説明

便器洗浄装置

【課題】 より小さい電気エネルギーで殺菌性金属イオンを含んだ洗浄水を流すことを目的としたものであり、水洗便器にぬめりの付着や臭気の発生を防止する機能を備え、さらに小便器においては、尿石の付着にともなう汚水の通過路の狭小化や美観の損傷、臭気の発生をも防止する機能も兼ね備える小型の便器洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 給水源と便器とを繋ぐ洗浄水供給路を給水弁によって開閉して便器を水洗する便器洗浄装置であって、前記給水弁は、前記洗浄水供給路を開閉する給水源の一次圧側と圧力室とを連通するブリード穴が設けられた主弁と、この主弁の圧力室と主弁の下流を結ぶ副流路と、前記副流路を開閉することで前記主弁による洗浄水供給路の開閉を行う電磁弁と、から成り、前記副流路には電解電圧により殺菌性金属イオンを溶出する電極が対向配設さてれいることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌性金属イオンが添加された水を生成する電極を水洗便器への便器洗浄水給水路に設けた便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗便器へのぬめりの付着や臭気の発生をともなう汚水の通過路の狭小化や美観の損傷、臭気の発生をも防止するために、図4,5に示す便器洗浄装置が知られている。即ち、給水路に配設され、電解電圧により殺菌性金属イオンを溶出する対向した電極間に形成された流路と、流路に連通する液体流入口と液体流出口を有する電極において、電極間に形成された流路の断面積が液体流入口もしくは液体流出口の流路断面積以上であることにより、電極での圧損を抑えることができ、例えば、水洗便器の便器洗浄水給水路に配設された電極での便器洗浄水の通水圧力の上昇を抑制し、便器の洗浄水量の低下を防止することによって、便器の洗浄に必要な水量を確保して便器を洗浄するというものである(特開2001−252666)。
【0003】
【特許文献1】特開2001―252666号公報(第1−4頁、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発明では上記のように電極間に形成された流路の断面積を液体流入口もしくは液体流出口の流路断面積以上とすることにより電極での圧損を抑えるため、電極間距離が大きく、殺菌水を発生させるためには大きな電力が必要であり多大なエネルギーが消費されるという課題があった。
【0005】
また、通水路に給水弁に加えて電極を配置するため、装置が大型化し装置の収納上に問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、より小さい電気エネルギーで殺菌性金属イオンを含んだ洗浄水を流すことを目的としたものであり、水洗便器にぬめりの付着や臭気の発生を防止する機能を備え、さらに小便器においては、尿石の付着にともなう汚水の通過路の狭小化や美観の損傷、臭気の発生をも防止する機能も兼ね備える小型の便器洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために第1の発明は、給水源と便器とを繋ぐ洗浄水供給路を給水弁によって開閉して便器を水洗する便器洗浄装置であって、前記給水弁は、前記洗浄水供給路を開閉する給水源の一次圧側と圧力室とを連通するブリード穴が設けられた主弁と、この主弁の圧力室と主弁の下流を結ぶ副流路と、前記副流路を開閉することで前記主弁による洗浄水供給路の開閉を行う電磁弁と、から成り、前記副流路には電解電圧により殺菌性金属イオンを溶出する電極が対向配設さてれいることを特徴とする。これにより小さい電気エネルギーで便器のぬめりの付着や臭気の発生を防止することが出来る。
【0008】
第2の発明は、電極が給水弁本体と一体に構成されてなるものである。これにより、装置全体を小型化することができる。
【0009】
第3の発明は、電極と電気分解制御装置とを接続する電極端子部が、電極材質と同一かつ連続した構造としたものである。これにより、異種金属の接続が無く、さらに組み立て工程を簡略化出来る生産性に優れた一体型の電極を供給することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。即ち、小便器のボウル面、トラップ部さらには小便器よりも下流の配管に、より小さい電気エネルギーで銀成分を含んだ水を供給することができ、小便器に細菌の増殖によって生じるぬめりの付着や臭気の発生を防止するとともに、尿石の付着にともなう汚水の通過路の狭小化や美観の損傷、臭気の発生をも防止することができる。
【0011】
