説明

侵入防止柵

【課題】侵入防止柵において、漏電する危険性を少なくするために電線の間隔を広くしても、猿の侵入を効果的に防止する。
【解決手段】複数の支柱10aが所定の間隔で地中に打ち込まれる。プレート20aは、支柱10aの上端にその下端が固定されており、支柱10aの上端から上方に向かって、前側に傾いて延びる。金網30は、地表60から支柱10aの上端の近傍の所定の高さまでを覆うように、各支柱10aの間に張設される。金網30は、導電性を有し、地表60に接地されている。猿ネット40は、金網30の上縁からプレート20aの上端近傍の所定の高さまでを覆うように、各プレート20aの間に張設される。1本以上の電線50が、プレート20aに固定され、猿ネット40に沿って架設される。電線50は、猿ネット40の上縁および下縁に対して平行である。電線50に、所定の間隔で高電圧パルスが印加される(衝撃電流が流れる)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物被害を防止するための農業技術に関し、特に、猿の侵入を防いで農作物の食害を防止するための侵入防止柵に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の侵入防止柵は、例えば、特許文献1に開示されている。
特許文献1には、侵入防止区画の境界線に沿って所定間隔で支柱を立設し、これらの支柱間にネットを張設し、ネットの上縁より上方において支柱間に複数の裸電線を架設し、この裸電線に高電圧パルスを印加する(衝撃電流を流す)電源装置を備える侵入防止柵が記載されている。裸電線は、弛まないように絶縁物(碍子)で支えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−225680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
裸電線に持続的に高電圧を印加すると、裸電線に触れた猿が火傷したり、死んだりするおそれがある。そこで、特許文献1に開示されている侵入防止柵では、高電圧パルスを所定の間隔で印加する。例えば、約1秒間に1回印加する。しかし、猿は敏捷性が高いため、この1秒の間に侵入防止柵を越えて、または裸電線の隙間から侵入防止柵の内側に入り込むことがある。
また、猿が裸電線の隙間から入らないように裸電線の間隔を狭くすると、裸電線が接触して漏電する危険性が増える。
【0005】
本発明の目的は、漏電する危険性を少なくするために電線の間隔を広くしても、猿の侵入を効果的に防止することができる侵入防止柵を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の侵入防止柵は、
地表から所定の第1の高さまでを覆うように張設されており、導電性を有し、地表に接地されている第1のネットと、
前記第1のネットの上縁から、前記第1の高さより高い所定の第2の高さまでを覆うように張設されており、導電性のない第2のネットと、
前記第2のネットに沿って、前記第2のネットの上縁および下縁に対して平行に架設された少なくとも1本の電線と、
前記少なくとも1本の電線に所定の間隔で高電圧パルスを印加する電源装置と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
前記第2のネットが、猿が掴まるとたわむように構成されていることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
前記電線が、3本以上架設されており、
最も下段の前記電線と最も上段の前記電線が、前記第2のネットの前側に配置され、
前記最も下段の電線と前記最も上段の電線を除く他の前記各電線が、前記第2のネットの後側に配置される、
ことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
前記電線が、3本以上架設されており、
最も下段の前記電線と最も上段の前記電線が、前記第2のネットの前側に配置され、
前記最も下段の電線と前記最も上段の電線を除く他の前記各電線が、下側から上側に向けて前記第2のネットの前側と後側とに交互に配置される、
ことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
前記各電線が、全て前記第2のネットの後側に配置されることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
