説明

侵入者検知システム及び侵入者検知方法

【課題】侵入者を効率よく検知することを課題とする。
【解決手段】監視装置10は、互いの設置環境が共通するとともに互いの被写体が同一ではない複数のカメラ50にて撮像されたそれぞれの画像を取得する。さらに、監視装置10は、取得した複数の画像のそれぞれについて画像変化を検出する。さらに、監視装置10は、画像変化が他の同一時刻の画像にて検出されていた場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定する。さらに、監視装置は、侵入者の誤検知の判定結果に基づいて検知結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入者検知システム及び侵入者検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラによって撮像された映像を解析することにより侵入者を検知する侵入者検知システムが知られている。かかる映像の解析には、映像のフレーム間で輝度や色差の変化を検出することによって動体を検知するアルゴリズムが組み込まれた画像解析用のソフトウェアが用いられる。画像解析用のソフトウェアを動作させる際には、映像中に検出される物体を動体と判定する輝度や色差の変化の度合いを感度として設定できるが、あまり感度を高設定にすると人物以外の動体、例えば雨や雪などの自然現象を動体と誤検知してしまう場合もある。
【0003】
かかる誤検知を防止する技術の一例として、同一の領域を撮影する複数のカメラによってそれぞれ撮像された映像を比較する安全監視方法や画像認識型の防犯センサが挙げられる。
【0004】
このうち、安全監視方法では、共通する領域を撮影するように2つ以上のTV(TeleVision)カメラを設けるとともに各々TVカメラの撮影領域に固定の目印を設け、各々の目印ごとに小領域に区分けする。その上で、安全監視方法では、TVカメラによって撮影される画像のフレーム間で小領域にしきい値を超える差分が検出された場合に、他のTVによって撮影された画像のフレーム間で差分が同じように検出されたならば人や物が存在すると判定する。これによって、TVカメラの前を飛来する虫や鳥などを人や物と誤って警報するのを防止する。
【0005】
また、画像認識型の防犯センサは、同一の監視領域を異なる視点から撮像する複数のカメラを有する。画像認識型の防犯センサは、各カメラにより得られた画像の変化部分の三次元的な位置を演算し、変化部分の三次元的な位置が適切な位置、すなわち侵入者や侵入物が存在可能な位置に存在するか否かを判定する。これによって、窓から差し込む光や日照による影の移動によって誤報を発するのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−182061号公報
【特許文献2】特開平04−031996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では、以下に説明するように、侵入者を効率よく検知できないという問題があった。
【0008】
すなわち、上記の安全監視方法及び画像認識型の防犯センサのいずれも、誤検知を防止するために、複数のカメラによって同じ領域が撮影された画像を用いるものである。このため、上記の安全監視方法及び画像認識型の防犯センサでは、各々のカメラの間で撮影領域の重複なしに誤検知を防止できず、監視対象とする領域が広いほど監視に必要なカメラの台数も多くなってしまう。このように、上記の安全監視方法及び画像認識型の防犯センサは、誤検知を防止するためにカメラの設置台数を度外視するものであるので、侵入者を効率よく検知することはできない。
【0009】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、侵入者を効率よく検知できる侵入者検知システム及び侵入者検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の開示する侵入者検知システムは、カメラ映像を解析し画像の変化を元に侵入者を検知する侵入者検知システムである。前記侵入者検知システムは、互いの設置環境が共通するとともに互いの被写体が同一ではない複数のカメラにて撮像されたそれぞれの画像を取得する画像取得部を有する。さらに、前記侵入者検知システムは、前記画像取得部で取得した複数の画像のそれぞれについて画像変化を検出する画像解析部を有する。さらに、前記侵入者検知システムは、前記画像解析部にて検出された画像変化が他の同一時刻の画像にて検出されていた場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定する集約処理部を有する。さらに、前記侵入者検知システムは、前記集約処理部の判定結果に基づいて検知結果を出力する出力部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本願の開示する侵入者検知システムの一つの態様によれば、侵入者を効率よく検知できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1に係る侵入者検知システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】図2は、実施例1に係る監視装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、通知用メモリにおける検出フラグの遷移例を示す図である。
【図4】図4は、通知用メモリにおける検出フラグの遷移例を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係る画像解析処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施例1に係る集約処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施例2に係る監視装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】図8は、実施例2に係る画像解析処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施例2に係る集約処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施例3に係る監視装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図11】図11は、実施例3に係る画像解析処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、実施例3に係る集約処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施例1〜実施例3に係る侵入者検知プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する侵入者検知システム及び侵入者検知方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0014】
[システム構成]
