説明

便器の取付構造

【課題】、樹脂製フランジを補強して保護しながら、樹脂製フランジに対する便器の接続フランジの取り付けを容易に且つ強固に行うことを可能にする。
【解決手段】樹脂製フランジ6の上面に取付け面11を形成し、樹脂製フランジ6の側面6aに角型ナット9を側方から取付け面11の下方位置に挿入保持する側面開口部12を形成する。樹脂製フランジ6に装着される保護部材8は、前記取付け面11の上面を覆う上片部14と、上片部14を前記取付け面11に対して固定する固定部15と、前記側面開口部12に配置されて前記角型ナット9の外周の平面部9cに当接して角型ナット9の回転を止める側片部16とを一体に備える。ボルト10を便器1の接続フランジ7から上片部14と取付け面11とを順に貫通して角型ナット9に締結してなる便器の取付構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器の取付構造に関し、詳しくは便器の接続フランジを両フランジに対してボルトと角型ナットとを用いて結合する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器内部のボウルの排水管に連通する排水経路に設けた接続フランジを、外部排水管と連通し且つ床側に固定された樹脂製フランジに載置して、両フランジをボルトとナットを用いて結合する便器の取付構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−348941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来では、接続フランジと、樹脂製フランジにインサートされたナットとをボルトを用いて結合している。ボルトとナットは金属製であり、樹脂製フランジは樹脂成形品である。スパナ等の工具でボルトを回して締め付けると、ナットに対してボルトの頭部に引っ張る力が作用し、ナットが樹脂製フランジの樹脂部分を押圧して、樹脂成形品である樹脂製フランジが破損しやすくなるという問題がある。また、ボルトの回転に連動してナットが共回りしやすくなり、このため、ボルトとナットの締め込みが甘くなりやすく、樹脂製フランジに対する便器の取り付け強度が低下しやすいという問題もある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、樹脂製フランジを補強して保護しながら、樹脂製フランジに対する便器の接続フランジの取り付けを容易に且つ強固に行うことを可能にした便器の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、便器内部にボウルの排水経路が設けられ、この排水経路を床側に固定した排水部材を介して床下の外部排水管に連通させると共に、前記排水経路の先端に設けた接続フランジと前記排水部材の外周に設けた樹脂製フランジとをボルトと角型ナットとを用いて結合してなる便器の取付構造であって、前記樹脂製フランジの上面に前記接続フランジを取り付ける取付け面が形成され、前記樹脂製フランジの側面に前記角型ナットを側方から前記取付け面の下方位置に挿入保持するための側面開口部が形成され、前記樹脂製フランジに対して保護部材が装着され、この保護部材は、前記取付け面の上面を覆う上片部と、この上片部を前記取付け面に対して固定する固定部と、前記側面開口部に配置されて前記角型ナットの外周の平面部に当接することで前記角型ナットの回転を止めるための側片部とが一体に形成されており、前記ボルトを前記接続フランジから前記上片部と前記取付け面とを順に貫通して前記角型ナットに締結してなることを特徴としている。
【0007】
また、前記保護部材の側片部に、前記角型ナットの外周の一平面部に当接する平坦面を設けるのが好ましい。
【0008】
また、前記保護部材の側片部に、前記樹脂製フランジの側面開口部の内方に向けて突出する突起部を設け、この突起部を、前記側片部が当接する前記角型ナットの外周の一平面部と隣接する別の平面部に当接させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る便器の取付構造では、樹脂製フランジを補強して保護しながら、樹脂製フランジに対する便器の接続フランジの取り付けを容易に且つ強固に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に用いる保護部材を説明する分解斜視図である。
