説明

便器洗浄装置

【課題】大型化せず、便器洗浄を良好に行うことができる便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】便器洗浄装置10は、給水源に連通した給水路11から流入する洗浄水を貯留し、この洗浄水を排出する排水口21、及びこの排水口21を開閉する排水弁22を有する洗浄タンク20と、洗浄タンク20内の洗浄水の水位に連動して昇降する浮き玉31を有し、この浮き玉31の昇降に連動して給水路11を開閉する第1開閉弁30と、第1開閉弁30より上流側の給水路11を分岐した分岐給水路12から流入した洗浄水を蓄圧状態に貯留し、この洗浄水が流出する流出口41Aを有する蓄圧タンク40と、上流側を流出口41Aに連通し、下流側を便器本体1に直接的に連通する流出路50と、流出路50を開閉する第2開閉弁60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1〜図5には、従来の便器洗浄装置が開示されている。この便器洗浄装置は便器本体に洗浄水を供給する蓄圧タンクを備えている。この蓄圧タンクは、ダイアフラムと、このダイアフラムを下方へ引き下げる方向に弾性力を付与する引張ばねとを有している。給水源に連通した給水路から蓄圧タンク内に洗浄水が流入する。これにより、蓄圧タンクのダイアフラムは引張ばねの弾性力に抗して上方へ押し上げられる。このようにして、この蓄圧タンクは洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる。また、この蓄圧タンクは、蓄圧状態で貯留した洗浄水を排出して便器本体へ供給する排出口と、この排出口を開閉する排水弁とを有している。
【0003】
この便器洗浄装置では、便器本体に洗浄水を供給するために排水弁を開弁すると、蓄圧タンクに蓄圧状態で貯留された洗浄水が便器本体に勢いよく流出する。このため、この便器洗浄装置はその水勢により便器洗浄を良好に行うことができる。また、この便器洗浄装置を採用することにより、蓄圧タンクの高さを低くしても洗浄水の水勢を保持することができるため、ローシルエットの水洗式便器を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−311719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の便器洗浄装置では、1回の便器洗浄に使用する洗浄水の全量を蓄圧タンクに貯留するため、蓄圧タンクが大型化してしまう。また、蓄圧タンクは耐圧構造としなければならないため、形状に制限が生じてしまう。このため、蓄圧タンクを便器本体に取り付けるために便器本体が大型化してしまうおそれがある。
【0006】
また、この便器洗浄装置では、引張ばねの弾性力によって排出口から便器本体へ洗浄水を勢いよく流出させる。このため、節水化のために洗浄水の総流量を減少させると、便器本体に流出する洗浄水の流出時間が短くなりすぎるおそれがある。便器本体に流出する洗浄水の流出時間が短いと、便器本体からの汚物等の排出が不充分になるおそれがある。特に、サイホン式便器の場合、サイホン作用が継続時間が短くなるため、便器本体からの汚物等の排出が不充分になるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、大型化せず、便器洗浄を良好に行うことができる便器洗浄装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の便器洗浄装置は、便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
給水源に連通した給水路から流入する前記洗浄水を貯留し、この洗浄水を排出する排水口、及びこの排水口を開閉する排水弁を有する洗浄タンクと、
前記洗浄タンク内の前記洗浄水の水位に連動して昇降する浮き玉を有し、この浮き玉の昇降に連動して前記給水路を開閉する第1開閉弁と、
前記第1開閉弁より上流側の前記給水路を分岐した分岐給水路から流入した前記洗浄水を蓄圧状態に貯留し、この洗浄水が流出する流出口を有する蓄圧タンクと、
上流側を前記流出口に連通し、下流側を前記便器本体に直接的に連通する流出路と、
