説明

便器洗浄水タンク装置

【課題】排水弁体を瞬時に大きく開弁することができると共に、排水弁装置近傍に比較的広いスペースを確保することができ、少ない力で排水能力を向上することができる便器洗浄水タンク装置を提供すること。
【解決手段】中央に排水口12を有する洗浄水タンク本体10中に、排水口12に対して排水弁体35が上下動する排水弁装置30と、同排水弁装置30に連動連結した梃子装置40と、を載置収納すると共に、洗浄水タンク本体10のタンク蓋体11には、洗浄水タンク本体10内の梃子装置40と連動連接した押しボタン50を設けてなる便器洗浄水タンク装置100において、押しボタン50は、排水口12位置よりも一側方にオフセットした位置に配設すべく構成し、梃子装置40は、排水弁体35に連動連結したレバー41と、同レバー41中途を枢支したペデスタル42とより構成すると共に、同ペデスタル42は、排水弁装置30よりも押しボタン50側に近い位置においてレバー41中途を枢支したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水のための押しボタンが梃子装置を介して排水弁体に大きく作用できるようにした便器洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄水タンク装置は、特許文献1に記載されているように、排水口に対して排水弁体を上下動させて開閉弁作用を行う排水弁装置と、同排水弁装置とタンク蓋体に設けた排水用の押しボタンとの間に介設した梃子装置と、を洗浄水タンク中に載置収納したものが知られている。
【0003】
かかる従来の便器洗浄水タンク装置に備えられた梃子装置は、排水弁体装置と押しボタンとの間に設けたペデスタルと、同ペデスタル上端に枢支され、一端を押しボタンに連動連結し他端を排水弁体に連動連結したレバーとよりなり、押しボタンを押圧することにより、レバーをペデスタルとの枢支点を中心として回動させて、力点となる押しボタン側のレバー一端を下方に押圧回動させる一方、作用点となる排水弁体側のレバー他端を上方に回動させて、排水弁体を引上げて排水口を開放し、洗浄水を排水するものである。
【特許文献1】実開昭52−69841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の便器洗浄水タンク装置に備えられた梃子装置では、レバーのペデスタルとの枢支点が、押しボタンよりも排水弁装置に近い位置に配置されており、枢支点から作用点までの距離が、力点までの距離よりも短いため、押しボタンを押圧しても排水弁体を引上げる量が比較的に小さく制限され、また、排水弁装置と梃子装置との間のスペースが狭小となることに伴い排水口径を比較的に小さく設定せざるを得ず、この結果、瞬間的な排水量が少なくなり排水能力が低下していた。
【0005】
一方、近年、トイレ空間の有効利用やデザイン性向上の観点から便器洗浄水タンクの高さを低く抑える場合が多く、この場合、洗浄水タンク内の貯水水位が下がり水頭圧が小さくなる。このため、上記した従来の梃子装置を用いた場合には、排水弁体の引き上げ量、排水口径が制限されるので、便器に供給される洗浄水の水勢が減少し、所望の排水能力を確保することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、排水弁体を瞬時に大きく開弁することができると共に、排水弁装置近傍に比較的広いスペースを確保することができ、少ない力で排水能力を向上することができる便器洗浄水タンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、中央に排水口を有する洗浄水タンク本体中に、前記排水口に対して排水弁体が上下動する排水弁装置と、同排水弁装置に連動連結した梃子装置と、を載置収納すると共に、前記洗浄水タンク本体のタンク蓋体には、前記洗浄水タンク本体内の前記梃子装置と連動連接した押しボタンを設けてなる便器洗浄水タンク装置において、前記押しボタンは、前記排水口位置よりも一側方にオフセットした位置に配設すべく構成し、前記梃子装置は、前記排水弁体に連動連結したレバーと、同レバー中途を枢支したペデスタルとより構成すると共に、同ペデスタルは、前記排水弁装置よりも前記押しボタン側に近い位置においてレバー中途を枢支したