説明

便器洗浄装置

【課題】 商用電源投入直後に、多数の便器洗浄装置が同時に開弁することを防ぐことで、洗浄水の給水圧の低下を防ぎ、洗浄水が流れ続けてしまうこと防止することを可能とする。
【解決手段】 便器へ繋がる給水流路に設けられたフラッシュバルブを設け、このフラッシュバルブの圧力室内の圧力を変化させて内部の弁体を移動させて給水流路を開閉する便器洗浄装置であって、前記圧力室内の圧力を変化させるべく前記排出路を開閉する電動弁と、前記電動弁の駆動を制御する制御手段と、を備えた便器洗浄装置において、前記制御手段は、商用電源が投入されたことを検知すると前記電動弁を駆動し、前記フラッシュバルブを開弁して初期洗浄を行うと共に、商用電源が投入されてから初期洗浄を開始するまでのディレイ時間を、ディレイ時間設定部によって設定された任意の時間に変更可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュバルブを電動弁により開閉する便器洗浄装置に関し、特に商用電源が投入された時に自動的に洗浄を行う初期洗浄機能を有する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の便器洗浄装置では、例えば清掃のときにトイレ内の複数の便器をそれぞれ清掃した後、各便器に残った洗剤等を一回の操作で洗い流すことができるようにするために、商用電源が投入されたときに、予め設定された時間の初期洗浄を行うようにしており、清掃後に、トイレ内の便器洗浄装置に供給されている商用電源を一旦遮断し、再度その商用電源を投入することで、トイレ内の全ての便器を一斉に洗浄するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、高層のビルなどで一つの建物に非常に多くの便器洗浄装置が設置された場合に、停電が発生して商用電源の供給が停止し、その後停電から復帰し商用電源が供給された時に、そのビルに設置された便器洗浄装置が一斉に開弁し洗浄を行ってしまうため、洗浄水の給水圧が急激に低下してしまい、フラッシュバルブが閉弁位置に移動できなくなり、水がずっと流れ続けてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−209772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、商用電源投入直後に、多数の便器洗浄装置が同時に開弁することを防ぐことで、洗浄水の給水圧の低下を防ぎ、洗浄水が流れ続けてしまうこと防止することが可能な便器洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために第1の発明は、便器へ繋がる給水流路にフラッシュバルブを設け、このフラッシュバルブの圧力室内の圧力を変化させて内部の弁体を開弁位置及び閉弁位置に移動させて給水流路を開閉する便器洗浄装置であって、前記フラッシュバルブの前記圧力室内と前記弁体の一次側とを接続した供給路と、前記圧力室と前記弁体の二次側とを接続した排出路と、前記圧力室内の圧力を変化させるべく前記排出路を開閉する電動弁と、前記電動弁の駆動を制御する制御手段と、を備えた便器洗浄装置において、前記制御手段は、商用電源が投入されたことを検知すると前記電動弁を駆動し、前記フラッシュバルブを開弁して初期洗浄を行うと共に、商用電源が投入されてから初期洗浄を開始するまでのディレイ時間を、ディレイ時間設定部によって設定された任意の時間に変更可能としたことにより、商用電源が投入されてから初期洗浄を開始するまでの時間を、ディレイ時間設定部によって設定された任意の時間とすることができるため、複数の便器洗浄装置が設置された場合でも、ディレイ時間設定部によって初期洗浄開始までの時間がずれて設定されることにより、元スイッチがオンされてトイレルームへ商用電源の供給が開始された際にも初期洗浄が一斉に開始されてしまうことがなく、そのため、給水圧が急激に下がってフラッシュバルブが閉弁位置に移動できずに、水が流れ続けるといった不具合を防止することが可能となる。
【0006】
また第2の発明は、前記制御手段は、前記ディレイ時間設定部のディレイ時間を、無作為に決定して自動的に設定するようにしたことにより、ディレイ時間が無作為に決定し自動設定されるため、使用者がディレイ時間を個別に設定操作する手間を省くことが可能となる。
【0007】
また第3の発明は、人体を検出するための、赤外線等の光を投光する投光部と、前記投光部から投光された光の反射光を含む光を受光する受光部とを有する反射型の非接触アクティブセンサを備え、前記制御手段は、商用電源が供給されると、前記非接触アクティブセンサの前記受光部の検出信号レベルに基づいて前記ディレイ時間設定部のディレイ時間を自動的に設定するようにしたことにより、制御手段は、非接触アクティブセンサの受光部の検出信号レベルに基づいてディレイ時間情報を作り出すことで、無作為に決定された時間とすることができ、制御手段に無作為な時間情報を発生するためのランダム関数といった機能を準備しておく必要がなくなる。