前記流出路を開閉する第2開閉弁とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この便器洗浄装置では、便器本体に供給する洗浄水を洗浄タンクと蓄圧タンクとに分けて貯留することができる。このため、蓄圧タンクの容量を必要最小限にすることができ、蓄圧タンクの大型化を防止することができる。また、蓄圧タンクの流出口を便器本体に直接的に連通した流出路は第2開閉弁によって開閉することができる。このため、第2開閉弁を設定したタイミングで開弁することにより、蓄圧タンクに貯留した洗浄水を便器洗浄に最適なタイミングで便器本体に流出させることができる。例えば、第2開閉弁は洗浄タンクの排水口の排水弁が開弁した後の所定時間経過後に開弁するとよい。第2開閉弁が開弁すると、蓄圧タンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水が流出路を介して便器本体に流入するため、便器本体に流入する洗浄水の単位時間当たりの流量が増加する。これにより、便器本体において、最適なタイミングでサイホン作用を発生させたり、サイホン作用を継続させたりすることができる。
【0010】
したがって、本発明の便器洗浄装置は、大型化せず、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0011】
流出路は、便器本体の便器排水路に沿って洗浄水を噴出するジェットノズル、又は便器本体のリム通水路に向かって洗浄水を噴出するリム吐水口に連通するとよい。
【0012】
本発明の他の便器洗浄装置は、便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
給水源に連通した給水路から流入する前記洗浄水を貯留し、この洗浄水を排出する排水口、及びこの排水口を開閉する排水弁を有する洗浄タンクと、
前記洗浄タンク内の前記洗浄水の水位に連動して昇降する浮き玉を有し、この浮き玉の昇降に連動して前記給水路を開閉する第1開閉弁と、
前記第1開閉弁より上流側の前記給水路を分岐した分岐給水路から流入した前記洗浄水を蓄圧状態に貯留し、この洗浄水が流出する流出口を有する蓄圧タンクと、
上流側を前記流出口に連通し、下流側を前記洗浄タンクに直接的に連通した流出路と、
前記流出路を開閉する第2開閉弁とを備えていることを特徴とする。
【0013】
この便器洗浄装置でも、便器本体に供給する洗浄水を洗浄タンクと蓄圧タンクとに分けて貯留することができる。このため、蓄圧タンクの容量を必要最小限にすることができ、蓄圧タンクの大型化を防止することができる。また、蓄圧タンクの流出口を洗浄タンクに直接的に連通した流出路は第2開閉弁によって開閉することができる。このため、第2開閉弁を設定したタイミングで開弁することにより、蓄圧タンクに貯留した洗浄水を便器洗浄に最適なタイミングで洗浄タンクに流出させることができる。例えば、第2開閉弁は洗浄タンクの排水口の排水弁が開弁した後の所定時間経過後に開弁するとよい。第2開閉弁を開弁すると、蓄圧タンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水が流出路を介して洗浄タンク内に流入するため、洗浄タンク内の洗浄水が増加し、洗浄タンクの排水口からの洗浄水の流出を継続させることができる。これにより、便器本体において、最適なタイミングでサイホン作用を発生させたり、サイホン作用を継続させたりすることができる。
【0014】
したがって、本発明の他の便器洗浄装置も、大型化せず、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0015】
前記第2開閉弁は前記第1開閉弁の開閉に連動して開閉し得る。この場合、洗浄タンクに貯留した洗浄水と蓄圧タンクに蓄圧状態に貯留した洗浄水とを連動して便器本体又は洗浄タンク内に供給することができる。
【0016】
前記第1開閉弁は、前記給水路を開閉する第1主弁、この第1主弁の背面側に形成された第1背圧室、この第1背圧室と前記第1主弁の一次側とを連通した連通路、前記第1背圧室に設けられた第1排水路、前記浮き玉の昇降に連動して前記第1排水路を開閉するパイロット弁を有しており、
前記第2開閉弁は、前記流出路を開閉する第2主弁、及びこの第2主弁の背面側に形成され、前記第1背圧室に連通した第2背圧室とを有し得る。
【0017】
この場合、浮き玉が設定位置より下方へ下降すると、パイロット弁を開弁して第1排水路を開放させることができる。これにより、第1背圧室内の洗浄水が流出して第1主弁が開弁する。つまり、洗浄タンク内の水位が設定水位以下に低下すると、第1開閉弁が開弁して給水路を開放し、洗浄タンク内に洗浄水を流入させることができる。また、第1背圧室内の洗浄水が流出すると、第1背圧室に連通した第2背圧室内の洗浄水も流出して第2主弁も開弁する。つまり、洗浄タンク内の水位が設定水位以下に低下すると、第2開閉弁も開弁して流出路を開放し、蓄圧タンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水を流出させることができる。
