説明

便器本体

【課題】便器洗浄を良好に行なうことができる便器本体を提供する。
【解決手段】便器本体10は、便鉢部11と、便鉢部11の上部周縁に設けられたリム通水路12Aと、リム通水路12Aの始端部S1に設けられ、リム通水路12Aに沿って洗浄水を吐水する吐水口17Aとを備えている。リム通水路12Aは、便鉢部11の上部内周面を形成する周壁部13と、周壁部13の下端から内側に延びて形成され、吐水口17Aから吐水された洗浄水を上面に流通させつつ、その一部の洗浄水を下方に連続する便鉢部11の内側面に沿って流下させる棚部14とを有している。周壁部13は、リム通水路17Aの始端部S1から短くとも終端部E1の手前近傍に至るまでの間、その垂直方向の寸法が徐々に小さく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器本体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の便器本体が開示されている。この便器本体は、便鉢部と、便鉢部の上部周縁に設けられたリム通水路とを備えている。リム通水路の始端部にはリム通水路に沿って洗浄水を吐水する吐水口が設けられている。リム通水路は、便鉢部の上部内周面を形成する周壁部と、周壁部の下端から内側に延びて形成され、吐水口から吐水された洗浄水を上面に流通させつつ、その一部の洗浄水を下方に連続する便鉢部の内側面に沿って流下させる棚部とを有している。棚部は、リム通水路の始端部から中間部に至るまでの間、上り勾配に形成され、中間部から終端部に至るまでの間、下り勾配に形成されている。この便器本体では、リム通水路の全体に吐水口から吐水された洗浄水を行き渡らせることができ、便鉢部の内側面の全体に洗浄水を流下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−315061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の便器本体では、リム通水路の中間部から終端部に至るまでの間、棚部が下り勾配に形成されていることにより、周壁部の垂直方向の寸法が、リム通水路の中間部から終端部に近づくに従い、大きく形成されている。吐水口から吐水された洗浄水は、棚部の上面を流通しつつ、その一部が下方に連続する便鉢部の内周面に沿って流下するため、リム通水路の終端部に近づくに従い、棚部の上面に流通する洗浄水の水量は徐々に少なくなり、棚部上の洗浄水の水位は低くなる。このため、周壁部の内周面の上部には、リム通水路の終端部に近づくに従い、吐水口から吐水された洗浄水が接触しなくなり、洗浄されなくなる。また、洗浄水が接触しない周壁部の内周面の面積は、リム通水路の終端部に近づくに従い大きくなる。このため、リム通水路の周壁部の内周面の上部に付着した汚水の飛沫等が洗い落とされず、その面積が大きくなるため、汚れが目立ちやすくなったり、悪臭等の原因になったりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器洗浄が良好に行なわれ、汚れを溜まり難くすることができる便器本体を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の便器本体は、便鉢部と、便鉢部の上部周縁に設けられたリム通水路と、リム通水路の始端部に設けられ、リム通水路に沿って洗浄水を吐水する吐水口とを備えた便器本体であって、
前記リム通水路は、前記便鉢部の上部内周面を形成する周壁部と、周壁部の下端から内側に延びて形成され、前記吐水口から吐水された洗浄水を上面に流通させつつ、その一部の洗浄水を内側から下方に連続する便鉢部の内側面に沿って流下させる棚部とを有し、
前記周壁部は、前記リム通水路の始端部から短くとも終端部の手前近傍に至るまでの間、その垂直方向の寸法が徐々に小さく形成されていることを特徴とする。
【0007】
この便器本体では、リム通水路の終端部に近づくにつれて、吐水口から吐水された洗浄水が棚部の上面を流通する水量が少なくなり、水位が低くなるのに応じて、周壁部の垂直方向の寸法が徐々に小さく形成されている。このため、周壁部の内周面の全体に接触させることができる。よって、周壁部の内周面を吐水口から吐水された洗浄水により良好に洗浄することができる。
【0008】
したがって、本発明の便器本体は、便器洗浄が良好に行なわれ、汚れを溜まり難くすることができる。
【0009】