前記各電線が、全て前記第2のネットの前側に配置されることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
前記第2のネットの上縁の上に水平方向に架設された電線を更に備えることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
立設された複数の第1の支柱と、
前記第1の支柱の上端に下端が固定されており、前記第1の支柱の上端から上方に向かって、前側に傾いて延びる複数の第1のプレートと、
を備え、
前記第1のネットが、前記各第1の支柱間に張設されており、
前記第2のネットが、前記各第1のプレート間に張設されており、
前記各電線が、前記各第1のプレートによって保持されている、
ことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
前記第1の支柱間に立設されており、前記第1の支柱より長い少なくとも1本の第2の支柱と、
前記第1のネットの上縁から、前記第2の支柱に沿って上方に向かって延びる下部と、当該下部の上端から前側に傾いて前記第2の支柱から離れながら上方に向かって延びる中部と、当該中部の上端から、前記第2の支柱との間に所定の間隔をあけて上方に向かって延びる上部と、当該上部の上端から前記第2の支柱に向かって延び、前記第2の支柱に固定される上端部とを有する少なくとも1本の第2のプレートと、
を備え、
前記第1のネットが、前記各第1の支柱間、前記第1の支柱と前記第2の支柱の間、および隣接している前記各第2の支柱がある場合には当該隣接している前記各第2の支柱間に張設されており、
前記第2のネットが、前記各第1のプレート間、前記第1のプレートと前記第2のプレートの間、および隣接している前記各第2の支柱がある場合には隣接している前記各第2のプレートの間に張設されており、
前記各電線が、前記各第2のプレートの下部と中部と上部とによってそれぞれ少なくとも1本ずつ保持されている、
ことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
立設された複数の第3の支柱と、
前記第1のネットの上縁から、前記第3の支柱に沿って上方に向かって延びる下部と、当該下部の上端から、前側に傾いて前記第3の支柱から離れながら上方に向かって延びる中部と、当該中部の上端から、前記第3の支柱との間に所定の間隔をあけて上方に向かって延びる上部と、当該上部の上端から前記第3の支柱に向かって延び、前記第3の支柱に固定される上端部とを有する複数の第3のプレートと、
を備え、
前記第1のネットが、前記各第3の支柱間に張設されており、
前記第2のネットが、前記各第3のプレートの間に張設されており、
前記各電線が、前記各第3のプレートの下部と中部と上部とによってそれぞれ少なくとも1本ずつ保持されている、
ことを特徴とする。
【0016】
好ましくは、本発明の侵入防止柵は、
立設された複数の第4の支柱を備え、
前記第1のネットと前記第2のネットが、それぞれ前記各第4の支柱間に張設されており、
前記各電線が、前記各第1の支柱によって保持されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、侵入防止柵において、漏電する危険性を少なくするために電線の間隔を広くしても、猿の侵入を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)本発明の実施形態に係る侵入防止柵の構成の一例を示す側面図である。(B)本発明の実施形態に係る侵入防止柵の構成の一例を示す正面図である。
【図2】(A)碍子を有するプレートの構成の一例を示す側面図である。(B)碍子の拡大図である。
【図3】猿ネットの構成の一例を示す図である。
【図4】(A)結束バンドを使って猿ネットをプレートに固定する一例を示す側面図である。(B)結束バンドの一例の拡大図である。(C)結束バンドで拘束された電線と猿ネットロープの一例を示す拡大図である。(D)上端の猿ネットロープと最上端の電線が拘束された猿ネットの一例を示す図である。
【図5】(A)碍子を使って猿ネットをプレートに固定する一例を示す側面図である。(B)碍子で拘束された電線と猿ネットロープの一例を示す拡大図である。
【図6】猿が電線を掴んで感電するまでの一連の動作の一例を示す図である。
【図7】猿ネットと電線の位置関係のバリエーションの例を示す図である。
【図8】(A)猿ネットの上縁の上に更に水平方向に電線を架設した侵入防止柵を猿が登る様子の一例を示す図である。(B)図8(A)の侵入防止柵において、猿が電線を掴む様子の一例を示す図である。
