説明

便器上面設備

【課題】便座又は便蓋が磁力によって便座ボックス等よりなる支持体に対し、安定して回動可能に支持された便器上面設備を提供する。
【解決手段】ヒンジ部12の内向きの端面12aを凸部31の端面31aに対面させ、ヒンジ部12の外向きの端面12bにヒンジ部22の内向きの端面22aを対面させ、且つヒンジ部12,22の外周面を凹条32に係合させるようにして便座10及び便蓋20が支持体30に支持されている。磁石35と鉄片13とが磁気的吸引力により引き合い、磁石14と鉄片23とが磁気的吸引力により引き合うことにより、便座10及び便蓋20が支持体30に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座又は便蓋の基端部が便座ボックス、ロータンクカバー等の支持体に対し回動可能に支持されている便器上面設備に係り、特に磁石により便座又は便蓋が支持体に着脱可能に支持されている便器上面設備に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレに設置された洋風便器の上面の便座や便蓋は、通常の場合、便座ボックスやロータンクカバー等の支持体に対しヒンジ軸によって起倒方向回動可能に取り付けられている。このようにヒンジ軸によって便座や便蓋を便座ボックス等に取り付けた場合、便座や便蓋を取り外すことは容易ではなく、便座や便蓋を丸洗いすることは困難であった。
【0003】
特表2009−528107(特許文献1)には、磁石によって便座のジャーナルをC字形の軸受面に回動可能且つ着脱可能に保持させることが記載されている。第7図(a)は、同号公報のFIG.6を示すものであり、C字形の軸受面に沿って磁石6が設置されている。便座2のジャーナルに磁石5が設けられている。磁石5,6の磁気的吸引力によりジャーナルが軸受面に保持される。
【0004】
しかしながら、この第7図(a)の構造では、磁石5を設けた1箇所のみが磁気的吸引力により軸受面に強く押し付けられるので、便座2を上方に持ち上げたときに、第7図(b)の矢印Fのように磁石5付近を回動中心としてジャーナルが持ち上げられるように回動してしまい、便座2が軸受から外れるおそれがある。
【0005】
また、特許文献1のFIG.2,3には、第8図に示すように、ジャーナルの空洞201内に磁石5を設けた構造が示されているが、磁石5が磁石6と少しでもズレると、ジャーナルが外れてしまうので、到底実用には供し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−528107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、便座又は便蓋が磁力によって便座ボックス等よりなる支持体に対し、安定して回動可能に支持された便器上面設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の便器上面設備は、便座又は便蓋よりなる便器上面部材を支持体に対し起倒方向回動可能に取り付けてなる便器上面設備であって、便器上面部材のヒンジ部が磁石の磁力によって支持体に対し保持されている便器上面設備において、該ヒンジ部に、ヒンジ部の回動軸心線と垂直な第1の端面が設けられ、支持体に該第1の端面と対面する第2の端面が設けられ、第1の端面及び第2の端面の一方に磁石が設けられ、他方に該磁石と磁気的に吸引する磁性材が設けられており、該磁石と該磁性材との吸引力によりヒンジ部が支持体に保持されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の便器上面設備は、請求項1において、支持体の上面の中央部に凸部が設けられ、該凸部の左右両側に便座のヒンジ部が配置され、該便座のヒンジ部の左右の外側にそれぞれ便蓋のヒンジ部が配置され、該凸部と便座のヒンジ部とが磁石によって磁気的に吸引し合い、便座のヒンジ部と便蓋のヒンジ部とが磁石によって磁気的に吸引し合っていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