まず、本実施例に係る侵入者検知システムの構成について説明する。図1は、実施例1に係る侵入者検知システムの構成を示すシステム構成図である。図1に示す侵入者検知システム1には、監視装置10と、カメラ50A〜カメラ50Dとが収容される。なお、図1の例では、互いの設置環境が共通するとともに互いの被写体が同一ではないカメラ50A〜カメラ50Dによって撮像された映像を用いて、無人中継所に設けられたマイクロ無線の鉄塔5への侵入者7を検知する場合を想定する。
【0015】
図1の例では、4つのカメラ、1つの監視装置をそれぞれ図示したが、開示のシステムは図示の構成に限定されない。すなわち、侵入者検知システム1は、少なくとも2つのカメラ及び1つの監視装置の組合せが収容されていればよく、この条件を満たすのであれば任意の数のカメラ及び監視装置を収容できる。なお、以下では、カメラ50A〜カメラ50Dの各装置を区別なく説明する場合には、「カメラ50」と表現する場合がある。
【0016】
このうち、カメラ50は、映像を撮像する撮像装置である。かかるカメラ50の一例としては、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などを用いた撮像装置が挙げられる。
【0017】
これらカメラ50A〜カメラ50Dは、撮像範囲31A〜撮像範囲31Dに収められた被写体を撮像した上でその映像を監視装置10に送信する。ここで、以下では、カメラ50によって撮像された映像のことを「カメラ映像」と呼ぶ場合がある。
【0018】
かかるカメラ50の設置例としては、各々のカメラ50A〜カメラ50Dが互いに共通する環境に設置される。図1に示すように、カメラ50A〜カメラ50Dは、屋外に設置されたマイクロ無線の鉄塔5を包囲する柵の四方それぞれに設置されるが、各々のカメラ50の撮像範囲に収まる被写体が同一とはならないように向きを調節して設置される。すなわち、カメラ50Aの撮像範囲31A、カメラ50Bの撮像範囲31B、カメラ50Cの撮像範囲31C及びカメラ50Dの撮像範囲31Dは互いに重複しない。
【0019】
このため、侵入者7がカメラ50Dの撮像範囲31Dに侵入したとしても、カメラ50A〜カメラ50Cによって撮像されたカメラ画像には侵入者7は写らず、カメラ50Dによって撮像されたカメラ画像にだけ侵入者7が写る。なお、図1の例では、各々のカメラ50の撮像範囲に収められる被写体が異なる場合を例示するが、必ずしも完全に異なる必要はなく、互いの被写体が一部重複することとしてもかまわない。
【0020】
監視装置10は、カメラ50によって撮像されたカメラ映像を解析することにより侵入者を検知する装置である。監視装置10は、カメラ映像から侵入者を検出した場合に、表示出力または音声出力による報知を自装置の表示デバイスまたは音声出力デバイスへ出力したり、図示しないサーバ装置へ出力したりする。かかる映像の解析には、映像のフレーム間で輝度や色差の変化を検出することによって動体を検知するアルゴリズムが組み込まれた画像解析用のソフトウェアが用いられる。
【0021】
ここで、本実施例に係る監視装置10は、複数のカメラ50によって撮像されたカメラ映像を取得する。さらに、本実施例に係る監視装置10は、カメラ50から取得された映像ごとに画像解析を実行することによって画像変化を検出する。さらに、本実施例に係る監視装置10は、画像変化が他の同一時刻の画像にて検出されていた場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定する。さらに、本実施例に係る監視装置10は、判定結果に基づいて検知結果を出力する。
【0022】
このように、本実施例に係る監視装置10は、複数のカメラ50により異なる領域を撮像して侵入者を監視する場合に、特定のカメラ50で検出された画像変化が環境変化に伴うものであるか否かを他のカメラ50での検出結果に応じて判定する。
【0023】
すなわち、本実施例に係る監視装置10は、特定のカメラ映像から画像変化が検出されたからといって直ちに侵入者と判定せず、他のカメラ映像においても画像変化が検出されなかった場合に始めて侵入者と判定する。言い換えれば、本実施例に係る監視装置10は、複数のカメラ50によって撮像されたカメラ映像のうち特定のカメラ映像から画像変化が単独で検出された場合に、その画像変化が侵入者によるものと判定する。その一方で、本実施例に係る監視装置10は、複数のカメラ映像から画像変化が検出された場合には、環境変化による侵入者の誤検知と判定する。なぜなら、互いの被写体が異なる複数のカメラ50で侵入者が同時に検知される可能性よりも、互いの設置環境が共通するカメラ50であれば雨や雪などの自然現象によって画像変化が生じる可能性の方が高いからである。
【0024】
それゆえ、本実施例に係る監視装置10では、複数のカメラ映像で画像変化が同時に検出されたか否かによって誤検知であるか否かを判定することより、画像変化が侵入者または環境変化のいずれによって生ずるものであるのかを正確に判別できる。また、本実施例に係る監視装置10は、環境変化による侵入者の誤検知を判定するにあたって複数のカメラ50によって異なる領域が撮影されたカメラ映像を用いる。このため、本実施例に係る監視装置10では、各々のカメラ50の間で撮影領域の重複なしに誤検知を防止でき、上記の従来技術を用いる場合よりも監視に必要なカメラの台数を少なくできる。
【0025】
このように、本実施例に係る監視装置10では、環境変化による侵入者の誤検知を防止しつつも、監視に必要なカメラの台数を低減できる。したがって、本実施例に係る監視装置10によれば、侵入者を効率よく検知することが可能になる。
【0026】
[監視装置の構成]
続いて、本実施例に係る監視装置の構成について説明する。図2は、実施例1に係る監視装置の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、監視装置10は、取得部11と、画像解析部12と、通知用メモリ13と、集約処理部14と、出力部15とを有する。なお、監視装置10は、図2に示した機能部以外にも既知のコンピュータが有する各種の機能部、例えば各種の入力デバイス、表示デバイスや音声出力デバイスなどの機能を有するものとする。
【0027】
このうち、取得部11は、複数のカメラ50によって撮像された各々のカメラ映像を取得する処理部である。この取得部11は、図2に示すように、カメラ50A〜カメラ50Dからカメラ映像として入力されるNTSC信号をYUV信号に変換した上で静止画のカメラ画像に変換する映像変換部11A〜映像変換部11Dを有する。なお、上記の「NTSC」は、「National Television Standards Committee」の略称である。
【0028】
これら映像変換部11A〜映像変換部11Dは、カメラ50A〜カメラ50Dの4つの入力系統ごとに各々のカメラ50A〜カメラ50Dから入力されるカメラ映像を並列して静止画のカメラ画像に変換する。なお、静止画を生成する際には、カメラ50から入力されるカメラ映像全てを静止画に変換することとしてもよいし、所定のフレーム数につき1つを静止画に変換することとしてもよい。
【0029】