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記梃子装置の前記ペデスタル下方には、高さ調整機構を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記梃子装置の前記ペデスタル下端には、左右分岐脚体と、中央背後脚体とよりなる三方脚体を連設したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、前記高さ調整機構は、前記三方脚体の接地面と前記洗浄水タンク本体の内底面との間隔を調整すべく、前記三方脚体に着脱自在に装着し得る調整ブロックよりなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、前記梃子装置のレバーに前記押しボタンの押下作動を受動するレバー受動部を設け、このレバー受動部は調整ワッシャを介して前記レバーに対する取付け上下位置が調整自在に構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、前記排水弁装置のケーシング下部と前記梃子装置の前記ペデスタル下部とを連結するためのペデスタルステーは、一端を前記ケーシング下部に着脱自在な嵌込み構造とし、他端は前記ペデスタル下端の挿入孔に嵌め込まれる支軸を立設し、この支軸は前記挿入孔に上下方向に所定長さ移動可能となるよう嵌め込み固定されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7記載の発明は、前記排水弁装置のケーシング下部と前記梃子装置の前記ペデスタル下部とを連結するためのペデスタルステーは、一端を前記ケーシング下部に着脱自在な嵌込み構造とし、他端は前記ペデスタル下端の挿入孔に嵌め込まれる支軸を立設し、この支軸は前記挿入孔の内周面と所定の隙間を持って遊嵌されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、押しボタンは、排水口位置よりも一側方にオフセットした位置に配設すべく構成し、梃子装置は、排水弁体に連動連結したレバーと、同レバー中途を枢支したペデスタルとより構成すると共に、同ペデスタルは、排水弁よりも押しボタン側に近い位置においてレバー中途を枢支したために、レバーの枢支部を中心にしてレバーの力点までよりもレバーの梃子としての作用点までの距離が長いため、少ない押しボタンの押し下げ量(ストローク)で作用点のレバー一端を大きく作動させ一気にオーバーフロー管を上昇させて排水弁体を瞬時に大きく開弁することができると共に、排水弁装置近傍に比較的広いスペースが確保されて排水口径を比較的大きく採ることができるという効果がある。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、梃子装置のペデスタル下方に高さ調整機構を設けたことにより、ぺデスタル下端部と洗浄水タンク本体の内底面との間隙を調整することができ、最終的には三方脚体の各脚体と不均一な内底面のレベルとの間隙を調整して三方脚体間の高さのバランスを調整しガタを吸収可能とすると共に、全体的なぺデスタルの高さの微調整も行うことができる効果がある。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、梃子装置のペデスタル下端には、左右分岐脚体と、中央背後脚体とよりなる三方脚体を連設したことにより、簡単な構造で梃子装置の安定性を確保することができる効果がある。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、高さ調整機構は、三方脚体の接地面と洗浄水タンク本体の内底面との間隔を調整すべく、三方脚体に着脱自在に装着し得る調整ブロックよりなるために、調整ブロックの中空矩形状枠の各側壁の厚みを異なるように構成することにより側壁の厚みを選択して載置部と洗浄水タンク本体の内底面との間隙を調整しガタを吸収し全体的なぺデスタルの高さの微調整も行うことができる効果がある。
【0018】
また、請求項5記載の発明によれば、梃子装置のレバーに押しボタンの押下作動を受動するレバー受動部を設け、このレバー受動部は調整ワッシャを介してレバーに対する取付け上下位置を調整自在としたために、押しボタンとレバー受動部との相対的な位置関係を簡単に調整することができ、押しボタンがレバー受動部と当接するタイミングを簡単に調整することができる効果がある。
