説明

便器装置

【課題】固定が解除された局部洗浄ノズルの回動を許容することにより、局部洗浄ノズルの着脱作業を狭いトイレ空間でも容易に行なえるようにすること。
【解決手段】 ボウル部5の上縁部にリム6を設け、このリム6と連続して上蓋8で開閉される上面開口部9をボウル部5の後部に設け、上面開口部9の下方にノズル収納部10を設け、局部洗浄ノズル4の先端部4aをノズル出退口11から臨ませた水平乃至前下がり姿勢でノズル収納部10に着脱可能に固定する固定手段32を備えた便器装置1である。固定手段32による局部洗浄ノズル4の固定を解除した状態で、局部洗浄ノズル4の後端部4bをノズル収納部10から取り外し可能な姿勢となるまで局部洗浄ノズル4の先端部4aの下方A側への回動を許容する回動許容空間部13を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関し、詳しくはボウル部の後方上部に局部洗浄装置が一体に組み込まれた便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボウル部の後方上部に便器本体と一体の局部洗浄装置を設置した温水洗浄一体式便器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1等に見られる従来例では、例えば図9に示すように、ボウル部5の上縁部に設けられるリム6のうち、ボウル部5の後部に位置するリム部6aと連続して上方に立ち上がる立上り部7を設け、立上り部7の上部に連続して上蓋8で開閉される上面開口部9を設け、立上り部7の下部がノズル収納部10となっており、ノズル収納部10の内部に、人体の局部に向けて噴流水を噴出する局部洗浄ノズル4を収納すると共に、ノズル収納部10の前端下部に局部洗浄ノズル4の先端部4aを出退自在とするノズル出退口11を設け、局部洗浄ノズル4を前下がり姿勢で機器取付用ベース12に対して着脱可能に固定するようにしている。
【0004】
従来では、局部洗浄ノズル4のメンテナンスや交換を行なう場合は、局部洗浄ノズル4のみを単独で取り外すことができなかった。つまり、局部洗浄ノズル4の先端部4aの下部には、機器取付用ベース12の前端部12aが接近しており、その下にはボウル部5のリム部6aが接近している。このリム部6aの下方は便器洗浄水が旋回するリム下通水路15aとなっているため局部洗浄ノズル4の先端部4aの下部付近は限られた狭い空間スペースとなっている。一方、局部洗浄ノズル4の先端部4aから中央部分にかけてその上部付近はノズル収納部10が接近しているため、局部洗浄ノズル4は上下前後左右の動きが制約された取り付け構造となっており、そのため従来では局部洗浄ノズル4のメンテナンスを行なう場合は、便器本体2の片方の側面板19(図8)を取り外し、そこから内部に手をいれて支持フレーム20上に固定されている機器取付用ベース12を取り外し、局部洗浄装置3を機器取付用ベース12ごと外部に取り出す必要があった。このような便器の分解を必要とすることから局部洗浄ノズル4の着脱作業がきわめて面倒であり、特に狭いトイレ空間での着脱作業は困難を伴うものであった。
【特許文献1】特開2007−191901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その課題とするところは、固定が解除された局部洗浄ノズルの回動を許容することにより、局部洗浄ノズルの着脱作業を狭いトイレ空間でも容易に行なえるようにした便器装置を提供することにあり、さらにリム下通水路から局部洗浄ノズル側への便器洗浄水の飛散や浸入を容易に防止できる便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を特徴としている。
【0007】
ボウル部5の上縁部にリム6を設け、このリム6と連続して上蓋8で開閉される上面開口部9をボウル部5の後部に設け、上面開口部9の下方にノズル収納部10を設け、ノズル収納部10の内部に、人体の局部に向けて噴流水を噴出する局部洗浄ノズル4を収納すると共に、ノズル収納部10の前端下部に局部洗浄ノズル4の先端部4aを出退自在とするノズル出退口11を設け、局部洗浄ノズル4を水平乃至前下がり姿勢でノズル収納部10に着脱可能に固定する固定手段32を備えた便器装置1である。前記固定手段32による局部洗浄ノズル4の固定を解除した状態で、局部洗浄ノズル4の後端部4bがノズル収納部10から取り外し可能な姿勢となるまで局部洗浄ノズル4の先端部4aの下方A側への回動を許容する回動許容空間部13が設けられている。
【0008】
このような構成とすることで、局部洗浄ノズル4のメンテナンスや交換の際には、上蓋8を開いて固定手段32による局部洗浄ノズル4の固定を解除してから局部洗浄ノズル4の後端部4bを手で持ち上げる。このとき、回動許容空間部13の存在によって局部洗浄ノズル4の先端部4aが下方A側に押し下げられ、これに伴い局部洗浄ノズル4の後端部4bをノズル収納部10から取り外し可能な姿勢となるまで回動させることが可能となり、これにより、局部洗浄ノズル4を単独で上面開口部9から取り出すことができる。
【0009】
