説明

便器洗浄タンク装置

【課題】水洗便所用タンク大小定量排水装置の部品点数の低減と装置の単純化を図ることを目的とする。
【解決手段】スピンドルに連動捍11を設け、タンク内壁に固着した基盤に、小用回転体14と大用回転体15を、下部分をスピンドル側に付勢した状態で設け、それぞれの回転体は、連動捍の回転軌跡にくい込む周辺21A、21Bと、その上端に上昇回転する連動捍を嵌入する切欠部24A、24Bを設ける。右側の小用回転体は、下部に錘を2個、鎖で垂下し、又、連係棒33を、大用回転体側に延長し、一方、大用回転体は、連係棒を受ける下部35を設け、それぞれ静止位置とする。小用排水の時、小用回転体に嵌入された連動捍は、第1の錘の水面露出による重力増加で小用回転体が回転し、ロック解除がされ、大用排水の時は、第2の錘の水面露出による重力増加で、小用回転体の連係棒が動き、その作用で、大用回転体が回転し、大用回転体に嵌入された連動捍のロック解除するのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク本体から便器に流す洗浄水の量を大用洗浄水量と小用洗浄水量に切換え、それぞれの水量を自由に設定できる便器洗浄タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタンク排水調整装置は、大別して、排水弁装置部と操作ハンドル装置部とに分けられる。本発明は、操作ハンドル装置部に関するものであり、その分野における技術として、次のようなものがある。
【0003】
操作ハンドル回動に連動するスピンドルが排水弁体開弁状態に回動すると、スピンドルに設けられたカムと周辺部に配設されたロッドとがロック状態になり、スピンドルが固定保持され、タンク内排水が行なわれ、タンク内水位が一定量下降すると、オーバーフロー管の外周面を摺動降下する浮沈体の連結部材により、ロッドが引張られ、ロック状態が解除され排水が停止するという装置で、精密なカムとロッドのロック機構と、ロック解除に固定位置にあるオーバーフロー管を利用するというものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、ハンドル回転部のタンク外壁と操作ハンドルの間に、ダンパー装置を設け、ハンドル回転にともない、スピンドルが排水弁開弁方向に回転すると、閉弁方向に付勢力をもった排水弁体が、スピンドルを直ちに閉弁方向に回転させようとするが、この回転速度を、ダンパー装置の粘性抵抗による回動抵抗力により、大用排水用ハンドル回転角度大のときは長時間、小用排水用ハンドル回転角度小のときは短時間遅らせる作用させ、必要量の排水を調整するものもある。(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、スピンドルに作用するように設けられたタイマー装置が、タンク内壁側にブラッケットを介して壁面に固定されており、スピンドルの大用排水回転時のみ、復帰回転速度をタイマー装置で遅らせ、排水弁部材の閉弁を遅らせ、排水を調整している。この機構は、大用排水時のみ作用し、タンク内に残溜する水(死水)の量を少なくするためのものである。(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 公開特許公報 昭58−178733
【特許文献2】 公開特許公報 特開平10−219784
【特許文献3】 公開特許公報 特開平9−195354
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に述べた従来の水洗便所用タンク大小定量排水装置の操作ハンドル装置部門では、スピンドルの排水動作の位置を固定するための装置、解除をするための装置、回転速度遅延装置、タイマー装置、ダンパー装置等に精密な多種の部材が使用され、或は、設計自由度の少ない固定位置にあるオーバーフロー管を利用するなどの問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の装置が有している精密な多種の部材の必要性を少なくし、設計の自由度を拘束するオーバーフロー管の不使用等により、構成部品を少数、単純化し、大小排水量の調整を自由に行える装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、上記目的を達成するために、操作用のハンドルに連動するスピンドルと同スピンドルに連係してタンク内貯溜水を排出する排水弁体を有し、上記スピンドルを作動位置に移動させることにより排水弁体が開弁され、スピンドルの作動位置が小排水のときは、水の水勢により排水弁体が閉弁され、スピンドルの作動位置が大排水のときは、排水完了のとき排水弁体が閉弁され、スピンドルを非作動位置に復帰させるタンク排水装置において、スピンドルにLの字状の先端部を有する連動桿を設け、タンク内壁のスピンドル取付穴周辺に基盤を固定し、基盤上に設けた中心軸に懸垂形の回転体を、下部をスピンドル側に付勢した状態で設ける。