便器排水路
【課題】水洗式便器に採用することによって、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる便器排水路を提供する。
【解決手段】便器排水路は、水洗式便器の便鉢部10の下流側に連通する。下流側に向けて上昇しており、垂直方向の下方視において、下流端部32の下側面33の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路30と、この上昇流路30の下流端部32に連続し、下流側に向けて下降した下降流路40とを備えている。
【解決手段】便器排水路は、水洗式便器の便鉢部10の下流側に連通する。下流側に向けて上昇しており、垂直方向の下方視において、下流端部32の下側面33の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路30と、この上昇流路30の下流端部32に連続し、下流側に向けて下降した下降流路40とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器排水路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の便器排水路が開示されている。この便器排水路は、便鉢部の下流側に連通し、下流側に向けて上昇した上昇流路を備えている。この上昇流路は下流端部の下側面が略水平に形成されている。また、この便器排水路は、上昇流路の下流端部に連続し、下流側に向けて下降した下降流路を備えている。下降流路は上部に段部を設けている。この段部は、上昇流路の下流端部の下側面から垂直下方に延びた垂直面と、この垂直面の下端から水平方向に延びた水平面とを有している。
【0003】
この便器排水路では、上昇流路の下流端部の下側面を乗り越えた洗浄水が下降流路の段部の水平面に衝突し、下降流路の上昇流路側の内壁面から剥がれるように飛散する。飛散した洗浄水は下降流路を塞ぐように水膜を形成する。水膜が下降流路を塞ぐことに起因して、便器排水路内にサイホン作用を発生させることができる。このため、この便器排水路を採用した水洗式便器は、便器洗浄の際、便器排水路内にサイホン作用を発生させ、汚物等を良好に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−324367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の便器排水路では、段部が下降流路の上部に設けられているため、大流量の洗浄水が段部の水平面に勢いよく衝突しないと、飛散した洗浄水によって下降流路を塞ぐような水膜を形成することができない。このため、便器洗浄の初期段階では、便器排水路内に流入する洗浄水の流量が少ないため、段部の水平面に衝突して飛散する洗浄水によって下降流路を塞ぐことができないおそれがある。つまり、便器洗浄の初期段階に供給される洗浄水は、サイホン作用を発生させるために利用することができないおそれがある。このため、便器排水路内のサイホン作用の発生が遅くなるおそれがある。また、洗浄水の節水化のため、洗浄水の水量を少なくすると、段部の水平面に衝突する洗浄水の流量が減少し、水勢も弱まる。この場合も、段部の水平面に衝突して飛散する洗浄水が形成する水膜によって下降流路を塞ぐことができないおそれがある。さらに、下降流路の上部に段部が設けられているため、サイホン作用が発生した後に下降流路を流下する洗浄水の流れが下降流路の上流側で乱れ、洗浄水が下降流路内をスムーズに流れず、汚物等の排出を良好に行うことができないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、水洗式便器に採用することによって、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる便器排水路を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の便器排水路は、水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
下流側に向けて上昇しており、垂直方向の下方視において、下流端部の下側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路と、
この上昇流路の下流端部に連続し、下流側に向けて下降した下降流路とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この便器排水路では、垂直方向の下方視において、上昇流路の下流端部の下側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている。このため、上昇流路の下流端部の下側面の左右端部であって、中央部に比べて下流側に延びている端部に沿って洗浄水が流れる。つまり、洗浄水は、直ぐに垂直下方に流れ落ちず、下降流路の内周面に沿った水平方向の成分を有する流れを形成することができる。洗浄水が水平方向の成分を有して下降流路の内周面に沿って流れるため、洗浄水は下降流路の内周面の全周に亘って流下する。このため、下降流路を洗浄水によって塞ぎ易くすることができる。つまり、下降流路の内周面に内側に突出した絞り部を設け、この絞り部の上方から流下した洗浄水が絞り部の上面に衝突することによって、洗浄水が飛散して水膜を形成するようにした場合、下降流路の内周面の全周に亘って洗浄水が流下するため、下降流路の内周面の全周から下降流路の中心に向かって洗浄水を飛散させることができる。このため、少ない洗浄水でも下降流路を塞ぐように水膜を形成することができ、サイホン作用を良好に発生させることができる。また、下降流路の上部(上流側)に洗浄水を飛散させる段部を設けないため、サイホン作用が発生した後、下降流路内を洗浄水がスムーズに流れ、汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0009】
したがって、第1発明の便器排水路を採用した水洗式便器は、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0010】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、下流端部の上流側近傍の下側面が中央部を上方に突出した凸面であり得る。この場合、上昇流路の下流側端部の上流側近傍において、下側面の左右端部は中央部に比べて緩やかな昇り傾斜にすることができる。また、上昇流路の上流端部の上流側近傍において、下側面の左右端部に水平面を形成しない。このため、上昇流路の上流端部の左右端部に向けて上昇流路を洗浄水が良好に流れ、便器洗浄の初期段階から洗浄水を下降流路の内周面に沿って流すことができる。よって、便器洗浄の初期段階に下降流路を塞ぐ水膜を形成することができ、サイホン作用を早期に発生させることができる。つまり、少ない洗浄水でもサイホン作用を良好に発生することができ、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0011】
前記下降流路は、前記上昇流路の下流端部の下側面の左右端部から斜め下方に向けて延びており、内周面に沿って内側に突出した棚部を有し得る。この場合、上昇流路の下流端部の下側面の左右端部から棚部に沿って洗浄水を流すことができる。このため、便器洗浄の初期段階、つまり、便器排水路内に流入する洗浄水の流量が少ないときでも、洗浄水を下降流路の内周面の全周に沿って確実に流すことができる。よって、少ない洗浄水でも水膜を形成して下降流路を塞ぐことができ、サイホン作用を発生させて便器洗浄を良好に行うことができる。
【0012】
第2発明の便器排水路は、水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
下流側に向けて上昇しており、垂直方向の上方視において、上流端部の上側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路を備えていることを特徴とする。
【0013】
この便器排水路では、垂直方向の上方視において、上昇流路の上流端部の上側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている。このため、上昇流路の上流端部の上側面の左右端部であって、中央部に比べて下流側に延びている端部に沿った洗浄水の流れを形成することができる。これにより、上昇流路の入り口で洗浄水の流れを整流することができ、上昇流路内へ洗浄水等が流れ込み易くすることができる。このため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0014】
したがって、第2発明の便器排水路を採用した水洗式便器も、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0015】
