee機器等の他の電子機器が出力する、当該電波と同一または近接する周波数帯の電波が検知対象エリアに多数存在することになる。このため、イベント検出装置が、使用すべき電波以外の電波を用いて侵入検知のための演算を行なってしまい、誤検知が生じてしまう。
【0119】
これに対して、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、Wi−Fi通信データ処理部14は、無線LANアクセスポイント151から対象無線信号すなわちACKが送信されるタイミングを制御する。アレイ受信部52は、Wi−Fi通信データ処理部14によって制御されたタイミングに従って、所定エリアにおける各装置から送信される無線信号の中からACKを選択的に受信する。空間特徴量算出部11は、アレイ受信部52によって受信されたACKに基づいて所定エリアにおける空間特徴量を算出する。そして、検知部12は、空間特徴量算出部11によって算出された空間特徴量に基づいて所定エリアにおける人間の動作を検知する。
【0120】
すなわち、無線LAN用の無線部と、侵入検知用の無線部とを備えた無線機において、無線LAN用の無線部を無線LANの端末局として無線LANアクセスポイントと通信させ、通信中に受信するACKを侵入検知用の無線部で受信する。
【0121】
このような構成により、他の無線LAN装置からの信号を、侵入検知用の演算対象から除外することができるため、乱立する無線信号のために、どの無線信号がモニタすべき無線信号であるかが不明瞭な環境下において、モニタすべきタイミングを明瞭にし、侵入検知を良好に行なうことができる。したがって、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0122】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、アレイ受信部52が受信するACKは、ACKに対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含む。そして、空間特徴量算出部11は、この干渉情報に基づいて、アレイ受信部52が受信したACKのうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となるACKを選択し、選択したACKに基づいて空間特徴量を算出する。
【0123】
このような構成により、ACKに対する他の無線信号の干渉、特に、無線信号の送信タイミングの制御または把握ができない電子機器からの干渉を判断し、適切なACKを選択することができる。これにより、空間特徴量の算出の精度を高めることができ、人間の動作の有無をより正確に検知することができる。
【0124】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、干渉情報は、ACKの誤りを検出するための誤り検出用データを含む。誤り検出部43は、誤り検出用データに基づいてACKの誤りを検出する。そして、空間特徴量算出部11は、アレイ受信部52が受信したACKのうち、誤り検出部43によって誤りの検出されなかったACKを選択し、選択したACKに基づいて空間特徴量を算出する。
【0125】
このように、誤り検出用データを用いた判定を行なう構成により、簡易な処理で適切なACKを選択することができる。
【0126】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、Wi−Fi通信データ処理部14は、無線LANアクセスポイント151が自己の侵入検知装置101へ応答情報としてACKを送信するトリガとなる送信要求情報すなわち送信データフレームを、無線LANアクセスポイント151へ送信することにより、ACKが送信されるタイミングを制御する。
【0127】
このような構成により、ACKの送信タイミングを簡易な処理で制御することができる。また、ACKの送信タイミングを制御するための送信要求情報をたとえば無線信号で送信すれば、ACKの送信装置と侵入検知装置との有線接続を不要とすることができる。
【0128】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、ACKは、IEEE802.11規格に従う無線信号によって伝送される。
【0129】
このような構成により、一般に広く使用されている無線LANの環境下で、侵入検知装置を動作させ、人間の動作の有無を検知することができる。
【0130】
なお、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、ACKに基づいて空間特徴量を算出し、侵入検知を行なう構成であるとしたが、これに限定するものではない。ACKに限らず、侵入検知装置が送信タイミングを制御可能な信号であれば、どんなものでもよい。たとえば、ACKの代わりに、CTSに基づいて空間特徴量を算出し、侵入検知を行なう構成であってもよい。この場合、無線LANアクセスポイント151が応答情報としてCTSを送信するトリガとなる送信要求情報は、RTSとなる。
【0131】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、ACKフレームにおけるFCSを解析することにより、ACKフレームの誤りを検出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。FCSは、ACKに限らず、たとえばRTSおよびCTSの中にも含まれる。
【0132】
より詳細には、RTSフレームは、フレーム制御情報と、デュレーション情報と、受信局アドレスと、送信局アドレスと、FCSとを含む。また、CTSフレームは、フレーム制御情報と、デュレーション情報と、受信局アドレスと、FCSとを含む。
【0133】
すなわち、ACKの代わりに、RTSまたはCTSを空間特徴量の算出に用いて誤り検出を行なうことが可能である。
【0134】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置は、ACKを自己の侵入検知装置101へ送信するトリガとなる送信要求情報として、送信データフレームを無線LANアクセスポイント151へ無線送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。無線LANアクセスポイント151へ、送信要求情報として何らかの信号を有線で送信する構成であってもよい。
