説明

便器の床固定構造

【課題】便器の下フレーム材を床に強固に固定でき、便器が前側から持ち上げられる等しても、支持フレームが変形し難い便器を提供する。
【解決手段】便器本体3の前側の外郭を平面視略U字状のスカート部17で構成する。下フレーム材5の嵌込部8をスカート部17の下端部内側に嵌め込むと共に床固着部9をスカート部17から後方に突出させる。嵌込部8をスカート部17に連結して支持フレーム4とスカート部17を備えた設置体Aを構成する。床fに係合具40を固着する。設置体Aの下フレーム材5を床fに載置する。下フレーム材5の前部を係合具40に係合する。下フレーム材5の床固着部9をねじ具49により床fに固着する。設置体Aに便器本体3の後側の外郭を着脱自在に取り付ける。該後側の外郭により前記床固着部9及びねじ具49を覆い隠す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器の床固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ボウル部を備えた合成樹脂製の便器本体の外郭内に金属製の支持フレームを配置し、この支持フレームに便器本体を取り付けて支持した便器が利用されている。
【0003】
この便器を施工するには、支持フレームの下端部に設けた下フレーム材をねじ具により床に固定するものである。また、この便器にはねじ具を便器本体の外郭で覆い隠す工夫がなされており、以下、本発明を示す図2〜5、図8を用いて説明する。
【0004】
図3に示すように、支持フレーム4の下端部に設けた下フレーム材5は前部の嵌込部8と後部の床固着部9とで構成してある。図2に示すように便器本体3の前側の外郭はボウル部2と一体的に設けた平面視で後方に開口する略U字状のスカート部17で構成してある。
【0005】
図4に示すように下フレーム材5は嵌込部8をスカート部17の下端部の内側に嵌め込むと共に床固着部9をスカート部17から後方に突出させ、図8のように嵌込部8をねじ具28によりスカート部17に連結して支持フレーム4とスカート部17を一体的に備えた設置体Aを構成している。
【0006】
設置体Aには図2のように便器本体3の後側の外郭の一部を取り付けて、設置体Aの後部に設けた温水洗浄装置等の付属装置38やトラップケース10等を覆い隠す。
【0007】
上記便器1の施工は、便器本体3の後側の外郭を取り外した設置体Aを床fに載置し、前記後側の外郭を取り外した部分に形成される作業用開口48を介して設置体Aの下フレーム材5をねじ具28により床fに固定し、この後、前記後側の外郭を設置体Aに取り付ける。
【0008】
ここで、下フレーム材5の嵌込部8は上記作業用開口48よりも前方に位置しており、また、便器1の後部には付属装置38やトラップケース10等が配置される。このため上記狭いスカート部17内に位置する下フレーム材5の嵌込部8をねじ具により床fに固定する作業は極めて困難なものとなる。従って、従来では上記下フレーム材5の嵌込部8を床fに固着せず、下フレーム材5の後部を構成する床固着部9のみをねじ具により床fに固定していた。
【0009】
ところで上記便器本体3は合成樹脂製であるため軽量であり、このためいたずら等で便器1が前側から持ち上げられる恐れがある。そして、このように便器1が前側から持ち上げられる等した場合には、上記床固着部9のみを固定した支持フレーム4の前部が上方に曲がって変形する恐れがある。
【0010】
また、例えば特許文献1には便器の前部を床に固定した係合具に係合すると共に後部をねじ具により床に固着した便器の床固定構造が開示してあるが、このものは合成樹脂製の便器本体と支持フレームを備えた便器ではなく、また、便器の後部を固着するためのねじ具が露出して見栄えが悪いという問題がある。