の便器上面設備は、請求項2において、前記支持体の凸部の端部に磁石が設けられ、便座のヒンジ部の便座幅方向の中央側を向く内向き部に金属片が設けられ、外向き部に磁石が設けられ、便蓋のヒンジ部の内向き部に金属片が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明(請求項4)の便器上面設備は、便座又は便蓋よりなる便器上面部材を支持体に対し起倒方向回動可能に取り付けてなる便器上面設備であって、便器上面部材のヒンジ部が磁石の磁力によって支持体に対し保持されている便器上面設備において、該ヒンジ部は、便器上面部材が回動するときに支持体の外周面に沿って摺動するように支持体に係合しており、該支持体の内部に磁石が設けられ、該ヒンジ部の周方向の複数箇所に、又は周方向に延在するように、該磁石と磁気的に吸引する磁性材が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の便器上面設備は、請求項4において、前記ヒンジ部が半円弧形状であり、支持体には、ヒンジ部の摺動を案内する案内溝が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の便器上面設備は、請求項5において、支持体の上部は軸心方向が便器の左右幅方向に延在する円柱形のコラム部となっており、該コラム部の軸心位置に円柱状の磁石がコラム部と同軸状に設けられており、ヒンジ部の少なくとも周方向の一端側及び他端側にそれぞれ金属片が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の便器上面設備にあっては、ヒンジ部の端面と支持体の端面とが磁気的に吸引し合うことによりヒンジ部が支持体に回動可能に保持されている。各端面は、ヒンジ部の回動軸心と垂直であるので、ヒンジ部が回動してもヒンジ部に対して支持体から外れる方向に力は加えられない。なお、便器上面部材を支持体に対し容易に着脱できる。
【0015】
請求項2の便器上面設備にあっては、便座及び便蓋のいずれも着脱が容易である。この請求項2の態様では、支持体の上面の中央部に凸部を設け、該凸部の左右両側に便座のヒンジ部を配置し、該便座のヒンジ部の左右の外側にそれぞれ便蓋のヒンジ部を配置している。これにより、支持体の上面の凹凸(例えば各ヒンジ部が係合する凹所等の個数)を少なくすることができるので、支持体上面の清掃を容易に行うことができるようになり、清掃性が向上する。
【0016】
請求項3の便器上面設備にあっては、便蓋のヒンジ部には磁石に比べて軽量な鉄片などの金属片が設けられているので、便蓋の着脱が容易である。また、鉄片などの金属片は磁石に比べて安価であるので、便器上面設備のコストダウンを図ることもできる。
【0017】
請求項4の便器上面設備は、ヒンジ部の周方向の複数箇所に、又はヒンジ部の周方向に延在するように磁性材が設けられているので、便器上面部材を回動させたときにヒンジ部が支持体から離脱することなく、支持体周方向にスムーズに回動する。なお、この便器上面設備にあっても、便器上面部材を支持体に対し容易に着脱できる。
【0018】
請求項5の便器上面設備によるとヒンジ部の左右方向の位置決めがなされる。
【0019】
請求項6の便器上面設備によると、ヒンジ部に磁石を挟んで対峙するように少なくとも2個の金属片が設けられているので、ヒンジ部が支持体に対ししっかりと保持される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)図は第1の実施の形態に係る便器上面設備を示す斜視図、(b)図は(a)図及び(c)図のB−B線に沿う断面図、(c)図は(b)図のC−C線断面図、(d)図は(b)図のD−D線断面図、(e)図は(b)図のE−E線断面図、(f)図は(b)図のF−F線断面図である。
【図2】図1の便器上面設備の分解斜視図である。
【図3】図1の便器上面設備の回動動作を示す分解斜視図である。