【0019】
請求項6記載の発明よれば、排水弁装置のケーシング下部と梃子装置のペデスタル下部とを連結するためのペデスタルステーは、一端をケーシング下部に着脱自在な嵌込み構造とし、他端はペデスタル下端の挿入孔に嵌め込まれる支軸を立設し、この支軸は挿入孔に上下方向に所定長さ移動可能となるよう嵌め込み固定できるように構成しているために、ぺデスタルの上下位置セッティングに伴い生起する上下方向の誤差を吸収することができる効果がある。
【0020】
請求項7記載の発明よれば、排水弁装置のケーシング下部と梃子装置のペデスタル下部とを連結するためのペデスタルステーは、一端をケーシング下部に着脱自在な嵌込み構造とし、他端はペデスタル下端の挿入孔に嵌め込まれる支軸を立設し、この支軸は前記挿入孔の内周面と所定の隙間を持って遊嵌されているために、ペデスタルの上下位置セッティングを行う際にペデスタルステーが傾いた状態で配置されたとしても、このペデスタルステーの傾きを隙間により吸収することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明を適用した便器洗浄水タンク装置100を備えた便器Aの概略を示す斜視図、図2は便器洗浄水タンク装置100の排水操作前の状態を示す断面正面図、図3は図1に示した便器洗浄水タンク装置100の排水操作時の状態を示す断面正面図である。
【0022】
図1〜図3に示すように、本発明の便器洗浄水タンク装置100は、便器Aの便器本体B後面に装着されて便器本体Bに洗浄水を供給するために設けられるものであり、この便器洗浄水タンク装置100は、便器Aへ供給するための洗浄水を貯留する洗浄水タンク本体10と、洗浄水タンク本体10内に収納され、同タンク本体10に水を供給する給水装置20と、洗浄水タンク本体10内に収納され、同タンク本体10内に蓄えられた水を便器Aに向けて排出する排水弁装置30と、洗浄水タンク本体10内に収納され、排水弁装置30に連動連結した梃子装置40と、タンク蓋体11の右側部に配設し梃子装置40に連動連接した押しボタン50とよりなる。図1中、Cは、洗浄水タンク本体のタンク蓋体11上面に施した波紋状の模様である。
【0023】
洗浄水タンク本体10は、略扁平箱型に形成しており、給水源(図示せず)から供給された水を貯留すると共に、この洗浄水を便器本体Bへ向けて排水するためのものである。また、同タンク本体10の内底面10a中央には、排水口12が設けられ、洗浄水タンク本体10の上方開口部にはタンク蓋体11が開蓋自在に閉蓋されており、タンク蓋体11の右側部には押しボタン50が配設されている。すなわち、この押しボタン50は排水口12の位置から一側方にオフセットした位置に配設されている。
【0024】
更に、洗浄水タンク本体10内には、同タンク本体10内部に水を供給する給水装置20が収納されており、給水装置20は、洗浄水タンク本体10内の左側方に立設され、下端を給水源と接続した給水管21と、洗浄水タンク本体10へ向けた吐水・止水を切替えるべく給水管21の上端に設けた給水バルブ22と、洗浄水タンク本体10内の水位の変動に応じた上下動によって給水バルブ22の吐水・止水の切替え作動を行うフロート部23と、給水バルブ22からの吐水を行う吐水管(図示せず)を有している。また、給水装置20から延設されたリフィール管24の先端には継手24bが設けられており、この継手を後述するリフィール管保持部24aへ差し込むことによって、排水弁装置30のオーバーフロー管33上端の開口部33aに対向して洗浄水タンク本体10の排水口12に連通している。
【0025】
次に、排水弁装置30について説明する。
洗浄水タンク本体10の中央に設けた排水口12の内周面には、排水弁装置30のケーシングとなる排水ガイド筒31を洗浄水タンク本体10内部に立設した状態で嵌着し、排水ガイド筒31の上部にはフロート収納シリンダ32を一体に連設し、同ガイド筒31とフロート収納シリンダ32の中央にはオーバーフロー管33が上下昇降自在に収納されている。オーバーフロー管33はその周面にフロート34を連設しており、従って、フロート34の昇降に応じてオーバーフロー管33も昇降する。
【0026】
