侵入監視装置
【課題】高コストの多光軸光電センサを用いることなく、少なくとも1個の受光素子によっても、正確な光軸あわせを不要にした送信装置からの光を正常に受信して動作可能にする。
【解決手段】本発明は、信号光を出力する送信装置と、該信号光を検出して、監視する受信装置とを備えて、該送信装置と受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する。送信装置は、信号光を放射する発光ダイオードによって構成する。受信装置は、信号光を検出する光センサと、送信装置により放射された信号光を光センサ方向に反射する凸面鏡と、光センサで検出した信号を増幅して、検知信号を出力する信号検出部によって構成する。
【解決手段】本発明は、信号光を出力する送信装置と、該信号光を検出して、監視する受信装置とを備えて、該送信装置と受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する。送信装置は、信号光を放射する発光ダイオードによって構成する。受信装置は、信号光を検出する光センサと、送信装置により放射された信号光を光センサ方向に反射する凸面鏡と、光センサで検出した信号を増幅して、検知信号を出力する信号検出部によって構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号光を出力する送信装置と、該信号光を検出して、監視する受信装置とを備えて、該送信装置と受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する侵入監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生産現場の安全性と生産性を両立させるための侵入監視装置として、セーフティライトカーテンが広く使われている。セーフティライトカーテンとは、工場などの生産現場で機械や設備が稼動する危険な領域において、人が機械との接触事故などに巻き込まれないように安全のために設置する多光軸光電センサである。セーフティライトカーテンは投光側と受光側によって構成され、投・受光器の間に人や物の進入を検出するための赤外線をカーテン状に照射していることから、セーフティライトカーテンと呼ばれている。このようなライトカーテンは多光軸光電センサを持ち、正常に作動させるために、固定、光軸合わせなどの作業が必要不可欠である。
【0003】
図11は、従来の多光軸光電センサを例示する図である(特許文献1の図9参照)。多光軸光電センサは、複数個の投光素子が一列に整列して配置された投光器と、この投光素子と対をなす受光素子が同数個一列に整列して配置された受光器とから構成される。平行な多数の光軸によって、2次元の物体検知エリアを形成して、物体の有無を検知することができる。しかし、多光軸光電センサは、多数の投稿素子及び受光素子を用いるために高コストの装置になる。
【0004】
一方、ホームセキュリティーや文化財、農園などの動物からの保護については、頻繁に設置変更や専門外人員による作業などが原因で、多光軸光電センサライトカーテンが利用されていないのが現状である。このような現場に於いては、エリア検知センサとして1個のみの赤外センサ(焦電センサ)を用いた受光器がよく使われているが、検知範囲、精度などが外部環境によって変化するので、接近センサとしては使用できるが、境界検知センサとしては精度が悪いという問題がある。即ち、受光器に対して正確に光軸合わせをした1個の投光器からの光によっては正常に動作することはできるが、光軸ずれのある投光器からの光とか、複数の投光器からの光に対しては正常に動作することができない。
【0005】
特許文献2は、赤外線の照射角が一定条件の照射角しか得られないという問題を解決するために、LEDが並べられたLEDアレイ基板の中心軸線に対する傾斜角度を変更可能にする移動手段を設けた赤外線投光器を開示する。これによって、赤外線の照射角が変わり、幅広い条件で照射範囲を設定することができる。しかし、そのための構造は複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-217703号公報
【特許文献2】特公平7-40070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、係る問題点を解決して、高コストの多光軸光電センサを用いることなく、少なくとも1個の受光素子によっても、正確な光軸あわせを不要にした送信装置からの光を正常に受信して動作可能にすることを目的としている。正確な光軸あわせを不要にしたことにより、受信装置を固定する必要もなく、任意の場所に簡単に設置することが可能となる。
【0008】