第3発明の便器排水路は、水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
前記便鉢部と下流側に向けて上昇した上昇流路とを連通しており、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、前記上昇流路の上流端部の上流側近傍の上側面が中央部を下方に突出した凸面である導入路を備えていることを特徴とする。
【0016】
この便器排水路では、上昇流路の上流端部の上流側近傍において、導入路の上側面の左右端部が中央部に比べて高い位置に形成されている。このため、導入路から上昇流路の上流端部にかけて、左右端部を通過する洗浄水等は、便鉢部から上昇流路へ流れ込む際の流れ方向の変化が少なくてすむ。よって、導入路から上昇流路の上流端部にかけて、左右端部を洗浄水等が勢いよく通過し、便鉢部から上昇流路へ洗浄水等が流れ込み易くなるため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。また、導入路の中央部に比べて高い位置に形成された左右端部に空気が集まる。左右端部に上方に集まった空気は、導入路内に流入する洗浄水が衝突し、拡散するため、空気が砕ける音を低減させることができる。
【0017】
したがって、第3発明の便器排水路を採用した水洗式便器も、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0018】
前記上昇流路の上側面は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型であり得る。上昇流路の上側面の近傍は洗浄水の流速が遅くなるため、この領域を山型にすることによって、その領域の流路面積を小さくして洗浄水の流速を速くし、洗浄水の淀みを防止することができる。このため、上昇流路内の洗浄水を良好に流すことができ、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の水洗式便器の断面図である。
【図2】実施例1の水洗式便器の平面図である。
【図3】図1の矢視A−A断面図である。
【図4】図1の矢視B−B断面図である。
【図5】図1の矢視C−C断面図である。
【図6】図1の矢視D−D断面図である。
【図7】(A)実施例1の上昇流路の断面図である。(B)図7(A)の矢視E−E〜I−I断面図である。(C)図7(A)の矢視J−J断面図である。
【図8】図1の矢視K−K断面図である。
【図9】図1の矢視L−L断面図である。
【図10】図1の矢視P−P断面図である。
【図11】図1の矢視Q−Q断面図である。
【図12】図1の矢視R−R断面図である。
【図13】図1の矢視R−Rの反対側から見た断面図である。
【図14】実施例2の水洗式便器の断面図である。
【図15】図14の矢視W−W断面図である。
【図16】図14の矢視X−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1〜第3発明の便器排水路を備えた水洗式便器を具体化した実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<実施例1>
実施例1の水洗式便器は、図1及び図2に示すように、便器本体1、便器本体1の後部上面に載置したタンク本体2、タンク本体2に貯留した洗浄水を便器本体1に吐水する分配管3、及び便器本体1の排水口40Aと便器本体1が設置されるトイレルームの床面に開口する図示しない排水管の流入口とを接続する接続配管4を有している。接続配管4は、排水口40Aの直下に排水口40Aから流下した洗浄水が衝突し、飛散する絞り部5を形成している。この絞り部5の上面に洗浄水が衝突して飛散することによって水膜形成領域Sに水膜が形成される。これによって、便器排水路内にサイホン作用を発生させることができる。
【0022】
便器本体1は、便鉢部10、導入路20、上昇流路30、及び下降流路40を備えている。導入路20、上昇流路30、下降流路40及び接続配管4内の流路が便器排水路を構成している。
【0023】
便鉢部10は上部内周縁にリム通水路11を形成している。分配管3は、タンク本体2の排出口を挿入する流入口を有した流入管3Aと、流入管3Aの下部で分岐した第1吐水管3B及び第2吐水管3Cとを有している。便器洗浄を実行すると、タンク本体2に貯留した洗浄水を第1吐水管3Bからリム通水路11に沿って吐水するとともに、第2吐水管3Cから便鉢部10の後部に向けて吐水する。第1吐水管3Bからリム通水路11に沿って吐水した洗浄水は、リム通水路11上を流れつつ、便鉢部10の表面に流れ落ちる。また、第1吐水管3Bから吐水する洗浄水の水量は第2吐水管3Cから吐水する洗浄水の水量よりも多いため、便鉢部10の上方から見ると、便鉢部10内には反時計回りに流れる旋回流FLが形成される。
【0024】
導入路20は、図1及び図3〜図6に示すように、便鉢部10の下端部に連続しており、管状に形成されている。導入路20は、便鉢部10の下端部から便器本体1の後方に向けて下方に傾斜している。つまり、導入路20は上昇流路30の上流端部31へ向けて下方に傾斜している。導入路20の下流端部と上昇流路30の上流端部31とは連続して形成されている。導入路20及び上昇流路30の上流端部31は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、左下コーナー部20L、31BLの方が右下コーナー部20R、31BRに比べ曲率の小さい緩やかな曲がり具合のR面に形成されている。これに伴い、右側面21C、31Cが直線的に立ち上がっている。
【0025】
洗浄水は、便鉢部10内で反時計回りに流れる旋回流FLを形成して導入路20内に流入する。この際、左下コーナー部20Lが緩やかな曲がり具合のR面であるため洗浄水は導入路20内にスムーズに流入する。導入路20内に流入した洗浄水は、曲率の大きい曲がり具合がきついR面の右下コーナー部20Rから直線的に立ち上がっている右側面21Cに衝突して排水路の下流方向への流れに変化する。このように、導入路20によって、便鉢部10内で旋回していた洗浄水の流れを排水路の下流方向の流れに変化して、かつ下流方向の流れを加速し、整流化することができる。
【0026】
上昇流路30の上流端部31の上流側近傍の導入路20は、図4及び図5に示すように、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上側面31Tが中央部31Mを下方に突出させた凸面に形成されている。つまり、上昇流路30の上流端部31の上流側近傍において、導入路20の上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて高い位置に形成されている。このため、導入路20から上昇流路30の上流端部31にかけて、左右端部31UL、31URを通過する洗浄水等は、便鉢部10から上昇流路30へ流れ込む際の流れ方向の変化が少なくてすみ、また、洗浄水の流れを整流化することができる。よって、導入路20から上昇流路30の上流端部31にかけて、上側面31Tの左右端部31UL、31URを洗浄水等が勢いよく通過し、便鉢部10から上昇流路30へ洗浄水等が流れ込み易くなるため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0027】
また、上昇流路30の上流端部31の上流側近傍において、導入路20の上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて高い位置に形成されているため、左右端部31UL、31URに空気が集まる。左右端部31UL、31URに集まった空気は、導入路20に流入する洗浄水が衝突し、拡散するため、空気がはじける音を低減させることができる。
【0028】
また、上昇流路30の上流端部31の近傍は、断面形状が横長の略矩形である。上昇流路30の上流端部31を境にして、洗浄水の排水方向が下方向から上方向に変化するため、上側面31T側に流速の速い洗浄水が流れる。上昇流路30の上流端部31の近傍の排水路の断面形状において、上下寸法を大きくすると、下側面31B側の洗浄水の流速が遅くなり、下側面31B側の近傍の整流化された洗浄水が淀んでしまうおそれがある。そこで、上昇流路30の上流端部31の近傍においては、上下方向の寸法を小さくして整流化された洗浄水が淀まないようにするとともに、流量を確保するために横方向の寸法を大きく形成している。このため、上昇流路30の上流端部31の近傍は断面形状が横長の略矩形に形成している。
【0029】
上述したように、曲率の大きい曲がり具合のきついR面の右下コーナー部20Rから直線的に立ち上がった右側面21Cによって、導入路20内で洗浄水の流れを排水路の下流方向に変化させ、かつ下流方向への流れを加速することによって最適化を図ることができる。