【特許文献1】実開平5−10587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、便器の下フレーム材を床に強固に固定でき、便器が前側から持ち上げられる等しても、支持フレームが変形し難い便器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に係る便器の床固定構造は、ボウル部2を備えた合成樹脂製の便器本体3の外郭内に支持フレーム4を配置し、該支持フレーム4に便器本体3を取り付けてなる便器の床固定構造において、支持フレーム4の下端部に設けた下フレーム材5の前部を嵌込部8とすると共に後部を床固着部9とし、便器本体3の前側の外郭を平面視略U字状のスカート部17で構成し、前記下フレーム材5の嵌込部8をスカート部17の下端部内側に嵌め込むと共に床固着部9をスカート部17から後方に突出させ、且つ嵌込部8をスカート部17に連結して支持フレーム4とスカート部17を備えた設置体Aを構成し、床fに係合具40を固着し、設置体Aの下フレーム材5を床fに載置して該設置体Aのスカート部17で前記係合具40を覆い隠すと共に、該下フレーム材5の前部を前記係合具40に係合して上下動不能に係止し、前記下フレーム材5の床固着部9をねじ具49により床fに固着し、設置体Aに便器本体3の後側の外郭を着脱自在に取り付け、該後側の外郭により前記床固着部9及びねじ具49を覆い隠すことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る便器の固定構造は、請求項1において、上記嵌込部8をスカート部17の下端部に沿った平面視略U字状とし、係合具40に前方に突出する係合突部45を設け、該係合突部45の下側の面に下フレーム材5の前端部を係合することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る便器の固定構造は、請求項2において、上記係合具40に上方に突出する縦片部42を設けると共に該縦片部42から上記係合突部45を前方に向けて突設し、該係合突部45の係合面46となる下側の面を前側程上方に位置するよう傾斜させて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、便器本体を外郭内に配置した支持フレームに取り付け、支持フレームの下端部に設けた下フレーム材の後部を構成する床固着部をねじ具で床に固着し、便器本体の後側の外郭により前記床固着部及びねじ具を覆い隠すことができ、見栄えが良い。
【0016】
また、下フレーム材の前部を床に固着した係合具に係合して簡単に上下動不能に係止できる。また、これにより下フレーム材、ひいては便器を床に強固に固定でき、便器が前側から持ち上げられて下フレーム材が変形するといった事態が生じることを防止できる。
【0017】
また請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明の効果に加えて、平面視略U字状の嵌込部の前端部を床に固着した係合具の前方に突出する係合突部の下側の面に係合するものである。このため便器が前側から持ち上げられたとしても、下フレーム材は床固着部の床へのねじ止め部分を回動支点として下フレーム材のねじ止めされていない部分である嵌込部が回動することとなる。そしてこの時、嵌込部の前端部は上方ではなく係合突部との係合が外れる方向とは反対側である後側に傾斜した斜め上方に移動することとなる。従って、仮に便器が前側から持ち上げられたとしても上記係合は外れ難いものとなっている。
【0018】
また請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、係合突部の下側の面を前側程上方に位置するよう傾斜させることで、床固着部の床へのねじ止めを解除した状態で設置体を略鉛直上方に移動するだけで、嵌込部の前端部で係合突部の下側の面を押圧し、縦片部を後方に弾性変形させながら上方に移動させ、係合突部との係合を容易に解除できる。このため床固着部の床へのねじ止めを解除した状態の設置体を床に対して前後に移動できない場合にも対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1乃至図14に示す本実施形態の便器1は、内部にボウル部2を備えた合成樹脂製の便器本体3と、便器本体3を支持・補強する金属製の支持フレーム4を備えている。
【0020】
図3に示すように支持フレーム4は、平面視で前後に長い環状の下フレーム材5と、下フレーム材5の後部の両側に立設した後フレーム材6と、下フレーム材5の後部の両側で且つ後フレーム材6よりも前方位置に立設した中フレーム材7とで構成してあり、各フレーム材5〜7は角状パイプからなる。
【0021】
以下、支持フレーム4の床fに設置される下フレーム材5のうち、前部を嵌込部8とすると共にこれよりも後方の後部を床固着部9とする。嵌込部8は平面視で後方に開口する略U字状となっている。
【0022】