【図9】侵入防止柵の第1の変形例の構造の一例を示す側面図である。
【図10】図1の侵入防止柵と図9の侵入防止柵とが混在した形の侵入防止柵の一例を示す図である。
【図11】侵入防止柵の第2の変形例の構造の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る侵入防止柵について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る侵入防止柵1aの構成の一例を示す。図1(A)と図1(B)は、それぞれ側面図と正面図である。
侵入防止柵1aは、支柱10aと、プレート20aと、金網30と、猿ネット40と、電線50と、図示されていない電源とを有している。
支柱10aは、例えば四角柱である。複数の支柱10aが所定の間隔で地中に打ち込まれる。これらの支柱10aは、猿の侵入を防止しようとする区域の境界線に沿って立設される。例えば、支柱10aは、長さが2m程度であり、間隔が平地では3.5m程度である。支柱10aの材質は導電性のある金属と導電性のない絶縁体のいずれでもよい。支柱10aが傾くと、金網30や猿ネット40の弛み等を生じるので鉛直方向に確実に立設する。図示しないが、支柱10aを支持する傾斜した補強柱を適宜設けてもよい。
なお、侵入防止柵1aの両面の呼称として、猿が生息する自然地の側を「前側」と称し、猿の侵入を防止しようとする区域に面する側を「後側」または「内側」と称することとする。
プレート20aは、くの字形に曲がった板状の部材である。プレート20aの材質は導電性のある金属と導電性のない絶縁体のいずれでもよい。プレート20aは、支柱10aの上端にその下端が固定されており、支柱10aの上端から上方に向かって、侵入防止柵1aの前側に傾いて延びる。プレート20aは、例えば、図2(A)に示すように碍子21を有している。碍子21は、電気を通さない絶縁物であり、図2(B)に示すように、電線50を把持する。
【0021】
金網30は、地表60から支柱10aの上端の近傍の所定の高さまでを覆うように、各支柱10aの間に張設される。金網30は、導電性を有する。金網30は、下縁が地表60に接触しており、例えば50cm幅程度が地表60を覆う。金網30の地表60を覆う部分は適宜のペグで地表60に固定される。これにより、猿が侵入防止柵1aの下をくぐり抜けることを防止することができる。
なお、支柱10aが例えば金属製であって導電性を有し、金網30と支柱10aが電流を流すことができるように接触している場合には、金網30は、必ずしも地表60に接触していなくてもよい。この場合、金網30は、支柱10aを介して地表60に接地されることになる。ただし、猿の侵入を確実に防止するためには、上述したように、金網30は、下縁が地表60に接触しており、例えば50cm幅程度が地表60を覆っていることが望ましい。
金網30は、弛みやしわのないように適宜の固定手段で支柱10aに固定される。なお、金網30の目の形状、粗さ及び硬さ等は、従来の獣害防止電気柵において猿の侵入を防止9するために効果的とされているものでよい。
猿ネット40は、金網30の上縁からプレート20aの上端近傍の所定の高さまでを覆うように、各プレート20aの間に張設される。猿ネット40は、樹脂等の電気を通さず、かつ、たわみやすい素材でできている。猿ネット40の目は、猿が手でつかむことができる程度の形状と粗さを有する。猿ネット40に猿が掴まると、猿ネット40は大きくたわむ。
【0022】
1本以上の電線50が、図2に示すように、碍子21によってプレート20aに固定され、猿ネット40に沿って架設される。電線50は、猿ネット40の上縁および下縁に対して平行である。電線50は、裸電線や電牧線等の電流が流れる線材である。なお、電牧線は、鋼線(裸電線)やポリワイヤー(ポリエチレンの白いひもやリボン等にステンレスの細いワイヤーを編み込んだもの)等の電流が流れる線材で構成されている。
電源は、電線50に所定の間隔で高電圧パルスを印加する(衝撃電流を流す)。例えば、猿が金網30に足をかけ、電線50を手でつかんでいる状態で電線50に高電圧パルスが印加されると、猿に電流が流れ、猿は電気ショックを受ける。
【0023】
猿ネット40の上下方向の幅並びに電線50の間隔は、猿の体格を考慮し、猿が手で電線に触れたときに足が金網30に掛かっているように設定する。例えば、金網30の高さが約2mの場合、猿ネット40の上下方向の幅は、例えば約45cm〜50cmとする。