【0030】
さらに、上昇流路30の上流端部31は、図6に示すように、垂直方向の上方視において、上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて下流側(図6において左側)に延びている。つまり、上昇流路30の上流端部31は、垂直方向の上方視において、中央部31Mが上流側に凹んだ湾曲状に形成されている。このため、上昇流路30の上流端部31の上側面31Tの左右端部31UL、31URに沿って洗浄水等の流れを形成することができる。つまり、導入路20が左右端部31UL、31URにおいて、下流側に延びていることになり、導入路20に連続して洗浄水の流れを整流することができ、上昇流路30内へ洗浄水等が流れ込み易くすることができる。このため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0031】
上昇流路30は上流端部31から便器本体1の後方(下流側)に向けて上昇している。上昇流路30は、図1、図7(A)〜(C)及び図8に示すように、下側面33、下側面33の左右両端から立ち上がる左右側面34L、34R、及び左右側面34L、34Rの上端を連結する上側面35に囲まれて形成されている。
【0032】
上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部31より下流側において上側面35が中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型に形成されている。これによって、上昇流路30の上側面35の近傍における洗浄水の流速が遅くなる領域において、流路面積を小さくすることによって、洗浄水の流速を速くして洗浄水の淀みを防止することができる。このため、上昇流路30内の洗浄水を良好に流すことができ、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0033】
また、山型に形成された上側面35は、上流端部31の下流側近傍において、中央部から左右下方に延びて内側に膨らんだ傾斜面に傾斜している。上流端部31の下流側近傍では、洗浄水の流れ方向が下方向から上方向に変化した直後であるため、上側面35の近傍において洗浄水が淀み易い。このため、この淀み易い領域の上側面35を内側に膨らんだ傾斜面にすることによって、洗浄水の流速をさらに速くし、整流化された洗浄水の淀みを防止することができる。これによっても、上昇流路30内の洗浄水が良好に流すことができ、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0034】
上昇流路30の下側面33は下流側に向けて徐々に横幅を広げている。上昇流路30の下側面33の近傍では上流側より下流側において洗浄水の流速が速い。このため、上昇流路30の下側面30を下流端に向けて徐々に横幅を広げることによって、洗浄水の流速が速い領域の流路面積を拡大し、大流量の洗浄水が上昇流路30を流れるようにしている。
【0035】
また、上昇流路30の下流端部32の上流側近傍の下側面33は、図8に示すように、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、中央部33Mが上方に突出した凸面に形成されている。このため、上昇流路30の下側面33は、図7(B)に示すように、中間部から下流側に向けて徐々に中央部が上方に突出した凸面に形成されている。
【0036】
また、上昇流路30は、図9に示すように、垂直方向の下方視において、下流端部32の下側面33の左右端部33L、33Rが中央部に比べて下流側に延びている。このため、上昇流路30の下流端部32の下側面33の左右端部33L、33Rに沿って流れた洗浄水が下流端部32の左右端部を超えて、下降流路40の内周面に沿った水平方向の成分を有する流れを形成する。洗浄水は、水平方向の成分を有して下降流路40の内周面に沿って流れるため、下降流路40の内周面の全周に亘って流下する。このため、下降流路40の内周面の全周から絞り部5に洗浄水が流下し、絞り部5の上面に衝突して、下降流路40の内周面の全周から下降流路40の中心に向かって洗浄水を飛散させることができる。
【0037】
このように、上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、下流端部32の上流側近傍の下側面33が中央部33Mに比べて左右端部33L、33Rを緩やかな昇り傾斜にすることができる。また、上昇流路30の下流端部32の上流側近傍において、下側面33の左右端部33L、33Rに水平面を形成しない。このため、便器洗浄が開始されると、洗浄水は上昇流路30の下流端部32の左右端部33L、33Rに向けて上昇流路30を洗浄水が良好に流れ、洗浄水は下降流路40の内周面の全周に亘って流下する。このため、便器洗浄の初期段階に、下降流路40の内周面の全周から流下した洗浄水が接続配管4の絞り部5に衝突して飛散することによって、水膜形成領域Sに水膜を形成し、排水路内にサイホン作用を早期に発生させることができる。また、少ない洗浄水でも下降流路40を塞ぐように水膜を形成することができ、サイホン作用を良好に発生させることができる。さらに、下降流路40の上部(上流側)に洗浄水を飛散させる段部を設けないため、サイホン作用が発生した後、下降流路40内を洗浄水がスムーズに流れ、汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0038】
したがって、実施例1の便器排水路を採用した水洗式便器は、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0039】
下降流路40は、図1、及び図10〜図13に示すように、上昇流路30の下流側に連続して形成されている。下降流路40は垂直下方に延びている。つまり、下降流路40は下流側に向けて下降している。下降流路40は下端部に排出口40Aを形成している。排出口40Aは、接続配管4の上流側の接続口に挿入され、接続配管4を介してトイレルームの床面に開口する排水管の流入口に連通することができる。
【0040】
下降流路40は、上昇流路30の下流端部32の下側面33の左右端部33L、33Rから斜め下方に向けて延びた棚部41を有している。この棚部41は、下降流路40の内周面に沿って内側に突出し、内側上方を向いた傾斜面から形成されている。棚部41が下降流路40の内周面に沿って内側に突出しているため、上昇流路30の下流端部32の下側面33の左右端部33L、33Rを乗り越えた洗浄水が棚部41に沿って流れ、下降流路40の上昇流路30から離れた方向に洗浄水を送ることができる。便器洗浄の初期段階、つまり、便器排水路内に流入する洗浄水の流量が少ないときから、洗浄水を下降流路40の内周面の全周に沿って確実に流すことができる。棚部41から下降流路40内に流れ落ちた洗浄水は、接続配管4に形成した絞り部5に衝突して飛散する。これによって、少ない洗浄水でも水膜形成領域Sに水膜が形成され、排水路内にサイホン作用を早期に発生させることができ、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0041】
また、棚部41が内側上方を向いた傾斜面からなるため、棚部41によって下降流路40の流路面積が小さくなるが、その変化を緩やかにすることができる。このため、棚部41による汚物等の詰まりを防止することができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0042】
また、棚部41は上昇流路30の下流端部32の下側面33から下降流路40の内周面に沿って斜め下方に延びている。このため、上昇流路30の下流端部32の下側面33から棚部41に流れる洗浄水が少なくても下降流路40の内周面に沿って上昇流路30とは反対側の下降流路40の内周面まで洗浄水を送ることができる。つまり、少ない洗浄水でも下降流路40の内周面の全周から洗浄水が流れ落ち、水膜形成領域Sに水膜を確実に形成することができる。よって、少ない洗浄水で早期にサイホン作用を発生させることができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0043】
また、棚部41は下降流路40の内周面に沿って、上昇流路30の反対方向に向けて幅が徐々に細くなっている。棚部41は、排水路内にサイホン作用が発生し、下降流路40内を洗浄水と共に汚物等が流れる際には抵抗となる。このため、棚部41の幅を上昇流路30の反対方向に向けて徐々に細くすることにより、早期にサイホン作用を発生させることができるとともに、洗浄水等の流れの抵抗を減少し、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0044】
<実施例2>