また、本発明は、1個の受信装置に対して複数個の送信装置からの光を受信可能にして、境界検知センサとして動作可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の侵入監視装置は、信号光を出力する送信装置と、該信号光を検出して、監視する受信装置とを備えて、該送信装置と受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する。送信装置は、信号光を放射する発光ダイオードによって構成する。受信装置は、信号光を検出する光センサと、送信装置により放射された信号光を光センサ方向に反射する凸面鏡と、光センサで検出した信号を増幅して、検知信号を出力する信号検出部によって構成する。
【0010】
送信装置により放射された信号光を上半球空間からのみ受光し、それ以外の信号光を遮光する遮光性材質を配置する。光センサ及び凸面鏡を容器内部に収容し、かつ、遮光性材質を容器の上部と下部に配置して、上部と下部の前記遮光性材質の間に透明窓を形成する。容器の上部と下部に配置した遮光性材質の少なくとも一方を、上下可動にする。また、遮光性材質に加えて、円周方向の一部を遮光する側面遮光板を備えることができる。
【0011】
変調周波数の異なる複数の送信装置を設置して、一つの受信装置でそれぞれを受信することができる。これによって、障害物があるとき、いずれの送信装置からのライン上にあるのかを識別する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高コストの多光軸光電センサを用いることなく、少なくとも1個の受光素子によっても、正確な光軸あわせを不要にした送信装置からの光を正常に受信して動作可能となる。また、1個の受信装置に対して複数個の送信装置からの光を受信可能にして、境界検知センサとして動作可能となる。
【0013】
また、本発明の送信装置及び受信装置は、任意の場所に、任意の人が簡単に設置可能となる。今まで経済的問題や技術力が原因で導入ができなかった分野でも利用でき、社会全体の安全性、利便性、モラルの向上などの期待が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の侵入監視装置の全体構成を説明する図である。
【図2】送信装置の取り付けの一例を示す図である。
【図3】受信装置構造を例示する図である。
【図4】受信装置の遮光機構の第1の例を示す図である。
【図5】遮光機構の第2の例を示す図である。
【図6】遮光機構の第3の例を示す図である。
【図7】遮光機構の第4の例を示す図である。
【図8】(A)は、送信装置の垂直方向の配置を説明する図であり、(B)受光可能角の説明図である。
【図9】送信装置の水平方向の配置を説明する図である。
【図10】本発明の侵入監視装置の使用例を示す図である。
【図11】従来の多光軸光電センサを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、例示に基づき本発明の侵入監視装置を説明する。図1は、本発明の侵入監視装置の全体構成を説明する図である。例示の侵入監視装置は、発光ダイオードLEDによって構成した送信装置と、光センサ(ホトダイオードPD)、半凸面鏡(例えば、半球面鏡)、及び信号検知回路を含む受信装置とから構成される。なお、半凸面鏡としては、半球面鏡を用いることが望ましいが、水平方向より上の上半球空間のあらゆる角度からの信号光を光センサ方向に反射できる形状であれば、厳密な球面形状にする必要はない。なお、図8を参照して後述するように、頂部に光センサPDを配置した場合、半凸面鏡で反射すること無く、水平方向よりも下から直接光センサPDに入射する光も存在する。送信装置はLED(可視光、赤外)を採用することにより、指向性が弱く、広い空間角へ送信できる。そのため、精密な光軸合わせが不要で、設置場所も自由に選べる。送受信装置が遠く離れても、振動、移動、揺れなどによる光軸のずれがないため、誤作動しない。また、環境光(照明の点灯や光の変化)による影響をなくすため、LEDにある周波数に(例えば、数10kHz)パルス変調(点滅)した電圧を加え、受信側でバンドパスフィルタを用い、光信号の選別を行うことができる。
【0016】