また、ボウル部の後部の前記リム6の下方で且つ前記ノズル出退口11よりも後方に後退した位置にボウル部5の内方に開放されたリム下通水路15aが形成されているのが好ましく、この場合、リム下通水路15aをノズル出退口11よりも後方に後退させることで便器洗浄水が局部洗浄ノズル4側に飛散したり局部洗浄装置3内部に浸入するのを防止できるようになる。
【0010】
さらに、前記リム下通水路の前方でリム下通水路とノズル出退口との間に、前記ボウル部の後部のリムから突出してリム下通水路の上部開放端よりも下方に垂下する垂下片を設けるのが好ましく、この場合、垂下片によって水返し効果が得られ、便器洗浄水の局部洗浄ノズル4側への飛散や浸入をより確実に防止できるようになる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、固定が解除された局部洗浄ノズルの回動を許容する回動許容空間部を設けたことにより、従来のように温水洗浄一体式便器を分解することなく、局部洗浄ノズルの着脱作業を狭いトイレ空間でもスムーズに行なうことができ、メンテナンスや交換作業がきわめて容易なものとなる。
【0012】
請求項2の発明では、リム下通水路をノズル出退口よりも後方に後退させたことにより、リム下通水路内の便器洗浄水が局部洗浄ノズル側に飛散したり局部洗浄装置内部に浸入して機器類に悪影響を及ぼすのを防止できるものである。
【0013】
請求項3の発明では、リムから垂下片を突設させたことにより、リム下通水路内の便器洗浄水の飛散をより確実に防止できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
図1は本実施形態の便器装置1の一例を示している。本例の便器装置1は例えば図8に示す樹脂成形品からなる温水洗浄一体式の便器本体2と、便座16と、便蓋17とで構成される。
【0016】
便器本体2の外郭は、スカート18と、スカート18の上面に配置されるリム6と、両側面板19と、背面板36と、ノズル収納部10を備える立上り部7と、上面開口部9を開閉する上蓋8とが一体に構成されている。
【0017】
便器本体2は、封水を貯溜するボウル部5の下部に排水トラップ(図示せず)が配置され、ボウル部5の後方上部に、図1に示す局部洗浄装置3と、これを支持する支持フレーム20とが配置されている。なお、支持フレーム20は局部洗浄装置3の支持だけでなくスカート18等の外郭部品の支持も兼ねるのが望ましい。
【0018】
前記外郭を構成するリム6は、ボウル部5の上縁部全周に亘って設けられており、リム6の上面は便座載置面となっている。
【0019】
ボウル部5の上縁部全周に設けられるリム6のうち、ボウル部5の後部に位置するリム部6aからは、図1に示すように、リム部6aと連続して上方に立ち上がる立上り部7が設けられており、立上り部7の上部に連続して上蓋8で開閉される上面開口部9がボウル部5の後部に設けられている。立上り部7の下部はノズル収納部10となっている。ノズル収納部10の内部には、人体の局部に向けて噴流水を噴出するための伸張・収縮自在な局部洗浄ノズル4が収納されていると共に、ノズル収納部10の前端下部には、局部洗浄ノズル4の先端部4aを出退自在とするノズル出退口11が開口している。
【0020】
本例の局部洗浄ノズル4は、図6、図7に示すように、おしり洗浄ノズル4Aと、ビデ洗浄ノズル4Bと、これらノズル4A,4Bの先端側に向けて洗浄水を噴射させる飛散防止板30付きノズル洗浄用管路体4Cとを一体化したノズルユニットで構成されている。なおこのノズルユニットの構造は、例えば特開2002−213004号公報等の公知の技術を採用することができる。
【0021】
局部洗浄装置3の底面側には、図4、図5に示すような、一枚の機器取付用ベース12が設置されている。機器取付用ベース12は前記支持フレーム20により支持されている。ここでは機器取付用ベース12の前部中央寄りが局部洗浄ノズル4の取り付け部となっており、この部位に固定手段32を構成するねじ具32aが螺着される一対のボス32bと、局部洗浄ノズル4の後端部4bの後退移動を阻止する係止凸部32cとが突設されている。なお機器取付用ベース12の他の部位は局部洗浄用の湯水を生成して貯湯しておくための貯湯タンク、局部洗浄ノズル4への送水用ポンプ、温風供給用の温風ファン、水道水からの入水を制御する電磁弁等の機能部品(図示せず)の設置スペースとなっている。
【0022】
ここで、本発明においては、図1に示すねじ具32aをボス32bから取り外して機器取付用ベース12に対する局部洗浄ノズル4の固定を解除した状態で、局部洗浄ノズル4の回動を許容する回動許容空間部13を備えている。回動許容空間部13は、局部洗浄ノズル4の後端部4bがノズル収納部10の機器取付用ベース12から取り外し可能な姿勢となるまで局部洗浄ノズル4の先端部4aの下方A側への回動を許容するためのものであり、本例では、前記リム部6aの下方で且つ前記ノズル出退口11よりも後方に後退した位置に、ボウル部5の内方に開放されたリム下通水路15aが形成されていると共に、リム下通水路15aの前方にはノズル出退口11との間に、前記リム部6aの前端縁6bから突出してリム下通水路15aの上部開放端15bよりも下方に垂下する垂下片35を突設させている。なお局部洗浄ノズル4の固定姿勢は前下がり姿勢に限らず、水平姿勢でもよい。
【0023】