【0008】
また第4の発明は、アナログ・デジタル変換機能を有するAD端子をもつマイコン備え、前記制御手段は、商用電源が供給されると、前記マイコンの前記AD端子をオープン状態とし、前記AD端子の電圧の検出結果に基づいて、前記ディレイ時間を設定するようにしたことにより、制御手段は、マイコンのAD端子をオープン状態としたときの電圧に基づいてディレイ時間情報を作り出すことで、無作為に決定された時間とすることができ、制御手段に無作為な時間情報を発生するためのランダム関数といった機能を準備しておく必要がなくなる。
【0009】
また第5の発明は、前記ディレイ時間設定部は、予め決められた所定時間の範囲内でディレイ時間を決定するようにしたことにより、初期洗浄を行う時間を所定時間内に収めることができ、初期洗浄が長時間続いてしまうことを防止することが可能となる。
【0010】
また第6の発明は、前記制御部は、前記ディレイ時間内に使用者の便器使用に伴う洗浄指令を受付けると、前記初期洗浄を行わずに通常洗浄を実施するようにしたことにより、使用者の便器洗浄に伴う洗浄が行われると初期洗浄がキャンセルされるため、洗浄水を無駄に使うことを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、商用電源が投入されたときに行われる初期洗浄までの時間を任意にずららして設定することにより、商用電源投入直後に多数の便器洗浄装置が同時に開弁することがなくなる。その結果洗浄水の給水圧の低下が発生しないため、フラッシュバルブは確実に閉弁位置に戻ることが可能となり、洗浄水が流れ続けてしまうということを防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の便器洗浄装置の構成を表すブロック図
【図2】本発明のフラッシュバルブの断面図
【図3】本発明の初期洗浄処理の制御フローチャート
【図4】本発明の初期洗浄ディレイ時間決定処理の第一の制御フローチャート
【図5】本発明の初期洗浄の動作タイミングを表す第一のタイミングチャート
【図6】本発明の初期洗浄の動作タイミングを表す第二のタイミングチャート
【図7】本発明の初期洗浄ディレイ時間決定処理の第二の制御フローチャート
【図8】本発明の初期洗浄の動作タイミングを表す第三のタイミングチャート
【図9】本発明の初期洗浄ディレイ時間決定部の第三の例を表す構成図
【図10】本発明の初期洗浄ディレイ時間決定処理の第三の制御フローチャート
【図11】本発明の初期洗浄の動作タイミングを表す第四のタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について添付図面により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかわる便器洗浄装置の構成を表すブロック図で、便器1と便器1に洗浄水を供給する給水流路2と、給水流路2と便器1との間に便器1への洗浄水の供給、停止を行う便器洗浄装置3が配設されている。そして便器洗浄装置3には給水流路2の途中に配設され、便器1への洗浄水の供給・停止を行うフラッシュバルブ4と、フラッシュバルブ4を動作させるための電動弁5が設けられており、この電動弁5を駆動するための制御手段8が配設されている。また、便器洗浄装置3には商用電源を供給するためのコンセントプラグ6と、コンセントプラグ6から供給された商用電源を制御手段8が動作するために必要な電圧に変換する電源部7とが設けられている。さらに制御手段8には電動弁5の駆動を制御するための信号を出力する制御部8aと、初期洗浄を開始するまでのディレイ時間を演算し、その結果を制御部8aに出力するディレイ時間設定部9とからなっている。
【0014】
また、制御部8aは便器1を人が使用しているか使用していないかを判別するための反射型の非接触アクティブセンサ11が接続されており、反射型非接触アクティブセンサ11には赤外線を外部に向けて投光する投光部12と、人体や周囲の壁面等からの反射された赤外線を受光する受光部13と、受光部が受信した信号を増幅する増幅部14と、投光部12が赤外線を投光するタイミングに合わせて増幅部14から出力された信号から反射信号レベルを演算する演算部15とから構成されている。そして、制御部8aは反射型非接触アクティブセンサ11の演算部15から出力された信号により、人体の有無を検出し、その結果により電動弁5の駆動を制御してフラッシュバルブ4を開閉し、便器1を洗浄するように構成されている。
【0015】