受信装置では、光センサ(ホトダイオードPD)で検出した信号をOPアンプで増幅して、検知信号を出力する信号検出部を備える。ホトダイオードPDが半球面鏡からの反射光を観測するため、上半球空間のあらゆる角度からの信号光を受信することができ、光軸合わせが不要になる。送信側でレーザー(半減角は0°に近い、拡散しても強度が強いため危険)の代わりに、LED(例えば、半減角15°の赤外LED)を使用することで、信号光を広く送信することが可能になる。さらに、拡散板を用いることにより、より拡散して送信することが可能になる。信号光を広く送信するために、半球面鏡を用いずに、受信装置のホトダイオードPDを、直接送信LED の方向に向かわせる構成も可能であるが、しかし、多少ながら光軸を合わせる必要があるか、または同時に異なる方向からの送信を受信できないというデメリットが生じる。これに対して、本発明は、受信側で半球面鏡を用いて、反射光を検知することにより、光軸合わせ不要、同時に異なる方向からの送信を受信できる長所があるため、使用できる場面が圧倒的に多くなる。
【0017】
図2は、送信装置の取り付けの一例を示す図である。送信装置は、(a)台の上、(b)天井、机の下、(c)壁、ドア窓枠など任意の場所に設置することができる。
【0018】
図3は、受信装置構造を例示する図である。受信装置は大きく分けて、光センサ(ホトダイオードPD)、半球面鏡、容器の3つの部分から構成している。容器は光センサと半球面鏡を汚れや湿気から守り、また容器の側面は直射外光(特に日光や高い角度の照明、近い距離の地面からの強い反射光などでホトダイオードPDの出力を飽和させる恐れがあるため)の影響をなくすため、図3に示すように容器上部と下部に遮光性のある材質(黒いテープ、半透明樹脂、金属の筒など)を配置する。また、容器の内部にも、遮光板を設けている。
【0019】
図4は、受信装置の遮光機構の第1の例を示す図である。容器上部と下部の遮光部はいずれも上下可動にしている。遮光部の上下移動機構は回転昇降式、或いは垂直直線スライド式にすることができる。また遮光部を固定する固定手段(ネジ留、スライドロックなど)を講じる。上部と下部の遮光部の間に透明部(透明窓)が形成される。使用環境によっては、透明窓の広さ(D)や、高さ(H)を調節する必要がある場合、遮光部を可動にすることで実現できる。図4の遮光する部分は上下とも可動なので、細かな遮光設定が可能となる。
【0020】
図5は、遮光機構の第2の例を示す図である。図示のように、下側遮光部は固定し、この下側遮光部に対して、透明部が一体の上側遮光部を上下可動する。遮光部の上下移動機構は回転昇降式、或いは垂直直線スライド式にすることができる。また遮光部を固定する固定手段(ネジ留、スライドロックなど)を講じる。図示の遮光機構は一つの動作で地面近くの強い光の反射による影響を低減でき、水辺や水面上での設置の際の誤作動を防げる。
【0021】
図6は、遮光機構の第3の例を示す図である。図示のように、透明部が一体の下側遮光部は固定し、この下側遮光部に対して、上側遮光部を上下可動する。遮光部の上下移動機構は回転昇降式、或いは垂直直線スライド式にすることができる。また遮光部を固定する固定手段(ネジ留、スライドロックなど)を講じる。図6に示す遮光機構は上部のみ可動することで、高い角度からの外光の入射を防ぎ、舞台やライブ会場などで使用する際、照明灯による影響を除去する。
【0022】
また、本装置は持ち運んで設置することが想定しているため、遮光機構は、運搬する際の保護装置としても効果が発揮できる。図4〜図6のいずれも、受信装置を収納する際、透明窓部は遮光部に隠れる設計になっている。
【0023】
図7は、遮光機構の第4の例を示す図である。図示のように、透明部が一体の下側遮光部は固定し、この下側遮光部に対して、上側遮光部を上下可動する。これに加えて、円周方向に可動の側面遮光板を、上側遮光部に取り付ける。例示の側面遮光板をつけると、一度に多チャンネルで複数個の受信装置を使用する場合の相互干渉を防ぐことができる。
【0024】
図8(A)は、送信装置の垂直方向の配置を説明する図であり、(B)受光可能角の説明図である。送信装置を設置する際は、図示のように、光路が受信装置の透明窓(例えば、ガラス)を通るように設置する。受信時、透明窓を通過した信号光が、半凸面鏡の表面に達し、光センサを含む広い空間角に反射される。反射される光の一部が必ず光センサに到達する。信号検出部(図1参照)はホトダイオードPDからの入力を検出、監視して、送・受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する。
【0025】
受信可能な範囲について、図8に示す上部遮光板A,下部遮光板Bは、強い外光による影響(PD出力飽和など)を減少するためのもので、上述した遮光機構を用い、必要に応じて、透明窓の幅を狭めたり、高さを変更したりすることができる。図示のように、所定の受光面幅を有するホトダイオードPDを容器の頂部に取り付けた場合、LEDからは半球面鏡で反射した後ホトダイオードPDに入射する受光角と、半球面鏡で反射すること無く直接入射する受光角がある。図中のα1は、受光可能角、α2は、反射のみ受光可能角、α3は、直接入射光受光可能角(反射も含む)、α4は、受光不能角をそれぞれ示している。図8に示している状況で、約60度程度の垂直方向空間角(水平方向は360度)からの送信装置の信号を受信できる。通常の使用に十分対応できる範囲と考えられる。
