説明

便器洗浄装置

【課題】便器洗浄中に停電になっても便器洗浄を完了して汚物等の排出を確実に行うことができる。
【解決手段】便器洗浄装置20は、洗浄水を便器本体10に送水する電気駆動式のポンプ23と、このポンプ23に電力を供給する給電路24を有した電源装置25とを備えている。電源装置25は給電路24に直列的に接続したリチウムイオン二次電池28を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便器洗浄装置を開示している。この便器洗浄装置は、洗浄水を貯留する洗浄タンクと、この洗浄タンクに貯留した洗浄水を便器本体に送水する加圧ポンプとを備えている。この便器洗浄装置は、加圧ポンプの動作中に停電になると、その回転部の慣性力による回転によって、便器本体の封水部を水封するために必要な水量を便器本体に送水することができる。
【0003】
このため、この便器洗浄装置は、加圧ポンプを動作させて便器洗浄を実行している途中で停電になっても、便器本体の封水部を水封することができるため、封水部より下流側から便鉢部側に臭気が逆流することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の便器洗浄装置では、便器洗浄中に停電になると、その後に便器本体に供給される洗浄水は便器本体の封水部を水封するためのものであり、通常の便器洗浄を実行するための洗浄水の供給ではなくなる。このため、便器洗浄が完全に実行されず、汚物等の排出が不充分になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器洗浄中に停電になっても便器洗浄を完了して汚物等の排出を確実に行うことができる便器洗浄装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便器洗浄装置は、洗浄水を便器本体に送水する電気駆動式の送水装置と、この送水装置に電力を供給する給電路を有した電源装置とを備えた便器洗浄装置であって、
前記電源装置は前記給電路に直列的に接続した蓄電装置を有していることを特徴とする。
【0008】
この便器洗浄装置では、給電路に直列的に接続した蓄電装置を介して送水装置に電力を供給しているため、蓄電装置は常に満充電の状態を維持することができる。このため、送水装置が洗浄水を便器本体に送水して便器洗浄を実行している途中で停電になっても、蓄電装置から送水装置に電力を確実に供給することができるため、便器洗浄装置は通常と同様の便器洗浄を完了することができる。
【0009】
したがって、本発明の便器洗浄装置は便器洗浄中に停電になっても便器洗浄を完了して汚物等の排出を確実に行うことができる。
【0010】
前記蓄電装置は前記送水装置が1回の便器洗浄を実行することができる電力を蓄電し得る。便器洗浄装置は、便器洗浄を実行している途中で停電になった際に、通常と同様の便器洗浄を完了することができる電力を蓄電すれば良いため、その蓄電量は多くても1回の便器洗浄を実行することができれば充分である。このように、蓄電装置の容量を必要最低限にすることによって、蓄電装置の小型化を図ることができる。
【0011】
前記電源装置は前記給電路を分岐して前記便器本体に設けた便器洗浄以外に利用する電気機器に電力を供給する分岐給電路を有しており、停電になった際、この電源装置は前記分岐給電路への電力供給を停止し、前記給電路へのみ前記蓄電装置に蓄電した電力を供給し得る。この場合、停電になった際、分岐給電路への電力供給を停止するため、蓄電装置に蓄電した電力が便器洗浄装置以外に利用されない。つまり、蓄電装置は、蓄電した電力が送水装置以外の電気機器で消費されないため、停電時に便器洗浄を完了するための電力を確実に確保することができ、送水装置を通常の便器洗浄と同様に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の水洗式便器を示す構成図である。
【図2】実施例1の電源装置等の要部を示すブロック図である。
【図3】実施例2の水洗式便器を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の便器洗浄装置を備えた水洗式便器を具体化した実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<実施例1>
実施例1の水洗式便器は、図1に示すように、便器本体10と便器洗浄装置20とを備えている。便器本体10は、便鉢部11と、この便鉢部11の下流側に連通する便器排水路12とを有している。また、便器本体10は上面に便座装置13を取り付けている。便座装置13は、便器本体10の上面後部に取り付けた便座ボックス14と、便座ボックス14に回動自在に取り付けられた便蓋15及び便座16とを有している。便座装置13は、便座ボックス14内に局部洗浄装置17A、脱臭装置17B等の電気機器17と、それらを制御する制御装置18とを収納している。
【0015】
便器洗浄装置20は、洗浄水を貯留する洗浄タンク21と、洗浄タンク21と便器本体10とを連通する給水路22と、給水路22を介して洗浄タンク21に貯留した洗浄水を便器本体10に送水する電気駆動式の送水装置であるポンプ23と、ポンプ23に電力を供給する給電路24を有した電源装置25とを備えている。
【0016】