図2はフラッシュバルブ4の断面図で、フラッシュバルブ4は本体21に弁体(ピストンバルブ)22を備え、弁体(ピストンバルブ)22には一次側給水路26と圧力室23とをつなぐ供給路24と、圧力室23と二次側排水路27とをつなぐ排水路25と、圧力室23と二次側排水路27との間を開閉するシート28を有する。また蓋31に固定された電動弁5によりプランジャー32を上下に動作させて、シート28の開閉を行うようになっている。
【0016】
そして、電動弁5への通電によりプランジャー32が引き上げられると、シート28が開き排水路25から圧力室23内の水が排水され、圧力室23の圧力が二次側排水路27の圧力と同圧になり、一次側給水路26の圧力が圧力室23の圧力より高くなるため、弁体(ピストンバルブ)22が押し上げられて一次側給水路26と二次側排水路27とが通じ、洗浄水が吐水される。
【0017】
また、電動弁5への通電を停止しプランジャー32が下がりシート28が排水路25を閉じると、一次側給水路26から供給路24を通じて圧力室23に水が供給され、圧力室23の圧力は一次側給水路26の圧力と同圧となり、二次側給水路27の圧力は圧力室23の圧力より低くなる。そして一次側給水路26から供給路24を通じて圧力室23に徐々に水が供給されることにより弁体(ピストンバルブ)22が徐々に押し下げられ、一次側給水路26と二次側排水路27とが閉じて止水するようになっている。
【0018】
以上の構成において、本発明の便器洗浄装置の初期洗浄の動作についてフローチャートにより説明する。図3は便器洗浄装置の初期洗浄処理を表す制御フローチャートで、商用電源が投入され便器洗浄装置の動作が開始すると、まず後述する初期洗浄ディレイ時間決定処理が実施され(S101)、次に反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出しているかどうかをチェックする(S102)。もし人体無であれば(S102:No)、次に便器使用のオンディレイタイマTonに10秒をセットし(S103)、続いて初期洗浄ディレイタイマTiが0となったかどうかをチェックし(S104)、まだ0になっていなければ(S104:No)再び反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出しないかをチェックしながら(S102)、初期洗浄ディレイタイマTiが0となったら(S104:Yes)、電動弁5を開駆動して(S105)フラッシュバルブ4を開することで便器1の初期洗浄を開始する。次に電動弁5を閉するまでの時間を決定する洗浄タイマTwに2秒をセットし(S106)、洗浄タイマTwをスタートして(S107)、洗浄タイマTwが0となるのを待つ(S108:No)。そして洗浄タイマTwが0となると(S108:Yes)、電動弁5を閉駆動して(S109)初期洗浄処理終了し、便器洗浄装置の通常の動作に移行する。
【0019】
もし、初期洗浄ディレイタイマが0となるのを待っている間に(S104:No)、反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出した場合(S102:Yes)、便器の前を人が通ったり外乱ノイズなどで一時的に人体有となったかどうかを検出するために設けられた便器使用のオンディレイタイマTonが0になったかどうかをチェックしながら(S110:No)、もしその途中で人体無に変わった場合には(S102:No)再び初期洗浄ディレイタイマTiが0になるのを待つ。もし、反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出したまま(S102:Yes)、便器使用のオンディレイタイマTonが0となった場合は(S110:Yes)、人が便器を使用していると判断して、初期洗浄は行わずに便器洗浄装置の通常の動作に移行する。
【0020】
次に、初期洗浄ディレイ時間決定処理について図4のフローチャートにより説明する。まず乱数Rnを発生させ(S201)、その乱数Rnの下一桁に5を乗算し変数Riに代入する(S202)。そしてRi秒を初期洗浄ディレイタイマTiにセットし(S203)、初期洗浄ディレイタイマTiをスタートさせて(S204)、前述した初期洗浄処理に戻る。
【0021】
以上のフローチャートに従って制御された場合の、便器洗浄装置の初期洗浄動作の具体例について図5のタイミングチャートを用いて説明する。
まず商用電源が投入されると、便器A〜便器Eの便器洗浄装置3はそれぞれ乱数を発生させる。その結果、便器Aの便器洗浄装置3の乱数は642であったとすると、その下一桁の2に5を乗算し10秒となるため、10秒後に電動弁5を開駆動することでフラッシュバルブ4を開弁し、初期洗浄を開始する。そして電動弁5を開駆動してから2秒後に電動弁5を閉駆動し、それから約3秒後にフラッシュバルブ4は閉弁し初期洗浄は終了する。同様に便器Bの便器洗浄装置3で発生した乱数が207であったとすると、7×5=35秒後に初期洗浄を開始する。また便器Cの便器洗浄装置3で発生した乱数が069であったとすると、9×5=45秒後に初期洗浄を開始する。また便器Dの便器洗浄装置3で発生した乱数が981であったとすると、1×5=5秒後に初期洗浄を開始する。そして、便器Eの便器洗浄装置3で発生した乱数が254であったとすると、4×5=20秒後に初期洗浄を開始する。このようにして、便器A〜便器Eの初期洗浄が重ならないようにそれぞれの便器洗浄装置3が任意にタイミングを決定し、初期洗浄を実施することが可能となる。