回転体は、連動捍の回転軌跡にくい込む周辺と、その周辺の上端に、排水適正位置に上昇回転する連動捍を嵌入する切欠部を設け、又、スピンドル側下部に、水中から水面露出で重力増加し、その作用で、回転体をスプリングに抗する逆回転をさせ、連動捍のロック状態を解除する働きのある重量物を、鎖で水中に垂下するように設けたことを特徴とするものである。
【0010】
また、第2の課題解決手段は、上記第1の課題解決手段で述べた回転体を小用排水用回転体(以下、小用回転体)とし、基盤上、スピンドルをはさんで片側に設け、反対側に第1の課題解決手段に準じた回転体を、ただし、垂下する重量物を除いた形で、大用排水回転体(以下、大用回転体)として設ける。大用回転体は、連動捍に接触する周辺の下部に大きな切り取り部を設け、その下部を小用回転体側に延長して形成する。小用回転体は、下部先端部に垂下している重量物に、更に連結具で重量物を追加し、又、同、先端部にかぎ形をした連係棒を延長付加し、小用回転体が、追加した重量物の水面露出による重力増加により回転するとき、連係棒が大用回転体をスプリングに抗した逆回転させ、大用回転体が嵌入した連動捍のロック解除をさせる位置に設けることを特徴とするものである。
【0011】
上記第1の課題解決手段による作用は、次の通りである。すなわち、ハンドルに直結したスピンドルに固定された連動捍とタンク内壁に固着された基盤に設置された回転体と垂下した重量物という主要部品にて構成し、装置を非常に単純化することにしている。ただし、この手段は、小用排水の場合のみであり、大用排水は通常の貯溜水全量排水完了によるものとする。
【0012】
また、第2の課題解決手段による作用は、大排水用と小排水用とに分別しており、大排水量、小排水量は共に、連結具の長さ、重量物の形状により、又、大排水の水勢、小排水の水勢は共に、連動捍の上昇回転角度により、それぞれ自由に調整できるものである。
【発明の効果】
【0013】
上述したように本発明の水洗便所用タンク大小定量排水装置は、ほとんど接触摩擦はなく、構成部品点数も少なく、装置の単純化とコスト低減に効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明の実施形態をタンク内部より見た要部斜視図である。
【図2】 同内部構造の基盤部分のみの斜視図である。
【図3】 同内部構造で、スピンドル先端部を省略した非作動状態を示す正面図である。
【図4】 図3のA−A線断面図である。
【図5】 図3のB−B線断面図と、重量物の垂下状態を示す側面図と、排水弁体を連結したスピンドル先端部の側面図との合成である。
【図6】 図3のC−C線断面図である。
【図7】 小用洗浄水排水状態の、連動捍のロック解除直前の連動捍、小用回転体、タンク内水面の位置との相関正面図である。
【図8】 大用洗浄水排水状態の、連動捍のロック解除直前の連動捍、小用回転体の連係棒、大用回転体、タンク内水面の位置との相関正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基ずいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態の要部斜視図である。スピンドル10と一体回転する連動捍11をスピンドルの根元近くに固着させ、連動捍11のLの字に曲げた先端部12は、回動可能な回動筒部13を外嵌して、スピンドルと平行な位置で回転する。タンク内壁16に固着した基盤17の上に、スピンドルを中心として、その右側に、小用回転体14を配し、左側に大用回転体15を配している。図2は、タンク内壁16に固着させる基盤17の斜視図であり、基盤17上に設けた(小用)突起部18Aと(大用)突起部18Bには、小用回転体14の中心軸19Aと大用回転体の中心軸19Bとが設けられ、小用回転体14、大用回転体15をそれぞれ懸垂の形にて設置するのである。
【0017】