【図4】(a)図は第2の実施の形態に係る便器上面設備を示す斜視図、(b)図は(a)図及び(c)図のB−B線に沿う断面図、(c)図は(b)図のC−C線断面図、(d)図は(b)図のD−D線断面図である。
【図5】図4の便器上面設備の分解斜視図である。
【図6】図4の便器上面設備の回動動作を示す断面図である。
【図7】従来の便器上面設備の断面図である。
【図8】別の従来の便器上面設備の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0022】
<第1の実施の形態>
第1図〜第3図は第1の実施の形態を示すものであり、便座10及び便蓋20の基端部が支持体30に対し、磁石35又は14と鉄片13又は23との間の磁気的吸引力によって支持されている。
【0023】
人が腰掛ける(着座する)ための便座10は、第2図の通り、便鉢(図示略)の上面周部を周回する環形状の本体部11と、該本体部11の後縁から後方に突出したヒンジ部12とを有する。ヒンジ部12は、本体部11の後縁の左端側及び右端側にそれぞれ設けられている。なお、ヒンジ部12は、本体部11の後縁の左端及び右端よりも若干(後述の便蓋20のヒンジ部22の左右幅分だけ)、該後縁の左右幅方向の中央側に寄った位置に設けられている。各ヒンジ部12は、軸心方向を該便座10の左右幅方向(便器の左右幅方向すなわち便座10に使用姿勢にて着座した人にとって左右方向)とした円柱形である。
【0024】
このヒンジ部12,12の相対峙する内向きの端面すなわち便座10の左右幅方向中央側の端面12a,12a部分に、磁石と磁気的に吸引する強磁性片としての鉄片13が埋設されている。この実施の形態では、鉄片13は円板形であり、円板の板面を端面12aと平行にして、且つ円板の中心がヒンジ部12の軸心に位置するように設置されている。
【0025】
円柱形ヒンジ部12の外向きの端面すなわち端面12aと反対側の端面12b側に磁石(この実施の形態では永久磁石)14が埋設されている。この磁石14は円柱形であり、円柱の軸心がヒンジ部12の軸心と同軸となるように設けられている。磁石14は、一端面側がN極となり、他端面側がS極となるように着磁されている。
【0026】
この便座10は、鉄片13及び磁石14を除いてポリプロピレン等の合成樹脂製とされているが、材料はこれに限定されない。また、便座ヒータやゴム足などの付属品が設けられてもよい。
【0027】
便座10に重なって便器上に倒伏して便鉢に蓋をするための便蓋20は、蓋板状の本体部21と、該本体部21の後縁から後方に突出したヒンジ部22とを有する。ヒンジ部22は、本体部21の後縁の左端部及び右端部にそれぞれ設けられている。各ヒンジ部22は、軸心方向を該便蓋20の左右幅方向とした短い円柱形である。このヒンジ部22の直径は前記ヒンジ部12の直径と同一である。
【0028】
ヒンジ部22,22の相対峙する内向きの端面すなわち便蓋20の左右幅方向中央側の端面22a,22a部分に、磁石と磁気的に吸引する強磁性片としての鉄片23が埋設されている。この実施の形態では、鉄片23は円板形であり、円板の板面を端面22aと平行にして、且つ円板の中心がヒンジ部22の軸心に位置するように設置されている。
【0029】
この便蓋20は、鉄片23を除いてポリプロピレン等の合成樹脂製とされているが、材料はこれに限定されない。
【0030】
支持体30は、便器の左右幅方向に延在しており、その延在方向の中央部には、上方に突出する凸部31が設けられている。凸部31の便器左右幅方向の長さは、ヒンジ部12,12間の距離と略同一である。
【0031】
この凸部31の左側及び右側には、それぞれ支持体30の長手方向すなわち便器の左右幅方向に延在する半円筒形の凹条32が設けられている。この半円筒形状の凹条32の曲率半径は、ヒンジ部12,22の外周円の曲率半径と同一である。ヒンジ部12,22はこの凹条32に係合している。便座10及び便蓋20が起倒回動するときには、ヒンジ部12,22の外周面と凹条32の半円筒面とが摺動する。
【0032】