さらには、初期洗浄開始のディレイ時間は9×5=45秒が最大となるため、初期洗浄が長時間続いてしまうことを防止することが可能となる。
【0022】
次に、初期洗浄が行われるまでの間に反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出した場合の、便器洗浄装置の初期洗浄動作の具体例について図6のタイミングチャートを用いて説明する。
まず、商用電源が投入されると、便器A〜便器Eの便器洗浄装置3はそれぞれ乱数を発生させる。その結果、便器Aの便器洗浄装置3の乱数は830であったとすると、その下一桁の0に5を乗算し0秒となるため、直ぐに電動弁5を開駆動することでフラッシュバルブ4を開弁し、初期洗浄を開始する。そして電動弁5を開駆動してから2秒後に電動弁5を閉駆動し、それから約3秒後にフラッシュバルブ4は閉弁し初期洗浄は終了する。同様に便器Bの便器洗浄装置3で発生した乱数が995であったとすると、5×5=25秒後に初期洗浄を開始することになるが、初期洗浄を開始する前に反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出している。しかし便器使用のオンディレイ時間10秒が経過する前に、反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体無となったため、商用電源が投入されてから25秒後に予定通り初期洗浄を開始する。
【0023】
また便器Cの便器洗浄装置3で発生した乱数が652であったとすると、2×5=10秒後に初期洗浄を開始することになるが、初期洗浄を開始する前に反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出し、人体有を検出している間に初期洗浄を開始するタイミングになっている。しかしその時点では人が使っている可能性があるため初期洗浄は一旦保留される。そして便器使用のオンディレイ時間10秒が経過する前に、反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体無となったため、その時点で初期洗浄が開始されることとなる。
【0024】
また便器Dの便器洗浄装置3で発生した乱数が124であったとすると、4×5=20秒後に初期洗浄を開始することになるが、初期洗浄を開始する前に反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出し、人体有を検出している間に初期洗浄を開始するタイミングになっている。そして人体有を検出したまま便器使用のオンディレイ時間10秒が経過したため、初期洗浄はキャンセルされ、反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体無に変わった後に、通常の便器洗浄が行われる。
【0025】
また便器Eの便器洗浄装置で発生した乱数が569であったとすると、9×5=45秒後に初期洗浄を開始することになるが、初期洗浄を開始する前に反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体有を検出している。そして、人体有を検出したまま便器使用のオンディレイ時間10秒が経過し、その後反射型非接触アクティブセンサ11から出力された信号が人体無に変わったために、人の動きで一時的に人体無になった場合に誤洗浄しないために設けられたオフディレイ時間の3秒が経過した後、電動弁5を開駆動することでフラッシュバルブ4を開弁し、通常の便器洗浄が行われる。そして電動弁5を開駆動してから2秒後に電動弁5を閉駆動し、それから約3秒後にフラッシュバルブ4は閉弁し便器洗浄は終了している。そしてその後、商用電源投入から45秒経過し、初期洗浄開始のタイミングを迎えているが、既に人の使用による便器洗浄が行われているため、初期洗浄はキャンセルされることになる。
このようにして、初期洗浄を行う前に使用者が便器1を使用したことにより便器洗浄が行われた場合、初期洗浄がキャンセルされることになるため、洗浄水を無駄に使うことを防止することが可能となる。
【0026】
次に、便器洗浄装置の初期洗浄ディレイ時間決定処理に関する別の実施形態について図7のフローチャートを用いて説明する。