図3において、小用回転体14、大用回転体15は基盤17上の(小用)スプリング20A、(大用)スプリング20Bの付勢力により、小用回転体14の周辺の一部21Aと大用回転体15の周辺の一部21Bとが連動捍が描く円周軌跡22より内側に入りこむように、押出され、一方、基盤上の(小用)回転止め部23Aと(大用)回転止め部23Bで連動捍11との最適の接触位置に調整される。
【0018】
ハンドル操作により、スピンドルと同時に連動捍11の先端部12が下方から、回転上昇すると、回転体のスピンドル側の(小用)周辺21Aと(大用)周辺21Bは、連動捍11に摺動、押圧されるのである。それぞれの周辺の上端に、連動捍11が、小用排水、又は、大用排水の適正作動位置に上昇回転したとき、その連動捍11を嵌入する(小用).切欠部24Aと(大用)切欠部24Bを設ける。切欠部の(小用)底面25Aと(大用)底面25Bは、それぞれの回転体の(小用)中心軸19Aと(大用)中心軸19Bとで連動捍11を支える曲面とし、切欠部の(小用)上面26Aと(大用)上面26Bは、ひさし状になる形で突出させ、連動捍11の過剰回転を防止する。
【0019】
小用回転体14の下部のスピンドル側に延長した下部先端部27に、垂下する(小用)重量物28Aと(大用)重量物28Bが、タンク内壁16に接触しないように、タンク中心部に突出させた懸垂棒29(図5、参照)を設け、その先端に、(小用)玉鎖30Aにて小用回転体用の(小用)重量物28Aを、続いて(大用)玉鎖30Bにて大用回転体用の(大用)重量物28Bを、タンク内、洗浄水満水W0の水中に垂下する。重量物は、それぞれ、水中での浮力を考慮して、比重1に近い構造とする。
【0020】
小用回転体14の最先端31にカギ状の形の先端部32を持つ連係棒33を大用回転体15方向に延長付加する。
【0021】
大用回転体15のスピンドル側の下部に小用回転体14の連係棒33を、とりこむ形の大きな切りとり部34を設け、その下部延長部35を小用回転体14方向に延長して形成する。
【0022】
小用回転体14の連係棒33は、小用回転体14の静止位置から、図7の小用排水の連動捍11のロック解除状態までは、大用回転体15の大きな切りとり部34に接触せず、図8のように、小用回転体14が、それ以上回転すると、小用回転体14の連係棒33が大回転体15の下部延長部35を、接触、摺動、圧迫する形状とする。
【0023】
以下、上記構成の動作を説明する。図7において、ハンドル(図示せず)を小用洗浄水側に回すと、連動捍11は反時計回りに円周軌跡22を画いて回転し、小用回転体14の周辺21Aを接触、摺動、圧迫して上昇し、小用排水動作角度θ1に達したとき、スプリング20Aにより付勢された小用回転体14の切込部24Aが連動捍11を嵌入し、排水が継続する。連動捍11が、更に、上方に回転しようとしても切欠部上面のひさし部26Aで停止される。
【0024】
図7は、小用洗浄水排水の連動捍のロック解除直前の動作図であるが、小用排水量が適正水量になると、タンク内の水面がW1に下がり、水中に垂下している(小用)重量物28Aが水面露出し、重力増加により、小用回転体の下部先端部27に作用し、小用回転体14を、スプリングに抗した反時計方向に回転させる。それにより、連動捍11のロックが解除され、したがってスピンドルが復帰し、排水弁が閉弁され、排水が停止するのである。なお、小用洗浄水の排水量は、(小用)重量物28Aをつなぐ玉鎖30Aの長さと、(小用)重量物28Aの形状とにより自由に調整される。又、排水の水勢の強さは、連動捍11の上昇回転角度θ1の大小により調整される。
【0025】
図8は、大用洗浄水排水時の動作図で、ハンドル(図示せず)を大用洗浄水側に回すと、連動捍11は時計回りに回転し、大用回転体15の周辺21Bを、接触、摺動、圧迫して上昇し、大用排水動作角度θ2に達したとき、スプリング20Bにより付勢された大用回転体15の切欠部24Bが連動捍11を嵌入し、排水が継続される。タンク内の水面が小用排水量W1までは、小用回転体14が回転しても連係棒33は大用回転体15に触れず、以後、排水が続くと、連係棒33が大用回転体下部延長部35に接触し、タンク内水面が、大用排水量の適正水量の水面W2に降下すると、(大用)重量物28Bの水面露出による重力増加により、小用回転体14が更に反時計回りに回転し、したがって最先端の連係棒33も、下方、反時計方向に回転する。
【0026】