支持体30の下端部からは、便器前方側及び後方側にそれぞれフランジ部33,34が延出しており、フランジ部34に設けられたボルト孔(図示略)に挿通されたボルト(図示略)によって支持体30が便器に固定される。これらのフランジ部33,34の少なくとも一方は、省略されてもよい。
【0033】
凸部31の便器左右幅方向の両側の端面31a,31a部分に磁石(この実施の形態では永久磁石)35が埋設されている。磁石35は磁石14と同様に円柱形であり、円柱の軸心が磁石14と同軸となるように配置されている。磁石35は、一端面側がN極となり、他端面側がS極となるように着磁されている。磁石14のNSの方向と磁石35のNSの方向は同一であることが望ましい。
【0034】
第1図(a)及び第3図の通り、ヒンジ部12の内向きの端面12aを凸部31の端面31aに対面させ、ヒンジ部12の外向きの端面12bにヒンジ部22の内向きの端面22aを対面させ、且つヒンジ部12,22の外周面を凹条32に係合させるようにして便座10及び便蓋20が支持体30に支持されている。そして、磁石35と鉄片13とが磁気的吸引力により引き合い、磁石14と鉄片23とが磁気的吸引力により引き合うことにより、便座10及び便蓋20が支持体30に保持される。
【0035】
便蓋20を上方に引くことにより該便蓋20を支持体30から取り外すことができ、さらに便座10を上方に引くことにより、該便座10を支持体30から取り外すことができる。取り外した便座10、便蓋20は第2図のようにして簡単に支持体30に再装着することができる。
【0036】
便座10及び便蓋20は、第3図の矢印a,bの通り起倒方向に回動可能である。このように便座10、便蓋20が回動する場合、ヒンジ部12,22の外周面が凹条32と摺動する。便座10のみが回動する場合には端面12a,31a及び端面12b,22aがそれぞれ摺動し、便蓋20のみが回動する場合には、端面12b,22aが摺動する。
【0037】
なお、左側及び右側の端面12a,31aがそれぞれ摺動し、左側及び右側の端面12bと端面22aとがそれぞれ摺動することが望ましいが、製作上の誤差や、部材の熱膨張などを考慮すると、左右いずれか一方の端面12a,31a間及び左右いずれか一方の端面12b,22a間にそれぞれ若干(例えば1〜2mm程度)の隙間があくのが好ましい。ただし、端面同士の間に、弾力性と高摺動性を兼ね備えたパッキンを介在させ、上記の隙間を埋めるようにしてもよい。
【0038】
この便器上面設備においては、便蓋20のヒンジ部22には鉄片23が埋設されているので、磁石14をヒンジ部22に埋設する場合に比べてヒンジ部22の重量が軽減され、便蓋20の着脱が容易である。また、便座10のヒンジ部12に、鉄片13を埋設し、この鉄片13と引き合う磁石35を支持体30に設けているので、便座20の重量も軽減され、便座20の着脱も容易である。
【0039】
鉄片は磁石よりも安価であるので、鉄片を用いることにより便器上面設備のコストダウンを図ることができる。
【0040】
<第2の実施の形態>
第4図〜第6図は第2の実施の形態を示すものであり、便座40及び便蓋50の基端部が支持体60に鉄片43,44,53,54と磁石68との間の磁気的吸引力によって支持されている。
【0041】
便座40は、第5図の通り、便鉢の上面周部を周回する環形状の本体部41と、該本体部41の後縁から後方に突出したヒンジ部42とを有する。ヒンジ部42は、本体部41の後縁の中央部を挟んで左側及び右側にそれぞれ設けられている。なお、ヒンジ部42は、本体部41の後縁の左端及び右端よりも所定距離離隔した位置に設けられている。
【0042】
第4図(d)の通り、各ヒンジ部42は、半割円筒形であり、この円筒の軸心方向を該便座40の左右幅方向としている。各ヒンジ部42の周方向の一端側(基端側)が本体部41の後縁に連なっている。各ヒンジ部42の先端側及び基端側(本体部41側)にそれぞれ、磁石と磁気的に吸引する強磁性片としての鉄片43,44が埋設されている。この実施の形態では、鉄片43,44は小板形であり、板面をヒンジ部42の内周面に沿わせている。この便座40は、鉄片43,44を除いてポリプロピレン等の合成樹脂製とされているが、材料はこれに限定されない。また、便座ヒータやゴム足などの付属品が設けられてもよい。