なお、支柱10aは第1の支柱の例であり、プレート20aは第1のプレートの例であり、金網30は第1のネットの例であり、猿ネット40は第2のネットの例である。
【0024】
猿ネット40は、図3に示すように、例えば、ネットの上端と下端に猿ネットロープ41を有する。
猿ネット40は、結束バンド、金属コイル、番線、Cリング等の専用取り付け具を使ってプレート20aに固定することができる。
【0025】
図4は、結束バンド42を使って猿ネット40をプレート20aに固定する一例を示す。図4(A)に示すように、上段の猿ネットロープ41と最上段の電線50、および下段の猿ネットロープ41と最下段の電線50を、図4(B)に示す結束バンド42で把持する。具体的には、まず、結束バンド42で作られた輪の中に、図4(C)に示すように、上段の猿ネットロープ41と最上段の電線50を入れて輪をしぼる。その結果、図4(D)に示すように、上段の猿ネットロープ41と最上段の電線50が結束バンド42で拘束される。次に、下段の猿ネットロープ41と最下段の電線50も同様にして結束バンド42で拘束する。図2に示したように、電線50は碍子21によってプレート20aに固定されているので、これにより、間接的に猿ネット40をプレート20aに固定することができる。
【0026】
また、専用取り付け具を使わなくても、碍子21を使って猿ネット40をプレート20aに固定することができる。
図5は、碍子21を使って猿ネット40をプレート20aに固定する一例を示す。まず、図5(B)に示すように、碍子21を使って上段の猿ネットロープ41と最上段の電線50とを一緒に把持する。次に、同様に、碍子21を使って下段の猿ネットロープ41と最下段の電線50とを一緒に把持する。これにより、猿ネット40をプレート20aに固定することができる。
また、碍子21は猿ネット40と電線50を一緒に把持することができる。例えば、最上段と最下段以外の電線50、すなわち、図5における2段目と3段目の電線50を把持している碍子21に猿ネット40を一緒に把持させることもできる。
【0027】
図6は、猿70が電線50を掴んで感電する一連の動作の一例を示す。
図6の例の侵入防止柵1aでは、最上段の電線50と最下段の電線50は猿ネット40の前側に配置されている。また、これらを除く他の各電線50は猿ネット40の後側に配置されている。
最初に、図6(A)に示すように、猿70は金網30を伝って侵入防止柵1aを登ってくる。図6(B)に示すように、猿70が猿ネット40に達し、猿ネット40を手で掴むと、猿ネット40は猿70の重さによって大きくたわむ。猿ネット40がたわむと、猿70は落下を避けようとして、図6(C)に示すように、前側にでている最上段の電線50を掴む。このとき、猿70の足はまだ金網30にかかっている。このため、猿70に電流が流れ、猿70は感電して驚き、図6(D)に示すように、手を離して地面に落下する。
【0028】
図7は、猿ネット40と電線50の位置関係のバリエーションの例を示す。
図7(A)の例では、図6と同様に、最下段の電線50と最上段の電線50が猿ネット40の前側に配置されており、これらを除く他の各電線50が猿ネット40の後側に配置されている。この位置関係では、猿70が最下段の電線50に触れる可能性が高く、また猿ネット40のたわみも大きいので、猿70が侵入防止柵1aの内側に侵入することを防止できる効果が最も大きい。
図7(B)の例では、最下段の電線50と最上段の電線50が猿ネット40の前側に配置されており、これらを除く他の各電線50は下側から上側に向けて猿ネット40の前側と後側とに交互に配置されている。すなわち、下側から2段目の電線50は猿ネット40の前側に配置され、下側から3段目の電線50は猿ネット40の後側に配置されている。この位置関係では、下側の2本の電線50が猿ネット40の前側にあるため、猿70が下側の2本の電線50に触れる可能性が高い。ただし、この位置関係は、図7(A)の位置関係よりも猿ネット40のたわみが小さい。
【0029】
図7(C)の例では、各電線50が全て猿ネット40の後側に配置されている。この位置関係では、猿ネット40のたわみは大きいが、猿70が電線50に触れる可能性が低い。
図7(D)では、各電線50が全て猿ネット40の前側に配置されている。この位置関係では、猿70が電線50に触れる可能性は高いが、猿ネット40のたわみが小さい。
なお、図7に示した4種類の他にも猿ネット40と電線50を様々な位置関係で配置することができる。
【0030】