製造工程が大幅に低減されるとともに、均質かつ電解特性の安定した電極が簡便に提供できる。
【0012】
コンパクトな構造が可能となるため、これまで給水配管設置スペースが狭く設置が困難であった部位や複数連結された多連便器システム等への組込が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、本実施例では主として本発明の便器洗浄水の殺菌方法及び殺菌装置を小便器に適用した例を示したが、大便器に用いても同様の効果を発揮することができ、また、便器以外の浴室内の洗浄装置や、トイレや厨房等の床洗浄用としてホースへ接続して用いることもできる。
【0014】
図2は本発明に係る便器洗浄装置の実施例である。便器洗浄用給水管4に電極216と一体に形成されてからなる給水弁3が接続されている。給水弁3は公知の便器自動洗浄システム5に電気的に接続されている。便器洗浄用給水管4は小便器1に接続されている。また、制御装置6が電源部7、電極2及び便器自動洗浄システム5とに電気的に接続されている。
【0015】
図1は本実施例に用いる給水弁3の詳細図であり、閉弁時の断面図である。給水弁3は一次側に洗浄用給水管4と接続されおり、洗浄用給水管4と連通する一次側流路301には主弁座302が配設されており主弁303によって一次側流路301と二次側流路304が隔てられている。主弁301の上部には圧力室305が形成されており、主弁301にはブリード穴306が配設され、一次側流路301と圧力室305を連通している。さらに前記圧力室305と前記主弁303の下流の二次側流路304を連通するために副流路307が形成されており、前記副流路307の途中に副弁座308と副弁座308を開閉する副弁309が形成されている。前記副弁座308には前記ブリード穴306の径よりも大きい径の副弁口310が形成されている。前記副弁309は電磁弁311として外周をコイル312によって巻かれた略円柱形の可動鉄心313の先端に形成されている。一方、前記可動鉄芯313の他端には可動鉄心313が下方へ付勢されるように固定鉄芯314との間にばね315が嵌合されている。前記副弁309の更に下流には銀の平板を向かい合わせて約3mmの間隔で配置した一対の電極316を配設し、副流路307は二次側流路304と主弁座302の下流で合流している。
【0016】
図3は便器洗浄水の電極通過時の流量と電流1.5mA印加時の電圧の関係を示したものである。ここで、小便器に流れ込む洗浄水の総流量をQ、電極間を通過する流量をq、主弁を通過する流量をQとすると、従来例において電極間距離d=10mmの場合、Q=Q=qであり、圧力0.07MPaの場合の総流量Qは約17L/minとなる。本実施例において電極間距離d=3mmであって、ブリード穴306の穴径が約0.5mmの場合、総流量Q=Q+qで、Q=17L/min、Q=16〜16.5L/min、q=0.5〜1L/minとなり、電極間を通過する流量が小さいため、図3において従来例の電極間距離d=10の場合の消費電力をa、本実施例でd=3mmの場合の消費電力bとすると、消費電力は従来の約1/10になることが分かる。即ち、電極間を通過する流量を少なくし、電極間距離dを小さくした場合、電解槽の低消費電力化が図れ、銀イオン殺菌水の発生効率が良好になることが分かる。また、1ppb以上の銀濃度があれば便器を洗浄するに十分な効果をもたらすことができることが分かっている。したがって、副流路において電極間距離が小さい電極で発生した銀イオン殺菌水を主流路に合流させることで希釈し、より小さい電気エネルギーで所定の濃度の銀イオン殺菌水を得ることができる。
【0017】
また、電極316と制御装置6とを接続する電極端子部316aとが、銀(Ag)若しくは銀を含有する金属の同一材質とし、給水弁本体317を製造するときにインサート成型することによって、電極316を給水弁本体317と一体に形成している。従って、電極316と給水弁本体317との密着性が高く、水漏れの発生を防止することができる。
【0018】
次に動作について説明する。便器洗浄は便器洗浄水に銀成分を含む場合と、便器洗浄水に銀成分を含まない場合とに適宜分けられる。便器洗浄水に銀成分を含まない場合は、使用者が小便器1を使用した後、便器自動洗浄システム5の作動により給水弁3が開き、便器洗浄用給水管4を通り給水弁3と一体に形成された電極316を通じて小便器1に供給される。
【0019】
次に、便器洗浄水に銀成分を含む場合、便器洗浄の開始は、便器自動洗浄システム5の作動による給水弁3の開弁動作を検知して、電源部7の電気エネルギーが制御装置6を介して一対の電極316に給電され、電極316のいずれかアノード側から銀成分が溶出し銀成分を含んだ便器洗浄水が便器洗浄用給水管4を通って小便器1に供給される。さらに、便器洗浄の終了は、便器自動洗浄システム5の作動による給水弁3の閉弁信号を検知して、電源部7の電気エネルギーが制御装置6を介して一対の電極316への給電を停止する。