なお、ここでは、4つのカメラ50A〜カメラ50Dから各々のカメラ映像が入力される場合を例示したが、カメラ50の数は4つに限定されず、カメラの数に対応する数の映像変換部を動作させることができる。また、ここでは、カメラ映像を並列して処理するために、カメラ及び映像変換部の数を1対1に対応させる場合を例示したが、カメラ50から入力されるカメラ映像を順番に処理することもできる。
【0030】
画像解析部12は、画像解析用のソフトウェアを動作させることにより、映像変換部11A〜映像変換部11Dによって変換されたカメラ画像を解析する処理部である。この画像解析部12は、図2に示すように、検出部12A〜検出部12Dを有する。
【0031】
検出部12A〜検出部12Dは、カメラ画像のフレーム間で輝度や色差の変化を検出する処理部である。かかる検出部12A〜検出部12Dには、検出対象とする物体のサイズ、物体を動体と判定する輝度や色差の変化の度合い、さらには、物体を動体と判定するフレーム数などが検出感度として設定される。
【0032】
一態様としては、検出部12A〜検出部12Dは、カメラ画像が下記の条件(1)〜条件(3)の3つの条件を満たす場合に「画像変化あり」と判定する。このうち、条件(1)とは、「カメラ画像から検出された物体のサイズが所定のサイズ以上であること」を指す。また、条件(2)とは、「カメラ画像のフレーム間で検出される輝度や色差の変化が所定の度合いを超えること」を指す。また、条件(3)とは、「画像の変化が所定のフレーム数にわたって継続すること」を指す。
【0033】
ここで、検出部12A〜検出部12Dは、取得部11によって取得されるカメラ画像が上記の条件(1)〜条件(3)を全て満たす場合に、次のような処理を実行する。すなわち、検出部12A〜検出部12Dは、後述の通知用メモリ13が保持する記憶領域のうち上記の条件(1)〜条件(3)の判定条件を満たしたカメラ50に割り当てられている記憶領域に検出フラグ「1」をセットする。一方、検出部12A〜検出部12Dは、取得部11によって取得されるカメラ画像が上記の条件(1)〜条件(3)の全てを満たさない場合に、後述の通知用メモリ13に検出フラグ「0」をセットする。なお、上記の「検出フラグ」は、検出部12A〜検出部12Dの検出結果を表すフラグであり、フラグが「0」である場合には画像変化がないことを示し、また、フラグが「1」である場合には画像変化があることを示す。
【0034】
一例として、検出部12A〜検出部12Dに入力されたカメラ画像のうち検出部12A及び検出部12Dに入力されたカメラ画像が「変化あり」と判定された場合を想定する。この場合には、検出部12Aは、後述の通知用メモリ13が保持する記憶領域のうちカメラ50Aに割り当てられている記憶領域に検出フラグ「1」をセットする。同様にして、検出部12Dは、後述の通知用メモリ13が保持する記憶領域のうちカメラ50Dに割り当てられている記憶領域に検出フラグ「1」をセットする。一方、検出部12Bは、後述の通知用メモリ13が保持する記憶領域のうちカメラ50Bに割り当てられている記憶領域に検出フラグ「0」をセットする。さらに、検出部12Dは、後述の通知用メモリ13が保持する記憶領域のうちカメラ50Cに割り当てられている記憶領域に検出フラグ「0」をセットする。
【0035】
通知用メモリ13は、検出部12A〜検出部12Dによる検出結果を通知するために使用するメモリである。かかる通知用メモリ13には、カメラ50A〜カメラ50Dそれぞれのカメラ画像からの検出結果を記憶する記憶領域が割り当てられている。
【0036】
集約処理部14は、画像解析部12によって検出された画像変化が他の同一時刻の画像にて検出されていた場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定する処理部である。
【0037】
一態様としては、集約処理部14は、所定のポーリング期間、例えば1秒を経過した場合に、通知用メモリ13から各々のカメラ50に割り当てられた記憶領域にセットされている検出フラグを読み出す。そして、集約処理部14は、カメラ50A〜カメラ50Dに割り当てられた記憶領域のうちいずれかの記憶領域に検出フラグ「1」がセットされているか、すなわちいずれかのカメラ50で画像変化が検出されたか否かを判定する。なお、上記の「ポーリング期間」には、監視装置10の管理者が任意の時間を設定することができる。
【0038】
このとき、集約処理部14は、いずれかのカメラ50で画像変化が検出された場合に、所定の待機時間が経過するまで待機した上で通知用メモリ13の記憶領域にセットされている各々のカメラ50の検出フラグを再度読み出す。このように、所定の待機時間が経過するまで待機するのは、自然現象、例えば雨、雪、霧、雷や太陽光の変化が起こる場合に、自然現象が全てのカメラでリアルタイムに顕現するとは限らないからである。よって、集約処理部14は、自然現象が各々のカメラ50で顕現した上で画像変化が自然現象または侵入者のいずれによって発生したのかを判別するために、一定時間待機する。なお、上記の「待機時間」には、監視装置10の管理者が任意の時間を設定することができる。一例としては、カメラ50ごとに自然現象が顕現するのに時間差が生じることが想定されるとはいえ、侵入者が移動する時間と比較すれば微少な時間に過ぎない。よって、待機時間には、ポーリング期間よりも短い時間を設定することができる。
【0039】
その後、集約処理部14は、カメラ50A〜カメラ50Dに割り当てられた全ての記憶領域に検出フラグ「1」がセットされているか、すなわち全てのカメラ50で画像変化が検出されたか否かを判定する。
【0040】
ここで、全てのカメラ50で画像変化が検出された場合には、自然現象が原因となって画像変化が起こった蓋然性が高いと推定できる。なぜなら、雨、雪、霧、雷や太陽光の変化などの自然現象が発生した場合には、一部のカメラ50だけ局所的に画像変化が発生する可能性は低く、同じ設置環境にあるカメラであれば全てのカメラで画像変化が生ずるからである。このため、全てのカメラ50で画像変化が検出された場合には、その画像変化が自然現象によるものと判断できる。よって、侵入者の検知は、後述の出力部15によって出力されない。
【0041】
一方、全てのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合には、自然現象が原因となって画像変化が起こった蓋然性は低い。なぜなら、雨、雪、霧、雷や太陽光の変化などの自然現象が発生した場合には、一部のカメラ50だけ局所的に画像変化が発生する可能性は低いからである。このため、全てのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合には、その画像変化が侵入者によるものと判断できる。よって、後述の出力部15によって侵入者の検知が出力される。
【0042】
図3及び図4は、通知用メモリ13における検出フラグの遷移例を示す図である。図3の例では、通知用メモリ13の記憶領域にセットされている全てのカメラ50の検出フラグが「0」である状態からカメラ50A及びカメラ50Dの検出フラグが「1」に更新された状態に遷移する(S11)。この場合には、集約処理部14は、待機時間の経過を待って通知用メモリ13の記憶領域にセットされている各々のカメラ50の検出フラグを再度読み出す(S12)。このとき、通知用メモリ13の記憶領域にセットされている各々のカメラ50の検出フラグは、S11の時点と変化はなく、カメラ50A及びカメラ50Dの検出フラグだけが「1」にセットされている。この場合には、画像変化が侵入者によるものと判断される。
