説明

便器洗浄水生成装置及び便器洗浄システム

【課題】 形成蓄積された尿石を溶解除去可能な便器洗浄水生成装置及び便器洗浄システムを提供する。
【解決手段】 水洗便器に供給する洗浄水の流路を開閉する開閉弁と、少なくとも一対の電極の間に電圧を印加することにより放電を生じさせ酸化窒素ガスを生成可能な放電器と、前記洗浄水の流路に設けられ、前記放電器により生成された前記酸化窒素ガスを前記洗浄水に溶解させる溶解部と、前記開閉弁と前記放電器を制御可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記開閉弁を開いて前記溶解部を通過する洗浄水に前記酸化窒素ガスを溶解させ前記溶解部から排出させることを特徴とする便器洗浄水生成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄水生成装置及び便器洗浄システムに関し、特に、酸化窒素ガスと洗浄水との反応により生成させた酸性水を水洗便器や排水管等に流し、尿石の蓄積を解消する便器洗浄水生成装置及び便器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器は、使用者のボタン操作等による手動洗浄、あるいは、便器の前に人が立ったことを検出し便器の使用が終了した時点で自動的に上水又は中水を流す自動洗浄により清浄度が維持される。しかし、小便器や大便器においては、「尿石」が配管内に付着して排水の通過路を狭くしたり、便器の表面に付着して外観を損ね、細菌繁殖の温床となって臭気を放つようになる。一旦付着してしまった尿石は、通常の清掃では除去することは難しく、ブラシで強く擦らないと取れない。また、排水管に形成蓄積された尿石を、ブラシ等を用いて直接除去することが極めて困難なため、この尿石の除去は、専門の業者に依頼する必要があり、大きな負担となっている。
【0003】
この水洗便器の衛生方法を見てみると、例えば、尿石形成の主原因であるバクテリアを殺菌する方法が開示されているが(特許文献1)、この衛生方法に関しては、尿石の生成を抑制するものであり、すでに固着した尿石を除去可能とするためには改善の余地があった。
【0004】
また、洗浄水に酸性物質を添加してスケールの固着を未然に防止せんとする方法が開示されている(特許文献2)。しかし、この方法の場合、酸性物質等の薬剤補給が必要であり、メンテナンスやコストなどの点で改善が必要であった。
【特許文献1】特開2000−80701号公報
【特許文献2】特開平10−1995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、形成蓄積された尿石を溶解除去可能な便器洗浄水生成装置及び便器洗浄システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
水洗便器に供給する洗浄水の流路を開閉する開閉弁と、
少なくとも一対の電極の間に電圧を印加することにより放電を生じさせ酸化窒素ガスを生成可能な放電器と、
前記洗浄水の流路に設けられ、前記放電器により生成された前記酸化窒素ガスを前記洗浄水に溶解させる溶解部と、
前記開閉弁と前記放電器を制御可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記開閉弁を開いて前記溶解部を通過する洗浄水に前記酸化窒素ガスを溶解させ前記溶解部から排出させることを特徴とする便器洗浄水生成装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、
上記の便器洗浄水生成装置と、
水洗便器と、
を備えたことを特徴とする便器洗浄システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放電技術を利用して酸性水を生成させ、小便器や大便器あるいはそれらの排水管に流すことにより、形成蓄積された尿石を溶解除去し、それと同時に節水も可能な便器洗浄水生成装置及び便器洗浄システムを提供することができ、産業上のメリットは多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの模式図である。
また、図2は、本発明の実施の形態にかかる洗浄システムの動作を例示するフローチャートである。
本実施形態の便器洗浄水生成装置は、制御部10と、放電器20と、逆止弁(逆流防止弁)25と、給気管31と、溶解部35と、給水管50と、給水弁60と、を備える。すなわち、給水弁60の下流側には、酸化窒素ガスを水道水Wに溶解させて酸性の洗浄水を生成する溶解部35が設けられている。溶解部35には給気管31を介して放電器20が接続されている。給気管31は、逆止弁25が設けられている。溶解部35の下流側には給水管50が接続され、便器70に洗浄水を供給可能とされている。放電器20と、溶解部35と、給水弁60は、制御部10により同期化制御される。溶解部35やその下流の給水管50などの酸性水に接する部分は、耐酸性からなる材料で形成することが望ましい。
【0010】
この便器洗浄水生成装置は、通常使用する「通常洗浄モード」と、後述する「酸性水洗浄モード」と、を例えばタイマー等により定期的に切替えて実施可能とされている。
「通常洗浄モード」においては、例えば制御部10により給水弁60が開閉することにより、一旦溶解部35に水が供給されるが、そのまま通過して便器70に洗浄水が供給され水洗洗浄が実施される。この時、典型的には図示しない人体センサからの人体検知信号により、便器70が使用されたことを検出して、洗浄水を自動的に流す。または、便器70を使用する使用者がバルブやボタンなどを操作することにより、便器70に洗浄水を流すようにしてもよい。
【0011】
一方、本実施形態による「酸性水洗浄モード」の洗浄を行う場合、まず、制御部10からの信号により給水弁60を開き、溶解部35に水を導入し、また、これと同時に、空気を「放電器20」で分解して生成させた酸化窒素ガス(NOx)を、逆止弁25を介して溶解部35に導入し、酸性水を生成する(ステップS100)。なお、この際に、酸化窒素ガスが洗浄水に溶解されない状態で外部に排出されないようにするため、給水弁60を開いて溶解部35に水を導入してから酸化窒素ガスを溶解部35に導入することが望ましい。