実施例2の水洗式便器は、図14に示すように、便器排水路の下降流路140の下流端に連通し、便器本体101の後方に向けて横方向に延びる横引き流路146を有している。また、この水洗式便器は、下降流路140の後側面144の外周面の中央部に垂直方向に延びて便器本体101の後部を補強する補強壁150を有している。他の構成は、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0045】
横引き流路146は下降流路140の下流端に連続して形成されている。横引き流路146の下流端に設けられた排出口140Aは便器本体101の後方に向けて開口している。排出口140Aは、接続部材5の上流側の接続口に挿入され、接続部材5を介してトイレルームの壁面から引き出された排水管の流入口に連通することができる。
【0046】
この水洗式便器は、実施例1の水洗式便器に比べ、導入路の傾斜が急激に下降しており、上昇流路の傾斜が急激に上昇している。導入路20は、図15に示すように、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上昇流路30の上流端部31の上流側近傍の上側面31Tが中央部31Mを下方に突出させた凸面に形成されている。つまり、上昇流路30の上流端部31の上流側近傍において、導入路20の上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて高い位置に形成されている。このため、導入路20から上昇流路30の上流端部31にかけて、左右端部31UL、31URを通過する洗浄水等は、便鉢部10から上昇流路30へ流れ込む際の流れ方向の変化が少なくてすみ、また、洗浄水の流れを整流化することができる。よって、挿入路20から上昇流路30の上流端部31にかけて、上側面31Tの左右端部31UL、31URを洗浄水等が勢いよく通過し、便鉢部10から上昇流路30へ洗浄水等が流れ込み易くなるため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0047】
また、上昇流路30の上流端部31の近傍は、断面形状が横長の略矩形である。上昇流路30の上流端部31を境にして、洗浄水の排水方向が下方向から上方向に変化するため、上側面31T側に流速の速い洗浄水が流れる。上昇流路30の上流端部31の近傍の排水路の断面形状において、上下寸法を大きくすると、下側面31B側の洗浄水の流速が遅くなり、下側面31B側の近傍の整流化された洗浄水が淀んでしまうおそれがある。そこで、上昇流路30の上流端部31の近傍においては、上下方向の寸法を小さくして整流化された洗浄水が淀まないようにするとともに、流量を確保するために横方向の寸法を大きく形成している。このため、上昇流路30の上流端部31の近傍は断面形状が横長の略矩形に形成している。
【0048】
また、上昇流路30の上流端部31は、図16に示すように、垂直方向の上方視において、上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて下流側(図16において左側)に延びている。つまり、上昇流路30の上流端部31は、垂直方向の上方視において、中央部31Mが上流側に凹んだ湾曲状に形成されている。このため、上昇流路30の上流端部31の上側面31Tの左右端部31UL、31URに沿って洗浄水の流れを形成することができる。つまり、導入路20が左右端部31UL、31URにおいて、下流側に延びていることになり、導入路20に連続して洗浄水等の流れを整流することができ、上昇流路30内へ洗浄水等が流れ込み易くすることができる。このため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0049】
したがって、実施例2の便器排水路を採用した水洗式便器も、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0050】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、垂直方向の下方視において、上昇流路の下流端部の下側面の左右端部が中央部に比べて下流側に延びているが、左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びていればよい。
(2)実施例1及び2では、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上昇流路の下流端部の上流側近傍の下側面が中央部を上方に突出した凸面に形成されているが、水平面であってもよい。
(3)実施例1及び2では、下降流路が棚部を有しているが、棚部を有していなくてもよい。
(4)実施例1及び2では、垂直方向の上方視において、上昇流路の上流端部の上側面の左右端部が中央部に比べて下流側に延びているが、左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びていればよい。
(5)実施例1及び2では、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、導入路の上昇流路の上流端部の上流側近傍の上側面が中央部を下方に突出した凸面に形成されているが、水平面であってもよい。
(6)実施例1及び2では、上昇流路の上側面が山型であるが、山型でなくてもよい。
(7)実施例1及び2では、上昇流路を導入路の下流端部に連続して形成しているが、上昇流路を下流端部とは別体に形成して、導入路の下流端部に連結してもよい。
(8)実施例1及び2では、下降流路を上昇流路の下流側に連続して形成しているが、下降流路を上昇流路とは別体に形成して、上昇流路の下流側に連結してもよい。
(9)実施例1及び2では、便器本体の後部上面に載置したタンク本体に貯留した洗浄水を便器本体に供給する水洗式便器であるが、タンク本体を有さず、開閉弁を介して給水源から直接的に洗浄水を供給する水洗式便器であってもよい。
(10)実施例1及び2では、棚部が下降流路の内周面に沿って斜め下方に向けて延びているが、水平方向に延びていてもよい。
(11)実施例1及び2では、便鉢部の下端部と上昇流路の上流端部とを連結する導入路を備えているが、導入路を備えず、便鉢部の下端部に直接的に上昇流路の上流端部を連結してもよい。
(12)実施例1及び2では、便鉢部内に反時計回りに流れる旋回流を形成したが、洗浄水を時計回りに旋回させるものであってもよい。この場合、導入路の形状は実施例における形状を左右反転したものになる。
(13)実施例1及び2では、接続配管に絞り部を形成したが、下降流路に絞り部を形成してもよい。
(14)実施例1及び2では、水洗式便器はサイホン作用が発生するものであったが、各種洗浄方式の水洗式便器でよく、サイホン作用が発生しない水洗式便器であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…便鉢部
30…上昇流路
31…(上昇流路の)上流端部
31T…上側面
31UL、31UR…(上側面の)左右端部
31M…(上側面の)中央部
32…(上昇流路の)下流端部
33…下側面
33L、33R…(下側面の)左右端部
33M…(下側面の)中央部
35…(上昇流路の)上側面
40…下降流路
41…棚部
【技術分野】
【0001】
本発明は便器排水路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の便器排水路が開示されている。この便器排水路は、便鉢部の下流側に連通し、下流側に向けて上昇した上昇流路を備えている。この上昇流路は下流端部の下側面が略水平に形成されている。また、この便器排水路は、上昇流路の下流端部に連続し、下流側に向けて下降した下降流路を備えている。下降流路は上部に段部を設けている。この段部は、上昇流路の下流端部の下側面から垂直下方に延びた垂直面と、この垂直面の下端から水平方向に延びた水平面とを有している。
【0003】