【0018】
また、浮き玉が設定位置より上昇すると、パイロット弁を閉弁して第1排水路を閉鎖させることができる。これにより、第1背圧室内及び第2背圧室内に洗浄水を流入させて満水状態にし、第1主弁及び第2主弁を閉弁させることができる。つまり、洗浄タンク内の水位が設定水位に上昇すると、第1開閉弁及び第2開閉弁を閉弁させることができる。第1開閉弁が閉弁して給水路を閉鎖すると、洗浄タンク内への洗浄水の流入が停止する。また、第2開閉弁が閉弁して流出路を閉鎖すると、蓄圧タンク内から洗浄水の流出を停止し、分岐給水路から蓄圧タンク内に流入した洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる。このように、無電源で第1開閉弁と第2開閉弁とを連動して、洗浄タンク及び蓄圧タンクに貯留した洗浄水を流出させたり、洗浄タンク及び蓄圧タンクに洗浄水を貯留させたりすることができる。
【0019】
前記洗浄タンク内に収納され、上方に開口して前記浮き玉を昇降自在に収納し、下端部に貫通孔を設けた容器を備え得る。この場合、容器内の洗浄水は貫通孔から流出する。このため、排水弁が開弁して洗浄タンク内の洗浄水が排水口から排出し始めると、洗浄タンク内であって容器の外側の水位の低下に比べ、容器内の水位の低下を遅らせることができる。つまり、排水弁が開弁してから浮き玉が設定位置より下方に下降するまでの間にタイムラグを生じさせることができる。このようにすると、排水弁が開弁してから第1開閉弁及び第2開閉弁が開弁するまでの間にタイムラグが生じ、洗浄タンク内の洗浄水が排水口から排出し始めてから所定時間経過後に蓄圧タンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水を流出させることができる。これにより、便器本体において、最適なタイミングでサイホン作用を発生させたり、サイホン作用を継続させたりすることができる。
【0020】
前記洗浄タンクは、洗浄水の最高水位高さ近傍であって、前記浮き玉が配置されている領域と、前記流出路から洗浄水が流入する領域との間を仕切る仕切り壁を有し得る。この場合、蓄圧タンクから流出路を介して勢いよく洗浄タンク内に流入する洗浄水により生じる洗浄タンク内の洗浄水の波立ちが仕切り壁により浮き玉が配置されている領域に伝搬することを防止することができる。このため、第1開閉弁を閉弁する設定位置より上昇した浮き玉が上下に遥動せず第1開閉弁の閉弁を安定して行うことができる。
【0021】
前記蓄圧タンクは、
前記洗浄水の流入に伴い容積が増加し、前記流出口から前記洗浄水の流出に伴い容積が減少する第1室と、
この第1室の容積の増加に伴い容積を減少し、かつ、この第1室の容積の減少に伴い容積を増加し、前記便器本体の便器排水路に連通する第2室と、
前記第1室の容積を減少させる方向に弾性力を付与する弾性体とを有し得る。
【0022】
この場合、蓄圧タンクを簡易な構造で形成することができ、小型化を図ることができる。また、第1室に蓄圧状態で貯留した洗浄水を排出すると同時に、第2室に便器本体の便器排水路内の空気を吸引することができる。蓄圧状態で貯留した洗浄水を便器本体などへ流入させ、かつ便器排水路内の空気を吸引することにより、少ない洗浄水で便器排水路内にサイホン作用を発生させたり、サイホン作用を継続させたりすることができる。
【0023】
前記流出路に設けられた流量調整機構を備え得る。この場合、流量調整機構により蓄圧タンクの第1室に蓄圧状態で貯留された洗浄水の単位時間当たりの流出流量を調整することができる。蓄圧タンクの第1室の容積の減少に伴い第2室の容積が増加するため、第2室が便器排水路内の空気を吸引する単位時間当たりの吸引流量も調整することができる。このため、この便器洗浄装置が取り付けられる便器本体の種類の相違や、この便器洗浄装置を採用した水洗式便器の施工現場の相違によって、洗浄水の単位時間当たりの流出流量や便器排水路内の空気の単位時間当たりの吸引流量を便器洗浄に最適になるように調整することができる。
【0024】
前記分岐給水路に設けられた圧力調整機構を備え得る。この場合、分岐給水路の下流側に連通した蓄圧タンクの耐圧性能を低下させることができる。このため、蓄圧タンクは、構造を簡略化したり、耐圧性の低い材料にしたりすることができるため、蓄圧タンクを安価に製造することができる。また、蓄圧タンクをより小型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の便器洗浄装置を示す模式図である。
【図2】実施例1〜3の第1開閉弁及び第2開閉弁を示す概略図である。
【図3】実施例1〜3の蓄圧タンクの動作を示す概略図である。
【図4】実施例2の便器洗浄装置を示す模式図である。