【0012】
そして、このようにして生成された酸性水を便器70あるいは排水管80に流す(ステップS110)。実際には、酸性水を生成しつつ(ステップS100)、その酸性水を順次供給する(ステップS110)点で、これらのステップは同時進行的に実行される。
【0013】
なお、本願明細書において「空気分解ガス」とは、空気中で放電させることにより生成されるガスをいい、空気を構成するガスが単に分解したガスのみならず、これら分解したガスが新たに結合して生成されるガスも含むものとする。例えば、単に窒素(N)あるいは酸素(O)などが分解したガスのみならず、窒素と酸素とが新たに結合して生成される酸化窒素ガスも「空気分解ガス」に含まれるものとする。
【0014】
ここで、本実施形態の「酸性水洗浄モード」は、「通常洗浄モード」と瞬間的に切り替えて実施できる。つまり、「通常洗浄モード」の場合は、上述したように溶解部35に水が供給されても、溶解部35を素通りして便器70へ供給される。一方、「酸性水洗浄モード」の場合は、洗浄水が溶解部35に供給されると同時に、放電器20で分解して生成される酸化窒素ガスが溶解部35に供給され、酸性水を生成して便器70に供給することができる。
【0015】
このようにして供給された酸性水が尿石を溶解することにより、便器70や排水管80における尿石の形成を予防しつつ、すでに形成蓄積された尿石を溶解除去することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、放電を利用して酸性水を生成させ、水洗便器やその排水管などに供給することにより、尿石の溶解除去が可能となり、それと同時に、後述するように節水効果も得られる。
【0016】
次に、本実施形態に用いることができる放電器20についてさらに具体的に説明する。 図3(a)は、本実施形態に係る洗浄水生成装置の放電器20を例示する模式図であり、(b)は、そのA−A線の断面図である。
【0017】
同図に表したように、放電器20としては、Packed Bed方式の放電リアクタを用いることができる。この放電リアクタは、例えば、円柱状の内側電極21と、その周囲を取り囲むように設けられた円筒状の外側電極22との間に、多数の誘電体ペレット23を充填した構造を有する。例えば、内側電極21と外側電極22との間隔を14ミリメータ程度とし、ペレット23の粒径を1ミリメータ程度とした場合、電極21、22間に、100ヘルツ〜数キロヘルツ、1キロボルト〜10キロボルトの交流電圧を印加すると、誘電体ペレット23の空隙において放電が発生する。そこに、空気を通気させると、空気が窒素原子や酸素原子などに一旦分解された後、再結合により例えば、NO(一酸化窒素)やNO(二酸化窒素)などの酸化窒素ガスや、O(オゾン)などの空気分解ガスが生成される。
【0018】
ここで、誘電体ペレットの材料としては、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)等の強誘電体を用いることができる。また、本実施形態に用いることができる他の放電方法として、グロー放電を用いたOAUGDP(One Atomosphere Uniform Glow Discharge Plasma)や触媒間でプラズマ放電させるPACT(Plasma- Assisted Catalytic Technology)やコロナ放電や無声放電等が挙げられる。
【0019】
また、後に詳述するように、低電圧で空気を分解させると、オゾン分子(O)を含む酸化窒素ガスが形成されるが、これらオゾンを水道水に溶解させて得られるオゾン水溶液は殺菌効果は有するが、弱酸性のため、尿石を溶解する効果は希薄である。ただし、後述するように、放電電圧を切り替えることにより、「殺菌水洗浄モード」としてのオゾン水溶液と、「酸性水洗浄モード」としての酸性水と、を選択的に切替えて、あるいは併用して使用することができる。
【0020】
次に、放電器20によるNOxガスの生成特性について説明する。
図4は、放電リアクタの主面に垂直方向の反応路長における電圧に対するNOxガス生成量の推移を例示するグラフ図である。ここで、横軸を電圧(キロボルト)とし、縦軸をNOxガス生成量(ppm)とした。
【0021】
本実験は、図3に関して前述した放電リアクタを用いて、以下の条件で評価を行った。すなわち、放電リアクタの電極間距離を14.5ミリメートル、反応路長Lを3種類(Lが117ミリメータ、42ミリメータ、11ミリメータ)、電極間に印加する電圧の周波数を1000Hz、Packed bed方式放電リアクタに空気を2リットル/分で通気させながら、印加放電してNOxガスを生成させた。
【0022】
同図に表したように、いずれの反応路長においても電圧の増加に伴い、NOxガスが増加し、例えば、印加電圧が5キロボルトのとき、反応路長Lが117ミリメータの放電リアクタにおいてNOxガス生成量が950ppmとなる。
【0023】
図5は、放電リアクタの反応路長に対するNOxガス生成量の推移を例示するグラフ図である。横軸を反応路長(ミリメータ)とし、縦軸をNOxガス生成量(ppm)とした。
【0024】
いずれの印加電圧においても、反応路長の増加に伴いNOxガス生成量はほぼ比例して増加し、例えば、反応路長が117ミリメートルのとき、NOxガス生成量が950ppmという結果が得られた。
【0025】
図6は、本実施形態にかかる便器洗浄水生成装置の溶解部35の構造を例示する模式図であり、図1の領域Rの部分に相当する(a)断面図と、(b)A−A線の断面図である。 同図に表したように、溶解部35に、例えば、「エジェクタ」の構造を用いることができる。このエジェクタは、給水管50から供給される水の流路が狭窄されたノズル部32と、その下流側で流路が拡がった気泡混入部36と、を有する。気泡混入部36には、給気管31が接続され、放電器20により生成されたNOxなどの酸化窒素ガスが導入可能とされている。また、溶解部35と給気管31との接続部には液漏れ防止として、例えば、オー(O)リング33などが適宜設けられる。
【0026】