【0043】
図4の例では、通知用メモリ13の記憶領域にセットされている全てのカメラ50の検出フラグが「0」である状態からカメラ50A及びカメラ50Dの検出フラグが「1」に更新された状態に遷移する(S31)。この場合には、集約処理部14は、待機時間の経過を待って通知用メモリ13の記憶領域にセットされている各々のカメラ50の検出フラグを再度読み出す(S32)。このとき、通知用メモリ13の記憶領域にセットされている各々のカメラ50の検出フラグは、S31の時点とは変化し、全てのカメラ50の検出フラグが「1」にセットされている。この場合には、画像変化が自然現象によるものと判断される。
【0044】
このように、全てのカメラ50で画像変化が検出された場合に画像変化が自然現象によるものと判断するのは、監視対象に細かな変化が生じた場合でも報知を実行するためである。すなわち、全てのカメラ50で画像変化が検出されずとも、複数のカメラ50で画像変化が検出された場合には、画像変化が自然現象によるものと判断できるが、全てのカメラ50で画像変化が検出された場合よりはその蓋然性は低いとも言える。よって、画像変化を自然現象によるものと断定せずに些細な変化を報知する趣旨から、全てのカメラ50で画像変化が検出されて始めて画像変化が自然現象によるものと判断する場合を例示する。
【0045】
なお、ここでは、全てのカメラ50で画像変化が検出された場合に画像変化が自然現象によるものと判断する場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。例えば、集約処理部14は、少なくとも2つのカメラで画像変化が検出された場合に画像変化が自然現象によるものと判断することもできる。また、ここでは、待機時間の経過を待って自然現象による侵入者の誤検知を判定する場合を例示したが、開示の装置は必ずしも待機時間の経過を待つ必要はない。
【0046】
出力部15は、集約処理部14の判定結果に基づいて検知結果を出力する処理部である。一態様としては、出力部15は、待機時間の経過後に全てのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合には、予め出力先として定められた装置に侵入者の検知結果、例えばカメラ画像や撮像日時などの報知を始め、メッセージなどの警告を出力する。一方、出力部15は、待機時間の経過後に全てのカメラ50で画像変化が検出された場合には、侵入者の検知結果は出力しない。なお、検知結果の出力先としては、監視装置10に接続された表示デバイス及び/又は音声出力デバイス、さらには、監視装置10とネットワークを介して接続されたサーバ装置等を選択できる。
【0047】
なお、取得部11、画像解析部12、集約処理部14及び出力部15には、各種の集積回路や電子回路を採用できる。また、取得部11及び画像解析部12に含まれる機能部の一部を別の集積回路や電子回路とすることもできる。例えば、集積回路としては、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)が挙げられる。また、電子回路としては、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などが挙げられる。
【0048】
また、通知用メモリ13などの記憶部には、半導体メモリ素子や記憶装置を採用できる。例えば、半導体メモリ素子としては、VRAM(Video Random Access Memory)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ(flash memory)などが挙げられる。また、記憶装置としては、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置が挙げられる。
【0049】
[処理の流れ]
次に、本実施例に係る監視装置の処理の流れについて説明する。なお、ここでは、監視装置によって実行される(1)画像解析処理を説明した後に、(2)集約処理を説明することとする。
【0050】
(1)画像解析処理
図5は、実施例1に係る画像解析処理の手順を示すフローチャートである。この画像解析処理は、監視装置10の電源がON状態である限り、取得部11によって取得されたカメラ画像が画像解析部12へ入力される度に処理が起動する。
【0051】
図5に示すように、検出部12A〜検出部12Dは、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像を解析する(ステップS101)。
【0052】
このとき、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像の変化が検出されなかった場合(ステップS102否定)には、検出部12A〜検出部12Dは、次のような処理を実行する。すなわち、検出部12A〜検出部12Dは、通知用メモリ13が保持する記憶領域のうち画像変化が検出されなかったカメラ50に割り当てられている記憶領域に検出フラグ「0」をセットし(ステップS103)、上記のステップS101に移行する。
【0053】
一方、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像の変化を検出した場合(ステップS102肯定)には、検出部12A〜検出部12Dは、次のような処理を実行する。すなわち、検出部12A〜検出部12Dは、通知用メモリ13が保持する記憶領域のうち画像変化を検出したカメラ50に割り当てられている記憶領域に検出フラグ「1」をセットし(ステップS104)、上記のステップS101に移行する。
【0054】
(2)集約処理
図6は、実施例1に係る集約処理の手順を示すフローチャートである。この集約処理は、監視装置10の電源がON状態である限り、繰り返し実行される処理である。
【0055】
図6に示すように、ポーリング期間が経過すると(ステップS201肯定)、集約処理部14は、通知用メモリ13から各々のカメラ50に割り当てられた記憶領域にセットされている検出フラグを読み出す(ステップS202)。なお、ポーリング期間が経過していない場合(ステップS201否定)には、集約処理部14は、ポーリング期間の経過の監視を継続する(ステップS201)。
【0056】
そして、集約処理部14は、カメラ50A〜カメラ50Dに割り当てられた記憶領域のうちいずれかの記憶領域に検出フラグ「1」がセットされているか、すなわちいずれかのカメラ50で画像変化が検出されたか否かを判定する(ステップS203)。なお、いずれかのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合(ステップS203否定)には、上記のステップS201の処理に移行する。
【0057】
このとき、いずれかのカメラ50で画像変化が検出された場合(ステップS203肯定)には、集約処理部14は、所定の待機時間が経過するのを待機する(ステップS204)。その上で、集約処理部14は、通知用メモリ13の記憶領域にセットされている各々のカメラ50の検出フラグを再度読み出す(ステップS205)。
【0058】
