説明

便器装置

【課題】 簡素な構成により便鉢内の清潔性を継続的に保つことができ、又健康衛生的である便器装置及び便鉢洗浄方法を提供する。
【解決手段】 リムノズル7に、排泄後に便鉢14の表面を洗い流す水又は便鉢14の表面を洗浄する洗浄剤を供給するミキシングバルブ6と、ミキシングバルブ6に水(水道水)を供給する洗い流し用バルブ3と、ミキシングバルブ6に洗浄剤を供給するポンプ5と、ユーザの操作又は予め設定されたプログラムに応じて、洗い流し用バルブ3、ポンプ5及びミキシングバルブ6等を制御する指令を送信するCPU13と、を有し、CPU13は、洗い流し用バルブ3及びミキシングバルブ6を制御してリムノズル7から水を吐出させて便鉢14の表面を洗い流させた後、ポンプ5及びミキシングバルブ6を制御して同じくリムノズル7から洗浄剤を便鉢14の表面に吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置及び便鉢洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温水洗浄便座を備えた便器において、便鉢内の清潔性向上を図るため、一部のメーカは表面加工により汚れが付きにくくする処理を施している。また、抗菌剤を便器本体に練りこみ大腸菌などの増殖を抑制する処理を行っているメーカが多い。しかし、何れの処理がされていても便鉢内(衛生陶器表面)の掃除をしなくても良いわけではなく、清掃を定期的に行う必要がある。ユーザは、定期的にトイレ洗浄剤を掛けてブラシ(タワシ)等にて、陶器表面をこすること或いは、定期的にトイレ洗浄剤を掛けて置く事により汚れ成分を除去するようにしている。
【0003】
特許文献1には、リム内通水部と洗浄水吐出穴を含んで構成され人体排出物を押し流すための排出手段とは別に、便器内に向かって伸縮自在な大便器洗浄用の洗浄ノズルを設けた大便器が提案されている。この大便器においては、排出物を押し流す際は、給水タンクの水がリム内通水部を通じて洗浄水吐出穴から吐出し、大便器を洗浄する際には、洗浄ノズルが便器内に伸張して洗浄液を噴出する。また、特許文献1には、この大便器洗浄用洗浄ノズルを人体洗浄用ノズルとして共用する形態も提案されている。
【0004】
特許文献2には、同一のノズルから、人体洗浄用の温水と、便器洗浄用の薬剤を噴出する洗浄装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−144846号公報
【特許文献2】特開2003−278219号公報(請求項4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明によれば、大便器(便鉢内)洗浄のため、専用のノズルユニットを設ける必要があるため、スペース的又はコスト的な問題がある。
【0007】
また、特許文献1又は2には、大便器(便鉢内)洗浄のためのノズルを、おしり洗浄又はビデ洗浄等の人体洗浄用ノズルと共用する構成が提案されているが、洗浄剤を散布するノズル及び管路を人体洗浄用のノズル・管路と共用することは、健康衛生上の問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1又は2のノズルは、多種多様の便器形状に対応することが困難であるという問題がある。特許文献1又は2の便器のように、人体洗浄用ノズル類似のノズルから洗浄剤を噴出する場合には、洗浄剤の散布可能な範囲には限界があり、便器形状に応じてノズルの構造を逐一変更する必要があるからである。
【0009】
本発明は、簡素な構成により便鉢内の清潔性を継続的に保つことができ、又健康衛生的である便器装置及び便鉢洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の視点において、排泄後に水を便鉢表面に吐出して該便鉢表面を洗い流す第1のノズルを備えた便器装置であって、前記第1のノズルに前記水又は前記便鉢表面を洗浄する洗浄剤を供給する選択供給手段と、前記選択供給手段と水源との間に接続され該選択供給手段に前記水を供給する水供給手段と、前記選択供給手段と洗浄剤供給源との間に接続され該選択供給手段に前記洗浄剤を供給する洗浄剤供給手段と、前記水供給手段及び前記選択供給手段を制御して前記第1のノズルから前記水を吐出させて前記便鉢表面を洗い流させた後、前記洗浄剤供給手段及び該選択供給手段を制御して同第1のノズルから前記洗浄剤を該便鉢表面に吐出させる制御手段と、を有することを特徴とする便器装置を提供する。
【0011】