この溶解部35に給水管50から水を供給すると、ノズル部32において加圧され流速が増大した後に、気泡混入部36において減圧され、巻き込み効果による吸引力が発生する。この吸引力により、給気管31を介して酸化窒素ガスが吸引され、水に気泡として混入し溶解して硝酸(HNO)や亜硝酸(HNO)などの酸性水が生成される。
【0027】
すなわち、本実施例によれば、エジェクタによる気体吸引作用と気液混合作用を利用することにより、短時間で また、本具体例においては、吸気管31に酸化窒素ガスを供給すれば酸性水が生成され、吸気管31に酸化窒素ガスを供給しなければ通常の洗浄水による洗浄が可能である。つまり、水の流路などを切替ることなく、通常の水による洗浄と、酸性水による洗浄とを使い分けることができる。
【0028】
また一方、本実施形態においては、図3に関して前述したように、放電器20に印加する電圧を調整することにより、オゾン水による洗浄モードと、酸性水による洗浄モードと、を切り替えて実施可能である。
【0029】
図7は、本実施形態に用いることができる洗浄モードの切替を例示するフローチャートである。
すなわち、図3に関して前述したような放電器20に5キロボルト(kV)程度の高電圧を印加し、空気を分解した場合、NOxガスリッチな混合ガスが生成される。一方、2キロボルト(kV)程度の低電圧を印加した場合は、逆にOガスリッチの混合ガスが生成される。これは、空気中のNガスの解離エネルギーとOガスの解離エネルギーとが異なるからであり、放電により与えるエネルギーが高いとNOxガスリッチな混合ガスが得られ、放電により与えるエネルギーが低いとオゾンガスリッチな混合ガスが生成される。
【0030】
このように、印加する電圧により空気分解ガスの成分が変化することから、この性質を利用して、水洗便器や排水管の状態に応じて、「殺菌水洗浄モード」と「酸性水洗浄モード」のいずれかを選択して実行することが可能となる。
【0031】
例えば、低い印加電圧で空気を放電分解させた場合、オゾンガスリッチな空気分解ガスが生成されるため、この空気分解ガスを水道水に導入して得られるオゾン水を用いて、水洗便器や排水管を殺菌する「殺菌水洗浄モード」を実行できる。また一方、高電圧の印加によりNOxガスリッチな空気分解ガスを生成させ、酸性水を用いて尿石を溶解除去させる「酸性水洗浄モード」を実行できる。このように、放電器20への印加電圧を変えることにより、それぞれ目的に合わせた洗浄モードを適宜実施することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態によれば、水道水のみを流す洗浄水量に対して、節水することができる。これは、本実施例の「酸性水洗浄モード」を適宜実行することにより、少ない水量でも尿石の蓄積や臭気の発生などを防止できるからである。
次に、本発明の他の具体例の洗浄システムについて説明する。
図8は、本発明の第2の具体例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
これらの図面については、図1乃至図7に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0033】
すなわち、この具体例においては、放電器20の気体上流側に加圧部38が接続されている。給水弁60と溶解部35と放電器20と加圧部38は制御手段10により同期化制御される。
本具体例において、「通常洗浄モード」の場合は、給水弁60が開閉することにより、便器70が洗浄される。
【0034】
一方、「酸性水洗浄モード」で洗浄を行う場合、まず、例えば、コンプレッサ等からなる加圧部38により、加圧された空気を放電器20に供給して酸化窒素ガスを生成し、このガスを溶解部35に給気する。つまり、酸化窒素ガスを加圧して溶解部35にに供給できるため、酸化窒素ガスの洗浄水への溶解効率が向上し、より高い濃度の酸性水を生成させることが可能となる。ここで、溶解部35は、例えば、図6に関して前述したようなエジェクタ方式のものでもよく、あるいは、図14及び図16などに関して後述するものでもよい。
【0035】
図9は、本発明の第3の具体例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
本具体例においては、溶解部35の下流側に、分流部45が設けられている。この分流手段45から下流側に分岐した排出路B1は、排出管80に接続される。
【0036】
その動作に際して「通常洗浄モード」では、水道水Wは分流部45を介して、便器70へ供給される。
【0037】
一方、「酸性水洗浄モード」の場合、放電器20において生成された酸化窒素ガスが溶解部35に供給され、溶解部35において水道水Wと酸化窒素ガスとの混同が生じ、酸性水が生成する。この酸性水は分流部45により排出路B1に分岐され、便器70の下流側の排水管80に流れ、排水管80に形成蓄積された尿石を溶解除去する。つまり、便器70を介することなく排水管80に酸性水が直接供給される。
また、本具体例においては、溶解部35で生成された酸性水を分流部45から便器70に供給することも可能であり、または、便器70と排水管80に同時に供給することも可能である。
【0038】
図10は、本発明の第4の具体例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
本具体例においては、給水弁60と便器70との間に、分流部45が設けられている。この分流手段45から下流側に分岐した排出路B1は、溶解部35に接続され、溶解部35の下流側の排出路B2は、排出管80に接続される。
【0039】
その動作に際して「通常洗浄モード」では、給水弁60が開閉することにより、水道水Wが分流部45を介して、便器70へ供給される。
【0040】
一方、「酸性水洗浄モード」の場合、給水弁60が開き、分流部45で分岐された水道水は、排出路B1を通って溶解部35に導入される。それと同時に、放電器20において生成された酸化窒素ガスが溶解部35に供給され、溶解部35において水道水Wと酸化窒素ガスとの混同が生じ、酸性水が生成する。この酸性水は排出路B2を通って便器70の下流側の排水管80に流れ、排水管80に形成蓄積された尿石を溶解除去する。
【0041】
図11は、本発明の第5の具体例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