図4に示すように下フレーム材5の床固着部9上にはトラップケース10が取り付けてある。トラップケース10内に内装したトラップはターントラップ方式のもので、フレキシブルなトラップ筒(図示せず)により構成してある。トラップ筒の一端はボウル部2の下部後端部に設けた排出孔部11に接続してあり、他端は自由端となっている。
【0023】
トラップ筒はトラップケース10に設けたモータ(図示せず)により回動させることで、自由端側の開口を上向きとしたトラップ構造を形成する状態と、自由端側の開口を下向きとして前記トラップ構造を解除して排水される状態とを選択できるようになっている。また、トラップケース10の下端部は下方に突出する排水口12となっていて、便器1を設置する床fから上方に向けて突設した排出筒13に連通接続される。
【0024】
図7のように下フレーム材5の嵌込部8及び床固着部9の夫々には周方向に複数のねじ具用孔14a、14bを穿設している。下フレーム材5の前端部は被係合部15としてあり、前記嵌込部8に設けたねじ具用孔14aは、被係合部15を除く両側の複数箇所と、被係合部15の左右両側部分に穿設している。以下、被係合部15に設けたねじ具用孔14aは特にねじ具用孔14aと記載する。
【0025】
図11に示すように嵌込部8の前端部に位置する被係合部15は水平な床固着部9よりもやや上方に位置している。嵌込部8は床固着部9側の部分から被係合部15側に行くにつれて徐々に上方に位置するよう湾曲し、これにより被係合部15を床固着部9よりも上方に位置させている。
【0026】
また、図3のように各中フレーム材7の上下複数箇所には螺子具挿通孔16を穿設している。
【0027】
図2に示すように便器本体3は内部にボウル部2を備えた前パーツFと後パーツRで構成してある。図5に示すように前パーツFは便器1の外郭の前部を構成する平面視面略U字状をしたスカート部17と、スカート部17内の上部内に位置したボウル部2と、ボウル部2の上に位置するリム部18とで構成してあり、これら合成樹脂製のスカート部17、ボウル部2、リム部18は溶着又は接着により固着一体化してある。
【0028】
図8及び図9に示すようにスカート部17の下部にはスカート部17の内側に向けてフランジ状の内フランジ部19を一体に突設してあり、該内フランジ部19はスカート部17の周方向の両端部を除く全長に亘って形成されている。
【0029】
内フランジ部19における前記嵌込部8に設けた各ねじ具用孔14aに対応する箇所には取付用孔20を穿設している。内フランジ部19の被係合部15に対応する前端部は前固定部21としてあり、該前固定部21に設けた各取付用孔20はねじ具用孔14aに対応している。以下、前固定部21に設けた各取付用孔20を取付用孔20aと記載する。
【0030】
前固定部21の左右両端及び後端には上方に向けてリブ22を突設してあり、これらリブ22及びスカート部17の周壁部によって囲まれた上方に開口する凹所23を形成している。
【0031】
スカート部17の周壁部の前端部(周方向において前固定部21に対応する箇所)には操作用孔24を穿設している。操作用孔24には図示しない蓋体が着脱自在に取り付けられ、該蓋体により操作用孔24は閉塞される。
【0032】
スカート部17の周方向の全長に亘る下端部は内フランジ部19よりも下方に突出して覆い部25としている。
【0033】
スカート部17の後部両側には縦片状の取付片部26を内側方に向けて一体に突設している。各取付片部26は上端がスカート部17の上下方向の中程に位置し、下端は内フランジ部19の後端に一体に接続されている。各取付片部26の中フレーム材7の螺子具挿通孔16に対応する箇所には貫通孔27を穿設している。
【0034】
上記前パーツFのスカート部17は支持フレーム4に取り付けてある。スカート部17を支持フレーム4に取り付けるには、スカート部17の覆い部25の内側に下フレーム材5の嵌込部8を嵌め込み、嵌込部8上に内フランジ部19を載置し、且つ、各中フレーム材7の前面を対応する取付片部26の後面に沿わせる。次に、内フランジ部19と嵌込部8を皿ねじからなるねじ具28を用いて連結すると共に、各取付片部26と対応する中フレーム材7を螺子具31を用いて連結する。
【0035】
上記内フランジ部19と嵌込部8を連結する場合、スカート部17の両側部分にあっては、図8に示すように嵌込部8の両側に位置する各ねじ具用孔14a及びこれに対応する内フランジ部19の取付用孔20に下方からねじ具28を通し、各ねじ具28を内フランジ部19上の配したナット29に螺合する。