まず反射型非接触アクティブセンサ11が受けている赤外線を受光部13が受信した信号を増幅部14で増幅し、その信号をから演算部15で受光信号レベルを演算することにより受光処理を行い(S301)、その受光信号レベルを制御部8aでAD変換して結果を変数Pdに代入し(S302)、その変数Pdの下一桁に5を乗算し変数Riに代入する(S303)。そしてRi秒を初期洗浄ディレイタイマTiにセットし(S304)、初期洗浄ディレイタイマTiをスタートさせて(S305)、前述した初期洗浄処理に戻る。
【0027】
以上のフローチャートに従って制御された場合の、便器洗浄装置の初期洗浄動作の具体例について図8のタイミングチャートを用いて説明する。
まず商用電源が投入されると、便器A〜便器Eの便器洗浄装置3はそれぞれ反射型非接触アクティブセンサ11の受光処理を行い、その信号レベルをAD変換する。その結果、便器Aの便器洗浄装置3がAD変換した受光信号レベルのAD値が23であったとすると、その下一桁の3に5を乗算し15秒となるため、15秒後に電動弁5を開駆動することでフラッシュバルブ4を開弁し、初期洗浄を開始する。そして電動弁5を開駆動してから2秒後に電動弁5を閉駆動し、それから約3秒後にフラッシュバルブ4は閉弁し初期洗浄は終了する。同様に便器Bの便器洗浄装置3が受光信号レベルをAD変換した結果が26であったとすると、6×5=30秒後に初期洗浄を開始する。また便器Cの便器洗浄装置3が受光信号レベルをAD変換した結果が19であったとすると、9×5=45秒後に初期洗浄を開始し、便器Dの便器洗浄装置3が受光信号レベルをAD変換した結果が31であったとすると、1×5=5秒後に初期洗浄を開始する。そして、便器Eの便器洗浄装置3が受光レベルをAD変換した結果が24であったとすると、4×5=20秒後に初期洗浄を開始する。
【0028】
以上説明したように、反射型非接触アクティブセンサ11の受光レベルから初期洗浄ディレイ時間を演算することで、便器A〜便器Eの初期洗浄が重ならないようにそれぞれの便器洗浄装置3が任意にタイミングを決定し、初期洗浄を実施することが可能となるとともに、初期洗浄開始のディレイ時間は9×5=45秒が最大となるため、初期洗浄が長時間続いてしまうことを防止することが可能となる。更には、制御手段8に無作為な時間情報を発生するためのランダム関数といった機能を準備しておく必要がなく、マイコンのROMサイズの削減が可能となり、便器洗浄装置のコスト低減が可能となる。
【0029】
次に、便器洗浄装置の初期洗浄ディレイ時間決定処理に関する別の実施形態について、図9の構成図、図10のフローチャート、図11のタイミングチャートを用いて説明する。
まず図9に示すように、制御手段8にはマイコン41が配設され、そのマイコン41にはアナログ・デジタル変換ポート(以下ADポート)AD0〜AD3や出力ポートP00などがある。そしてADポートAD1〜AD3はそれぞれ抵抗R2、R3、R4を介して基準電位レベルに電位が固定されている。またADポートAD0には抵抗R1が接続され、さらに抵抗R1のもう一方の端子からからトランジスタQ1のコレクタに接続されている。そしてトランジスタQ1のエミッタは基準電位に接続され、またトランジスタQ1のベースは抵抗R5を介して出力ポートP00に接続されている。またトランジスタQ1のベースと抵抗R5との間に抵抗R6が接続され、抵抗R6のもう一方の端子は基準電位に接続されている。
【0030】
以上の構成において、図10に示すように、まず出力ポートP00にLoを出力し(S401)トランジスタQ1をオフにすることで、ADポートAD0の電位が固定されていない状態とする。その状態でADポートAD0の信号レベルをAD変換し、その結果を変数Padに代入する(S402)。そして出力ポートP00にHiを出力し(S403)トランジスタQ1をオンにすることで、ADポートAD0を抵抗R1、トランジスタQ1を介して基準電位に接続し、ADポートAD0の電位を固定する。そして変数Padの下一桁に5を乗算し変数Riに代入し(S404)、変数Ri秒を初期洗浄ディレイタイマTiにセットし(S405)、初期洗浄ディレイタイマTiをスタートさせて(S406)、前述した初期洗浄処理に戻る。
【0031】
以上のフローチャートに従って制御された場合の、便器洗浄装置の初期洗浄動作の具体例について図11のタイミングチャートを用いて説明する。