オーバーフロー管33の下端には、排水口12の開閉を行う排水弁体35が設けられ、同排水弁体35は排水ガイド筒31の下部内周面に形成した排水口弁座36に当接自在となっている。従って、オーバーフロー管33が上昇することによってその下端の排水弁体35は排水口弁座36から離脱し排水口12を開放して排水が開始される一方、オーバーフロー管33が降下することによってその下端の排水弁体35は排水口弁座36に当接密着し排水口12を閉塞して排水が停止する。すなわち、排水弁体35は、排水ガイド筒31内において、排水口弁座36より上方の範囲で昇降作動する。
【0027】
また、排水弁体35の昇降作動範囲に対応する排水ガイド筒31の周壁には、入水窓31aが四側方に開孔されている。排水口12の開弁状態、すなわち、排水弁体35が排水口弁座36から離脱し排水口12を開放した状態では、洗浄水タンク本体10内の洗浄水は、この入水窓31aを通過して排水ガイド筒31内へ流入し、排水口12から排水される。
【0028】
図2及び図3中、37は、オーバーフロー管33の上端に取付けた連結ステーであり、フロート34の浮力をオーバーフロー管33に伝達するためのものである。38は、フロート収納シリンダ32の内底部中央に立設したガイド筒であり、オーバーフロー管33の昇降をガイドする。39は、排水ガイド筒31の下部と洗浄水タンク本体10の内底面10aとの間に介設されたシール部材であり、排水ガイド筒31を排水口12に対して密着嵌合できるようにしている。24aは、給水装置20のフロート収納シリンダ32周壁に立設し、オーバーフロー管33の上方でリフィール管24を保持するためのリフィール管保持部である。
【0029】
次に、梃子装置40について説明する。梃子装置40は、一端41aを排水弁装置30のオーバーフロー管33上端に係合し、他端を押しボタン50に当接したレバー41と、レバーの中途を枢支したぺデスタル42とよりなる。
【0030】
すなわち、レバー41の一端、すなわち梃子の作用点41aはオーバーフロー管33を介して排水弁体35を開閉し、レバー41の他端、すなわち梃子の力点41bは洗浄水タンク本体10のタンク蓋体11右側部に配設した押しボタン50に当接してボタン50の押圧によりレバー41を作動させ、レバー41の中途の枢支部、すなわち梃子の支点41cは、レバー41の中途をぺデスタル42に支持させる。
【0031】
図4は、梃子装置40の前方側から観た分解斜視図であり、図5は、梃子装置40の後方側から観た分解斜視図である。図4及び図5に示すように、レバー41の中途を枢支したぺデスタル42は、支柱の下部に左右に分岐した左右分岐脚体43aと、分岐中央の後方に延設した中央背後脚体43bとよりなるスフインクス座風の三方脚体43を有し、支柱上端にレバー41の中途が枢支された構成としている。左右分岐脚体43aは、レバー41の作用点41a側の下方にて洗浄水タンク本体10の内底面10aに接地する位置に配設され、中央背後脚体43bは、レバー41の力点41b側の下方にて洗浄水タンク本体10の内底面10aに接地する位置に配設されている。三方脚体43は、左右分岐脚体43a及び中央背後脚体43bが、かかる接地位置に配設されることにより梃子装置40の安定性を確保することができる。
【0032】
このように、梃子装置40は、排水弁装置30と押しボタン50との間に位置しており、しかも、レバー41の枢支部たる支点41cは排水弁装置30よりも押しボタン50側に近い位置に配置しておくことにより、レバー41の梃子作用による押しボタン50のわずかな力点41bのストロークを枢支部の支点41cを介して排水弁装置30の排水作動に作用点41aのストロークとして大きく作用させ、排水口12から排水される洗浄水に対して瞬間最大水量を確保できるようにしている。
【0033】
また、レバー41の枢支部たる支点41cが排水弁装置30よりも押しボタン50側に近い位置に配置されることにより、排水弁装置30と梃子装置40との間に比較的に広いスペースを確保することができ、排水口12の径を比較的大きく採ることができ、排水能力を向上させることができる。
【0034】
特に、排水弁装置30の入水窓31aと、梃子装置40の三方脚体43との間のスペースを広くとることにより、梃子装置40の三方脚体43側の入水窓31aを介して洗浄水が排水ガイド筒31内へ流入し易くなるので、排水能力をより一層向上させることができる。
【0035】