大用回転体15の下部、切りとり部34の下部の小用回転体方向への延長部35が、上記、小用回転体の連係棒33で接触、摺動、圧迫され、それにより大用回転体15は、スプリングに抗した時計方向に回転され、ロックされた連動捍11が解除され、スピンドルが復帰し、排水弁が閉弁され、排水が停止する。なお、大用洗浄水の排水量は、(小用)重量物28Aと(大用)重量物28Bとをつなぐ玉鎖の長さ30Bと、(大用)重量物28Bの形状とにより自由に調整される。又、大用排水の水勢の強さは、連動捍11の上昇回転角度θ2の大小により調整される。ところで、大用排水の水勢をより強くするため、連動捍11の上昇回転角度θ2を大きくするときは、排水弁体36を浮力に影響されず常に閉弁方向への力を有している形態にするものとする。
【0027】
実施例として、小用回転体14から、連係棒33と(大用)重量物28Bを撤去し、他方、大用回転体15の下部に小用回転体14の(小用)重量物28Aに準じた重量物を垂下させ、それぞれ、独自に、連動捍11のロック解除動作を持たせてもよい。
【0028】
なお、この発明は、上記の実施形態に限られるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様において、実施することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 スピンドル
11 連動捍
12 連動捍の先端部
13 回動筒部
14 小用回転体
15 大用回転体
16 タンク内壁
17 基盤
18A (小用)突起部
18B (大用)突起部
19A (小用)中心軸
19B (大用)中心軸
20A (小用)スプリング
20B (大用)スプリング
21A (小用)周辺の一部
21B (大用)周辺の一部
22 円周軌跡
23A (小用)回転止め部
23B (大用)回転止め部
24A (小用)切欠部
24B (大用)切欠部
25A (小用)切欠部の底面
25B (大用)切欠部の底面
26A (小用)切欠部の上面(ひさし部)
26B (大用)切欠部の上面(ひさし部)
27 小用回転体の下部先端部
28A (小用)重量物
28B (大用)重量物
29 懸垂棒
30A (小用)玉鎖
30B (大用)玉鎖
31 小用回転体の最先端
32 かぎ状の形の先端部
33 連係棒
34 大きな切りとり部
35 大きな切りとり部の下部延長部
36 排水弁体
θ1 連動捍の小用排水動作角度
θ2 連動捍の大用排水動作角度
W0 洗浄水、満水の水面
W1 小用洗浄水、適正排水の水面
W2 大用洗浄水、適正排水の水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作用のハンドルに連動するスピンドルと同スピンドルに連係してタンク内貯溜水を排出する排水弁体を有し、上記スピンドルを作動位置に移動させることにより排水弁体が開弁され、スピンドルの作動位置が小排水のときは、水の水勢により排水弁体が閉弁され、スピンドルの作動位置が大排水のときは、排水完了のとき排水弁体が閉弁され、スピンドルを非作動位置に復帰させるタンク排水装置において、スピンドルにLの字状の先端部を有する連動桿を設け、タンク内壁のスピンドル取付穴周辺に基盤を固定し、基盤上に設けた中心軸に懸垂形の回転体を、下部をスピンドル側に付勢した状態で設ける。回転体は、連動捍の回転軌跡にくい込む周辺と、その周辺の上端に、排水適正位置に上昇回転する連動捍を嵌入する切欠部を設け、又、スピンドル側下部に、水中から水面露出で重力増加し、その作用で、回転体をスプリングに抗する逆回転をさせ、連動捍のロック状態を解除する働きのある重量物を、鎖で水中に垂下するように設けたことを特徴とする洗浄タンク装置。
【請求項2】
請求項1で述べた回転体を小用排水用回転体(以下、小用回転体)とし、基盤上、スピンドルをはさんで片側に設け、反対側に、請求項1に準じた回転体を、ただし、垂下する重量物を除いた形で、大用排水回転体(以下、大用回転体)として設ける。大用回転体は、連動捍に接触する周辺の下部に大きな切り取り部を設け、その下部を小用回転体側に延長して形成する。小用回転体は、下部先端部に垂下している重量物に、更に連結具で重量物を追加し、又、同、先端部にかぎ形をした連係棒を延長付加し、小用回転体が、追加した重量物の水面露出による重力増加により回転するとき、連係棒が大用回転体をスプリングに抗した逆回転させ、大用回転体が嵌入した連動捍のロック解除をさせる位置に設けることを特徴とする洗浄タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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