【0026】
図9は、送信装置の水平方向の配置を説明する図である。(A)は、受信装置に指向性がなく、1送信装置対1受信装置の検知システムの場合であり、送信装置は図示のように周り360度どこにも置ける。また(B)に示すように、1:N検知システムの構成にして、変調周波数の異なる複数の送信装置を設置する。一つの受信装置でそれぞれを受信し、いずれのLED(送信装置)からのライン上に障害物があっても識別して、検出することが可能である。
【実施例】
【0027】
図10は、本発明の侵入監視装置の使用例を示す図である。(A)は、文化財、美術館などの境界検知センサとして用いて、落書きなどを防止する例を示している。また、時間帯別の出入り管理のために用いることができる。(B)は、キャンプ時のテント周辺の安全管理に用いた例を示している。また、畑収穫期の動物被害防止などに用いることができる。安定した足場がない場所とか、電源が取れない場所では、乾電池などの二次電源でも作動する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号光を出力する送信装置と、該信号光を検出して、監視する受信装置とを備えて、該送信装置と受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する侵入監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生産現場の安全性と生産性を両立させるための侵入監視装置として、セーフティライトカーテンが広く使われている。セーフティライトカーテンとは、工場などの生産現場で機械や設備が稼動する危険な領域において、人が機械との接触事故などに巻き込まれないように安全のために設置する多光軸光電センサである。セーフティライトカーテンは投光側と受光側によって構成され、投・受光器の間に人や物の進入を検出するための赤外線をカーテン状に照射していることから、セーフティライトカーテンと呼ばれている。このようなライトカーテンは多光軸光電センサを持ち、正常に作動させるために、固定、光軸合わせなどの作業が必要不可欠である。
【0003】
図11は、従来の多光軸光電センサを例示する図である(特許文献1の図9参照)。多光軸光電センサは、複数個の投光素子が一列に整列して配置された投光器と、この投光素子と対をなす受光素子が同数個一列に整列して配置された受光器とから構成される。平行な多数の光軸によって、2次元の物体検知エリアを形成して、物体の有無を検知することができる。しかし、多光軸光電センサは、多数の投稿素子及び受光素子を用いるために高コストの装置になる。
【0004】
一方、ホームセキュリティーや文化財、農園などの動物からの保護については、頻繁に設置変更や専門外人員による作業などが原因で、多光軸光電センサライトカーテンが利用されていないのが現状である。このような現場に於いては、エリア検知センサとして1個のみの赤外センサ(焦電センサ)を用いた受光器がよく使われているが、検知範囲、精度などが外部環境によって変化するので、接近センサとしては使用できるが、境界検知センサとしては精度が悪いという問題がある。即ち、受光器に対して正確に光軸合わせをした1個の投光器からの光によっては正常に動作することはできるが、光軸ずれのある投光器からの光とか、複数の投光器からの光に対しては正常に動作することができない。
【0005】
特許文献2は、赤外線の照射角が一定条件の照射角しか得られないという問題を解決するために、LEDが並べられたLEDアレイ基板の中心軸線に対する傾斜角度を変更可能にする移動手段を設けた赤外線投光器を開示する。これによって、赤外線の照射角が変わり、幅広い条件で照射範囲を設定することができる。しかし、そのための構造は複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-217703号公報
【特許文献2】特公平7-40070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、係る問題点を解決して、高コストの多光軸光電センサを用いることなく、少なくとも1個の受光素子によっても、正確な光軸あわせを不要にした送信装置からの光を正常に受信して動作可能にすることを目的としている。正確な光軸あわせを不要にしたことにより、受信装置を固定する必要もなく、任意の場所に簡単に設置することが可能となる。
【0008】