【図5】実施例3の便器洗浄装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の便器洗浄装置を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【0027】
<実施例1>
実施例1の便器洗浄装置10は、図1に示すように、便器本体1に洗浄水を供給する。便器本体1は、便鉢2と、便鉢2の下流側に連通する便器排水路3と、便鉢2の上端開口の内周縁に形成されたリム通水路4とを有している。また、便器本体1は、便器排水路3に沿って洗浄水を噴出するジェットノズル5が便器排水路5の上流下端部に取り付けられている。
【0028】
便器洗浄装置10は洗浄タンク20を備えている。洗浄タンク20は図示しない給水源に連通した給水路11に連通しており、この給水路11から流入する洗浄水を貯留する。洗浄タンク20は、洗浄水を排出する排水口21、及び排水口21を開閉する排水弁22を備えている。排水弁22は、図示しない球鎖の下端部に連結されている。この球鎖は、図示しない便器洗浄スイッチが操作されると駆動する駆動モーターにより回転するシャフトに連結されている。排水弁22は、便器洗浄スイッチが操作されると球鎖を介して引き上げられ、排水口21を開放する。排水口21から流出した洗浄水は便器本体1の後部上方から便器本体1内へ流入する。便器本体1内へ流入した洗浄水は、リム吐水口4Aからリム通水路4に沿って流出し、便鉢2の内面を旋回しながら便鉢2の下方へ流れ落ちる。
【0029】
洗浄タンク20内には容器23が収納されている。容器23は上方に開口して後述する浮き玉31を昇降自在に収納し、下端部に貫通孔24が貫設されている。貫通孔24の開口面積は排水口21の開口面積よりも小さく形成されている。容器23内の洗浄水は貫通孔24から流出するため、排水弁22が開弁されて洗浄水が排水口21から流出すると、洗浄タンク20内であって容器23の外側の水位の低下に比べ、容器23内の水位の低下を遅らせることができる。
【0030】
便器洗浄装置10は給水路11を開閉する第1開閉弁30を備えている。第1開閉弁30は洗浄タンク20内に収納された容器23内の洗浄水の水位に連動して昇降する浮き玉31を有している。第1開閉弁30は、図2に示すように、給水路11を開閉するダイアフラム式の第1主弁32を有している。この第1主弁32の背面側に第1背圧室33が形成されている。第1主弁32には、第1背圧室33と第1主弁32の一次側とを連通した連通路を形成する第1小孔34が貫設されている。第1背圧室33には外部に開口した第1排水路35が設けられている。第1排水路35はパイロット弁36により開閉される。パイロット弁36は一端が浮き玉31に連結したアーム31Aの他端に連結されている。
【0031】
このパイロット弁36は、容器23内の洗浄水の水位が低下し、浮き玉31が設定位置より下方へ下降すると、開弁して第1排水路35を開放する。これにより、第1背圧室33内の洗浄水が流出して第1主弁32が開弁する。つまり、容器23内の水位が設定水位以下に低下すると、第1開閉弁30が開弁して給水路11を開放し、給水路11から洗浄タンク20内に洗浄水が流入する。
【0032】
また、このパイロット弁36は、容器23内の洗浄水の水位が上昇し、浮き玉31が設定位置より上昇すると、閉弁して第1排水路35を閉鎖する。これにより、第1背圧室33内に第1小孔34から洗浄水が流入して満水状態になると第1主弁32が閉弁する。つまり、容器23内の水位が設定水位に上昇すると、第1開閉弁30が閉弁して給水路11を閉鎖し、給水路11から洗浄タンク20内への洗浄水の流入が停止する。
【0033】
給水路11は、図1及び図3に示すように、第1開閉弁30より上流側で分岐給水路12を分岐している。便器洗浄装置10は、分岐給水路12から流入した洗浄水を蓄圧状態に貯留し、この洗浄水が流出する流出口41Aを有する蓄圧タンク40を備えている。
【0034】
分岐給水路12には逆止弁13と圧力調整機構14とが設けられている。逆止弁13は圧力調整機構14の上流側に配置されている。逆止弁13は、給水路11側から蓄圧タンク40側への洗浄水の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。これにより、蓄圧タンク40内に蓄圧状態で貯留した洗浄水が給水路11側へ流出することを防止している。圧力調整機構14は減圧弁等によって構成されている。この圧力調整機構14は、その下流側の給水圧力を設定圧力以下に低下させるものであるため、分岐給水路12の下流端に連通した蓄圧タンク40は、耐圧性能を低くすることができる。このため、後述するように、蓄圧タンク40は、構造を簡略化したり、耐圧性能の低い材料にしたりすることができ、安価に製造することができる。また、蓄圧タンク40をより小型にすることができる。このため、蓄圧タンク40は便器本体1の空いたスペースに配置することができる。よって、この便器洗浄装置10を採用した水洗式便器の大型化を避けることができる。