【0020】
また、一対の電極316への給電停止は、給水弁3の開弁信号を検知後、所定の時間経過後に作動させるようにしてもよい。
【0021】
ここで、給水弁3は次のように動作する。先ず、閉動作、即ち、コイル212への電力供給が切られた状態では、可動鉄芯313はばね315によって下方へ付勢され、副弁309が副弁座308に当接するため、副弁座308を塞いで副流路307が遮断される。そのため、一次側流路内に流入した流体は、ブリード穴306から圧力室305へ流入し、一次側流路301と圧力室305の圧力が略同一となり、主弁303を主弁座302へ押圧する力が作用するため、二次側流路304への流体の流出が制限され、主弁303は閉止状態となる。
【0022】
一方、開弁動作、即ち、コイル312に電力が供給されると、可動鉄芯313の上下方向に磁界が発生し、可動鉄芯313がばね315の下方への付勢力に反して上方へ持ち上げられる。これにより、副弁309が副弁座308から離れ、副流路307が連通される。
【0023】
そして、一次側流路301から流体が供給され、更に、圧力室305の流体が副流路307から二次側流路304へ流出すことにより、圧力室内の圧力が下がるため、一次側流路301からの圧力により、主弁303を上方へ押し上げる。主弁303が上方へ押し上げられると、主弁座302が開口されて一次側流路301と二次側流路304とが連通し、流体が流れる状態が維持されることとなる。これは、主弁303に形成されたブリード穴306の径よりも副弁口310の径の方が大きいため、流体がブリード穴306から圧力室内305に流入するよりも副流路307から流出する量が多く、圧力室305の圧力が下がったところで主弁303に流体が作用するためである。
【0024】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示である。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えた形で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1における給水弁の詳細を表した図である。
【図2】本発明の一実施例である装置を示す図である。
【図3】便器洗浄水の電極通過時の流量と電流1。5mA印加時の電圧の関係を示す図である。
【図4】従来の便器洗浄装置の一例を示す図である。
【図5】図4に示す従来の便器洗浄装置の電解槽の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1…便器、2…電解槽、3…給水弁、4…便器洗浄用給水管、5…便器自動洗浄システム、6…制御装置、7…電源部、301…一次側流路、302…主弁座、303…主弁、304…二次側流路、305…圧力室、306…ブリード穴、307…副流路、308…副弁座、309…副弁、310…副弁口、311…電磁弁、312…コイル、313…可動鉄芯、314…固定鉄芯、315…ばね、316…電極、316a…電極接続部、317…給水弁本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源と便器とを繋ぐ洗浄水供給路を給水弁によって開閉して便器を水洗する便器洗浄装置であって、前記給水弁は、前記洗浄水供給路を開閉する給水源の一次圧側と圧力室とを連通するブリード穴が設けられた主弁と、この主弁の圧力室と主弁の下流を結ぶ副流路と、前記副流路を開閉することで前記主弁による洗浄水供給路の開閉を行う電磁弁と、から成り、前記副流路には電解電圧により殺菌性金属イオンを溶出する電極が対向配設さてれいることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記電極は給水弁本体と一体に構成されてなることを特徴とする請求項1に記載された便器洗浄装置。
【請求項3】
前記電極と制御装置とを接続する電極端子部が、電極材質と同一かつ連続した構造であることを特徴とする請求項2に記載された便器洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−104668(P2006−104668A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288756(P2004−288756)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】