説明

侵入者監視方法および装置

【課題】
本発明の目的は監視対象範囲への侵入者監視を行うセキュリティシステムを低コストで構成できる侵入者監視方法および装置を提供することにある。
【解決手段】
1台の監視カメラ1の両側に監視カメラ1を中心として対称位置となるように一対の照明手段2R、2Lを配置する。視差演算部8は一方の照明手段2Rの光照射時に撮像した第1侵入者画像と他方の照明手段2Lの光照射時に撮像した第2侵入者画像との照明視差を求める。距離演算部9は照度視差に基づいて監視カメラ1から侵入者までの距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視カメラを用いて建造物室内や敷地内への不審者などの侵入者を監視する侵入者監視方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性確保のために建造物室内や敷地内への不審者が侵入したことを検知し、警備会社に通報するセキュリティシステムの実用化が検討されている。侵入者監視のセキュリティシステムは監視カメラで撮像した侵入者の距離画像を用いるのが有効と考えられている。
【0003】
周知のように、距離画像はステレオパターンマッチング処理により生成することができる。ステレオパターンマッチング処理は、メインカメラとサブカメラでそれぞれ撮像した画像から対象物体(侵入者)をパターンマッチング処理にて探索し、メインカメラ画像で特定した物体位置とサブカメラ画像で特定した物体位置の差を視差(カメラ視差)として距離を算出している。このことは、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−117049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のステレオ画像処理は少なくとも2台の監視カメラで得られる画像から対象物体(侵入者)を探査している。このため、2台の監視カメラの製作精度を一致させなければならず、また、撮像画角の調整が面倒であり装置が高価になるという問題点を有する。
【0006】
本発明の目的は監視対象範囲への侵入者監視を行うセキュリティシステムを低コストで構成できる侵入者監視方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴とするところは、1台の監視カメラの両側に監視カメラを中心として対称位置となるように一対の照明手段を配置して監視対象範囲に交互に光を照射させ、一方の照明手段の光照射時に撮像した第1侵入者画像と他方の照明手段の光照射時に撮像した第2侵入者画像との照明視差を求め、照明視差に基づいて監視カメラから侵入者までの距離を算出するようにしたことにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明は1台の監視カメラを中心として対称位置となるように配置した一対の照明手段に個別に光照射させて撮像した2つの侵入者画像の照明視差を求めているので、侵入者監視を行うセキュリティシステムを低コストで構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1台の監視カメラは監視対象範囲への侵入者を周期的に撮像する。監視対象範囲へ光を照射する一対の照明手段は監視カメラを中心として左右対称位置に配置される。撮像制御手段は監視カメラの撮像周期毎に交互に監視対象範囲へ光を照射するように一対の照明手段を制御する。第1差分処理手段は監視カメラが撮像周期の一周期において一方の照明手段の光照射時に撮像した撮像画像と背景画像の差分処理によって第1侵入者画像を抽出する。第2差分処理手段は監視カメラが一方の照明手段の光照射時に撮像した撮像周期の次周期において他方の照明手段の光照射時に撮像した撮像画像と背景画像の差分処理によって第2侵入者画像を抽出する。視差演算手段は第1、第2の両侵入者画像における垂直方向輝度投影分布の重心により両侵入者画像の照明視差を求める。距離演算手段は視差演算手段で求めた照明視差に基づいて監視カメラから侵入者までの距離を算出する。
【実施例】
【0010】
図1に本発明の一実施例を示す。
【0011】
図1において、1台の監視カメラ1は建造物室内の天井部に配置され、室内(監視対象範囲)への侵入者を周期的に撮像する。監視カメラ1は電荷結合素子(CCD)カメラなどが用いられ、33mm秒程の撮像周期(一定周期)で30フレーム/秒程度撮像する。監視カメラ1の撮像画像と撮像周期同期信号は撮像制御部3に入力される。