【0035】
蓄圧タンク40は、上下方向に移動する隔壁44により分離され、隔壁44より下方に形成された第1室41と、隔壁44より上方に形成された第2室42とを有している。第1室41と第2室42とは気密性及び水密性を有している。また、蓄圧タンク40は、第1室41の容積を減少させる方向に弾性力を付与する弾性体43を有している。この弾性体43は圧縮コイルばねであり、第2室42内に収納されている。
【0036】
第1室41は分岐給水路12に連通し、洗浄水が流入すると弾性体43の弾性力に抗して隔壁44を上昇させて容積を増加しつつ、洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる(図3(A)参照)。また、第1室41は下端部に流出口41Aを開口している。流出口41Aには、流出路50が連通している。流出路50は下流側を便器本体1に取り付けられたジェットノズル5に直接的に連通している。このため、第1室41に蓄圧状態で貯留した洗浄水をジェットノズル5から噴出させることができる。
【0037】
第2室42は吸排気路70を介して便器本体1の便器排水路3の上端部に連通している。このため、隔壁44が下降して第2室42の容積を増加すると、吸排気路70を介して便器排水路3内の空気を第2室42側に吸引することができる(図3(B)、(C)参照)。また、隔壁44が上昇して第2室42の容積が減少すると、吸排気路70を介して第2室42内の空気を便器排水路3側に排出することができる。
【0038】
流出路50には第2開閉弁60と流量調整機構51とが設けられている。第2開閉弁60は流量調整機構51の上流側に配置されている。第2開閉弁60は、図2に示すように、流出路50を開閉するダイアフラム式の第2主弁61を有している。この第2主弁61の背面側に第2背圧室62が形成されている。第2背圧室62は第2排水路64を介して第1背圧室33に連通している。第2排水路64には逆止弁65が設けられている。逆止弁65は第2背圧室62側から第1背圧室33側への洗浄水の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。第2主弁61には、第2背圧室62と第2主弁61の一次側とを連通した第2小孔63が貫設されている。
【0039】
第2開閉弁60は第1開閉弁30が開弁すると開弁する。つまり、第1開閉弁30が開弁する際に、パイロット弁36が開弁して第1排水路35から第1背圧室33内の洗浄水が流出すると、第2排水路64を介して第2背圧室62内の洗浄水も流出する。このため、第1主弁32が開弁するのと略同時に第2主弁61も開弁する。第2主弁61が開弁すると、第1室41に蓄圧状態で貯留した洗浄水が、流出路50を介してジェットノズル5から噴出する。この際、第2室42の容積が増加し、吸排気路70を介して便器排水路3内の空気を第2室42側に吸引する。
【0040】
第2開閉弁60は第1開閉弁30が閉弁すると閉弁する。つまり、第1開閉弁30が閉弁する際に、パイロット弁36が閉弁して第1排水路35を閉鎖すると、第1小孔34から第1背圧室33内に流入した洗浄水で第1背圧室33内が満水状態になる。すると、第2背圧室62から第1背圧室33へ洗浄水が流れなくなり、第2小孔63から第2背圧室62内が流入した洗浄水で第2背圧室62が満水状態になり第2主弁61が閉弁する。この際、第2排水路64に逆止弁65が設けられているため、第1背圧室33から第2背圧室62側に洗浄水は流れない。このため、第1背圧室33内に流入した洗浄水により早期に第1背圧室33を満水状態にすることができ、第1開閉弁30を早期に閉弁することができる。
【0041】
第2主弁61が閉弁すると、分岐給水路12から流入する洗浄水が弾性体43の弾性力に抗して隔壁44を上昇させる。これにより、第1室41の容積が増加しつつ、第1室41内に洗浄水を蓄圧状態で貯留する。この際、第2室42の容積が減少し、吸排気路70を介して第2室42内の空気を便器排水路3側に排出する。
【0042】
次に、このように構成された便器洗浄装置10が便器本体1に洗浄水を供給して行う便器洗浄について説明する。
【0043】
[便器洗浄待機状態]