その後、集約処理部14は、カメラ50A〜カメラ50Dに割り当てられた全ての記憶領域に検出フラグ「1」がセットされているか、すなわち全てのカメラ50で画像変化が検出されたか否かを判定する(ステップS206)。
【0059】
ここで、全てのカメラ50で画像変化が検出された場合(ステップS206肯定)には、自然現象が原因となって画像変化が起こった蓋然性が高いと推定できる。よって、侵入者の検知結果を出力せずに、ステップS201の処理に移行する。
【0060】
一方、全てのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合(ステップS206否定)には、自然現象が原因となって画像変化が起こった蓋然性は低い。よって、出力部15は、予め出力先として定められた装置に侵入者の検知結果、例えばカメラ画像や撮像日時などの報知を始め、メッセージなどの警告を出力し(ステップS207)、ステップS201の処理に移行する。
【0061】
[実施例1の効果]
上述してきたように、本実施例に係る監視装置10では、複数のカメラ映像で画像変化が同時に検出されたか否かによって誤検知であるか否かを判定することより、画像変化が侵入者または環境変化のいずれによって生ずるものであるのかを正確に判別できる。また、本実施例に係る監視装置10は、環境変化による侵入者の誤検知を判定するにあたって複数のカメラ50によって異なる領域が撮影されたカメラ映像を用いる。このため、本実施例に係る監視装置10では、各々のカメラ50の間で撮影領域の重複なしに誤検知を防止でき、上記の従来技術を用いる場合よりも監視に必要なカメラの台数を少なくできる。それゆえ、本実施例に係る監視装置10では、環境変化による侵入者の誤検知を防止しつつも、監視に必要なカメラの台数を低減できる。
【0062】
したがって、本実施例に係る監視装置10によれば、侵入者を効率よく検知することが可能である。さらに、本実施例に係る監視装置10では、画像解析用のソフトウェアのアルゴリズム、さらには各種センサ等を用いるシステム構成を複雑化することなく、簡易な構成で侵入者を検知することができる。
【0063】
さらに、本実施例に係る監視装置10は、いずれかのカメラ50で画像変化が検出されてから所定の時間内に他のカメラ50で画像変化が検出された場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定する。これによって、本実施例に係る監視装置10では、カメラ50ごとに自然現象が顕現するのに時間差が生じた場合でも、環境変化による画像変化を侵入者による画像変化と誤検知することを防止することが可能である。
【実施例2】
【0064】
さて、上記の実施例1では、画像解析部12が動作させる画像解析用のソフトウェアに組み込まれたアルゴリズムが1つである場合を説明したが、開示の装置はこれに限定されない。そこで、本実施例では、複数のアルゴリズムを切り替えて画像変化を検出する場合について説明する。
【0065】
図7は、実施例2に係る監視装置の構成を示す機能ブロック図である。図7に示す監視装置20は、図2に示した監視装置10と比較して、切替え部21をさらに有する点が相違する。なお、ここでは、図2に示した監視装置10と同様の機能を発揮する機能部には同一の符号を付し、その説明を省略することとする。
【0066】
ここで、検出部12A〜検出部12Dでは、上記の実施例1で説明した第1のアルゴリズム、又は、第1のアルゴリズムよりも自然現象による侵入者の誤検知に耐性のある第2のアルゴリズムのいずれかが選択的に使用されるものとする。かかる第2のアルゴリズムの一例としては、カメラ画像のフレーム間で画像全体における画素値の差分として得られる絶対値の和を解析するアルゴリズムが挙げられる。例えば、雨や雪などが発生する場合には、カメラ50によって撮像されるカメラ画像ごとに雨や雪が降る量や密度が急激に変化する可能性は低い。よって、第2のアルゴリズムのように、画像全体における画素値の差分として得られる絶対値の和を用いて解析すれば、カメラ画像のフレーム間で雨や雪による画像変化を低減させつつ、それ以外の要因による画像変化を検出することができる。
【0067】
図7に示す切替え部21は、検出部12A〜検出部12Dに使用させる画像解析用のソフトウェアのアルゴリズムを集約処理部14の判定結果に応じて切り替える処理部である。一態様としては、切替え部21は、集約処理部14によって待機時間の経過後に全てのカメラ50で画像変化が検出されたと判定された場合に、次のような処理を実行する。すなわち、切替え部21は、検出部12A〜検出部12Dが参照する通知用メモリ13に第2のアルゴリズムを設定することにより、検出部12A〜検出部12Dに使用させる画像解析用のソフトウェアのアルゴリズムを第2のアルゴリズムに切り替える。これによって、切替え部21は、自然現象が発生している可能性が高い場合にそれに耐性のあるアルゴリズムに切替える。
【0068】
一方、切替え部21は、集約処理部14によって待機時間の経過後に全てのカメラ50で画像変化が検出されなかったと判定された場合に、次のような処理を実行する。すなわち、切替え部21は、検出部12A〜検出部12Dが参照する通知用メモリ13に第1のアルゴリズムを設定することにより、検出部12A〜検出部12Dに使用させる画像解析用のソフトウェアのアルゴリズムを第1のアルゴリズムに切り替える。これによって、切替え部21は、自然現象が発生している可能性が低い場合に定常時に使用するアルゴリズムに切替える。
【0069】
(1)画像解析処理
図8は、実施例2に係る画像解析処理の手順を示すフローチャートである。この画像解析処理は、図5に示した画像解析処理と同様に、監視装置10の電源がON状態である限り、取得部11によって取得されたカメラ画像が画像解析部12へ入力される度に処理が起動する。
【0070】
図8に示すように、検出部12A〜検出部12Dは、通知用メモリ13に設定登録されたアルゴリズムを選択する(ステップS301)。その上で、検出部12A〜検出部12Dは、上記のステップS301で選択されたアルゴリズムにしたがって、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像を解析する(ステップS101)。
【0071】
このとき、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像の変化が検出されなかった場合(ステップS102否定)には、検出部12A〜検出部12Dは、次のような処理を実行する。すなわち、検出部12A〜検出部12Dは、通知用メモリ13が保持する記憶領域のうち画像変化が検出されなかったカメラ50に割り当てられている記憶領域に検出フラグ「0」をセットし(ステップS103)、上記のステップS301へ移行する。
【0072】
一方、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像の変化を検出した場合(ステップS102肯定)には、検出部12A〜検出部12Dは、次のような処理を実行する。すなわち、検出部12A〜検出部12Dは、通知用メモリ13が保持する記憶領域のうち画像変化を検出したカメラ50に割り当てられている記憶領域に検出フラグ「1」をセットし(ステップS104)、上記のステップS301へ移行する。
【0073】
(2)集約処理