本具体例の基本構造は、図10に関して前述した第3の具体例と同様であるが、溶解部35の下流側の排出路B1は、後述する便器70のトラップ部74及びリム部72に連通されている。そして、「酸性水洗浄モード」の洗浄を行う場合、溶解部35で生成された酸性水が、分流部35を介して、尿石が蓄積しやすいトラップ部74及びリム73に直接的に供給され、これらの部分に形成蓄積された尿石を効率的に溶解させ、便器70の衛生を保つことができる。また、本具体例においては、溶解部で生成された酸性水を分流部45から分岐した給水管50と排水路B1との両方に供給して、便器を洗浄させることもできる。
【0042】
図12は、本発明の第6の具体例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
本具体例の基本構造は、図10に関して前述した第4の具体例と同様であるが、溶解部35の下流側の排出路B2は、便器70のトラップ部74及びリム部72に連通されている。そのため、「酸性水洗浄モード」の洗浄を行う場合、溶解部35で生成された酸性水が、尿石が蓄積しやすいトラップ部74及びリム73に集中的に供給され、これらの部分に形成蓄積された尿石を効率的に溶解させ、便器70の衛生を保つことができる。
また、本具体例においては、分流部45から溶解部35と便器70の両方に洗浄水を流し、洗浄水により便器70を洗浄しつつ、酸性水により便器のトラップ部74及びリム部72を洗浄することもできる。これにより、酸性水の濃度は、便器70で排水可能な範囲以内に希釈される。
【0043】
以上、本発明の他の実施形態を例示する便器洗浄水生成装置について説明した。
次に、上述した図1の溶解部35を含む領域Rの他の具体例を説明する。
【0044】
図13は、上述した図1に関する溶解部35を含む領域Rの第2の具体例を例示する(a)断面図と、(b)A−A線の断面図である。これらの図面については、図1乃至図13関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本具体例においては、溶解部35と給気管31との接合部において、溶解部35の内側水路の周側壁には多数の開孔を有する気泡分散体37が配設されている。気泡分散体37の外側には、給気管31と連通した空気層39が設けられている。また、放電器20の気体上流側には、加圧部38が設けられている。
【0045】
加圧部38より加圧した空気を放電器20に導入して酸化窒素ガスを生成し、気泡分散体37を介して水路へ導入すると、気泡分散体37に設けられた開孔において水流の中に膨らむ。この酸化窒素ガスの膨らみは、それぞれの開孔で洗浄水の流れから受ける剪断力により断ち切られて微細な気泡となり、洗浄水に分散して混入し溶解することにより酸性水が生成される。
【0046】
またここで、気泡分散体39は、圧送された酸化窒素ガスの圧力変動や圧力分布を緩和し均一にする緩衝領域としての作用も有する。その結果として、安定した濃度の酸性水をほとんど脈動なく生成できる。
【0047】
図14は、図13に表した溶解部35から放出される吐水流を高感度高速カメラで撮影した写真である。すなわち、この写真は、溶解部35の下流の給水管50あるいは排水路B2を取り除いて吐出される酸性水の吐水流を撮影したものである。
【0048】
酸化窒素ガスは気泡分散体37を介して水道水Wに多数の微細な気泡として混入し、気液混合状態が形成されていることが確認できる。この気液混合状態は、気泡が水流のせん断応力により断ち切られて生成したマイクロバブルが混在することにより形成される。このため、気体の液体との接触面積が拡大し、また気体と液体とがより攪拌されるので、洗浄水への酸化窒素ガスの溶解が促進され、酸性水を効率よく生成することができる。
【0049】
図15は、図1の溶解部35と放電器20の第3の具体例を例示する(a)断面図と、(b)A−A’線の断面図である。
本具体例においては、溶解部35と給気管31との接合部において、溶解部35の接続部に、例えば、集束傘型振動弁を有するシャワーヘッド43が密接され、この密接したシャワーヘッド43の裏面に超音波トランスデューサ42が設けられている。超音波トランスデューサ42は、駆動回路41からの駆動出力により超音波を発振する。そして、これらシャワーヘッド43及び超音波トランスデューサ42は、給気管31に連通している。シャワーヘッド43を超音波トランスデューサ42により振動させながら、放電器20から酸化窒素ガスを導入すると、マイクロバブルやナノバブルなどの微細な気泡として洗浄水に混合される。このようにして気体と液体との接触頻度が向上するため、より高い効率で酸性水を生成できる。
【0050】
以上、溶解部35を含む領域Rの具体例について説明した。
次に、便器で尿石が形成蓄積されやすい部分について説明する。
【0051】
図16及び図17は、小便器70の基本構造を例示する(a)正面図及び(b)A−A線の断面図である。
これらの図面に表したように、排水管80に接続された小便器70は、人体と対向するように開口部を有する陶器製のボウル71を有する。
【0052】
人体と対向するボウル71に排出された尿水は、ボウル71面に沿って下垂しつつ、小便器70底部に設けられたトラップ部74で収集され、その下方に連通した排水管80へ排出される。ここで、開口部の縁面にはボウル方向に向けて折り曲げられたリム部73が洗浄水のガイドと尿水の跳ね返り防止のために設けられている。
【0053】
上述した「通常洗浄モード」の場合、小便器70の内側天井部に給水管50が連通して設けられたスプレッダ72から放出された水道水Wは、ボウル71に沿って下方に流れながら、リム部73にまで拡がり、ボウル71表面に付着した尿水を除去してトラップ部74に排出する。ここで、トラップ部下方に設けられたU字形状の排水管80には、洗浄に使用した水道水Wで希釈された尿水が、「封水」として滞留されており、下水管から発せられる悪臭の逆流を防止している。
【0054】