洗浄タンク20の排水弁22は排水口21を閉鎖し、洗浄タンク20及び容器23は設定した最高水位で洗浄水を貯留している。また、蓄圧タンク40の第1室41は、図3(A)に示すように、容積を最大にした状態で洗浄水を蓄圧状態で貯留している。第1開閉弁30及び第2開閉弁60は閉弁している。この状態で便器洗浄装置10は便器洗浄を開始可能に待機する。
【0044】
[便器洗浄開始・初期洗浄]
図示しない洗浄スイッチが操作されると、排水弁22が引き上げられて排水口21が開放する。排水口21から流出した洗浄水は、リム吐水口4Aからリム通水路4に沿って流出し、便鉢2の内面を旋回しながら便鉢2の下方へ流れ落ちる。これにより、便鉢2内の洗浄水の水位は上昇する。この間、洗浄タンク20内であって容器23の外側の水位及び容器23の内側の水位は低下する。容器23の内側の水位の低下速度は、洗浄タンク20内であって容器23の外側の水位の低下速度に比べて遅い。浮き玉31が設定位置より下方に下降するまでは、第1開閉弁30は閉弁したままである。
【0045】
[所定時間経過後・サイホン作用発生]
容器23の内側の水位がさらに下降し、浮き玉23が設定位置より下方に下降すると、上述したように、第1開閉弁30と第2開閉弁60とが開弁する。
【0046】
第1開閉弁30が開弁すると、給水路11が開放され、洗浄タンク20内に洗浄水が流入する。また、第2開閉弁60が開弁すると、図3(B)に示すように、流出路50が開放され、蓄圧タンク40の第1室41内に蓄圧状態で貯留した洗浄水がジェットノズル5から噴出する。また、蓄圧タンク40の第2室42の容積が増加し、吸排気路70を介して便器排水路3内の空気を第2室42側に吸引する。この際、便鉢2内の洗浄水の水位はリム吐水口4Aから流出した洗浄水により上昇している。このため、ジェットノズル5からの洗浄水の噴出、便器排水路3内の空気の吸引、及び便鉢2内の洗浄水の水頭圧の増加の相乗効果により、少ない洗浄水でも便器排水路3内にサイホン作用を発生させることができる。サイホン作用により、便鉢4内の汚物等を便器排水路3の下流側へ排出することができる。このように、所定時間経過後に第2開閉弁60を開弁することにより、最適なタイミングでサイホン作用を発生させることができる。
【0047】
[サイホン作用継続]
洗浄タンク20の排水口21から流出する洗浄水の単位時間当たりの流量は、排水弁22の開弁後、徐々に減少する。一方、蓄圧タンク40の第1室41から流出し、ジェットノズル5から流出する洗浄水より、便器排水路3に流入する洗浄水の単位時間当たりの流量は増加する。このため、便器排水路3内の洗浄水が減少し、サイホン作用が終了してしまうことを防止することができる。このように、便器排水路3内のサイホン作用を継続させ、汚物等の排出を良好に行うことができる。この際、ジェットノズル5から流出する洗浄水の単位時間当たりの流出流量や第2室42が吸引する便器排水路3内の空気の単位時間当たりの吸引流量は、流出路50に設けられた流量調整機構51により便器洗浄に最適になるよう調整することができる。
【0048】
[サイホン作用終了]
蓄圧タンク40の第1室41内に蓄圧状態で貯留された洗浄水が排出され、洗浄タンク20の排水口21が排水弁22により閉弁すると、便器排水路3内の洗浄水が減少して、サイホン作用が終了する。
【0049】
[洗浄タンク内及び便鉢内への洗浄水の貯留]
洗浄タンク20の排水口21が排水弁22により閉弁すると、洗浄タンク20及び容器23内に洗浄水が貯留される。容器23内の洗浄水が設定水位に上昇するまで第1開閉弁30及び第2開閉弁60は閉弁しない。このため、図3(C)に示すように、分岐給水路12、第1室41及び流出路50を介してジェットノズル5から洗浄水が流出する。この洗浄水が便鉢2及び便器排水路3内に貯留し、封水が形成される。
【0050】
[蓄圧タンク内への洗浄水の貯留]
容器23内の洗浄水が設定水位に上昇すると、第1開閉弁30は閉弁する。これにより、洗浄タンク20内への洗浄水の流入が停止する。また、第1開閉弁30が閉弁すると第2開閉弁60も閉弁する。これにより、蓄圧タンク40の第1室41内に分岐給水路12から流入する洗浄水が弾性体43の弾性力に抗して隔壁44を上昇させて第1室41の容積を増加しつつ、洗浄水を蓄圧状態で貯留する(図3(A)参照)。こうして、便器洗浄装置10は便器洗浄の待機状態に復帰する。
【0051】
このように実施例1の便器洗浄装置10は、便器本体1に供給する洗浄水を洗浄タンク20と蓄圧タンク40とに分けて貯留しているため、蓄圧タンク40の容量を必要最小限にすることができ、蓄圧タンク40の大型化を防止することができる。また、蓄圧タンク40の第1室41に貯留した洗浄水を便器洗浄に最適なタイミングでジェットノズル5から流出させ、サイホン作用を発生させたり、サイホン作用を継続させたりすることができる。