【図2】(a)は同上の保護部材を樹脂製フランジに装着して、便器の接続フランジと樹脂製フランジとをボルトと角型ナットとを用いて連結固定した状態を説明する側面断面図であり、(b)は(a)のP−P線に沿う平面断面図であり、(c)はボルトの締め付けにより角型ナットに作用する力と樹脂製フランジの取付け面に作用する力の方向の説明図である。
【図3】同上の便器内に設けられる排水経路を構成するケーシングを保持枠で保持した状態を説明する断面図である。
【図4】同上の便器の内部構造の説明図である。
【図5】同上のケーシングを保持枠で保持した状態を説明する斜視図である。
【図6】同上のケーシングの下端に接続される排水部材の斜視図である。
【図7】他の実施形態であり、(a)は同上の保護部材の側片部に突起部を突設させた場合の側面断面図であり、(b)は(a)のP−P線に沿う平面断面図であり、(c)は保護部材の側片部が樹脂製フランジから抜けるのを突起部により防止する構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図3は便器1内部のボウル2の後方に設けた排水経路5(図1参照)を構成するケーシング3の一例を示している。このケーシング3は保持枠体60により保持されている。図3中の10はボルト、8は後述する保護部材である。
【0013】
図4はターントラップ部4の一例を示している。ターントラップ部4は、伸縮屈曲自在管4aで形成されており、この伸縮屈曲自在管4aの基端をボウル2の排出管に接続している。伸縮屈曲自在管4aには支持部材61が固定されており、支持部材61はターントラップ部4の外側に延設される回転軸62がケーシング3の軸孔(図示略)を貫通して、図示しない減速機、クラッチ手段等を介してモータに連結される。支持部材61により伸縮屈曲自在管4aの先端は上方に向けた状態で待機している。ボウル2を洗浄する洗浄時には支持部材61により伸縮屈曲自在管4aの先端を下方(図4の矢印Q方向)に屈曲して、ケーシング3下端の排水部材32(図6参照)に臨ませる。これにより、ボウル2の排泄物と洗浄水とを排水経路5から排水部材32、横引き管70を経て床下の外部排水管30へ排出されるようになる。
【0014】
なお、横引き管70を用いずに、排水部材32の下方に床下の外部排水管30を配管して、ボウル2の排泄物と洗浄水とを排水経路5から排水部材32の底面を通して、床下の外部排水管30へ直接排出するようにしてもよい。
【0015】
図5は、ケーシング3と保持枠60の斜視図である。図5では、ケーシング3の蓋3a(図4参照)の図示を省略している。ケーシング3の前側壁には、ターントラップ部4の外径に略等しい取付孔63が設けてあり、この取付孔63に回動且つ上下反転自在なターントラップ部4が挿入して取付けられる。
【0016】
図6は、保持枠60内に収容される排水部材32の斜視図である。排水部材32の下端の床固定板33は床面20に固定される。排水部材32の横方向に開口した出口32aは、図4に示す横引き管70を介して床下の外部排水管30に接続される。
【0017】
排水部材32の上端の排水孔32bの外周には、便器1側の接続フランジ7がボルト10と角型ナット9とで締結される樹脂製フランジ6が突設されている。
【0018】
図1は、樹脂製フランジ6に装着される保護部材8を示している。樹脂製フランジ6には、便器1側の接続フランジ7(図2参照)が載置される取付け面11と、角型ナット9を挿入する側面開口部12とが形成されている。なお、図1では、接続フランジ7の図示を省略している。
【0019】
図1において、角型ナット9の例として六角ナット9aと四角ナット9jを挙げている。以下においては、六角ナット9aを用いて説明する。
【0020】
上記取付け面11には、ボルト10の軸部10bが挿通する上下に開口した上面開口部13が穿孔されている。
【0021】
上記側面開口部12は、樹脂製フランジ6の側面6aから取付け面11の下方位置に達する深さを有している。六角ナット9aは、その穴9bを上方に向けた状態で側方から側面開口部12内部に抜き差し自在に挿入可能とされる。そして、六角ナット9aは側面開口部12の奥側であって且つ上記取付け面11の上面開口部13の下方に臨んだ位置で保持されるようなっている。このとき六角ナット9aの下面は側面開口部12内の左右の底壁12bによって支持される。
【0022】
図2は、保護部材8を用いて接続フランジ7と樹脂製フランジ6とを連結固定した状態を示している。保護部材8は、樹脂製フランジ6に対して装着される。本例の保護部材8は、溝型に折り曲げられた板金部品からなる。この保護部材8は、上片部14と固定部15と側片部16とが一体形成されている。
【0023】
