説明

便器の防振支承構造及び便器防振支承装置

【課題】防振ゴムに充分な厚さ寸法をもたせることができて高い防振性能を確保でき、しかも、しっかりとした防振支承状態を形成できると共に、きれいな仕上がり状態にすることができる、便器の防振支承構造等を提供する。
【解決手段】左右のフレーム4,4を有する架台5が備えられ、各フレーム4には、第1防振ゴム6と側部支承部7とが備えられ、第1防振ゴム6はフレーム4の下部側に備えられ、側部支承部7は第1防振ゴム6の下面高さ位置よりも上方の高さ位置において外方に張り出すよう備えられ、第1防振ゴム6の上端面高さ位置は、側部支承部7の支承面の高さ位置よりも上方に設定され、便器2の左右の下端縁部下面を左右の側部支承部7に支承させ、各フレームの第1防振ゴム6を床面に当接させて、便器2の左右の下端縁部を防振支承している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器の防振支承構造及び便器防振支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器から床面を伝って階下や隣室に伝わる固体音の伝搬を抑制するため、従来より、便器の下端縁部にひも状のゴムを被着して防振支承するようにしたものがあるが、ゴムの厚さ寸法を大きくすることができず、充分な防振性能を確保することができないという問題がある。
【特許文献1】特開2003−147843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、防振ゴムに充分な厚さ寸法をもたせることができて高い防振性能を確保することができ、しかも、しっかりとした防振支承状態を形成することができると共に、きれいな仕上がり状態にすることができる、便器の防振支承構造及び便器防振支承装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、左右方向に間隔をおいて前後方向に延ばされた左右のフレームを有する架台が備えられ、
該架台の各フレームには、第1防振ゴムと、便器の左右の下端縁部下面を支承する側部支承部とが備えられ、
第1防振ゴムは、フレームの下部側に備えられると共に、
側部支承部は、第1防振ゴムの下面高さ位置よりも上方の高さ位置において、外方に張り出すように備えられ、
第1防振ゴムの上端面高さ位置は、側部支承部の支承面の高さ位置よりも上方に設定され、
便器の左右の下端縁部下面を各フレームの側部支承部に支承させ、各フレームの第1防振ゴムを床面に当接させて、便器の左右の下端縁部を防振支承していることを特徴とする便器の防振支承構造によって解決される(第1発明)。
【0005】
また、左右方向に間隔をおいて前後方向に延ばされた左右のフレームを有する架台と、
各フレームに備えられた第1防振ゴムと、
各フレームに備えられ、便器の左右の下端縁部下面を支承する側部支承部と、
が備えられ、
前記側部支承部は、第1防振ゴムの下面高さ位置よりも上方の高さ位置において、外方に張り出すように備えられると共に、第1防振ゴムの上端面高さ位置は、側部支承部の支承面の高さ位置よりも上方に設定され、
便器の左右の下端縁部下面を各フレームの側部支承部に支承させ、各フレームの第1防振ゴムを床面に当接させて、便器の左右の下端縁部を防振支承するようになされていることを特徴とする便器防振支承装置によって解決される(第2発明)。
【0006】
これら便器の防振支承構造及び便器防振支承装置では、第1防振ゴムの上端面高さ位置が、側部支承部の支承面の高さ位置、即ち、便器の下端縁部下面の高さ位置よりも上方に設定されているので、第1防振ゴムに充分な厚さ寸法をもたせることができて高い防振性能を確保することができる。
【0007】
しかも、第1防振材は、架台のフレームの下部側に備えられて、架台のフレームを支承するようにしているので、安定の良いしっかりとした防振支承状態を形成することができる。
【0008】
加えて、側部支承部は、外方に張り出すように備えられているので、第1防振ゴムや架台は便器の下方に隠され、きれいな仕上がり状態にすることができる。
【0009】
第1,第2発明において、前記フレーム間の間隔寸法を変更できるようにする間隔寸法調整機構が備えられているとよい(第3発明)。この場合は、便器の左右方向の寸法が公差などにより便器ごとに異なっていても、間隔寸法調整機構によって、フレーム間の間隔寸法を変更することにより、左右方向の寸法の異なる種々の便器に適用することができて、汎用性を高めることができる。
【0010】