このような小便器70において、例えば破線Dで囲まれたリム部73の裏側などは、見えづらくまた通常使用する掃除用治具は届きにくいため、尿石が形成蓄積されやすい。また、排尿が収集されるトラップ部74は、尿水が付着する頻度が高いため、尿石が形成されやすい。また、封水が滞留する排水管80も、通常使用する掃除用治具で洗浄することは極めて困難なため、尿石が形成蓄積しやすい。
【0055】
これに対して、本実施形態によれば、これらの見えづらく掃除用治具が届きにくい場所においても、酸性水を供給することで、尿石を溶解し、衛生状態を保つことができる。
【0056】
またこの時、スプレッダ72を介して放出された酸性水は、小便器70のトラップに滞留した排水や排水管80に滞留した封水により適宜希釈され、「生活環境の保全に関する環境基準における排水基準(pH:5.8以上8.6以下)」を満たすように酸性水のpHが増加した後に、排出させることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、小便器だけでなく、大便器についても同様に尿石を溶解除去できる。
図18は、大便器において尿石が形成蓄積されやすい箇所を例示する(a)正面図と(b)上面図と(c)A−A線の断面図である。
同図に表したように、大便器90は、地面から上方に向かって開口する開口部を有する陶器製のボウル71を有する。このボウル71の底部には、排泄物を一時的に収容するためのリセス部93が設けられ、このリセス部93底部と排水管80とは、排水溝85により連通されている。排水溝85と排水管80との接合部上方には逆流防止として「空気層」が設けられている。また、開口部の周縁にはボウル方向に折り曲げられたリム部73が尿水の跳ね返り防止に設けられている。
【0058】
排水溝85と排水管80との内角に水面が形成される程度に、洗浄水が「封水」として滞留され、下水管から発せられる悪臭の逆流を抑制している。
【0059】
「通常洗浄モード」の場合、排出された排泄物は、リセス部で一旦収容される。そして、大便器90に浄水用の水道水Wが供給され、排水溝85と排水管80との接合部の空気層が排水管へ流出し、水道水Wで満たされた状態になりサイホン現象が生ずる。水道水Wの流れを受けた排泄物は、水道水Wで充満された排水溝85を介して排水管80へ一気に排出される。その後、再度、大便器に浄水が上述した程度に満たされる。
【0060】
しかし、破線Dで囲まれた、リム部73及び排水溝85は、尿水や汚水が付着しても、見えづらく通常使用する掃除用治具は届きにくいため、尿石が形成蓄積されやすい。また、排泄物が収集されるリセス部93は、排泄物の付着する頻度が高いため、尿石が形成されやすい。また、封水が滞留する排水管80は、通常使用する掃除用治具で洗浄することは極めて困難なため、尿石の形成により狭窄される。
【0061】
これに対して、本実施形態によれば、見えづらく、また掃除用治具が届きにくい場所においても、洗浄水に酸性水を用いることで、尿石を溶解し、尿石の形成を予防できるため、衛生状態を保つことができる。
【0062】
また、このような大便器90の場合も、「酸性水洗浄モード」における排水のpHは、図16及び図17に関して前述したものと基本的に同様である。
以上、本発明の実施形態に用いることができる水洗便器の基本構造について説明した
次に、本実施形態により小便器あるいは大便器を洗浄するタイミングについて説明する。
【0063】
すなわち、図1に関して前述した制御部10は酸性水をあるタイミングで小便器あるいは大便器に供給して、尿石を溶解除去することができる。
そのタイミングは、例えば、(1)使用回数や、(2)定刻や、(3)使用実績学習モード等により行うことができる。いずれの方法においても、酸性水を流した後、すぐに通常洗浄すると酸性水が希釈されてしまうので、なるべく使用されない時間帯に流すことが望ましい。
【0064】
まず、(1)使用回数に応じて流す場合、「通常洗浄モード」がある回数使用される毎に「酸性水洗浄モード」に切り替わり、酸性水が水洗便器70に供給され、その後、「通常洗浄モード」に切り替わり、同様の操作が繰り返される。
【0065】
(2)定刻に応じて流す場合、所定の時刻において、または所定の時間が経過すると自動的に「酸性水洗浄モード」に切り替わり、酸性水が水洗便器70に供給され、その後、「通常洗浄モード」に切り替わり、同様の操作が繰り返される。この時間間隔は、例えば数十分あるいは数時間時間単位とすることができる。この場合も、人が水洗便器を使用しない、あるいは使用頻度の少ない、例えば、夜間に「酸性水洗浄モード」を実行することが望ましい。
【0066】
図19は、一日のバクテリアの繁殖挙動を例示する時間に対するバクテリア数の関係を例示する模式図である。
ここで、横軸は時間(時)であり、縦軸はバクテリア数(CFU(Colony Forming Unit)/ml)であるとし。
【0067】
同図に表したように、小便器70が利用されやすい昼間の時間帯は、使用頻度が比較的高いため、洗浄回数も高く、バクテリアが繁殖しにくい環境にある。それに対して、夜間は便器を使用する頻度が低下するため、洗浄回数も低下するので、バクテリアが繁殖しやすく、昼間のバクテリア数より夜間の方が高くなる。これが毎日繰り返されることで、悪臭が発生したり、水洗便器及び排水管80に尿石が形成蓄積される。
【0068】
そこで、本実施例によれば、例えば、バクテリアが繁殖しやすい夜間に前述したような酸性水で洗浄すると、夜間におけるバクテリアの数が昼間と同等あるいはそれ以下に抑制しつつ、尿石も除去することができ、昼間の使用開始直後においても不快感なく水洗便器を使用できる。この時、例えば、便器の使用頻度が低下してバクテリアの数が増加を始める時間、例えば20時に酸性水を流すと、翌日に再び便器が使用されて通常洗浄モードが実行されるまでの間、酸性水により尿石を溶解させることができ、効果的である。
また、この場合も、酸性水の生成は、夜間に限らず昼間の時間帯に実行させることもできる。すなわち、図1に関して前述したように、酸性水の生成時間を要することなく、必要に応じて、溶解部に酸化窒素ガスを導入する「酸性水洗浄モード」と、酸化窒素ガスを導入しない「通常洗浄モード」と、を選択しながら、実行することができる。
【0069】
一方、(3)使用実績学習モードを用いる場合、例えば過去数日間の水洗便器の使用頻度データに基づいて酸性水を流すタイミングを統計的に決定することができる。