【0135】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、アレイ受信部52は、Wi−Fi通信データ処理部14によって制御されたタイミングに従って、所定エリアにおける各装置から送信される無線信号の中からACKを選択的に受信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。ACKの送信タイミングに従ってA/Dコンバータ34のサンプリングタイミングを制御する代わりに、アレイアンテナ部21において受信した無線信号の誤り検出等を行なうことにより、ある無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断し、空間特徴量の算出および侵入検知を行なう構成であってもよい。
【0136】
すなわち、所定エリアにおいて送信される無線信号のうちの少なくともいずれか1つは、当該無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含む。そして、空間特徴量算出部11は、干渉情報に基づいて、干渉情報を含む無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した無線信号に基づいて空間特徴量を算出する。
【0137】
このような構成により、ACKに対する他の無線信号の干渉、特に、無線信号の送信タイミングの制御または把握ができない電子機器からの干渉を判断し、適切なACKを選択することができる。これにより、空間特徴量の算出の精度を高めることができ、人間の動作の有無をより正確に検知することができる。したがって、電波を用いて所定エリアにおける人間の侵入を検知する構成において、使用すべき電波と同一または近接する周波数帯の他の電波が多数存在する場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0138】
ただし、アレイ受信部52が、Wi−Fi通信データ処理部14によって制御されたタイミングに従って、所定エリアにおける各装置から送信される無線信号の中からACKを選択的に受信する構成により、A/Dコンバータ34のサンプリングを頻繁に行なう必要がなくなり、制御部53における空間特徴量算出部11および検知部12等の処理頻度を減らすことができる。
【0139】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、空間特徴量として固有ベクトルを用いる構成であるとしたが、これに限定するものではない。固有ベクトルに限らず、非特許文献1に記載されているような遅延プロファイル等、他の空間特徴量を用いる構成であってもよい。
【0140】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、空間特徴量として1次元の特徴量を用いる構成であるとしたが、これに限定するものではない。空間特徴量として多次元の特徴量を用いる構成であってもよい。たとえば、固有ベクトルそのものを特徴量ベクトルとして用いることも可能であるし、非特許文献1に記載されているような遅延プロファイルを用いることも可能である。
【0141】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置では、侵入者の有無という二値的な判定を行なう構成であるとしたが、これに限定するものではない。侵入可能性のレベルを示す指標を出力する構成であってもよい。
【0142】
また、本発明の実施の形態に係る侵入検知装置は、アレイ式電波センサであるとしたが、他の種類の電波センサであってもよい。
【0143】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
11 空間特徴量算出部
12 検知部
13 サンプリングタイミング指示部
14 Wi−Fi通信データ処理部(タイミング制御部)
21 アレイアンテナ部
22 受信部
31 バンドパスフィルタ
32 ローノイズアンプ
33 直交復調器
34 A/Dコンバータ
35 分岐回路
36 発振器
41 アンテナ
42 フラッシュメモリ
43 誤り検出部
44 暗号処理部
45 トランシーバ
46 パワーアンプ
47 インタフェース部
48 RAM
49 ROM
51 Wi−Fi通信部
52 アレイ受信部
53 制御部
101 侵入検知装置
151 無線LANアクセスポイント(対象装置)
161,162 無線LAN端末
171 電子機器
201 侵入検知システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知装置であって、
前記無線信号の中から対象無線信号を選択的に受信するための受信部と、
前記受信部によって受信された前記対象無線信号に基づいて前記所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部と、
前記空間特徴量算出部によって算出された前記空間特徴量に基づいて前記所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部と、
前記対象無線信号が送信されるタイミングを制御するためのタイミング制御部とを備え、
前記受信部は、前記タイミング制御部によって制御された前記タイミングに従って、前記無線信号の中から前記対象無線信号を選択的に受信する、侵入検知装置。
【請求項2】
前記対象無線信号は、前記対象無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、
前記空間特徴量算出部は、前記干渉情報に基づいて、前記対象無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる前記対象無線信号を選択し、選択した前記対象無線信号に基づいて前記空間特徴量を算出する、請求項1に記載の侵入検知装置。
【請求項3】
前記干渉情報は、前記対象無線信号の誤りを検出するための誤り検出用データを含み、
前記侵入検知装置は、さらに、
前記誤り検出用データに基づいて前記対象無線信号の誤りを検出するための誤り検出部を備え、
前記空間特徴量算出部は、前記対象無線信号のうち、前記誤り検出部によって誤りの検出されなかった前記対象無線信号を選択し、選択した前記対象無線信号に基づいて前記空間特徴量を算出する、請求項2に記載の侵入検知装置。
【請求項4】
前記タイミング制御部は、前記所定エリアにおける他の前記装置が前記侵入検知装置へ前記対象無線信号を送信するトリガとなる送信要求情報を前記他の装置へ送信することにより、前記対象無線信号が送信されるタイミングを制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の侵入検知装置。
【請求項5】
前記対象無線信号は、IEEE802.11規格に従う無線信号である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の侵入検知装置。
【請求項6】