【0012】
監視カメラ1の両側の対称位置には一対の照明装置2R、2Lが配置されている。一対の照明装置2R、2Lは監視カメラ1を中心として左右対称位置に配置されるので、右側照明装置2R、左側照明装置2Lと称する。左右の照明装置2R、2Lは同じ照度の近赤外線などを発光する発光ダイオードなどで構成され、円錐状の高輝度パルス光を発光する。円錐状の高輝度パルス光は90°の角度で照射される。
【0013】
監視カメラ1、一対の照明装置2R、2Lおよび撮像制御部3は画像入力装置11を構成する。
【0014】
一対の照明装置2R、2Lは図2に示すように監視カメラ1から100〜200mmの間隔で対象位置配置され、監視対象範囲に侵入した対象物体(侵入者)4に光を照射する。監視カメラ1と侵入者4の間は5m程度である。撮像制御部3は監視カメラ1から撮像周期同期信号を入力する毎に交互に監視対象範囲へ光を照射するように照明装置2R、2Lを制御する。照明装置2R、2Lは監視対象範囲に交互に光を照射することになる。
【0015】
一方の照明装置2Rの光照射時に監視カメラ1で撮像した撮像画像(右照明撮像画像)は撮像制御部3により画像記憶部5Rに記憶される。また、他方の照明装置2Lの光照射時に監視カメラ1で撮像した撮像画像(左照明撮像画像)は撮像制御部3により画像記憶部5Lに記憶される。画像記憶部5R、5Lには撮像画像が上書き記憶される。
【0016】
画像抽出部6Rは画像記憶部5Rに記憶された右照明撮像画像を取込み背景画像と差分処理して右照明侵入者画像(第1侵入者画像)を抽出する。画像抽出部6Rで抽出された
第1侵入者画像は画像記憶部7Rに記憶される。
【0017】
また、画像抽出部6Lは画像記憶部5Lに記憶された左照明撮像画像を取込み背景画像と差分処理して左照明侵入者画像(第2侵入者画像)を抽出する。画像抽出部6Lで抽出された第2侵入者画像は画像記憶部7Lに記憶される。
【0018】
視差演算部8は画像記憶部7R、7Lに記憶された第1、第2の両侵入者画像におけるそれぞれの垂直方向輝度投影分布の重心を求めて両侵入者画像の照明視差を算出する。距離演算部9は視差演算部8で算出した照明視差を入力して監視カメラ1と侵入者4との距離を求める。
【0019】
距離演算部9で算出した監視カメラ1と侵入者4との距離は警報発生部10に入力される。警報発生部10は監視カメラ1と侵入者4との距離が設定値以上のときに警報発生の要件として警報を発生する。警報は警備会社などに通報される。なお、警報発生部10は通常、距離と侵入者画像の大きさ(画素数)も判断して警報を発生するようにしている。
【0020】
画像記憶部5R、5L、画像抽出部6R、6L、画像記憶部7R、7L、視差演算部8、距離演算部9および警報発生部10は画像処理装置12を構成する。
【0021】
次に、図3に示すフローチャートと図4に示すタイムチャートを参照して動作を説明する。
【0022】
監視カメラ1は図4(a)に示すように33mm秒の撮像周期(一定周期)で撮像周期同期信号を発生して撮像制御部3に加えて監視対称範囲を撮像する。撮像制御部3は監視カメラ1から撮像周期同期信号を入力する毎に交互に監視対象範囲へ光を照射するように照明装置2R、2Lを制御する。
【0023】
撮像制御部3は監視カメラ1の奇数フレームにおいて図4(b)に示すように右側照明装置2Rを発光させ、偶数フレームでは図4(c)に示すように左側照明装置2Lを発光させる。照明装置2R、2Lは監視対象範囲に交互に光を照射することになる。照明装置2R、2Lの発光時間は1〜10ms程度である。
【0024】
撮像制御部3はステップS1において一方の照明装置2Rを発光させ、その光照射時に監視カメラ1で撮像した奇数フレームの撮像画像(右照明撮像画像)を入力して画像記憶部5Rに記憶する。撮像制御部3はステップS2に移行して他方の照明装置2Lを発光させ、その光照射時に監視カメラ1で撮像した偶数フレームの撮像画像(左照明撮像画像)を画像記憶部5Lに記憶する。このように両撮像画像が画像記憶部5R、5Lに記憶されると、図4(d)に示す画像処理が実行される。
【0025】
画像抽出部6RはステップS3で画像記憶部5Rに記憶された右照明撮像画像を取込み背景画像と差分処理して右照明侵入者画像(第1侵入者画像)を抽出する。画像抽出部6Rで抽出された第1侵入者画像は画像記憶部7Rに記憶される。
【0026】
また、画像抽出部6LはステップS4において画像記憶部5Lに記憶された左照明撮像画像を取込み背景画像と差分処理して左照明侵入者画像(第2侵入者画像)を抽出する。画像抽出部6Lで抽出された第2侵入者画像は画像記憶部7Lに記憶される。