【0052】
したがって、実施例1の便器洗浄装置10は、大型化せず、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0053】
<実施例2>
実施例2の便器洗浄装置110は、図4に示すように、流出路50の下流側をリム通水路4に向かって洗浄水を噴出するリム吐水口4Aに直接的に連通している。便器本体1は便器排水路3に沿って洗浄水を噴出するジェットノズルを設けていない。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0054】
この便器洗浄装置110では、便器本体1に洗浄水を供給して行う便器洗浄において、第2開閉弁60が開弁すると、蓄圧タンク40の第1室41内に蓄圧状態で貯留した洗浄水がリム吐水口4Aから噴出する。これにより、便鉢2内の洗浄水の水位が高い位置に保持される。このため、便器排水路3内の空気の吸引と、便鉢2内の洗浄水の水頭圧の増加の相乗効果により、少ない洗浄水でも便器排水路3内にサイホン作用を発生させることができる。また、便鉢2内の洗浄水が急激に減少することを防止し、サイホン作用を継続させることができる。
【0055】
したがって、実施例2の便器洗浄装置110も、大型化せず、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0056】
<実施例3>
実施例3の便器洗浄装置210は、図5に示すように、流出路50の下流側を洗浄タンク20に直接的に連通している。また、洗浄タンク20は、洗浄水の最高水位高さ近傍であって、浮き玉31が配置されている領域と、流出路50から洗浄水が流入する領域との間を仕切る仕切り壁25を有している。便器本体1は便器排水路3に沿って洗浄水を噴出するジェットノズルを設けていない。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0057】
この便器洗浄装置210では、便器本体1に洗浄水を供給して行う便器洗浄において、第2開閉弁60が開弁すると、蓄圧タンク40の第1室41内に蓄圧状態で貯留した洗浄水が洗浄タンク20内に噴出する。これにより、洗浄タンク20内の洗浄水が増加し、洗浄タンク20の排水口21からの洗浄水の流出を継続させることができる。これにより、便器本体1のリム吐水口4Aから流出する洗浄水が増加し、便鉢2内の洗浄水の水位が高い位置に保持される。このため、便器排水路3内の空気の吸引と、便鉢2内の洗浄水の水頭圧の増加の相乗効果により、少ない洗浄水でも便器排水路3内にサイホン作用を発生させることができる。また、便鉢2内の洗浄水が急激に減少することを防止し、サイホン作用を継続させることができる。
【0058】
したがって、実施例3の便器洗浄装置210も、大型化せず、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0059】
また、仕切り壁25により、蓄圧タンク40から流出路50を介して勢いよく洗浄タンク20内に流入する洗浄水により生じる洗浄タンク20内の洗浄水の波立ちが浮き玉31が配置されている領域に伝搬することを防止することができる。このため、第1開閉弁30を閉弁する設定位置より上昇した浮き玉31が上下に遥動せず第1開閉弁30の閉弁を安定して行うことができる。
【0060】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1〜3では、蓄圧タンクの第2室を便器排水路に連通し、便器排水路の空気を吸引したが、蓄圧タンクは蓄圧状態で貯留した洗浄水を便器本体又は洗浄タンクに吐水するのみでよく、便器排水路の空気を吸引しなくてもよい。
(2)実施例1〜3では、第1開閉弁と第2開閉弁との開閉を無電源で連動させたが、第1開閉弁及び第2開閉弁を電気式にして電気的に連動させてもよい。又は、第2開閉弁のみを電気式にして電気的に開閉させてもよい。
(3)実施例1〜3では、分岐給水路に圧力調整機構を設けたが、圧力調整機構を設けなくてもよい。
(4)実施例1〜3では、分岐給水路に逆止弁を設けたが、蓄圧タンクに逆流防止機構を組み込んでもよい。
(5)実施例1〜3では、流出路に流量調整機構を設けたが、流量調整機構を設けなくてもよい。又は、蓄圧タンクに流量調整機構を組み込んでもよい。
(6)実施例1〜3では、第1主弁に第1小孔を貫設したが、第1主弁に第1小孔を貫設せず、第1背圧室と第2背圧室を連通する連通路を別途設けてもよい。
(7)実施例1〜3では、第2排水路に逆止弁を設けたが、逆止弁を設けなくてもよい。この場合、第2主弁には第2小孔を貫設しない。
【符号の説明】
【0061】
1…便器本体