図20は、使用実績学習モードでデータ取りした使用頻度データの変化を例示する模式図である。ここで、1日を24ブロックの時間帯に分割し、カウンタと認識と、が記録される。
【0070】
この使用実績学習モードとして、使用者が小便器70を使用したか否かを人体検知センサ等により検知する。使用者が使用したことを検知しないブロックにはカウンタに「1」を増加し、使用者が使用したブロックにはカウンタに「0」が代入される。すなわち、前日カウンタが1であったブロックに使用者が使用すればカウンタは「0」になり、使用者が使用しなければカウンタは「2」になる。このようにして、3日間カウンタを演算し、3日間にカウンタが「3」であるブロックを「未使用ブロック」と認識する。そして、それ以外のブロックは使用者が小便器70を使用していると推定することができる。このような頻度学習は、常に継続して実施させることもできる。つまり、使用頻度に関して、常に最新の情報を学習させることも可能である。なお、ここでは、1日を24ブロックの時間帯に分割する方法を説明したが、異なる数のブロックに分割してもよく、またこれとは別に、周期的に計時を行うタイマ手段として、時刻に関連づけて統計的に推定してもよい。
【0071】
そして、このようにして得られた使用頻度のデータに基づき、「酸性水洗浄モード」のタイミングを決定する。例えば、「未使用ブロック」の時間帯の開始時に「酸性水洗浄モード」を実行すると、その後直ちに「通常洗浄モード」が実施されて酸性水が希釈されてしまうことを防ぎ、尿石を効率的に溶解除去できる。
【0072】
以上説明したようなタイミングにより水洗便器あるいは排水管に酸性水を流出させると、尿石を有効に溶解除去できる。
以上、本実施形態により小便器あるいは大便器を洗浄させるタイミングについて説明した。
次に、本発明者が実施した実験を参照しつつ、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
(実験1)
図21は、本実施形態の便器洗浄水生成装置の構成要素をモデル化した実験装置を例示する模式図である。
【0073】
本実験装置は、エアポンプ109から取り込んだ空気を流量計108を介して放電器20(リアクタ)に給気し、NOxガスを生成させる。このNOxガスを、バブラ106を介して約200ミリリットルの水道水Wを含むビーカー120内に導入してバブリングを行い、酸性水を生成させ、そのpH挙動を測定した。ここで、エアポンプ109の給気量は、毎分2000ミリリットルとした。
【0074】
ここで、水道水Wは、茅ヶ崎市(神奈川県)で採取した市水である。また、放電器20においては、Pecked bed方式の放電リアクタ(誘電体はペレット状のチタン酸バリウム(BaTiO))を用い、その放電経路長は42mmとし、周波数1キロヘルツ、10キロボルトの交流電圧を印加した。
【0075】
図22は、本実験において得られた反応時間に対するpH挙動を例示するグラフ図である。ここで、横軸はバブリング時間(分)であり、縦軸はpHである。
【0076】
バブリング時間の増加に伴い、水道水のpHが低下する傾向が認められ、例えば、放電開始から約25分後にはpH「4」の酸性水が得られた。つまり、本実験によれば、200ミリリットルの水道水Wを25分程度でpH「4」の酸性水にできることが確認された。
【0077】
本実施形態によれば、溶解部35に水道水Wと酸化窒素ガスと、を同時に導入することにより、時間を要することなく、例えば、数秒程度でpH「4」の酸性水を得ることができる。
【0078】
(実験2)
次に、尿石の蓄積と、酸性水による尿石の溶解について調べた実験2について説明する。 図23は、希釈された尿水を静的放置した場合の経時的様態を例示する(a)外観写真と(b)領域Cの拡大写真である。
本実験の詳細な条件は以下の通りである。
すなわち、先端が窄まったシリンダ形状の蓋付きビーカー120に、尿水1〜10vol%と水道水99〜90vol%との組成比からなる希釈された尿水を一日あたり5回の頻度で置換しつつ、静止放置する実験を4ヶ月間実施した。
その結果、同図に表すように、ビーカー120内部の開口部H付近に尿石125が形成されている状態が確認できた。
【0079】
次に、このビーカーに含まれる尿水をpH4〜5の酸性水に置換し、静止放置を1ヶ月間行った。
図24は、図23に表したビーカー120に酸性水を充填し、静的放置したときの経時的様態を表す(a)外観写真と(b)領域Cの拡大写真である。
【0080】
その結果、同図に表すように、形成蓄積した尿石がほぼ完全に溶解されたことが確認で
以上のことから、尿石はpH4〜5程度の酸性水により溶解されることが確認された。本実施例によれば、時間を要さずにpH4〜5程度の酸性水が得られる。
【0081】
(実験3)
次に、尿石の溶解速度について調べた実験3について説明する。
図25は、尿石を酸性水に浸水させるための簡易的な装置図である。
すなわち、pHの異なる複数の酸性水124を含むビーカー120を準備した。そして、2棟のビルディング(Aビル及びBビル)に設置されたトイレからそれぞれ回収した尿石122を、これらビーカー120にそれぞれ投入して、6時間、静的に放置した。なお、それぞれのビーカー120に投入した尿石の量は、いずれも1グラムとした。そして、6時間後に酸性水124に含まれるリン酸イオン濃度を測定した。
【0082】
図26は、この実験により得られた酸性水のpHとリン酸イオン濃度との関係を例示するグラフ図である。
同図に表したように、尿石122を採取したビルディング(AビルあるいはBビル)によらず、酸性水124のpHの低下(強酸化)に伴い、リン酸イオン濃度は増加する傾向が見受けられた。例えば、Aビルでは、酸性水のpHが7から5に低下する場合、リン酸イオン濃度は23ppmから33ppmへ増加し、pH変化に対するリン酸イオン濃度差は10ppmであることが判明した。なおここで、AビルとBビルの結果から異なるのは、それぞれのビルのトイレの排水構造や使用態様などが異なることにより、形成蓄積された尿石122の特性が異なるからであると考えられる。
【0083】
このグラフ図に基づいて、尿石の経時的な溶解率の算出方法を以下に説明する。
【0084】