この便器排水路では、上昇流路の下流端部の下側面を乗り越えた洗浄水が下降流路の段部の水平面に衝突し、下降流路の上昇流路側の内壁面から剥がれるように飛散する。飛散した洗浄水は下降流路を塞ぐように水膜を形成する。水膜が下降流路を塞ぐことに起因して、便器排水路内にサイホン作用を発生させることができる。このため、この便器排水路を採用した水洗式便器は、便器洗浄の際、便器排水路内にサイホン作用を発生させ、汚物等を良好に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−324367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の便器排水路では、段部が下降流路の上部に設けられているため、大流量の洗浄水が段部の水平面に勢いよく衝突しないと、飛散した洗浄水によって下降流路を塞ぐような水膜を形成することができない。このため、便器洗浄の初期段階では、便器排水路内に流入する洗浄水の流量が少ないため、段部の水平面に衝突して飛散する洗浄水によって下降流路を塞ぐことができないおそれがある。つまり、便器洗浄の初期段階に供給される洗浄水は、サイホン作用を発生させるために利用することができないおそれがある。このため、便器排水路内のサイホン作用の発生が遅くなるおそれがある。また、洗浄水の節水化のため、洗浄水の水量を少なくすると、段部の水平面に衝突する洗浄水の流量が減少し、水勢も弱まる。この場合も、段部の水平面に衝突して飛散する洗浄水が形成する水膜によって下降流路を塞ぐことができないおそれがある。さらに、下降流路の上部に段部が設けられているため、サイホン作用が発生した後に下降流路を流下する洗浄水の流れが下降流路の上流側で乱れ、洗浄水が下降流路内をスムーズに流れず、汚物等の排出を良好に行うことができないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、水洗式便器に採用することによって、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる便器排水路を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の便器排水路は、水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
下流側に向けて上昇しており、垂直方向の下方視において、下流端部の下側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路と、
この上昇流路の下流端部に連続し、下流側に向けて下降した下降流路とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この便器排水路では、垂直方向の下方視において、上昇流路の下流端部の下側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている。このため、上昇流路の下流端部の下側面の左右端部であって、中央部に比べて下流側に延びている端部に沿って洗浄水が流れる。つまり、洗浄水は、直ぐに垂直下方に流れ落ちず、下降流路の内周面に沿った水平方向の成分を有する流れを形成することができる。洗浄水が水平方向の成分を有して下降流路の内周面に沿って流れるため、洗浄水は下降流路の内周面の全周に亘って流下する。このため、下降流路を洗浄水によって塞ぎ易くすることができる。つまり、下降流路の内周面に内側に突出した絞り部を設け、この絞り部の上方から流下した洗浄水が絞り部の上面に衝突することによって、洗浄水が飛散して水膜を形成するようにした場合、下降流路の内周面の全周に亘って洗浄水が流下するため、下降流路の内周面の全周から下降流路の中心に向かって洗浄水を飛散させることができる。このため、少ない洗浄水でも下降流路を塞ぐように水膜を形成することができ、サイホン作用を良好に発生させることができる。また、下降流路の上部(上流側)に洗浄水を飛散させる段部を設けないため、サイホン作用が発生した後、下降流路内を洗浄水がスムーズに流れ、汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0009】
したがって、第1発明の便器排水路を採用した水洗式便器は、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0010】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、下流端部の上流側近傍の下側面が中央部を上方に突出した凸面であり得る。この場合、上昇流路の下流側端部の上流側近傍において、下側面の左右端部は中央部に比べて緩やかな昇り傾斜にすることができる。また、上昇流路の上流端部の上流側近傍において、下側面の左右端部に水平面を形成しない。このため、上昇流路の上流端部の左右端部に向けて上昇流路を洗浄水が良好に流れ、便器洗浄の初期段階から洗浄水を下降流路の内周面に沿って流すことができる。よって、便器洗浄の初期段階に下降流路を塞ぐ水膜を形成することができ、サイホン作用を早期に発生させることができる。つまり、少ない洗浄水でもサイホン作用を良好に発生することができ、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0011】
前記下降流路は、前記上昇流路の下流端部の下側面の左右端部から斜め下方に向けて延びており、内周面に沿って内側に突出した棚部を有し得る。この場合、上昇流路の下流端部の下側面の左右端部から棚部に沿って洗浄水を流すことができる。このため、便器洗浄の初期段階、つまり、便器排水路内に流入する洗浄水の流量が少ないときでも、洗浄水を下降流路の内周面の全周に沿って確実に流すことができる。よって、少ない洗浄水でも水膜を形成して下降流路を塞ぐことができ、サイホン作用を発生させて便器洗浄を良好に行うことができる。
【0012】
第2発明の便器排水路は、水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
下流側に向けて上昇しており、垂直方向の上方視において、上流端部の上側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路を備えていることを特徴とする。
【0013】
この便器排水路では、垂直方向の上方視において、上昇流路の上流端部の上側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている。このため、上昇流路の上流端部の上側面の左右端部であって、中央部に比べて下流側に延びている端部に沿った洗浄水の流れを形成することができる。これにより、上昇流路の入り口で洗浄水の流れを整流することができ、上昇流路内へ洗浄水等が流れ込み易くすることができる。このため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0014】
したがって、第2発明の便器排水路を採用した水洗式便器も、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0015】
第3発明の便器排水路は、水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
前記便鉢部と下流側に向けて上昇した上昇流路とを連通しており、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、前記上昇流路の上流端部の上流側近傍の上側面が中央部を下方に突出した凸面である導入路を備えていることを特徴とする。
【0016】
この便器排水路では、上昇流路の上流端部の上流側近傍において、導入路の上側面の左右端部が中央部に比べて高い位置に形成されている。このため、導入路から上昇流路の上流端部にかけて、左右端部を通過する洗浄水等は、便鉢部から上昇流路へ流れ込む際の流れ方向の変化が少なくてすむ。よって、導入路から上昇流路の上流端部にかけて、左右端部を洗浄水等が勢いよく通過し、便鉢部から上昇流路へ洗浄水等が流れ込み易くなるため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。また、導入路の中央部に比べて高い位置に形成された左右端部に空気が集まる。左右端部に上方に集まった空気は、導入路内に流入する洗浄水が衝突し、拡散するため、空気が砕ける音を低減させることができる。
【0017】
したがって、第3発明の便器排水路を採用した水洗式便器も、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0018】
前記上昇流路の上側面は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型であり得る。上昇流路の上側面の近傍は洗浄水の流速が遅くなるため、この領域を山型にすることによって、その領域の流路面積を小さくして洗浄水の流速を速くし、洗浄水の淀みを防止することができる。このため、上昇流路内の洗浄水を良好に流すことができ、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の水洗式便器の断面図である。
【図2】実施例1の水洗式便器の平面図である。
【図3】図1の矢視A−A断面図である。
【図4】図1の矢視B−B断面図である。
【図5】図1の矢視C−C断面図である。
【図6】図1の矢視D−D断面図である。
【図7】(A)実施例1の上昇流路の断面図である。(B)図7(A)の矢視E−E〜I−I断面図である。(C)図7(A)の矢視J−J断面図である。
【図8】図1の矢視K−K断面図である。
【図9】図1の矢視L−L断面図である。
【図10】図1の矢視P−P断面図である。
【図11】図1の矢視Q−Q断面図である。
【図12】図1の矢視R−R断面図である。