【0036】
また、スカート部17の前端部にあっては、被係合部15の各ねじ具用孔14a及びこれに対応する前固定部21の取付用孔20aに下方からねじ具28(図12参照)を通し、各ねじ具28を前固定部21上に載置し且つ下部を凹所23に嵌め込んだ金属製の連結具30に螺合し、該連結具30と被係合部15とで前固定部21を挟持する。
【0037】
また、各取付片部26を中フレーム材7に連結する場合は、図14に示すように各螺子具挿通孔16及びこれに対応する貫通孔27に前方から螺子具31を通し、各螺子具31を取付片部26の前側に配したナット32に螺合する。
【0038】
上記のようにスカート部17を支持フレーム4に連結することで、前パーツFは支持フレーム4に取り付けられる。この取付状態にあっては、覆い部25により下フレーム材5の外側は覆い隠される。また、下フレーム材5の前端部で構成される被係合部15の後部が図10に示すように前固定部21よりも後方に突出する。また、図13に示すように連結具30の左右方向の中央部には前後に貫通するねじ具通孔33が穿設してあるが、このねじ具通孔33がスカート部17の操作用孔24に対向する。
【0039】
一方、後パーツRは、上カバー34、両側の側カバー37、装置支持ケース35、背面カバー36で構成してあり、両側の側カバー37及び背面カバー36により便器本体3の後側の外郭を構成している。
【0040】
装置支持ケース35には局部洗浄用の温水洗浄装置等の付属装置38、便座(図示せず)、便蓋39を取り付けている。
【0041】
上カバー34は装置支持ケース35に着脱自在に取り付けてあり、該上カバー34により便器1の後上部に配設された装置支持ケース35及び付属装置38が覆われている。
【0042】
装置支持ケース35は支持フレーム4の両後フレーム材6に取り付けてあり、便器1の後部側面を覆う側カバー37は装置支持ケース35や支持フレーム4に着脱自在に取付けてある。また、便器1の後端を覆う背面カバー36は上カバー34や側カバー37に着脱自在に取り付けてある。
【0043】
上記便器1を床fに施工する場合は図1に示すように予め床fの被係合部15に対応する箇所に金属製の係合具40を固着しておく。
【0044】
図10及び図12に示すように係合具40は、横片部41と、横片部41の前端から上方に突出する縦片部42を備えている。横片部41にはねじ具用孔43を穿設している。係合具40を床fに固着するには、床面上に横片部41を載置し、ねじ具44をねじ具用孔43に通して床fに螺着する。
【0045】
縦片部42には前方に突出する係合突部45を形成している。係合突部45は側断面三角形状に形成してあり、下側の面は前側程上方に位置するよう傾斜した係合面46となり、上側の面は前側程下方に位置するように傾斜した傾斜面47となっている。また、縦片部42の前面には図示しない雌ねじ穴を形成してある。
【0046】
上記係合具40は床fの排出筒13の前方の所定位置に位置決めして取り付けられ、この後、便器1が床fに取り付けられる。以下、便器1の取り付け方法の一例を示す。
【0047】
便器1の取り付けは、先に便器1から便器本体3の後側の外郭を取り外してなる設置体Aを床fに設置し、この後、設置体Aに前記取り外した後側の外郭を取り付けることで行う。
【0048】
具体的には、設置体Aは図4に示すように上記便器1から便器本体3の後側の外郭の一部を構成する両側の側カバー37を取り外したものである。つまり、設置体Aは、支持フレーム4、便器本体3の両側の側カバー37を除く全ての部材、便座、便蓋39、トラップケース10、トラップ、モータ、付属装置38、連結具30等の全てを施工状態と同様に組み立てたものである。
【0049】
また、上記設置体Aの状態では両側の側カバー37を取り外した部分の夫々が作業用開口48となり、支持フレーム4の下端部に設けた下フレーム材5の床固着部9はスカート部17から後方に突出して露出した状態となる。
【0050】
上記設置体Aを床fに設置するには、図1に示すように床f上方に配置した設置体Aを下方に移動して支持フレーム4の下フレーム材5を床fに載置し、これにより排出筒13を床fに設けた排水口12に挿入すると共に、下フレーム材5の被係合部15を前記予め床fに設けた係合具40の係合突部45に係合させる。
【0051】