まず、尿石122を分析した結果、無機物の含有率は5パーセントであった。その無機物がリン酸カルシウム(Ca(PO:分子量310)である場合、1グラムの尿石122に含有されるリン酸イオン(分子量190)の含有量が30.7ミリグラムになる。
【0085】
これに対して、図26に表した結果から、酸性水が6ミリリットル中に溶解したリン酸イオンの重量は60マイクログラム(10ppm×6ミリリットル)である。
上述したデータにより、1グラムの尿石をpH5の酸性水に6時間浸水させた溶解率は、約0.2%(60マイクロリットル/30.7ミリグラム)程度であると推定できる。また、逆算すると、尿石を完全に溶解(溶解率100%)するためには、約3000時間(125日)を要することとなる。
【0086】
しかし、実際は、小便器70を洗浄する際に、例えば、洗浄水が尿石に外力として作用して下流に押し流そうとする力が加わる。酸性水の使用により尿石の組織の一部が溶解されると砕けやすくなるため、尿石を完全に除去しなくても、通常洗浄の水流などによって下流に流れ去る確率が高くなる。その結果として、便器や排水管に形成蓄積された尿石を、例えば、1ヶ月あるいはそれ以内の短期間で除去することも可能であると考えられる。
以上、本発明者が実施した実験を参照しつつ、本発明の効果について説明した。
次に、本実施形態の便器洗浄水生成装置を設置するレイアウトの具体例について説明する。
【0087】
図27は、本実施形態に用いることができる便器洗浄水生成装置の設置態様を例示した模式図である。
本具体例においては、小便器70上部と給水管50との接合部に、例えば、立方体状の筐体に収容された便器洗浄水生成装置110が設置されている。
このような場所に設置すると、新たに設置スペースを設けることなく、通常使用していないスペースを有効的に活用できる。
【0088】
図28は、本実施形態の便器洗浄水生成装置の設置態様の第2の具体例を例示した模式図である。
本具体例においては、便器洗浄水生成装置110は、小便器70の上部に内蔵されている。このような構造にすると、美観を損ねることなく、また、外力等の影響を受けることなく設置できる。
【0089】
図29は、本実施形態の便器洗浄水生成装置の設置態様の第3の具体例を例示した模式図である。
同図に表したように、本具体例の便器洗浄水生成装置110は、小便器70の背後の壁面に埋入されており、人目につかないように施工されている。パネル112に人体検知センサ114が設けられ、使用者を検知可能とされている。
【0090】
以上、本発明を水洗便器について用いた具体例について説明したが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
例えば、本発明は、大便器90の洗浄水の生成に用いても同様の作用効果が得られる。この場合、フラッシュバルブ式の大便器90についても、ロータンク式の大便器90についても、本発明を適用できる。
また、本発明は、便器以外にも、例えば、手洗器や台所用水洗、浴室水洗などに用いても、酸性水による同様の殺菌効果が得られる。
その他、便器洗浄水生成装置にかかる酸性水の給水弁60、溶解部35、放電器20、制御部10、をはじめとする各要素について当業者が適宜設計変更して採用したものも、本発明の要旨を有する限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの模式図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる洗浄システムの動作を例示するフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る洗浄水生成装置の(a)放電器20と(b)放電器20のA−A線の断面図を例示する模式図である。
【図4】放電リアクタの主面に垂直方向の反応路長における電圧に対するNOxガス生成量の推移を例示するグラフ図である。
【図5】放電リアクタの反応路長に対するNOxガス生成量の推移を例示するグラフ図である。
【図6】上述した図1の溶解部35を含む領域Rを例示する(a)断面図と、(b)A−A線の断面図である。
【図7】本実施形態に用いることができる他の洗浄モードを例示するフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
【図9】本発明の第3の実施例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
【図10】本発明の第4の実施例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
【図11】本発明の第5の実施例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
【図12】本発明の第6の実施例にかかる便器洗浄水生成装置を用いた洗浄システムの要部構成を表す模式図である。
【図13】上述した図1の溶解部35を含む領域Rの第2の具体例を例示する(a)断面図と、(b)A−A線の断面図である。
【図14】上述した図13の溶解部35の下流を高感度カメラで撮影した写真である。
【図15】上述した図1の領域Rに表す溶解部35と放電器20とからなる要旨構造の第の具体例を例示する(a)断面図と、(b)A−A’線の断面図である。
【図16】本実施形態に用いることができる小便器70の基本構造を例示する(a)正面図及び(b)A−A線の断面図である。
【図17】本実施形態に用いることができる小便器70の他の基本構造を例示する(a)正面図及び(b)A−A線の断面図である。
【図18】大便器90において尿石が形成蓄積されやすい箇所を例示する(a)正面図と(b)上面図と(c)A−A線の断面図である。
【図19】一日のバクテリアの繁殖挙動を例示する時間に対するバクテリア数の関係を例示する模式図である。
【図20】使用実績学習モードでデータ取りした使用頻度データを例示する模式図である。
【図21】本実施形態の便器洗浄水生成装置の構成要素をモデル化した実験装置を例示する模式図である。
【図22】図21に上述した実験装置を用いた実験1を例示する反応時間に対するpH挙動を例示するグラフ図である。