図中、44は、レバー41中途に形成した軸孔、45は、ペデスタル42上端に立設した二又フランジ、46は、同フランジ45間に架設した支軸であり、レバー41の軸孔44を介してレバー41をペデスタル42上端の二又フランジ45間に枢支するためのものである。
【0036】
オーバーフロー管33側に位置するレバー41の一端(作用点41a)には、二又状のフォーク部47を形成し、このフォーク部47の二又間にオーバーフロー管33の上端部腕部(図示せず)を狭持係合している。一方、押しボタン50下方に位置するレバー41の他端(力点41b)は縦方向の挿入孔48を形成して、その上端に円盤状のレバー受動部としてのレバー受動盤49を載設しており、レバー受動盤49の下面には支柱61を垂設している。レバー41の他端(力点41b)とレバー受動盤49とは、支柱61を挿入孔48に挿入した状態で、支柱61の下方に設けられた周溝61aの任意の位置を止輪68で掛止することにより固定される
【0037】
支柱61の周面には多数の調整ワッシャ62を取外し自在に装着することにより挿入孔48の開口上端面とレバー受動盤49との間に調整ワッシャ62を介在してレバー受動盤49のレバー41に対する取付け上下位置調整ができるように構成している。このようにレバー受動盤49のレバー41に対する取付け上下位置調整をすることにより、押しボタン50とレバー受動盤49との相対的な位置関係を調整して押しボタン50がレバー受動盤49に当接するタイミングの調整を図る。
【0038】
また、三方脚体43の下端部は洗浄水タンク本体10の内底面10aに沿った断面矩形状の載置部63としており、この載置部63には高さ調整機構が設けられている。高さ調整機構は、断面矩形状の載置部63外周に嵌着自在な形状、すなわち、中空矩形状枠に形成した調整ブロック64よりなり、調整ブロック64の中空矩形状枠の各四側壁64a,64b,64c,64dはそれぞれ厚みが異なるように構成されている。従って、調整ブロック64を載置部63に嵌着する際に下面に位置する四側壁64a,64b,64c,64dの厚みをいずれか1つ選択することにより載置部63と洗浄水タンク本体10の内底面10aとの間隙を調整することができ、最終的には三方脚体43の各脚体43a,43bと不均一な内底面10aのレベルとの間隙を調整して三方脚体43間の高さのバランスを調整しガタを吸収可能とすると共に、全体的なぺデスタル42の高さの微調整も行うことができる。
【0039】
また、排水弁装置30の排水ガイド筒31と梃子装置40との間には、ぺデスタルステー65が介在されて排水弁装置30の排水ガイド筒31下部と梃子装置40のペデスタル42下部とを連結すると共にその間隔を一定距離に保持することができるように構成されている。すなわち、ペデスタル42下端、すなわち、支柱下端には支軸65bを下方より挿入するための挿入孔42aを開口している。一方、ぺデスタルステー65は一端を排水ガイド筒31下部の側壁に形成された突起31bに嵌着自在な嵌着孔65aとすると共に、他端はぺデスタル42下端、すなわち、支柱下端に形成した挿入孔42aに嵌め込み自在な支軸65bを立設している。支軸65bは、上端を逆U字状の帯状体とし、この帯状体の幅員は支軸65bの上端に向って先細りとなるテーパー状を成している。支軸65bはかかるテーパー状を成していることにより、挿入孔42aの内周面と所定の隙間を持って遊嵌されることとなり、この隙間は、ペデスタル42の上下位置セッティングを行う際に生じるペデスタルステー65の傾きを吸収するようになっている。
【0040】
また、ぺデスタル42下端、すなわち、支柱下端には支軸65bを下方より挿入するための挿入孔42aを開口している。
【0041】
従って、ぺデスタルステー65を排水弁装置30と梃子装置40との間に介設するためには、まず同ステー65の一端に排水弁装置30の排水ガイド筒31の突起31bを嵌着して連結すると共に同ステー65の他端の支軸65bをぺデスタル42の下端に形成した挿入孔42aに挿入してぺデスタルステー65を介設する。ペデスタル42の下部側壁には横孔42bが穿設されており、同横孔42bには別途設けた挿しこみ自在のピン66が挿入され、予めペデスタル42の挿入孔42aに遊嵌されている支軸65bに穿設された長孔形状の係合孔部65cと係合してぺデスタルステー65に立設した支軸65bの抜け止めを行う。支軸65bの抜け止めを行っても、係合孔部65cが長孔形状に形成されていることにより、支軸65bは、挿入孔42aに上下方向に所定長さ、すなわち、係合孔部65cの孔幅だけ揺動可能となるよう嵌め込み固定されることとなる。かかる態様で支軸65bが挿入孔42aに対して嵌め込み固定されていることにより、ぺデスタル42の上下位置セッティングに伴い生起する上下方向の誤差を吸収することができる。