詳述すると、上記のように設置体Aを下方に移動すると、下フレーム材5の床固着部9が嵌込部8の被係合部15よりも先に床面に載置され、この後さらに設置体Aの前部を下方に押圧する。これにより下フレーム材5の被係合部15は下方に弾性変位し、以下のように係合具40の係合突部45に係合する。
【0052】
即ち、上記設置体Aの前部を下方に押圧して図10(a)に示すように被係合部15を下方に移動させると、被係合部15の後端部が係合突部45の傾斜面47を押圧して縦片部42を後方に弾性変形させながら下方に移動する。そして被係合部15が係合突部45を乗り越えた時点で図10(b)のように縦片部42が前方に復帰し、これにより被係合部15の後端部が係合突部45の係合面46と床面との間に嵌まり込み、被係合部15が係合突部45の係合面46に弾接係合して上下動不能に係止される。
【0053】
上記のように設置体Aを床fに設置した後には、設置体Aの作業用開口48を利用して下フレーム材5の床固着部9の各ねじ具用孔14bに上方からねじ具49を通し、これら各ねじ具49により床固着部9を床fに固着する。そして設置体Aの装置支持ケース35や支持フレーム4に両側の側カバー37を取り付けて、これら両側の側カバー37により設置体Aの後部に露出したトラップケース10、装置支持ケース35、スカート部17から後方に突出した下フレーム材5の床固着部9、これを床fに固定する各ねじ具49等を覆い隠す。
【0054】
また、上記設置体Aを床fに設置した後には、ねじ具28により前固定部21及び被係合部15に連結した連結具30を係合具40に連結する。連結具30を係合具40に連結するには、図13のようにスカート部17の前方から操作用孔24を介して連結具30のねじ具通孔33にねじ具50を通し、該ねじ具50を係合具40の前記雌ねじ穴に螺合し、これによってねじ具28により前固定部21及び被係合部15に連結した連結具30を係合具40に連結し、この後、操作用孔24に蓋体を取り付けて該蓋体により操作用孔24及びスカート部17内側のねじ具50を覆い隠す。
【0055】
以上説明した便器1の固定構造にあっては、従来例同様、便器本体3の後側の外郭を構成する側カバー37により下フレーム材5の後部を構成する床固着部9を床fに固定するためのねじ具49を覆い隠すことができて、見栄えが良い。
【0056】
さらに下フレーム材5の前端部を床fに固着した係合具40に係合して上下動不能に係止することで、下フレーム材5の前端部を容易に固定できる。また、下フレーム材5の後部を構成する床固着部9をねじ止めにより床fに固定すると共に、スカート部17を連結した下フレーム材5の前端部を床fに固着した係合具40に係止して便器1を床fに強固に固定でき、便器1が前側から持ち上げられて下フレーム材5が変形するといった事態が生じることを防止できる。
【0057】
また、本実施形態では係合具40の前方に突出する係合突部45の下側の面に平面視略U字状の下フレーム材5の前端部からなる被係合部15を係合している。このため便器1が前側から持ち上げられたとしても、下フレーム材5は図11の矢印に示すように床固着部9の床fへのねじ止め部分を回動支点として下フレーム材5のねじ止めされていない部分である嵌込部8が回動することとなり、この時、下フレーム材5の被係合部15は上方ではなく係合突部45と被係合部15との係合が外れる方向とは反対側である後側に傾斜した斜め上方に移動することとなる。従って、仮に便器1が前側から持ち上げられたとしても上記係合突部45と被係合部15の係合は外れ難くなっている。
【0058】
また、上記施工後の便器1を取り外す場合は、便器1から両側の側カバー37を取り外して上記の設置体Aとし、この後、作業用開口48を介して下フレーム材5の床固着部9を固定するねじ具49を取り外し、また、スカート部17から蓋体を取り外して操作用孔24を介して連結具30と係合具40を連結するねじ具50を取り外し、この後、設置体Aを持ち上げる。
【0059】
また、上記設置体Aを持ち上げる際には、排水口12を排出筒13に挿入していることから設置体Aを略鉛直な上方に移動させる必要があるが、この場合に上記係合突部45と被係合部15の係合は容易に解除できるようになっている。
【0060】
即ち、本実施形態では上記係合突部45の下側の面で構成された係合面46は前側程上方に位置するよう傾斜している。従って、上記のように設置体Aを床fから持ち上げるにあたって設置体Aを略鉛直上方に移動した時には、下フレーム材5の被係合部15は傾斜した係合面46を押圧して縦片部42を後方に弾性変形させながら上方に移動することとなり、係合突部45と被係合部15の係合を容易に解除できるのである。
