説明

便器と汚水管路との接続構造

【目的】 便器と宅地内排水桝との間での配管施工に際し、曲りソケットとしての機能や伸縮機能を備える立下り管を用いることによって、配管に要する部材の数を減少させ、便器の下の狭いスペースでの配管施工を容易にし、施工手順についての制約を緩和し、便器の汚水出口管と排水桝とのレベル差に合わせて立下り管の有効長を調節することができるようにする。
【構成】 立下り管5における直管部51の上端接続口部53を便器1に接続した汚水出口管2に軸方向スライド自在に接続する。立下り管5の横向き接続口部54に、排水桝に連なる汚水管路4aを連通する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、洗面所の便器と宅地内排水桝に連なる汚水管路との接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、洗面所に装備された便器から宅地内排水桝に至る配管は、図3のように、便器1から下向きに突出された汚水出口管2に、曲率半径が比較的大きな曲り角度90度の曲りソケット3を接続し、そのソケット3に排水桝(不図示)に連なる管路を形成する汚水管4を接続するようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のように、曲率半径が比較的大きな曲り角度90度の曲りソケット3を用いて便器1の汚水出口管2と汚水管4とを接続すると、どうしても曲りソケット3が大きなスペースを専有してしまうので広い配管スペースが必要になる。
【0004】ところが、建物の1階部分にある洗面所では狭い床下での配管施工を行うことを避けられず、また、建物の2階部分にある洗面所でも狭い天井裏での配管施工を行うことを余儀なくされる。そのため、従来の施工では、上記のような曲率半径の大きなソケット3を用いることが、作業を煩雑なものにしていた。
【0005】そこで、曲率半径の小さな曲り角度90度の曲りソケットを用いることが考えられるけれども、ソケットの曲率半径が小さいと、それだけ汚水が流れにくくなるので、この種の配管施工に曲率半径の小さな曲りソケットを用いることは好ましくない。
【0006】他方、便器と宅地内排水桝とを配管で接続する場合、その管路中の最後に施工する箇所に所謂「やりとり継手」を設置する必要がある。この「やりとり継手」は、管に対する差込み代を増減できる機能を備えており、管を介して互いに接続すべき2つの接続口部の対向間隔がそれほど広くないときに有益である。この「やりとり継手」を用いると、一方の接続口部に設置した「やりとり継手」に管の一端部をやゝ深めに差し込んでその管の他端部を他方の接続口部に同心状に対向させ、この後、管の一端部を「やりとり継手」から少し引き出して管の他端部を他方の接続口部に接続するという手順で配管を施工することができるようになる。
【0007】ところが、先に述べたように、便器の下には配管施工のための十分なスペースが確保されていないことが多く、しかも曲率半径の大きな曲りソケットによってそのスペースが狭められるので、便器の汚水出口管のところに上記の「やりとり継手」を設置することは困難である。したがって、従来は、便器の下での配管施工が最後にならないように施工初期にこの場所での配管を行い、最終的に汚水管路中のどこかで「やりとり継手」を利用した施工を行わねばならないといった施工手順についての制約があった。
【0008】本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、便器の汚水出口管と排水桝との間での配管施工に際し、曲りソケットとしての機能や「やりとり継手」としての機能を備える立下り管を用いることによって、上記汚水出口管と排水桝との接続に必要な部材の数を減少させ、同時に、上記汚水出口管と立下り管との接続箇所に伸縮機能(やりとり機能)を付与することによって、便器の下の狭いスペースでの配管施工を容易にし、施工手順についての制約を緩和し、配管部材の必要数を削減し、さらに、便器の汚水出口管と排水桝とのレベル差に合わせて上記立下り管の有効長を調節することのできる便器と汚水管路との接続構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による便器と汚水管路との接続構造は、直管部に湾曲管部が連設されていると共にこの湾曲管部の終端に横向き接続口部が具備された立下り管における上記直管部の上端接続口部が便器に下向きに設けられた汚水出口管に軸方向スライド自在に嵌合状に接続され、かつ上記横向き接続口部に、排水桝に連なる汚水管路が連通されている、というものである。
【0010】