しかして、上記構成の局部洗浄ノズル4のメンテナンスや交換の際には、上蓋8を開いて上面開口部9から工具を入れて局部洗浄ノズル4のねじ具32aを機器取付用ベース12のボス32bから取り外してから、局部洗浄ノズル4の後端部4bを手で持ち上げる。このとき局部洗浄ノズル4の先端部4aが回動許容空間部13内に移動することによって図2に示す前下がり姿勢から図3の矢印B,C方向に回動させて、局部洗浄ノズル4の後端部4bを機器取付用ベース12の係止凸部32cから離脱させることができ、これによって、ノズル収納部10内から局部洗浄ノズル4のみを単独で矢印Dで示す方向に向けて上面開口部9から取り出すことができる。従って、従来のように温水洗浄一体式便器を分解する必要がなくなるため、局部洗浄ノズル4の着脱作業を狭いトイレ空間でもスムーズに行なうことができ、メンテナンスや交換作業がきわめて容易なものとなる。
【0024】
しかも本例では、前記ボウル部5の後部におけるリム部6aの下方に、ボウル部5内方に開放されたリム下通水路15aが形成されている。このリム下通水路15aはボウル部5のリム6の前部から側部に至るリム下通水路15と連通しており、給水噴出部(図示せず)から噴射される便器洗浄水がリム下通水路15,15aを略一周しながら旋回流となってボウル部5全体を効率よく洗浄できるようになっている。またリム下通水路15aはノズル出退口11よりも後方に後退して位置しており、回動許容空間部13の形成が可能になっていると共に、リム下通水路15a内を旋回する便器洗浄水が局部洗浄ノズル4側に飛散したり局部洗浄装置3内部に浸入して内部の機器に悪影響を及ぼしたりすることを効果的に防止できる。しかも本例ではリム下通水路15aの前方でノズル出退口11との間に、前記リム部6aの前端縁6bから突出してリム下通水路15aの上部開放端15bよりも下方に垂下する垂下片35を設けているので、垂下片35が水返し部となる。この結果、ノズル出退口11よりも後方に後退した位置にリム下通水路15aを形成し且つリム部6aから垂下片35を突設させるという簡易な構造で、局部洗浄ノズル4側への便器洗浄水の飛散や浸入をより確実に防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の便器本体と一体化された局部洗浄装置を説明する側面断面図である。
【図2】同上の局部洗浄ノズルの固定状態を説明する側面断面図である。
【図3】同上の局部洗浄ノズルの先端部を回動許容空間部に押し下げて局部洗浄ノズルの後端部を機器取付用ベースから取り外し可能な姿勢となるまで回動させた状態を説明する側面断面図である。
【図4】同上の局部洗浄ノズルを取り付けた機器取付用ベース付近の概略平面図である。
【図5】同上の局部洗浄ノズルを取り外した機器取付用ベース付近の概略平面図である。
【図6】同上の局部洗浄ノズルの斜視図である。
【図7】同上の局部洗浄ノズルの内部構造の斜視図である。
【図8】温水洗浄一体式便器の一例を示す斜視図である。
【図9】従来の局部洗浄ノズルの固定状態を説明する側面断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 局部洗浄装置
4 局部洗浄ノズル
4a 先端部
4b 後端部
5 ボウル部
6a リム部
6b 前端縁
7 立上り部
8 上蓋
9 上面開口部
10 ノズル収納部
11 ノズル出退口
12 機器取付用ベース
13 回動許容空間部
15a リム下通水路
35 垂下片
A 下方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部の上縁部にリムを設け、このリムと連続して上蓋で開閉される上面開口部をボウル部の後部に設け、上面開口部の下方にノズル収納部を設け、ノズル収納部の内部に、人体の局部に向けて噴流水を噴出する局部洗浄ノズルを収納すると共に、ノズル収納部の前端下部に局部洗浄ノズルの先端部を出退自在とするノズル出退口を設け、局部洗浄ノズルを水平乃至前下がり姿勢でノズル収納部に着脱可能に固定する固定手段を備えた便器装置であって、前記固定手段による局部洗浄ノズルの固定を解除した状態で、局部洗浄ノズルの後端部が前記ノズル収納部から取り外し可能な姿勢となるまで局部洗浄ノズルの先端部の下方側への回動を許容する回動許容空間部を設けたことを特徴とする便器装置。
【請求項2】
ボウル部の後部の前記リムの下方で且つ前記ノズル出退口よりも後方に後退した位置に、ボウル部の内方に開放されたリム下通水路が形成されていることを特徴とする請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
前記リム下通水路の前方でノズル出退口との間に、前記リムから突出してリム下通水路の上部開放端よりも下方に垂下する垂下片を設けたことを特徴とする請求項2記載の便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−270275(P2009−270275A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119225(P2008−119225)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】