また、本発明は、1個の受信装置に対して複数個の送信装置からの光を受信可能にして、境界検知センサとして動作可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の侵入監視装置は、信号光を出力する送信装置と、該信号光を検出して、監視する受信装置とを備えて、該送信装置と受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する。送信装置は、信号光を放射する発光ダイオードによって構成する。受信装置は、信号光を検出する光センサと、送信装置により放射された信号光を光センサ方向に反射する凸面鏡と、光センサで検出した信号を増幅して、検知信号を出力する信号検出部によって構成する。
【0010】
送信装置により放射された信号光を上半球空間からのみ受光し、それ以外の信号光を遮光する遮光性材質を配置する。光センサ及び凸面鏡を容器内部に収容し、かつ、遮光性材質を容器の上部と下部に配置して、上部と下部の前記遮光性材質の間に透明窓を形成する。容器の上部と下部に配置した遮光性材質の少なくとも一方を、上下可動にする。また、遮光性材質に加えて、円周方向の一部を遮光する側面遮光板を備えることができる。
【0011】
変調周波数の異なる複数の送信装置を設置して、一つの受信装置でそれぞれを受信することができる。これによって、障害物があるとき、いずれの送信装置からのライン上にあるのかを識別する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高コストの多光軸光電センサを用いることなく、少なくとも1個の受光素子によっても、正確な光軸あわせを不要にした送信装置からの光を正常に受信して動作可能となる。また、1個の受信装置に対して複数個の送信装置からの光を受信可能にして、境界検知センサとして動作可能となる。
【0013】
また、本発明の送信装置及び受信装置は、任意の場所に、任意の人が簡単に設置可能となる。今まで経済的問題や技術力が原因で導入ができなかった分野でも利用でき、社会全体の安全性、利便性、モラルの向上などの期待が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の侵入監視装置の全体構成を説明する図である。
【図2】送信装置の取り付けの一例を示す図である。
【図3】受信装置構造を例示する図である。
【図4】受信装置の遮光機構の第1の例を示す図である。
【図5】遮光機構の第2の例を示す図である。
【図6】遮光機構の第3の例を示す図である。
【図7】遮光機構の第4の例を示す図である。
【図8】(A)は、送信装置の垂直方向の配置を説明する図であり、(B)受光可能角の説明図である。
【図9】送信装置の水平方向の配置を説明する図である。
【図10】本発明の侵入監視装置の使用例を示す図である。
【図11】従来の多光軸光電センサを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、例示に基づき本発明の侵入監視装置を説明する。図1は、本発明の侵入監視装置の全体構成を説明する図である。例示の侵入監視装置は、発光ダイオードLEDによって構成した送信装置と、光センサ(ホトダイオードPD)、半凸面鏡(例えば、半球面鏡)、及び信号検知回路を含む受信装置とから構成される。なお、半凸面鏡としては、半球面鏡を用いることが望ましいが、水平方向より上の上半球空間のあらゆる角度からの信号光を光センサ方向に反射できる形状であれば、厳密な球面形状にする必要はない。なお、図8を参照して後述するように、頂部に光センサPDを配置した場合、半凸面鏡で反射すること無く、水平方向よりも下から直接光センサPDに入射する光も存在する。送信装置はLED(可視光、赤外)を採用することにより、指向性が弱く、広い空間角へ送信できる。そのため、精密な光軸合わせが不要で、設置場所も自由に選べる。送受信装置が遠く離れても、振動、移動、揺れなどによる光軸のずれがないため、誤作動しない。また、環境光(照明の点灯や光の変化)による影響をなくすため、LEDにある周波数に(例えば、数10kHz)パルス変調(点滅)した電圧を加え、受信側でバンドパスフィルタを用い、光信号の選別を行うことができる。
【0016】
受信装置では、光センサ(ホトダイオードPD)で検出した信号をOPアンプで増幅して、検知信号を出力する信号検出部を備える。ホトダイオードPDが半球面鏡からの反射光を観測するため、上半球空間のあらゆる角度からの信号光を受信することができ、光軸合わせが不要になる。送信側でレーザー(半減角は0°に近い、拡散しても強度が強いため危険)の代わりに、LED(例えば、半減角15°の赤外LED)を使用することで、信号光を広く送信することが可能になる。さらに、拡散板を用いることにより、より拡散して送信することが可能になる。信号光を広く送信するために、半球面鏡を用いずに、受信装置のホトダイオードPDを、直接送信LED の方向に向かわせる構成も可能であるが、しかし、多少ながら光軸を合わせる必要があるか、または同時に異なる方向からの送信を受信できないというデメリットが生じる。これに対して、本発明は、受信側で半球面鏡を用いて、反射光を検知することにより、光軸合わせ不要、同時に異なる方向からの送信を受信できる長所があるため、使用できる場面が圧倒的に多くなる。