前記棚部は、前記リム通水路の始端部から短くとも終端部の手前近傍に至るまでの間、上り勾配を有して形成され得る。この場合、周壁部の上端から内側に延びて形成される鍔部の厚さを薄くすることができる。つまり、リム通水路の始端部から終端部の手前近傍に至るまでの間、周壁部の垂直方向の寸法を徐々に小さくするために、鍔部の厚さを徐々に厚くする場合に比べ、鍔部の厚さを薄くすることができる。このため、便鉢内にほぼ垂直方向に形成される鍔部の内周面も薄くなり、内周面に汚水の飛沫等が付着することを減らし、内周面を汚れ難くすることができる。また、鍔部の内周面の面積を小さくすることにより、汚水の飛沫等が付着することにより内周面が汚れたとしても目立ち難くすることができる。
【0010】
前記吐水口は、前記便鉢部の上部周縁の2ヶ所に設けられた第1吐水口及び第2吐水口であり、前記リム通水路は、第1吐水口から第2吐水口まで延びて形成された第1リム通水路及び第2吐水口から第1吐水口まで延びて形成された第2リム通水路であり得る。この場合、各リム通水路の長さを短くすることができるため、各吐水口から吐水された洗浄水を各リム通水路の始端部から終端部まで良好に流通させることができる。このため、便鉢部の内側面の全体に洗浄水を流下させることができるため、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0011】
前記便鉢部を平面視した状態で、便鉢部を前後方向及び左右方向に等分した際の前側の左右一方の上部周縁に前記第1吐水口が設けられ、後側の左右他方の上部周縁に前記第2吐水口が設けられ得る。この場合、各吐水口から吐水された洗浄水が流れる各リム通水路の長さを短くすることができる。また、各吐水口から吐水された直後の水勢の強い洗浄水が、リム通水路の曲率の小さい湾曲部に沿って流される。このため、この曲率の小さい湾曲部を洗浄水が良好に流れ、その後の曲率の大きい湾曲部も洗浄水は良好に流れる。よって、各リム通水路の始端部から終端部まで洗浄水を良好に流通させることができる。このため、便鉢部の内側面の全体に洗浄水を流下させることができ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0012】
前記周壁部の内周面と前記棚部の上面とは、内側上方を向いた傾斜面により連結され得る。この場合、棚部の上面を流通する洗浄水には遠心力が作用するため、周壁部の内周面に押し付けられるように流通する。このため、傾斜面に沿って周壁部の内周面の上部まで洗浄水を行き渡らせることができる。よって、周壁部の内周面を洗浄水により良好に洗浄することができる。
【0013】
前記リム通水路は前記周壁部の上端から内側に延びて形成された鍔部を有し、この鍔部の内周面と下面とは、内側下方を向いた傾斜面により連結され得る。この場合、鍔部の内周面の面積をより小さくすることができる。このため、鍔部の内周面に汚水の飛沫等が付着することを減らし、内周面を汚れ難くすることができる。また、鍔部の内周面の面積を小さくすることにより、汚水の飛沫等が付着することにより内周面が汚れたとしても目立ち難くすることができる。さらに、内側下方に向いた傾斜面が形成されているため、鍔部の下方へブラシ等の掃除道具を挿入し易くなり、鍔部の下面、周壁部の内周面及び棚部の上面を容易に掃除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の便器本体の平面図である。
【図2】実施例の便器本体の断面図である。
【図3】図1の矢視X−X断面図である。
【図4】(A)〜(E)は、図3の矢視A−A〜矢視E−Eに対応する部分断面図である。
【図5】図1の矢視Y−Y断面図である。
【図6】図5の矢視F−F断面図である。
【図7】図5の矢視G−G断面図である。
【図8】実施例の便器本体を利用した水洗式便器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0016】
実施例の便器本体10は、図1及び図2に示すように、便鉢部11を備えている。便鉢部11の上部周縁には、第1リム通水路12A及び第2リム通水路12Bが設けられている。便鉢部11を平面視した状態で、図2に示すように、便鉢部11を前後方向に等分した仮想線Lと左右方向に等分した仮想線Mとを引いた場合、仮想線Lより前側(便鉢部11の前端T側)の左側(便鉢部11の前端T側から後方を見た際の左側)に位置する便鉢部11の上部周縁には第1吐水口17Aが設けられている。また、仮想線Lより後側(便鉢部11の後端R側)の右側(便鉢部11の前端T側から後方を見た際の右側)に位置する便鉢部11の上部周縁には第2吐水口17Bが設けられている。第1リム通水路12Aは第1吐水口17Aから第2吐水口17Bまで延びて形成されている。また、第2リム通水路12Bは第2吐水口17Bから第1吐水口17Aまで延びて形成されている。このように、第1吐水口17Aと第2吐水口17Bとは便鉢部11の上部周縁の略対向する位置に設けられているため、第1リム通水路12A及び第2リム通水路12Bを短く形成することができる。
【0017】