複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知装置であって、
前記無線信号を受信するための受信部と、
前記受信部によって受信された前記無線信号に基づいて前記所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部と、
前記空間特徴量算出部によって算出された前記空間特徴量に基づいて前記所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部とを備え、
前記複数の装置から送信される前記無線信号のうちの少なくとも1つは、前記無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、
前記空間特徴量算出部は、前記干渉情報に基づいて、前記干渉情報を含む前記無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した前記無線信号に基づいて前記空間特徴量を算出する、侵入検知装置。
【請求項7】
複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知する侵入検知方法であって、
前記無線信号のうちの対象無線信号が送信されるタイミングを制御するステップと、
制御した前記タイミングに従って、前記無線信号の中から前記対象無線信号を選択的に受信するステップと、
受信した前記対象無線信号に基づいて前記所定エリアにおける空間特徴量を算出するステップと、
算出した前記空間特徴量に基づいて前記所定エリアにおける人間の動作を検知するステップとを含む、侵入検知方法。
【請求項8】
複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知方法であって、
前記無線信号を受信するステップと、
受信した前記無線信号に基づいて前記所定エリアにおける空間特徴量を算出するステップと、
算出した前記空間特徴量に基づいて前記所定エリアにおける人間の動作を検知するステップとを含み、
前記複数の装置から送信される前記無線信号のうちの少なくとも1つは、前記無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、
前記空間特徴量を算出するステップにおいては、前記干渉情報に基づいて、前記干渉情報を含む前記無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した前記無線信号に基づいて前記空間特徴量を算出する、侵入検知方法。
【請求項9】
複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知装置において用いられる侵入検知プログラムであって、コンピュータに、
前記無線信号のうちの対象無線信号が送信されるタイミングを制御するステップと、
制御した前記タイミングに従って、前記無線信号の中から前記対象無線信号を選択的に受信するステップと、
受信した前記対象無線信号に基づいて前記所定エリアにおける空間特徴量を算出するステップと、
算出した前記空間特徴量に基づいて前記所定エリアにおける人間の動作を検知するステップとを実行させるための、侵入検知プログラム。
【請求項10】
複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、人間の動作を検知するための侵入検知装置において用いられる侵入検知プログラムであって、コンピュータに、
前記無線信号を受信するステップと、
受信した前記無線信号に基づいて前記所定エリアにおける空間特徴量を算出するステップと、
算出した前記空間特徴量に基づいて前記所定エリアにおける人間の動作を検知するステップとを実行させるためのプログラムであり、
前記複数の装置から送信される前記無線信号のうちの少なくとも1つは、前記無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、
前記空間特徴量を算出するステップにおいては、前記干渉情報に基づいて、前記干渉情報を含む前記無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した前記無線信号に基づいて前記空間特徴量を算出する、侵入検知プログラム。
【請求項11】
複数の装置から無線信号が送信される所定エリアにおいて、前記無線信号のうち、対象無線信号を送信するための対象装置と、
前記所定エリアにおいて人間の動作を検知するための侵入検知装置とを備える侵入検知システムであって、
前記侵入検知装置は、
前記無線信号の中から対象無線信号を選択的に受信するための受信部と、
前記受信部によって受信された前記対象無線信号に基づいて前記所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部と、
前記空間特徴量算出部によって算出された前記空間特徴量に基づいて前記所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部と、
前記対象無線信号が送信されるタイミングを制御するためのタイミング制御部とを備え、
前記受信部は、前記タイミング制御部によって制御された前記タイミングに従って、前記無線信号の中から前記対象無線信号を選択的に受信する、侵入検知システム。
【請求項12】
所定エリアにおいて無線信号を送信するための複数の装置と、
前記所定エリアにおいて人間の動作を検知するための侵入検知装置とを備える侵入検知システムであって、
前記侵入検知装置は、
前記無線信号を受信するための受信部と、
前記受信部によって受信された前記無線信号に基づいて前記所定エリアにおける空間特徴量を算出するための空間特徴量算出部と、
前記空間特徴量算出部によって算出された前記空間特徴量に基づいて前記所定エリアにおける人間の動作を検知するための検知部とを備え、
前記複数の装置から送信される前記無線信号のうちの少なくとも1つは、前記無線信号に対する他の無線信号の干渉を判断するための干渉情報を含み、
前記空間特徴量算出部は、前記干渉情報に基づいて、前記干渉情報を含む前記無線信号のうち、他の無線信号の干渉が無いかまたは干渉量が所定値以下となる無線信号を選択し、選択した前記無線信号に基づいて前記空間特徴量を算出する、侵入検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−16100(P2013−16100A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149793(P2011−149793)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】