【0017】
図2は、送信装置の取り付けの一例を示す図である。送信装置は、(a)台の上、(b)天井、机の下、(c)壁、ドア窓枠など任意の場所に設置することができる。
【0018】
図3は、受信装置構造を例示する図である。受信装置は大きく分けて、光センサ(ホトダイオードPD)、半球面鏡、容器の3つの部分から構成している。容器は光センサと半球面鏡を汚れや湿気から守り、また容器の側面は直射外光(特に日光や高い角度の照明、近い距離の地面からの強い反射光などでホトダイオードPDの出力を飽和させる恐れがあるため)の影響をなくすため、図3に示すように容器上部と下部に遮光性のある材質(黒いテープ、半透明樹脂、金属の筒など)を配置する。また、容器の内部にも、遮光板を設けている。
【0019】
図4は、受信装置の遮光機構の第1の例を示す図である。容器上部と下部の遮光部はいずれも上下可動にしている。遮光部の上下移動機構は回転昇降式、或いは垂直直線スライド式にすることができる。また遮光部を固定する固定手段(ネジ留、スライドロックなど)を講じる。上部と下部の遮光部の間に透明部(透明窓)が形成される。使用環境によっては、透明窓の広さ(D)や、高さ(H)を調節する必要がある場合、遮光部を可動にすることで実現できる。図4の遮光する部分は上下とも可動なので、細かな遮光設定が可能となる。
【0020】
図5は、遮光機構の第2の例を示す図である。図示のように、下側遮光部は固定し、この下側遮光部に対して、透明部が一体の上側遮光部を上下可動する。遮光部の上下移動機構は回転昇降式、或いは垂直直線スライド式にすることができる。また遮光部を固定する固定手段(ネジ留、スライドロックなど)を講じる。図示の遮光機構は一つの動作で地面近くの強い光の反射による影響を低減でき、水辺や水面上での設置の際の誤作動を防げる。
【0021】
図6は、遮光機構の第3の例を示す図である。図示のように、透明部が一体の下側遮光部は固定し、この下側遮光部に対して、上側遮光部を上下可動する。遮光部の上下移動機構は回転昇降式、或いは垂直直線スライド式にすることができる。また遮光部を固定する固定手段(ネジ留、スライドロックなど)を講じる。図6に示す遮光機構は上部のみ可動することで、高い角度からの外光の入射を防ぎ、舞台やライブ会場などで使用する際、照明灯による影響を除去する。
【0022】
また、本装置は持ち運んで設置することが想定しているため、遮光機構は、運搬する際の保護装置としても効果が発揮できる。図4〜図6のいずれも、受信装置を収納する際、透明窓部は遮光部に隠れる設計になっている。
【0023】
図7は、遮光機構の第4の例を示す図である。図示のように、透明部が一体の下側遮光部は固定し、この下側遮光部に対して、上側遮光部を上下可動する。これに加えて、円周方向に可動の側面遮光板を、上側遮光部に取り付ける。例示の側面遮光板をつけると、一度に多チャンネルで複数個の受信装置を使用する場合の相互干渉を防ぐことができる。
【0024】
図8(A)は、送信装置の垂直方向の配置を説明する図であり、(B)受光可能角の説明図である。送信装置を設置する際は、図示のように、光路が受信装置の透明窓(例えば、ガラス)を通るように設置する。受信時、透明窓を通過した信号光が、半凸面鏡の表面に達し、光センサを含む広い空間角に反射される。反射される光の一部が必ず光センサに到達する。信号検出部(図1参照)はホトダイオードPDからの入力を検出、監視して、送・受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する。
【0025】
受信可能な範囲について、図8に示す上部遮光板A,下部遮光板Bは、強い外光による影響(PD出力飽和など)を減少するためのもので、上述した遮光機構を用い、必要に応じて、透明窓の幅を狭めたり、高さを変更したりすることができる。図示のように、所定の受光面幅を有するホトダイオードPDを容器の頂部に取り付けた場合、LEDからは半球面鏡で反射した後ホトダイオードPDに入射する受光角と、半球面鏡で反射すること無く直接入射する受光角がある。図中のα1は、受光可能角、α2は、反射のみ受光可能角、α3は、直接入射光受光可能角(反射も含む)、α4は、受光不能角をそれぞれ示している。図8に示している状況で、約60度程度の垂直方向空間角(水平方向は360度)からの送信装置の信号を受信できる。通常の使用に十分対応できる範囲と考えられる。