【0027】
監視カメラ1と対象物体(侵入者)4が図2に示す位置関係にあるときに、右照明侵入者画像(第1侵入者画像)4は図5(a)に示すように図示右側の輝度が高く、左側に行くに従い輝度が低下する。図5は×印が密に記載されていると輝度が低くなることを示している。第1侵入者画像4の垂直方向における輝度累積値の輝度投影分布は図6(a)のようになる。
【0028】
一方、左照明侵入者画像(第2侵入者画像)4は図5(b)に示すように図示左側の輝度が高く、右側に行くに従い輝度が低下する。第2侵入者画像4の垂直方向における輝度累積値の輝度投影分布は図6(b)のようになる。
【0029】
なお、図5において(0.0)と(511.511)は画素の座標位置を示している。
【0030】
視差演算部8はステップS5において画像記憶部7Rに記憶された第1侵入者画像4における垂直方向輝度投影分布の重心位置を求める。図6(a)に示す輝度投影分布では水平座標の画素座標値(270)が重心として求められる。
【0031】
同様に、視差演算部8はステップS6において画像記憶部7Lに記憶された第2侵入者画像4における垂直方向輝度投影分布の重心を求める。図6(b)に示す輝度投影分布では水平座標の画素座標値(240)が重心として求められる。
【0032】
視差演算部8はステップS7においてステップS5とステップS6で求めた第1、第2の両侵入者画像4における輝度投影分布の重心位置(270)、(240)の差から輝度視差つまり照明視差を算出する。
【0033】
距離演算部9はステップS8において視差演算部8で算出した照明視差を入力して監視カメラ1と侵入者4との距離を求める。図7は監視カメラ1と侵入者4との対物距離の違いにより照明視差量に差が発生することを示している。
【0034】
図7に示すように、監視カメラ1の光軸上に遠距離物体(侵入者)4aと近距離物体4bを配置した場合、照明装置2から物体4に照射された光はカメラ光軸上を通過して監視カメラ1に到達する。照明装置2と物体4(カメラ光軸)の成す角度をそれぞれX度、Y度とすると、対物距離の短い物体4bと照明装置2の成すY度は対物距離の長い物体4aと照明装置2の成すX度と比較すると大きくなる。
【0035】
このことは、対物距離と照明角度には相関があることを意味している。照明角度の大きさは物体4の左右の輝度差に相当する。したがって、遠くの物体4aの左右輝度差は小さく、近くの物体4bの左右輝度差は大きくなり、輝度差の違いにより物体4の遠近(距離)を測定することが可能となる。
【0036】
距離演算部9で算出した監視カメラ1と侵入者4との距離は警報発生部10に入力される。警報発生部10は監視カメラ1と侵入者4との距離が設定値以上のときに警報発生の要件として警報を発生する。警報は警備会社などに通報される。警報発生部10は侵入者4との距離が設定値以上のときに警報発生の要件としているのは虫などの小動物による誤報を防止するためである。なお、警報発生部10は通常、距離と侵入者画像の大きさ(画素数)も判断して警報を発生するようにしている。
【0037】
このようにして侵入者の監視を行うのであるが、1台の監視カメラの両側に監視カメラを中心として対称位置となるように一対の照明手段を配置し、一方の照明手段の光照射時に撮像した第1侵入者画像と他方の照明手段の光照射時に撮像した第2侵入者画像との照明視差を求め、照明視差に基づいて監視カメラから侵入者までの距離を算出している。したがって、1台の監視カメラを中心として対称位置となるように配置した一対の照明手段に個別に光照射させて撮像した2つの侵入者画像の照明視差を求めているので、侵入者監視を行うセキュリティシステムを低コストで構成することができる。
また、上述の実施例は監視カメラと侵入者との距離が設定値以上のときに警報発生の要件としているので、虫などの小動物による誤報を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の位置実施例を示す構成図である。
【図2】本発明における照明装置の一例配置図である。
【図3】本発明の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図5】本発明を説明するための輝度分布図である。
【図6】本発明を説明するための投影輝度分布図である。
【図7】本発明の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1…監視カメラ、2…照明装置、3…撮像制御部、4…侵入者、5…画像記憶部、6…