洗浄タンク21は便器本体10の背後に設置している。このため、水洗式便器はローシルエットを実現することができる。洗浄タンク21は側面下部に給水路22の上流端を接続している。給水路22は下流端を便器本体10の便鉢部11の後部に接続している。給水路22の下流端から吐水された洗浄水は便鉢部11の上部周縁に設けられたリム通水路に沿って一方向に流れながら便鉢部11の表面に流れ落ちる。このため、洗浄水は便鉢部11の表面を旋回しながら便器排水路12に流れ込む旋回流を形成する。
【0017】
ポンプ23は給水路22の途中に設けられている。電源装置25とポンプ23との間の給電路24にポンプ用制御装置26が配置されている。ポンプ用制御装置26は、ポンプ23の運転開始及び停止、回転数の変更を制御することができる。このため、便器洗浄装置20は便器本体10に送水する洗浄水の水量及び流量(一定時間の送水量)を変化させることができる。よって、便器洗浄装置20は、ポンプ23の回転数を高くして大流量の洗浄水を設定時間の間、便器本体10に送水することによって洗浄水量の多い大洗浄モードを実行することができる。また、便器洗浄装置20は、大洗浄モードよりもポンプ23の回転数を小さくして小流量の洗浄水を大洗浄モードよりも短い時間の間、便器本体10に送水することによって洗浄水量の少ない小洗浄モードを実行することができる。このように、便器洗浄装置20は、大洗浄モード、小洗浄モードの少なくとも2種類の便器洗浄を実行することができる。
【0018】
電源装置25は、図1及び図2に示すように、給電路24の一部である電源コンセント27Aを先端に有する電源コード27に繋がった蓄電装置であるリチウムイオン二次電池28と、リチウムイオン二次電池28に繋がった分電器29とを有している。給電路24は、上述したように、電源装置25の分電器29からポンプ用制御装置26を介してポンプ23に繋がっている。このように、ポンプ23に電力を供給する給電路24(電源コンセント27Aからポンプ23までの間の給電路24)には、リチウムイオン二次電池28、分電器29、ポンプ用制御装置26が直列的に配置されている。リチウムイオン二次電池28は、ポンプ23が大洗浄モードで1回の便器洗浄を実行することができる電力を蓄電することができる。
【0019】
分電器29は、局部洗浄装置17A、脱臭装置17B等の電気機器17を制御する制御装置18を介してこれら電気機器17に電力を供給する分岐給電路29Aが繋がっている。また、分電器29は、図2に示すように、停電を検知し、分岐給電路29Aを通電状態から非通電状態に切り替える制御装置29Bを有している。このため、分電器29は、停電になった際、分岐給電路29Aへの電力供給を停止し、給電路24へのみリチウムイオン二次電池28に蓄電した電力を供給する。
【0020】
このような構成を有する水洗式便器では、電源装置25のリチウムイオン二次電池28を給電路24に直列的に接続しているため、リチウムイオン二次電池28は常に満充電の状態を維持することができる。このため、便器洗浄装置20が便器洗浄を実行している途中で停電になっても、リチウムイオン二次電池28からポンプ23に電力を確実に供給することができるため、便器洗浄装置20は通常と同様の便器洗浄を完了することができる。
【0021】
したがって、実施例1の便器洗浄装置20を備えた水洗式便器は便器洗浄中に停電になっても便器洗浄を完了して汚物等の排出を確実に行うことができる。
【0022】
また、リチウムイオン二次電池28は、便器洗浄を実行している途中で停電になっても確実に便器洗浄を完了することができる必要最低限の電力、つまり、大洗浄モードで1回の便器洗浄を実行するだけの電力を蓄電するだけでよいため、小型化を図ることができる。
【0023】
さらに、停電になった際、分岐給電路29Aへの電力供給を停止するため、リチウムイオン二次電池28に蓄電した電力はポンプ23の駆動(便器洗浄)以外に利用されない。つまり、リチウムイオン二次電池28に蓄電した電力が局部洗浄装置17B等の便器洗浄以外に利用する電気機器17で消費されないため、停電時に便器洗浄を完了するための電力を確実に確保することができ、ポンプ23を通常の便器洗浄と同様に駆動することができる。
【0024】
<実施例2>
実施例2の水洗式便器は、図3に示すように、便器洗浄装置30が洗浄タンクを有していない点、送水装置31が給水源の給水圧力を利用して直接的に便器本体10に洗浄水を送水するものである点、及び便器洗浄装置30が便鉢部11の上部周縁に設けられたリム通水路に沿って洗浄水を吐水するリム給水路32Aと、便器排水路12に沿って下流側に向けて洗浄水を吐水するジェット給水路32Bとを有している点で実施例1と相違する。実施例1と同様の構成は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0025】
便器洗浄装置30の送水装置31は上流側を給水ホース33に連通している。給水ホース33は便器本体10を設置したトイレルーム内に引き出された給水源に連通した図示しない給水管に上流端部を接続している。
【0026】
送水装置31は、止水栓34、リム用開閉弁35A、及びジェット用開閉弁35Bを有している。止水栓34は給水ホース33の下流端が接続した上流側給水路35Cに設けられている。上流側給水路35Cは下流端部でリム給水路32Aとジェット給水路32Bに分岐している。リム用開閉弁35Aはリム給水路32Aに設けられている。ジェット用開閉弁35Bはジェット給水路32Bに設けられている。
【0027】