【0026】
図9は、送信装置の水平方向の配置を説明する図である。(A)は、受信装置に指向性がなく、1送信装置対1受信装置の検知システムの場合であり、送信装置は図示のように周り360度どこにも置ける。また(B)に示すように、1:N検知システムの構成にして、変調周波数の異なる複数の送信装置を設置する。一つの受信装置でそれぞれを受信し、いずれのLED(送信装置)からのライン上に障害物があっても識別して、検出することが可能である。
【実施例】
【0027】
図10は、本発明の侵入監視装置の使用例を示す図である。(A)は、文化財、美術館などの境界検知センサとして用いて、落書きなどを防止する例を示している。また、時間帯別の出入り管理のために用いることができる。(B)は、キャンプ時のテント周辺の安全管理に用いた例を示している。また、畑収穫期の動物被害防止などに用いることができる。安定した足場がない場所とか、電源が取れない場所では、乾電池などの二次電源でも作動する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光を出力する送信装置と、該信号光を検出して、監視する受信装置とを備えて、該送信装置と受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する侵入監視装置において、
前記送信装置は、信号光を放射する発光ダイオードによって構成し、
前記受信装置は、信号光を検出する光センサと、前記送信装置により放射された信号光を前記光センサ方向に反射する凸面鏡と、前記光センサで検出した信号を増幅して、検知信号を出力する信号検出部によって構成した、
ことから成る侵入監視装置。
【請求項2】
前記送信装置により放射された信号光を上半球空間からのみ受光し、それ以外の信号光を遮光する遮光性材質を配置した請求項1に記載の侵入監視装置。
【請求項3】
前記光センサ及び凸面鏡を容器内部に収容し、かつ、前記遮光性材質を前記容器の上部と下部に配置して、上部と下部の前記遮光性材質の間に透明窓を形成した請求項2に記載の侵入監視装置。
【請求項4】
前記容器の上部と下部に配置した前記遮光性材質の少なくとも一方を、上下可動にした請求項3に記載の侵入監視装置。
【請求項5】
前記遮光性材質に加えて、円周方向の一部を遮光する側面遮光板を備えた請求項4に記載の侵入監視装置。
【請求項6】
変調周波数の異なる複数の送信装置を設置し、一つの受信装置でそれぞれを受信して、障害物があるとき、いずれの送信装置からのライン上にあるのかを識別する請求項1に記載の侵入監視装置。
【請求項1】
信号光を出力する送信装置と、該信号光を検出して、監視する受信装置とを備えて、該送信装置と受信装置を結ぶライン上の障害物の存在を判断する侵入監視装置において、
前記送信装置は、信号光を放射する発光ダイオードによって構成し、
前記受信装置は、信号光を検出する光センサと、前記送信装置により放射された信号光を前記光センサ方向に反射する凸面鏡と、前記光センサで検出した信号を増幅して、検知信号を出力する信号検出部によって構成した、
ことから成る侵入監視装置。
【請求項2】
前記送信装置により放射された信号光を上半球空間からのみ受光し、それ以外の信号光を遮光する遮光性材質を配置した請求項1に記載の侵入監視装置。
【請求項3】
前記光センサ及び凸面鏡を容器内部に収容し、かつ、前記遮光性材質を前記容器の上部と下部に配置して、上部と下部の前記遮光性材質の間に透明窓を形成した請求項2に記載の侵入監視装置。
【請求項4】
前記容器の上部と下部に配置した前記遮光性材質の少なくとも一方を、上下可動にした請求項3に記載の侵入監視装置。
【請求項5】
前記遮光性材質に加えて、円周方向の一部を遮光する側面遮光板を備えた請求項4に記載の侵入監視装置。
【請求項6】
変調周波数の異なる複数の送信装置を設置し、一つの受信装置でそれぞれを受信して、障害物があるとき、いずれの送信装置からのライン上にあるのかを識別する請求項1に記載の侵入監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−69098(P2013−69098A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206958(P2011−206958)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】
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