電線50が猿ネット40の前側にあれば、電線50による電気ショックの効きは良いが、不安定な猿ネット40の特性を生かせず、猿70に安定した状態で次の行動にうつる余裕を与える。反対に、猿ネット40が電線50の前側にあれば、猿ネット40のたわみが大きいため、猿70が猿ネット40を掴む蓋然性が高くなるが、猿ネット40の裏にある電線50はあまり機能しない。
同一の位置関係が長時間続くと、猿70がその位置関係に慣れて猿70の侵入を防止する効果が小さくなるおそれがある。ある位置関係で猿70の侵入を防げなくなった場合には、猿ネット40と電線50の位置関係を他のものに変更することにより、侵入を防止する効果を回復することができる。
【0031】
これまで電線50の隙間を猿ネット40で全て覆う例について説明した。これらの例は猿70が侵入しようとする隙間を残さないという考え方に基づくが、猿70が電線50に接触せずに柵を超えてしまう可能性もある。
そこで、図8に示すように、猿ネット40の上縁の上に、更に水平方向に電線50を架設してもよい。すなわち、最も上の電線50と上から2段目の電線50の間は猿ネット40で覆わずに、それ以外の各電線50の間の隙間を猿ネット40で覆う。図8(A)に示すように、猿70は金網30を伝って侵入防止柵1aを登る。猿ネット40に達した猿70は、図8(B)に示すように、最も上の電線50と上から2段目の電線50の間から侵入しようとして最も上の電線50に触れる。
このように、猿ネット40の上縁の上に更に電線50を配置することにより、猿70が電線50に触れる可能性を高くすることができる。
【0032】
図9は、侵入防止柵の第1の変形例1bの構造の一例を示す。
侵入防止柵1bは、支柱10bと、プレート20bと、金網30と、猿ネット40と、電線50と、図示されていない電源とを有している。
金網30と猿ネット40と電線50と電源は、侵入防止柵1aと侵入防止柵1bとで同一である。侵入防止柵1aと侵入防止柵1bで同一の点については説明を省略し、以下、侵入防止柵1aと侵入防止柵1bとで異なる点について説明する。
【0033】
支柱10bとプレート20bの材質は導電性のある金属と導電性のない絶縁体のいずれでもよい。
金網30は、地表60から支柱10bの途中の所定の高さまでを覆うように、各支柱10bの間に張設される。
プレート20bは、金網30の上縁から、支柱10bに沿って上方に向かって延びる下部と、下部の上端から、前側に傾いて支柱10bから離れながら上方に向かって延びる中部と、中部の上端から、支柱10bとの間に所定の間隔をあけて上方に向かって延びる上部と、上部の上端から支柱10bに向かって延び、支柱10bに固定される上端部とを有する。
猿ネット40は、金網30の上縁からプレート20bの上部の上端近傍の所定の高さまでを覆うように、各プレート20bの間に張設される。
電線50は、プレート20bの下部と中部と上部にそれぞれ少なくとも1本ずつ保持され、猿ネット40に沿って架設される。
侵入防止柵1bにおいても、侵入防止柵1aと同様に、猿ネット40と電線50は図7に示すような様々な位置関係で配置することができる。
また、侵入防止柵1bにおいても、侵入防止柵1aと同様に、図8に示すように、猿ネット40の上縁の上に、更に水平方向に電線50を架設してもよい。
【0034】
侵入防止柵1bは、プレート20bの上端が支柱10bに固定されるため、侵入防止柵1aに比べて堅牢である。このため、侵入防止柵1bは例えば降雪地帯での使用に適する。
一方、侵入防止柵1aは、支柱10aが短くて済み、猿ネット40がたわんだとき猿70に与える恐怖感が侵入防止柵1bより大きく、猿70の侵入を防止する効果が高い。
なお、支柱10bは第2の支柱と第3の支柱の例であり、プレート20bは第2のプレートと第3のプレートの例である。
【0035】
図10に示すように、侵入防止柵1aと侵入防止柵1bとが混在した形の侵入防止柵を構成することもできる。
この場合、金網30と猿ネット40の高さを一定に揃えるために、支柱10bは支柱10aより長くなる。
金網30は、各支柱10aの間、支柱10aと支柱10bの間、および隣接している支柱10bがある場合にはそれら隣接している支柱10bの間に張設される。
猿ネット40は、プレート20aの間、プレート20aとプレート20bの間、および隣接している支柱10bがある場合には隣接しているプレート20bの間に張設される。
電線50は、猿ネット40に沿って架設される。電線50は、猿ネット40の上縁および下縁に対して平行である。
