説明

侵入者検知装置

【課題】帯域内妨害波の受けることなく安定した侵入者検知を行うことができる侵入者検知装置を提供する。
【解決手段】送信機10はサブキャリアをPRN符号信号により変調してPRN符号変調サブキャリアとし、メインキャリアをAM変調して送出する。受信機30は受信入力を受信検波回路40で検波しPRN符号信号を復調して妨害波の影響を除去し、更にPRN符号信号をPRN符号復調回路50にてサブキャリアの復調を行い、直流検波器63により受信入力に対する検波電圧を発生させてAGC電圧生成回路70に入力し、緩慢な電界変動に対してはAGCを“制御”状態とし常時受信検波回路40の利得を制御して安定な警戒状態を維持し、急激な電界変動に対してはAGCを“非制御”状態として受信検波回路40の制御は行わずに該検波電圧を検知エリアの電界変動に直線的に追従させて侵入者の検知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警備システムに用いられる、侵入者を検知する侵入者検知装置に係り、特にマイクロ波帯の無線電波を利用した侵入者検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばデパートや工場等では、夜間の強盗や侵入者の警備に多数の警備員を配置する代わりに、無人の複数の出入口、門、フェンスなど侵入される恐れのある個所に侵入者検知装置を配置し、該侵入者検知装置からの侵入警報を監視する警備システムが種々実用化されている。
【0003】
上記警備システムに用いられる侵入者検知装置の一つとして、検知エリアの一方側に送信アンテナ及び送信機を設け、該送信機から送信アンテナを介して検知エリアにマイクロ波帯の電波を常時送出し、検知エリアの他方側に設けた受信アンテナ及び受信機でその電波を受信することにより、マイクロ波による電界を検知エリアに形成し、該検知エリア内への侵入者による電界の乱れを検出して侵入警報を出力するようにしたマイクロ波侵入者検知装置がある。
【0004】
また、本発明に関連する公知技術として、質問器と主応答器の各アンテナを最大識別距離の間隔を保って配置し、質問器は返送要求データを主応答器に送信し、主応答器から固有の識別データが返送されてくると復調してホスト機器へ出力し、該ホスト機器は、監視領域への侵入を許可する応答器の識別データを登録した識別データ登録部を備え、主応答器との間の通信が遮断あるいはレベル低下した場合、その他の応答器から送られてくる識別データの有無を判別し、識別データが送られてきていれば、更に、識別データ登録部に登録されているかどうかを判定し、登録されていない場合に侵入検出信号を出力するようにしたマイクロ波侵入検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−6753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の侵入者検知装置は、送信機から送信アンテナを介して検知エリアに送信されるマイクロ波帯の電波を受信アンテナ及び受信機で受信し、受信検波帯域に存在するAM変調波のAM成分であるサブキャリアを検波し、その検波出力から検知エリア内への侵入者の有無を判断している。この場合、受信検波帯域に存在する全てのAM変調波のAM成分が検波されると共に該AM成分の高調波成分も検波されるので、検波出力には多数のサブキャリアが含まれている。
【0007】
上記のように受信機の検波出力に多数のサブキャリアが含まれていると、受信検波帯域内に到来する外来波の直接干渉及び混変調等により、目的とするサブキャリアが妨害される頻度が高くなって検波出力に乱れを生じ、最終的に誤検知に至るという問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、帯域内妨害波の影響を受けることなく、検知エリアへの侵入検知を確実且つ安定して行うことができる侵入者検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、マイクロ波を生成する送信部と、前記送信部で生成されたマイクロ波を送信する送信アンテナ部と、前記送信アンテナ部から送信されるマイクロ波を受信する受信アンテナ部と、前記受信アンテナ部で受信したマイクロ波から侵入者検知を行う受信部とを有する侵入者検知装置において、
前記送信部は、擬似ランダム符号発生部から発生させた擬似ランダム符号信号でサブキャリアを変調し、該擬似ランダム符号サブキャリアで変調したマイクロ波を送信し、