本発明は、第2の視点において、便器装置において、第1のノズルから水を吐出して便鉢表面を洗い流した後、同第1のノズルから洗浄剤を吐出して前記便鉢表面を洗浄することを特徴とする便鉢洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排便等の排泄物を流すため便鉢表面に水を洗い流す第1のノズルを活用して洗浄剤の吐出を行うことにより、詳細には、洗い流しのための水が該第1のノズルから吐出された後、同じく該第1のノズルから洗浄剤を吐出させることにより、簡素な構成によって便鉢表面の清潔性を継続的に保持することができる。また、人体を洗浄するノズルではなく、排出物を流すための第1のノズルを用いて便鉢表面の洗浄を行うことにより、上述の従来例における健康衛生上の問題が解消される。さらに、第1のノズルは、元々、洗い流しのために吐出される水が便鉢表面全体に行き渡るよう設計されるため、この第1のノズルから吐出される洗浄剤も便鉢表面全体に行き渡る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態に係る便器装置は、前記便鉢の底部に配置され排泄物を該便鉢から排水管に向かって洗い流すための水を吐出する第2のノズル、例えば、ジェットノズルを有する。この第2のノズルから噴出される水によって、便鉢底部から排出物を配水管に向かって洗い流すことができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態に係る便器装置は、前記第1及び/又は第2のノズルとは別に、一又は複数の人体洗浄用ノズルを有する。この形態によれば、残存する洗浄剤が人体に触れるような健康衛生上の問題が解消される。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態に係る便器装置において、前記第1のノズルは、前記便鉢の周辺部に形成されたリム部に配置されたリムノズルである。この形態によれば、既存の設備を利用して、洗浄剤を便鉢表面全体に行き渡らせることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態に係る便器装置において、前記制御手段は、前記洗浄剤を、前記便器装置の所定使用回数毎に定期的に吐出させる。この形態によれば、例えば、複数回使用後毎に洗浄剤による洗浄を行うことにより、毎回の排便の排水使用時に洗浄剤を吐出させるよりも、洗浄剤を節約することができる。
【実施例1】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施例を説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施例に係る便器装置の基本的構成を説明するための外観模式図である。図2は、本発明の第1の実施例に係る便器装置のブロック図である。図3は、図2に示した便器装置の回路系を説明するためのブロック図である。
【0019】
図1を参照すると、この便器装置は、いわゆる陶器一体型便座装置であって、便鉢(衛生陶器)14のリム部に配置されたリムノズル(第1のノズル)7と、便鉢14の底部に配置されたジェットノズル(第2のノズル)8とを有する。リムノズル7及びジェットノズル8は、開放状態の止水栓1に接続された洗い流し用バルブ等を含む洗い流し用ユニット103に接続され、洗い流し用の水がそれぞれ供給される。リムノズル7から吐出される水は、便鉢14の表面を周辺部から中央部に向かって回転しながら流れる。ジェットノズル8から吐出ないし噴出する水は、便鉢底の排泄物を配水管に向かって洗い流す。特に、リムノズル7は、吐出される水が便鉢14の表面全体に可及的に行き渡るよう形成されている。
【0020】
図2及び図3を参照すると、本発明の第1の実施例に係る便器装置は、上述のリムノズル(第1のノズル)7に、排泄後に便鉢14の表面を洗い流す水又は便鉢14の表面を洗浄する洗浄剤を供給するミキシングバルブ(選択供給手段)6と、ミキシングバルブ6と止水栓(水源)1との間に接続され、ミキシングバルブ6に水(水道水)を供給する洗い流し用バルブ(水供給手段)3と、ミキシングバルブ6と洗浄剤用タンク4(洗浄剤供給源)との間に接続され、ミキシングバルブ6に洗浄剤を供給するポンプ(洗浄剤供給手段)5と、ユーザの操作又は予め設定されたプログラムに応じて、洗い流し用バルブ3、ポンプ5及びミキシングバルブ6等を制御する指令を送信するCPU(制御手段、マイクロコンピュータ)13と、を有する。
【0021】
ミキシングバルブ6は、切替弁の機能を有し、水又は洗浄剤を選択的にリムノズル7に供給する。
【0022】
CPU13は、洗い流し用バルブ3及びミキシングバルブ6を制御してリムノズル7から水を吐出させて便鉢14の表面を洗い流させた後、ポンプ5及びミキシングバルブ6を制御して同じくリムノズル7から洗浄剤を便鉢14の表面に吐出させる。
【0023】
止水栓1には、さらに、メインバルブ2、圧力調整弁2a、温水給湯手段たる瞬間給湯ユニット9、おしり・ビデ切替弁10が順に接続され、おしり・ビデ切替弁10にはおしりノズル11とビデノズル12がそれぞれ接続されている。CPU13は、ユーザの操作又は予め設定されたプログラムに応じて、メインバルブ2、瞬間給湯ユニット9及びおしり・ビデ切替弁10を制御して、おしりノズル11又はビデノズル12から人体洗浄用の温水を選択的に噴出させる。尚、瞬間給湯ユニット9に代えて、温水給湯手段として温水タンクを採用することができる。
【0024】