上片部14は、樹脂製フランジ6の取付け面11の表面を覆うように被せられる。上片部14の中央側には、取付け面11の上面開口部13と対向する位置にボルト10の軸部10bが挿通可能な孔部17が穿孔されている。
【0024】
固定部15は、上片部14の一端から下向きにリブ状に折り曲げられている。一方、樹脂製フランジ6の取付け面11には、上面開口部13を挟んで樹脂製フランジ6の側面6aとは反対側の位置にスリット溝18が形成されている。スリット溝18は、上方に開口し且つ樹脂製フランジ6の側面6aと平行に延びており、保護部材8のリブ状の固定部15が上方から嵌め込み可能となっている。
【0025】
側片部16は、上片部14の他端から下向きに折り曲げられた平板状に形成される。この側片部16は、樹脂製フランジ6の側面開口部12を塞ぐ位置に配置され、六角ナット9aの外周の一平面部9cに当接する平坦面16aを有している。本例では、六角ナット9aの外周の奥側の一平面部9dを側面開口部12の奥側の壁面12aに突き当てられた状態で、手前側の一平面部9cに側片部16の平坦面16aが当接するようになっている。これにより、六角ナット9aはその孔9bを中心とする回転が阻止されると共に前後の動きも阻止される。さらに、六角ナット9aの左右の角部9e,9fは側面開口部12の左右の内壁19a,19bにそれぞれ当接しており、六角ナット9aの左右の動きも阻止されている。
【0026】
次に、便器1の据え付けの手順の一例を説明する。
【0027】
便器1の据え付けに先立って、図1の矢印Aで示す方向に、六角ナット9aを樹脂製フランジ6の側面開口部12から挿入して取付け面11の上面開口部13の下方位置に保持する。一方、保護部材8の上片部14の裏面に粘着テープ(図示略)を貼り、樹脂製フランジ6の取付け面11の上面に接着しながら、図1の矢印Bで示す方向に、固定部15をスリット溝18に嵌め込む。このとき図1の矢印Cで示す方向に、側片部16を樹脂製フランジ6の側面開口部12を覆う位置に配置する。このとき図2に示すように、側片部16の平坦面16aが角ナット9aの外周の手前の一平面部9cに当接した状態となる。
【0028】
次に、便器1を持ち上げ、便器1の接続フランジ7と樹脂製フランジ6とを位置合わせしながら、便器1を床面20に設置する。これにより、図2(a)に示すように、接続フランジ7が樹脂製フランジ6の取付け面11上に装着されている保護部材8の上片部14の上面に載置される。
【0029】
その後、便器1の外郭を構成する側面カバー(図示略)を取り外した状態で、便器1の外部から内部に位置する接続フランジ7と樹脂製フランジ6とをボルト10で締結する。つまり図1に示すように、ボルト10の軸部10bをワッシャ22を介して、接続フランジ7(図2(a)参照)のボルト挿入孔(図示略)に挿入する。さらに当該軸部10bを保護部材8の上片部14の孔部17から樹脂製フランジ6の取付け面11の上面開口部13に順に挿入して、六角ナット9aの孔9bに螺着する。図2(a)は、ボルト10の頭部10aを接続フランジ7の上方に突出させた状態で、ボルト10の軸部10bを角型ナット9aに締結した状態を示している。
【0030】
このとき、スパナ等の工具(図示略)でボルト10を締め付けると、図2(c)に示すように、六角ナット9aには上方に引っ張る力Gが加わる。これに伴い樹脂製フランジ6の取付け面11には上向きに引っ張られる力Fが作用するが、取付け面11は保護部材8の上片部14により上から押さえられているため、取付け面11を構成する樹脂部分が上方にメクレにくくなる。これにより、板金製品の保護部材8を利用して樹脂成形品である樹脂製フランジ6が補強され、樹脂が破損しにくくなる。
【0031】
また、ボルト10を回転させて締め付ける際に、図2(b)に示すように、側片部16の平坦面16aが六角ナット9aの外周の一平面部9cに当接することで、六角ナット9aは図2(b)の矢印Nで示す方向に共回りしにくくなる。これにより、ボルト10と六角ナット9aの締結を手間をかけずにしかも強固に行うことが可能となる。この結果、便器1の取り付け強度を高めることができ、施工性が向上する。
【0032】
なお、便器1を据え付ける場合に限らず、便器1を取り外す際にも、保護部材8による樹脂製フランジ6の保護機能と、六角ナット9aの共回り防止機能とが発揮される。
【0033】
また本例の保護部材8は、溝型に折り曲げ形成された板金部品からなるので、製作コストを低く抑えることができる利点がある。
【0034】
また保護部材8の固定部15をリブ状に形成し、樹脂製フランジ6のスリット溝18に嵌合させるだけで、保護部材8全体を樹脂製フランジ6に対して動かないように固定できる。従って、保護部材8の固定が比較的容易にできる利点もある。