前記受信部は、受信したマイクロ波から擬似ランダム符号信号を復調し、該復調した擬似ランダム符号信号から侵入者検知を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、送信部から受信部に向けて送信するマイクロ波として擬似ランダム符号サブキャリアを使用することにより、帯域内妨害波の影響を受けにくく、周波数偏差が少なく、検知エリアへの侵入検知を確実且つ安定して行うことができ、この結果、警備に対する信頼度を向上でき、実用上きわめて大きな効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る侵入者検知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施例1に係る侵入者検知装置の要部における周波数スぺクトラムを示す図である。
【図3】同実施例1に係る侵入者検知装置の各部の動作電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1に係る侵入者検知装置の構成を示すブロック図である。
図1において、10はマイクロ波帯の電波例えば24.15GHzの電波を送出する送信機で、送信アンテナ21を備えている。上記送信機10は、サブキャリア発振器11、PRN(Pseudo Random Noise:擬似ランダムノイズ)符号発生器12、PSK(Phase Shift Keying)変調器13、メインキャリア発振器14、AM変調器15、増幅器16によって構成される。PSK変調器13は、サブキャリア発振器11から出力されるサブキャリアをPRN符号発生器12で発生したPRN符号(擬似ランダム符号)信号によりPSK変調してAM変調器15へ出力する。AM変調器15は、上記PSK変調されたPRN符号変調サブキャリアによりメインキャリア発振器14から出力される24.15MHzのメインキャリアをAM変調し、増幅器16で増幅して送信アンテナ21から検知エリア22へ送信する。
【0014】
上記送信アンテナ21は検知エリア22の一方側に設けられ、該検知エリア22の他方側に上記送信アンテナ21に対向するように受信アンテナ23が設けられ、送信アンテナ21と受信アンテナ23との間にマイクロ波ビームが形成される。上記受信アンテナ23は、送信機10から送信アンテナ21を介して送信されるマイクロ波を受信し、受信機30に入力する。この受信機30は、受信入力を検波して検波出力bを出力する受信検波回路40と、上記検波出力bを入力としてサブキャリアを出力するPRN符号復調回路50と、前記サブキャリアを入力として検波電圧aを出力する電界強度電圧生成回路60と、上記検波電圧aを入力としてAGC電圧(自動利得制御電圧)eを生成し、これを受信検波回路40の増幅段に与えて検波電圧aの変動を一定にするAGC(Automatic Gain Control)電圧生成回路70と、上記検波電圧aを直流増幅器71で増幅して一方の入力とし、他方に入力される固定された検知基準電圧E0と比較し、検知エリア22への人や車両等の侵入者の有無に応じて変化する検波電圧aの変化に対応した比較結果を出力する比較器72と、この比較器72の出力に従って監視ライン75に送出する侵入警報出力をオン/オフするリレー回路73とを備えている。リレー回路73は、比較器72の出力に従ってリレースイッチ74を切替え、監視ライン75に送出する侵入警報出力をオン/オフする。また、上記直流増幅器71で増幅された信号dは、増幅器76で増幅された後、モニタ電圧として監視室(図示せず)へ送られる。
【0015】
上記受信検波回路40は、低雑音増幅器41a〜41c、濾波器42、AM検波器43、増幅器44によって構成され、上記AM検波器43により送信周波数のAM成分であるPRN符号変調サブキャリアを復調してPRN符号信号を得ている。AM検波器43の出力は、受信入力が低下したときには電圧として小さくなるように、受信入力が大きくなったときには電圧として大きくなるような特性となっている。増幅器44は、AM検波器43で検波された信号を増幅し、受信検波回路40の検波出力bとしてPRN符号復調回路50へ出力する。この場合、増幅器44は、AGC電圧生成回路70から与えられるAGC電圧eによって利得が制御される。
【0016】
PRN符号復調回路50は、PRN符号復調器51、増幅器52、同期発振器53、PRN符号発生器54によって構成される。PRN符号発生器54は、同期発振器53から出力される同期信号に基づいてPRN符号信号を発生する。PRN符号復調器51は、受信検波回路40の検波出力bをPRN符号発生器54で発生したPRN符号信号で同期検波して復調し、サブキャリアcを得る。このサブキャリアcは、電界強度電圧生成回路60へ送られる。
【0017】
電界強度電圧生成回路60は、濾波器61、増幅器62、直流検波器63によって構成され、PRN符号復調回路50で復調されたサブキャリアcを濾波器61を介して取り出し、増幅器62で増幅した後、直流検波器63により検波して検波電圧aを得ている。この検波電圧aは、AGC電圧生成回路70へ送られる。