洗い流し用ユニット103において、洗い流し用バルブ3とミキシングバルブ6の間には圧力調整弁3aが接続され、圧力調整弁3aには、上述のジェットノズル8が接続されている。リムノズル7とジェットノズル8は、図1の洗い流し用ユニット103に内蔵されたカム機構或いは電気的な制御機構により、交互に作動することもできる。
【0025】
なお、洗浄剤用タンク4は、温水洗浄便座或いは便鉢14の背面などに設けることが好ましい。
【0026】
引き続き図2及び図3を参照して、以上説明した便器装置の動作を説明する。
【0027】
ユーザが便鉢14に排泄した後、ユーザの操作或いはセンサの検知信号に応じて、CPU13は、洗い流し用バルブ3及びミキシングバルブ6を制御して、リムノズル7とジェットノズル8から水を所定のタイミングで吐出させ、便鉢14の表面から排泄物を洗い流し、さらに、便鉢14の底部から排泄物を下水管に向かって押し流す。
【0028】
上記洗い流し終了後、CPU13は、ポンプ5及びミキシングバルブ6を制御して、同じくリムノズル7から、今度は洗浄剤を吐出させて便鉢14の表面を洗浄する。洗浄剤は、前記洗い流しの水と同様に便鉢14の表面全体に行き渡り、しかも、洗い流し後に便鉢表面14に吐出されるため、便鉢14の表面を清潔に保持し、ユーザによる清掃の手間を軽減する。
【0029】
上述の洗浄剤の吐出は、洗い流し後、すなわち、洗い流しの水を流していない間に、定期的に行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、便鉢を洗い流すリム洗浄が可能な便器装置、特に、陶器一体型温水洗浄便座を備えた便器装置、中でも、人体洗浄ノズルを備えた便器装置に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施例に係る便器装置の基本的構成を説明するための外観模式図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る便器装置のブロック図である。
【図3】図2に示した便器装置の回路系を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
1 止水栓
2 メインバルブ
2a 圧力調整弁
3 洗い流し用バルブ
3a 圧力調整弁
4 洗浄剤用タンク
5 ポンプ(洗浄剤供給手段)
6 ミキシングバルブ(選択供給手段、切替弁)
7 リムノズル(第1のノズル)
8 ジェットノズル(第2のノズル)
9 瞬間給湯ユニット(温水給湯手段)
10 おしり・ビデ切替弁
11 おしりノズル(人体洗浄用ノズル)
12 ビデノズル(人体洗浄用ノズル)
13 CPU(制御手段)
14 便鉢(衛生陶器)
100 便器装置
103 洗い流し用ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄後に水を便鉢表面に吐出して該便鉢表面を洗い流す第1のノズルを備えた便器装置であって、
前記第1のノズルに前記水又は前記便鉢表面を洗浄する洗浄剤を供給する選択供給手段と、
前記選択供給手段と水源との間に接続され該選択供給手段に前記水を供給する水供給手段と、
前記選択供給手段と洗浄剤供給源との間に接続され該選択供給手段に前記洗浄剤を供給する洗浄剤供給手段と、
前記水供給手段及び前記選択供給手段を制御して前記第1のノズルから前記水を吐出させて前記便鉢表面を洗い流させた後、前記洗浄剤供給手段及び該選択供給手段を制御して同第1のノズルから前記洗浄剤を該便鉢表面に吐出させる制御手段と、
を有することを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記便鉢の底部に配置され排泄物を該便鉢から排水管に向かって洗い流すための水を吐出する第2のノズルを有することを特徴とする請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
前記第1及び/又は前記第2のノズルとは別に、一又は複数の人体洗浄用ノズルを有することを特徴とする請求項1又は2記載の便器装置。
【請求項4】
前記第1のノズルは、前記便鉢の周辺部に形成されたリム部に配置されたリムノズルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載の便器装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記洗浄剤を前記便器装置の所定使用回数毎に定期的に吐出させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載の便器装置。
【請求項6】
便器装置において、第1のノズルから水を吐出して便鉢表面を洗い流した後、同第1のノズルから洗浄剤を吐出して前記便鉢表面を洗浄することを特徴とする便鉢洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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