説明

侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵

【課題】既設の侵入防止柵の一部を利用することにより、建設コスト削減及び工期短縮を図ることができると共に、エゾ鹿を容易確実に捕獲できる、侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵を提供する。
【解決手段】エゾ鹿の捕獲を行うため所定のスペースを囲う捕獲用金網柵22の所定位置にゲート23を配設し、捕獲用金網柵22に、捕獲用金網柵22の全長に及んで所定高さにビニールシート等を張設する目隠し部24を配設した捕獲柵本体部25と、エゾ鹿を捕獲する檻で構成される捕獲施設26と、捕獲柵本体部25と捕獲施設26とを互いに所定間隔離間させた両壁部27,27により連接し、両壁部27,27内を介してエゾ鹿を捕獲柵本体部25から捕獲施設26に誘導するためのシュート部28とを備えたエゾ鹿捕獲柵に於いて、捕獲用金網柵22の一部(Aで示す範囲)として、既設のエゾ鹿侵入防止柵41の侵入防止金網柵42の一部を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の侵入防止柵の一部を利用することにより、建設コスト削減及び工期短縮を図ることができる、侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例を図8を用いて説明する。
図8に於いて、1は、従来例のエゾ鹿捕獲柵であり、エゾ鹿捕獲柵1は、エゾ鹿の捕獲を行うため所定のスペースを囲う捕獲用金網柵2の所定位置にエゾ鹿の侵入後に閉扉する落とし扉3A等から成るゲート3を配設し、捕獲用金網柵2に、捕獲用金網柵2の全長に及んでビニールシート等を所定高さに張設する目隠し部4を配設した捕獲柵本体部5と、エゾ鹿を捕獲する檻で構成される捕獲施設6と、捕獲柵本体部5と捕獲施設6とを互いに所定間隔離間させた両壁部7,7により連接し、両壁部7,7内を介してエゾ鹿を捕獲柵本体部5から捕獲施設6に誘導するためのシュート部8とを備えたものである。
【0003】
次に、前記エゾ鹿捕獲柵1により、エゾ鹿を捕獲する手順について説明する。
まず、捕獲柵本体部5内にエゾ鹿10を誘導するための誘導餌9を置く。
誘導餌9に誘導されてエゾ鹿10がゲート3から侵入すると、捕獲柵本体部5内のエゾ鹿10の検知により、自動又は手動によってゲート3を閉扉する。
次に、捕獲柵本体部5のエゾ鹿10を人がシュート部8に追い込んでいく。そして、エゾ鹿10をシュート部8を介して捕獲施設6に誘導し、エゾ鹿10は、捕獲施設6内に捕獲される。
【0004】
此種技術の先行技術文献として、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、エゾ鹿の侵入防止を図る侵入防止柵に、エゾ鹿を追い込むための追い込みパドックが設けられ、追い込みパドックにエゾ鹿を捕獲する箱型の金網柵が扉を介して連通して設けられた動物の捕獲装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−4854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来例のエゾ鹿捕獲柵(図8に於いて1)は、エゾ鹿の捕獲を行うため所定のスペースを囲う捕獲用金網柵を比較的大きくする必要があり、そのため、捕獲用金網柵自体の建設コストがかかる問題があった。
又、前記特許文献1は、侵入防止柵に追い込みパドックが設けられることにより、捕獲装置部分の建設コストを抑えることができるが、追い込みパドックの大きさにも限度があり、充分な大きさが確保できない虞がある点と、追い込みパドックは完全に囲われていないことから、誘導の段階や、追い込みの段階でエゾ鹿が追い込みパドックから外側に逃げ出す虞がある等の問題があった。
【0007】
以上の現状に鑑み、本発明は、既設の侵入防止柵の一部を利用することにより、建設コスト削減及び工期短縮を図ることができると共に、エゾ鹿を容易確実に捕獲できる、侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、エゾ鹿の捕獲を行うため所定のスペースを囲う捕獲用金網柵の所定位置にエゾ鹿の侵入後に閉扉するゲートを配設し、前記捕獲用金網柵に、前記捕獲用金網柵の全長に及んで所定高さの目隠し部を配設した捕獲柵本体部と、エゾ鹿を捕獲する檻で構成される捕獲施設と、前記捕獲柵本体部と前記捕獲施設とを互いに所定間隔離間させた両壁部により連接し、前記両壁部内を介してエゾ鹿を前記捕獲柵本体部から前記捕獲施設に誘導するためのシュート部とを備えたエゾ鹿捕獲柵に於いて、