図9は、実施例2に係る集約処理の手順を示すフローチャートである。この集約処理は、図6に示した集約処理と同様に、監視装置20の電源がON状態である限り、繰り返し実行される処理である。
【0074】
図9に示すように、ポーリング期間が経過すると(ステップS201肯定)、集約処理部14は、通知用メモリ13から各々のカメラ50に割り当てられた記憶領域にセットされている検出フラグを読み出す(ステップS202)。なお、ポーリング期間が経過していない場合(ステップS201否定)には、集約処理部14は、ポーリング期間の経過の監視を継続する(ステップS201)。
【0075】
そして、集約処理部14は、カメラ50A〜カメラ50Dに割り当てられた記憶領域のうちいずれかの記憶領域に検出フラグ「1」がセットされているか、すなわちいずれかのカメラ50で画像変化が検出されたか否かを判定する(ステップS203)。なお、いずれかのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合(ステップS203否定)には、上記のステップS201の処理に移行する。
【0076】
このとき、いずれかのカメラ50で画像変化が検出された場合(ステップS203肯定)には、集約処理部14は、所定の待機時間が経過するのを待機する(ステップS204)。その上で、集約処理部14は、通知用メモリ13の記憶領域にセットされている各々のカメラ50の検出フラグを再度読み出す(ステップS205)。
【0077】
その後、集約処理部14は、カメラ50A〜カメラ50Dに割り当てられた全ての記憶領域に検出フラグ「1」がセットされているか、すなわち全てのカメラ50で画像変化が検出されたか否かを判定する(ステップS206)。
【0078】
ここで、全てのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合(ステップS206否定)には、自然現象が原因となって画像変化が起こった蓋然性は低い。よって、出力部15は、予め出力先として定められた装置に侵入者の検知結果、例えばカメラ画像や撮像日時などの報知を始め、メッセージなどの警告を出力する(ステップS207)。その後、切替え部21は、検出部12A〜検出部12Dが参照する通知用メモリ13に通常時に使用する第1のアルゴリズムを設定し(ステップS401)、ステップS201に移行する。
【0079】
一方、全てのカメラ50で画像変化が検出された場合(ステップS206肯定)には、自然現象が原因となって画像変化が起こった蓋然性が高いと推定できる。よって、切替え部21は、侵入者の検知結果を出力せずに、次のような処理を実行する。すなわち、切替え部21は、検出部12A〜検出部12Dが参照する通知用メモリ13に第1のアルゴリズムよりも自然現象による侵入者の誤検知に耐性のある第2のアルゴリズムを設定し(ステップS402)、ステップS201の処理に移行する。
【0080】
[実施例2の効果]
上述してきたように、本実施例に係る監視装置20は、上記の実施例1に係る監視装置10と同様に、複数のカメラ映像で画像変化が同時に検出されたか否かによって誤検知であるか否かを判定する。これによって、本実施例に係る監視装置20においても、画像変化が侵入者または環境変化のいずれによって生ずるものであるのかを正確に判別できる。また、本実施例に係る監視装置20は、上記の実施例1に係る監視装置10と同様に、環境変化による侵入者の誤検知を判定するにあたって複数のカメラ50によって異なる領域が撮影されたカメラ映像を用いる。このため、本実施例に係る監視装置20では、各々のカメラ50の間で撮影領域の重複なしに誤検知を防止でき、上記の従来技術を用いる場合よりも監視に必要なカメラの台数を少なくできる。それゆえ、本実施例に係る監視装置20では、環境変化による侵入者の誤検知を防止しつつも、監視に必要なカメラの台数を低減できる。
【0081】
したがって、本実施例に係る監視装置20によれば、侵入者を効率よく検知することが可能である。さらに、本実施例に係る監視装置20では、画像解析用のソフトウェアのアルゴリズム、さらには各種センサ等を用いるシステム構成を複雑化することなく、簡易な構成で侵入者を検知することができる。
【0082】
さらに、本実施例に係る監視装置20は、画像変化の検出に使用されるアルゴリズムを侵入者の誤検知の判定結果に応じて切り替える。このため、本実施例に係る監視装置20では、自然現象による侵入者の誤検知が発生している場合に自然現象に耐性のあるアルゴリズムに切替えて侵入者の検知を実行できる。それゆえ、本実施例に係る監視装置20では、侵入者の誤検知を効果的に防止することが可能である。
【実施例3】
【0083】
ところで、上記の実施例1では、検出部12A〜検出部12Dが常に同一の検出感度でカメラ画像の変化を検出する場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。そこで、本実施例では、検出感度を調節して侵入者を検知する場合について説明する。
【0084】
図10は、実施例3に係る監視装置の構成を示す機能ブロック図である。図10に示す監視装置30は、図2に示した監視装置10と比較して、調節部31をさらに有する点が相違する。なお、ここでは、図2に示した監視装置10と同様の機能を発揮する機能部には同一の符号を付し、その説明を省略することとする。
【0085】
調節部31は、検出部12A〜検出部12Dに画像変化を検出させる検出感度を集約処理部14の判定結果に応じて調節する処理部である。一態様としては、調節部31は、集約処理部14によって待機時間の経過後に全てのカメラ50で画像変化が検出されたと判定された場合に、次のような処理を実行する。すなわち、調節部31は、検出部12A〜検出部12Dが参照する通知用メモリ13に設定されている検出感度のレベル値をデクリメントすることにより、検出感度を下げる。これによって、自然現象が発生している可能性が高い場合には、画像変化を敏感に検出させることにより、侵入者の誤検知を招く事態を防止する。
【0086】
一方、調節部31は、集約処理部14によって待機時間の経過後に全てのカメラ50で画像変化が検出されなかったと判定された場合に、次のような処理を実行する。すなわち、調節部31は、検出部12A〜検出部12Dが参照する通知用メモリ13に設定されている検出感度のレベル値をインクリメントすることにより、検出感度を上げる。このとき、調節部31は、検出感度のレベル値が所定のデフォルト値を超えないように、検出感度の上昇に制限をかける。例えば、検出感度がビット配列「0001」〜「1010」の10段階のレベル値により設定され、デフォルト値が「0110」に設定されているとしたときには、調節部31は、検出感度のレベル値を「0110(=5)」よりも大きいレベル値には設定しない。これによって、自然現象が発生している可能性が低い場合に限って検出感度を上げつつも、検出感度が過度に上昇するのを防止する。
【0087】
なお、ここでは、全ての検出部12A〜検出部12Dの検出感度を集約処理部14の判定結果に応じて同一の検出感度に設定する場合を例示したが、必ずしも全ての検出部12A〜検出部12Dの検出感度を同一にする必要はない。一例としては、調節部31は、待機時間の経過後に全てのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合に、画像変化を検出したカメラ画像の検出を行っている検出部の検出感度だけを上げるようにしてもよい。