【0042】
図中、67は、ピン66基部の両側方にピン66と平行に連結した係合ピン67であり、先端は膨出して係合突部67aとしており、ピン66を横孔42bに挿入した場合に両側方の係合ピン67がペデスタル42の両側壁に刻設した溝部42cに嵌着され、かつ係合突部67aが溝部42c奥のペデスタル42側壁に係合してピン66の挿し込み固定を行う。
【0043】
次に、梃子装置40と連動連接した押しボタン50について説明する。
図1〜図3に示すように、押しボタン50は、前述した通り洗浄水タンク本体10のタンク蓋体11右側部、すなわち、排水口12の位置よりも右側方にオフセットした位置に配設されている。タンク蓋体11には押しボタン挿通孔51が穿設されており、同孔51には円筒状で上端縁に係合フランジ52を有する有底状の押しボタンケース52aが垂設されており、この押しボタンケース52aの周面の雄ネジにナット53が螺合して上記係合フランジ52をタンク蓋体11に密着して固定している。同ケース52a内には押しボタン本体54が挿入され同ボタン本体54と押しボタンケース52aの内底面との間にはスプリング55が介在している。押しボタン本体54の下面にはプランジャ56が垂設され、プランジャ56下端部には当接部材57が設けられており、当接部材57は梃子装置40のレバー41の一端に設けたレバー受動盤49と当接自在となっている。
【0044】
[作動説明]
図2に示すように排水口12を閉塞した状態、すなわち、排水弁体35が排水ガイド筒31の排水口弁座36に着座した状態では梃子装置40のレバー41は押しボタン本体54の当接部材57と当接した状態であり、かつ洗浄水タンク本体10内には洗浄水が所定位置まで満杯状態となっている。
【0045】
かかる状態で押しボタン本体54を押圧すると当接部材57がレバー受動盤49を押し下げ、図3に示すように梃子装置40のレバー41が枢支部41cを中心に左端を上昇した傾斜状となる。レバー41の一端に設けられた二又状のフォーク部47はオーバーフロー管33周壁と係合しながら同管を引き上げる。同管33の引き上げと同時にフロート34も引き上げられ、かつ同管33下端の排水弁体35も排水ガイド筒31内で引き上げられて排水ガイド筒31の周壁の所定の入水窓から排水口12に向って洗浄水が排水されるものである。
【0046】
なお、押圧した押しボタン本体54はスプリング55により復元するが排水弁体35を開弁して一旦排水状態としたオーバーフロー管33はフロート34の浮力により上昇したままであり、排水に伴いフロート34が死水線位置に降下するまでフロート34は降下し続けそれに伴いレバー41も排水口12の閉塞状態のレバー位置に近づき排水弁体35が排水口12を閉弁したときにはレバー41は排水開始前のタンク満杯状態の位置に復元する(図2参照)。
【0047】
このように押しボタン50を押圧して枢支部41cを中心にレバー41を回動させ、オーバーフロー管33を介した排水弁体35の開閉弁作動を行う場合において、排水弁装置30よりも押しボタン50側に近い位置にレバー41の枢支部41cが設けられているため、結局、レバー41の枢支部41cを中心にしてレバー41の力点41bまでの距離よりもレバー41の梃子としての作用点41aまでの距離が長く構成されていることになる。従って、少ない押しボタン50の押し下げ量(ストローク)で作用点41aのレバー一端を大きく作動させ一気にオーバーフロー管33を上昇させて排水弁体35を瞬時に大きく開弁作動させることができると共に、排水弁装置30近傍に比較的に広いスペースが確保されて排水口12の径を比較的大きく採ることができ、排水能力を高めることができる効果がある。
【0048】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を適用した便器洗浄水タンク装置を備えた便器の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示した便器洗浄水タンク装置の排水操作前の状態を示す断面正面図である。