まず商用電源が投入されると、便器A〜便器Eの便器洗浄装置3はそれぞれ出力ポートP00にLoを出力し、ADポートAD0を電位が固定されていない状態にしたうえで、ADポートAD0の信号レベルをAD変換する。その結果、便器Aの便器洗浄装置3のADポートAD0の信号レベルをAD変換したAD値が41であったとすると、その下一桁の1に5を乗算し5秒となるため、5秒後に電動弁5を開駆動することでフラッシュバルブ4を開弁し、初期洗浄を開始する。そして電動弁5を開駆動してから2秒後に電動5弁を閉駆動し、それから約3秒後にフラッシュバルブ4は閉弁し初期洗浄は終了する。同様に便器Bの便器洗浄装置3のAD0の信号レベルをAD変換した結果が205であったとすると、5×5=25秒後に初期洗浄を開始する。また便器Cの便器洗浄装置3のAD0の信号レベルをAD変換した結果が14であったとすると、4×5=20秒後に初期洗浄を開始し、便器Dの受光信号レベルをAD変換した結果が100であったとすると、0×5=0秒であるので直ぐに初期洗浄を開始する。そして、便器Eの便器洗浄装置3の受光レベルをAD変換した結果が127であったとすると、7×5=35秒後に初期洗浄を開始する。
【0032】
以上説明したように、ADポートの電位を固定しない状態での信号レベルをAD変換した値を基に初期洗浄ディレイ時間を演算することで、便器A〜便器Eの初期洗浄が重ならないようにそれぞれの便器洗浄装置3が任意にタイミングを決定し、初期洗浄を実施することが可能となるとともに、初期洗浄開始のディレイ時間は9×5=45秒が最大となるため、初期洗浄が長時間続いてしまうことを防止することが可能となる。更には、制御手段8に無作為な時間情報を発生するためのランダム関数といった機能を準備しておく必要がなく、マイコン41のROMサイズの削減が可能となり、便器洗浄装置3のコスト低減が可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1…便器
2…給水流路
3…便器洗浄装置
4…フラッシュバルブ
5…電動弁
6…コンセントプラグ
7…電源部
8…制御手段
8a…制御部
9…ディレイ時間設定部
11…反射型非接触アクティブセンサ
12…投光部
13…受光部
14…増幅部
15…演算部
21…本体
22…弁体(ピストンバルブ)
23…圧力室
24…供給路
25…排水路
26…一次側給水路
27…二次側排水路
28…シート
31…蓋
32…プランジャー
41…マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器へ繋がる給水流路にフラッシュバルブを設け、このフラッシュバルブの圧力室内の圧力を変化させて内部の弁体を開弁位置及び閉弁位置に移動させて給水流路を開閉する便器洗浄装置であって、
前記フラッシュバルブの前記圧力室内と前記弁体の一次側とを接続した供給路と、前記圧力室と前記弁体の二次側とを接続した排出路と、前記圧力室内の圧力を変化させるべく前記排出路を開閉する電動弁と、前記電動弁の駆動を制御する制御手段と、
を備えた便器洗浄装置において、
前記制御手段は、商用電源が投入されたことを検知すると前記電動弁を駆動し、前記フラッシュバルブを開弁して初期洗浄を行うと共に、商用電源が投入されてから初期洗浄を開始するまでのディレイ時間を、ディレイ時間設定部によって設定された任意の時間に変更可能としたことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ディレイ時間設定部のディレイ時間を、無作為に決定して自動的に設定することを特徴とする請求項1記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
請求項2記載の便器洗浄装置において、
人体を検出するための、赤外線等の光を投光する投光部と、前記投光部から投光された光の反射光を含む光を受光する受光部とを有する反射型の非接触アクティブセンサを備え、
前記制御手段は、商用電源が供給されると、前記非接触アクティブセンサの前記受光部の検出信号レベルに基づいて前記ディレイ時間設定部のディレイ時間を自動的に設定することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項4】
請求項1乃至2のいずれか一に記載の便器洗浄装置において、
アナログ・デジタル変換機能を有するAD端子をもつマイコン備え、
前記制御手段は、商用電源が供給されると、前記マイコンの前記AD端子をオープン状態とし、前記AD端子の電圧の検出結果に基づいて、前記ディレイ時間を設定することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項5】
前記ディレイ時間設定部は、予め決められた所定時間の範囲内でディレイ時間を決定することを特徴とする請求項1記載の便器洗浄装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ディレイ時間内に使用者の便器使用に伴う洗浄指令を受付けると、前記初期洗浄を行わずに通常洗浄を実施することを特徴とする請求項1記載の便器戦場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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