【図13】図1の矢視R−Rの反対側から見た断面図である。
【図14】実施例2の水洗式便器の断面図である。
【図15】図14の矢視W−W断面図である。
【図16】図14の矢視X−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1〜第3発明の便器排水路を備えた水洗式便器を具体化した実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<実施例1>
実施例1の水洗式便器は、図1及び図2に示すように、便器本体1、便器本体1の後部上面に載置したタンク本体2、タンク本体2に貯留した洗浄水を便器本体1に吐水する分配管3、及び便器本体1の排水口40Aと便器本体1が設置されるトイレルームの床面に開口する図示しない排水管の流入口とを接続する接続配管4を有している。接続配管4は、排水口40Aの直下に排水口40Aから流下した洗浄水が衝突し、飛散する絞り部5を形成している。この絞り部5の上面に洗浄水が衝突して飛散することによって水膜形成領域Sに水膜が形成される。これによって、便器排水路内にサイホン作用を発生させることができる。
【0022】
便器本体1は、便鉢部10、導入路20、上昇流路30、及び下降流路40を備えている。導入路20、上昇流路30、下降流路40及び接続配管4内の流路が便器排水路を構成している。
【0023】
便鉢部10は上部内周縁にリム通水路11を形成している。分配管3は、タンク本体2の排出口を挿入する流入口を有した流入管3Aと、流入管3Aの下部で分岐した第1吐水管3B及び第2吐水管3Cとを有している。便器洗浄を実行すると、タンク本体2に貯留した洗浄水を第1吐水管3Bからリム通水路11に沿って吐水するとともに、第2吐水管3Cから便鉢部10の後部に向けて吐水する。第1吐水管3Bからリム通水路11に沿って吐水した洗浄水は、リム通水路11上を流れつつ、便鉢部10の表面に流れ落ちる。また、第1吐水管3Bから吐水する洗浄水の水量は第2吐水管3Cから吐水する洗浄水の水量よりも多いため、便鉢部10の上方から見ると、便鉢部10内には反時計回りに流れる旋回流FLが形成される。
【0024】
導入路20は、図1及び図3〜図6に示すように、便鉢部10の下端部に連続しており、管状に形成されている。導入路20は、便鉢部10の下端部から便器本体1の後方に向けて下方に傾斜している。つまり、導入路20は上昇流路30の上流端部31へ向けて下方に傾斜している。導入路20の下流端部と上昇流路30の上流端部31とは連続して形成されている。導入路20及び上昇流路30の上流端部31は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、左下コーナー部20L、31BLの方が右下コーナー部20R、31BRに比べ曲率の小さい緩やかな曲がり具合のR面に形成されている。これに伴い、右側面21C、31Cが直線的に立ち上がっている。
【0025】
洗浄水は、便鉢部10内で反時計回りに流れる旋回流FLを形成して導入路20内に流入する。この際、左下コーナー部20Lが緩やかな曲がり具合のR面であるため洗浄水は導入路20内にスムーズに流入する。導入路20内に流入した洗浄水は、曲率の大きい曲がり具合がきついR面の右下コーナー部20Rから直線的に立ち上がっている右側面21Cに衝突して排水路の下流方向への流れに変化する。このように、導入路20によって、便鉢部10内で旋回していた洗浄水の流れを排水路の下流方向の流れに変化して、かつ下流方向の流れを加速し、整流化することができる。
【0026】
上昇流路30の上流端部31の上流側近傍の導入路20は、図4及び図5に示すように、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上側面31Tが中央部31Mを下方に突出させた凸面に形成されている。つまり、上昇流路30の上流端部31の上流側近傍において、導入路20の上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて高い位置に形成されている。このため、導入路20から上昇流路30の上流端部31にかけて、左右端部31UL、31URを通過する洗浄水等は、便鉢部10から上昇流路30へ流れ込む際の流れ方向の変化が少なくてすみ、また、洗浄水の流れを整流化することができる。よって、導入路20から上昇流路30の上流端部31にかけて、上側面31Tの左右端部31UL、31URを洗浄水等が勢いよく通過し、便鉢部10から上昇流路30へ洗浄水等が流れ込み易くなるため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0027】
また、上昇流路30の上流端部31の上流側近傍において、導入路20の上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて高い位置に形成されているため、左右端部31UL、31URに空気が集まる。左右端部31UL、31URに集まった空気は、導入路20に流入する洗浄水が衝突し、拡散するため、空気がはじける音を低減させることができる。
【0028】
また、上昇流路30の上流端部31の近傍は、断面形状が横長の略矩形である。上昇流路30の上流端部31を境にして、洗浄水の排水方向が下方向から上方向に変化するため、上側面31T側に流速の速い洗浄水が流れる。上昇流路30の上流端部31の近傍の排水路の断面形状において、上下寸法を大きくすると、下側面31B側の洗浄水の流速が遅くなり、下側面31B側の近傍の整流化された洗浄水が淀んでしまうおそれがある。そこで、上昇流路30の上流端部31の近傍においては、上下方向の寸法を小さくして整流化された洗浄水が淀まないようにするとともに、流量を確保するために横方向の寸法を大きく形成している。このため、上昇流路30の上流端部31の近傍は断面形状が横長の略矩形に形成している。
【0029】
上述したように、曲率の大きい曲がり具合のきついR面の右下コーナー部20Rから直線的に立ち上がった右側面21Cによって、導入路20内で洗浄水の流れを排水路の下流方向に変化させ、かつ下流方向への流れを加速することによって最適化を図ることができる。
【0030】
さらに、上昇流路30の上流端部31は、図6に示すように、垂直方向の上方視において、上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて下流側(図6において左側)に延びている。つまり、上昇流路30の上流端部31は、垂直方向の上方視において、中央部31Mが上流側に凹んだ湾曲状に形成されている。このため、上昇流路30の上流端部31の上側面31Tの左右端部31UL、31URに沿って洗浄水等の流れを形成することができる。つまり、導入路20が左右端部31UL、31URにおいて、下流側に延びていることになり、導入路20に連続して洗浄水の流れを整流することができ、上昇流路30内へ洗浄水等が流れ込み易くすることができる。このため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0031】
上昇流路30は上流端部31から便器本体1の後方(下流側)に向けて上昇している。上昇流路30は、図1、図7(A)〜(C)及び図8に示すように、下側面33、下側面33の左右両端から立ち上がる左右側面34L、34R、及び左右側面34L、34Rの上端を連結する上側面35に囲まれて形成されている。
【0032】
上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部31より下流側において上側面35が中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型に形成されている。これによって、上昇流路30の上側面35の近傍における洗浄水の流速が遅くなる領域において、流路面積を小さくすることによって、洗浄水の流速を速くして洗浄水の淀みを防止することができる。このため、上昇流路30内の洗浄水を良好に流すことができ、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0033】
また、山型に形成された上側面35は、上流端部31の下流側近傍において、中央部から左右下方に延びて内側に膨らんだ傾斜面に傾斜している。上流端部31の下流側近傍では、洗浄水の流れ方向が下方向から上方向に変化した直後であるため、上側面35の近傍において洗浄水が淀み易い。このため、この淀み易い領域の上側面35を内側に膨らんだ傾斜面にすることによって、洗浄水の流速をさらに速くし、整流化された洗浄水の淀みを防止することができる。これによっても、上昇流路30内の洗浄水が良好に流すことができ、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0034】