第1吐水口17Aは左側リム給水路17Lの先端部に設けられた開口である。左側リム給水路17Lの後端部には分配管30の左配管31Lが接続されている。第2吐水口17Bは右側リム給水路17Rの先端部に設けられた開口である。右側リム給水路17Rの後端部には分配管30の右配管31Rが接続されている。
【0018】
分配管30は、図1に示すように、便器本体10の後端部に形成され、周縁部に立壁21Aが立ち上げられた収納部21に一部が収納されている。分配管30の左配管31L及び右配管31Rは、前側の立壁21Aの下部に左右に並んで設けられた一対の挿通口21L、21Rに挿通されている。分配管30は、収納部21内で上方に向けて開口する接続口30Aを有している。接続口30Aは、後述する便器洗浄装置に接続される。これにより、便器洗浄装置から供給される洗浄水は、分配管30及び各リム給水路17L、17Rを介して、各吐水口17A、17Bから各リム通水路12A、12Bに吐水される。
【0019】
各リム通水路12A、12Bは、図2〜図7に示すように、便鉢部11の上部内周面を形成する周壁部13と、周壁部13の下端から内側に延びて形成された棚部14と、周壁部13の上端から内側に延びて形成された鍔部16とを有している。
【0020】
棚部14は、第1吐水口17A又は第2吐水口17Bから吐水された洗浄水を上面に流通させつつ、その一部の洗浄水を下方に連続する便鉢部11の内側面に沿って流下させる。
【0021】
第1リム通水路12Aを形成する棚部14は、第1リム通水路12Aの始端部S1から終端部E1の手前近傍Nに至るまでの間、上り勾配を有して形成されている。つまり、第1リム通水路12Aは、図4及び図6に示すように、棚部14が上り勾配を有しているため、周壁部13の垂直方向の寸法が、第1リム通水路12Aの始端部S1から終端部E1の手前近傍Nに至るまでの間、徐々に小さく形成されている。
【0022】
第1吐水口17Aから吐水された洗浄水は、第1リム通水路12Aの終端部E1に近づくにつれて、棚部14の上面を流通する水量が少なくなり、水位が低くなる。これに応じて、周壁部13の寸法は徐々に小さく形成されているため、周壁部13の内周面の全体に洗浄水を接触させることができる。このため、周壁部13の内周面を第1吐水口17Aから吐水された洗浄水により良好に洗浄することができる。
【0023】
また、第2リム通水路12Bを形成する棚部14は、図2及び図5に示すように、第2リム通水路12Bの始端部S2から終端部E2に至るまでの間、上り勾配を有して形成されている。つまり、第2リム通水路12Bは、棚部14が上り勾配を有しているため、周壁部13の垂直方向の寸法が、第2リム通水路12Bの始端部S2から終端部E2に至るまでの間、徐々に小さく形成されている。
【0024】
第2吐水口17Bから吐水された洗浄水は、第2リム通水路12Bの終端部E2に近づくにつれて、棚部14の上面を流通する水量が少なくなり、水位が低くなる。これに応じて、周壁部13の寸法が徐々に小さく形成されているため、周壁部13の内周面の全体に洗浄水を接触させることができる。このため、周壁部13の内周面を第2吐水口17Aから吐水された洗浄水により良好に洗浄することができる。
【0025】
したがって、実施例の便器本体は、便器洗浄が良好に行なわれ、汚れを溜まり難くすることができる。
【0026】
また、周壁部13の垂直方向の寸法を徐々に小さくするために棚部14を上り勾配にしたため、鍔部16の厚さを薄くすることができる。このため、鍔部16の内周面16Aに汚水の飛沫等が付着することを減らし、内周面16Aを汚れ難くすることができる。また、鍔部16の内周面16Aの面積を小さくすることにより、汚水の飛沫等が付着することにより内周面16Aが汚れたとしても目立ち難くすることができる。
【0027】
また、便鉢部11の上部周縁の2ヶ所に第1吐水口17A及び第2吐水口17Bを設け、かつ第1リム通水路12A及び第2リム通水路12Bを形成している。このため、各リム通水路12A、12Bの長さを短くすることができ、各吐水口17A、17Bから吐水された洗浄水を各リム通水路12A、12Bの始端部S1、S2から終端部E1、E2まで良好に流通させることができる。よって、便鉢部11の内側面の全体に洗浄水を流下させることができ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0028】
また、第2吐水口17Bの付近では周壁部13の垂直方向の寸法が大きくなっているが、曲率が小さくなる湾曲部であるため、洗浄水に大きな遠心力が作用し、周壁部13の上部まで洗浄水を行き渡らせることができ、周壁部13の洗浄を良好に行なうことができる。
【0029】