【0018】
AGC電圧生成回路70は、電界強度電圧生成回路60から出力される検波電圧aの増減によりAGC電圧eが増減して受信検波回路40の利得調整を行うもので、受信入力が低下したときには電圧として小さくなるように、受信入力が大きくなったときには電圧として大きくなるような特性となっている。AGC電圧生成回路70で生成されたAGC電圧eは、受信検波回路40の増幅器44の制御端子に入力されると共に、増幅器77で増幅されて監視室へ送られる。
【0019】
上記AGC電圧生成回路70は、雨・雪・温度変化などの設置場所の環境変動に起因した緩慢な電界変動による検波電圧aの変動を極力抑えるために設けられ、緩慢な電界変動が生じても検波電圧aを一定にするように動作する。
また、AGC電圧生成回路70は、緩慢な電界変動と侵入者に起因した急激な電界変動とを区別するために、緩慢な電界変動に対してはAGCを“制御”状態として常時受信検波回路40の利得を制御して安定な警戒状態を維持し、急激な電界変動にはAGCを“非制御”状態として、一定のAGC電圧eとし、受信検波回路40の利得制御は行わずに、検波出力を検知エリアの電界変動に直線的に追従して変動させ、侵入者検知が確実に行われるようにしている。
【0020】
次に、上記のように構成された侵入者検知装置の動作を説明する。
送信機10は、サブキャリア発振器11から出力されるサブキャリアをPRN符号発生器12で発生したPRN(擬似ランダム)符号信号をPSK変調器13に入力し、サブキャリアをPRN符号信号でPSK変調してAM変調器15へ出力する。AM変調器15は、PSK変調器13から出力されるPRN符号変調サブキャリアによりメインキャリア発振器14から出力される例えば24.15MHzのメインキャリアをAM変調し、増幅器16で増幅して送信アンテナ21から検知エリア22へ送信する。送信アンテナ21から送信されたマイクロ波は、検知エリア22を通って受信アンテナ23にて受信される。
【0021】
図2(a)は送信アンテナ21から出力される送信信号のスぺクトラムを示し、同図(b)は受信アンテナ23により受信された受信信号のスペクトラムを示している。
PRN符号変調サブキャリアは、図2(a)、(b)に示すようにスペクトラムとしては例えば24.15MHzの両側帯波のある中心帯域(例えば4.5MHz)に広がる擬似ノイズ信号である。
【0022】
上記受信アンテナ23で受信された信号は、受信検波回路40に入力される。受信検波回路40は、受信アンテナ23で受信された信号を低雑音増幅器41a〜41cで増幅した後、濾波器42を介して取り出し、AM検波器43に入力する。AM検波器43は、送信周波数のAM成分であるPRN符号変調サブキャリアを復調し、増幅器44により増幅し、PRN符号信号(擬似ノイズ信号)bとしてPRN符号復調回路50へ出力する。増幅器44は、AGC電圧生成回路70からAGC電圧が与えられ、出力信号のレベルが常に一定となるように利得が制御される。上記PRN符号信号bは、図2(c)に示すように4.5MHzを中心とする所定帯域を有している。
【0023】
PRN符号復調回路50は、上記PRN符号信号bをPRN符号復調器51において、PRN符号発生器54で発生したPRN符号信号により同期検波して復調し、図2(d)に示す4.5MHzのサブキャリアcを得る。
電界強度電圧生成回路60は、PRN符号復調回路50で復調された4.5MHzのサブキャリアcを濾波器61により選択して取り出し、増幅器62で増幅した後、直流検波器63により検波し、その検波電圧aをAGC電圧生成回路70へ出力すると共に、直流増幅器71で増幅して比較器72の一方の入力端子に入力する。
【0024】
上記AGC電圧生成回路70は、電界強度電圧生成回路60で生成された電界強度電圧、すなわち直流検波器63の検波電圧aに基づいて受信検波回路40の増幅器44の利得を制御するが、設置場所の環境変動に起因した緩慢な電界変動と侵入者に起因した急激な電界変動とを区別するために、緩慢な電界変動に対してはAGCを“制御”状態として常時受信検波回路40の利得を制御して安定な警戒状態を維持する。この場合、AGC電圧生成回路70は、図3(a)に示すようにAGC電圧eが受信アンテナ23の電界強度(dBm)に応じて変化し、図3(b)、(c)に示すように電界強度電圧生成回路60から出力される検波電圧aが一定になるように動作する。図3(b)は検波電圧aの状態を示し、同図(c)は直流増幅器71から出力されるモニタ電圧dの状態(通常時)を示している。
【0025】