【0043】
便蓋50は、蓋板状の本体部51と、該本体部51の後縁から後方に突出したヒンジ部52とを有する。ヒンジ部52は、本体部21の後縁の左端近傍部及び右端近傍部にそれぞれ設けられている。各ヒンジ部52は、半円弧状であり、軸心方向を該便蓋50の左右幅方向としている。各ヒンジ部52の周方向の一端側(基端側)が本体部51の後縁に連なっている。
【0044】
ヒンジ部52の先端側及び基端側(本体部51側)に、それぞれ、磁石と磁気的に吸引する強磁性片としての鉄片53,54が埋設されている。この実施の形態では、鉄片53,54は小板形であり、板面をヒンジ部52の内周面に沿わせている。この便蓋50は、鉄片53,54を除いてポリプロピレン等の合成樹脂製とされているが、材料はこれに限定されない。
【0045】
支持体60は、便器の左右幅方向に延在する略円柱状のコラム部61と、該コラム部61の下面部の前部に連なる基台状部66と、該基台状部66の下部から前方に延出するフランジ部62及び後方に延出するフランジ部63と、コラム部61の前面から頂面及び後面を経て下面部にまで周方向に延在する案内溝64,64及び案内溝65,65と、コラム部61内に埋設された磁石68とを備えている。
【0046】
案内溝64,64は、コラム部61の左右両端近傍に設けられており、案内溝65,65は、コラム部61の各案内溝64,64よりも中央部側に位置している。
【0047】
案内溝64,64は、ヒンジ部52,52を案内するためのものであり、案内溝65,65はヒンジ部42,42を案内するためのものである。
【0048】
磁石68は、短い円柱形であり、コラム部61の軸心位置且つ各案内溝64,64,65,65の位置にそれぞれコラム部61と同軸状に配置されている。円柱形の磁石68は、一端側がN極、他端側がS極となるように着磁されている。各磁石68のNSの方向は同一であることが望ましい。
【0049】
第5図の通り、ヒンジ部42を案内溝65に係合させるようにして便座40が支持体60に連繋され、ヒンジ部52を案内溝64に係合させるようにして便蓋50が支持体60に連繋されることにより、第4図の便器上面設備が構成される。ヒンジ部42,52に設けられた鉄片43,44,53,54がそれぞれ磁石68と引き付け合うことにより、ヒンジ部42,52が支持体60に回動可能に保持される。
【0050】
1対の鉄片43,44及び鉄片53,54がそれぞれ磁石68を挟んで反対側に位置し、且つ鉄片43,44が磁石68から等距離に位置し、鉄片53,54が磁石68から等距離に位置しているので、ヒンジ部42,52の先端側(鉄片43,53側)と基端側(鉄片44,54側)がそれぞれ同一の力で各案内溝65,64に押し付けられる。この結果、便蓋50は、第4図(c)の倒伏状態と第6図(a)の起立姿勢との間でスムーズに回動する。また、便座40も、第4図(d)の倒伏状態と第6図(b)の起立姿勢との間でスムーズに回動する。便座40及び便蓋50が倒伏回動するとき及び起立回動するときのいずれにおいても、ヒンジ部42,52は案内溝65,64に沿ってスムーズに摺動し、案内溝65,64から離反して外れることはない。
【0051】
鉄片43,44又は鉄片53,54と磁石68との磁気的吸引力を上回る力で便座40又は便蓋50のヒンジ部42又は52にコラム部61から離反する方向に力を加えることにより、便座40又は便蓋50を取り外すことができる。支持体60から取り外した便座40や便蓋50は、第5図のようにして容易に支持体60に再装着することができる。
【0052】
この実施の形態では、ヒンジ部42,52がそれぞれの案内溝65,64に係合しており、ヒンジ部42,52の左右方向の位置ズレが確実に防止される。
【0053】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、上記実施の形態では支持体が独立した1個の部材となっているが、便座ボックスやロータンクカバーの一部として設けられてもよい。
【0054】