画像抽出部、7…画像記憶部、8…視差演算部、9…距離演算部、10…警報発生部、
11…画像入力装置、12…画像処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象範囲への侵入者を撮像する1台の監視カメラと、前記監視カメラの両側の対称位置に配置され、前記監視対象範囲に交互に光を照射する一対の照明手段と、前記監視カメラで撮像された侵入者画像を画像処理する画像処理装置を有し、前記画像処理装置は、前記一方の照明手段の光照射時に撮像した第1侵入者画像と前記他方の照明手段の光照射時に撮像した第2侵入者画像との照明視差を求め、前記照明視差に基づいて前記監視カメラから前記侵入者までの距離を算出するようにしたことを特徴とする侵入者監視方法。
【請求項2】
監視対象範囲への侵入者を周期的に撮像する1台の監視カメラと、前記監視カメラの左右対称位置に配置され、前記監視カメラの撮像周期毎に交互に前記監視対象範囲へ光を照射する一対の照明手段と、前記監視カメラで撮像された侵入者画像を画像処理する画像処理装置を有し、前記画像処理装置は、前記監視カメラが撮像周期の一周期において前記一方の照明手段の光照射時に撮像した第1侵入者画像の輝度投影分布の重心と次周期において前記他方の照明手段の光照射時に撮像した第2侵入者画像の輝度投影分布の重心により両侵入者画像の照明視差を求め、前記照明視差に基づいて前記監視カメラから前記侵入者までの距離を算出するようにしたことを特徴とする侵入者監視方法。
【請求項3】
監視対象範囲への侵入者を撮像する1台の監視カメラと、前記監視カメラの両側の対称位置に配置され、前記監視対象範囲に交互に光を照射する一対の照明手段と、前記監視カメラが前記一方の照明手段の光照射時に撮像した第1侵入者画像と前記他方の照明手段の光照射時に撮像した第2侵入者画像を抽出する画像抽出手段と、前記画像抽出手段で抽出した両侵入者画像の照明視差を求める視差演算手段と、前記照明視差に基づいて前記監視カメラから前記侵入者までの距離を算出する距離演算手段とを具備することを特徴とする侵入者監視装置。
【請求項4】
監視対象範囲への侵入者を周期的に撮像する1台の監視カメラと、前記監視カメラの左右対称位置に配置され、前記監視カメラの撮像周期毎に交互に前記監視対象範囲へ光を照射する一対の照明手段と、前記監視カメラが撮像周期の一周期において前記一方の照明手段の光照射時に撮像した第1侵入者画像を抽出する第1画像抽出手段と、前記監視カメラが前記一方の照明手段の光照射時に撮像した撮像周期の次周期において前記他方の照明手段の光照射時に撮像した第2侵入者画像を抽出する第2画像抽出手段と、前記第1、第2の両侵入者画像における輝度投影分布の重心により両侵入者画像の照明視差を求める視差演算手段と、前記照明視差に基づいて前記監視カメラから前記侵入者までの距離を算出する距離演算手段とを具備することを特徴とする侵入者監視装置。
【請求項5】
監視対象範囲への侵入者を周期的に撮像する1台の監視カメラと、前記監視カメラの左右対称位置に配置され、前記監視対象範囲へ光を照射する一対の照明手段と、前記一対の照明手段が前記監視カメラの撮像周期毎に交互に前記監視対象範囲へ光を照射するように制御する撮像制御手段と、前記監視カメラが撮像周期の一周期において前記一方の照明手段の光照射時に撮像した撮像画像と背景画像の差分処理によって第1侵入者画像を抽出する第1差分処理手段と、前記監視カメラが前記一方の照明手段の光照射時に撮像した撮像周期の次周期において前記他方の照明手段の光照射時に撮像した撮像画像と背景画像の差分処理によって第2侵入者画像を抽出する第2差分処理手段と、前記第1、第2の両侵入者画像における垂直方向輝度投影分布の重心により前記両侵入者画像の照明視差を求める視差演算手段と、前記照明視差に基づいて前記監視カメラから前記侵入者までの距離を算出する距離演算手段と、前記距離演算手段で算出した距離が設定値以上のときに警報発生の要件とする警報発生手段とを具備することを特徴とする侵入者監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−162372(P2006−162372A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352548(P2004−352548)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】