また、各吐水口17A、17Bから吐水された直後の水勢の強い洗浄水が各リム通水路12A、12Bの曲率の小さい湾曲部に沿って流される。つまり、各吐水口17A、17Bから吐水された洗浄水が流れる各リム通水路12A、12Bの前半に曲率の小さい湾曲部が形成されているため、この部分において大きな遠心力が洗浄水に作用し、洗浄水が周壁部13の内周面に押し付けられ、周壁部13の内周面を良好に洗浄することができる。また、この曲率の小さい湾曲部を洗浄水が良好に流れ、その後の曲率の大きい湾曲部も洗浄水は良好に流れる。よって、各リム通水路12A、12Bの始端部S1、S2から終端部E1、E2まで洗浄水を良好に流通させることができる。このため、便鉢部11の内周面の全体に洗浄水を流下させることができ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0030】
周壁部13の内周面と棚部14の上面とは、図3及び図4に示すように、内側上方を向いた傾斜面15により連結されている。この傾斜面15は、周壁部13の内周面と棚部14の上面との夫々に連続し、凹状に湾曲している。棚部14の上面を流通する洗浄水には遠心力が作用するため、周壁部13の内周面に押し付けられるように流通する。このため、傾斜面15に沿って、周壁部13の内周面の上部まで洗浄水を行き渡らせることができる。よって、周壁部13の内周面を洗浄水により良好に洗浄することができる。
【0031】
鍔部16は、図3〜図7に示すように、内周面16Aと下面16Bとが内側下方を向いた平坦な傾斜面16Cにより連結されている。このように形成された鍔部16は内周面16Aの面積をより小さくしている。このため、鍔部16の内周面16Aに汚水の飛沫等が付着することを減らし、内周面16Aを汚れ難くすることができる。また、鍔部16の内周面16Aの面積を小さくすることにより、汚水の飛沫等が付着することにより内周面16Aが汚れたとしても目立ち難くすることができる。さらに、傾斜面16Cが形成されているため、鍔部16の下方へブラシ等の掃除道具を挿入しやすくなり、鍔部16の下面16B、周壁部13の内周面及び棚部14の上面を容易に掃除することができる。
【0032】
便器本体10は、図1、図3及び図5に示すように、便鉢部11の下流側に連通した便器排水路18と、鍔部16の上面に連続して後方に延びる上面部20とを有している。便器排水路18は、便鉢部11の下端部に連続し、後部上方に傾斜して延びる上昇流路18Aと、上昇流路18Aの上端部に連続し、下方に延びる下降流路18Bとから形成されている。下降流路18Bの下流端開口は接続部材4を介して床面から引き出された排水管5の流入口に連通される。
【0033】
便器本体10には、収納部21より前方かつ便鉢部11より後方に位置する上面部20の下方に円筒形状の空洞部19が形成されている。空洞部19の下端は便器排水路18の上端部に開口されている。空洞部19の上端には、上面部20を貫通する開口部19Aが形成されている。空洞部19の下端後部から後方に延びた拡張空洞部19Bが形成されている。
【0034】
便器本体10には、上面部20から下方に延び、左右方向に所定間隔を有して並設された一対の第1取付孔22が貫設されている。この第1取付孔22の便器本体10の前端からの位置及び各第1取付孔22間の寸法は、便座装置の取付孔としてJIS規格に定められたものである。また、第1取付孔22より後方かつ前側の立壁21Aより前方であって、便器本体10の上面部20の左右端部には一対の第2取付孔23が貫設されている。
【0035】
このように構成された便器本体10を利用して、図8に示すように、便器洗浄装置40及び吸引装置50を備えた水洗式便器を構成することができる。
【0036】
この水洗式便器は、洗浄タンク41を有する便器洗浄装置40及び吸引装置50を便器本体10の後端部の上方に配置している。便器洗浄装置40及び吸引装置50は、便器本体10の上面部に取り付けられたカバー1により覆われている。カバー1の前面下部には、便座2及び便蓋3が回動自在に軸支されている。
【0037】
洗浄タンク41は下端面に形成された流出口を有しており、流出口は分配管30の接続口30Aに接続されている。吸引装置50は、吸引路51を介して、蓋部材52の吸引口に連結されている。蓋部材52は空洞部19の上端に形成された開口部19Aを気密状態で閉鎖している。吸引路51は、第1吸気管51Aと第2吸気管51Bとから形成されている。蓋部材52は、開口部40Aに上方から挿入され、平板上の固定部材60により押さえつけられた状態で固定されている。固定部材60は、第1取付孔22にねじ込まれたボルトB1及び第2取付孔23にねじ込まれたボルトB2により便器本体10の上面部20に強固に固定されている。
【0038】