また、AGC電圧生成回路70は、検知エリア22への侵入者に起因した急激な電界変動時には、AGCを“非制御”状態としてAGC電圧eを一定値に保持し、受信検波回路40の利得制御は行わずに、検波出力aを検知エリア22の電界変動に直線的に追従して変動させ、侵入者の検知が確実に行われるように動作する。
【0026】
図3(d)は、検知エリア22への侵入者に起因した急激な電界変動時におけるモニタ電圧dのレベル変化を示したもので、検知エリア22のマイクロ波ビームが侵入者により遮断される等、急激な電界変動を生じると、直流増幅器71から出力されるモニタ電圧dのレベルが急激に低下する。そして、モニタ電圧dが検知基準電圧E0より低下すると、その状態が比較器72により検知され、リレー回路73が駆動されてリレースイッチ74が監視ライン75側に切替えられ、侵入警報が監視ライン75を介して監視室へ送出される。
【0027】
上記実施例1で示したように、送信機10は、サブキャリア発振器11から出力されるサブキャリアをPRN符号発生器12で発生させたPRN符号信号で変調してPRN符号変調サブキャリアを生成し、このPRN符号変調サブキャリアによりメインキャリア発振器14から出力されるメインキャリアを変調して検知エリア22に送信している。上記PRN符号変調サブキャリアは、スペクトラムとしてはメインキャリア(例えば24.15GHz)の両側帯波のある中心帯域(例えば4.5MHz)に広がる擬似ノイズ信号であり、妨害波の影響を受けにくく、かつ周波数偏差の少ない信号である。
【0028】
上記送信機10から送信されるPRN符号変調サブキャリアを含む信号を受信機30で受信し、受信検波回路40にてAM検波しても、検波出力bには擬似ノイズ信号が現れるだけであり、PRN符号復調回路50にてPRN符号発生器54で発生させた同系列のPRN符号信号で同期検波しなければ、サブキャリアを復調することができないので、受信検波回路40の検波出力bに存在する雑音及び妨害波に対して妨害波耐力がきわめて高い。
【0029】
また、電界強度電圧生成回路60から出力される検波電圧aは、PRN符号復調回路50で復調された検波出力に現れるサブキャリアcの包絡線検波で得られる電界強度電圧(RSSI)を使用するので、サブキャリアが現れないと検知動作は行われない。また、サブキャリアは、メインキャリアの温度特性による周波数偏差の影響を受けず、自身の発振周波数の温度特性による偏差だけの影響で済む。
【0030】
このためPRN符号復調回路50にてPRN符号信号bを同期検波して得られるサブキャリアcを電界強度電圧生成回路60で直流検波して電界強度電圧(検波電圧a)として使用することにより、例えば24.15GHz帯で帯域内妨害波の影響を受けず、安定した周波数で確実に侵入検知を行うことができる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0032】
10…送信機、11…サブキャリア発振器、12…PRN符号発生器、13…PSK変調器、14…メインキャリア発振器、15…AM変調器、16…増幅器、21…送信アンテナ、22…検知エリア、23…受信アンテナ、30…受信機、40…受信検波回路、41a〜41c…低雑音増幅器、42…濾波器、43…AM検波器、44…増幅器、50…PRN符号復調回路、51…PRN符号復調器、52…増幅器、53…同期発振器、54…PRN符号発生器、60…電界強度電圧生成回路、61…濾波器、62…増幅器、63…直流検波器、70…AGC電圧生成回路、71…直流増幅器、72…比較器、73…リレー回路、74…リレースイッチ、75…監視ライン、76、77…増幅器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を生成する送信部と、前記送信部で生成されたマイクロ波を送信する送信アンテナ部と、前記送信アンテナ部から送信されるマイクロ波を受信する受信アンテナ部と、前記受信アンテナ部で受信したマイクロ波から侵入者検知を行う受信部とを有する侵入者検知装置において、
前記送信部は、擬似ランダム符号発生部から発生させた擬似ランダム符号信号でサブキャリアを変調し、該擬似ランダム符号サブキャリアで変調したマイクロ波を送信し、
前記受信部は、受信したマイクロ波から擬似ランダム符号信号を復調し、該復調した擬似ランダム符号信号から侵入者検知を行うことを特徴とする侵入者検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−33345(P2011−33345A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176711(P2009−176711)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】