また、第4図〜第6図の実施の形態では、1個のヒンジ部42又は52の先端側及び基端側に合計2個の鉄片43,44又は鉄片53,54が設けられているが、鉄片43,44同士の間又は鉄片53,54同士の間にさらに1個又は複数個の鉄片が設けられてもよい。また、鉄片はヒンジ部42又は52の先端側から基端側まで連続して設けられてもよい。
【0055】
上記実施の形態では磁石と吸引しあうように鉄片を設けているが、鉄片の代りに磁石を用い、磁石同士の吸引力でヒンジ部を支持体に保持させてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では永久磁石を用いているが、電磁石を用いてもよい。
【0057】
なお、第1図〜第3図の実施の形態において、磁石14又は35を支持体30又はヒンジ部12に対し回転可能に埋設してもよい。そのためには、例えば磁石14又は35をベアリングを介して支持体30又はヒンジ部12内に設置すればよい。
【符号の説明】
【0058】
10,40 便座
12,42 ヒンジ部
20,50 便蓋
22,52 ヒンジ部
30,60 支持体
14,35,68 磁石
13,23,43,44,53,54 鉄片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座又は便蓋よりなる便器上面部材を支持体に対し起倒方向回動可能に取り付けてなる便器上面設備であって、便器上面部材のヒンジ部が磁石の磁力によって支持体に対し保持されている便器上面設備において、
該ヒンジ部に、ヒンジ部の回動軸心線と垂直な第1の端面が設けられ、支持体に該第1の端面と対面する第2の端面が設けられ、
第1の端面及び第2の端面の一方に磁石が設けられ、他方に該磁石と磁気的に吸引する磁性材が設けられており、
該磁石と該磁性材との吸引力によりヒンジ部が支持体に保持されていることを特徴とする便器上面設備。
【請求項2】
請求項1において、支持体の上面の中央部に凸部が設けられ、該凸部の左右両側に便座のヒンジ部が配置され、
該便座のヒンジ部の左右の外側にそれぞれ便蓋のヒンジ部が配置され、
該凸部と便座のヒンジ部とが磁石によって磁気的に吸引し合い、便座のヒンジ部と便蓋のヒンジ部とが磁石によって磁気的に吸引し合っていることを特徴とする便器上面設備。
【請求項3】
請求項2において、
前記支持体の凸部の端部に磁石が設けられ、便座のヒンジ部の便座幅方向の中央側を向く内向き部に金属片が設けられ、外向き部に磁石が設けられ、
便蓋のヒンジ部の内向き部に金属片が設けられていることを特徴とする便器上面設備。
【請求項4】
便座又は便蓋よりなる便器上面部材を支持体に対し起倒方向回動可能に取り付けてなる便器上面設備であって、便器上面部材のヒンジ部が磁石の磁力によって支持体に対し保持されている便器上面設備において、
該ヒンジ部は、便器上面部材が回動するときに支持体の外周面に沿って摺動するように支持体に係合しており、
該支持体の内部に磁石が設けられ、該ヒンジ部の周方向の複数箇所に、又は周方向に延在するように、該磁石と磁気的に吸引する磁性材が設けられていることを特徴とする便器上面設備。
【請求項5】
請求項4において、前記ヒンジ部が半円弧形状であり、支持体には、ヒンジ部の摺動を案内する案内溝が設けられていることを特徴とする便器上面設備。
【請求項6】
請求項5において、支持体の上部は軸心方向が便器の左右幅方向に延在する円柱形のコラム部となっており、該コラム部の軸心位置に円柱状の磁石がコラム部と同軸状に設けられており、
ヒンジ部の少なくとも周方向の一端側及び他端側にそれぞれ金属片が設けられていることを特徴とする便器上面設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−167238(P2011−167238A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31433(P2010−31433)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】