このように構成された水洗式便器は、便器洗浄が開始されると、洗浄タンク41の流出口から洗浄水が流出する。これにより、便器本体10の各吐水口17A、17Bから各リム通水路12A、12Bに洗浄水が吐水される。洗浄水は、各リム通水路12A、12Bを一方向に流通しながら、便鉢部11の内側面に沿って流下し、便鉢部11内に貯留される。これにより、便鉢部11内の洗浄水が上昇する。
【0039】
その後、吸引装置50が駆動され、空洞部19及び拡張空洞部19Bを介して便器排水路18の空気が吸引される。これにより、便鉢部11に貯留された洗浄水が便器排水路18に引き込まれ、便器排水路18内の洗浄水が増加し、サイホン作用が誘起される。このため、この水洗式便器では、サイホン作用を確実に誘起させることができ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0040】
本発明は、上記記載及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、棚部を上り勾配に形成することにより、リム通水路の周壁部の垂直方向の寸法を徐々に小さくしたが、棚部を水平に形成し、鍔部の厚さを徐々に厚くすることにより、リム通水路の周壁部の垂直方向の寸法を徐々に小さくしてもよい。
(2)実施例では、吐水口を便鉢部の上部周縁の2ヶ所に2つ設けたが、1箇所に1つのみ設けてもよい。
(3)実施例では、リム通水路の周壁部の内周面と棚部の上面とを湾曲状の傾斜面により連結したが、内側上方を向いた平坦な傾斜面により連結してもよい。
(4)実施例では、リム通水路に鍔部を設けたが、鍔部を設けなくてもよい。
(5)実施例では、鍔部の内周面と下面とを内側下方を向いた平坦な傾斜面により連結したが、鍔部の内周面と下面との夫々に連続し、凸状に湾曲した傾斜面により連結してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…便器本体
11…便鉢部
12A、12B…リム通水路(12A…第1リム通水路、12B…第2リム通水路)
S1、S2…始端部(S1…第1リム通水路の始端部、S2…第2リム通水路の始端部)
E1、E2…終端部(E1…第1リム通水路の終端部、E2…第2リム通水路の終端部)
13…周壁部
14…棚部
15…傾斜面
16…鍔部
16A…(鍔部の)内周面
16B…(鍔部の)下面
16C…傾斜面
17A、17B…吐水口(17A…第1吐水口、17B…第2吐水口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、便鉢部の上部周縁に設けられたリム通水路と、リム通水路の始端部に設けられ、リム通水路に沿って洗浄水を吐水する吐水口とを備えた便器本体であって、
前記リム通水路は、前記便鉢部の上部内周面を形成する周壁部と、周壁部の下端から内側に延びて形成され、前記吐水口から吐水された洗浄水を上面に流通させつつ、その一部の洗浄水を内側から下方に連続する便鉢部の内側面に沿って流下させる棚部とを有し、
前記周壁部は、前記リム通水路の始端部から短くとも終端部の手前近傍に至るまでの間、その垂直方向の寸法が徐々に小さく形成されていることを特徴とする便器本体。
【請求項2】
前記棚部は、前記リム通水路の始端部から短くとも終端部の手前近傍に至るまでの間、上り勾配を有して形成されていることを特徴とする請求項1記載の便器本体。
【請求項3】
前記吐水口は、前記便鉢部の上部周縁の2ヶ所に設けられた第1吐水口及び第2吐水口であり、前記リム通水路は、第1吐水口から第2吐水口まで延びて形成された第1リム通水路及び第2吐水口から第1吐水口まで延びて形成された第2リム通水路であることを特徴とする請求項1又は2記載の便器本体。
【請求項4】
前記便鉢部を平面視した状態で、便鉢部を前後方向及び左右方向に等分した際の前側の左右一方の上部周縁に前記第1吐水口が設けられ、後側の左右他方の上部周縁に前記第2吐水口が設けられていることを特徴とする請求項3記載の便器本体。
【請求項5】
前記周壁部の内周面と前記棚部の上面とは、内側上方を向いた傾斜面により連結されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の便器本体。
【請求項6】
前記リム通水路は前記周壁部の上端から内側に延びて形成された鍔部を有し、この鍔部の内周面と下面とは、内側下方を向いた傾斜面により連結されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の便器本体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−12508(P2011−12508A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159815(P2009−159815)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】