上昇流路30の下側面33は下流側に向けて徐々に横幅を広げている。上昇流路30の下側面33の近傍では上流側より下流側において洗浄水の流速が速い。このため、上昇流路30の下側面30を下流端に向けて徐々に横幅を広げることによって、洗浄水の流速が速い領域の流路面積を拡大し、大流量の洗浄水が上昇流路30を流れるようにしている。
【0035】
また、上昇流路30の下流端部32の上流側近傍の下側面33は、図8に示すように、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、中央部33Mが上方に突出した凸面に形成されている。このため、上昇流路30の下側面33は、図7(B)に示すように、中間部から下流側に向けて徐々に中央部が上方に突出した凸面に形成されている。
【0036】
また、上昇流路30は、図9に示すように、垂直方向の下方視において、下流端部32の下側面33の左右端部33L、33Rが中央部に比べて下流側に延びている。このため、上昇流路30の下流端部32の下側面33の左右端部33L、33Rに沿って流れた洗浄水が下流端部32の左右端部を超えて、下降流路40の内周面に沿った水平方向の成分を有する流れを形成する。洗浄水は、水平方向の成分を有して下降流路40の内周面に沿って流れるため、下降流路40の内周面の全周に亘って流下する。このため、下降流路40の内周面の全周から絞り部5に洗浄水が流下し、絞り部5の上面に衝突して、下降流路40の内周面の全周から下降流路40の中心に向かって洗浄水を飛散させることができる。
【0037】
このように、上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、下流端部32の上流側近傍の下側面33が中央部33Mに比べて左右端部33L、33Rを緩やかな昇り傾斜にすることができる。また、上昇流路30の下流端部32の上流側近傍において、下側面33の左右端部33L、33Rに水平面を形成しない。このため、便器洗浄が開始されると、洗浄水は上昇流路30の下流端部32の左右端部33L、33Rに向けて上昇流路30を洗浄水が良好に流れ、洗浄水は下降流路40の内周面の全周に亘って流下する。このため、便器洗浄の初期段階に、下降流路40の内周面の全周から流下した洗浄水が接続配管4の絞り部5に衝突して飛散することによって、水膜形成領域Sに水膜を形成し、排水路内にサイホン作用を早期に発生させることができる。また、少ない洗浄水でも下降流路40を塞ぐように水膜を形成することができ、サイホン作用を良好に発生させることができる。さらに、下降流路40の上部(上流側)に洗浄水を飛散させる段部を設けないため、サイホン作用が発生した後、下降流路40内を洗浄水がスムーズに流れ、汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0038】
したがって、実施例1の便器排水路を採用した水洗式便器は、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0039】
下降流路40は、図1、及び図10〜図13に示すように、上昇流路30の下流側に連続して形成されている。下降流路40は垂直下方に延びている。つまり、下降流路40は下流側に向けて下降している。下降流路40は下端部に排出口40Aを形成している。排出口40Aは、接続配管4の上流側の接続口に挿入され、接続配管4を介してトイレルームの床面に開口する排水管の流入口に連通することができる。
【0040】
下降流路40は、上昇流路30の下流端部32の下側面33の左右端部33L、33Rから斜め下方に向けて延びた棚部41を有している。この棚部41は、下降流路40の内周面に沿って内側に突出し、内側上方を向いた傾斜面から形成されている。棚部41が下降流路40の内周面に沿って内側に突出しているため、上昇流路30の下流端部32の下側面33の左右端部33L、33Rを乗り越えた洗浄水が棚部41に沿って流れ、下降流路40の上昇流路30から離れた方向に洗浄水を送ることができる。便器洗浄の初期段階、つまり、便器排水路内に流入する洗浄水の流量が少ないときから、洗浄水を下降流路40の内周面の全周に沿って確実に流すことができる。棚部41から下降流路40内に流れ落ちた洗浄水は、接続配管4に形成した絞り部5に衝突して飛散する。これによって、少ない洗浄水でも水膜形成領域Sに水膜が形成され、排水路内にサイホン作用を早期に発生させることができ、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0041】
また、棚部41が内側上方を向いた傾斜面からなるため、棚部41によって下降流路40の流路面積が小さくなるが、その変化を緩やかにすることができる。このため、棚部41による汚物等の詰まりを防止することができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0042】
また、棚部41は上昇流路30の下流端部32の下側面33から下降流路40の内周面に沿って斜め下方に延びている。このため、上昇流路30の下流端部32の下側面33から棚部41に流れる洗浄水が少なくても下降流路40の内周面に沿って上昇流路30とは反対側の下降流路40の内周面まで洗浄水を送ることができる。つまり、少ない洗浄水でも下降流路40の内周面の全周から洗浄水が流れ落ち、水膜形成領域Sに水膜を確実に形成することができる。よって、少ない洗浄水で早期にサイホン作用を発生させることができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0043】
また、棚部41は下降流路40の内周面に沿って、上昇流路30の反対方向に向けて幅が徐々に細くなっている。棚部41は、排水路内にサイホン作用が発生し、下降流路40内を洗浄水と共に汚物等が流れる際には抵抗となる。このため、棚部41の幅を上昇流路30の反対方向に向けて徐々に細くすることにより、早期にサイホン作用を発生させることができるとともに、洗浄水等の流れの抵抗を減少し、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0044】
<実施例2>
実施例2の水洗式便器は、図14に示すように、便器排水路の下降流路140の下流端に連通し、便器本体101の後方に向けて横方向に延びる横引き流路146を有している。また、この水洗式便器は、下降流路140の後側面144の外周面の中央部に垂直方向に延びて便器本体101の後部を補強する補強壁150を有している。他の構成は、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0045】
横引き流路146は下降流路140の下流端に連続して形成されている。横引き流路146の下流端に設けられた排出口140Aは便器本体101の後方に向けて開口している。排出口140Aは、接続部材5の上流側の接続口に挿入され、接続部材5を介してトイレルームの壁面から引き出された排水管の流入口に連通することができる。
【0046】
この水洗式便器は、実施例1の水洗式便器に比べ、導入路の傾斜が急激に下降しており、上昇流路の傾斜が急激に上昇している。導入路20は、図15に示すように、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上昇流路30の上流端部31の上流側近傍の上側面31Tが中央部31Mを下方に突出させた凸面に形成されている。つまり、上昇流路30の上流端部31の上流側近傍において、導入路20の上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて高い位置に形成されている。このため、導入路20から上昇流路30の上流端部31にかけて、左右端部31UL、31URを通過する洗浄水等は、便鉢部10から上昇流路30へ流れ込む際の流れ方向の変化が少なくてすみ、また、洗浄水の流れを整流化することができる。よって、挿入路20から上昇流路30の上流端部31にかけて、上側面31Tの左右端部31UL、31URを洗浄水等が勢いよく通過し、便鉢部10から上昇流路30へ洗浄水等が流れ込み易くなるため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0047】
また、上昇流路30の上流端部31の近傍は、断面形状が横長の略矩形である。上昇流路30の上流端部31を境にして、洗浄水の排水方向が下方向から上方向に変化するため、上側面31T側に流速の速い洗浄水が流れる。上昇流路30の上流端部31の近傍の排水路の断面形状において、上下寸法を大きくすると、下側面31B側の洗浄水の流速が遅くなり、下側面31B側の近傍の整流化された洗浄水が淀んでしまうおそれがある。そこで、上昇流路30の上流端部31の近傍においては、上下方向の寸法を小さくして整流化された洗浄水が淀まないようにするとともに、流量を確保するために横方向の寸法を大きく形成している。このため、上昇流路30の上流端部31の近傍は断面形状が横長の略矩形に形成している。