【図3】図1に示した便器洗浄水タンク装置の排水操作時の状態を示す断面正面図である。
【図4】図1に示した便器洗浄水タンク装置に備えられた梃子装置40の前方側から観た分解斜視図である。
【図5】図1に示した便器洗浄水タンク装置に備えられた梃子装置40の後方側から観た分解斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10a 洗浄水タンク本体の内底面
11 タンク蓋体
12 排水口
30 排水弁装置
31 ケーシング(排水ガイド筒)
35 排水弁体
40 梃子装置
50 押しボタン
41 レバー
42 ペデスタル
42a 挿入孔
43 三方脚体
43a 左右分岐脚体
43b 中央背後脚体
49 レバー受動部(レバー受動盤)
62 調整ワッシャ
64 調整ブロック(高さ調整機構)
65 ペデスタルステー
65b 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に排水口を有する洗浄水タンク本体中に、前記排水口に対して排水弁体が上下動する排水弁装置と、同排水弁装置に連動連結した梃子装置と、を載置収納すると共に、
前記洗浄水タンク本体のタンク蓋体には、前記洗浄水タンク本体内の前記梃子装置と連動連接した押しボタンを設けてなる便器洗浄水タンク装置において、
前記押しボタンは、前記排水口位置よりも一側方にオフセットした位置に配設すべく構成し、
前記梃子装置は、前記排水弁体に連動連結したレバーと、同レバー中途を枢支したペデスタルとより構成すると共に、
同ペデスタルは、前記排水弁装置よりも前記押しボタン側に近い位置においてレバー中途を枢支したことを特徴とする便器洗浄水タンク装置。
【請求項2】
前記梃子装置の前記ペデスタル下方には、高さ調整機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄水タンク装置。
【請求項3】
前記梃子装置の前記ペデスタル下端には、左右分岐脚体と、中央背後脚体とよりなる三方脚体を連設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の便器洗浄水タンク装置。
【請求項4】
前記高さ調整機構は、前記三方脚体の接地面と前記洗浄水タンク本体の内底面との間隔を調整すべく、前記三方脚体に着脱自在に装着し得る調整ブロックよりなることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の便器洗浄水タンク装置。
【請求項5】
前記梃子装置のレバーに前記押しボタンの押下作動を受動するレバー受動部を設け、このレバー受動部は調整ワッシャを介して前記レバーに対する取付け上下位置が調整自在に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の便器洗浄水タンク装置。
【請求項6】
前記排水弁装置のケーシング下部と前記梃子装置の前記ペデスタル下部とを連結するためのペデスタルステーは、一端を前記ケーシング下部に着脱自在な嵌込み構造とし、他端は前記ペデスタル下端の挿入孔に嵌め込まれる支軸を立設し、この支軸は前記挿入孔に上下方向に所定長さ揺動可能となるよう嵌め込み固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の便器洗浄水タンク装置。
【請求項7】
前記排水弁装置のケーシング下部と前記梃子装置の前記ペデスタル下部とを連結するためのペデスタルステーは、一端を前記ケーシング下部に着脱自在な嵌込み構造とし、他端は前記ペデスタル下端の挿入孔に嵌め込まれる支軸を立設し、この支軸は前記挿入孔の内周面と所定の隙間を持って遊嵌されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の便器洗浄水タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−214873(P2008−214873A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49833(P2007−49833)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】