例えば、コーナー等の力のかかる場所では侵入防止柵1bを使用し、直線部分等では侵入防止柵1aを使用することにより、堅牢でありながら猿70の侵入を防止する効果の高い侵入防止柵とすることができる。
【0036】
図11は、侵入防止柵の第2の変形例1cの構造の一例を示す。
侵入防止柵1cは、支柱10cと、金網30と、猿ネット40と、電線50と、図示されていない電源とを有している。
金網30と猿ネット40と電線50と電源は、侵入防止柵1aと侵入防止柵1cで同一である。侵入防止柵1aと侵入防止柵1cで同一の点については説明を省略し、以下、侵入防止柵1aと侵入防止柵1cとで異なる点について説明する。
【0037】
侵入防止柵1cは、プレート20aやプレート20bを有していない。また、支柱10cの材質は導電性のある金属と導電性のない絶縁体のいずれでもよい。
猿ネット40は各支柱10cの間に張設される。すなわち、金網30は、地表60から支柱10cの途中の所定の高さまでを覆うように、各支柱10cの間に張設される。また、猿ネット40は、金網30の上縁から支柱10cの上端近傍の所定の高さまでを覆うように、各支柱10cの間に張設される。
1本以上の電線50が、図示しない碍子によって支柱10cに保持され、猿ネット40に沿って架設される。
侵入防止柵1cにおいても、侵入防止柵1aと同様に、猿ネット40と電線50は図7に示すような様々な位置関係で配置することができる。
また、侵入防止柵1cにおいても、侵入防止柵1aと同様に、図8に示すように、猿ネット40の上縁の上に、更に水平方向に電線50を架設してもよい。
侵入防止柵1cは、侵入防止柵1aに比べて猿70の侵入を防止する効果は低いが、構造がシンプルで施工が容易である。
なお、支柱10cは第4の支柱の例である。
【0038】
なお、上述した実施形態では、電線50は碍子21によってプレート20aや支柱10c等に固定されるとしたが、絶縁物であって電線50を把持できるものであれば、碍子21の代わりに用いることができる。また、プレート20aや支柱10c等が絶縁物で構成されている場合には、電線50を把持できるものであれば、電気を通す素材でできていても碍子21の代わりに用いることができる。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、侵入防止柵において、漏電する危険性を少なくするために電線の間隔を広くしても、猿の侵入を効果的に防止することができる。
すなわち、猿ネットは電気を通さない素材、例えば樹脂等でできているので、電線を流れる電気が猿ネットで漏電することはない。漏電の危険性を少なくするために電線の間隔を広くしても猿ネットで電線の間の隙間を埋めているので、猿が電線の間から入り込むことはない。
また、猿が猿ネットを掴むと猿ネットは大きくたわむので、猿が感電する間もなく侵入防止柵を一気に駆け上がることは困難である。また、怖がる猿は、たわみの少ない電線を掴むため、感電して電気ショックを受ける蓋然性が高くなる。このため、本発明に係る侵入防止柵は、猿の侵入を効果的に防止することができる
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、請求項に記載されている発明や発明の実施形態に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1a、1b、1c…侵入防止柵、10a、10b、10c…支柱、20a、20b…プレート、21…碍子、30…金網、40…猿ネット、41…猿ネットロープ、42…結束バンド、50…電線、60…地表、70…猿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から所定の第1の高さまでを覆うように張設されており、導電性を有し、地表に接地されている第1のネットと、
前記第1のネットの上縁から、前記第1の高さより高い所定の第2の高さまでを覆うように張設されており、導電性のない第2のネットと、
前記第2のネットに沿って、前記第2のネットの上縁および下縁に対して平行に架設された少なくとも1本の電線と、
前記少なくとも1本の電線に所定の間隔で高電圧パルスを印加する電源装置と、
を備えることを特徴とする侵入防止柵。
【請求項2】
前記第2のネットが、猿が掴まるとたわむように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の侵入防止柵。
【請求項3】
前記電線が、3本以上架設されており、
最も下段の前記電線と最も上段の前記電線が、前記第2のネットの前側に配置され、