第1〜第3発明において、前記第1防振ゴムが、各フレームに複数づつ設けられ、これら第1防振ゴムによって、前記各フレームの長さ方向において、第1防振ゴムの備えられている部分と備えられていない部分とが形成され、第1防振ゴムはフレームに沿う方向に移動させることができるようになされていて、フレームの長さ方向において第1防振ゴムの備えられている部分と備えられていない部分との分布状態を変更することができるようになされているとよい(第4発明)。
【0011】
この場合は、例えば、後部にタンクが備えられている便器や、備えられていない便器など、重心位置が異なる各種の便器に対して、第1防振ゴムの位置を変更することで、バランスの良い防振支承状態を形成することができると共に、それを、第1防振ゴムを移動するだけで実現することができる。
【0012】
第2発明において、便器の前部と後部とを第2防振ゴムを介して床面に連結して床面に防振状態に取り付ける前後の便器取付け部材と、前後の便器取付け部材を架台に連結する連結材とが備えられているとよい(第5発明)。この場合は、前後の便器取付け部材と架台とが連結材で連結されているので、便器の取付けを施工容易に行っていくことができる。
【0013】
第5発明において、前記フレーム間の間隔寸法を変更できるようにする間隔寸法調整機構が備えられていると共に、
前記連結材が、可撓材からなり、該可撓材の可撓性を利用して各便器取付け部材と架台との相対位置関係を変更することができるようになされているとよい(第6発明)。
【0014】
この場合は、便器の左右方向の寸法や前後方向の寸法が公差などにより便器ごとに異なっていても、間隔寸法調整機構と可撓材とによって、フレーム間の間隔寸法を変更し、前後の便器取付け部材と架台との相対位置関係を変更することによって、左右方向及び前後方向に寸法の異なる種々の便器に適用することができて、汎用性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のとおりのものであるから、防振ゴムに充分な厚さ寸法をもたせることができて高い防振性能を確保することができ、しかも、しっかりとした防振支承状態を形成することができると共に、きれいな仕上がり状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示す実施形態の便器防振支承構造において、1は床面、2は大便用の便器、3は便器防振支承装置である。
【0018】
便器防振支承装置3は、左右方向に間隔をおいて前後方向に延ばされた左右のフレーム4,4を有する架台5を備え、各フレーム4は、下向き開放のリップ付き溝形材からなり、各フレーム4には、第1防振ゴム6と、便器2の左右の下端縁部下面を支承する側部支承部7とが備えられている。
【0019】
第1防振ゴム6は、図2(イ)(ロ)に示すように、フレーム4の下部側に備えられていると共に、側部支承部7は、フレーム4に沿うようにして取り付けられたZ形断面の長物材8の水平な外方張り出し部からなっていて、第1防振ゴム6の下面高さ位置よりも上方の高さ位置に備えられ、そして、第1防振ゴム6の上端面が、側部支承部7の支承面の高さ位置よりも上方に位置するようにつくられている。
【0020】
本実施形態では、図1(イ)及び図2(イ)に示すように、架台5において、左右のフレーム4,4は、その長さ方向の中間部の前後二箇所の位置において、雄ネジ棒9aとナット9bとによる間隔寸法調整機構9によって連結され、ナット9bを回転することにより、左右のフレーム4,4が接近又は離反をして、フレーム4,4間の間隔寸法を調整することができるようになされている。
【0021】
また、第1防振ゴム6…は、図1(イ)に示すように、ピース物からなっていて、各フレーム4にその長さ方向に沿うようにして複数づつ備えられ、フレーム4の長さ方向において、第1防振ゴム6…の備えられている部分と備えられていない部分とが形成されるようになされていると共に、各第1防振ゴム6は、フレーム4に沿う方向に移動させることができるようになされていて、フレーム4の長さ方向において第1防振ゴム6…の備えられている部分と備えられていない部分との分布状態を変更することができるようになっている。
【0022】
具体的には、各第1防振ゴム6は、図2(ロ)に示すように、その上面部に、フレーム4の溝内に突出する雄ネジ部6aが立設されており、該雄ネジ部6aに螺合されている上下のナット6b,6bでフレーム4の左右のリップ部4aを挟みこむことによりフレーム4に位置保持状態に取り付けられており、ナット6b,6bを緩めることで、各第1防振ゴム6をフレーム4に沿って移動させることができると共に、更に、ナット6b,6bの締め付け高さ位置を変更することにより、第1防振ゴム6の下面の高さ位置を上下方向に変更することができるようにもされている。
【0023】