【0088】
(1)画像解析処理
図11は、実施例3に係る画像解析処理の手順を示すフローチャートである。この画像解析処理は、図5に示した画像解析処理と同様に、監視装置10の電源がON状態である限り、取得部11によって取得されたカメラ画像が画像解析部12へ入力される度に処理が起動する。
【0089】
図11に示すように、検出部12A〜検出部12Dは、通知用メモリ13に設定された検出感度を画像解析用のソフトウェアに適用する(ステップS501)。その上で、検出部12A〜検出部12Dは、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像を解析する(ステップS101)。
【0090】
このとき、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像の変化が検出されなかった場合(ステップS102否定)には、検出部12A〜検出部12Dは、次のような処理を実行する。すなわち、検出部12A〜検出部12Dは、通知用メモリ13が保持する記憶領域のうち画像変化が検出されなかったカメラ50に割り当てられている記憶領域に検出フラグ「0」をセットし(ステップS103)、上記のステップS501へ移行する。
【0091】
一方、映像変換部11A〜映像変換部11Dから入力されたカメラ画像の変化を検出した場合(ステップS102肯定)には、検出部12A〜検出部12Dは、次のような処理を実行する。すなわち、検出部12A〜検出部12Dは、通知用メモリ13が保持する記憶領域のうち画像変化を検出したカメラ50に割り当てられている記憶領域に検出フラグ「1」をセットし(ステップS104)、上記のステップS501へ移行する。
【0092】
(2)集約処理
図12は、実施例3に係る集約処理の手順を示すフローチャートである。この集約処理は、図6に示した集約処理と同様に、監視装置30の電源がON状態である限り、繰り返し実行される処理である。
【0093】
図12に示すように、ポーリング期間が経過すると(ステップS201肯定)、集約処理部14は、通知用メモリ13から各々のカメラ50に割り当てられた記憶領域にセットされている検出フラグを読み出す(ステップS202)。なお、ポーリング期間が経過していない場合(ステップS201否定)には、集約処理部14は、ポーリング期間の経過の監視を継続する(ステップS201)。
【0094】
そして、集約処理部14は、カメラ50A〜カメラ50Dに割り当てられた記憶領域のうちいずれかの記憶領域に検出フラグ「1」がセットされているか、すなわちいずれかのカメラ50で画像変化が検出されたか否かを判定する(ステップS203)。なお、いずれかのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合(ステップS203否定)には、上記のステップS201の処理に移行する。
【0095】
このとき、いずれかのカメラ50で画像変化が検出された場合(ステップS203肯定)には、集約処理部14は、所定の待機時間が経過するのを待機する(ステップS204)。その上で、集約処理部14は、通知用メモリ13の記憶領域にセットされている各々のカメラ50の検出フラグを再度読み出す(ステップS205)。
【0096】
その後、集約処理部14は、カメラ50A〜カメラ50Dに割り当てられた全ての記憶領域に検出フラグ「1」がセットされているか、すなわち全てのカメラ50で画像変化が検出されたか否かを判定する(ステップS206)。
【0097】
ここで、全てのカメラ50で画像変化が検出されなかった場合(ステップS206否定)には、自然現象が原因となって画像変化が起こった蓋然性は低い。よって、出力部15は、予め出力先として定められた装置に侵入者の検知結果、例えばカメラ画像や撮像日時などの報知を始め、メッセージなどの警告を出力する(ステップS207)。その後、調節部31は、検出部12A〜検出部12Dが参照する通知用メモリ13に設定された検出感度をインクリメントし(ステップS601)、ステップS201に移行する。
【0098】
一方、全てのカメラ50で画像変化が検出された場合(ステップS206肯定)には、自然現象が原因となって画像変化が起こった蓋然性が高いと推定できる。よって、調節部31は、侵入者の検知結果を出力せずに、次のような処理を実行する。すなわち、調節部31は、検出部12A〜検出部12Dが参照する通知用メモリ13に設定された検出感度をデクリメントし(ステップS602)、ステップS201の処理に移行する。
【0099】
[実施例3の効果]
上述してきたように、本実施例に係る監視装置30は、上記の実施例1に係る監視装置10と同様に、複数のカメラ映像で画像変化が同時に検出されたか否かによって誤検知であるか否かを判定する。これによって、本実施例に係る監視装置30においても、画像変化が侵入者または環境変化のいずれによって生ずるものであるのかを正確に判別できる。また、本実施例に係る監視装置30は、上記の実施例1に係る監視装置10と同様に、環境変化による侵入者の誤検知を判定するにあたって複数のカメラ50によって異なる領域が撮影されたカメラ映像を用いる。このため、本実施例に係る監視装置30では、各々のカメラ50の間で撮影領域の重複なしに誤検知を防止でき、上記の従来技術を用いる場合よりも監視に必要なカメラの台数を少なくできる。それゆえ、本実施例に係る監視装置30では、環境変化による侵入者の誤検知を防止しつつも、監視に必要なカメラの台数を低減できる。
【0100】
したがって、本実施例に係る監視装置30によれば、侵入者を効率よく検知することが可能である。さらに、本実施例に係る監視装置30では、画像解析用のソフトウェアのアルゴリズム、さらには各種センサ等を用いるシステム構成を複雑化することなく、簡易な構成で侵入者を検知することができる。
【0101】
さらに、本実施例に係る監視装置30は、画像変化を検出させる検出感度を侵入者の誤検知の判定結果に応じて調節する。このため、本実施例に係る監視装置30では、自然現象が発生している可能性が高い場合に画像変化を敏感に検出させることにより、侵入者の誤検知を招く事態を防止することが可能である。
【実施例4】
【0102】
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0103】
[適用例]
上記の実施例1〜3では、カメラ50を用いた画像解析だけで侵入者を検知する場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。例えば、開示の装置は、赤外線センサや天候センサなどの他のセンサと併用して、侵入者の誤検知を判定することにより、誤検知の判定精度をさらに高めることもできる。
【0104】
また、上記の実施例1〜3では、カメラ50A〜カメラ50Dが屋外に設置される場合を例示したが、開示のシステムは、カメラ50A〜カメラ50Dが屋内に設置される場合にも適用できる。このように、カメラ50A〜カメラ50Dが屋内に設置される場合には、照明の点灯や消灯によってカメラ50A〜カメラ50Dに写るカメラ映像の輝度や色差が略同一に変化する。よって、開示のシステムは、少なくとも複数のカメラ画像から画像変化ありと判定された場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定することができる。