既設のエゾ鹿侵入防止柵の侵入防止金網柵の一部を前記捕獲用金網柵の一部として用いることを特徴とする侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵を提供するものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記侵入防止金網柵の近傍に、前記侵入防止金網柵に沿って前記シュート部及び前記捕獲施設を配設したことを特徴とする請求項1記載の侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵を提供するものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記侵入防止金網柵が支柱により外方側に折曲されて形成される前記侵入防止金網柵の角部を含む角部周辺部を前記捕獲用金網柵の一部として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既設の侵入防止柵の一部を利用することにより、建設コスト削減及び工期短縮を図ることができると共に、エゾ鹿を容易確実に捕獲できる、侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明の侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵の平面図である。(b)本発明の鹿捕獲用金網柵の正面図である。(c)本発明の鹿捕獲用金網柵の側面図である。(d)本発明のゲートが取り付けられた鹿捕獲用金網柵の正面図である。(e)既設のエゾ鹿侵入防止柵の正面図である。(f)既設のエゾ鹿侵入防止柵の側面図である。
【図2】(a)本発明のシュート部と捕獲施設の平面図である。(b)本発明のシュート部の正面図である。(c)本発明のシュート部のコンパネと仕切扉の正面図である。
【図3】(a)本発明の捕獲施設の落とし扉の正面図である。(b)本発明の捕獲施設の前面仕切体の正面図である。(c)本発明の捕獲施設の一部正面図である。
【図4】本発明の変形例の侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵の平面図である。
【図5】図4に示した侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵の一部拡大平面図である。
【図6】本発明の別の変形例の侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵の平面図である。
【図7】(a)本発明のシュート部の内部を写した写真である。(b)本発明の捕獲施設の全体を写した写真である。
【図8】(a)従来例のエゾ鹿捕獲柵の平面図である。(b)従来例の鹿捕獲用金網柵の正面図である。(c)従来例の鹿捕獲用金網柵の側面図である。(d)従来例のゲートが取り付けられた鹿捕獲用金網柵の正面図である。(e)従来例のエゾ鹿捕獲柵のシュート部と捕獲施設の正面図である。(f)従来例のエゾ鹿捕獲柵のシュート部と捕獲施設の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1に於いて、21は、本発明の侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵であり、侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵21は、エゾ鹿の捕獲を行うため所定のスペースを囲う捕獲用金網柵22の所定位置にエゾ鹿の侵入後に閉扉する落とし扉23A等から成るゲート23を配設し、捕獲用金網柵22に、捕獲用金網柵22の全長に及んで所定高さにビニールシート等を張設する目隠し部24を配設した捕獲柵本体部25と、エゾ鹿を捕獲する檻で構成される捕獲施設26と、捕獲柵本体部25と捕獲施設26とを互いに所定間隔離間させた両壁部27,27により連接し、両壁部27,27内を介してエゾ鹿を捕獲柵本体部25から捕獲施設26に誘導するためのシュート部28とを備え、前記捕獲用金網柵22の一部(Aで示す範囲)として、既設のエゾ鹿侵入防止柵41の侵入防止金網柵42の一部を用いたものである。
【0014】
図1(b)及び(c)は前記捕獲用金網柵22を示しており、捕獲用金網柵22は所定間隔で地面に設置した支柱29,29…に捕獲用金網30が張設され、支柱29と捕獲用金網30との間にビニールシート等から成る所定高さの目隠し部24が張設されている。
目隠し部24は、捕獲用金網30の如く金網の向こう側が見えると、エゾ鹿が追い込み時に突進して怪我をする虞があるため、それを防止するべく目隠しをするものである。
図1(d)は前記捕獲用金網柵22に落とし扉23Aを取り付けた状態を示している。
図1(e)及び(f)はエゾ鹿侵入防止柵41の侵入防止金網柵42を示しており、侵入防止金網柵42は所定間隔で地面に設置した支柱43,43…に侵入防止金網44が張設されている。
【0015】
図2(a)は前記シュート部28と捕獲施設26とを示しており、前記シュート部28は、両壁部27,27が図2(b)に示すようにコンパネ(コンクリート型枠用合板)で形成され、両壁部27,27によって形成される内部空間が、図2(c)に示すようにコンパネ51及びコンパネにより形成された仕切扉52によって区画されて連続する3つの部屋に形成されている。前記シュート部28の内部を写した写真を図7(a)に示している。