また、本実施形態の便器防振支承装置3には、便器2の前部と後部とを第2防振ゴム10を介して床面1に連結して床面1に防振状態に取り付ける前後の便器取付け部材11,12,12が備えられ、前側の便器取付け部材11は、平面視半円状の板状などをした連結材としての可撓材13によって、左右のフレーム4,4に連結され、後側の各便器取付け部材12,12は、1/4円状の板状などをした連結材としての可撓材14,14によって各フレーム4,4に連結され、図3(ハ)(ニ)に示すように、可撓材13,14,14の可撓性を利用して各便器取付け部材11,12,12と架台5との相対位置関係を変更することができるようになされている。
【0024】
前側の便器取付け部材11は、図3(ロ)に示すように、床面に取り付けられる床面側取付け部15と、便器側に取り付けられる便器側取付け部16と、これら取付け部15,16によって上下方向から挟まれるように設けられた第2防振ゴム部10とを備え、床面側取付け部15は、第2防振ゴム部10よりも後方に張り出す部分15aを備え、図3(ホ)に示すように、該張り出し部15aに上方よりビス17を打つことによって、床面1に固着状態に取り付けることができるようになされていると共に、便器2の正面側から便器2の壁を通じて便器側取付け部16にビス17を打つことによって、便器2に固着状態に取り付けることができるようになされている。
【0025】
また、後側の各便器取付け部材12は、図3(イ)に示すように、床面に取り付けられる床面側取付け部18と、便器2側に取り付けられる軸部19aを上方突出状態に備えた便器側取付け部19と、これら取付け部18,19によって上下方向から挟まれるように設けられた第2防振ゴム部10とを備え、床面側取付け部18は、第2防振ゴム部10よりも内方に張り出す部分18aを備え、図3(ホ)に示すように、該張り出し部18aに上方よりビス17を打つことによって、床面1に固着状態に取り付けることができるようになされていると共に、便器2の後部に備えられた孔2aに軸部19aを通した状態にして便器2に固着状態に取り付けることができるようになされている。
【0026】
便器2は、上記の便器防振支承装置3を用いて、例えば、次のようにして取り付けることができる。
【0027】
即ち、図2(イ)に示すように、左右の側部支承部7,7に便器2の左右の下端縁部の下面を支承させることができるように、架台5の左右のフレーム4,4の間隔寸法を、ナット9bを回転して調整する。
【0028】
併せて、図2(ロ)に示すように、左右の各第1防振ゴム6のすべての下面が床面1に当接するように、上下のナット6b,6bによって調整し、また、便器が後部にタンクを支承するものである場合と、便器が後部にタンクを備えない場合などとの差異に応じて、防振支承のバランスを取るため、左右のフレーム4に沿う第1防振ゴム6…を移動してその分布状態を必要に応じて変更する。
【0029】
併せて、前後の便器取付け部材11,12,12を、可撓材13,14,14の可撓性を利用して、設置しようとする便器2の前後方向の寸法に対応した床面1の所定の取付け位置に位置させて床面1に固定する。
【0030】
そして、図1(ロ)に示すように、便器2を下ろして、便器防振支承装置3の左右の側部支承部7,7に便器2の左右の下端縁部の下面を支承させた状態にし、前後の便器取付け部材11,12,12で便器2を固定する。
【0031】
このように、上記の便器防振支承装置3及び便器防振支承構造によれば、第1防振ゴム6…の上端面高さ位置が、側部支承部7の支承面の高さ位置、即ち、便器2の下端縁部下面の高さ位置よりも上方に位置するようになされているので、各第1防振ゴム6に充分な厚さ寸法をもたせることができて高い防振性能を確保することができる。
【0032】
しかも、第1防振ゴム6は、架台5のフレーム4の下部側に備えられて、架台5のフレーム4を支承するようにしているので、安定の良いしっかりとした防振支承状態を形成することができる。
【0033】
加えて、側部支承部7は、外方に張り出すように備えられているので、第1防振ゴム6や架台5は便器2の下方に隠され、きれいな仕上がり状態にすることができる。
【0034】
また、便器防振支承装置3には、フレーム4,4間の間隔寸法を調整する間隔寸法調整機構9が備えられると共に、可撓材13,14,14で連結された前後の便器取付け部材11,12,12が備えられ、また、第1防振ゴム6…がフレーム4に沿って移動させることができるようになされているので、便器の左右方向の寸法や前後方向の寸法が公差などにより便器ごとに異なっていても、便器の前後方向における重量バランスが便器毎に異なっていても、間隔寸法調整機構9と可撓材13,14,14によって、フレーム間の間隔寸法を変更し、前後の便器取付け部材11,12,12と架台5との相対位置関係を変更し、第1防振ゴム6…を移動することによって、左右方向及び前後方向に寸法が異なり、前後方向の重量バランスの異なる種々の便器に対して用いることができる。