【図23】希釈された尿水を4ヶ月間、静的放置したときの経時的様態を例示する(a)外観写真と(b)領域Cの拡大写真である。
【図24】上述する図24で用いた試料に酸性水を浸水させ、1ヶ月間、静的放置したときの経時的様態を例示する(a)外観写真と(b)領域Cの拡大写真である。
【図25】尿石を酸性水に浸水させるための簡易的な装置図である。
【図26】上述する図25の実験装置を用いた酸性水のpHとリン酸イオン濃度の関係を例示するグラフ図である。
【図27】本実施形態に用いることができる便器洗浄水生成装置の設置場所を例示した具体例である。
【図28】本実施形態に用いることができる洗浄システムの設置場所を例示した第2の具体例である。
【図29】本実施形態に用いることができる洗浄システムの設置場所を例示した第3の具体例である。
【符号の説明】
【0092】
10 制御手段
20 放電器
21 陽極
22 陰極
23 誘電体ペレット
25 逆止弁
31 給気管
32 ノズル部
33 オー(O)リング
34 ガスノズル
35 溶解部
36 気液混入部
37 気泡分散体
38 高圧源
39 空気層
40 便器自動洗浄システム
41 駆動回路
42 超音波トランスデューサ
43 シャワーヘッド
45 分流手段
50 給水管
60 給水弁
70 小便器
71 ボウル
72 スプレッダ
73 リム部
74 トラップ部
80 排水管
90 大便器
91 リセス部
100 給水タンク
106 バブラ
110 便器洗浄水生成装置
B1 排出路
B2 排水路
D 尿石が形成蓄積されやすい箇所
W 水道水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器に供給する洗浄水の流路を開閉する開閉弁と、
少なくとも一対の電極の間に電圧を印加することにより放電を生じさせ酸化窒素ガスを生成可能な放電器と、
前記洗浄水の流路に設けられ、前記放電器により生成された前記酸化窒素ガスを前記洗浄水に溶解させる溶解部と、
前記開閉弁と前記放電器を制御可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記開閉弁を開いて前記溶解部を通過する洗浄水に前記酸化窒素ガスを溶解させ前記溶解部から排出させることを特徴とする便器洗浄水生成装置。
【請求項2】
前記放電器と前記溶解部との間に、前記溶解部から前記放電器への洗浄水の流入を防止する手段が設けられたことを特徴とする請求項1記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記開閉弁を開いて前記溶解部を通過する洗浄水に前記酸化窒素ガスを実質的に溶解させずに前記溶解部から排出させる洗浄モードも実行可能とされたことを特徴とする請求項1または2に記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項4】
前記洗浄水の流路において前記開閉弁よりも下流側に設けられ、前記開閉弁を介して供給される前記洗浄水を第1の水路と第2の水路のいずれか一方に選択的に導く分流部をさらに備え、
前記溶解部は、前記第2の水路に設けられ、
前記制御部は、前記開閉弁及び前記分流部を制御して前記洗浄水を前記第2の水路に導くことにより、前記溶解部を通過する洗浄水に前記酸化窒素ガスを溶解させ前記溶解部から排出させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項5】
前記酸化窒素ガスを前記溶解部に圧送する加圧部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項6】
前記溶解部は、
前記洗浄水の流速を増加させる第1の流路部と、
前記第1の流路部の下流側に設けられ前記第1の流路部よりも流路断面積が大なる第2の流路部と、
前記第2の流路部に前記酸化窒素ガスを導入する気体導入口と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項7】
前記溶解部は、
前記洗浄水の流路の周側壁の少なくとも一部に設けられ複数の開口を有する気泡分散体と、
前記気泡分散体に前記酸化窒素ガスを導入する気体流路と、
を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項8】
前記放電器は、前記一対の電極の間に充填された複数の誘電体ペレットを有し、
前記一対の電極の間に前記電圧を印加すると前記誘電体ペレット同士の間で前記放電が生ずることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項9】
前記制御部は、タイマを有し、
前記タイマの計測に基づいて前記第2の洗浄モードを実行することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記便器洗浄水生成装置が付設される便器の使用回数を格納するカウンタを有し、
前記カウンタの値に基づいて前記第2の洗浄モードを実行することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記便器洗浄水生成装置が付設される便器の使用頻度を学習し、
前記学習した使用頻度に基づいて前記第2の洗浄モードを実行することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の便器洗浄水生成装置と、
水洗便器と、
を備えたことを特徴とする便器洗浄システム。
【請求項13】
前記水洗便器は、スプレッダーを有し、
前記洗浄水は、前記スプレッダーを介して放出されることを特徴とする請求項12記載の便器洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図14】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−77666(P2007−77666A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266755(P2005−266755)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】