又、捕獲施設26は、先端{図2(a)に於いて捕獲施設26の右端}を図3(a)に示す、コンパネにより形成された落とし扉54によって閉じられ、前面{図2(a)に於いて捕獲施設26の左端}を図3(b)に示す、金網により形成された前面仕切体55によって閉じられ、両壁部53,53に挟まれて形成される内部空間が、別の落とし扉54,54によって連続する3つの部屋に区画されている。前記捕獲施設26の全体を写した写真を図7(b)に示している。
【0016】
図4は、前記侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵(図1に於いて21)の変形例を示し、前記侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵(図1に於いて21)に於いて、シュート部28及び捕獲施設26を侵入防止金網柵42に沿って配設したものである。
具体的には、図5に示すように、既設のエゾ鹿侵入防止柵41の侵入防止金網柵42の一部を用いた捕獲用金網柵22の一部(Aで示す範囲)に連続して、シュート部28及び捕獲施設26を侵入防止金網柵42の近傍に侵入防止金網柵42に沿って順次配設する。
このように、シュート部28及び捕獲施設26を既設のエゾ鹿侵入防止柵41の侵入防止金網柵42の近傍に、侵入防止金網柵42に沿って順次設置することにより、設置スペースをコンパクトにすることができる。又、捕獲柵本体部25の一部と、シュート部28と、捕獲施設26とを、略直線状に整列させることができ、エゾ鹿の誘導及び捕獲が容易となる利点がある。
尚、前述の説明では、シュート部28及び捕獲施設26を侵入防止金網柵42に沿って配設したが、それに代えて、侵入防止金網柵42の所定箇所を取外し、取外した箇所にシュート部28及び捕獲施設26を配設することも可能である。
【0017】
図6は、前記侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵(図1に於いて21)の別の変形例を示し、前記侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵(図1に於いて21)に於いて、侵入防止金網柵42が支柱43により外方側に折曲されて形成される侵入防止金網柵42の角部56を含む角部56周辺部を捕獲用金網柵22の一部(Aで示す範囲)として用いるものである。
これにより、エゾ鹿の捕獲を行うため捕獲用金網柵22が囲う所定のスペースを効率良く大きくすることができると共に、この捕獲用金網柵22の一部(Aで示す範囲)に含まれる角部56を前記シュート部28の近傍に位置させれば、角部56により、追い込まれて逃げるエゾ鹿の速度を低下させて前記シュート部28に追い込むことができ、エゾ鹿の怪我等の発生を防止できる。
【符号の説明】
【0018】
21 侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵
22 鹿捕獲用金網柵
23 ゲート
24 目隠し部
25 捕獲柵本体部
26 捕獲施設
27 壁部
28 シュート部
29 支柱
41 エゾ鹿侵入防止柵
42 侵入防止金網柵
56 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゾ鹿の捕獲を行うため所定のスペースを囲う捕獲用金網柵の所定位置にエゾ鹿の侵入後に閉扉するゲートを配設し、前記捕獲用金網柵に、前記捕獲用金網柵の全長に及んで所定高さの目隠し部を配設した捕獲柵本体部と、エゾ鹿を捕獲する檻で構成される捕獲施設と、前記捕獲柵本体部と前記捕獲施設とを互いに所定間隔離間させた両壁部により連接し、前記両壁部内を介してエゾ鹿を前記捕獲柵本体部から前記捕獲施設に誘導するためのシュート部とを備えたエゾ鹿捕獲柵に於いて、
既設のエゾ鹿侵入防止柵の侵入防止金網柵の一部を前記捕獲用金網柵の一部として用いることを特徴とする侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵。
【請求項2】
前記侵入防止金網柵の近傍に、前記侵入防止金網柵に沿って前記シュート部及び前記捕獲施設を配設したことを特徴とする請求項1記載の侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵。
【請求項3】
前記侵入防止金網柵が支柱により外方側に折曲されて形成される前記侵入防止金網柵の角部を含む角部周辺部を前記捕獲用金網柵の一部として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の侵入防止柵を利用したエゾ鹿捕獲柵。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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