【作用】この構成であれば、立下り管の湾曲管部が従来の曲りソケットとして機能する。また、便器の汚水出口管に嵌合状に接続した直管部の上端接続口部を、接続状態のまま上記汚水出口管に対して軸方向(上下方向)にスライドさせることによって、立下り管の有効長が増減され、また、「やりとり継手」としての機能が発揮される。
【0011】
【実施例】図1は本発明の実施例による便器1と汚水管路4aとの接続構造を示す概略説明図、図2は立下り管5の拡大断面図である。
【0012】図1のように、便器1には汚水出口管2が接続されている。この汚水出口管2は、便器1側に一体に備わっている排水管11に下向きに接続されている。
【0013】図2のように、立下り管5は、所定長さL1の直管部51と、その直管部51に一体に連設された円弧状の湾曲管部52とを備えており、直管部51にはシール材6を保持した上端接続口53が具備されている。また、湾曲管部52の終端には横向き接続口部54が形成されている。図示例の横向き接続口部54は受口として形成されている。
【0014】そして、図1のように、立下り管5の上端接続口部53が汚水出口管2に軸方向スライド自在に外嵌合状に接続され、立下り管5の横向き接続口部54に、図3で説明したものと同様の汚水管4が接続され、この汚水管4により形成される汚水管路4aが図示していない宅地内排水桝の流入口部に連なっている。
【0015】この構造で便器1側の汚水出口管2と排水桝とが接続されていると、図3で説明した曲りソケット3の機能、すなわち管路を垂直から横向きに方向転換するための機能が立下り管5の湾曲管部52によって発揮されるので、その曲りソケット3は不要であるのみならず、図3に示されている曲りソケット3と汚水出口管2との接続箇所が無くなるので、それだけ汚水の流れがスムーズに行われるようになる。
【0016】また、図2に矢印Aで示したように、立下り管5の上端接続口53を汚水出口管2に対して上下にスライドさせると、そのスライド幅だけ立下り管5が上下して立下り管5の有効長(管路として使われる部分の長さ)が増減する。したがって、このことを利用すれば、汚水出口管5と排水桝との間に存在するレベル差に合わせて立下り管5の有効長を適切に容易に調節することが可能になる。
【0017】また、立下り管5の「やりとり継手」としての機能を利用すれば、配管施工の最後に汚水出口管2を施工するという手順を採用することができる。すなわち、横向き接続口部54に汚水管4を接続しかつ上端接続口部53にやゝ深めに汚水出口管2を差し込んでおき、その状態で汚水出口管2の上端を便器1側に一体に備わっている排水管11に同心状に対向させた後、汚水出口管2を立下り管5の上端接続口部53から少し抜き出してその上端を排水管11に差し込むという手順を作用することができる。
【0018】
【発明の効果】本発明によると、便器と宅地内排水桝との間の管路を形成する配管から曲りソケットが省略されているので、それだけ部材の数が減少するのみならず、作業者にとっては、便器の下の狭いスペースでの配管施工に際して作業の煩わしさが軽減される。また、立下り管を汚水出口管に対して上下にスライドさせるだけでその有効長を便器と排水桝とのレベル差に合わせることが可能である。さらに、立下り管の「やりとり継手」としての機能を利用すると、配管施工の最後に便器の排水管と汚水出口管とを接続することができるので、便器の取替え工事を行う上で、取り替えた新設の便器の排水管に汚水出口管を容易に接続することができるようになるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による便器と汚水管路との接続構造を示す概略説明図である。
【図2】立下り管の拡大断面図である。
【図3】従来の便器と汚水管路との接続構造を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 便器
2 汚水出口管
4a 汚水管路
5 立下り管
51 直管部
52 湾曲管部
53 上端接続口部
54 横向き接続口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 直管部に湾曲管部が連設されていると共にこの湾曲管部の終端に横向き接続口部が具備された立下り管における上記直管部の上端接続口部が便器に下向きに設けられた汚水出口管に軸方向スライド自在に嵌合状に接続され、かつ上記横向き接続口部に、排水桝に連なる汚水管路が連通されていることを特徴とする便器と汚水管路との接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平9−4031
【公開日】平成9年(1997)1月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−181029
【出願日】平成7年(1995)6月23日
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)