3…便器排水路
10、110、210…便器洗浄装置
11…給水路
12…分岐給水路
14…圧力調整機構
20…洗浄タンク
21…排水口
22…排水弁
23…容器
24…貫通孔
25…仕切り壁
30…第1開閉弁
31…浮き玉
32…第1主弁
33…第1背圧室
34…第1小孔(連通路)
35…第1排水路
36…パイロット弁
40…蓄圧タンク
41…第1室
41A…流出口
42…第2室
43…弾性体
50…流出路
51…流量調整機構
60…第2開閉弁
61…第2主弁
62…第2背圧室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
給水源に連通した給水路から流入する前記洗浄水を貯留し、この洗浄水を排出する排水口、及びこの排水口を開閉する排水弁を有する洗浄タンクと、
前記洗浄タンク内の前記洗浄水の水位に連動して昇降する浮き玉を有し、この浮き玉の昇降に連動して前記給水路を開閉する第1開閉弁と、
前記第1開閉弁より上流側の前記給水路を分岐した分岐給水路から流入した前記洗浄水を蓄圧状態に貯留し、この洗浄水が流出する流出口を有する蓄圧タンクと、
上流側を前記流出口に連通し、下流側を前記便器本体に直接的に連通する流出路と、
前記流出路を開閉する第2開閉弁とを備えていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
給水源に連通した給水路から流入する前記洗浄水を貯留し、この洗浄水を排出する排水口、及びこの排水口を開閉する排水弁を有する洗浄タンクと、
前記洗浄タンク内の前記洗浄水の水位に連動して昇降する浮き玉を有し、この浮き玉の昇降に連動して前記給水路を開閉する第1開閉弁と、
前記第1開閉弁より上流側の前記給水路を分岐した分岐給水路から流入した前記洗浄水を蓄圧状態に貯留し、この洗浄水が流出する流出口を有する蓄圧タンクと、
上流側を前記流出口に連通し、下流側を前記洗浄タンクに直接的に連通した流出路と、
前記流出路を開閉する第2開閉弁とを備えていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項3】
前記第2開閉弁は前記第1開閉弁の開閉に連動して開閉することを特徴とする請求項1又は2記載の便器洗浄装置。
【請求項4】
前記第1開閉弁は、前記給水路を開閉する第1主弁、この第1主弁の背面側に形成された第1背圧室、この第1背圧室と前記第1主弁の一次側とを連通した連通路、前記第1背圧室に設けられた第1排水路、前記浮き玉の昇降に連動して前記第1排水路を開閉するパイロット弁を有しており、
前記第2開閉弁は、前記流出路を開閉する第2主弁、及びこの第2主弁の背面側に形成され、前記第1背圧室に連通した第2背圧室とを有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の便器洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄タンク内に収納され、上方に開口して前記浮き玉を昇降自在に収納し、下端部に貫通孔を設けた容器を備えていることを特徴とする請求項4記載の便器洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄タンクは、洗浄水の最高水位高さ近傍であって、前記浮き玉が配置されている領域と、前記流出路から洗浄水が流入する領域との間を仕切る仕切り壁を有していることを特徴とする請求項2記載の便器洗浄装置。
【請求項7】
前記蓄圧タンクは、
前記洗浄水の流入に伴い容積が増加し、前記流出口から前記洗浄水の流出に伴い容積が減少する第1室と、
この第1室の容積の増加に伴い容積を減少し、かつ、この第1室の容積の減少に伴い容積を増加し、前記便器本体の便器排水路に連通する第2室と、
前記第1室の容積を減少させる方向に弾性力を付与する弾性体とを有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の便器洗浄装置。
【請求項8】
前記流出路に設けられた流量調整機構を備えていることを特徴とする請求項7記載の便器洗浄装置。
【請求項9】
前記分岐給水路に設けられた圧力調整機構を備えていることを特徴とする請求項7又は8記載の便器洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21360(P2012−21360A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161670(P2010−161670)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】