【0048】
また、上昇流路30の上流端部31は、図16に示すように、垂直方向の上方視において、上側面31Tの左右端部31UL、31URが中央部31Mに比べて下流側(図16において左側)に延びている。つまり、上昇流路30の上流端部31は、垂直方向の上方視において、中央部31Mが上流側に凹んだ湾曲状に形成されている。このため、上昇流路30の上流端部31の上側面31Tの左右端部31UL、31URに沿って洗浄水の流れを形成することができる。つまり、導入路20が左右端部31UL、31URにおいて、下流側に延びていることになり、導入路20に連続して洗浄水等の流れを整流することができ、上昇流路30内へ洗浄水等が流れ込み易くすることができる。このため、少ない洗浄水でも汚物等の排出を良好に行うことができる。
【0049】
したがって、実施例2の便器排水路を採用した水洗式便器も、少ない洗浄水で良好に便器洗浄を行うことができる。
【0050】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、垂直方向の下方視において、上昇流路の下流端部の下側面の左右端部が中央部に比べて下流側に延びているが、左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びていればよい。
(2)実施例1及び2では、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上昇流路の下流端部の上流側近傍の下側面が中央部を上方に突出した凸面に形成されているが、水平面であってもよい。
(3)実施例1及び2では、下降流路が棚部を有しているが、棚部を有していなくてもよい。
(4)実施例1及び2では、垂直方向の上方視において、上昇流路の上流端部の上側面の左右端部が中央部に比べて下流側に延びているが、左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びていればよい。
(5)実施例1及び2では、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、導入路の上昇流路の上流端部の上流側近傍の上側面が中央部を下方に突出した凸面に形成されているが、水平面であってもよい。
(6)実施例1及び2では、上昇流路の上側面が山型であるが、山型でなくてもよい。
(7)実施例1及び2では、上昇流路を導入路の下流端部に連続して形成しているが、上昇流路を下流端部とは別体に形成して、導入路の下流端部に連結してもよい。
(8)実施例1及び2では、下降流路を上昇流路の下流側に連続して形成しているが、下降流路を上昇流路とは別体に形成して、上昇流路の下流側に連結してもよい。
(9)実施例1及び2では、便器本体の後部上面に載置したタンク本体に貯留した洗浄水を便器本体に供給する水洗式便器であるが、タンク本体を有さず、開閉弁を介して給水源から直接的に洗浄水を供給する水洗式便器であってもよい。
(10)実施例1及び2では、棚部が下降流路の内周面に沿って斜め下方に向けて延びているが、水平方向に延びていてもよい。
(11)実施例1及び2では、便鉢部の下端部と上昇流路の上流端部とを連結する導入路を備えているが、導入路を備えず、便鉢部の下端部に直接的に上昇流路の上流端部を連結してもよい。
(12)実施例1及び2では、便鉢部内に反時計回りに流れる旋回流を形成したが、洗浄水を時計回りに旋回させるものであってもよい。この場合、導入路の形状は実施例における形状を左右反転したものになる。
(13)実施例1及び2では、接続配管に絞り部を形成したが、下降流路に絞り部を形成してもよい。
(14)実施例1及び2では、水洗式便器はサイホン作用が発生するものであったが、各種洗浄方式の水洗式便器でよく、サイホン作用が発生しない水洗式便器であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…便鉢部
30…上昇流路
31…(上昇流路の)上流端部
31T…上側面
31UL、31UR…(上側面の)左右端部
31M…(上側面の)中央部
32…(上昇流路の)下流端部
33…下側面
33L、33R…(下側面の)左右端部
33M…(下側面の)中央部
35…(上昇流路の)上側面
40…下降流路
41…棚部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
下流側に向けて上昇しており、垂直方向の下方視において、下流端部の下側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路と、
この上昇流路の下流端部に連続し、下流側に向けて下降した下降流路とを備えていることを特徴とする便器排水路。
【請求項2】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、下流端部の上流側近傍の下側面が中央部を上方に突出した凸面であることを特徴とする請求項1記載の便器排水路。
【請求項3】
前記下降流路は、前記上昇流路の下流端部の下側面の左右端部から斜め下方に向けて延びており、内周面に沿って内側に突出した棚部を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の便器排水路。
【請求項4】
水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
下流側に向けて上昇しており、垂直方向の上方視において、上流端部の上側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路を備えていることを特徴とする便器排水路。
【請求項5】
水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
前記便鉢部と下流側に向けて上昇した上昇流路とを連通しており、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、前記上昇流路の上流端部の上流側近傍の上側面が中央部を下方に突出した凸面である導入路を備えていることを特徴とする便器排水路。
【請求項6】
前記上昇流路の上側面は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の便器排水路。
【請求項1】
水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
下流側に向けて上昇しており、垂直方向の下方視において、下流端部の下側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路と、
この上昇流路の下流端部に連続し、下流側に向けて下降した下降流路とを備えていることを特徴とする便器排水路。
【請求項2】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、下流端部の上流側近傍の下側面が中央部を上方に突出した凸面であることを特徴とする請求項1記載の便器排水路。
【請求項3】
前記下降流路は、前記上昇流路の下流端部の下側面の左右端部から斜め下方に向けて延びており、内周面に沿って内側に突出した棚部を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の便器排水路。
【請求項4】
水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
下流側に向けて上昇しており、垂直方向の上方視において、上流端部の上側面の左右少なくとも一方の端部が中央部に比べて下流側に延びている上昇流路を備えていることを特徴とする便器排水路。
【請求項5】
水洗式便器の便鉢部の下流側に連通する便器排水路であって、
前記便鉢部と下流側に向けて上昇した上昇流路とを連通しており、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、前記上昇流路の上流端部の上流側近傍の上側面が中央部を下方に突出した凸面である導入路を備えていることを特徴とする便器排水路。
【請求項6】
前記上昇流路の上側面は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の便器排水路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−251379(P2012−251379A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125660(P2011−125660)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
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