【0035】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、第1,第4発明では、フレーム4,4間の間隔寸法調整機構9や、第1防振ゴム6…の移動機構等は省略されてよいし、また、第1発明では、便器を床面に取り付ける構造部分についても、種々の取付け構造が採用されてよいし、第4発明では、便器を床面に取り付ける構造部分を便器防振支承装置から切り離して、便器防振支承装置からは省略されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態の便器の防振支承構造及び便器防振支承装置を示すもので、図(イ)は便器防振支承装置の平面図、図(ロ)は便器防振支承構造の断面正面図、図(ハ)は便器防振支承構造の断面側面図である。
【図2】図(イ)は、便器と便器防振支承装置とを分離状態にして示す断面正面図、図(ロ)は図(イ)の要部拡大図である。
【図3】図(イ)は後側の便器取付け部材の斜視図、図(ロ)は前側の便器取付け部材の斜視図、図(ハ)及び図(ニ)はそれぞれ前側の便器取付け部材の取付け方法を示す平面図、図(ホ)は便器と便器防振支承装置とを分離状態にして示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…床面
2…便器
3…便器防振支承装置
4…フレーム
5…架台
6…第1防振ゴム
7…側部支承部
9…間隔寸法調整機構
10…第2防振ゴム
11…前側の便器取付け部材
12…後側の便器取付け部材
13,14…可撓材(連結材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に間隔をおいて前後方向に延ばされた左右のフレームを有する架台が備えられ、
該架台の各フレームには、第1防振ゴムと、便器の左右の下端縁部下面を支承する側部支承部とが備えられ、
第1防振ゴムは、フレームの下部側に備えられると共に、
側部支承部は、第1防振ゴムの下面高さ位置よりも上方の高さ位置において、外方に張り出すように備えられ、
第1防振ゴムの上端面高さ位置は、側部支承部の支承面の高さ位置よりも上方に設定され、
便器の左右の下端縁部下面を各フレームの側部支承部に支承させ、各フレームの第1防振ゴムを床面に当接させて、便器の左右の下端縁部を防振支承していることを特徴とする便器の防振支承構造。
【請求項2】
前記フレーム間の間隔寸法を変更できるようにする間隔寸法調整機構が備えられている請求項1に記載の便器の防振支承構造。
【請求項3】
前記第1防振ゴムが、各フレームに複数づつ設けられ、これら第1防振ゴムによって、前記各フレームの長さ方向において、第1防振ゴムの備えられている部分と備えられていない部分とが形成され、第1防振ゴムはフレームに沿う方向に移動させることができるようになされていて、フレームの長さ方向において第1防振ゴムの備えられている部分と備えられていない部分との分布状態を変更することができるようになされている請求項1又は2に記載の便器の防振支承構造。
【請求項4】
左右方向に間隔をおいて前後方向に延ばされた左右のフレームを有する架台と、
各フレームに備えられた第1防振ゴムと、
各フレームに備えられ、便器の左右の下端縁部下面を支承する側部支承部と、
が備えられ、
前記側部支承部は、第1防振ゴムの下面高さ位置よりも上方の高さ位置において、外方に張り出すように備えられると共に、第1防振ゴムの上端面高さ位置は、側部支承部の支承面の高さ位置よりも上方に設定され、
便器の左右の下端縁部下面を各フレームの側部支承部に支承させ、各フレームの第1防振ゴムを床面に当接させて、便器の左右の下端縁部を防振支承するようになされていることを特徴とする便器防振支承装置。
【請求項5】
便器の前部と後部とを第2防振ゴムを介して床面に連結して床面に防振状態に取り付ける前後の便器取付け部材と、前後の便器取付け部材を架台に連結する連結材とが備えられている請求項4に記載の便器防振支承装置。
【請求項6】
前記フレーム間の間隔寸法を変更できるようにする間隔寸法調整機構が備えられていると共に、
前記連結材が、可撓材からなり、該可撓材の可撓性を利用して各便器取付け部材と架台との相対位置関係を変更することができるようになされている請求項4に記載の便器防振支承装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−299271(P2009−299271A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151594(P2008−151594)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】