【0105】
[分散及び統合]
また、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、取得部11、画像解析部12、集約処理部14又は出力部15を監視装置10〜30の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしてもよい。また、取得部11、画像解析部12、集約処理部14又は出力部15を別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上記の監視装置10〜30の機能を実現するようにしてもよい。
【0106】
[侵入者検知プログラム]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図13を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する侵入者検知プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。
【0107】
図13は、実施例1〜実施例3に係る侵入者検知プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。図13に示すように、コンピュータ100は、操作部110aと、スピーカ110bと、カメラ110cと、ディスプレイ120と、通信部130とを有する。さらに、このコンピュータ100は、CPU150と、ROM160と、HDD170と、RAM180と有する。これら110〜180の各部はバス140を介して接続される。
【0108】
HDD170には、図13に示すように、上記の実施例1〜3で示した取得部11、画像解析部12、集約処理部14及び出力部15と同様の機能を発揮する侵入者検知プログラム170aが予め記憶される。この侵入者検知プログラム170aについては、図2に示した各々の取得部11、画像解析部12、集約処理部14及び出力部15の各構成要素と同様、適宜統合又は分離しても良い。すなわち、HDD170に格納される各データは、常に全てのデータがHDD170に格納される必要はなく、処理に必要なデータのみがHDD170に格納されれば良い。
【0109】
そして、CPU150が、侵入者検知プログラム170aをHDD170から読み出してRAM180に展開する。これによって、図13に示すように、侵入者検知プログラム170aは、侵入者検知プロセス180aとして機能する。この侵入者検知プロセス180aは、HDD170から読み出した各種データを適宜RAM180上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開した各種データに基づいて各種処理を実行する。なお、侵入者検知プロセス180aは、図2に示した取得部11、画像解析部12、集約処理部14及び出力部15にて実行される処理、例えば図5〜図6、図8〜図9や図11〜図12に示す処理を含む。また、CPU150上で仮想的に実現される各処理部は、常に全ての処理部がCPU150上で動作する必要はなく、処理に必要な処理部のみが仮想的に実現されれば良い。
【0110】
なお、上記の侵入者検知プログラム170aについては、必ずしも最初からHDD170やROM160に記憶させておく必要はない。例えば、コンピュータ100に挿入されるフレキシブルディスク、いわゆるFD、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」に各プログラムを記憶させる。そして、コンピュータ100がこれらの可搬用の物理媒体から各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ100に接続される他のコンピュータまたはサーバ装置などに各プログラムを記憶させておき、コンピュータ100がこれらから各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 侵入者検知システム
10 監視装置
11 取得部
11A,11B,11C,11D 映像変換部
12 画像解析部
12A,12B,12C,12D 検出部
13 通知用メモリ
14 集約処理部
15 出力部
50A,50B,50C,50D カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ映像を解析し画像の変化を元に侵入者を検知する侵入者検知システムにおいて、
互いの設置環境が共通するとともに互いの被写体が同一ではない複数のカメラにて撮像されたそれぞれの画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した複数の画像のそれぞれについて画像変化を検出する画像解析部と、
前記画像解析部にて検出された画像変化が他の同一時刻の画像にて検出されていた場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定する集約処理部と、
前記集約処理部の判定結果に基づいて検知結果を出力する出力部と
を有することを特徴とする侵入者検知システム。
【請求項2】
前記集約処理部は、前記画像解析部にていずれかのカメラで画像変化が検出されてから所定の時間内に他のカメラで画像変化が検出された場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定することを特徴とする請求項1に記載の侵入者検知システム。
【請求項3】
前記画像解析部にて画像変化の検出に使用されるアルゴリズムを前記集約処理部の判定結果に応じて切り替える切替え部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の侵入者検知システム。
【請求項4】
前記画像解析部に画像変化を検出させる検出感度を前記集約処理部の判定結果に応じて調節する調節部をさらに有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の侵入者検知システム。
【請求項5】
カメラ映像を解析し画像の変化を元に侵入者を検知する侵入者検知システムに用いる侵入者検知方法において、
コンピュータが、
互いの設置環境が共通するとともに互いの被写体が同一ではない複数のカメラにて撮像されたそれぞれの画像を取得し、
複数のカメラから取得された複数の画像のそれぞれについて画像変化を検出し、
検出された画像変化が他の同一時刻の画像にて検出されていた場合に、環境変化による侵入者の誤検知と判定し、
判定結果に基づいて検知結果を出力する処理
を実行することを特徴とする侵入者検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−198821(P2012−198821A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63402(P2011−63402)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】