【0061】
なお、本実施形態では、便器1を床fに固定する際に、便器1から後側の外郭を構成する両側の側カバー37のみを取り外した状態(即ち設置体A)としたが、例えば図6のように側カバー37以外の他の部材を取り外した状態としても良く、設置体Aは支持フレーム4及びこれに取り付けた前パーツFを備え、下フレーム材5の床固着部9をねじ具49により床fに取り付けるための作業用開口48が開口したものであれば良いものとする。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、設置体を床に設置する前の状態を示す側方から見た説明図である。
【図2】同上の便器の側面図である。
【図3】同上の支持フレームの透視斜視図である。
【図4】同上の設置体の側面図である。
【図5】同上の便器の後側の外郭や装置支持ケースを取り外した状態における側断面図である。
【図6】図5の状態における側面図である。
【図7】図5の状態における底面図である。
【図8】同上の内フランジ部と嵌込部の連結構造を示す正断面図である。
【図9】同上のスカート部を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【図10】(a)は被係合部が係合具に係合される直前の状態を示す側断面図であり、(b)(c)は被係合部が係合具に係合された状態を示す側断面図であり、(b)では便器が前側から持ち上げられた際に被係合部に係る力の向きを矢印で示し、(c)では便器の取り外し時において便器が上方に持ち上げられた際に被係合部に係る力の向きを矢印で示している。
【図11】同上の下フレーム部を側方から見た説明図である。
【図12】同上の連結具と係合具の連結構造を示す斜視図である。
【図13】同上の操作用孔から連結具にねじ具を通す時の状態を示す側断面図である。
【図14】同上の中フレーム材とスカート部の連結構造を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0063】
A 設置体
F 床
2 ボウル部
3 便器本体
4 支持フレーム
5 下フレーム材
8 嵌込部
9 床固着部
17 スカート部
40 係合具
45 係合突部
46 係合面
49 ねじ具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部を備えた合成樹脂製の便器本体の外郭内に支持フレームを配置し、該支持フレームに便器本体を取り付けてなる便器の床固定構造において、支持フレームの下端部に設けた下フレーム材の前部を嵌込部とすると共に後部を床固着部とし、便器本体の前側の外郭を平面視略U字状のスカート部で構成し、前記下フレーム材の嵌込部をスカート部の下端部内側に嵌め込むと共に床固着部をスカート部から後方に突出させ、且つ嵌込部をスカート部に連結して支持フレームとスカート部を備えた設置体を構成し、床に係合具を固着し、設置体の下フレーム材を床に載置して該設置体のスカート部で前記係合具を覆い隠すと共に、該下フレーム材の前部を前記係合具に係合して上下動不能に係止し、前記下フレーム材の床固着部をねじ具により床に固着し、設置体に便器本体の後側の外郭を着脱自在に取り付け、該後側の外郭により前記床固着部及びねじ具を覆い隠すことを特徴とする便器の床固定構造。
【請求項2】
上記嵌込部をスカート部の下端部に沿った平面視略U字状とし、係合具に前方に突出する係合突部を設け、該係合突部の下側の面に下フレーム材の前端部を係合することを特徴とする請求項1に記載の便器の床固定構造。
【請求項3】
上記係合具に上方に突出する縦片部を設けると共に該縦片部から上記係合突部を前方に向けて突設し、該係合突部の係合面となる下側の面を前側程上方に位置するよう傾斜させて成ることを特徴とする請求項2に記載の便器の床固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−235749(P2009−235749A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82131(P2008−82131)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】