リム給水路32Aは下流端を便器本体10の便鉢部11の後部に接続している。リム給水路32Aの下流端から吐水された洗浄水は便鉢部11の上部周縁に設けられたリム通水路に沿って一方向に流れながら便鉢部11の表面に流れ落ちる。このため、洗浄水は便鉢部11の表面を旋回しながら便器排水路12に流れ込む旋回流を形成する。
【0028】
ジェット給水路32Bは便器本体10の便鉢部11の下部に接続している。ジェット給水路32Bの下流端から吐水された洗浄水は便器排水路12に沿って下流側に向けて流れる。便器排水路12にジェット給水路32Bから直接的に洗浄水が供給されるため、便器排水路12内にサイホン作用を効率的に発生させることができる。
【0029】
電源装置25は、リム用開閉弁35A、及びジェット用開閉弁35Bに電力を供給する給電路24を有している。電源装置25と、リム用開閉弁35A及びジェット用開閉弁35Bとの間の給電路24に開閉弁用制御装置26Aが配置されている。開閉弁用制御装置26Aは、リム用開閉弁35A及びジェット用開閉弁35Bの開閉を制御することができる。このため、便器洗浄装置30は、先ず、リム用開閉弁35Aを開弁してリム給水路32Aを介してリム通水路に洗浄水を吐水するリム洗浄を実行し、その後にリム用開閉弁35Aを閉弁するとともにジェット用開閉弁35Bを開弁してジェット給水路32Bを介して便器排水路12に洗浄水を吐水するジェット洗浄を実行し、その後にジェット用開閉弁35Bを閉弁するとともに再度リム用開閉弁35Aを設定時間の間、開弁して、リム洗浄を実行するという便器洗浄を実行することができる。また、便器洗浄装置30は、リム洗浄時間及びジェット洗浄時間を変更して、洗浄水量の多い大洗浄モード、及び洗浄水量の少ない小洗浄モードを実行することができる。このように、便器洗浄装置30は、大洗浄モード、小洗浄モードの少なくとも2種類の便器洗浄を実行することができる。
【0030】
電源装置25のリチウムイオン二次電池28は送水装置31のリム用開閉弁35A及びジェット用開閉弁35Bを開閉駆動して、1回の便器洗浄、つまり、リム洗浄、ジェット洗浄、及びリム洗浄の順に実行するだけの電力を蓄電することができる。このように、便器洗浄を実行している途中で停電になっても確実に便器洗浄を完了することができる必要最低限の電力、つまり、1回の便器洗浄を実行するだけの電力を蓄電するだけで良いため、リチウムイオン二次電池28は小型化を図ることができる。
【0031】
このような構成を有する水洗式便器では、電源装置25のリチウムイオン二次電池28を給電路24に直列的に接続しているため、リチウムイオン二次電池28は常に満充電の状態を維持することができる。このため、便器洗浄装置30が便器洗浄を実行している途中で停電になっても、リチウムイオン二次電池28からリム用開閉弁35A及びジェット用開閉弁35Bに電力を確実に供給することができるため、便器洗浄装置30は通常と同様の便器洗浄を完了することができる。
【0032】
したがって、実施例2の便器洗浄装置30を備えた水洗式便器も便器洗浄中に停電になっても便器洗浄を完了して汚物等の排出を確実に行うことができる。
【0033】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、蓄電装置をリチウムイオン二次電池にしたが、大容量コンデンサー等の他の蓄電装置を利用してもよい。
(2)実施例1及び2では、リチウムイオン二次電池に1回の便器洗浄を実行することができる電力を蓄電したが、便器洗浄を複数回できる電力を蓄電してもよい。
(3)実施例1及び2では、水洗式便器が、局部洗浄装置、脱臭装置等の便器洗浄以外に利用する電気装置を備えていたが、これら電気装置を備えていない水洗式便器であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…便器本体
17…電気機器
20、30…便器洗浄装置
23…ポンプ(送水装置)
24…給電路
25…電源装置
28…リチウムイオン二次電池(蓄電装置)
29A…分岐給電路
31…送水装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を便器本体に送水する電気駆動式の送水装置と、この送水装置に電力を供給する給電路を有した電源装置とを備えた便器洗浄装置であって、
前記電源装置は前記給電路に直列的に接続した蓄電装置を有していることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記蓄電装置は前記送水装置が1回の便器洗浄を実行することができる電力を蓄電することを特徴とする請求項1記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記電源装置は前記給電路を分岐して前記便器本体に設けた便器洗浄以外に利用する電気機器に電力を供給する分岐給電路を有しており、停電になった際、この電源装置は前記分岐給電路への電力供給を停止し、前記給電路へのみ前記蓄電装置に蓄電した電力を供給することを特徴とする請求項1又は2記載の便器洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−40490(P2013−40490A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177921(P2011−177921)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】