前記最も下段の電線と前記最も上段の電線を除く他の前記各電線が、前記第2のネットの後側に配置される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の侵入防止柵。
【請求項4】
前記電線が、3本以上架設されており、
最も下段の前記電線と最も上段の前記電線が、前記第2のネットの前側に配置され、
前記最も下段の電線と前記最も上段の電線を除く他の前記各電線が、下側から上側に向けて前記第2のネットの前側と後側とに交互に配置される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の侵入防止柵。
【請求項5】
前記各電線が、全て前記第2のネットの後側に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の侵入防止柵。
【請求項6】
前記各電線が、全て前記第2のネットの前側に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の侵入防止柵。
【請求項7】
前記第2のネットの上縁の上に水平方向に架設された電線を更に備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の侵入防止柵。
【請求項8】
立設された複数の第1の支柱と、
前記第1の支柱の上端に下端が固定されており、前記第1の支柱の上端から上方に向かって、前側に傾いて延びる複数の第1のプレートと、
を備え、
前記第1のネットが、前記各第1の支柱間に張設されており、
前記第2のネットが、前記各第1のプレート間に張設されており、
前記各電線が、前記各第1のプレートによって保持されている、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の侵入防止柵。
【請求項9】
前記第1の支柱間に立設されており、前記第1の支柱より長い少なくとも1本の第2の支柱と、
前記第1のネットの上縁から、前記第2の支柱に沿って上方に向かって延びる下部と、当該下部の上端から前側に傾いて前記第2の支柱から離れながら上方に向かって延びる中部と、当該中部の上端から、前記第2の支柱との間に所定の間隔をあけて上方に向かって延びる上部と、当該上部の上端から前記第2の支柱に向かって延び、前記第2の支柱に固定される上端部とを有する少なくとも1本の第2のプレートと、
を備え、
前記第1のネットが、前記各第1の支柱間、前記第1の支柱と前記第2の支柱の間、および隣接している前記各第2の支柱がある場合には当該隣接している前記各第2の支柱間に張設されており、
前記第2のネットが、前記各第1のプレート間、前記第1のプレートと前記第2のプレートの間、および隣接している前記各第2の支柱がある場合には隣接している前記各第2のプレートの間に張設されており、
前記各電線が、前記各第2のプレートの下部と中部と上部とによってそれぞれ少なくとも1本ずつ保持されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の侵入防止柵。
【請求項10】
立設された複数の第3の支柱と、
前記第1のネットの上縁から、前記第3の支柱に沿って上方に向かって延びる下部と、当該下部の上端から、前側に傾いて前記第3の支柱から離れながら上方に向かって延びる中部と、当該中部の上端から、前記第3の支柱との間に所定の間隔をあけて上方に向かって延びる上部と、当該上部の上端から前記第3の支柱に向かって延び、前記第3の支柱に固定される上端部とを有する複数の第3のプレートと、
を備え、
前記第1のネットが、前記各第3の支柱間に張設されており、
前記第2のネットが、前記各第3のプレートの間に張設されており、
前記各電線が、前記各第3のプレートの下部と中部と上部とによってそれぞれ少なくとも1本ずつ保持されている、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の侵入防止柵。
【請求項11】
立設された複数の第4の支柱を備え、
前記第1のネットと前記第2のネットが、それぞれ前記各第4の支柱間に張設されており、
前記各電線が、前記各第1の支柱によって保持されている、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の侵入防止柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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