【0035】
図7は他の実施形態であり、保護部材8の側片部16の両端部から、前記樹脂製フランジ6の側面開口部12の内方Mに向けて突出する2つの突起部25,26を突設している。これら突起部25,26を、前記側片部16が当接する前記六角ナット9aの外周の一平面部9cと隣接する別の平面部9g,9hに当接させている。ここでは、2つの突起部25,26を例示しているが、側片部16の一端から1つの突起部25(又は26)を突設させるようにしてもよい。他の構成は図2と同様であり、対応する部位には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
本例では側片部16から突出する一方の突起部25が六角ナット9aの外周の一平面部9cと隣接する一方の平面部9gに当接し、他方の突起部26が他方の平面部9hに当接している。これにより、3つの平面部9c,9g,9hに対して側片部16と2つの突起部25,26とがそれぞれ当接することで、六角ナット9aの共回り防止効果を、一層高めることが可能となる。なお、図7の例では、側片部16の平坦面16aを六角ナット9aの一平面部9cに当接させているが、平坦面16aが一平面部9cに当接していなくても、六角ナット9aの回転を止めることが可能である。
【0037】
また、保護部材8はリブ状の固定部15を樹脂製フランジ6のスリット溝18に嵌め込んでいるだけなので、便器1の据え付け前若しくは据え付け途中において、保護部材8が樹脂製フランジ6の上方に離脱しやすくなる。しかし、本例では、側片部16に設けた回り止め用の突起部25,26は、側面開口部12の内方Mに向かってそれぞれ突出して、側片部16の抜け止め防止部材としても機能する。つまり、固定部15がスリット溝18の上方に抜けようとすると、突起部25,26が側面開口部12の天面部分12eに引っ掛かる。これにより、側片部16が図7(c)の矢印Qで示す上方向に抜けにくくなり、保護部材8をフランジ6から離脱しにくくできる利点が得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 便器
2 ボウル
3 ケーシング
4 ターントラップ部
5 排水経路
6 樹脂製フランジ
6a 側面
7 接続フランジ
8 保護部材
9 角型ナット
9a 六角ナット
9c 平面部
10 ボルト
10b 軸部
11 取付け面
12 側面開口部
13 上面開口部
14 上片部
15 固定部
16 側片部
16a 平坦面
18 スリット溝
20 床面
22 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器内部にボウルの排水経路が設けられ、この排水経路を床側に固定した排水部材を介して床下の外部排水管に連通させると共に、前記排水経路の先端に設けた接続フランジと前記排水部材の外周に設けた樹脂製フランジとをボルトと角型ナットとを用いて結合してなる便器の取付構造であって、前記樹脂製フランジの上面に前記接続フランジを取り付ける取付け面が形成され、前記樹脂製フランジの側面に前記角型ナットを側方から前記取付け面の下方位置に挿入保持するための側面開口部が形成され、前記樹脂製フランジに対して保護部材が装着され、この保護部材は、前記取付け面の上面を覆う上片部と、この上片部を前記取付け面に対して固定する固定部と、前記側面開口部に配置されて前記角型ナットの外周の平面部に当接することで前記角型ナットの回転を止めるための側片部とが一体に形成されており、前記ボルトを前記接続フランジから前記上片部と前記取付け面とを順に貫通して前記角型ナットに締結してなることを特徴とする便器の取付構造。
【請求項2】
前記保護部材の側片部に、前記角型ナットの外周の一平面部に当接する平坦面を設けたことを特徴とする請求項1記載の便器の取付構造。
【請求項3】
前記保護部材の側片部に、前記樹脂製フランジの側面開口部の内方に向けて突出する突起部を設け、この突起部を、前記側片部の平坦面が当接する前記角型ナットの外周の一平面部と隣接する別の平面部に当接させることを特徴とする請求項2記載の便器の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−72550(P2012−72550A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216165(P2010−216165)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】